説明

反応容器及び反応方法

【課題】被検液の飛散を抑制できる反応容器及び反応方法を提供すること。
【解決手段】遺伝子検査に用いる反応容器1であって、反応容器1内において、被検液を反応容器1内に滴下する滴下手段と嵌合する嵌合部14と、嵌合部14に嵌合した滴下手段を反応容器内に封止する蓋20と、を含む。滴下手段は、マイクロピペットのチップを含んで構成されていてもよい。また、滴下手段は、プランジャーを備えたシリンジを含んで構成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器及び反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な疾患に関与する遺伝子の存在が明らかになり、遺伝子診断や遺伝子治療など遺伝子を利用した医療が注目されている他、農畜産分野においても品種判別や品種改良に遺伝子を用いた手法が多く開発されてきており、遺伝子の利用技術が拡大している。遺伝子を利用するために核酸増幅技術が広く普及している。この技術としては一般的にPCR(Polymerase Chaine Reaction)などが知られており、今日では、PCRは、生体物質の情報解明において必要不可欠な技術となっている。
【0003】
PCRによる検査では、チューブやチップ(バイオチップ)と称する検体反応用容器を用いて反応を行う手法が一般的である。しかしながら従来の手法においては、必要な試薬等の量が多く、また必要な熱サイクルを実現するために装置が複雑化したり、反応に時間がかかったりするという問題があった。そのため微少量の試薬や検体を用いてPCRを精度よく短時間で行うためのバイオチップや反応装置が必要とされていた。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1には、反応液と混和せず反応液よりも比重の軽い液体(ミネラルオイル等)を充填したチューブの中で、液滴の状態で含まれる反応液を往復移動させることによってサーマルサイクルをかけて反応を行う方式(以下、本明細書において、これを「昇降型」と称する場合がある。)のバイオチップ及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−136250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来のバイオチップにおいては、PCRによる検査では検体を含む液体(本明細書において、これを「被検液」と称することがある)を微小量の容器に分注する必要がある。そのため、例えば、検査を行う者がマイクロピペットを用いて被検液を容器に分注する場合に、マイクロピペットのチップを使用後に廃棄する際などに被検液が飛散し、環境を汚染したり、コンタミネーションが生じたりする可能性があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、被検液の飛散を抑制できる反応容器及び反応方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る反応容器は、
遺伝子検査に用いる反応容器であって、
前記反応容器内において、被検液を前記反応容器内に滴下する滴下手段と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に嵌合した前記滴下手段を前記反応容器内に封止する蓋と、
を含む。
【0009】
本発明によれば、被検液に触れた滴下手段を被検液とともに反応容器内に封止できるので、被検液の飛散を抑制できる反応容器を実現できる。
【0010】
(2)この反応容器は、
前記滴下手段は、マイクロピペットのチップを含んで構成されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、被検液に触れたマイクロピペットのチップを被検液とともに反応容器内に封止できるので、被検液の飛散を抑制できる反応容器を実現できる。
【0012】
(3)この反応容器は、
前記滴下手段は、プランジャーを備えたシリンジを含んで構成されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、被検液に触れたシリンジを被検液とともに反応容器内に封止できるので、被検液の飛散を抑制できる反応容器を実現できる。
【0014】
(4)この反応容器は、
前記プランジャーと前記蓋とが一体として構成されていてもよい。
【0015】
これにより、反応容器の部品点数を減らすことができる。
【0016】
(5)この反応容器は、
前記反応容器内にオイルが充填されていてもよい。
【0017】
これにより、昇降型のサーマルサイクラーを用いて容易にPCRを行うことができる。
【0018】
(6)この反応容器は、
前記反応容器内に、プライマー及び蛍光プローブの少なくとも一方が塗布されていてもよい。
【0019】
これにより、反応容器に被検液を分注すれば、被検液とプライマー及び蛍光プローブの少なくとも一方とを混合することができるので、より簡単にPCRを行うことができる。
【0020】
(7)本発明に係る反応方法は、
被検液を反応容器内に滴下する滴下手段を前記反応容器と嵌合させる嵌合工程と、
前記嵌合工程で前記反応容器と嵌合された前記滴下手段から前記反応容器内に前記被検液を滴下する滴下工程と、
前記嵌合工程で前記反応容器と嵌合された前記滴下手段を前記反応容器内に封止する封止工程と、
を含む。
【0021】
本発明によれば、被検液に触れた滴下手段を被検液とともに反応容器内に封止できるので、被検液の飛散を抑制できる反応方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(A)は、第1実施形態に係る反応容器1の断面構造を模式的に表した図、図1(B)は、第1実施形態に係る反応容器1の図1(A)のA−A線における断面を模式的に表した図、図1(C)は、第1実施形態の変形例に係る反応容器1aの断面構造を模式的に表した図。
【図2】図2(A)〜図2(E)は、本実施形態に係る反応方法の一例を説明するための図。
【図3】図3(A)〜図3(D)は、本実施形態に係る反応方法の他の一例を説明するための図。
【図4】図4(A)〜図4(D)は、本実施形態に係る反応方法の他の一例を説明するための図。
【図5】図5(A)は、第2実施形態に係る反応容器2の断面構造を模式的に表した図、図5(B)は、第2実施形態に係る反応容器2の図5(A)のA−A線における断面を模式的に表した図。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、第2実施形態に係る反応容器2と滴下手段とが嵌合する様子を説明するための図。
【図7】図7(A)は、第7実施形態に係る反応容器3の断面構造を模式的に表した図、図7(B)は、第3実施形態に係る反応容器3の図7(A)のA−A線における断面を模式的に表した図。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、第3実施形態に係る反応容器3と滴下手段とが嵌合する様子を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1.第1実施形態に係る反応容器及び反応方法
図1(A)は、第1実施形態に係る反応容器1の断面構造を模式的に表した図、図1(B)は、第1実施形態に係る反応容器1の図1(A)のA−A線における断面を模式的に表した図、図1(C)は、第1実施形態の変形例に係る反応容器1aの断面構造を模式的に表した図である。
【0025】
第1実施形態に係る反応容器1は、遺伝子検査に用いる反応容器であって、容器本体部10と蓋20とを含んで構成されている。
【0026】
反応容器1の外形形状は、任意の形状を有することができる。反応容器1の大きさや形状は、特に限定されないが、用途に応じ、例えば、充填されるオイル等の液体の量、熱伝導率、内部に形成されるキャビティーの形状、および取り扱いの容易さの少なくとも1種を考慮して選択されてもよい。
【0027】
反応容器1の材質としては、特に限定されず、無機材料(例えばパイレックスガラス(パイレックスは登録商標))、および有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。反応容器1を、PCR(Polymerase Chaine Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の反応容器(反応チップ)として使用する場合など、蛍光測定を伴う用途に使用する場合には、反応容器1は、自発蛍光の小さい材質で形成されることが望ましい。このような自発蛍光の小さい材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が挙げられる。なお、反応容器1をPCRの反応容器として用いる場合、反応容器1はPCRにおける加熱に耐えられる材質であることが好ましい。
【0028】
さらに、反応容器1の材質には、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、若しくは、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoまたはCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrまたはCrの炭化物などの黒色物質等を配合することができる。反応容器1の材質に、このような黒色物質が配合されることにより、樹脂等の有する自発蛍光をさらに抑制することができる。また、反応容器1の外部から、内部のキャビティー内を観察するような用途(例えば、リアルタイムPCRなど)に反応容器1を用いる場合には、必要に応じて、反応容器1の材質を透明なものとすることができる。またなお、反応容器1をPCRの反応チップとして使用する場合には、反応容器1の材質は、核酸やタンパク質の吸着が少なく、ポリメラーゼ等の酵素反応を阻害しない材質であることが好ましい。
【0029】
容器本体部10には、容器本体部10の内部に形成された空洞であるキャビティー12が設けられている。また、容器本体部10には、反応容器1内であるキャビティー12内において、被検液(検体を含む液体)をキャビティー12内に滴下する滴下手段と嵌合する嵌合部14が設けられている。
【0030】
キャビティー12は、開口部11を介して容器本体部10の外部空間と連通するように構成されている。キャビティー12の形状は、特に限定されない。キャビティー12の形状は、例えば、図1(A)に示すような細長い形状とすることができる。
【0031】
キャビティー12が、細長い形状であると、例えば、昇降型のサーマルサイクラーを用いてキャビティー12内に温度の異なる領域が設けられるように反応容器1を温度制御する際に、異なる温度の領域の間の距離を離間させやすくなる。昇降型のサーマルサイクラーとは、反応液と混和せず反応液よりも比重の軽い液体(ミネラルオイル等)を充填した反応容器の中に液滴の状態で含まれる反応液を、反応容器中のある温度領域と異なる温度領域とを往復移動させることによってサーマルサイクルを実現する装置である。
【0032】
また、キャビティー12が細長い形状を有すると、容器の体積に対して、容器の表面積の割合が大きくなるので、例えば、キャビティー12内にオイル等の液体が充填された場合に、熱の伝導の効率がよくなり、液体の温度調節を容易化することができる。
【0033】
キャビティー12の機能の一つとしては、液体が充填されたときに、当該液体の反応室となることが挙げられる。例えば、キャビティー12は、オイルとPCR反応液とが充填された場合には、PCR反応液を反応させる空間となることができる。そして特にキャビティー12が細長い場合には、昇降型のサーマルサイクラーを用いてキャビティー12の中でPCR反応液を移動させることにより、PCR反応液にサーマルサイクルを施すことが容易となる。
【0034】
嵌合部14は、滴下手段(詳細は後述)と嵌合するように構成されている。図1(A)及び図1(B)に示す例では、嵌合部14は、狭窄部16を含んで構成されている。狭窄部16は、開口部11側からキャビティー12を見た場合に、キャビティー12の断面積が狭くなる部分として構成されている。
【0035】
蓋20は、所望の遺伝子検査に必要な内容物(例えば、被検液や種々の試薬、オイルなど)が反応容器1から漏れ出さないように、容器本体部10に取り付け可能に構成されている。蓋20は、容器本体部10の開口部11を覆うように取り付けられる。蓋20は、例えば、スクリューキャップ構造を有し、容器本体部10に螺合されることにより容器本体部10に取り付けられてもよい。また、蓋20は、容器本体部10から取り外し可能に構成されている。
【0036】
蓋20は、嵌合部14に嵌合した滴下手段(詳細は後述)を反応容器1内に封止することができる。図1(A)に示す例では、容器本体部10と蓋20とが螺合されることにより、容器本体部10と蓋20とで囲まれた空間領域内に滴下手段を封止することができる。
【0037】
このように構成された第1実施形態に係る反応容器1によれば、被検液に触れた滴下手段を被検液とともに反応容器内に封止できるので、被検液の飛散を抑制できる反応容器を実現できる。
【0038】
さらに、図1(C)に示す第1実施形態の変形例に係る反応容器1aのように、反応容器1aのキャビティー12内にオイル30が充填されていてもよい。これにより、昇降型のサーマルサイクラーを用いて容易にPCRを行うことができる。
【0039】
さらにまた、図1(C)に示す第1実施形態の変形例に係る反応容器1aのように、反応容器1aのキャビティー12内に、標的核酸を増幅するためのプライマー及び増幅産物を検出するための蛍光プローブの少なくとも一方(試薬40)が塗布されていてもよい。これにより、反応容器1aに被検液を分注すれば、被検液と標的核酸を増幅するためのプライマー及び増幅産物を検出するための蛍光プローブの少なくとも一方(試薬40)とを混合することができるので、より簡単にPCRを行うことができる。
【0040】
図2(A)〜図2(E)は、本実施形態に係る反応方法の一例を説明するための図である。図2(A)〜図2(E)に示す例では、第1実施形態の変形例に係る反応容器1aを用いた反応方法について示している。
【0041】
本実施形態に係る反応方法は、被検液70を反応容器1aのチャンバー12内に滴下するマイクロピペット60のチップ50(滴下手段)を反応容器1aの嵌合部14と嵌合させる嵌合工程と、嵌合工程で反応容器1aの嵌合部14と嵌合されたマイクロピペット60のチップ50(滴下手段)から反応容器1aのチャンバー12内に被検液70を滴下する滴下工程と、嵌合工程で反応容器1aの嵌合部14と嵌合されたマイクロピペット60のチップ50(滴下手段)を反応容器1a内に封止する封止工程と、を含んでいる。
【0042】
滴下手段は、必要に応じて被検液を保持したり滴下したりすることができる用具や部材である。図2(A)〜図2(E)に示す例では、滴下手段としてマイクロピペット60のチップ50を含んだ構成が用いられている。
【0043】
チップ50は、マイクロピペット60の先端に取り付けられて用いられる用具である。チップ50は、中空型の筒形状部分を有し、筒形状部分の内部に被検液などの液体を保持することができる。
【0044】
チップ50の材質としては、特に限定されず、無機材料(例えばパイレックスガラス(パイレックスは登録商標))、および有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。
【0045】
まず、図2(A)〜図2(E)に示す反応方法の例における嵌合工程について説明する。まず、図2(A)に示すように、マイクロピペット60にチップ50を取り付け、チップ50が取り付けられたマイクロピペット60で被検液70を吸い上げ、被検液70をチップ50で保持する。次に、チップ50をマイクロピペット60に取り付けたまま容器本体部10の開口部11からチャンバー12内へ挿入し、図2(B)に示すように、チップ50を嵌合部14に嵌合させる。図2(B)に示す例では、チップ50の先端部分を狭窄部16に嵌合させている。
【0046】
次に、図2(A)〜図2(E)に示す反応方法の例における滴下工程について説明する。図2(C)に示すように、チップ50を嵌合部14に嵌合させた状態で、被検液70をチャンバー12内に滴下する。図2(C)に示す例では、チャンバー12にはオイル30が充填されているため、チャンバー12内に充填されたオイル30内に被検液70を滴下している。また、図2(D)及び図2(E)に示す例では、滴下工程で滴下された被検液70は、チャンバー12内の試薬40と混合し、チャンバー12内で反応液80となる。反応液80を用いて、PCRなどの種々の遺伝子検査などを行うことができる。
【0047】
次に、図2(A)〜図2(E)に示す反応方法の例における封止工程について説明する。まず、図2(D)に示すように、チップ50を嵌合部14に嵌合させたまま、チップ50からマイクロピペット60を取り外す。次に、図2(E)に示すように、チップ50を嵌合部14に嵌合させたまま蓋20を容器本体部10に螺合させることにより、チップ50を反応容器1a内に封止する。図2(E)に示す例では、容器本体部10と蓋20とで囲まれた空間領域内にチップ50を封止している。
【0048】
このように、図2(A)〜図2(E)に示す反応方法によれば、被検液に触れたチップ(滴下手段)を被検液とともに反応容器内に封止できる。したがって、被検液の飛散を抑制できる反応方法を実現できる。
【0049】
図3(A)〜図3(D)は、本実施形態に係る反応方法の他の一例を説明するための図である。図3(A)〜図3(D)に示す例では、第1実施形態の変形例に係る反応容器1aを用いた反応方法について示している。
【0050】
本実施形態に係る反応方法は、被検液70を反応容器1aのチャンバー12内に滴下するシリンジ56(滴下手段)を反応容器1aの嵌合部14と嵌合させる嵌合工程と、嵌合工程で反応容器1aの嵌合部14と嵌合されたシリンジ(滴下手段)から反応容器1aのチャンバー12内に被検液70を滴下する滴下工程と、嵌合工程で反応容器1aの嵌合部14と嵌合されたシリンジ(滴下手段)を反応容器1a内に封止する封止工程と、を含んでいる。
【0051】
図3(A)〜図3(D)に示す例では、滴下手段としてシリンジ56を含んだ構成が用いられている。
【0052】
シリンジ56は、中空型の筒形状部分を有し、筒形状部分の内部に被検液などの液体を保持することができるシリンダー52と、シリンダー52の筒形状部分に挿通されるプランジャー54とを含んで構成されている。
【0053】
シリンジ56の材質としては、特に限定されず、無機材料(例えばパイレックスガラス(パイレックスは登録商標))、および有機材料(例えばポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂)を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。
【0054】
まず、図3(A)〜図3(D)に示す反応方法の例における嵌合工程について説明する。まず、図3(A)に示すように、プランジャー54を引き上げることにより被検液70をシリンジ56で吸い上げ、被検液70をシリンジ56で保持する。次に、シリンジ56を容器本体部10の開口部11からチャンバー12内へ挿入し、図3(B)に示すように、シリンジ56を嵌合部14に嵌合させる。図3(B)に示す例では、シリンジ56の先端部分を狭窄部16に嵌合させている。
【0055】
次に、図3(A)〜図3(D)に示す反応方法の例における滴下工程について説明する。図3(C)に示すように、シリンジ56を嵌合部14に嵌合させた状態で、プランジャー54を押し下げることにより被検液70をチャンバー12内に滴下する。図3(C)に示す例では、チャンバー12にはオイル30が充填されているため、チャンバー12内に充填されたオイル30内に被検液70を滴下している。また、図3(D)に示す例では、滴下工程で滴下された被検液70は、チャンバー12内の試薬40と混合し、チャンバー12内で反応液80となる。反応液80を用いて、PCRなどの種々の遺伝子検査などを行うことができる。
【0056】
次に、図3(A)〜図3(D)に示す反応方法の例における封止工程について説明する。図3(D)に示すように、シリンジ56を嵌合部14に嵌合させたまま蓋20を容器本体部10に螺合させることにより、シリンジ56を反応容器1a内に封止する。図3(D)に示す例では、容器本体部10と蓋20とで囲まれた空間領域内にシリンジ56を封止している。
【0057】
なお、滴下工程と封止工程とを同時的に行うことも可能である。例えば、蓋20を容器本体部10に螺合させることにより、プランジャー54を押し下げ、被検液70の滴下とシリンジ56の封止を同時的に行うことができる。これにより、作業を簡略化できる。
【0058】
このように、図3(A)〜図3(D)に示す反応方法によれば、被検液に触れたシリンジ(滴下手段)を被検液とともに反応容器内に封止できる。したがって、被検液の飛散を抑制できる反応方法を実現できる。
【0059】
また、シリンジがプランジャーを備えていることにより、中空の筒形状であるシリンダーの中空部分をプランジャーで塞ぐことができるため、反応容器の所望の領域内に被検液を封じることが容易になる。
【0060】
図4(A)〜図4(D)は、本実施形態に係る反応方法の他の一例を説明するための図である。図4(A)〜図4(D)に示す例では、図3(A)〜図3(D)に示す反応容器1aにおいて、プランジャー54と蓋20とが一体として構成されている反応容器1bを用いた反応方法について示している。
【0061】
本実施形態に係る反応方法は、被検液70を反応容器1aのチャンバー12内に滴下するシリンジ56(滴下手段)を反応容器1bの嵌合部14と嵌合させる嵌合工程と、嵌合工程で反応容器1bの嵌合部14と嵌合されたシリンジ(滴下手段)から反応容器1bのチャンバー12内に被検液70を滴下する滴下工程と、嵌合工程で反応容器1bの嵌合部14と嵌合されたシリンジ(滴下手段)を反応容器1b内に封止する封止工程と、を含んでいる。
【0062】
まず、図4(A)〜図4(D)に示す反応方法の例における嵌合工程について説明する。まず、図4(A)に示すように、プランジャー54及び蓋20を引き上げることにより被検液70をシリンジ56で吸い上げ、被検液70をシリンジ56で保持する。次に、シリンジ56を容器本体部10の開口部11からチャンバー12内へ挿入し、図4(B)に示すように、シリンジ56を嵌合部14に嵌合させる。図4(B)に示す例では、シリンジ56の先端部分を狭窄部16に嵌合させている。
【0063】
次に、図4(A)〜図4(D)に示す反応方法の例における滴下工程及び封止工程について説明する。図4(C)に示すように、シリンジ56を嵌合部14に嵌合させたまま蓋20を容器本体部10に螺合させることにより、プランジャー54を押し下げて被検液70をチャンバー12内に滴下とともに、シリンジ56を反応容器1a内に封止する。図4(C)に示す例では、チャンバー12にはオイル30が充填されているため、チャンバー12内に充填されたオイル30内に被検液70を滴下している。また、図4(C)に示す例では、容器本体部10と蓋20とで囲まれた空間領域内にシリンジ56を封止している。また、図4(D)に示す例では、滴下工程で滴下された被検液70は、チャンバー12内の試薬40と混合し、チャンバー12内で反応液80となる。反応液80を用いて、PCRなどの種々の遺伝子検査などを行うことができる。
【0064】
このように、図4(A)〜図4(D)に示す反応方法によれば、被検液に触れたシリンジ(滴下手段)を被検液とともに反応容器内に封止できる。したがって、被検液の飛散を抑制できる反応方法を実現できる。また、滴下工程と封止工程とを同時的に行うことができるため、作業を簡略化できる。
【0065】
また、シリンジがプランジャーを備えていることにより、中空の筒形状であるシリンダーの中空部分をプランジャーで塞ぐことができるため、反応容器の所望の領域内に被検液を封じることが容易になる。
【0066】
さらに、プランジャーと蓋とが一体として構成されていることにより、反応容器の部品点数を減らすことができる。
【0067】
2.第2実施形態に係る反応容器
図5(A)は、第2実施形態に係る反応容器2の断面構造を模式的に表した図、図5(B)は、第2実施形態に係る反応容器2の図5(A)のA−A線における断面を模式的に表した図である。
【0068】
第2実施形態に係る反応容器2は、第1実施形態に係る反応容器1と比べて、嵌合部の構成のみが異なり、他の構成は反応容器1と同様である。したがって、以下では、特に反応容器2の嵌合部の構成について説明する。
【0069】
図5(A)及び図5(B)に示すように、容器本体部10には、反応容器1内であるキャビティー12内において、被検液をキャビティー12内に滴下する滴下手段と嵌合する嵌合部14aが設けられている。
【0070】
嵌合部14aは、滴下手段と嵌合するように構成されている。図5(A)及び図5(B)に示す例では、嵌合部14aは、狭窄部16に加えて、カギ溝17を含んで構成されている。
【0071】
カギ溝17は、開口部11側からキャビティー12を見た場合に奥行き方向となる溝と、奥行き方向と垂直な仮想平面上にある溝とが、一連の溝となるように容器本体部10の内壁面に構成されている。図5(A)及び図5(B)に示す例では、カギ溝17は、容器本体部10の内壁面の4箇所に設けられている。
【0072】
図6(A)〜図6(C)は、第2実施形態に係る反応容器2と滴下手段とが嵌合する様子を説明するための図である。
【0073】
図6(A)〜図6(C)に示す例では、滴下手段としてマイクロピペット60のチップ50aを含んだ構成が用いられている。チップ50aは、マイクロピペット60の先端に取り付けられて用いられる用具である。チップ50aは、中空型の筒形状部分を有し、筒形状部分の内部に被検液などの液体を保持することができる。また、チップ50aには、チップ50aを開口部11からチャンバー12内へ挿入した際に、カギ溝17と嵌合する凸部58が設けられている。
【0074】
次に、チップ50aを嵌合部14aに嵌合させる様子(嵌合工程に対応する)を説明する。図6(A)に示すように、マイクロピペット60にチップ50aを取り付ける。次に、チップ50aをマイクロピペット60に取り付けたまま容器本体部10の開口部11からチャンバー12内へ挿入し、図6(B)に示すように、チップ50aを嵌合部14に嵌合させる。図6(B)に示す例では、チップ50aの先端部分を狭窄部16に、チップ50aの凸部58をカギ溝17に、それぞれ嵌合させている。また、チップ50aの凸部58をカギ溝17に嵌合させる際には、カギ溝17のうち開口部11側からキャビティー12を見た場合に奥行き方向と垂直な仮想平面上にある溝の部分まで、凸部58がカギ溝17に沿って移動するように嵌合させている。
【0075】
このように、嵌合部としてカギ溝を含んだ構成とすることにより、凸部とカギ溝とが引っ掛かかり、チップ(滴下手段)と反応容器との嵌合がより確実になる。これにより、チップ(滴下手段)と反応容器とが外れてしまうことを抑制できる。また、被検液をキャビティー内に確実に滴下できる。
【0076】
また、滴下手段としてマイクロピペット60のチップ50aを含んだ構成が用いられている場合において、図6(C)に示すように、チップ50aを嵌合部14aに嵌合させたまま、チップ50aからマイクロピペット60を取り外す場合には、マイクロピペット60の取り外しが容易になる。
【0077】
なお、第1実施形態に係る反応容器1について説明した種々の変形は、第2実施形態に係る反応容器2においても同様に適用できる。また、第2実施形態に係る反応容器2は、図2〜図4を用いて説明した反応方法においても同様に用いることができる。
【0078】
3.第3実施形態に係る反応容器
図7(A)は、第7実施形態に係る反応容器3の断面構造を模式的に表した図、図7(B)は、第3実施形態に係る反応容器3の図7(A)のA−A線における断面を模式的に表した図である。
【0079】
第3実施形態に係る反応容器3は、第1実施形態に係る反応容器1と比べて、嵌合部の構成のみが異なり、他の構成は反応容器1と同様である。したがって、以下では、特に反応容器3の嵌合部の構成について説明する。
【0080】
図7(A)及び図7(B)に示すように、容器本体部10には、反応容器1内であるキャビティー12内において、被検液をキャビティー12内に滴下する滴下手段と嵌合する嵌合部14bが設けられている。
【0081】
嵌合部14bは、滴下手段と嵌合するように構成されている。図7(A)及び図7(B)に示す例では、嵌合部14bは、狭窄部16に加えて、環状溝18を含んで構成されている。
【0082】
環状溝18は、開口部11側からキャビティー12を見た場合の奥行き方向と垂直な成分をもつ方向となる溝が、環状の溝となるように容器本体部10の内壁面に構成されている。図7(A)及び図7(B)に示す例では、環状溝18は、開口部11に近い側では深く、開口部11から遠くなるほど浅くなる溝として構成されている。
【0083】
図8(A)〜図8(C)は、第3実施形態に係る反応容器3と滴下手段とが嵌合する様子を説明するための図である。
【0084】
図8(A)〜図8(C)に示す例では、滴下手段としてマイクロピペット60のチップ50bを含んだ構成が用いられている。チップ50bは、マイクロピペット60の先端に取り付けられて用いられる用具である。チップ50bは、中空型の筒形状部分を有し、筒形状部分の内部に被検液などの液体を保持することができる。また、チップ50bには、チップ50bを開口部11からチャンバー12内へ挿入した際に、環状溝18と嵌合する鍔状部59が設けられている。鍔状部59は、チップ50bの先端から遠くなるほどチップ50bの幅が広くなるように、チップ50bの外側面に設けられている。
【0085】
次に、チップ50bを嵌合部14bに嵌合させる様子(嵌合工程に対応する)を説明する。図8(A)に示すように、マイクロピペット60にチップ50bを取り付ける。次に、チップ50bをマイクロピペット60に取り付けたまま容器本体部10の開口部11からチャンバー12内へ挿入し、図8(B)に示すように、チップ50bを嵌合部14に嵌合させる。図8(B)に示す例では、チップ50bの先端部分を狭窄部16に、チップ50bの鍔状部59を環状溝18に、それぞれ嵌合させている。
【0086】
このように、嵌合部として環状溝を含んだ構成とすることにより、鍔状部と環状溝とが引っ掛かかり、チップ(滴下手段)と反応容器との嵌合がより確実になる。これにより、チップ(滴下手段)と反応容器とが外れてしまうことを抑制できる。また、被検液をキャビティー内に確実に滴下できる。
【0087】
また、滴下手段としてマイクロピペット60のチップ50bを含んだ構成が用いられている場合において、図8(C)に示すように、チップ50bを嵌合部14bに嵌合させたまま、チップ50bからマイクロピペット60を取り外す場合には、マイクロピペット60の取り外しが容易になる。
【0088】
なお、第1実施形態に係る反応容器1について説明した種々の変形は、第3実施形態に係る反応容器3においても同様に適用できる。また、第3実施形態に係る反応容器3は、図2〜図4を用いて説明した反応方法においても同様に用いることができる。
【0089】
4.その他の変形例
上述した反応容器1、反応容器1a、反応容器1b、反応容器2及び反応容器3において、滴下手段を嵌合部に嵌合させた場合に、滴下手段の先端のキャビティー12内への突出が小さいことが好ましい。これにより、例えば、昇降型のサーマルサイクラーを用いてキャビティー12内の反応液80を移動させる場合に、キャビティー12内へ突出した滴下手段により反応液80が捕捉されることを抑制することができる。
【0090】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0091】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0092】
1,1a,1b,2,3 反応容器、10 容器本体部、11 開口部、12 キャビティー、14,14a,14b 嵌合部、16 狭窄部、17 カギ溝、18 環状溝、20 蓋、30 オイル、40 試薬、50,50a,50b チップ、52 シリンダー、54 プランジャー、56 シリンジ、58 凸部、59 鍔状部、60 マイクロピペット、70 被検液、80 反応液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子検査に用いる反応容器であって、
前記反応容器内において、被検液を前記反応容器内に滴下する滴下手段と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に嵌合した前記滴下手段を前記反応容器内に封止する蓋と、
を含む、反応容器。
【請求項2】
請求項1に記載の反応容器において、
前記滴下手段は、マイクロピペットのチップを含んで構成されている、反応容器。
【請求項3】
請求項1に記載の反応容器において、
前記滴下手段は、プランジャーを備えたシリンジを含んで構成されている、反応容器。
【請求項4】
請求項3に記載の反応容器において、
前記プランジャーと前記蓋とが一体として構成されている、反応容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の反応容器において、
前記反応容器内にオイルが充填されている、反応容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の反応容器において、
前記反応容器内に、プライマー及び蛍光プローブの少なくとも一方が塗布されている、反応容器。
【請求項7】
被検液を反応容器内に滴下する滴下手段を前記反応容器と嵌合させる嵌合工程と、
前記嵌合工程で前記反応容器と嵌合された前記滴下手段から前記反応容器内に前記被検液を滴下する滴下工程と、
前記嵌合工程で前記反応容器と嵌合された前記滴下手段を前記反応容器内に封止する封止工程と、
を含む、反応方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−182728(P2011−182728A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52833(P2010−52833)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】