説明

反応性の1成分系路面表示

本発明は、路面表示用の1成分系貯蔵安定性調製物を包含する。本願発明は特に、カプセル化されたラジカル形成剤を含有する路面表示用調製物を包含し、当該ラジカル形成剤は、路面標示の貯蔵安定性に影響を与えず、かつ開始剤を放出するための塗布の際には、容易に破壊される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面標示用の貯蔵安定性調製物を包含する。本発明は特に、カプセル化されたラジカル開始剤を含有し、かつ路面標示の貯蔵安定性に影響を与えず、かつ適用において開始剤の放出が容易に開始できる路面表示用の調製物を含む。
【0002】
一成分の反応系は、多様な分野で適用することができる。このような系が特に重要となるのは、封止剤と接着剤の分野である。さらには意外にも医療分野、例えば歯科分野、被覆(例えば塗料)で、又は反応樹脂(路面標示)で、又は工業用床面で、硬化性の一成分系は、潜在的に適用できる。
【0003】
一成分系を用意するためには、複数の技術的な解決策がある。硬化メカニズムは好ましくは、後に環境から拡散する成分(例えば湿分若しくは酸素)によって開始することができる。湿分硬化性の系はたいてい、イソシアネート又はシリルがベースであるが、全ての適用に適しているわけではない。例えば、非常に厚い層又は湿潤領域での適用の場合、湿分硬化性の系は、ほとんど適していない。さらにこのような系は、非常にゆっくりとしか硬化せず、しばしば一週間を越えてやっと、完全に硬化する。これに対して例えば路面標示には、迅速な硬化速度が必要となる。
【0004】
一成分含有貯蔵安定性1成分被覆系(以下では短縮して、1成分系という)を提供するための第二の技術的な解決策は、反応成分(架橋剤、触媒、促進剤、又は開始剤)のカプセル化である。
【0005】
このような迅速な硬化メカニズムは、反応樹脂にとって特に重要な役割を果たす。反応樹脂はたいてい、ラジカル反応メカニズムによって硬化する。ここでこの開始剤系は、たいていの場合ラジカル連鎖開始剤、及び/又は開始剤(たいていは過酸化物又はレドックス系から成るもの)、及び促進剤(たいていはアミン)から成る。系の2つの成分は、それ自体カプセル化することができる。しかしながら従来技術における問題は、カプセルが壊れ、溶解し、又は別の方式で破壊される、放出メカニズムである。
【0006】
従来技術
有機若しくは無機の多孔質母材を含有する、作用物質又は反応成分の放出のための系(前記母材から、作用物質がゆっくりと放出される)は、以前から公知である。このような系の欠点は、作用物質の放出が、比較的長い期間をかけなければ増大しないことであるが、しかしながら放出の開始を何らかの形で制御することは、不可能である。
【0007】
多孔質母材の代替としては、コア−シェル粒子を使用することもでき、ここで作用物質はコア内に含有されており、シェルはこの作用物質に対して充分に透過性であり、これにより比較的長い期間にわたって放出を制御することが保証される。その一例が、吸着で製造された過酸化物含有粒子であり、WO 00 15694に記載されている。吸着のための代替的な材料が、WO 94 21960に記載されている。しかしながらこのような粒子は、同様に、1成分系の非常に限定された貯蔵安定性にしかつながらない。
【0008】
これとは逆にカプセル化された系では、放出の時点が制御できる。これはたいていコア−シェル粒子であり、そのシェルは作用物質に対して不透性であり、作用物質を放出するために開放されなければならない。一連の放出メカニズムは、公知である。これらのメカニズムは外部からのエネルギー投入、又は化学的な組成パラメータ(例えば湿分含量又はpH値)の変更に基づく。しかしながら、水又は溶剤の導入による放出には、このような手法は非常にゆっくりと働くか、又は添加によって行わなければならないという欠点がある。しかしながら後者の場合には、2成分系の特徴と欠点が満たされることになってしまうだろう。前者では、適用のための放出が、例えば路面標示としてはゆっくり過ぎる。
【0009】
その一方で、開口メカニズムが圧力に、及び/又は機械的なエネルギー投入(例えば剪断)に基づく系が、有用だと実証されている。このために、反応成分(開始剤)をカプセル化するための多様な被覆が記載されている。これらの系は、層が厚い有機被覆に基づく。従来技術のこのような系の欠点はたいてい、ケースの剪断安定性である。よってこのようなコア−シェル粒子はたいてい、1成分系での作業性が悪い。と言うのも、この際に生じる剪断エネルギーが、完全混合の際には、比較的不安定なケースにとって高すぎるからである。直径が500μm未満の粒子を製造することにより、この効果はたいてい打ち消される。しかしながら小さな粒子の欠点は、比較的僅かな充填材料(例えば過酸化物分散液)に対して、比較的多くのシェル材料が必要となること、及び/又は明らかに粒子の数が増大することである。しかしながら粒子の残りは、適用された調製物中に残り、そこでは不利な効果(例えば濁り、相分離、接着性の喪失、軟化、及び/又は低いショア硬度、又は凝集)につながる。このような1成分系の目的はつまり、シェル材料の割合ができるだけ少ないことであろう。さらに、小さな粒子の開口は、大きなものよりも難しい。このことは、反応成分の不完全な提供につながることがあり、場合によってはさらに高い調製物含分が必要になることもある。
【0010】
反応成分、及び/又は反応成分を含有する溶液若しくは分散液をカプセル化するためのこのような有機シェル材料の例は、特に、天然で得られるポリマー、例えばゼラチン、カラゲーン、アラビアゴム、又はキサンタン、及び/又はこれらをベースとする化学変性された材料、例えばメチルセルロース、若しくはゼラチン−ポリスルフェートである。大きさが最大で500μmのコア−シェル粒子を合成するためのこのような材料による一覧とカプセル化の例は、GB 1,117,178、WO 98 2865、US 4,808,639、DE 27 10 548、及びDE 25 36 319に記載されている。異なる材料の組み合わせ、例えばゼラチンとアラビアゴムも記載されている(McFarland et al. , Polymer Preprints, 2004, 45(1) 1p以降、Bounds et al. , Polymer Preprints, 2008, 49(1) 1p以降、参照)。
【0011】
特殊性を有するのが、生体認容性のカプセル材料、例えば歯科適用のものである。このための例は、ポリエチルメタクリレート製のシェルである(Fuchigami et al., Dental Material Journal, 2008, 27(1), p.35-48)。しかしながら当業者には、このようなコア−シェル粒子は開放するのが困難であり、かつこのような非常に僅かな適用面積及び/又は適用空間に限られた適用は、著しく小さくならざるを得ないことが、容易にわかる。
【0012】
このための代替手段の1つが、カプセル化用の合成樹脂、例えばポリエチレン−無水マレイン酸、エポキシ樹脂、又はポリビニルアルコール−レゾルシン樹脂であり、これらは上記文献に見られる。
【0013】
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(US 5,084,494)、及びホルムアルデヒドベースの樹脂(EP 0 785 243)が、特に熱心に調査されてきた。しかしながらこれらの材料とともに記載されているのは、総直径が最大200μm、又は最大100μmのカプセルのみである。例えばWO 03 082734のように、C4〜C30カルボン酸の金属石鹸で取り囲まれた過酸化物溶液も適用できる。しかしながら当業者には、このようなカプセルが非常に不安定であることが、容易にわかり、このためこれらのカプセルは、500μmという最大直径でのみ記載されている。
【0014】
NL 6414477には、ポリエステル又はポリアミドへと重縮合することによるシェルの合成が記載されている。しかしながらこのようなカプセルは、コアに内包されている材料に透過性であるか、又は再度開放するのが、非常に困難である。さらに、カプセル化すべき反応物質の存在下における縮合重合のカプセル化メカニズムは、コストが高く、かつたいていは不完全な方法である。
【0015】
WO 94 21960には、路面表示用の、ポリエステルベースの1成分系が記載されている。しかしながらこれはむしろ、適用の間に樹脂シロップにビーズを添加する2成分系であり、このビーズが表面で硬化触媒作用を担うのである。ここで当業者には、1成分系が本来的な意味合いでは貯蔵安定性でないことが、容易にわかる。このビーズは有機酸(ナフタレンスルホン酸又はポリカルボン酸)のナトリウム塩から構成されているか、又は石英から成る。US 4,917,816には、大きさが約10μmのこのような粒子が、別の適用について記載されている。
【0016】
本発明の課題
本発明の課題は、新規の1成分被覆系(以降、短縮して1成分系と呼ぶ)、特に様々な下地への路面標示に適したものであって、貯蔵安定性が高く、かつ従来技術の1成分系の欠点を少なくとも1つ有さない、又は前記欠点が少なくとも1つ低減されているものを提供することであった。
【0017】
特別な課題は、可能な限り単純なメカニズムによって活性化可能な1成分系を提供することであった。
【0018】
さらなる課題は、コア−シェル粒子を含有する1成分系であって、調製物中で従来技術に比べて比較的僅かなシェル材料しか必要とならず、かつコア中に含まれる1成分系を硬化させるための反応成分を、非常に短時間でほぼ完全に放出して、コア−シェル粒子を活性化可能なものを提供することであった。
【0019】
さらなる別の課題は、被覆として適用可能な1成分系を提供することであり、当該系は幅広く使用でき、柔軟に調製でき、また比較的長い間、貯蔵安定性であるべきである。
【0020】
明示されていない更なる課題は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び実施例の全体の脈絡から明らかである。
【0021】
課題の解決
上記課題は、コア−シェル粒子を含有する新規な1成分系の提供によって解決される。この1成分系はとりわけ、(メタ)アクリレート含有調製物である。
【0022】
ここで(メタ)アクリレートという表現は、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等も、アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート等も、この両方からなる混合物をも意味する。
【0023】
コア−シェル粒子は、コア中に反応成分を含有する。この反応成分は、純物質、溶液、又は分散液として存在し得る。これは好ましくは、有機溶剤、油、又は可塑剤中に入れた反応成分の溶液又は分散液である。このコア−シェル粒子のシェルはさらに、無機材料、好ましくはケイ酸塩から、特に好ましくはケイ酸ナトリウム、つまり水ガラスから成る。
【0024】
このコア−シェル粒子はさらに、粒径が少なくとも100μm、好ましくは少なくとも200μm、特別な実施態様では少なくとも500μmであることを特徴とする。最大粒径は3mm、好ましくは1.5mm、特に好ましくは800μmである。意外なことに、従来技術に比して大きいこのような粒子は、それ自体で特に貯蔵安定性が高い一方で、また迅速かつほぼ完全に開放できることが判明した。シェルは、充填されたコア−シェル粒子の40〜75質量%、好ましくは60〜70質量%を占める。
【0025】
本明細書で粒径とは、本来の平均一次粒径であると理解される。団塊(Konglomerate)の形成が排除されているので、この平均一次粒径が、実際の粒径に相当する。この粒径はさらに、ほぼ球形の粒子の直径に相当する。球形ではない粒子の場合、平均直径は、最短直径と最長直径との平均値として算出される。この関連で直径とは、粒子の端にある点から、もう一方の点への距離と理解される。さらにこの線は、粒子の中点と交差しなければならない。粒径は当業者には例えば、顕微鏡によって、例えば相コントラスト顕微鏡、特に電子顕微鏡(TEM)、又は顕微鏡断層撮影法によって特定され、例えば代表的な粒子数(例えば50個又は>50個の粒子)の測定は、イメージング評価法によって測定できる。
【0026】
コア−シェル粒子は、理想的な場合にはほぼ球形であるか、又は同じ意味であるが球状である。しかしながらこの粒子は、ロッド状、ドロップ状、ディスク状、又はコップ状であってもよい。粒子の表面は通常丸いが、しかしながら癒着部があり得る。球形に対する形状類似の基準としては、公知の方法で縦横比の記述が役立つ。ここで現れる最大縦横比は、最大で50%、平均縦横比から逸脱する。
【0027】
本発明は特に、縦横比が最大3、好ましくは最大2、特に好ましくは最大1.5のコア−シェル粒子の製造に適している。一次粒子の最大縦横比とは、三次元(長さ、幅、及び高さ)のうち2つが形成可能な最大の相対比である。ここではそれぞれ、最大寸法と、残り2つのうちの最少の寸法との比が得られる。
【0028】
コア−シェル粒子は、最大10個の一次粒子から成る二次粒子の形でも個別化されて、まとまっていることがある。ここでこの二次粒子は、本発明の各一次粒子に対応して、大きさが最大で3mm、好ましくは1.5mm、特に好ましくは800μmである。
【0029】
コア−シェル粒子のコア中に含まれている反応成分は、被覆系を硬化させるための化合物である。これは好ましくは、開始剤、触媒、又は促進剤であり、特に好ましくはラジカル重合用開始剤であり、好ましくは有機過酸化物である。
【0030】
コア−シェル粒子を含有する新規な1成分系の利点は、貯蔵安定性が高いことである。本発明によれば1成分系とは、調製の後に特定の期間貯蔵可能であり、加えてさらなる調製無しで、又はさらなる成分を添加せずに適用でき、かつ硬化可能な調製物であると理解される。このためには、系の活性化が必要である。本発明では、系の適用の間に、反応成分が適切に放出されることが重要である。本発明による1成分系の利点はまず、貯蔵安定性が高いことである。本発明による1成分系は、少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、貯蔵安定性であり、その後、更なる成分を添加せずに、直ちに使用できる。
【0031】
本発明による系のさらなる利点は、コア−シェル粒子からの反応成分の放出が、従来技術に比して非常に迅速に、かつ被覆としての適用の際にほぼ完全に行えることである。反応成分の放出は、圧力又は他の形態の機械的エネルギーの投入によってシェルが破壊されることにより起こる。ここで反応成分は2分以内、特に好ましくは1分以内に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%が放出される。シェルの破壊時点から路面標示の硬化が起こり、再通行可能になるまでの時間は、12分以内、好ましくは8分以内である。迅速に硬化する路面標示の特別な実施態様では、2分以内、好ましくは1分以内に再通行可能になる。この時間には、シェルが破壊された後の塗布工程と、任意で行われる方法工程(例えばガラスビーズの埋め込み)が含まれている。この関連で本発明の特別な態様としては、コア−シェル粒子は、従来技術と比べて明らかに大きいことが有利であると実証されている。この大きさは、適用の間のシェルのより完全な、そしてより迅速な崩壊に作用する一方で、また同時に、シェルの厚さが比較的厚いことによって、改善された貯蔵安定性にも、また拡散に対してシェルによっても、また温度変化若しくは比較的僅かな機械的エネルギーの投入(例えば調製の際の剪断エネルギー、輸送、又は再分散の可能性、及び/又は撹拌)による事前の粒子崩壊によっても、条件付けられる。
【0032】
機械的なエネルギー投入に基づくシェルに対する崩壊メカニズムは、拡散、化学反応、pH値及び/又は極性の変更、又は照射に基づく開放メカニズムに比べて、貯蔵安定性の点でも、また崩壊の速度及び/又は完全性の点でも好ましく、温度投入に基づくメカニズムに比較して、特に貯蔵安定性の点で好ましい。よって、このようなメカニズムは、機械的なエネルギーの投入下で、特に容易かつ有利に用いることができる。
【0033】
本発明により用いられるコア−シェル粒子の特別な大きさは一方でまた、調製、輸送、及び他の僅かなエネルギー投入の点で安定的な粒子をもたらしながらも、含有するシェル材料の割合は比較的少ない。従来技術による比較的小さな粒子は、シェル強度が非常に低いか、又はもちろん非常に大きな割合、より正確にはほとんどの割合が、シェル材料から成る。本発明により使用されるコア−シェル粒子は、最大75質量%、好ましくは最大70質量%が、シェル材料から成る。従来技術に比して有利な、シェル厚と、これに結びついた貯蔵安定性との組み合わせ、及び比較的高い作用物質含分により、適用後には被覆中に比較的僅かなシェル材料しか見られない。残存シェル材料は、適用に応じて不利な効果、例えば接着性の低下、凝集性の現象、又は濁りをそれ自体でもたらす。
【0034】
コア−シェル粒子は、粒子の全質量に対して、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、特に好ましくは少なくとも30質量%、反応成分を含有する。
【0035】
この有利な粒子構造はまた、被覆系が、比較的少ない、より正確には最大15質量%、好ましくは最大10質量%、特に好ましくは最大5質量%のコア−シェル粒子を含有すればよいという作用をもたらす。通常適用される硬化速度で充分な硬化を保証するためには、コア−シェル粒子を少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも2質量%使用する必要があることが実証されている。
【0036】
前述のように、カプセル化された反応成分は、被覆調製物の硬化のために必要な物質である。これは例えば、シリルベース又はウレタンベースの湿分架橋性の系のための触媒水溶液であり得る。シリル系の硬化速度を制御するための触媒の例は、三フッ化ホウ素錯体、また鉄カルボキシレート、チタンカルボキシレート、又はスズカルボキシレートである。
【0037】
ラジカル硬化性の系、例えば(メタ)アクリレートベースの樹脂には、ラジカル源が必要となる。これは例えば、UV硬化剤、例えばベンゾフェノンであり、これは放出後に自然光、又は適切に用いられる供給源からの光線にさらされる。
【0038】
反応成分とは、熱で活性化可能な重合開始剤でもあり得る。重合開始剤としてはとりわけ、過酸化物及びアゾ化合物が用いられる。場合により、様々な開始剤の混合物を使用することが有利であり得る。好適には、アゾ化合物、例えばアゾビスイソ酪酸ニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(WAKO(登録商標)V40)、2(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル(WAKO(登録商標)V30)、又はペルエステル、例えばt−ブチルペルオクトエート、ジ(t−ブチル)ペルオキシド(DTBP)、ジ(t−アミル)ペルオキシド(DTAP)、t−ブチルペルオキシ(2−エチルヘキシル)カ−ボネート(TBPEHC)、及び高温分解性の他の過酸化物を、ラジカル開始剤として使用する。適切な開始剤のさらなる例は、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(モノクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジ(ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、p−ジ(エチルベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、又はアゾビス(2,4−ジメチル)−バレロニトリルである。例えば路面表示に適用するための反応樹脂は、特に好ましくはジラウロイルペルオキシド、又はジベンゾイルペルオキシドである。
【0039】
開始剤系はまた、一つの成分がカプセル化されて存在し、かつもう一つの成分がこれとは別個に同様カプセル化されているレドックス開始剤系であるか、又は好ましくは被覆系中に溶解されて存在するレドックス開始剤系であり得る。これらの系は例えば、ヒドロペルオキシド(例えばクモールヒドロペルオキシド若しくはケトンペルオキシド)、及び活性化剤(例えば酸性のリン酸バナジウム)であり得る。
【0040】
反応樹脂用レドックス開始剤系(例えば路面標示に使用されるもの)の特別な実施態様は、過酸化物(例えばジラウロイルペルオキシド若しくはジベンゾイルペルオキシド)と促進剤、特にアミンとの組み合わせである。このアミンとしては例えば、第三級の芳香族置換アミン、例えば特にN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、又はN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが挙げられる。
【0041】
本発明のさらなる利点は、充填されたコア−シェル粒子が、反応樹脂中で自ら緊密になることである。筋状の亀裂、又は微細な亀裂は、浸透するモノマーによって重合により封止され、この局所的な反応は、樹脂中の開始の進行に何ら作用をもたらすことはない。この効果は、カプセル化された反応成分が開始剤であるか、又は促進剤であるかという事実とは関係がない。
【0042】
路面表示における適用のためには特に、過酸化物及び促進剤がベースのレドックス開始剤系が好ましい。極めて特に好ましいのは、過酸化物が溶液又は分散液としてコア−シェル粒子中にカプセル化されている、路面表示用の被覆系である。
【0043】
反応成分は好ましくは、溶剤、油、又は可塑剤中の溶液又は分散液として存在する。溶剤としては、水とはまったく混ざらない、又は非常に混ざりにくいあらゆる有機液体(反応成分に対して反応性ではないもの)が使用できる。これに特に該当するのは、芳香族化合物、例えばトルエン又はキシレン;及び/又は芳香族含有溶剤混合物、例えばナフサ;アセテート、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、又は酢酸ブチル;ケトン、例えばアセトン又はメチルエチルケトン(MEK);又は脂肪族化合物、例えばヘキサン又はヘプタンである。異なる溶剤の混合物もまた、使用できる。可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、又はポリエーテルが考慮される。油は特に、Drakesol 260 AT、Polyoel 130、及びDegaroute W3であり、特に好ましいのは、Dagaroute W3である。油が水を含まないように、油を使用前に乾燥させることができ、例えば乾燥機での熱処理により乾燥できる。例えば水ガラスの硬化は、含まれる油が水不含であれば、より迅速かつ良好に起こる。
【0044】
溶液又は分散液中の反応成分の濃度は、純物質まで選択可能であり、すなわち、さらに限定されるべきではない。
【0045】
例えば路面標示としての適用には、Degaroute W3に入れた過酸化物(例えばジベンゾイルペルオキシド)の分散液は、過酸化物濃度が、10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは40〜60質量%が、特に有利であると実証されている。ここで用いられる過酸化物は、事前にすでに粘稠剤又は水を少量、例えば10質量%含んでいてよい。
【0046】
1成分系中に含まれるモノマーとは、以下の群から選択される化合物である:(メタ)アクリレート、例えば1〜40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は脂環式アルコールのアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート;5〜80個のC原子を有するエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはこれらの混合物のモノ(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシメチル(メタ)アクリレート、1−エトキシブチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート。
【0047】
モノマー混合物の構成要素として適しているのはまた、さらなる官能基を有する別のモノマー、例えばα,β−不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、若しくはイタコン酸;二価のアルコールとの、アクリル酸若しくはメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、若しくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;アクリルアミド又はメタクリルアミド;又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。モノマー混合物のさらなる適切な構成要素は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、又はシリル官能性(メタ)アクリレートである。
【0048】
モノマー混合物は上記(メタ)アクリレートの他に、前記の(メタ)アクリレートとフリーラジカル重合により共重合可能な別の不飽和モノマーも有することができる。これに該当するのはとりわけ、1−アルケン又はスチレンである。前記ポリ(メタ)アクリレートは詳細には、割合や組成、その目的に応じて、所望の技術的機能という観点から選択される。
【0049】
本発明による1成分系のための適用に好ましい路面表示用樹脂は(本発明がこの適用に限定されることはないが)、開始剤とモノマーの他にさらなる成分を含有することができる。詳細には、以下の成分がさらに含まれていてよい。
【0050】
いわゆるMO−PO−系中には、上述のモノマーの他に、ポリマー、好ましくはポリエステル又はポリ(メタ)アクリレートが存在する。これらのプレポリマーは、重合特性、機械的特性、下地への接着性の改善、また樹脂に対する光学的要求を改善するために使用される。ここで樹脂のプレポリマー割合は、15〜50質量%、好ましくは20〜35質量%である。ポリエステルもポリ(メタ)アクリレートも、接着性改善のため、又は架橋反応における共重合のためのさらなる官能基を、例えば二重結合の形で有することができる。
【0051】
上記ポリ(メタ)アクリレートは一般的に、同じモノマー(例えば既に樹脂系中のモノマーのところで列挙したもの)から構成されている。これらは、溶液重合、エマルジョン重合、懸濁重合、バルク重合、又は沈殿重合によって得ることができ、純物質として系に添加される。
【0052】
上記ポリエステルは重縮合又は開環重合によってバルクで得られ、この適用のために公知の構成要素から構成されている。
【0053】
助剤及び添加剤としては、さらに制御剤、架橋剤、安定剤、阻害剤、ワックス、油、及び/又は消泡剤が使用できる。
【0054】
制御剤としては、ラジカル重合から公知のあらゆる化合物が使用できる。好ましくはメルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタンを使用する。
【0055】
さらなる適切な助剤及び添加剤は例えば、パラフィン、又は架橋剤、特に多官能性メタクリレート、例えば1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、又はアリル(メタ)アクリレートである。可塑剤としては好適には、エステル、ポリオール、油、低分子ポリエーテル、又はフタレートを使用する。
【0056】
安定化剤若しくは阻害剤の群からは好適には、置換フェノール、ヒドロキノン誘導体、ホスフィン、及びホスフィットを使用する。
【0057】
消泡剤は好適には、アルコール、炭化水素、パラフィンベースの鉱油、グリコール誘導体、グリコール酸エステルの誘導体、酢酸エステル、及びポリシロキサンの群から選択して使用する。
【0058】
1成分系にはさらに、着色剤、ガラスビーズ、微細充填材、粗大充填材、湿潤剤、分散剤、均展剤、紫外線安定剤、及びレオロジー添加剤が添加できる。
【0059】
路面表示又は平面表示として1成分系を用いる使用領域では、助剤及び添加剤として、好適には着色剤を添加する。特に好適なのは、白、赤、青、緑、及び黄色の無機顔料であり、特に好適なのは二酸化チタンである。
【0060】
ガラスビーズは好適には、交通軌道表示用、及び平面表示用の調製物中で、反射剤として使用する。使用される市販のガラスビーズは、直径が10μm〜2000μmmであり、好適には50〜800μmである。ガラスビーズは、より良好な加工及び接着のために、シラン化することができる。
【0061】
この調製物はさらに、微細充填物と粗大充填物を添加することができる。これらの材料はまた、滑り防止剤としても使用でき、このため特に床面被覆で使用できる。微細充填材は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、石英、石英粉末、沈降ケイ酸、熱分解法ケイ酸、顔料、及びクリストバライトの群から選択して使用する。粗大充填材としては、石英、クリストバライト、コランダム、及びケイ酸アルミニウムを使用する。
【0062】
湿潤剤、分散剤、及び均展剤は好適には、アルコール、炭化水素、グリコール誘導体、グリコール酸エステルの誘導体、酢酸エステルの誘導体、ポリシロキサンの誘導体、ポリエーテル、ポリシロキサン、ポリカルボン酸、飽和及び不飽和のポリカルボン酸アミンアミドの群から選択して使用する。
【0063】
同様に、慣用の紫外線安定剤が使用できる。紫外線安定剤は好適には、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チオキサントネート誘導体、ピペリジノールカルボン酸エステル誘導体、又はケイ皮酸エステル誘導体の群から選択されている。レオロジー添加剤として好適には、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、尿素誘導体、不飽和カルボン酸エステルの塩、酸性のリン酸誘導体のアルキルアンモニウム塩、ケトオキシム、p−トルエンスルホン酸のアミン塩、スルホン酸誘導体のアミン塩、並びにこれらの化合物の水溶液若しくは有機溶液、又はこれらの化合物の混合物を使用する。BET比表面積が100〜800nm2/gの熱分解法ケイ酸又は沈降ケイ酸(任意でシラン化されていてもよい)をベースとするレオロジー添加剤は、特に適していることが判明した。
【0064】
本発明による、コア−シェル粒子を有する反応成分含有1成分系は、樹脂の形で(反応樹脂とも呼ばれる)、車線表示用、又は床面被覆、例えばアスファルト、コンクリート、又は陶器の被覆、また古い被覆又は表示を再加工するために使用できる。樹脂及び調製物の硬化(再度通行可能な状態になるまで)は、反応成分の放出後、12分以内に、好ましくは8分以内に、ラジカル重合によって起こる。反応樹脂のさらなる適用例は、注型体又は成形体、例えば医学用の補綴である。
【0065】
本発明による、カプセル化された反応成分と、(メタ)アクリレートベースのモノマーとを含有する1成分系の大きな利点は、調製物に対する放出度が高いことである。別の成分(例えば路面標示としての適用に挙げられるもの)は総じて、比較的自由に選択できる。よって例えば、2成分被覆系のための公知の処方から始めて、1成分系を被覆すべき下地に最適化することができる。よって古い被覆、コンクリート、アスファルト、陶器、タール、又は他の路面は、それぞれ調整した調製物中にある本発明による系で、マーキングできる。表面が非常に多様な接着特性を有することがあるため、それぞれの下地への系の適切な調整が必要となる。
【0066】
さらに、本発明による1成分被覆系は、カプセル化された反応成分、及び(メタ)アクリレートベースのモノマー系を必ず含有し、適切に調整することによって、全く別の適用及び表面(金属、プラスチック、ガラス、セラミック、有機織布、又は木材)のために使用できる。これにより、適用可能なさらなる範囲が非常に幅広くなり、例えば下塗り、塗料、着色剤、接着剤、封止剤、食料品の被覆、飼料、若しくは医薬品、又は歯科材料若しくは化粧品で適用できる。これらの例示により、どのような形であっても、適用可能な範囲が制限されるべきではない。
【0067】
実施例
過酸化物が充填されたコア−シェル粒子の製造
装置
レオメーター:Haake RheoStress 600
測定系:プレート(溶媒トラップ)/コーン、DC 60/2°
充填試料容器:ナトリウム水ガラス(Natronwasserglas)5.9mL
測定温度:23.0℃
測定:1分当たり500回転で120秒後
周波数発生装置:Black Star 1325及びJupiter 2000
変換器:Heinzinger LNG 16-6(又は類似の装置)
ランプ:Drelloscop 2008
ポンプ:
ピストン膜ポンプ+パルス蒸発器:LEWA EEC 40-13
ギアポンプ:Gather CD 71K-2
ポンプ流量:ノズルで350/500μm
ピストン膜ポンプ+水ガラス用パルス蒸発器:1.5〜5l/h
開始剤−油懸濁液用ギアポンプ:1〜2l/h。
【0068】
ナトリウム水ガラスの前処理
市販のナトリウム水ガラス1.3L(固体含分40質量%、動的粘度110mPas)を、直径が19cmの結晶化シャーレに入れる。撹拌のためには、撹拌子付き(長さ2cm)のマグネチックスターラーを用いる。表面全体が動いており、かつ明らかな撹拌渦を形成するためには、常に激しく撹拌しなければならない。24時間後に、プレート/コーン系のレオメーター(DC 60/2°)で粘度を測定する。場合により、固体含分を45質量%に追加希釈するか、さらに乾燥させる。この際に、動的粘度が、110mPasから310mPasに上昇する。この測定は、レオメーターで行った。
【0069】
開始剤懸濁液の製造
懸濁液製造のために、500mLの試料瓶を取り、これをDegaroute W3で満たす。引き続き、BPO75(ベンゾイルペルオキシド、可塑剤中で75質量%、以下では短縮してBPOと言う)を20質量%、注意深く徐々に加える。木製のヘラで、表面に残っているBPOをならす。追加加工のために、懸濁液を氷浴中で超音波処理する(Ultraturrax)。それぞれ、第一段階では1分、第二段階では10分、最後に第三段階では3分である。
【0070】
方法の指針−過酸化物で充填した粒子の製造
ナトリウム水ガラス、及びBPOとDegaroute W3とから得られる開始剤懸濁液を、適切な受け器に入れる。周波数発生器及び光源を、16kHzの周波数でスイッチオンにする。ナトリウム水ガラス及び懸濁液用のポンプも同時にスイッチを入れ、連続流量を制御する。回収容器としては、600mLのガラスビーカー(内径7.6cm)を用いる。このビーカーは、回収媒体300mL(工業用エタノールと、Tego Carbomer 340 FDとが、100対1.5の比)を含有している。この回収媒体を、マグネチックスターラーと撹拌子で、1分あたり650〜1200回転の撹拌速度で撹拌する。ノズルトップと回収媒体との滴加高度は、16cmである。滴加の開始とともに、撹拌により渦が形成されるまで待つ。2〜3分毎に、溶液が飽和したら、ガラスビーカーを別の新たな回収媒体を有するものと交換する。
【0071】
この粒子含有回収溶液をひとまとめにし、粒子を粒径500μmの篩によってふるい分けする。引き続き、粒子をまず工業用エタノールで、引き続きメチルメタクリレートで洗浄する。各洗浄工程の間にその都度、粒子を空気乾燥させる。洗浄し、乾燥させた粒子には最後に、Aerosil 200を1質量%加える。
【0072】
【表1】

【0073】
直径は顕微鏡により、撮像分析を用いて特定した。
【0074】
貯蔵性の試験
それぞれ蓋付きガラス瓶(20mL)2個に、実施例1〜3から得られるコア−シェル粒子を三分の一満たし、MMAで充填した。各ガラス瓶の内1つを室温で貯蔵し、もう1つは40℃で貯蔵する。1週間、2週間、及び3週間の貯蔵後にそれぞれ、顕著な粘度増加、又はそれどころかMMA固体化が起こっていないかどうかを調べる。さらに、粒子の大きさ、形、及び色について変化していないかどうかを調べる。
【0075】
いずれの実施例においても、三週間の内には、重合又は粘度上昇が起こらない。比較試験では、ヘラで粒子を押しつぶし、どれくらいの時間が経てば調製物が液体では無くなるのかを、室温で観察する。総じて7〜8分後に、試料は液体ではなくなった、つまり硬化した。
【0076】
1成分系反応樹脂の製造
変形安定性、及び接着安定性の測定は、DAfStb-RiLi 01/DIN EN 1542 99、若しくはDIN EN 1436に従って行う。
【0077】
実施例 反応樹脂
表2に記載の標準的な反応樹脂の成分を15分間撹拌して、相互に混合する。
【0078】
引き続き、レオロジー添加剤と分散添加剤とを有するこの組成物を、5分間分散させながら、車線表示用着色剤にする。引き続き、二酸化チタンと炭酸カルシウムを入れて、それぞれさらに10分間、分散させる。最後にコア−シェル粒子を、さらに2分間撹拌して、混入する。
【0079】
比較例V1では、開始剤(BPO)、及びモルタル状の水ガラス(gemoersertes Wasserglas)を、コアシェル粒子の代わりに、別々に添加する。
【0080】
【表2】

【0081】
使用するワックスと均展剤の組成及び種類は当業者に公知であり、進歩性の観点では、実施例に影響を与えない。
【0082】
記載のポリメチルメタクリレートは好ましくは、分子量(Mw、ゲル透過クロマトグラフィーで、PMMA標準で測定)が40,000〜80,000、ガラス転移温度Tgが55〜90℃の懸濁ポリマーであり、ここでこの懸濁ポリマーは、少量の酸基及び/又はヒドロキシ基を有することができる。本願実施例では、Evonik Roehm社のDEGALAN PM 685(分子量約60,000;Tg約64℃)を用いた。ポリマーの選択も、モノマーの選択と同様にそれほど重要ではなく、本発明に制限をもたらすことはない。
【0083】
実施例4及び5から得られる物質は、3ヶ月後でも相変わらず液状であり、貯蔵安定性である。コア−シェル粒子の硬化性も、まったく見られない。これにより、コア−シェル粒子を含有する車線表示物質の貯蔵安定性が実証されている。
【0084】
比較例1から得られる物質は350秒後に、完全に硬化している。
【0085】
さらに、実施例4及び5から得られる物質について、有効性を試験した。このために、それぞれ20gを2分間でモルタル状にし、引き続きできるだけ早くシートに塗布した。この措置を、1週間後と3週間後にそれぞれ繰り返す。その結果については、表3を参照のこと:
【表3】

【0086】
これにより、本発明によるコア−シェル粒子を含有する反応樹脂は、三週間の貯蔵後でも、調整直後のものと同等の硬化速度を有することもわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル粒子を含有する1成分被覆系において、
当該被覆系は(メタ)アクリレートを含有し、
前記コア−シェル粒子が球形であり、かつその粒径が少なくとも100μmであって、最大3mmであり、
前記シェルが無機材料から成り、
前記コアが反応成分を、又は反応成分の溶液若しくは分散液を含有することを特徴とする、前記1成分被覆系。
【請求項2】
前記無機材料が、ケイ酸塩である、好ましくは水ガラスであることを特徴とする、請求項1に記載の1成分被覆系。
【請求項3】
前記反応成分が、被覆系を硬化させるための化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の1成分被覆系。
【請求項4】
前記反応成分が、ラジカル重合の開始剤である、好ましくは有機過酸化物であることを特徴とする、請求項3に記載の1成分被覆系。
【請求項5】
前記シェルが、前記コア−シェル粒子全体の40質量%〜75質量%を、好ましくは60〜70質量%を占めることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の1成分被覆系。
【請求項6】
前記コア−シェル粒子を含有する被覆系が、少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、貯蔵安定性であり、その後、さらなる成分を添加せずに直ちに使用可能であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の1成分被覆系。
【請求項7】
前記シェルが、圧力作用により、又は他形態での機械的エネルギーの作用下で破壊されて、反応成分が放出されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の1成分被覆系。
【請求項8】
圧力作用、又は他形態での機械的エネルギーの作用の後、2分以内、好ましくは1分以内に、前記反応成分の少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%が放出されることを特徴とする、請求項7に記載の1成分被覆系。
【請求項9】
前記被覆系が、最大15質量%、好ましくは最大10質量%、前記コア−シェル粒子から成ることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の1成分被覆系。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の1成分被覆系を、下塗り、塗料、着色剤、接着剤、封止剤として、食料品、飼料、若しくは医薬品を被覆するために、又は歯科材料若しくは化粧品で用いる使用。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の1成分被覆系を、注型材料、床材、医薬用成形体、又は路面標示の製造のために用いる使用。
【請求項12】
コア−シェル粒子を含有する路面標示であって、
前記コアが、少なくとも1種の有機過酸化物を含有し、
前記シェルが、水ガラスから成り、
前記路面標示がさらに、少なくとも1種のアミン、少なくとも1種の(メタ)アクリレート、少なくとも1種の充填材及び/又は着色剤、少なくとも1種のポリマー、好ましくはポリ(メタ)アクリレート、及び任意でさらなる添加剤、例えば接着プライマー、及び/又はガラスビーズを含有する、前記路面標示。

【公表番号】特表2013−509462(P2013−509462A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535705(P2012−535705)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063070
【国際公開番号】WO2011/051034
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】