説明

反応性ベンゾピラン系着色剤

【課題】 アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン等のビニル系モノマーに対する良好な共重合性および優れた蛍光特性を併せ持つ新規なペンゾピラン系着色剤を提供する。
【解決手段】 一般式(1)


[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R3は水素またはメチル基を、nは1以上8以下の整数を、示す]で表される反応性ベンゾピラン系化合物は、ビニル系モノマーに対する良好な共重合性および優れた蛍光特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の反応性ベンゾピラン系化合物および、その中間生成物としてのベンゾピラン系化合物、イミノクマリン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物およびベンゼンジアミン系化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、メタクリル系樹脂に染料等の着色剤を混合して着色されたメタクリル系樹脂を、フィルムとして使用する場合には、フィルムの厚みを薄くするほど、染料の分散性と発色性のために大量の着色剤を添加する必要があるために不経済である。
【0003】
このため、着色剤を大量に添加されたメタクリル系樹脂組成物から押出成形等の方法によりフィルムを成形した場合、押出機のベント詰まり、Tダイでの目やに付着、冷却ロールの着色等の問題を生じ、さらに多量の添加が必要な場合にはフィルム表面の粗面化、フィルム表面への溶出(ブリードアウト)等の問題を生じていた。
【0004】
喩え上記問題点を引き起こすことなく、メタクリル系樹脂組成物に多量の着色剤を添加できたとしても、一般の着色剤ではメタクリル系樹脂との相溶性が悪く、低分子量であるため、押出成形時にその一部が揮発して着色性能が発揮できないという問題を抱えている。蛍光着色剤添加の樹脂製品の多くでは、長時間の使用や屋外での使用、またはランプ類での使用において、紫外線や熱などの影響を受け、蛍光発色性の低下が生ずる、また、長期使用時にメタクリル系樹脂組成物から飛散するため、着色性能が経時的に低下する問題を抱えている。
【0005】
これらの問題点を解決するために、蛍光着色剤の分散を向上させる目的で、特定の着色剤を選定し添加する方法が一般的に知られている。しかし、特定の着色剤を単に添加する方法では、得られたフィルムは、温水浸漬時や屋外暴露時に添加している着色剤が溶出(ブリードアウト)するため、着色性能が低下する等の問題が解決できていなかった。
【0006】
これに対して、メタクリル系樹脂に対し、着色性を示す特定の化合物を反応させる方法(特許文献1〜4)が提案されている。特許文献1には、特定の蛍光染料とメタクリル酸メチルの混合物の重合が記載されているが、共重合体ではなく、溶出(ブリードアウト)する課題を解決できるものではない。これに対して、特許文献2には、ビニルスルホン型反応性染料またはジクロロトリアジン型反応性染料とポリマーとの反応が記載され、特許文献3および4には、反応性基を有するアントラキノン系染料または着色剤の共重合が記載されているが、反応性基を有するベンゾピラン系着色剤は提案されていない。
【0007】
また、特許文献5には、ベンゾピラン系着色剤が記載されているが、反応性基を持ったものは提案されていない。さらに、蛍光持続性を改善する方法として、特許文献6において、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂等に蛍光着色剤を2種以上併用する方法が開示されているが、一般的に蛍光着色剤は融点が高く、ポリカーボネート樹脂のように成形温度が高い樹脂には適しているが、アクリル系樹脂や非晶性ポリオレフィン樹脂等のように成形温度の低い樹脂には、樹脂中で着色剤が十分に分散せず、蛍光持続性を維持できないばかりか、ブリードアウトの発生については、問題を抱えたままである。
【特許文献1】特開平8−48899号
【特許文献2】特開平9−20873号
【特許文献3】特開平9−272814号
【特許文献4】特表2004−506064号
【特許文献5】特表平10−510562号
【特許文献6】特開2002−30220号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン等のビニル系モノマーに対して良好な共重合性を有すると共に、優れた蛍光特性を有する新規な反応性ベンゾピラン系化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、構造内に(メタ)アクリル酸基を有する反応性ベンゾピラン系化合物がビニル系モノマーと良好な共重合性を有すると共に、優れた蛍光特性を有することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R3は水素またはメチル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表される反応性ベンゾピラン系化合物(請求項1)、
アルキル基の炭素数であるnが1である、請求項1記載の反応性ベンゾピラン系化合物(請求項2)、
一般式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンゾピラン系化合物(請求項3)、
一般式(3)
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンゾピラン系化合物(請求項4)、
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項4記載のベンゾピラン系化合物(請求項5)、
一般式(4)
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるイミノクマリン系化合物(請求項6)、
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項6記載のイミノクマリン系化合物(請求項7)、
一般式(5)
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンズイミダゾール系化合物(請求項8)、
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項8記載のベンズイミダゾール系化合物(請求項9)、
一般式(6)
【0021】
【化6】

【0022】
[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンゼンジアミン系化合物(請求項10)、
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項10記載のベンゼンアミン系化合物(請求項11)および
一般式(2)
【0023】
【化7】

【0024】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を示す。]で表されるベンゾピラン系化合物を、
CHR3=CHCOOCl[式中、R3:水素またはメチル基を示す]で表される(メタ)アクリル酸塩化物と反応させることを特徴とする、
一般式(1)
【0025】
【化8】

【0026】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R3は水素またはメチル基を、nは1以上8以下の整数を示す]で表される反応性ベンゾピラン系化合物の製造方法(請求項12)
に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン等のビニル系モノマーに対して良好な共重合性を有すると共に、優れた蛍光特性を有する新規な反応性ベンゾピラン系化合物を得ることができる。また、その中間生成物として、ベンゾピラン系化合物、イミノクマリン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物およびベンゼンジアミン系化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の反応性ペンゾピラン系着色剤は、構造内に(メタ)アクリル酸基を有し、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン等のビニル系モノマーに対する良好な共重合性および優れた蛍光特性を併せ持つ新規なペンゾピラン系着色剤である。
【0029】
本発明の反応性ベンゾピラン系着色剤は、一般式(1)で表される新規化合物である。
【0030】
【化9】

【0031】
[式中、R1、R2:互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基、R3:水素またはメチル基、n:1以上8以下の整数を示す]
【0032】
本発明における一般式(1)で示す反応性着色剤における置換(メタ)アクリル酸アルキルエステルの炭素数であるn数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。反応性着色剤としては、具体的には、例えば、メタクリル酸メチル置換ベンゾピラン、アクリル酸メチル置換ベンゾピラン、メタクリル酸エチル置換ベンゾピラン、アクリル酸エチル置換ベンゾピラン、メタクリル酸プロピル置換ベンゾピラン、アクリル酸プロピル置換ベンゾピラン、メタクリル酸ブチル置換ベンゾピラン、アクリル酸ブチル置換ベンゾピラン、メタクリル酸ヘキシル置換ベンゾピラン、アクリル酸ヘキシル置換ベンゾピラン、メタクリル酸オクチル置換ベンゾピラン、アクリル酸オクチル置換ベンゾピラン、等があげられる。これらのうちでも、コストおよび取り扱い性から、メタクリル酸メチル置換ベンゾピラン、アクリル酸メチル置換ベンゾピランが好ましい。
【0033】
本発明における一般式(1)で示す反応性着色剤におけるR1およびR2は、それぞれ独立した炭素数1以上12以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上8以下のアルキル基であることがより好ましい。R1、R2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基,2−エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのうちでも、工業的観点から、エチル基が好ましい。
【0034】
本発明における一般式(1)で示す反応性ベンゾピラン系化合物は、光学記録材料、合成樹脂、繊維、塗料、紙、オイル、クリーム、有機溶媒等の着色剤として使用することができる。
【0035】
本発明における一般式(1)で表される反応性ベンゾピラン系化合物は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、共重合可能なビニル系モノマー(エチレン系不飽和単量体)等と共重合することにより、着色された共重合体を得ることができ、一般のベンゾピラン系着色剤を添加した時の着色剤の溶出(ブリードアウト)等の課題を解決することができる。
【0036】
メタクリル酸アルキルエステルとしては、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。
【0037】
アクリル酸アルキルエステルは、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。
【0038】
共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタクリル酸、メアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられ、これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0039】
本発明における一般式(1)で示す反応性ベンゾピラン系着色剤の共重合方法も特に限定されず、メタクリル酸エステル系重合体への共重合方法としては、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能であるが、懸濁重合法が特に好ましい。
【0040】
本発明の一般式(1)で表される反応性ベンゾピラン系化合物は、以下に示す合成スキーム1)〜8)に基づいて、製造することができる。
【0041】
1) 3,4−ジアミノフェニルアルカン酸アルキルエステルの合成(step1)
一般式(7)
【0042】
【化10】

【0043】
[式中、nは炭素数が1以上8以下のアルキル基を示す]で表される3,4−ジアミノフェニルアルカン酸に対し、硫酸存在下にて、R4−OH[式中、R4:炭素数が1以上12以下のアルキル基を示す]で表されるアルコールと反応させ、
一般式(8)
【0044】
【化11】

【0045】
[式中、nは炭素数が1以上8以下のアルキル基を、R4:炭素数が1以上12以下のアルキル基を示す]で表される3,4−ジアミノフェニルアルカン酸アルキルエステルを得ることができる。
【0046】
前記3,4−ジアミノフェニルアルカン酸としては、例えば、3,4−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノフェニル酢酸、3,4−ジアミノフェニルプロピオン酸、3,4−ジアミノフェニルブタン酸などがあげられる。3,4−ジアミノ安息香酸は市販品を使用することができる。また、3,4−ジアミノフェニル酢酸、3,4−ジアミノフェニルプロパン酸などは、フェニル酢酸、3−フェニルプロパン酸などを原料物質として公知の方法により合成することができる。
【0047】
前記アルコールとは、炭素数が1以上8以下のアルキル基を有する一級アルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、s−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等があげられる。
【0048】
本スキームにおいては、アルコールを大過剰としたり、硫酸等の脱水作用のある物質の存在下で反応を行うことにより、加水分解を阻害して高い収率でエステルを得ることができる。
【0049】
本スキームの反応温度は、通常、60〜100℃の範囲であり、使用するアルコールの種類により好ましい反応温度は異なるが、好ましくは75〜80℃である。
【0050】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、3〜10時間であり、好ましくは6〜8時間である。
【0051】
2) 3,4−ジアミノベンジルアルコールの合成(step2)
前記一般式(8)で表される3,4−ジアミノフェニルアルカン酸アルキルエステルを還元することにより、
一般式(9)
【0052】
【化12】

【0053】
[式中、nは炭素数が1以上8以下のアルキル基を示す]で表される3,4−ジアミノベンジルアルコールを得ることができる。
【0054】
前記アルカン酸アルキルエステルの還元方法としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム等の金属ヒドリド反応剤による金属ヒドリド還元反応が適用できる。金属ヒドリド反応剤のうちでも、反応性の高さ、副生成物の生成し難さの点から、水素化ホウ素リチウムが好ましい。
【0055】
金属ヒドリド反応剤の使用量は、前記3,4−ジアミノフェニルアルカン酸アルキルエステルに対して1.0〜2.0モル当量が好ましく、1.0〜1.5モル当量がより好ましい。金属ヒドリド反応剤の使用量が2モル当量を超えると、副生成物の生成量が増大する傾向がある。
【0056】
本スキームの反応温度は、通常、30〜90℃の範囲であり、使用する金属ヒドリド反応剤、溶媒の種類により好ましい反応温度は異なるが、好ましくは60〜70℃である。
【0057】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、4〜12時間であり、好ましくは6〜8時間である。
【0058】
本スキームで反応した後、前記一般式(9)で表される生成物は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒を用いて抽出することにより得ることができ、溶媒を留去後、必要に応じてクロマトグラフィーなどの操作により精製単離することができる。
【0059】
3) 4−(シリルオキシアルキル)−1,2−ベンゼンジアミンの合成(step3)
前記一般式(9)で表される3,4−ジアミノベンジルアルコールに、
一般式(10)
R’3Si−Cl
[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を示す]で表されるクロロシランを反応させ、水酸基がR’3Si基で保護された
一般式(6)
【0060】
【化13】

【0061】
[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す]で表される4−(シリルオキシアルキル)−1,2−ベンゼンジアミンを得ることができる。
【0062】
前記一般式(10)で表されるクロロシラン中のシリル基中のR’は、互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を有するものであるが、できるだけ嵩高いものが好ましい。
【0063】
本発明で用いられるクロロシラン中のシリル基R’3Siとしては、例えば、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、トリイソプロピル基(TIPS)、t−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)、トリt−ブチルシリル基、トリフェニルシリル基などがあげられる。これらのうちでも、入手のし易さ、嵩高さの点から、t−ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)が好ましい。
【0064】
本スキームにおけるクロロシランの使用量は、一般式(9)で表される3,4−ジアミノベンジルアルコールに対して1.0〜2.0モル当量が好ましく、1.2〜1.5モル当量がより好ましい。
【0065】
本スキームの反応は、溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては、例えば、塩化メチレン、アセトニトリル、ジメチルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどを挙げられる。さらに、触媒を用いることもでき、触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、パラメチルピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジン等が挙げられる。
【0066】
本スキームの反応温度は、通常、10〜40℃の範囲であり、使用するクロロシラン、溶媒、触媒の種類により好ましい反応温度は異なるが、好ましくは20〜30℃である。
【0067】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜5時間であり、好ましくは2〜3時間である。
【0068】
本スキームで反応した後、前記一般式(6)で表される生成物は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒を用いて抽出することにより得ることができ、溶媒を留去後、必要に応じてクロマトグラフィーなどの操作により精製単離することができる。
【0069】
4) 2−シアノメチル−5−(シリルオキシアルキル)ベンズイミダゾールの合成(step4)
前記一般式(6)で表される4−(シリルオキシアルキル)−1,2−ベンゼンジアミンに、一般式(11)
【0070】
【化14】

【0071】
[式中、R5は炭素数1以上5以下のアルキル基を示す]で表されるジシアノアルキルアセチミダート塩酸塩を反応させ、
一般式(5)
【0072】
【化15】

【0073】
[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、n:1以上8以下の整数を示す]で表される2−シアノメチル−5−(シリルオキシアルキル)ベンズイミダゾールを得ることができる。
【0074】
一般式(11)で表されるジシアノアルキルアセチミダート塩酸塩としては、例えば、ジシアノメチルアセチミダート、ジシアノエチルアセチミダート、ジシアノプロピルアセチミダート等があげられ、市販品を使用することができる。
【0075】
ジシアノアルキルアセチミダート塩酸塩の使用量は、一般式(6)で表される4−(シリルオキシアルキル)−1,2−ベンゼンジアミンに対して、1.0〜3.0モル当量が好ましく、1.5〜2.5モル当量がより好ましい。
【0076】
本スキームの反応温度は、通常、10〜60℃の範囲であり、使用するジシアノアルキルアセチミダート塩酸塩、溶媒の種類により好ましい反応温度は異なるが、20〜30℃が好ましい。
【0077】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜5時間であり、好ましくは2〜3時間である。
【0078】
本スキームで反応した後、前記一般式(5)で表される生成物は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒を用いて抽出することにより得ることができ、必要に応じてクロマトグラフィーなどの操作により精製単離することができる。
【0079】
5) シリルオキシアルキル置換イミノクマリンの合成(step5)
前記一般式(5)で表される2−シアノメチル−5−(シリルオキシアルキル)ベンズイミダゾールに、
一般式(12)
【0080】
【化16】

【0081】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を示す]で表される4−アミノサルチルアルデヒドと反応させ、
一般式(4)
【0082】
【化17】

【0083】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R'は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す]で表されるシリルオキシメチル置換イミノクマリンを得ることができる。
【0084】
本スキームの反応は、例えば、米国特許第3533730号明細書または米国特許第4299959号明細書に記載されているように、溶媒(例えば、アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等)中で、塩基(例えば、ピペリジン、ピロリジン等)の存在下で、行うことができる。
【0085】
一般式(12)で表される4−アミノサルチルアルデヒドとしては、例えば、4−ジメチルアミノサルチルアルデヒド、4−ジエチルアミノサルチルアルデヒド、4−ジプロピルアミノサルチルアルデヒド、4−ジ(n−ブチル)アミノサルチルアルデヒド、4−ジ(t−ブチル)アミノサルチルアルデヒド、4−ジ(n−オクチル)アミノサルチルアルデヒド等があげられ、市販品を使用できる。
【0086】
4−アミノサルチルアルデヒドの使用量は、一般式(5)で表される2−シアノメチル−5−(シリルオキシアルキル)ベンズイミダゾールに対して、1.0〜1.5モル当量が好ましく、1.05〜1.1モル当量がより好ましい。
【0087】
本スキームの反応温度は、通常、20〜100℃の範囲であり、使用する4−アミノサルチルアルデヒド、溶媒、塩基の種類により好ましい反応温度は異なるが、65〜75℃が好ましい。
【0088】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、3〜10時間であり、好ましくは6〜7時間である。
【0089】
6) アルキルジフェニルシリルオキシメチル置換ベンゾピランの合成(step6)
前記一般式(4)で表されるシリルオキシメチル置換イミノクマリンに、マロノニトリル等を反応させ、
一般式(3)
【0090】
【化18】

【0091】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R'は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基、nは1以上8以下の整数を、示す]で表されるシリルオキシメチル置換ベンゾピランを得ることができる。
【0092】
本スキームの反応は、例えば、米国特許第3880869号明細書に記載されているように、溶媒(例えば、アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等)中にて、マロノニトリル等と縮合させることにより行うことができる。
【0093】
マロノニトリルは、市販品を用いることができる。マロノニトリルの使用量は、一般式(4)で表されるシリルオキシメチル置換イミノクマリンに対して、1.0〜2.0モル当量が好ましく、1.1〜1.5モル当量がより好ましい。
【0094】
本スキームの反応温度は、通常、60〜100℃の範囲であり、使用する溶媒の種類により好ましい反応温度は異なるが、75〜80℃が好ましい。
【0095】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、3〜10時間であり、好ましくは4〜5時間である。
【0096】
本スキームで反応した後、前記一般式(3)で表される生成物は、溶媒を留去後、クロマトグラフィーなどの操作により精製単離することができる。
【0097】
7) ヒドロキシアルキル置換ベンゾピランの合成(step7)
前記一般式(3)で表されるシリル化オキシアルキル置換ベンゾピランを、溶媒中にて酸性条件下で撹拌することにより、R’3Si基を脱保護した一般式(2)
【0098】
【化19】

【0099】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、nは1以上8以下の整数を示す]で表されるヒドロキシアルキル置換ベンゾピランを得ることができる。
【0100】
本スキームの反応温度は、通常、10〜40℃の範囲であり、使用する溶媒の種類により好ましい反応温度は異なるが、好ましくは20〜25℃である。
【0101】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、3〜10時間であり、好ましくは6〜7時間である。
【0102】
本スキームで反応した後、前記一般式(2)で表される生成物は、塩化メチレン、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒を用いて抽出することにより得ることができ、必要に応じてクロマトグラフィーなどの操作により精製単離することができる。
【0103】
8)(メタ)アクリル酸アルキル置換ベンゾピランの合成(step8)
前記一般式(2)で表されるヒドロキシアルキル置換ベンゾピランに、CHR3=CHCOOCl[式中、R3は水素またはメチル基を示す]で表される(メタ)アクリル酸塩化物を反応させ、
一般式(1)
【0104】
【化20】

【0105】
[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R3は水素またはメチル基を、nは1以上8以下の整数を、示す]で表される(メタ)アクリル酸アルキル置換ベンゾピランである反応性ベンゾピラン系着色剤を得ることができる。
【0106】
(メタ)アクリル酸塩化物は、市販品を使用することができる。(メタ)アクリル酸塩化物の使用量は、一般式(2)で表されるヒドロキシアルキル置換ベンゾピランに対して、1.0〜2.0モル当量が好ましく、1.5〜1.8モル当量がより好ましい。
【0107】
本スキームの反応は、溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては、例えば、塩化メチレン、アセトニトリル、ジメチルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどを挙げられる。さらに、触媒を用いることもでき、触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、パラメチルピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジン等が挙げられる。
【0108】
本スキームの反応温度は、通常、0〜30℃の範囲であり、使用する(メタ)アクリル酸塩化物、溶媒、触媒の種類により好ましい反応温度は異なるが、好ましくは10〜20℃である。
【0109】
本スキームの反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜6時間であり、好ましくは3〜4時間である。
【0110】
本スキームで反応した後、前記一般式(1)で表される生成物は、溶媒を留去後、クロマトグラフィーなどの操作により精製単離することができる。
【0111】
本発明における一般式(2)または一般式(3)で表されるベンゾピラン系化合物、一般式(4)で表されるイミノクマリン系化合物、一般式(5)で表されるベンズイミダゾール系化合物、一般式(6)で表されるベンゼンジアミン系化合物は、本発明における一般式(1)で表される反応性ベンゾピラン系着色剤を合成するための中間体である。
【0112】
本発明における一般式(2)または一般式(3)で表されるベンゾピラン系化合物、一般式(4)で表されるイミノクマリン系化合物、一般式(5)で表されるベンズイミダゾール系化合物、一般式(6)で表されるベンゼンジアミン系化合物は、染料、顔料、医薬品、化粧品、香料等の新規化合物を合成するための中間体として使用することができる。
【実施例】
【0113】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0114】
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は、次のとおりである。
【0115】
(重合転化率の評価)
得られたメタクリル酸エステル系重合体スラリーを、熱風乾燥機内にて120℃で1時間乾燥して固形成分量を求め、100×固形成分量/仕込み単量体(%)により重合転化率(%)を算出した。
【0116】
(窒素含有量の測定)
得られたメタクリル酸エステル系重合体ビーズを、TN(微量全窒素)分析装置(三菱化学製、TN−110)にてTN分析を行い、樹脂中の窒素含有量を測定した。得られた測定値を用いて染料の含有量を算出した。
【0117】
また、製造例、実施例および比較例中の「部」は重量部、「%」は重量%を表す。また、略号はそれぞれ下記の物質を表す。
BA :アクリル酸ブチル
MMA :メタクリル酸メチル
反応性ベンゾピラン:メタクリル酸メチル置換ベンゾピラン
LP :ラウロイルパーオキサイド
tDM :ターシャリドデシルメルカプタン
AcOEt :酢酸エチル
MeOH :メタノール
CH2Cl2 :二塩化メタン
【0118】
(製造例1)反応性ベンゾピラン系化合物の製造
1)3,4−ジアミノ安息香酸エチル1' の合成(step1)
【0119】
【化21】

【0120】
3,4−ジアミノ安息香酸1(8.0g,52.6mmol)を エタノール(150ml)中に懸濁させ、硫酸(15.5g)を加えた。そして、攪拌しながら混合物を80℃にて6時間加熱還流した。エタノールを除去後、残渣を水に溶解させ、炭酸ナトリウムで塩基性にした。生成した沈殿をろ過し、水とアセトン/ヘキサン(1/3)で洗浄すると、 安息香酸エチル1’が得られた(8.05g,収率85%)。
【0121】
2)3,4−ジアミノベンジルアルコール2の合成(step2)
【0122】
【化22】

【0123】
窒素雰囲気下、安息香酸エチル1’(1.80g,10.0mmol)の無水テトラヒドロフラン(20ml)溶液中に水素化ホウ素リチウム(0.29g,13.0mmol)を室温で攪拌しながら加えた。混合物を60℃にて約6時間加熱還流した。放冷後、氷水を徐々に加えて過剰の水素化剤を分解させた。生じた沈殿をろ過後、ろ液を酢酸エチルで数回抽出して、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/MeOH=5/1)で精製すると、ベンジルアルコール2(0.54g,収率39%)が未反応原料1’(0.85g,回収率47%)と共に得られた。
【0124】
3)4−(t−ブチルジフェニルシリルオキシメチル)−1,2−ベンゼンジアミン3の合成(step3)
【0125】
【化23】

【0126】
窒素雰囲気下、無水塩化メチレン(12ml)中のベンジルアルコール2(0.33g,2.4mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.36g,3.6mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(30mg,0.24mmol)、そして、t−ブチルジフェニルクロロシラン(0.79g,2.9mmol)を攪拌しながら室温で加えた。混合物をこの温度で3時間攪拌した。反応後は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて洗浄し、有機層を分離してさらに飽和食塩水で洗浄した。その後硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/AcOEt=1/1)で精製すると、ベンゼンジアミン3が得られた(0.75g,収率83%)。
【0127】
4)2−シアノメチル−5−(t−ブチルジフェニルシリルオキシメチル)ベンズイミダゾール4の合成(step4)
【0128】
【化24】

【0129】
メタノール(22ml)中のベンゼンジアミン3(33.3g,8.86mmol)の溶液にメチルシアノアセチミダート塩酸塩(2.42g,17.82mmol)を室温で加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。反応後は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、生じた沈殿をろ過し、ろ液を酢酸エチルで数回抽出した。有機層を分離してさらに飽和食塩水で洗浄した。その後硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/AcOEt=1/1)で精製すると、ベンズイミダゾール4が得られた(3.21g,収率85%)。
【0130】
5)t−ブチルジフェニルシリルオキシメチル置換イミノクマリン5の合成(step5)
【0131】
【化25】

【0132】
アセトニトリル(5ml)中のベンズイミダゾール4(0.50g,1.18mmol)の溶液にピペリジン(10mg、0.12mmol)、酢酸(7mg,0.12mmol)、そして4−ジエチルアミノサリチルアルデヒド(0.22g,1.24mmol)を室温で加えた。その後、混合物を70℃にて7時間加熱環流した。放冷後、水を加え、生成した沈殿をろ過し、水とアセトニトリルで洗浄すると、イミノクマリン5が得られた (0.49g,収率69%)。
【0133】
6)t−ブチルジフェニルシリルオキシメチル置換ベンゾピラン7の合成(step6)
【0134】
【化26】

【0135】
エタノール(4ml)中のイミノクマリン5(0.67g,1.1mmol)の溶液にマロノニトリル(0.08g,1.2mmol)を加えた。混合物を攪拌しながら80℃にて7時間加熱還流した。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/AcOEt=30/1)で精製すると、ベンゾピラン7が得られた(0.37g,収率51%)。
【0136】
7)ヒドロキシメチル置換ベンゾピラン8の合成(step7)
【0137】
【化27】

【0138】
ベンゾピラン7(70mg,0.10mmol)に室温で0.5M塩酸のメタノール溶液(2ml)を加えた。混合物をこの温度で6時間攪拌した。反応後は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて塩化メチレンで抽出した。その後硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/MeOH=5/1)で精製すると、ベンゾピラン8が得られた(15mg,収率36%)。
【0139】
8)メタクリル酸メチル置換ベンゾピラン6の合成(step8)
【0140】
【化28】

【0141】
窒素雰囲気下、無水塩化メチレン(1ml)中のベンゾピラン8(15mg,0.036mmol)の溶液に、トリエチルアミン(10mg,0.09mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(1mg,0.007mmol)を加え、メタクリル酸塩化物(10mg,0.065mmol)を攪拌しながら10℃以下で加えた。混合物を室温で3時間攪拌した。反応後は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて洗浄した。その後硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/MeOH=5/1)で精製すると、メタクリル酸メチル置換ベンゾピラン6が得られた(7mg,収率40%)。
【0142】
(実施例1)メタクリル酸エステル系重合体の製造
攪拌機付き1L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 100部
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム 0.05部
第三リン酸カルシウム 0.5部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、単量体混合物(BA10%、MMA90%からなる単量体混合物100部に対しtDM0.2部、LP0.2部およびメタクリル酸メチル置換ベンゾピラン2部からなる単量体混合物)を一括で添加し、内温を80℃にし、2.5時間重合を継続し、メタクリル酸エステル系重合体を得た。重合転化率は98.5%であった。得られたスラリーを脱水、水洗、乾燥して樹脂ピーズを得た。得られた樹脂ビーズをアセトンで洗浄したが、反応性着色剤の溶出は見られなかった。アセトン洗浄後の樹脂中の窒素含有量より、反応型着色剤の含有量は95%であった。
【0143】
(比較例1)
製造例1におけるメタクリル酸メチル置換ベンゾピランを、構造式(13)
【0144】
【化29】

【0145】
で表されるベンゾピラン系蛍光染料Kayaset Red SF−B(日本化薬社製)に変更した以外は、製造例1と同様に重合を行い、脱水、水洗、乾燥して樹脂ビーズを得た。重合転化率は97.5%であった。得られた樹脂ビーズをアセトン洗浄した際、着色剤の溶出が見られた。アセトン洗浄後の樹脂中の窒素含有量より、染料の含有量は0%であった。
【0146】
実施例に示すように、本発明の反応性ベンゾピラン系化合物であるメタクリル酸メチル置換ベンゾピランは、共重合されていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R3は水素またはメチル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表される反応性ベンゾピラン系化合物。
【請求項2】
アルキル基の炭素数であるnが1である、請求項1記載の反応性ベンゾピラン系化合物。
【請求項3】
一般式(2)
【化2】

[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンゾピラン系化合物。
【請求項4】
一般式(3)
【化3】

[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンゾピラン系化合物。
【請求項5】
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項4記載のベンゾピラン系化合物。
【請求項6】
一般式(4)
【化4】

[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるイミノクマリン系化合物。
【請求項7】
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項6記載のイミノクマリン系化合物。
【請求項8】
一般式(5)
【化5】

[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンズイミダゾール系化合物。
【請求項9】
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項8記載のベンズイミダゾール系化合物。
【請求項10】
一般式(6)
【化6】

[式中、R’は互いに独立な炭素数1以上8以下のアルキル基またはフェニル基を、nは1以上8以下の整数を、示す。]で表されるベンゼンジアミン系化合物。
【請求項11】
R’3Si基がt−ブチルジフェニルシリル基である、請求項10記載のベンゼンアミン系化合物。
【請求項12】
一般式(2)
【化7】

[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を示す。]で表されるベンゾピラン系化合物を、
CHR3=CHCOOCl[式中、R3:水素またはメチル基を示す]で表される(メタ)アクリル酸塩化物と反応させることを特徴とする、
一般式(1)
【化8】

[式中、R1およびR2は互いに独立な炭素数1以上12以下のアルキル基を、R3は水素またはメチル基を、nは1以上8以下の整数を示す]で表される反応性ベンゾピラン系化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−347953(P2006−347953A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176079(P2005−176079)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】