説明

反応性ホットメルト接着剤

高グリーン強度の反応性ホットメルト接着剤は、シラン−官能性液体ポリマーを使用して製造される。この接着剤は、シラン−反応性ポリマー、あるいは、非シラン−反応性ポリマーを相溶性粘着付与剤と共に使用して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ホットメルト接着剤、特に、改善された特性を有する反応性ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
ホットメルト接着剤は室温で固体であるが、加熱すると基体に塗布される形態の液体または流体状態に溶融する。冷却によって、この接着剤は固体形態に復帰する。この接着剤を冷却して形成された硬質相(複数)は、最終接着剤に対して凝集力(強度、靱性、クリープおよび耐熱性)を与える。硬化性ホットメルト接着剤(溶融形態でも塗布される)は、冷却によって固体化し、その後、化学架橋反応によって硬化する。従来の液体硬化接着剤に対して、ホットメルト硬化性接着剤の利点は、(1)硬化に先立つ冷却によって「グリーン強度」を与える性能および(2)架橋密度が非常に低い接着剤の提供、すなわち高レベルの柔軟性および靱性の提供である。
【0003】
反応性ホットメルトの大半は、湿気硬化ウレタン接着剤である。これらの接着剤は主として、表面または環境湿度と反応して鎖延長で新しいポリウレタン/尿素ポリマーを形成するイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーからなる。ポリウレタンプレポリマーは従来の方法では、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。硬化は、大気または基体からの湿気が接着剤へ拡散し、およびその後、反応することにより達成される。湿気と残存イソシアネートとの反応は、不安定なカルバミン酸を形成し、アミンと二酸化炭素に分解する。このアミンは、迅速にイソシアネートと反応して尿素を形成する。最終の接着剤生成物は主に、水素結合、尿素基およびウレタン基により結び付けられ、緩く架橋された材料である。
【0004】
シランをベースとする湿気硬化接着剤は、イソシアネートをベースとする接着剤に対して、いくつかの利点を有する。これらの利点としては、1)硬化反応における副生物が気体ではないので(COの代わりに、通常、メタノールまたはエタノールが放出される)、結合ラインに気泡がないこと、2)シロキサン結合は、相互に強く水素結合する尿素結合よりもより柔軟性があるので、架橋後に柔軟性が増加すること、3)有害なイソシアネート蒸気がないこと、および4)表面ヒドロキシル基との反応により、ガラスおよび他の表面への接着力が改善されること、が挙げられる。シラン架橋基を包含するホットメルト接着剤は、数多くの固体ポリマーをベースに開発されてきた。シラン反応性基をポリオレフィン(H.G.Wey、Munich Adhesives and Processing Seminar 1997)、不飽和スチレン系ブロックコポリマー(WO91/06580)、ポリウレタン(米国特許第6,749,943号公報)、およびエチレンビニルアセテートコポリマー(英国特許第2,197,326号公報)にグラフトさせるのは、固体ポリマーに結合させた場合、シラン基が十分速く縮合する能力がないように思われ、商業的に成功するには限界があった。加えて、エステル基とのシラノール基のエステル交換は、触媒の選択に限界があった(米国特許第6,749,943号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シラン硬化をベースとする改善されたホットメルト接着剤に対する要求が存在する。本発明は、この要求に取り組んでいる。
【0006】
本発明は、イソシアネート・フリー湿気硬化を与える、改善された安全性および取り扱い特性を有する湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、1種以上の液体シラン−官能性ポリマーとシラン−反応性基を含有する1種以上のポリマーとを含むホットメルト接着剤組成物を志向している。この組成物は、任意に、他の成分、例えば、粘着付与剤、ワックス、通常の低分子量シランカップリング剤、乾燥剤、触媒、顔料および/または無機フィラーを含んでいてもよい。
【0008】
本発明の他の態様は、液体シラン−官能性ポリマーおよび非シラン反応性の1種以上のポリマー、ならびにさらに粘着付与剤樹脂を含むホットメルト接着剤組成物を志向している。
【0009】
さらに、本発明の他の実施形態は、本発明の反応性ホットメルト接着剤組成物を液体形態において第1の基体に塗布すること、第2の基体を前記第1の基体に塗布された前記組成物と接触させること、および前記組成物を冷却、不可逆の固体形態へ硬化させることが可能な条件下(この条件は湿気を含む)に前記塗布された組成物を置くこと、を含む、材料を共に結合するための方法を志向している。
【0010】
なおも本発明の他の態様は、本発明の湿気硬化接着剤を含む製造物品を志向している。これらの物品は、少なくとも第1および第2の基体を含み、ここで、前記第1の基体は、湿気硬化された本発明の接着剤で前記第2の基体に結合されている。前記基体は、同じであっても、または異なっていてもよい。1つの実施形態では、前記第1または前記第2の基体の少なくとも1つは、ガラスである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、試料2aの接着剤の動的機械分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
【0013】
本明細書で引用されたすべての文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
特に明記しない限り、すべてのパーセントは、接着剤組成物の重量によるパーセントである。
【0015】
安全で取扱いが容易な反応性ホットメルト接着剤が、シラン−反応性ポリマーとの組み合わせで液体シラン−官能性ポリマーを使用して製造できることが現在見いだされた。これらの2種のポリマーをグラフトすることで、溶融相での相溶性を改善し、その上、最終の接着剤のグリーン強度および硬化強度を増加する。
【0016】
また、シラン−官能性液体ポリマーと非反応性のポリマーとの組合わせは、そのブレンドを相溶化するために粘着付与剤樹脂(複数)を使用することによって可能になることが判明した。
【0017】
本発明の反応性ホットメルト組成物は、限定されるものではないが、木材、金属、ガラスおよび織物を含む非常に様々な基体(材料)から構成される物品を結合するのに有用である。そのようなものとして、これらの接着剤は、外面への結合、積層、プラスチック結合、ラッピング加工、および木材への結合のような用途での特定の使用法を見いだしている。他の非限定的な使用法としては、織物結合用途(カーペットおよび衣料)、履き物の製造での使用(靴)、窓の製造におけるグレージング(glazing)/バックベッディング(backbedding)複合物としての使用、入口ドア、ガレージドアなどを含むドアの製造における使用、建築用パネル製造における使用、乗り物の外部に結合する成分での使用、などが挙げられる。
【0018】
本発明の接着剤は、柔軟性があり、表面基体と強く反応し、安全性が重要な関心事である場合、例えば、ハリケーンが発生しやすい地域での改善された開窓建設用にグレージング/バックベッディング複合物として特に有用となる。本明細書で使用する用語のグレージング複合物は、当該技術分野で通常、バックベッディング複合物と呼ばれるもの、および窓ガラスを窓フレームまたはサッシにしっかりと保持する機能を意味する。開窓は、建物、すなわち、壁または屋根、自動車または類似物の開口部であり、前記中央開口部内に保持するように配置された窓ガラスを受け、保持する。開窓建設または製品は、建物の開口に適合し、開口を閉じるために使用されるドア、窓、または天窓アセンブリーである。自動車のフロントガラスなども含まれる。
【0019】
本発明の組成物は、1種以上の液体シラン−官能性ポリマー(ポリマーA)およびシラン−反応性ポリマー(ポリマーB1)または非シラン反応性ポリマー(ポリマーB2)のいずれか1種を使用して製造される。
【0020】
前記シラン官能性ポリマーは、X−Si(C2x+1(OC2y+13−nで表されるシラン基またはシリル基を含み、式中、n=0、1、または2であり、xおよびyは、独立して、1から12の整数であり、Xは、エチレンのような基であってポリマー主鎖にシランを結合している。
【0021】
前記シラン基は水によって、接着性表面で相互に縮合または反応性種と縮合できるシラノール基に加水分解される。シラン基の数は、分子当たり少なくとも1個より多いことが好ましく(完全に硬化されたネットワークを生成するために)、分子当たり少なくとも2個より多いことがより好ましと考えられる。このシラン官能性ポリマーがテレケリックであることが最も好ましく、ほとんどまたは全ての末端がシラン官能基である。シラン末端基当たりのシリルエーテル基の数である3−nは、2または3(n=1または0)であることが好ましい。
【0022】
前記シラン官能性ポリマーの主鎖は、ポリオレフィン、ポリアクリレート、またはポリウレタン(例えば、バイエルからのBaycoll 2458)のような様々な構造であることができるが、ポリエーテルが好ましく、またはKaneka社から入手できるMAX 951のようなアクリレート変性ポリエーテル(例えば、米国公開特許第2002/0084030号A1の記載により製造される)が最も好ましい。このポリマーは、室温で液体であり、基体に塗布後、固体化接着剤中のシラン末端基のより迅速な反応を提供し、反応性サイトの移動を容易にし、すなわち、2つの基体の一方、または両方の表面との共有結合反応の可能性を増大する。
【0023】
前記配合物中のシラン−官能性ポリマーの量は、その分子量および官能基によって決まると考えられるが、典型的には、20−80重量%、好ましくは30−60重量%、最も好ましくは35−55重量%である。
【0024】
前記第2のポリマー(B)は、冷却したホットメルト接着剤にグリーン強度(未硬化強度)を与える。Bは、シラン−反応性ポリマー(B1)または非反応性(B2)のいずれかであることができる。シラン反応性基としては、カルボン酸、アミン、チオールおよびヒドロキシルが挙げられる。好ましいのは、カルボン酸である。この基の数は、十分な数でなければならず、その結果、有意な量であるこのポリマーの少なくとも5%がシラン基によってグラフトされている。グラフトは、接着剤を塗布する前、および湿気とのあらゆる反応の前に、溶融相での相溶性をもたらす。結合および冷却の後、相分離形態が好ましいことが多く、なぜなら相分離は接着剤の靱性を最大にするからである。相分離形態は、2つのガラス転移温度(Tg)の存在によって、場合によっては、冷却による不透明性の増加によっても証明される。このグラフトポリマーは(B1を使用する場合)、冷却による細かい相分離および強靱な接着剤を確実にする。理想的には、このシラン反応性ポリマーは、塗布および冷却後、固体相に分離するが、
硬化するシランポリマー相にグラフトポリマーを介して結合される。配合物中の固体ポリマーであるBの量は、ガラス転移温度およびポリマーの分子量などの多くの因子によって決まると考えられるが、通常、5−70重量%、好ましくは10−50重量%、最も好ましくは20−40重量%である。
【0025】
酸およびヒドロキシル基を含有する反応性固体アクリルコポリマーが好ましく、INEOS AcrylicsからのElvacite2903がその例である。この材料は、酸価5.2および水酸価9.5を有する。
【0026】
また、B1を有する接着剤は、任意に、0−70%、好ましくは5−50%、最も好ましくは20−40%の粘着付与剤を含んでいてもよい。この粘着付与剤の選択は、前記シラン−官能性およびシラン−反応性ポリマーの主鎖によって決まると考えられる。この粘着付与剤の選択は、C.W.Paulの「ホットメルト接着剤(Hot Melt Adhesives)」(Adhesion Science and Engineering−2,Surfaces,Chemistry and Applications,M.Chaudhury and A.V.Pocius eds.,Elsevier,New York,2002,p.718)に記載されているように、天然および石油由来の材料ならびにこれらの組合せを含む。粘着付与剤は、接着剤の溶融粘度を低下する働きをし、また、固体溶媒として有効に働いて、前記AおよびBポリマーを溶融状態で相溶化させる作用をすることができる。好ましい材料としては、ロジンエステル、芳香族C炭化水素樹脂、脂肪族−変性芳香族C炭化水素樹脂、フェノール性−変性テルペン樹脂、フェノール性−変性芳香族樹脂、および純粋のモノマー樹脂が挙げられる。これらの粘着付与剤は、>8.4(cal/cm0.5、好ましくは>8.6(cal/cm0.5の溶解度パラメータを有する。最も好ましいのは、Arakawa Chemical社から入手できるKE−100のような水素化ロジンエステルおよびEastman Chemical社から入手できるKritalex3100のようなα-メチルスチレン樹脂である。
【0027】
非反応性ポリマーであるB2を含む接着剤組成物は、適した溶融相溶性およびグリーン強度を得るために10−50%の粘着付与剤を必要とする。20−40%の粘着付与剤が好ましい。
【0028】
さらにこの接着剤は、前記シラン基の硬化を促進するための触媒を含む。触媒種としては、通常の触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレートのような錫アルカノエート、Dupontから入手できるTyzor GBAのようなチタンアルコキシドを挙げることができる。前記シラン基を硬化するのに適した触媒(加速剤とも言われている)のより広範なリストは、米国公開特許第2002/0084030号公報に記載されている。触媒の濃度は、0.05から5重量%、好ましくは0.2から3重量%、最も好ましくは0.5から2重量%である。
【0029】
前記接着剤は、任意に、ビニルトリメトキシシランのような保存期間を延ばすための湿気捕捉剤を含む。使用する濃度は、0から3%、好ましくは0.5から2%であってもよい。
【0030】
前記接着剤は、任意に、被着体への結合を促進する接着促進剤またはカップリング剤を含む。これらの例は、Michel J.Owenの「カップリング剤:界面での化学結合(Coupling agents:chemical bonding at interfaces)」(Adhesion Science and Engineering−2,Surfaces,Chemistry and Applications,M.Chaudhury and A.V.Pocius eds.,Elsevier,New York,2002,p.403)に記載されている。前記シラン−官能性ポリマーをアミノおよびエポキシシランのような表面に結合させることができる有機−シランが好ましい。グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。濃度は、0.01から10%、好ましくは0.1から5%、最も好ましくは0.2から3%である。この接着促進剤は、前記シラン−官能性ポリマーよりも湿気との反応性が高い場合、湿気捕捉剤としても働くことができる。
【0031】
前記シラン−官能性ポリマーとシラン反応性ポリマーとのグラフト反応は、接着剤の塗布に先立って、溶融状態で起こる。反応および混合は、100°Cを超える温度、好ましくは160°Cより低い温度で同時に起こる。
【0032】
ホットメルト接着剤は、簡単な塗布および基体の良好な浸潤のために十分に低い粘度を必要とする。塗布温度での粘度は、100,000cP未満であることが好ましく、25,000cP未満であることがより好ましく、15,000cP未満であることが最も好ましい。塗布温度は、配合物の熱安定性および基体の熱感度によって決定される。
温度は、170°C未満が好ましく、150°C未満がより好ましく、140°C未満が最も好ましい。
【0033】
物品を共に接着するため塗布した後、前記反応性ホットメルト接着剤組成物を、不可逆固体形態を有する組成物に固体化し硬化することを可能にすると考えられる条件下に置く。固体化(グリーンまたは未硬化状態に固定すること)は、液体溶融物を室温下に置いた場合に起こる。硬化、すなわち、不可逆固体形態を有する組成物への鎖延長は、環境湿度の存在下で起こる。
【0034】
本明細書で用いる場合、「不可逆固体形態」は、接着剤中の前記シラン−官能性ポリマーが湿気と反応して、それ自体、不溶性のシロキサン結合材料を生成している固体形態を意味する。
【0035】
本発明は、下記の非限定的な例によって、さらに説明される。
【実施例】
【0036】
実施例1
本実施例は、シラン−反応性アクリルポリマーでグラフトしたシラン−官能性液体ポリマーの効果を証明する。
【0037】
シラン官能性液体ポリマー(Kanekaから入手可能な市販のMAX 951)の62.5部ならびにメチルメタクリレートおよびn−ブチルメタクリレートを含有し、様々なレベルのシラン−反応性酸基を有する固体アクリルコポリマーの37.5部のブレンドを2つの異なった方法で製造した。
【0038】
方法1(溶媒ブレンド):溶媒(トルエン)中、室温で完全に溶解するまで、前記2種のポリマーを混合し、次いで溶媒を蒸発させた。
【0039】
方法2(溶融ブレンド):前記2種のポリマーを300°F(149°C)で1時間混合した。
【0040】
次いでこの試料について、相溶性および不透明に見える温度を曇点として記録する最高温度を評価した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

表1に示すように、室温下で、溶媒ブレンドで製造したすべての試料は(方法1)、非相溶性であることが判明した。溶媒を蒸発させると、2つの有意に異なった相が明らかになった。1つの相は、液体シラン−官能性ポリマー相に相当し、他の相は、固体アクリルコポリマーに相当した。対照的に、300°F(149°C)でのホットメルトブレンドによって製造した試料(方法2)は、アクリル酸モノマーを含むアクリルコポリマーに対して相溶性のブレンドを生成した。アクリル酸含量がより大きいアクリルコポリマーは、相溶性の増加を明らかに示すより低い曇点を有した。
【0042】
固体アクリルポリマーおよびブレンドについて、THF溶媒中でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を実施した。表1に示すように、酸含有アクリルポリマーはわずかに高いz−平均分子量を有するが、ブレンドは酸が存在する場合にだけMzが増加した。Mzは、最も高い酸濃度(酸価13.5で約2重量%のメタクリル酸に相当する)で、ほぼ倍になった。さらに、ブレンド試料の粘度は、酸含量とともに劇的に増加した。これらのデータは、加熱するとアクリルの酸基がシラン−官能性ポリマーと反応して、ブレンドと相溶性のより高分子量のグラフト化種が形成されることを示していた。
【0043】
実施例2
本実施例は、本発明の配合物を市販の窓グレージング配合物と比較している。
【0044】
<試料2a>
金属塗料缶に1.4部のResiflow LF(Estron Chemicalから入手できるアクリル消泡剤)、105部のElvacite 2903(Ineos Acrylicsから入手できる酸価5.2および水酸価9.5の固体アクリルポリマー)、52.5部のKE−100(Arakawa Chemical社から入手できる水素化ロジンエステル)、および52.5部のKristalex 3100(Eastman Chemical社から入手できるα−メチルスチレン粘着付与剤 )を添加した。これらの成分を305°F(152°C)に加熱し、均一になるまで攪拌した。減圧にしていくらかの水を除去し、設定温度を240°F(116°C)に下げた。温度が設定温度に約0.5時間で達したとき、140部のMAX 951を添加し、さらに0.5時間減圧を行なった。この時点で、0.7部のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Momentive Performance MaterialsからのSilquest A1110)、3.5部のジブチル錫ジラウレート、および2.6部のグリシドキシプロピル・トリメトキシシランを添加し、さらに15分間混合を続けた。最終接着剤を別の容器に移し、窒素下で密封した。
【0045】
<試料2b>
エポキシシランの濃度が2倍(5.2部のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン)であることを除いては、試料2aと同じ配合を有する接着剤を製造した。
【0046】
試料2aおよび試料2bは、溶融状態で共に透明であり、良好な相溶性を示しているが、冷却すると曇った接着剤フィルムになった。各々の硬化フィルムについて、Rheometrics RDA−IIIを用いて動的機械分析を実施した。両方のフィルムが2つのガラス転移温度を示した。図1が示すように、1つのTgは約−24°Cであり、他のTgは、約50°Cであった。第2の高いTg相は、未硬化接着剤にグリーン強度をもたらす。高い温度(>110°C)での平坦域の弾性率、G’は、最終接着剤の架橋化特性の証明である。
【0047】
下記の手順を行なって接着剤特性を評価した。
【0048】
粘度:
サーモセル(Thermosel)加熱装置およびスピンドル27と共にブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて、粘度を決定した。
【0049】
ガラス基体からの剥離接着力:
オーブン中、 250°F(121°C)で1時間、接着剤を加熱し、次いで、1.5インチ×5.5インチ、厚さ0.125インチのシリコーン鋳型で枠組みされている汚れのないガラス基体上に加熱ガンから押出した。次いで、
ステンレススチール金網のストリップを溶融接着剤層に埋め込んだ。その後、別の接着剤層を追加した。室温に冷却する間に、この接着剤をシリコーン剥離紙で覆い、接着剤層を鋳型の形状に押圧するために5分間重しをした。接着剤層の最終厚さは、約1/4インチであった。次いで、湿気硬化を可能にするために、試験の前、仕上がった結合を72°F(22°C)/50%RHで2週間調整した。剥離を2インチ/分で180度行なった。
【0050】
室温および180°F(82°C)でのガラス−PCV基体の引張り剪断試験:
汚れのないPVC基体へ接着剤を塗布した。ステンレススチール・ドローダウン塗布機(BYK−Gardner)を使用して、制御厚み、0.020インチを達成した。厚さ0.010のガラスビード・スペーサーを接着剤層の頂部にばら撒き、最終ボンドラインの厚みを制御した。汚れのない1インチ×4インチのガラスストリップを、1インチ×1インチの重なり領域で手圧力で結合した。次いで、湿気硬化を可能にするために、試験の前、仕上がった結合を72°F(22°C)/50%RHで2週間調整した。試料を、Instronで室温において、0.5インチ/分で引張った。あるいは、180°F(82°C)のオーブン中で0.5時間試料を加熱した後、オーブンから出してすぐに試験した。
【0051】
グリーン強度:
引張り剪断結合を調製し、前記のように試験した。ただし、結合の後、5分後または15分後のいずれかで主として未硬化で試験した。この試験は、結合された構造が完全に硬化する前に、製造中の操作を乗り切れるかどうかの性能を特徴付ける。ホットメルトは、グリーン状態において強度が高く、運転在庫を最小限にするという利点を有する。
【0052】
ショア硬度A:
厚さ0.5インチの接着剤層を硬化(23°C/50%RH)した後、ASTM A型 デュロメーター(モデル306L)を使用して試験した。
【0053】
試料2aおよび2bの配合物を、PURFECT GLAZE Gの登録商標でNational Starch and Chemical Companyから市販されているイソシアネート−末端ポリウレタンをベースとする、通常の窓グレージング複合物用の湿気硬化ホットメルトと比較した。
接着剤の性能結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
本発明は、非常に改善されたガラス上の剥離強度およびグリーン強度を有する気泡フリーの結合を提供する。さらに、剪断強度は高く、これに匹敵する高い硬度を有することができる。
【0056】
実施例3
粘着付与剤を使用する、シラン−官能性液体ポリマーと非反応性固体アクリルポリマーとの相溶化を示す。
【0057】
シラン−反応性ではないポリマーを用いて接着剤を製造するために、実施例2で記載した手順を採用した。配合中の成分は、0.8部のResiflow LF、60部のアクリル1(表1)、30部のKE−100、30部のKristalex 3100、80部のMAX 951、0.4部のSilquest A−1110、2部のジブチル錫ジラウレート、および3部のグリシドキシプロピルトリメトキシシランである。この接着剤は、240°F(116°C)で透明で相溶性である。この接着剤の一部を、数時間、266°F(130°C)でガラスジャーに入れた。透明で質感は平滑のままであり、相分離の証拠はなかった。しかしながら、冷却によって、この接着剤は曇った。
【0058】
ガラスからの引張り剪断接着力は、実施例2の手順に従った測定で129lbsであった。
【0059】
当業者には明らかなように、本発明の精神と範囲から外れることなく、本発明の多くの修正、変更を行なうことができる。本明細書に記載されている特定の実施形態は、単なる例示として提示され、本発明は添付請求項によってだけ限定されるとともに、そのような請求項によって権利が与えられる完全な均等の範囲にも限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン−官能性液体ポリマーおよびシラン−反応性ポリマーを含む、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
シラン−官能性液体ポリマー、非シラン−反応性ポリマーおよび約10重量%から約50重量%の相溶化粘着付与剤を含む、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、接着促進剤を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項4】
さらに、触媒を含む、請求項3に記載の接着剤。
【請求項5】
20から80重量%のシラン−官能性ポリマー、5から70重量%のシラン−反応性ポリマー、0.01から10重量%の接着促進剤、0.05から5重量%の触媒、および0−70重量%の粘着付与剤を含む、請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
前記シラン−反応性ポリマーが固体である、請求項5に記載の接着剤。
【請求項7】
前記シラン−反応性ポリマーがアクリルである、請求項6に記載の接着剤。
【請求項8】
ポリプロピレンオキシド主鎖を含む35から55重量%のシラン−官能性ポリマー、酸官能基を有する固体アクリルを含む20から40重量%のシラン−反応性ポリマー、20から40重量%の粘着付与剤、0.2から3重量%の接着促進剤、および0.05から5重量%の触媒を含む、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
前記非シラン−反応性ポリマーがアクリルである、請求項2に記載の接着剤。
【請求項10】
約20重量%から約40重量%の相溶化粘着付与剤を含む、請求項9に記載の接着剤。
【請求項11】
140°Cで100,000cP未満の粘度を有する、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項12】
高温での反応性ブレンドを含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤を製造する方法。
【請求項13】
前記温度が少なくとも100°Cである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも第1および第2の基体を含む物品であって、前記第1の基体が請求項1または2に記載の接着剤によって前記第2の基体に結合され、前記接着剤が湿気で硬化された、物品。
【請求項15】
前記第1および第2の基体が異なっている、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記第1および第2の基体の1つがガラスである、請求項14に記載の物品。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535907(P2010−535907A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520323(P2010−520323)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/072590
【国際公開番号】WO2009/023553
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】