説明

反応性ポリアリーレンエーテル、及びその製造方法

本発明は、(a)主にフェノレート末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(P)を溶剤(L)の存在下で用意する工程、(b)少なくとも1つの多官能性カルボン酸を添加する工程、及び(c)ポリマー組成物を固体として得る工程を有するポリマー組成物の製造方法に関する。本発明はさらに、本方法に従って得られるポリマー組成物、当該ポリアリーレンエーテルを含有する混合物、本発明によるポリマー組成物をエポキシ樹脂の靭性変性に用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(a)主にフェノレート末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(P)を、溶剤(L)の存在下で用意する工程、
(b)少なくとも1つの多官能性カルボン酸を添加する工程、及び
(c)ポリマー組成物を固体として得る工程
を有するポリマー組成物の製造方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、前記方法によって得られるポリマー組成物、当該ポリアリーレンエーテルを含有する混合物、及び本発明によるポリマー組成物をエポキシ樹脂の靭性変性に用いる使用に関する。
【0003】
ポリアリーレンエーテルは高性能熱可塑性樹脂の類に属し、その高い熱変形耐性と、耐薬品性を理由に要求度の高い用途で使用される(G. Blinne, M. Knoll, D. Mueller, K. Schlichting, Kunststoffe 75, 219 (1985年), E. M. Koch, H.-M. Walter, Kunststoffe 80, 1146 (1990年) 及び D. Doering, Kunststoffe 80, 1 149 (1990年)参照)。
【0004】
この文献から、官能化されたポリアリーレンエーテルが、熱硬化性母材(Matrize)の靭性変性剤として使用可能なことは公知である(R. S. Raghava, J. Polym. Sei., Part B: Polym. Phys., 25, (1987) 1017; J. L. Hedrick, I. Yilgor, M. Jurek, J.C. Hedrick, G. L. Wilkes, J.E. McGrath, Polymer, 32 (1991) 2020)。
【0005】
フェノール末端基を有するポリアリーレンエーテルは好ましくは、エポキシ樹脂及び複合材料で変性剤として使用される。この適用に広く普及している生成物は、Sumitomo社のSumikaexcel(登録商標)5003 Pである。この生成物の製造は、ジフェニルスルホン中の相応するモノマーの縮合、並びに有機溶剤での抽出による後続の材料精製によって行われる。この方法はコストが高く、その上、フェノレート末端基割合が非常に高く、またカリウム割合も非常に高い(>700ppm)ポリマー組成物をもたらし、このことはさらなる加工に不利である。このようなポリマー組成物を沈殿により単離すると、微細な沈殿物が生じ、この沈殿物は高いコストをかけないと技術工程に適用できない。
【0006】
ポリアリーレンエーテルの製造は通常、双極性−非プロトン性溶剤中で適切な出発化合物の重縮合により高められた温度で行われる(R.N. Johnson et.al., J.Polym. Sci. A-1 5 (1967) 2375, J.E. McGrath et.al., Polymer 25 (1984) 1827)。
【0007】
McGrath et al著、Polymer 30 (1989), 1552からはさらに、縮合反応の経過後、ポリアリーレンエーテルの後処理の際に酢酸を添加することによりアミノ末端基の割合を低減可能なことが公知である。
【0008】
しかしながら、酢酸及び鉱酸をポリアリーレンエーテルに添加することにより、高温の適用下、とりわけ加工の際にしばしば、変色した生成物につながる。
【0009】
本発明の課題は、反応性、すなわちOH末端化されたポリアリーレンエーテルを提供することであった。ここで本発明の課題は、先行技術の上述の欠点を回避することであった。本発明のさらなる課題は、生成物が良好に取り扱い可能な沈殿物として沈殿する、OH末端化されたポリアリーレンエーテルの製造方法を利用可能にすることであった。こうして得られるポリマー組成物は、高い色安定性及び温度安定性を有するのが望ましかった。とりわけOH末端化されたポリアリーレンエーテルは、溶融物での加工の際に可能な限り変色が僅かであることが望ましかった。前記ポリアリーレンエーテルの製造方法は容易に実施でき、高いポリマー収率をもたらす。
【0010】
前記課題は、本発明による方法、及び本発明によるポリマー組成物により解決される。有利な実施形態は、特許請求の範囲及び後続の説明から読み取ることができる。有利な実施形態の組み合わせは、本発明の範囲から外れない。
【0011】
本発明によれば、ポリアリーレンエーテルの製造方法は
以下の工程
(a)一般式I
【化1】

[式中、
t、qは相互に独立して0、1、2、又は3であり、
Q、T、Yは相互に独立してそれぞれ、−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−、−CRab−から選択される化学結合又は基であり、
ここでRaとRbは相互に独立してそれぞれ、水素原子であるか、又はC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、又はC6〜C18アリール基であり、ここでQ、T、及びYのうち少なくとも1つは−O−とは異なっており、Q、T、及びYのうち少なくとも1つは−SO2−であり、
Ar、Ar1は相互に独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の構成要素から構成されており、主にフェノレート末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(P)を、溶剤(L)の存在下で用意する工程、
(b)少なくとも1つの多官能性カルボン酸を添加する工程、及び
(c)ポリマー組成物を固体として得る工程
をa−b−cの順序で有する。
【0012】
本発明の範囲においてフェノレート末端基とは、芳香族核に結合されている末端基の形で負に帯電した酸素原子と理解される。この末端基は、フェノール末端基からプロトンを除去することによって誘導される。本発明の範囲においてフェノール末端基とは、芳香族核に結合されているヒドロキシ基と理解される。前述の芳香族核は、好適には1,4−フェニレン基である。本発明のポリアリーレンエーテル(P)は、フェノレート若しくはフェノール性のOH末端基を有する一方で、他方ではハロゲン末端基を有することができる。
【0013】
本発明のポリマー組成物は好ましくは基本的に、主にフェノール末端基を有するポリアリーレンエーテルから、すなわちOH末端化されたポリアリーレンエーテルから成る。
【0014】
「主にフェノレート末端基を有する」とは、上記末端基の50%超がフェノレート末端基であると理解されるべきである。これに対応して「主にフェノール末端基を有する」とは、上記末端基の50%超がフェノール性であると理解されるべきである。
【0015】
フェノレート末端基の割合の測定は好ましくは、電位差滴定によるOH末端基の測定、及び原子分光分析による有機結合されたハロゲン末端基の測定、及び引き続きそれぞれの数割合(%)の計算により行う。相応する方法は当業者に公知である。代替的には、それぞれの末端基の割合の測定は、13C核スピン共鳴スペクトルスコピーによって行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では(以下、AF−vzと略す)、主にフェノレート末端基を有する1つ又は複数のポリアリーレンエーテル(P)の用意を、工程(a)で構造式X−Ar−Yの少なくとも1つの出発化合物(A1)と、構造式HO−Ar1−OHの少なくとも1つの出発化合物(A2)との反応により、溶剤(L)及び塩基(B)の存在下で行い、前記式中、
Yがハロゲン原子であり、
Xはハロゲン原子及びOHから選択されており、
Ar及びAr1は相互に独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である。
【0017】
本発明による方法の各工程の好ましい実施態様は、以下でより詳しく説明する。
【0018】
本発明による方法の工程(a)によれば、少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(P)を溶剤(L)の存在下で用意し、ここで少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(P)は、前述の意味を有する一般式I
【化2】

の構成要素から構成されており、かつ主にフェノレート末端基を有する。
【0019】
ポリアリーレンエーテル(P)はフェノレート末端基を、末端基の総数に対して好適には少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも80%、とりわけ少なくとも90%有する。
【0020】
ここでポリアリーレンエーテル(P)の用意は、好ましくは溶剤(L)中で溶液の形で行う。
【0021】
上記の前提のもとでQ、T又はYが化学結合である場合、これは左側に隣接する基と右側に隣接する基とが化学結合を介して互いに直接つなぎ合って存在していることと解される。
【0022】
しかしながら好ましくは、式(II)中でQ、T及びYは、Q、T及びYから成る群からの少なくとも1つが−SO2−であるという条件で、互いに無関係に、−O−及び−SO2−から選択される。
【0023】
Q、T、又はYが−CRabである場合、Ra及びRbは、それぞれ互いに無関係に水素原子であるか、又はC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、又はC6〜C18アリール基である。
【0024】
好ましいC1〜C12アルキル基は、炭素原子を1〜12個を有する、線状及び分枝状の、飽和アルキル基を含む。とりわけ、以下の基を挙げることができる:C1〜C6アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、2−又は3−メチルペンチル、及び長鎖の基、例えば非分枝状のヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、及びこれらの一重又は多重分枝状類似体である。
【0025】
前述の使用可能なC1〜C12アルコキシ基中のアルキル基として、先に定義した炭素原子を1〜12個有するアルキル基が考慮される。好適に使用可能なシクロアルキル基に含まれるのはとりわけ、C3〜C12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロペンチルブチル、シクロペンチルペンチル、シクロペンチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルジメチル、シクロヘキシルトリメチルである。
【0026】
Ar及びAr1は、相互に独立してC6〜C18アリーレン基である。以下でさらに記載する出発生成物から出発して、Arは好ましくは、電子豊富な、容易に求電子的に攻撃可能な芳香族物質から誘導されており、この芳香族物質は好ましくはヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタリン、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフタリン、及び4,4−ビスフェノールから成る群から選択される。Ar1は好ましくは、非置換のC6又はC12アリーレン基である。
【0027】
6〜C18アリーレン基Ar及びAr1として考慮されるのはとりわけ、フェニレン基、例えば1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン、ナフチレン基、例えば1,6−、1,7−、2,6−、及び2,7−ナフチレンであり、並びにアントラセン、フェナントレン、及びナフタセンから誘導されるアリーレン基である。
【0028】
式(I)中でAr及びAr1は好ましくは、好ましい実施形態では、互いに無関係に、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレン、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフタリン、及び4,4’−ビスフェニレンから成る群から選択される。
【0029】
ポリアリーレンエーテル(P)の範囲に好適には存在する構成要素は、以下の繰り返し構造単位Ia〜Ioの少なくとも1つを含む:
【化3−1】

【化3−2】

【0030】
好ましくは存在する構成要素Ia〜Ioに加えてまた、1つ又は1つより多い1,4−ジヒドロキシフェニル単位がレゾルシン単位、又はジヒドロキシナフタリン単位により置き換えられている構成要素が好ましい。
【0031】
一般式Iの構成要素として特に好ましいのは、構成要素Ia、Ig、及びIkである。その上、1つ又は複数のポリアリーレンエーテル(P)が基本的に一般式Iの1種類の構成要素から、とりわけIa、Ig、及びIkから選択された1つの構成要素から構成されていれば、特に好ましい。
【0032】
特に好ましい実施態様では、Arが1,4−フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、TがSO2であり、YがSO2である。このようなポリアリーレンエーテルは、ポリエーテルスルホン(PESU)と呼ばれる。
【0033】
上記繰返構成要素は別にして、本発明にとっては末端基の構造が重要である。工程(a)の範囲で用意されるポリアリーレンエーテル(P)は、本発明によれば主にフェノレート末端基を有する。
【0034】
フェノレート末端基は、本発明の方法の経過においてフェノール末端基に変換される。よって本発明によるポリマー組成物において、ポリアリーレンエーテルはフェノール末端基を有する。
【0035】
主にフェノール末端基を有するポリアリーレンエーテルは以降、反応性ポリアリーレンエーテルと呼ぶ。
【0036】
ポリアリーレンエーテル(P)は好適には、平均分子量Mn(数平均)が、ゲル透過クロマトグラフィーで溶剤のジメチルアセトアミド中で、狭い分布のポリメチルメタクリレート標準に対して測定して、2,000〜60,000g/molの範囲、とりわけ5,000〜40,000g/molの範囲である。
【0037】
ポリアリーレンエーテル(P)は好適には、相対粘度が0.20〜0.95dl/g、とりわけ0.30〜0.80dl/gである。この相対粘度は、ポリアリーレンエーテルスルホンの溶解性に応じて、1質量%のN−メチルピロリドン溶液中、フェノール及びジクロロベンゼンからの混合物中、又は96%の硫酸中で、それぞれ20℃若しくは25℃で測定される。
【0038】
記載されるポリアリーレンエーテル(P)の用意は、原則的に様々な方法で行うことができる。例えば、相応するポリアリーレンエーテル(P)を適切な溶剤と直接接触させ、そして直接、すなわちさらなる反応無しで本発明による方法で使用可能である。代替的には、ポリアリーレンエーテルのプレポリマーを使用して、溶剤の存在下での反応のために投入することができ、ここで、記載されるポリアリーレンエーテル(P)は溶剤の存在下で生じる。
【0039】
本発明の好ましい実施態様(AF−vz)では、適切な出発化合物、とりわけモノマーから出発して、ポリアリーレンエーテル(P)を溶剤(L)及び塩基(B)の存在下で製造する。このような製造方法は、当業者にそれ自体公知である。
【0040】
本発明の好ましい実施態様(AF−vz)の工程(a)の範囲では、構造式X−Ar−Yの少なくとも1つの出発化合物(A1)と、構造式HO−Ar1−OHの少なくとも1つの出発化合物(A2)との反応を、溶剤(L)及び塩基(B)の存在下で行い、ここで、
Yがハロゲン原子であり、
Xはハロゲン原子及びOH、好適にはハロゲン原子、とりわけF、Cl、又はBrから選択されており、
Ar及びAr1は相互に独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である。
【0041】
ここで(A1)と(A2)の比は、フェノール性若しくはフェノレート末端基の数が、ハロゲン末端基の数を超えるように選択する。
【0042】
この本発明の好ましい実施態様(AF−vz)は、以下でより詳しく説明する。
【0043】
よってこの本発明の好ましい実施態様(AF−vz)の工程(a)の範囲では、溶剤(L)と接触させ、好適にはその中に溶解されているポリアリーレンエーテルが製造される。
【0044】
適切な出発化合物は当業者に公知であり、いわゆる置換基が求核性芳香族置換の範囲で充分に反応性である限り、原則的にあらゆる限定を受けることはない。工程(a)の範囲での反応は同時に、計算上ハロゲン化水素を分離させる重縮合である。
【0045】
好ましい出発化合物は、本発明の好ましい実施態様の範囲では、二官能性である。ここで二官能性とは、求核性芳香族置換で反応性の基の数が、1つの出発化合物あたり2であるということである。適切な二官能性出発化合物に対するさらなる基準は、以下でより詳しく説明するように、溶剤中で充分な溶解性を有することである。
【0046】
従って好ましい化合物(A2)は、2個のフェノール性ヒドロキシ基を有するものである。
【0047】
出発化合物(A1)のハロゲン置換基に対する反応性を高めるため、フェノール性OH基の反応を塩基の存在下で行うのが好ましいことは、当業者に公知である。
【0048】
モノマー性出発化合物が好ましく、つまり工程(a)をモノマーから出発して、プレポリマーから出発しないで行うのが好適である。
【0049】
出発化合物(A1)として好適には、ジハロゲンジフェニルスルホンを使用する。出発化合物(A2)として好適には、ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用する。
【0050】
適切な化合物(A1)は、とりわけジハロゲンジフェニルスルホン、例えば4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジブロモジフェニルスルホン、ビス(2−クロロフェニル)スルホン、2,2’−ジクロロジフェニルスルホン及び2,2’−ジフルオロジフェニルスルホンであり、ここで4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、及び4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0051】
2個のフェノール性ヒドロキシ基を有する好ましい化合物(A2)は、以下の化合物から選択される;
ジヒドロキシベンゼン、とりわけヒドロキノン及びレゾルシン;
ジヒドロキシナフタリン、とりわけ1,5−ジヒドロキシナフタリン、1,6−ジヒドロキシナフタリン、1,7−ジヒドロキシナフタリン、及び2,7−ジヒドロキシナフタリン;
ジヒドロキシビフェニル、とりわけ4,4’−ビフェノール、及び2,2’−ビフェノール;
ビスフェニルエーテル、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、及びビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル;
ビスフェニルプロパン、とりわけ2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、及び2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;
ビスフェニルメタン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;
ビスフェニルスルホン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;
ビスフェニルスルフィド、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;
ビスフェニルケトン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン;
ビスフェニルヘキサフルオロプロパン、とりわけ2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン:及び
ビスフェニルフルオレン、とりわけ9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン。
【0052】
前述の芳香族ジヒドロキシ化合物(A2)から出発して、塩基(B)の添加により、それらの二カリウム塩又は二ナトリウム塩を製造し、出発化合物(A1)と反応させることが好ましい。前述の化合物はその上、個々に又は前述の化合物の2つ以上の組み合わせ物として使用することができる。
【0053】
ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタリン、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフタリン、及び4,4’−ビスフェノールが、出発化合物(A2)として特に好ましい。
【0054】
しかしながらまた、三官能性化合物も使用できる。この場合、分枝状の構造体が生じる。三官能性出発化合物(A2)を用いる場合、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニルエタン)が好ましい。
【0055】
使用すべき量比は原則的に、塩化水素の理論上の脱離下で進行する重縮合反応の化学量論比から得られ、当業者により公知のやり方で調整される。しかしながらフェノール性OH末端基の数を増やすために、OH末端基の過剰量が好ましい。
【0056】
同時に末端基を制御する場合のポリアリールエーテルの製造は、それ自体当業者に公知であり、以下でさらにより詳しく記載する。
【0057】
公知のポリアリーレンエーテルは通常、フェノール性ハロゲン末端基、とりわけフェノール性−F末端基、若しくはフェノール性−Cl末端基、又はフェノール性のOH末端基若しくはO−末端基を有し、ここで後者は従来技術では通常さらに反応させて、とりわけCH3O基にする。
【0058】
フェノール末端基の数を調整するため、当業者には様々な方法が利用可能である。
【0059】
ハロゲン末端基対フェノール末端基の比の調整は、好ましい実施態様では、出発化合物(A1)としてのジハロゲン化合物(つまりX=Y=ハロゲン)との関連で二官能性出発化合物(A2)の過剰量を適切に調整することにより行う。
【0060】
この実施態様において特に好ましくは、モル比(A2)/(A1)が1.005〜1.2、とりわけ1.01〜1.15、極めて特に好ましくは1.02〜1.1である。
【0061】
代替的にはまた、出発化合物(A1)(ただし、X=ハロゲン、Y=OH)が使用できる。この場合、ヒドロキシ基の過剰量の調整は、出発化合物(A2)の添加によって行う。この場合、使用されるフェノール末端基対ハロゲンの比は、好適には1.01〜1.2、とりわけ1.03〜1.15、極めて特に好適には1.05〜1.1である。
【0062】
本発明の好ましい実施態様の範囲における重縮合の際の反応率は好適には、好ましい実施態様の範囲で工程(a)によれば少なくとも0.9であり、これにより充分に高い分子量が保証される。ポリアリーレンエーテルの前駆体としてプレポリマーを用いる場合、重合度は元々のモノマーの数と関連している。
【0063】
本発明の範囲で好ましい溶剤(L)は、非プロトン性極性溶剤である。適切な溶剤はさらに、その沸点が80〜320℃の範囲、とりわけ100〜280℃の範囲、好ましくは150〜250℃の範囲である。適切な非プロトン性極性溶剤は例えば、高沸点性エーテル、エステル、ケトン、不斉ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、及びN−メチル−2−ピロリドンである。
【0064】
好ましい溶剤はとりわけ、N−メチル−2−ピロリドンである。
【0065】
好適には出発化合物(A1)及び(A2)の反応を、上記非プロトン性極性溶剤(L)中、とりわけN−メチル−2−ピロリドン中で行う。
【0066】
本発明の好ましい実施態様の範囲では、出発化合物(A1)及び(A2)の反応を、塩基(B)の存在下で行う。
【0067】
好適には塩基は、水不含である。適切な塩基はとりわけ、水不含のアルカリ金属炭酸塩、好適には炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、又はこれらの混合物であり、ここで炭酸カルシウムが極めて特に好ましく、とりわけ体積質量平均粒径が100マイクロメートル未満の炭酸カリウムが好ましい(N−メチル−2−ピロリドンの懸濁液中で粒径測定装置により測定)。
【0068】
特に好ましいのは、溶剤(L)としてN−メチル−2−ピロリドン、及び塩基(B)として炭酸カリウムという組み合わせである。
【0069】
適切な出発化合物(A1)及び(A2)の反応は、80〜250℃の温度、好適には100〜220℃の温度で行い、ここで温度の上限は溶剤の沸点により決まる。
【0070】
この反応は好適には2〜12時間、とりわけ3〜8時間の長さ(Zeitintrevall)で行う。
【0071】
本発明による方法の工程(a)に引き続いて、とりわけ本発明の好ましい実施態様の範囲では、工程(b)の実施前にポリマー溶液の濾過を行うことが有利と実証されている。これによって重縮合の際に形成される塩含分、並びに場合により形成されるゲル体が除去される。
【0072】
工程(a)の範囲でポリアリーレンエーテル(P)の量を、ポリアリーレンエーテル(P)及び溶剤(L)からの混合物の全質量に対して10〜70質量%、好適には15〜50質量%に調整することが有利と実証されている。
【0073】
本発明による方法の工程(b)の範囲においては、少なくとも1つの多官能性カルボン酸を、工程(a)からのポリアリーレンエーテル(P)に、好適には溶剤(L)中のポリアリーレンエーテル(P)の溶液に添加する。
【0074】
「多官能性」とは、少なくとも2つの官能性と理解されるべきである。この官能性は、1分子あたりのCOOH基の数(場合により平均値)である。多官能性とは、2つ又はそれより多い官能性と理解される。本発明の範囲で好ましいカルボン酸は、二官能性、及び三官能性のカルボン酸である。
【0075】
多官能性カルボン酸の添加は、様々な方法で行うことができ、とりわけ固体若しくは液体の形で、又は溶液の形で、好適には溶剤(L)と混合可能な溶剤で添加する。
【0076】
多官能性カルボン酸は、数平均分子量が最大1500g/mol、とりわけ最大1200g/molである。同時に、多官能性カルボン酸は好適には、数平均分子量が少なくとも90g/molである。
【0077】
適切な多官能性カルボン酸は、とりわけ一般構造式II
HOOC−R−COOH (II)
のものであり、
式中、Rは2〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、この基は任意でさらなる官能基、好適にはOH及びCOOHから選択されている官能基を有する。
【0078】
好ましい多官能性カルボン酸は、C4〜C10ジカルボン酸、とりわけコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びトリカルボン酸、とりわけクエン酸である。
【0079】
特に好ましい多官能性カルボン酸は、コハク酸とクエン酸である。
【0080】
フェノール末端基へのフェノレート末端基の充分な反応を保証するために、使用される1つ又は複数の多官能性カルボン酸を、フェノレート末端基量との関連で調整することが有利であると実証されている。
【0081】
本発明による方法の工程(b)の範囲で好ましくは、フェノレート末端基若しくはフェノール末端基の物質量に対してカルボキシ基が25〜200mol%の量、好適にはカルボキシ基が50〜150mol%の量、特に好ましくはカルボキシ基が75〜125mol%の量で特定して、多官能性カルボン酸を添加する。
【0082】
酸を僅かに加える場合にはポリマー溶液の沈殿性は不充分であり、その一方で、明らかな過剰添加では生成物の変色がさらなる加工の際に現れることがある。
【0083】
フェノレート末端基若しくはフェノール末端基の物質量の特定は、フェノール性OH基の電位差滴定によって、また原子分光分析による有機結合されたハロゲン末端基の測定によって行い、これらから当業者は、数平均分子量と、フェノレート末端基若しくはフェノール末端基の物質量を特定する。
【0084】
本発明による方法の工程(c)の範囲では、ポリマー組成物を固体として得る。
【0085】
基本的に、固体として得るための様々な方法が考慮される。しかしながら好ましくは、ポリマー組成物の獲得を沈殿によって行う。
【0086】
好ましい沈殿はとりわけ、溶剤(L)と、不良な溶剤(L’)との混合物により行うことができる。不良な溶剤とは、ポリマー組成物が溶解しない溶剤である。このような不良溶剤は好適には、非溶剤と、溶剤とからの混合物である。非溶剤として好ましいのは、水である。溶剤と非溶剤とからの好ましい混合物(L’)は好適には、溶剤(L)、とりわけN−メチル−4−ピロリドンと、水とからの混合物である。好ましくは工程(b)からのポリマー溶液を不良な溶剤(L’)に添加し、このことがポリマー組成物の沈殿につながる。この際に好適には、不良な溶剤を過剰量で使用する。特に好ましくは、工程(a)からのポリマー溶液を、微細に配分された形、とりわけ液滴状で添加する。
【0087】
不良な溶剤(L’)として溶剤(L)、とりわけN−メチル−2−ピロリドンと、非溶剤、とりわけ水とからの混合物を使用する場合、溶剤対非溶剤の混合比は、1:2〜1:100、とりわけ1:3〜1:50であるのが好ましい。
【0088】
不良な溶剤(L’)としては、水とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とからの混合物を溶剤(L)としてのN−メチル−2−ピロリドンとの組み合わせで使用するのが好ましい。不良な溶剤(L’)としては、1:3〜1:50、とりわけ1:4〜1:30のNMP/水の混合物が特に好ましい。
【0089】
溶剤(L)中のポリマー組成物の含分を、ポリマー組成物と溶剤(L)とからの混合物の全質量に対して10〜50質量%、好適には15〜35質量%にすれば、特に効率的に沈殿を行うことができる。
【0090】
ポリアリーレンエーテル−コポリマーの精製は、当業者に公知の方法、例えば本発明によるポリアリーレンエーテル−コポリマーが大部分不溶性の適切な溶媒を用いた洗浄によって行う。
【0091】
前述のように本発明によるポリマー組成物は、基本的に1つ又は複数のポリアリーレンエーテル(P)の構成要素から成り、その主なフェノレート末端基はフェノール末端基として、すなわちOH末端化されて存在する。
【0092】
本発明による方法のポリマー組成物のフェノール末端基割合は好適には、OH質量として計算してOHがポリマー組成物の全質量に対して少なくとも0.1質量%、とりわけ少なくとも0.12質量%、特に好適には少なくとも0.15質量%である。
【0093】
ポリアリーレンエーテルの全質量に対する、OH質量としてのフェノール末端基の測定は、電位差滴定によって行う。このためにポリマーをジメチルホルムアミドに溶解させ、トルエン/メタノール中の水酸化テトラブチルアンモニウムの溶液で滴定する。目標点の把握は、電位差滴定により行う。
【0094】
本発明によるポリマー組成物は、好適にはカリウム含分が最大600ppmである。本発明の範囲においてカリウム含分は、原子スペクトル分析により測定する。
【0095】
本発明のさらなる対象は、本発明によるポリマー組成物を含有する混合物、好適には反応性樹脂、とりわけエポキシ樹脂である。
【0096】
このような反応性樹脂は当業者に公知であり、この反応性樹脂は、反応実施に応じて適切な硬化剤を添加して高い強度と耐薬品性を有する熱硬化性プラスチック反応性ポリマーが得られる反応性ポリマーから成る。
【0097】
本発明によるポリマー組成物は、反応性樹脂、とりわけエポキシ樹脂の靭性変性に用いるのが好ましい。
【0098】
以下の実施例は本発明をより詳しく説明するが、本発明を制限するものではない。
【0099】
実施例
ポリアリーレンエーテル(P)の粘度数は、ISO1628に従って、25℃でN−メチル−2−ピロリドンの1%溶液中で測定した。OH基の割合は、電位差滴定によって測定した。カリウム含分は、原子スペクトル分析により測定した。
【0100】
沈殿の評価は、以下の基準により行った:
・沈殿媒体(NMP/水)の変色
・撹拌機停止の1分後の沈殿媒体の濁り
・ポリマーの収率。
【0101】
沈殿は、ポリマー含分が20〜22質量%のポリマー溶液の滴加により、水/NMPの混合物(比は80:20)で室温で行った。
【0102】
色安定性の評価のため、生成物を空気中で200℃に加熱し、現れる変色を半定量的に++、+、0、--に分類した。
【0103】
比較例V1:OH−PES−OHの合成(Mn=25,000g/mol)
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン509.72gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P1)を得た。この混合物を6時間、窒素雰囲気下で190℃に保った。この後、NMP1000mlの添加によりバッチを希釈し、固体成分を濾過により分離し、そして1:4のNMP/水中での沈殿によりポリマーを単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、55.2ml/gであった。
【0104】
実施例2:OH−PES−OHの合成(Mn=25,000g/mol)
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン509.72gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P2)を得た。この混合物を6時間、窒素雰囲気下で190℃に保った。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き、80℃でコハク酸5.54gを添加し、30分撹拌した。それからポリマーを、1:4のNMP/水中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、54.9ml/gであった。
【0105】
比較例V3:OH−PES−OHの合成(Mn=20,000g/mol)ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン512.09gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P3)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続きポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、52.5ml/gであった。
【0106】
実施例4:OH−PES−OHの合成(Mn=20,000g/mol)ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン512.09gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P4)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き、80℃でコハク酸6.2gを添加し、30分撹拌した。この後ポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。注意深く水で洗浄した後、生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、52.6ml/gであった。
【0107】
比較例5:OH−PES−OHの合成(Mn=20,000g/mol)
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン512.09gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P5)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き、80℃でリン酸(85%)8.13mlを添加し、30分撹拌した。この後ポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、52.4ml/gであった。
【0108】
実施例6:OH−PES−OHの合成(Mn=20,000g/mol)ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン512.09gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P6)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き、80℃でクエン酸10.1gを添加し、30分撹拌した。この後ポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、52.6ml/gであった。
【0109】
比較例V7:OH−PES−OHの合成(Mn=15,000g/mol)、V7
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン516.07gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P7)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続きポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、38.3ml/gであった。
【0110】
実施例8:OH−PES−OHの合成(Mn=15,000g/mol)
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン512.09gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P8)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き、80℃でクエン酸13.1gを添加し、30分撹拌した。この後ポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、39.4ml/gであった。
【0111】
比較例V9:OH−PES−OHの合成(Mn=15,000g/mol)
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン516.07gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P7)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き80℃で濃縮されたHCl0.81mlを添加し、30分間撹拌した。それからポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、40.2ml/gであった。
【0112】
比較例V10:OH−PES−OHの合成(Mn=15,000g/mol)
ジクロロジフェニルスルホン574.16g、及びジヒドロキシジフェニルスルホン516.07gの求核性芳香族重縮合により、NMP1000ml中の炭酸カリウム290.24gの作用下、ポリアリーレンエーテル(P7)を得た。この混合物を6時間、190℃に維持した。その後このバッチをNMP1000mlの添加により希釈し、固体成分を濾過によって分離した。引き続き80℃で96%の酢酸0.79mlを添加し、30分間撹拌した。それからポリマーを、NMP/水(1:4)中で沈殿により単離した。水で入念に洗浄した後、この生成物を真空中で120℃で12時間乾燥させた。生成物の粘度数は、39.7ml/gであった。
【0113】
【表1】

【0114】
熱貯蔵の結果:
【表2】

尺度は、++(非常に良好な結果)〜---(非常に悪い結果)である。
【0115】
本発明によるポリマー組成物は、高い温度安定性と色安定性を有する。変色と濁りは、酢酸又は鉱酸を用いた場合と比べて明らかに低減している。このポリマー組成物はさらに、カリウム含分が明らかに低減されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程
(a)一般式I
【化1】

[式中、
t、qは相互に独立して0、1、2、又は3であり、
Q、T、Yは相互に独立してそれぞれ、−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−、−CRab−から選択される化学結合又は基であり、
ここでRaとRbは相互に独立してそれぞれ、水素原子であるか、又はC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基、又はC6〜C18アリール基であり、ここでQ、T、及びYのうち少なくとも1つは−O−とは異なっており、Q、T、及びYのうち少なくとも1つは−SO2−であり、
Ar、Ar1は相互に独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の構成要素から構成されており、主にフェノレート末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(P)を、溶剤(L)の存在下で用意する工程、
(b)少なくとも1つの多官能性カルボン酸を添加する工程、及び
(c)ポリマー組成物を固体として得る工程
をa−b−cの順序で有するポリマー組成物の製造方法。
【請求項2】
Arが1,4−フェニレンであり、tが1であり、qが0であり、TがSO2であり、YがSO2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ又は複数のポリアリーレンエーテル(P)の末端基のうち少なくとも80%が、フェノレート末端基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つ又は複数のポリアリーレンエーテル(P)の用意を、工程(a)で構造式X−Ar−Yの少なくとも1つの出発化合物(A1)と、構造式HO−Ar1−OHの少なくとも1つの出発化合物(A2)との反応により、溶剤(L)及び塩基(B)の存在下で行い、前記式中、
Yがハロゲン原子であり、
Xはハロゲン原子及びOHから選択されており、
Ar及びAr1は相互に独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー組成物の製造方法。
【請求項5】
工程(b)で少なくとも1つの多官能性カルボン酸を、コハク酸及びクエン酸から選択して添加する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶剤(L)としてN−メチル−2−ピロリドンを使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)でポリマー組成物を固体として得る工程を、ポリアリーレンエーテル(P)の沈殿によって行う、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)でポリマー組成物を固体として得る工程を、工程(b)からの溶液を水とN−メチルピロリドンとからの混合物に添加して沈殿によって行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)に連続して、かつ工程(b)の前にポリマー溶液の濾過を行う、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
添加される多官能性カルボン酸の量が、ポリアリーレンエーテル(P)中のフェノール末端基の物質量に対して25〜200mol%である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
出発化合物(A1)の置換基X及びYが、相互に独立してハロゲン原子である、請求項3から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
出発化合物(A1)として、ジハロゲンジフェニルスルホンを使用する、請求項3から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
出発化合物(A2)として、ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用する、請求項3から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)で反応を開始させるための出発化合物A2/A1のモル比が、1.005〜1.2である、請求項3から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)での反応を、塩基としての炭酸カリウムの存在下で行う、請求項3から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
多官能性カルボン酸の数平均分子量が、90〜1500g/molである、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ポリアリーレンエーテルの質量平均分子量が、少なくとも2000g/molである、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ポリマー組成物のカリウム含分が、最大600ppmである、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法により得られる、ポリマー組成物。
【請求項20】
請求項19に記載のポリマー組成物を含有する混合物。
【請求項21】
請求項19に記載のポリマー組成物を、エポキシ樹脂の靭性変性に用いる使用。

【公表番号】特表2012−509375(P2012−509375A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536829(P2011−536829)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065035
【国際公開番号】WO2010/057822
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】