説明

反応性モノマーの高圧分散法

本発明の対象は、反応性モノマーの分散法において、モノマーエマルション(8)を第一の圧力で分散ノズル(7)により供給し、かつ、第二の分散液(9)を、前記分散ノズルの後で側方から、第一の圧力よりも低い第二の圧力で供給し、かつ、両者を混合室中で一緒に分散させることを特徴とする方法である。該方法を用いて、重合後にポリマー被覆されたナノ粒子をもたらすナノ粒子負荷モノマーエマルションを製造することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、反応性モノマーの分散法である。
【0002】
種々の材料の粉砕には、大抵特別な装置が必要とされる。例えば、撹拌型ボールミル中でのセラミックナノ粒子の作製は、粉砕体の高度の摩耗及びそれに付随する生成物汚染、高いエネルギー導入及び長い粉砕時間が顕著である。高出力ミルであると称される新型ミルは、粒子の粉砕をより低いナノ範囲までより効率的に行うとされている。これは、粉砕室中での比較的高い出力密度、及び、極めて小さな粉砕体の使用可能性により達成される(Breitung, Produktgestaltung in der Partikeltechnologie, 第3巻, Frauenhofer IRB Verlag参照)。前記粉砕プロセスの非効率的な経済性及び生成物汚染の他に、粒子の安定化の際にも問題が生じる。これは例えば、硝酸又はギ酸の添加により解決され得る。
【0003】
種々の工業分野により提供される多くの中間生成物及び最終生成物は、数ナノメートル規模のオーダーの分散粒子を含有する粒状材料である。ナノ粒子の使用は、例えば、表面被覆の際に、価値の高い磨き剤の使用において、又は、塗料及び被覆剤の色強度において、種々の利点をもたらす。しかしながら、前記粒子の特別な特性は、しばしば、前記粒子が溶液中に十分に微細にかつ均一に分配されている場合にのみ発揮される。
【0004】
分散液(エマルションないし粒子懸濁液)の製造のためには、工業的にしばしばロータ・ステータ系ないし撹拌ボールミルが使用される。ここで、出力配分、ひいては液滴ないし粒子の応力は、大抵極めて不均一である。分散−及び解凝集プロセスは、主に、導入された比エネルギーに影響を受け(Karbstein, Dissertation Karlsruhe, 1994, Kwade, Dissertation Braunschweig, 1997)、その際、エネルギー利用は極めて非効率的であると評価される。高圧分散法によって、分散液への極めて高い局所的な出力密度の導入、従って凝集結合のより効率的な粉砕が可能となる。しかしながら、無機粒子系は極めて研磨性が高いため、このことは、使用されるサファイア又はダイヤモンドノズルの極めて高度の摩耗を招く。前記の問題は、極めて高いコストを招き、かつそのような装置の寿命を著しく短縮する。高圧分散法は、比較的高いエネルギー効率(ロータ・ステータ系と比較して100〜300倍)に基づき工業的に極めて重要であるが、目下、ノズルの短い寿命に基づき、特に粒子系に関しては非経済的である。
【0005】
EP 782881には、高圧分散機の使用下にO/W型−又はW/O型エマルション中の固体の分散液を製造するための方法が記載されており、その際、全成分が高圧分散機のノズルを導通する。
【0006】
WO 01/05517には、高圧分散機の使用下でのモノマーの分散による、二成分ポリウレタン塗料の水性分散液の製造法が記載されており、その際、付加的に、耐摩耗性充填剤が分散液中に含まれていてよい。前記方法の場合、分散液の全成分が高圧分散機のノズルを導通する。装置は、酸化ジルニウム又は炭化ケイ素のような特に硬質のセラミック材料から製造されていなければならない。
【0007】
本発明の課題は、分散液の製造法を構想することであり、この場合、該方法は、摩耗を低減し、かつ高圧分散を経済的にするように構築されねばならない。
【0008】
前記課題は、モノマーエマルションである第一の分散液を第一の圧力で分散ノズルにより供給し、かつ、第二の分散液を、前記分散ノズルの後で側方から、第一の圧力よりも低い第二の圧力で供給し、かつ、両分散液を混合室中で一緒に分散させることを特徴とする高圧分散法により解決された。
【0009】
有利に、第二の分散液は懸濁液であり、すなわち、該懸濁液は固体を分散粒子の形で含有する。特に、モノマー−及びポリマー分散液を耐摩耗性材料と共に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による方法の一構成を示す図。
【図2】好適な分散ノズルの一実施態様を示す図。
【0011】
実施例
図1に、例示的に方法の一構成を示す。貯蔵容器1から、ポンプ2、有利に高圧ポンプを用いて、第一の分散液、すなわちモノマーエマルションを、脈流防止装置4を介して分散ノズル6に供給する。固体を含有する第二の分散液を、別個の貯蔵容器5から分散ノズル6に供給する。
【0012】
図2は、例示的に、好適な分散ノズルの一実施態様を示し、その際、第一の分散液8は穿孔ノズル7を導通し、かつ、前記分散ノズルの後で側方から、2以上の流路により第二の分散液9を供給する。
【0013】
本発明による方法において、固体粒子はノズルの開口部を通過するのではなく、その直後に供給される。それによって、ノズルの摩耗を著しく低減させることができる。
【0014】
驚異的にも、分散工程において、液相のみならず固相をも有する分散液を同時に分散させることができることが見出された。特に、分散工程において、固/液/液分散液を製造することができる。
【0015】
分散ノズルに高圧を加える。第一の分散液を第一の圧力で供給し、かつ、第二の分散液を、前記分散ノズルの後で側方から、第一の圧力よりも低い第二の圧力で供給する。第一の分散液を、分散ノズルを介して、有利に10〜4000バール、特に有利に100〜2000バールの圧力で添加する。高圧分散の際に、ノズルの直後に強度の減圧が生じることが判明した。この現象を、第二の分散液の流入に利用することができる。このことは、粒子、特に耐摩耗性粒子の供給にとって重要である。
【0016】
軸方向に出てくる第一の分散液(モノマーエマルション)は、第二の分散液を連行し、かつこの第二の分散液と混ざり合う。ノズル出口後に、乱流の運動エネルギーは著しく増加する。乱流の運動エネルギーは、液体中での粒子凝集物の分散及び解凝集、及びそれと同時にエマルション液滴の破壊をもたらす。さらに、ほぼ全ての分散ノズルにおいて生じる空洞形成によって、液滴及び凝集物がさらに粉砕される。横断面が極めて狭小となることによって流動速度が向上するため、ノズルの中及び後の圧力は極めて低下し、その結果、粉砕に寄与する空洞泡が生じ得る。このプロセスを実施することにより、ノズルの摩耗が著しく低減される。なぜならば、液相のみがノズルを貫流するためである。
【0017】
それにもかかわらず、前記方法及び使用装置を用いて、公知の高圧法と比肩し得る、良好でかつエネルギー効率の高い粉砕結果が達成される。なぜならば、乱流及び空洞形成による局所的な高い運動エネルギー放出の分散作用の範囲が、液滴及び粒子が存在するノズルの後であるためである。
【0018】
分散試験において、直径0.05〜1mm、厚さ1〜3mmの単純な穿孔ノズルを使用した。
【0019】
第二の分散液(懸濁液)を、ノズルにより搬送された第一の分散液(モノマーエマルション)と混合し、この際に第一の分散液で希釈される。この際に、第二の分散液中に含有される粒子凝集物が粉砕される。分散ノズルの第一の圧力が10〜1000バールである場合、希釈は通常3:1〜1:3、特に1:1〜1:3で可変である。最終生成物中での粒子濃度を高めるために、第二の分散液を複数の側方から同時に供給することも可能である。
【0020】
第二の分散液中での粒子濃度は、懸濁液の流動性の限度に達するまで高められてよい。
【0021】
分散ノズルの後での第二の分散液の供給は、種々の様式で行うことができる。第一の分散液のノズル出口への供給の角度は、任意に選択することができる。同様に、供給の横断面も自由に選択することができる。供給の形態も量も可変である。このことは、粒子含有懸濁液の入口が減圧の範囲内でノズルの直後に位置していることが保証されている限り当てはまる。
【0022】
第二の分散液が供給される第二の圧力は、第一の分散液の第一の圧力よりも明らかに低くなければならない。有利に、第一の分散液は、分散ノズルを介して、10〜4000バール、特に有利に100〜2000バールの第一の圧力で添加される。第二の分散液は、例えば、生じる減圧により媒体が分散ノズルの後で吸い込まれることによって、加圧せずに供給することができる。有利に、第二の分散液は、0.05〜100バールの過圧で、特に有利に0.5〜10バールの過圧で供給される。
【0023】
前記装置のもう1つの利点は、分散液の種々の成分を同時に処理できることである。従って、種々の媒体をノズル後に供給することができる。種々の媒体は混合室中で合流し、粉砕され、かつ同時に混合される。前記オプションは、作業工程の更なる削減、及びその結果コストの削減をもたらし得る。例えば、第二の分散液を、水中に、かつ場合により助剤を用いて分散形で供給することができる。同様に、第二の分散液を、溶剤中に、かつ場合により助剤を用いて分散形で供給することができる。
【0024】
本発明による分散法は、第一の分散液として、反応性モノマーを含有するモノマーエマルションを供給することを特徴としている。好適なモノマーは、メタ(アクリレート)、スチレン、酢酸ビニル、アルコール、酸、アミン及びイソシアネートである。メタ(アクリレート)との表記様式は、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等、及び、アクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート等並びに双方からの混合物を意味する。有利に、メタ(アクリレート)、特に有利にメチルメタクリレートを含有するモノマーエマルションが供給される。前記方法は、分散ノズルをその使用時に寿命が短縮するように酷使する耐摩耗性粒子がエマルション中に存在しないという利点を有する。
【0025】
第一の分散液(モノマーエマルション)に加えて、場合により第二の分散液も、反応性成分、例えば、反応性モノマー又は反応性開始剤を含有し得る。
【0026】
エマルション中には、他の成分、例えば、乳化剤、疎水性の非水溶性試薬(例えば、ヘキサデン)、移動剤(例えば、チオール)、共安定剤及び開始剤(例えば、ペルオキシド、アゾ開始剤)及び他の添加剤を添加することができる。疎水性試薬とは、典型的には、例えばミニエマルションの製造の際に使用されるような難水溶性試薬と解釈される(Macromol. Rapid Commun. 22, 896 (2001)参照)。開始剤とは、典型的には、連鎖重合又は逐次重合に好適な開始剤であると解釈される。これは、1以上の試薬からなる開始剤系を意味することもできる(例えば、FeSO4/二硫化ナトリウム/ペルオキソ硫酸ナトリウム)。開始剤を添加する場合には、高圧分散により導入されるエネルギーが、分散された開始剤を強度に加熱し過ぎて開始剤の熱分解が生じることのないように留意すべきである。使用される開始剤は、第一の分散液中のみならず第二の分散液中にも添加されてよい。開始剤を直接添加することによる利点は、分散後の更なる作業工程が省略されることである。
【0027】
本発明による方法は、耐摩耗性材料、特に二酸化ケイ素、金属、金属酸化物、無機及び有機顔料、カーボンブラック、無機及び有機顔料分散液及びこれらの混合物の分散に好適である。TiO2、ZnO、ZnS、CeO2、ZrO2、Al23、Fe23、Fe34、FeO、FeOOH、Mgフェライト、Cuフェライト、Mnフェライト及びZnフェライト及びその混合物は特に有利である。構造化された分散液を得るためには、耐摩耗性材料と一緒にモノマーも分散される。
【0028】
上記の無機粒子は、種々の表面構造又は表面の変形を有することができる。粒子は特に、有機分子で被覆された表面を有することができる(例えば、吸着された脂肪酸又は結合したオクチルシリル基又はメタクリレート基)。同様に有利に、本発明による方法は、カドミウム−、ビスマス−、クロム−及び鉄含有顔料、アゾ−及びキノフタロン顔料、並びに、多環式アルミニウムレーキ顔料及びその混合物を、同時に分散しかつモノマーで被覆するために使用されることができる。
【0029】
有利に、第二の分散液は固体をナノ粒子の形で含有する。ここで、ナノ粒子の概念は、一次粒度分布のメジアンが50nm未満である粒子を表す。ナノ粒子は第二の分散液中に凝集形又は凝結形で存在することもできる。
【0030】
本発明による方法で製造された分散液は、すぐに使用するか、又は前駆体として、例えば重合のために更に使用することができる。他方で同様に、得られた分散液は、重合のために現場で更に使用することができるミニエマルションであることができる。重合の後に得られた材料は、無機分を有するポリマー粒子からなる。種々の物質の形態は、無機粒子が球状のポリマー相で被覆されているように構築されていてよい。この場合、この被覆は、ポリマーマトリックス中への無機材料の導入と混同されてはならない。このようにして製造された材料は、2つの相互に全く異なる材料を結合しているため、ハイブリッド材料と呼称される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性モノマーの分散法において、モノマーエマルションを第一の圧力で分散ノズルにより供給し、かつ、第二の分散液を、前記分散ノズルの後で側方から、第一の圧力よりも低い第二の圧力で供給し、かつ、両者を混合室中で一緒に分散させることを特徴とする方法。
【請求項2】
分散ノズルの後で側方から供給した第二の分散液を、分散ノズルの後の減圧によって混合室に引き込む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
分散ノズルの後で側方から供給した第二の分散液を、高められた圧力で混合室に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
分散ノズルの後で側方から供給した第二の分散液を、100バールまでの過圧で混合室に供給する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
分散ノズルの後で側方から供給した第二の分散液を、10バールまでの過圧で混合室に供給する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第二の分散液が反応性成分を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
第二の分散液が反応性モノマーを含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第二の分散液が懸濁液である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第二の分散液がナノ粒子を含有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第二の分散液が、二酸化ケイ素、金属酸化物、金属、顔料又はカーボンブラック又はこれらの混合物を含有する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
第二の分散液が、二酸化ケイ素又は金属酸化物又はこれらの混合物を含有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
第二の分散液が、表面変性された二酸化ケイ素又は金属酸化物又はこれらの混合物を含有する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
第二の分散液が、TiO2、ZnO、ZnS、CeO2、ZrO2、Al23、Fe23、Fe34、FeO、FeOOH、Mgフェライト、Cuフェライト、Mnフェライト及びZnフェライトの系列からの1以上の金属酸化物を含有する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
第二の分散液が、液相として水を含有する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第二の分散液が、液相として1以上の溶剤を含有する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
モノマーエマルションを10〜4000バールの圧力で分散ノズルに供給する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
モノマーエマルション又は第二の分散液が、連鎖重合又は逐次重合のための開始剤を含有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
モノマーエマルションがメタクリレート又はアクリレートを含有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−522785(P2010−522785A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500236(P2010−500236)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053421
【国際公開番号】WO2008/116839
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】