説明

反応性可塑剤および合体溶剤としてのレブリン酸エステル誘導体

本発明は、ポリマー組成物で可塑剤および/または合体溶剤として有用であるレブリン酸のエステル誘導体、エステル誘導体を含む組成物、誘導体および組成物の製造方法、ならびにポリマー組成物での添加剤としての誘導体の使用を指向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援研究開発に関する言明
本発明の開発中に行われた研究の一部は米国政府資金を利用した。米国政府は、エネルギー省が与えた認可番号DE−FC36−04GO14158の下で本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本明細書に記載されるようなレブリン酸のエステル誘導体は、反応性可塑剤および合体溶剤(coalescent solvent)として有用であり、ポリマー組成物、プラスチックおよび水性塗料において伝統的な可塑剤および合体溶剤の代わりに使用されるときに揮発性有機化合物(VOC)の量を低減することができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
樹脂などのラテックスポリマー粒子を含む、ペイントなどの塗料は、典型的には、顔料およびフィラーに加えて合体剤(すなわち、合体助剤、共溶剤またはフィルム形成剤)をも含む。合体剤は溶剤ならびにラテックスポリマー粒子を軟化させ、そして表面に塗布し乾燥させた後に連続コーティングまたはフィルムの形成を助けるためのポリマー粒子用の可塑剤として機能する。
【0004】
有用な合体剤は一般に、ラテックスベースの組成物の安定性が損なわれないように、水の存在下で安定であり、ペイント調合物に典型的に使用される他の原料、特にラテックスポリマーと相溶性である。それらはまた、塗布された塗料が乾燥されるときに逃げるのに十分に揮発性であるが、フィルム形成を遅らせる他の原料(例えば、乾燥抑制剤、凍結防止剤)よりゆっくり蒸発するのに十分に非揮発性である。しかしながら、業界には揮発性有機排出物を低減し、それによって環境および健康懸念を減らしたいという一般的な願望がある。
【0005】
政府は、大気中へ放出されるかもしれない揮発性有機化合物に関するガイドラインを示す規制を制定した。揮発性有機化合物のレベルを低減するために、揮発性化合物を含まない、揮発性化合物の低下した濃度を有する、またはより低い揮発度を有する化合物を組み入れている粉体塗料ならびに高固形分塗料が開発されてきた。しかしながら、合体剤、溶剤、可塑剤などの揮発度を下げると、ラテックスベースの塗料に必要とされる特性のバランスに悪影響を及ぼし得る。従って、ペイントなどの塗料に使用することができる、安定性、相溶性、フィルム形成能、または塗布されたコーティングの望ましい特性を損なわない合体剤、溶剤、可塑剤などに対するニーズがある。
【0006】
ペイント、シーラント、コーク、接着剤または他のコーティングとして使用するための樹脂、または乳化液体プレポリマーなどの、微粒子ポリマーの水性分散系は、周知の、幅広く使用される商品である。ポリマー分散系が表面上に沈積された後のフィルム形成における分散系の有効性は、分散ポリマーのガラス転移温度(T)と、フィルムが乾燥させられる温度とに依存する。例えば、Connらの米国特許第2,795,564号明細書、およびEmmonsらの米国特許第4,131,580号明細書を参照されたい。
【0007】
微粒子ポリマーを軟化させ、すなわち、可塑化し、そして水が蒸発してしまった時点で最適フィルム特性の連続フィルムの形成を容易にするために、合体助剤がかかる水性分散系に使用されてきた。フィルム形成を容易にすることに加えて、合体助剤はまた、微粒子ポリマーおよび液体プレポリマーを合体させ、そして完全なフィルムを周囲温度で形成することによってフィルム特性の続いて起こる改善を促進する。合体助剤なしでは、フィルムは乾燥したときに亀裂が入り、そして基材表面に接着しないかもしれない。
【0008】
合体助剤は、高いガラス転移温度、すなわち、フィルム形成組成物が塗布される温度でポリマーの粒子がどの程度容易に拡散するかを決定する温度を有する微粒子ポリマーフィルムの形成を助けるのに特に有用である。高いガラス転移温度を有する微粒子ポリマーフィルム中の合体助剤の存在は、周囲温度で最適フィルム形成を可能にする。
【0009】
様々なアルコールエステルおよびエーテルアルコールが合体助剤として使用するために提案されてきた。例えば、米国特許第4,131,580号明細書において、Emmonsらは、合体助剤としてジシクロペンテニルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルメタクリレートを含むモノエチレン系不飽和モノマーのビニル付加ポリマーをベースとする水性塗料を開示している。米国特許第4,141,868号明細書で、Emmonsらは、ある種のエステル−エーテル化合物が代わりに使用されることを提案している。より広範に使用される合体助剤の2つは、エチレングリコールモノブチルエーテル(EB、 Union Carbide)および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート(TEXANOL, Eastman Kodak)である。EBおよびTEXANOLの両方とも、高いガラス転移温度の微粒子ポリマーコーティングのフィルム形成を容易にするのに役立ち、かつ、それらが周囲温度より低い温度で塗布されつつある場合に、低いガラス転移温度の微粒子ポリマーコーティングのフィルム形成を容易にするのにさらに有用である。しかしながら、それらは比較的揮発性であり、その結果として、現在、VOC(揮発性有機化合物)として分類されている。
【0010】
立法および市場開発の両方ともが、様々な産業での揮発性有機排出物の低減を強く求めつつある。産業の数が増加しつつある中で、水性塗料が、揮発性有機排出物を著しく減らす目的で、溶剤ベースの塗料に取って代わり続けている。以前には有機溶剤で調合されていた、例えば、様々なペイント、インク、シーラントおよび接着剤が今や水性組成物として調合されている。塗料からの排出物は一般に、組成物中の揮発性有機化合物(VOC)に起因する。塗料中のVOCの量はリットル当たりのグラム(g/L)単位で表される。
【0011】
有機溶剤ベース組成物から水性組成物への移動は、環境上の、安全性および健康便益をもたらす一方で、水性塗料は、溶剤ベースの塗料から予期される性能基準を依然として満たすかまたは超えなければならない。コーティングまたはフィルムは、周囲温度(35°〜160°F)で形成し、その上、硬化後に良好な性能特性を持たなければならない。例えば、塗料は、良好な不粘着性および耐ブロック性を示し、かつ、良好な接着および引張特性をもたらすべきである。いったん硬化すると、ほとんどの用途は、コーティングが水、湿気、および最終使用温度変動などの環境条件によって影響を受けないことを要求する。
【0012】
水性塗料は、それらの機能によって一般に特定される10〜20以上の成分を含有してもよい。例えば、樹脂(アクリルエマルジョンラテックスポリマーを含むがそれに限定されない、ラテックスまたはバインダーとも呼ばれる)に加えて、水性塗料は、顔料、増量剤、沈降防止剤、分散剤、界面活性剤(湿潤剤、消泡剤、および泡止め剤などの)、レオロジー調整剤、合体溶剤、可塑剤、水、グリコール、触媒、殺生物剤、架橋剤、および着色剤を有してもよい。樹脂は、「樹脂固形分」と言われる、典型的な固体内容物を有する。グリコールは、耐凍結−融解性、ウェットエッジ性のためにおよび低温合体における助剤として加えられた成分である。これらの目的のために使用される代表的なグリコールには、エチレングリコールおよびプロピレングリコールが含まれる。グリコールは一般に周囲条件で蒸発するので、それらは、水性コーティング調合物中に見いだされるVOCに寄与する。グリコールによるVOCへの典型的な寄与は、リットル当たり100〜200グラムであろう。グリコールは、水性コーティング製造業者が排出物を減らす目的で減らすまたは排除しようとする第1成分の1つである。しかしながら、そのとき得られたコーティングは、低温合体、耐凍結/融解性およびウェットエッジの所望の特性の点で劣っているかもしれない。
【0013】
共溶剤(合体溶剤としても知られる)は、硬いラテックス粒子のフィルム形成(または共ニッティング)に役立つために水性組成物に普通に用いられる。この硬度は、出発フィルム形成温度の、または製造されたラテックス固体のガラス転移温度の観点から測ることができる。乾燥が起こるにつれて、共溶剤はコーティングから蒸発し、コーティングのガラス転移温度は出発樹脂のそれに近づく。共溶剤の添加は、コーティングが乾燥中により柔軟なフィルム形成材料のように挙動し、そして次に、乾燥後により硬い抵抗性フィルムとして機能することを可能にする。共溶剤の例には、脂肪族および芳香族炭化水素とアルコール、ケトンおよびグリコールエーテルなどの含酸素溶剤とが挙げられる。共溶剤の典型的な量は、塗料のリットル当たり50〜300もしくはそれ以上のグラムの範囲である。
【0014】
コーティング調合物中に存在する共溶剤はVOC含有率にかなり寄与し、そしてコーティングに臭いを与える傾向があるので、共溶剤は水性コーティングにおいていっそう望ましくなくなりつつある。しかしながら、多くの水性コーティングシステムで、共溶剤の排除は、フィルム形成の欠如か、コーティングが不満足な外観および不満足な耐性特性を有するような不満足なフィルム形成かのどちらかをもたらす。幾つかのケースでは、可塑剤が水性コーティング調合物に加えられて、共溶剤の幾らかもしくはすべてに取って代わってもよい。典型的には、可塑剤は、周囲条件で有意に蒸発せずにコーティング中に残る有機化合物である。典型的な可塑剤の例は、フタレート、アジペート、およびベンゾエート系統からの化学薬品であろう。それらはポリマーを軟化させ、さもなければ硬くて脆いポリマーに柔軟性を与えるために使用される。しかしながら、可塑剤は、特に高レベルで、コーティング性能特性に有害な影響を与え得る。コーティングは柔軟なままであるので、それは、不満足な耐ブロック性および不粘着性、不満足な耐汚れ性および粘着性感触を持ち得る。
【0015】
水性コーティングを調合するために使用される上に議論された成分の多くは、該成分と一緒に存在する少量の揮発性化合物を有する。幾つかの例は、着色剤が分散される溶剤、触媒が分散される溶剤、および、さらに多くの市販の界面活性剤、殺生物剤、消泡剤、またはレオロジー調整剤中に存在するグリコールまたは溶剤である。
【0016】
上に議論されたように、湿式コーティング、Tおよび最終用途性能などの特性に悪影響を及ぼすことなく水性塗料からVOCを低減するかまたは排除するニーズが存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
本発明は、ポリマー組成物で可塑剤および/または合体溶剤として有用であるレブリン酸のエステル誘導体、エステル誘導体を含む組成物、誘導体および組成物の製造方法、ならびにポリマー組成物での添加剤としての誘導体の使用を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリマー組成物で可塑剤および/または合体溶剤として有用であるレブリン酸のエステル誘導体、エステル誘導体を含む組成物、誘導体および組成物の製造方法、ならびにポリマー組成物での添加剤としての誘導体の使用を対象とする。
【0019】
ある実施形態では、本発明は、a)ポリマーと、b)OまたはNによって−(A)または−(G)の1つもしくはそれ以上に直接共有結合した多糖類、ポリオール、多糖類もしくはポリオールの残基、またはそれらの混合物からなる群から選択された1つもしくはそれ以上の化合物を含む合体溶剤および/または可塑剤とを含む組成物であって、前記−(A)または前記−(G)が次式:
【化1】

を有する組成物を対象とする。
【0020】
用語「多糖類」は、加水分解によって単糖類の2つもしくはそれ以上の分子へ分解することができる炭水化物、特に(セルロース、デンプン、繊維、またはグリコーゲンのような)より複雑な炭水化物のいずれかを意味する。
【0021】
用語「ポリオール」は、多価アルコール、すなわち、2つもしくはそれ以上のヒドロキシル基を含有するものを意味する。ポリオールには、一般式CHOH(CHOH)CHOH(式中、nは0〜5であってもよい)の化合物が含まれる。例示的なポリオールにまた、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトールおよびキシリトールなどの糖アルコール、グリセロール、グリコール、少なくとも2つのヒドロキシル基で置換されたジアルキルエーテル、フランアルコール、ピランアルコール、テトラヒドロフランアルコール、テトラヒドロピランアルコール、オキサシクロヘキサンアルコール、ジアンヒドロヘキシトールなどの複素環アルコール、ヘキサナールおよびペンタナールアルコールなどのアルデヒドアルコールも含まれる。ポリオールのさらなる例には、下記の化合物B、B’、C、D、E、FおよびHが挙げられる。
【0022】
用語「多糖類もしくはポリオールの残基」は、多糖類もしくはポリオールから誘導された多糖類、ポリオール、および他の関連化合物を意味する。多糖類もしくはポリオールの残基には、上にリストされたもの、単糖類(すなわち、加水分解によってもっと簡単な糖に分解することができない糖)、一価アルコール、それらの混合物および誘導体等の、多糖類およびポリオールが含まれる。デンプンおよびセルロース系化合物は、加水分解されてまたは接触分解(水素化分解とも呼ばれる)を受けて多糖類およびポリオールの残基を与えることができる。多糖類もしくはポリオールの残基は、下に議論されるような、様々なソースから誘導することができる。
【0023】
多糖類および単糖類を含む、かかる残基の例には、アラビノース、キシロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ガラクトース、グルコース、グルコシド、例えば、アルファ−メチル−d−グルコシドなどのアルファ−d−アルキルグルコシド、ペンタアセチルグルコースおよびグルコン酸ラクトン(gluconic lactone)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0024】
多糖類もしくはポリオールの残基の他の例には、1つもしくはそれ以上のエーテル、ヒドロキシ、アミン、エステル、アルデヒドまたはケト基で置換されたフラン、テトラヒドロフラン、ジアンヒドロヘキシトール、ピラン、テトラヒドロピランおよびオキサシクロヘキサンが挙げられる。さらなる例には、1つもしくはそれ以上のエーテル、エステルまたはヒドロキシ基で置換されたジアルキルエーテル、1つもしくはそれ以上のエーテル、ヒドロキシ基またはエステル基で置換されたアルカン、1つもしくはそれ以上のヒドロキシ、エーテルまたはエステル基で置換されたヘキサナールまたはペンタナール、および1つもしくはそれ以上のヒドロキシまたはエーテル基で置換されたオキサシクロヘキサンが挙げられる。具体的には、多糖類もしくはポリオールの残基には、レブリン系化合物への結合なしの、下に議論される、化合物I〜XIXが含まれる。
【0025】
多糖類およびポリオールの他の残基は、ヒドロキシル基を含有する分子を含み、高フルクトース・コーンシロップ、およびそれから得られた糖を含むことができる。
【0026】
(b)の合体溶剤および/または可塑剤は、次の構造:
【化2】

【化3】

【化4】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素、(A)−、C1〜4アルキル、ベンジル、ベンゾイルおよび
【化5】

からなる群から選択され、
M=OまたはNであり、そして
Z=OまたはNであり、
MおよびZの値は独立して選択され、そしてMおよびZは同一または異なるものであることができる);
【化6】

【化7】

【化8】

および
【化9】

(式中、Rは各場合に独立して、ヒドロキシ、水素、(A)−O−、(G)−O−、C1〜4アルコキシ、ベンジルオキシおよびベンゾイルオキシからなる群から選択され、R’は独立して、水素、(A)−、C1〜4アルキル、ベンジル、−(G)、およびベンゾイルからなる群から選択され、Gは、各場合に、
【化10】

であり、
そしてAは、各場合に、
【化11】

である)
を有する1つもしくはそれ以上の化合物を含むことができる。
【0027】
ある実施形態では、合体溶剤および/または可塑剤は、式中、各R基がヒドロキシルであり、そしてR’がC1〜4アルキルである、式XIの構造であることができる。
【0028】
上記構造のそれぞれ(すなわち、多糖類、ポリオールまたは多糖類もしくはポリオールの残基)は、レブリン酸残基(A)を含有する。本明細書に記載される全ての場合に、Aは上に示された通りである。分子のレブリン酸残基は、合体剤または可塑剤のポリマーへのヒドラジド(ジヒドロジドまたは多官能性ヒドラジド)架橋のための反応性サイトをポリマーに与える。例えば、コーティング材料用の水硬化性樹脂組成物、青木ら、特開平5−148406号公報、1993年6月15日公開、特願平3−337971号を参照されたい。かかる架橋は、増加した耐久性、硬度および/または耐溶剤性を乾燥コーティングフィルムに与えることができる。上記構造はまた、ポリマー組成物用の合体溶剤および/または可塑剤の特性を有する。
【0029】
用語「合体溶剤」および「可塑剤」の使用は、化合物、および該化合物を含む組成物の特性に関する。これらの化合物および組成物は、ポリマーを軟化させ、組成物のガラス転移温度(T)を下げ、および/または連続フィルムの形成を促進することができる。レブリン酸エステル誘導体は非揮発性であり、伝統的な合体溶剤および可塑剤の代わりに使用されるとき、ポリマー組成物に必要とされるVOCの量を低減することができる。
【0030】
別の実施形態では、レブリン酸エステル誘導体は、デンプンおよびセルロース系化合物から製造することができる。デンプンおよびセルロース系化合物上のヒドロキシ基は、レブリン酸でエステル化するかまたはレブリネート(levulinate)エステルとエステル交換することができる。デンプンまたはセルロース系化合物は、レブリン酸および/または脂肪酸でさらに機能化することができる。多価不飽和脂肪酸をこのタイプのレブリン酸エステル誘導体に組み入れて、酸化的架橋などの、酸化的性質を与えることができる。レブリン酸または脂肪酸で機能化されたデンプンは、反応性合体特性と組み合わせられた、増粘などの、レオロジー特性の改質などの、フィルム形成組成物における2つ以上の望ましい特性を与えることができる。
【0031】
別の実施形態では、混合ポリオールは、レブリン酸でエステル化するかまたはレブリネートエステルとエステル交換することができる。天然繊維は加水分解されて、ポリオールの混合物などの、多糖類およびポリオールの残基を与えることができる。この目的に好適な繊維には、トウモロコシ湿式製粉機からのトウモロコシ繊維、湿式製粉機からのトウモロコシ繊維を含有する乾燥トウモロコシグルテン・フィード、乾燥機を通っていない湿式トウモロコシ製粉機からの湿潤トウモロコシグルテン・フィード、蒸留器乾燥穀物可溶分(DDGS)および乾式トウモロコシ製粉機からの蒸留器の穀物可溶分(Distiller’s Grain Solubles)(DGS)、キャノーラ殻、ナタネ殻、ピーナツ殻、大豆殻、綿実殻、ココア殻、オオムギ殻、オートムギ殻、麦わら、トウモロコシ茎葉、もみ殻、小麦処理からのデンプン流れ、トウモロコシメサ・プラントからの繊維流れ、食用豆糖液および食用豆繊維が含まれるが、それらに限定されない。トウモロコシ繊維などの、天然繊維の加水分解物は、アラビノース、キシロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、およびグルコースを含むがそれらに限定されない多糖類およびポリオールの残基に富む。ポリオールの加水分解によって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸でエステル化するかまたはレブリネートエステルとエステル交換することができる。ポリオールの加水分解によって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸/脂肪酸でさらに機能化することができる。多価不飽和脂肪酸は、このタイプのレブリン酸エステル誘導体に組み入れられて酸化的架橋などの、酸化的特性を与えることができる。
【0032】
加水分解繊維から得られた多糖類およびポリオールの残基は発酵にかけられてもよい。発酵法は、新規ポリオールを提供するかもしれないし、または加水分解繊維から得られた多糖類もしくはポリオールの残基の量を変えるかもしれない。発酵後に、発酵もろみ液が得られ、多糖類もしくはポリオールの残基は、発酵もろみ液から回収されおよび/または濃縮されて、レブリン酸または多価不飽和脂肪酸でのエステル化またはレブリネートエステルとのエステル交換に好適な生物起源の天然供給原料を与えることができる。多価不飽和脂肪酸は、このタイプのレブリン酸エステル誘導体に組み入れられて酸化的架橋などの、酸化的特性を与えることができる。
【0033】
別の実施形態では、混合多糖類もしくはポリオールの接触分解から得られた多糖類もしくはポリオールの残基は、レブリン酸でエステル化するかまたはレブリネートエステルとエステル交換することができる。ある実施形態では、トウモロコシ繊維加水分解物を含む混合多糖類もしくはポリオール源の接触分解から得られた多糖類もしくはポリオールの残基は、レブリン酸またはレブリネートエステルでエステル化することができる。トウモロコシ繊維などの、天然繊維の加水分解物などの、多糖類およびポリオールは、アラビノース、キシロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、およびグルコースを含むがそれらに限定されない多糖類およびポリオールの残基に富む。接触分解後、反応生成物は、2〜5個の炭素を有する多糖類およびポリオールの残基に富む。ポリオールの接触分解によって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸でエステル化するかまたはレブリネートエステルとエステル交換することができる。ポリオールの接触分解によって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸/脂肪酸でさらに機能化することができる。多価不飽和脂肪酸は、このタイプのレブリン酸エステル誘導体に組み入れられて酸化的架橋などの、酸化的特性を与えることができる。
【0034】
別の実施形態では、糖または炭水化物を接触分解(水素化分解とも呼ばれる)にかけることによって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸またはレブリネートエステルでエステル化することができる。非限定的な例では、ソルビトールが接触分解にかけられて、2〜5個の炭素を有するポリオールを含む、ポリオールの混合物を与える(例えば、Hydrogenolysis of sorbitol、Clark、 I. J.著、Ind. Eng. Chem. (Washington, D. C.) (1958), 50 1125-6ヘ゜ーシ゛を参照されたい)。接触分解に好適な他の多糖類およびポリオールには、グルコース、ソルビトール、マンニトール、スクロース、ラクトース、マルトース、アルファ−メチル−d−グルコシド、ペンタアセチルグルコースおよびグルコン酸ラクトンが含まれるが、それらに限定されない(例えば、Hydrogenolysis of sugars、Zartman, W.およびAdkins、H.著、J. Amer. Chem. Soc. (1933)、 55 4559-63ヘ゜ーシ゛を参照されたい)。多糖類およびポリオールの接触分解によって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸またはレブリネートエステルでエステル化することができる。ポリオールの接触分解によって得られた多糖類およびポリオールの残基は、レブリン酸/脂肪酸でさらに機能化することができる。多価不飽和脂肪酸は、このタイプのレブリン酸エステル誘導体に組み入れられて酸化的架橋などの、酸化的特性を与えることができる。
【0035】
レブリン酸エステル誘導体は、約1%〜約25%w/w全固形分、例えば、約5%〜約20%w/w全固形分、または約7%〜約15%w/w全固形分の量でポリマー組成物中に存在する。
【0036】
ポリマー組成物のTは約1℃〜約40℃、例えば、約3℃〜約20℃、または約5℃〜約15℃である。
【0037】
本発明はまた、有効量のレブリン酸エステル誘導体を組成物に加えることによってポリマー組成物のTを下げる方法を対象とする。レブリン酸を含む組成物のTは、本誘導体を加える前に測定されるような組成物のTより低いだろう。「有効量」は、約2℃以上Tを下げることができる任意の量である。ある実施形態では、ポリマー組成物のTを下げる方法は、Tが約5℃以上、例えば、約10℃以上下げられるようにレブリン酸エステル誘導体を加える工程を含む。
【0038】
本発明は、任意の好適なポリマーで用いることができる。好適なポリマーには、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ塩化ビニル、アクリルポリマー、スチレン−アクリル、ビニル−アクリル、エチレン−酢酸ビニル、スチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、およびアクリルラテックスエマルジョンポリマーをはじめとする、ラテックスポリマーが含まれる。
【0039】
別の態様では、本発明は、レブリン酸エステル誘導体を含有するポリマー組成物の製造方法であって、ポリマー組成物が製造される、上記のようなポリマーをレブリン酸エステル誘導体と組み合わせる工程を含む方法を対象とする。
【0040】
別の態様では、本発明は、上に示されるような式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIX、XX、XXI、XXIIおよびXXIIIの1つもしくはそれ以上の化合物を含む組成物を対象とする。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、次式I、II、III、IV、V、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIIIおよびXIX:
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

および
【化16】

(式中、Rは各場合に独立して、ヒドロキシ、水素、(A)−O−、(G)−O−、C1〜4アルコキシ、ベンジルオキシおよびベンゾイルオキシからなる群から選択され、R’は独立して、水素、(A)−、C1〜4アルキル、ベンジルおよびベンゾイルからなる群から選択され、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素、(A)−、C1〜4アルキル、ベンジル、ベンゾイルおよび
【化17】

からなる群から選択され、
そしてAは、各場合に、
【化18】

である)
を有する化合物を対象とする。
【0042】
式Iの特に有用な化合物には、
【化19】

(式中、Rは、水素、C1〜4アルキル、(G)−、および(A)−からなる群から選択され、そしてRは、水素およびヒドロキシからなる群から選択される)
が含まれる。
【0043】
式Iのさらに好ましい化合物は次の構造、式XX:
【化20】

を有する。
【0044】
式IIの特に有用な化合物には、
【化21】

(式中、Rは、水素、C1〜4アルキル、(G)−および(A)−からなる群から選択される)
が含まれる。式IIのより好ましい化合物は、次の構造、式XXI:
【化22】

を有する。
【0045】
式IVの特に有用な化合物には、
【化23】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素および(A)−からなる群から選択される)
が含まれる。式IIIのより好ましい化合物は、次の構造、式XXII:
【化24】

を有する。
【0046】
式VIIIの特に有用な化合物には、
【化25】

(式中、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立して、水素および(A)−からなる群から選択される)
が含まれる。式VIIIのより好ましい化合物は、次の構造、式XXIII:
【化26】

を有する。
【0047】
別の態様では、本発明は、a)酸触媒の存在下で、レブリン酸と次の化合物:
【化27】

【化28】

および
【化29】

の1つもしくはそれ以上とを組み合わせることによって混合物を形成する工程と、
b)前記混合物を約50℃〜約200℃の温度で加熱する工程であって、レブリン酸エステル誘導体が製造される工程とを含むレブリン酸のエステル誘導体の製造方法を対象とする。有用な温度にはまた、約100℃〜約150℃、例えば、約110℃〜約140℃の温度が含まれる。用いられる酸触媒は硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、BF、酸性樹脂触媒、ゼオライト、または有機スズ触媒であることができる。ある実施形態では、触媒は固体物質である酸である。
【0048】
あるいはまた、本発明は、a)塩基触媒の存在下で、レブリン酸エステルと化合物B、B’、C、D、E、F、およびHの1つもしくはそれ以上とを組み合わせることによって混合物を形成する工程を含む、レブリン酸のエステル誘導体の製造方法を対象とする。あるいはまた、本発明は、a)酵素触媒の存在下で、レブリン酸またはレブリン酸エステルと化合物B、B’、C、D、E、F、およびHの1つもしくはそれ以上とを組み合わせることによって混合物を形成する工程を含む、レブリン酸のエステル誘導体の製造方法を指向する。
【0049】
好適な酵素には、トリアシルグリセロール・アシルヒドロラーゼ(EC 3.1.1.3)などの、リパーゼが含まれるであろう。好適なリパーゼには、Novozymes、 Bagsvaerd、 デンマーク国から入手可能なNovozym 435が含まれるであろう。リパーゼ触媒が使用されるとき、適度な反応温度(25〜90℃)を用いることができる。
【0050】
加熱工程の後に、混合物は、ほぼ室温に冷却するかまたは放冷することができる。混合物は場合により、MgSOおよび/または活性炭、または当該技術で公知の類似の化合物と接触させることができる。混合物はまた、水で洗浄されて、エステル誘導体を含有するであろう有機相から副生物を除去することができる。有機相は、MgSOまたは当該技術で公知の類似の化合物と接触させ、そして分離することができる。混合物の精製は、次の工程:液−液抽出、wiped-filmエバポレーターを用いる過剰のレブリン酸またはレブリネートエステルの蒸発、分子蒸留およびクロマトグラフ法の1つもしくはそれ以上を含むことができる。別の反応スキームでは、無水レブリン酸エチルは、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシドを含む標準触媒または強塩基性樹脂を含む固体塩基触媒を用いる塩基性条件下で無水アルコールまたはポリオールとエステル交換することができる。
【0051】
スキーム
スキーム1
【化30】

【0052】
スキーム1は、グリセロールのトリレブリネート(レブリン酸トリエステル誘導体)の製造方法を表している。グリセロールトリレブリネート(1,2,3−プロパントリイルエステル、4−オキソ−ペンタン酸)は、脱水条件下に固体酸触媒を用いて製造された。固体酸が濾過され、反応混合物は水/酢酸エチルにて分離された。生成物は酢酸エチル層へ抽出された。水層は、レブリン酸と部分エステル化されたグリセロールエステルとを含有した。
【実施例】
【0053】
実施例
実施例1
グリセロールトリレブリネート(1,2,3−プロパントリイルエステル、4−オキソ−ペンタン酸)の合成
約9.89gのグリセロール(0.11モル)(Aldrich)と、102.6gのレブリン酸(0.88モル)と4gのAmberlyst 35(Rohm and Haas)を、Barretスタイル受器、熱電対およびNパージを備え付けた3口丸底フラスコに加えた。混合物を、撹拌しながら約128℃で約2.5時間加熱した。黄色の液体混合物を室温に冷却し、無水MgSO上で乾燥させ、活性炭と接触させた。混合物を次に水で洗浄した。有機層を無水MgSO上で乾燥させ、濾過して無色透明の液体を得た。生成物は、0.6の酸価を有し、NMR分析によってグリセロールトリレブリネート(1,2,3−プロパントリイルエステル、4−オキソ−ペンタン酸)と同定された。
【0054】
実施例2
グリセロールトリレブリネート(1,2,3−プロパントリイルエステル、4−オキソ−ペンタン酸)を含むポリマー組成物の調合
SG−10M(Rohm and Haas)ポリマー50%樹脂固形分とグリセロールトリレブリネート(1,2,3−プロパントリイルエステル、4−オキソ−ペンタン酸)とを下の表1に記載されるレベルで混合した。
【0055】
【表1】

【0056】
混合後に、サンプルを一晩平衡させた。ラテックス粒子の不安定化がサンプル4で起こり、サンプルを16時間後にゲル化させた。サンプル1、2および3は、3ミル・ドローダウン棒を用いて剥離紙上でフィルムへキャストした。フィルムを室温で96時間硬化させた。全てのフィルムは透明であった。サンプル3は、幾らかのにじみ出た可塑剤の存在をフィルムの表面上に示した。
【0057】
実施例3
示差走査熱量測定法によるフィルムの分析
フィルムを小片にカットし、示差走査熱量測定法によって分析した。結果を表2に与える。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例4
ペイントでのグリセロールレブリネートエステル(GLE)の評価
表3で下に示す標準調合物で、GLEをArcher RCと比較した。ADM 30-1011は低半光沢インテリア白色調合物であり、ADM 40-1022は平らなインテリア白色調合物である。
【0060】
【表3】

【0061】
下の表4での比較データは、GLEを含有する調合物が擦り、ブロックおよび凍結−融解に対する改善された耐性を有することを示す。GLE含有調合物はまた、光沢の増加を示す。GLE調合物は半光沢(SG)調合でより低い初期粘度を有していたが、粘度は一晩で26kuだけ増加した。この増加は、Archer RCを含有する調合物の粘度のおおよそ7倍である。熱老化安定性試験で、GLE含有ペイントは140°Fで10日後にケーキ状になった。GLEを含有する調合物はより低いpH値を有する。
【0062】
【表4】

【0063】
実施例5
グリセロールトリレブリネートの合成
Amberlyst 35 WET樹脂を無水メタノール中でリンスし、70℃で乾燥させた。約30gのグリセロール(0.32モル、Aldrich)、133.6gのレブリン酸(1.15モル、Aldrich)を、3口丸底フラスコ中で乾燥Amberlyst 35 WET樹脂と撹拌した。フラスコにBarrettスタイル受器、熱電対および窒素ガス注入口を備え付けた。窒素をヘッドスペースに通した。混合物を、化学量論容量の水が集められるまで穏やかに撹拌しながら128℃に加熱した(5.8mL、おおよそ2.5時間)。生じた黄色の液体混合物を一晩で室温に放冷し、次に分液ロートに移した。約50mLの脱イオン水、引き続き200mLの酢酸エチルを加えた。生成物を次に10の100mLアリコートの脱イオン水で洗浄し、次に無水MgSO上で乾燥させ、活性炭と接触させて無色透明な液体を得た。酢酸エチルの除去後に、淡コハク色および0.6の酸価を有する物質が得られた。
【0064】
実施例6
繊維から得られた多糖類およびポリオールの残基のレブリネートエステルの合成
トウモロコシ繊維をArcher Daniels Midland(Decatur、 IL)から入手し、加水分解にかけた。トウモロコシ湿式製粉機(ADM、 Decatur、 IL)から得られたトウモロコシ繊維(65%水分)の熱化学加水分解を、5kgを回転反応器中145℃で30分間スチームで処理することによって実施した。反応混合物をRietz水平スクリュー圧搾機(Minneapolis、 MN)で固体部分(加水分解されたトウモロコシ繊維)と液体部分(トウモロコシ繊維加水分解物)とに分離した。固体部分(加水分解されたトウモロコシ繊維)を次に15kgの水で洗浄し、Rietz水平スクリュー圧搾機(Minneapolis、 MN)で分離した。洗液を液体トウモロコシ繊維加水分解物と共にプールした。5kgの9バッチを処理し、プールして193kgのトウモロコシ繊維加水分解物液を得た。トウモロコシ繊維の約半分を、この処理によって水溶性にした。トウモロコシ繊維加水分解物液(193kg)を、1重量%硫酸の添加および121℃への30分間の加熱による酸加水分解にかけて酸加水分解トウモロコシ繊維加水分解物を得た。これを濃縮して132グラム/リットルの有機炭素を含有する、おおよそ44.4kgの31重量/重量%酸加水分解トウモロコシ繊維加水分解物濃縮物を得た。有機炭素の一部(32.5g/L)はタンパク質であり、微量(4.4g/L)の酢酸が注目された。レブリン酸エステルの合成に有用である酸加水分解トウモロコシ繊維加水分解物濃縮物中の多糖類およびポリオールの残基を表6に与える。
【0065】
【表5】

【0066】
多糖類およびポリオールの残基を含有する乾燥トウモロコシ繊維加水分解物を、10%モル過剰のレブリン酸(モル過剰は全ポリオール中のヒドロキシル基のモル数に関して計算した)と共に撹拌して酸価A1を有する混合物を形成した。名目上0.176モルのヒドロキシル基を含有する約30グラムの乾燥トウモロコシ繊維加水分解物と、レブリン酸対ヒドロキシル基の1.1モル比を与えるのに十分なレブリン酸(22.5グラム Aldrich、 MW 116.12)とを、3口丸底フラスコ中で乾燥Amberlyst 35 WET樹脂と混合する。この混合物を実質的に実施例1でのように加熱する。反応後に、酸価がA1の値より低い生成物が得られる。反応混合物は、表6にリストされる多糖類およびポリオールの残基のレブリネートエステルを含有する。
【0067】
実施例7
発酵繊維から得られた多糖類およびポリオールの残基のレブリネートエステルの合成
実施例6からの酸加水分解トウモロコシ繊維加水分解物濃縮物を、2100mLの作業容量の4つのNew Brunswick BioFlo III発酵装置(Edison、 New Jersey)のセットにて2つの別個の連続発酵で2つのSaccharomyces cerevisiae菌株(ADM Y500およびr424a)によって発酵させた。各発酵装置での初期発酵容量は1500mLであり、酵母接種物は10%であった。1つでは、発酵培地は、ADM Decaturトウモロコシ工場(Decatur、 IL)製の40%の「ブレンダーミックス」(液化デンプン、バックセット、トウモロコシ浸出液)と60%の酸加水分解トウモロコシ繊維とからなった。全て4つの発酵装置に424A(LNHst)を植菌した。
【0068】
4つの発酵装置の第2セットでは、発酵培地は、80%ブレンダーミックスと20%酸加水分解トウモロコシ繊維加水分解物とからなった。第2セットでは、2つの発酵装置にADM y500を植菌し、2つにr424a(LNHst)を植菌した。ADM y500は、Archer Daniels Midland(Decatur、 IL)から入手したSaccharomyces cerevisiae菌株である。Saccharomyces cerevisiae r424a(LNHst)は、Nancy Ho of the Laboratory of Renewable Resources Engineering at Purdue University, West Lafayette, INによって提供された。発酵培地の1リットル当たり1mLのアミノグルコシダーゼ(EC 3.2.1.3、 ADM、 Decatur、 IL)を、トウモロコシ繊維加水分解物中に残存するいかなるマルトオリゴ糖をも加水分解するために発酵の開始時に発酵装置に加えた。発酵を31℃、pH4.5(水酸化アンモニウム添加によってコントロールされる)で空気添加なしで行い、かき混ぜを150rpmでの単一羽根車で実施した。発酵装置への唯一のフィードは、ブレンダーミックス、トウモロコシ繊維加水分解物、および水酸化アンモニウムであった。サンプルを定期的に採取し、ポリオールの濃度をHPLCによって測定した。両発酵ラン(計8つの発酵装置)からの使用済み発酵培地を組み合わせ、遠心分離して細胞塊および固形分を除去した。液体部分を強制循環の長いチューブの垂直エバポレーターで蒸発させてエタノールおよび幾らかの水を除去して、多糖類およびポリオールの残基を含有する溶液を与えた(表7)。
【0069】
【表6】

【0070】
発酵された酸加水分解トウモロコシ繊維加水分解物からの多糖類およびポリオールの乾燥残基を10%モル過剰のレブリン酸(モル過剰は全ポリオール中のヒドロキシル基のモル数に関して計算した)と共に撹拌して酸価A1を有する混合物を形成する。名目上0.082モルのヒドロキシル基を含有する約30グラムの発酵されたトウモロコシ繊維加水分解物と、レブリン酸対ヒドロキシル基の1.1モル比を与えるのに十分なレブリン酸(10.52グラム Aldrich、 MW 116.12)とを、3口丸底フラスコ中で乾燥Amberlyst 35 WET樹脂と混合する。この混合物を実質的に実施例5のように処理する。反応後に、酸価がA1の値より低い生成物が得られる。反応混合物は、表7にリストされるポリオールのレブリネートエステルを含有する。
【0071】
実施例8
ソルビトールの水素化分解から誘導された多糖類およびポリオールの残基のレブリネート誘導体の合成
ソルビトールを水素化分解にかけて2〜5個の炭素を有する多糖類およびポリオールの残基の混合物を与える。2〜5個の炭素原子を有するポリオールの混合物を分析して組成を測定し、ヒドロキシル基の数を測定する。多糖類およびポリオールの残基のある量の混合物(Xグラム)を、多糖類およびポリオール混合物の残基中に存在する全ヒドロキシル基に関して僅かにモル過剰のレブリン酸を与えるのに十分なグラムのレブリン酸と共に撹拌する。生じた混合物は酸価A1を有する。この混合物を実質的に実施例6のように処理する。反応後に、酸価(A2)がA1の値より低い生成物が得られる。反応混合物は、2〜5個の炭素原子を有する多糖類およびポリオールの残基のレブリネートエステルを含有する。
【0072】
本発明を今十分に説明してきたが、同じことが本発明またはそれの任意の実施形態の範囲に影響を及ぼすことなく、幅広い、同等の範囲内の条件、調合物、および他のパラメーターで行われ得ることは当業者に理解されるであろう。
【0073】
本明細書に列挙される、全ての公文書、例えば、科学出版物、特許、特許出願および公開特許は、まるで各個々の公文書が全体を参照により援用されることを具体的におよび個々に示されているかのように、同程度にそれらの全体を参照により本明細書によって援用される。引用される公文書が公文書の先頭ページを提供するに過ぎない場合には、公文書の残りのページを含む、全体公文書が意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリマーと、
b.OまたはNによって−(A)または−(G)の1つもしくはそれ以上に直接共有結合した多糖類、ポリオール、多糖類もしくはポリオールの残基、またはそれらの混合物からなる群から選択された1つもしくはそれ以上の化合物を含む合体溶剤または可塑剤と、
を含む組成物であって、前記−(A)および前記−(G)が次式:
【化1】

を有する組成物。
【請求項2】
(b)の前記合体溶剤または可塑剤が次の構造:
【化2】

【化3】

【化4】

および
【化5】

(式中、Rは各場合に独立して、ヒドロキシ、水素、(A)−O−、(G)−O−、C1〜4アルコキシ、ベンジルオキシおよびベンゾイルオキシからなる群から選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素、(A)−、C1〜4アルキル、ベンジル、ベンゾイルおよび(G)−からなる群から選択され、
M=OまたはNであり、
Z=OまたはNであり、
MおよびZの値は独立して選択され、そしてMおよびZは同一または異なるものであることができ、Aは、各場合に、
【化6】

であり、
そして、ここでGは、各場合に、
【化7】

である)
を有する1つもしくはそれ以上の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ塩化ビニル、アクリルポリマー、スチレン−アクリル、ビニル−アクリル、エチレン−酢酸ビニル、スチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、ラテックスポリマーおよびアクリルラテックスエマルジョンポリマーからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーがアクリルエマルジョンラテックスポリマーである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
a.アクリルエマルジョンラテックスポリマーと、
b.次の構造:
【化8】

(式中、
は、水素、(G)−および(A)−からなる群から選択され、
そして
10は、水素、(G)−、および(A)−からなる群から選択され、ここで、(A)および(G)は各場合に上記の通りである)
を有する1つもしくはそれ以上の化合物を含む合体溶剤または可塑剤と、
を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
およびR10がそれぞれ(A)−である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記合体溶剤または可塑剤が全固形分の約1%〜約25%w/wの量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記合体溶剤または可塑剤が全固形分の約5%〜約20%の量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記合体溶剤または可塑剤が全固形分の約7%〜約15%の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ガラス転移温度(T)が約1℃〜約40℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
が約3℃〜約20℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
が約5℃〜約15℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
a.ポリマーと、
b.次の構造:
【化9】

【化10】

【化11】

および
【化12】

(式中、Rは各場合に独立して、ヒドロキシ、水素、(A)−O−、(G)−O−、C1〜4アルコキシ、ベンジルオキシおよびベンゾイルオキシからなる群から選択され、
R’は独立して、水素、(A)−、(G)−、C1〜4アルキル、ベンジルおよびベンゾイルからなる群から選択され、
Aは、各場合に、
【化13】

であり、
そしてGは、各場合に、
【化14】

である)
を有する1つもしくはそれ以上の化合物を含む合体溶剤または可塑剤と、
を含む組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ塩化ビニル、アクリルポリマー、スチレン−アクリル、ビニル−アクリル、エチレン−酢酸ビニル、スチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、ラテックスポリマー、およびアクリルラテックスエマルジョンポリマーからなる群の1つもしくはそれ以上から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマーがアクリルエマルジョンラテックスポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
が各場合に独立して、水素、ヒドロキシ、(G)−O−、および(A)−O−からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
が各場合に独立して、ヒドロキシおよび(A)−O−からなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記合体溶剤または可塑剤が全固形分の約1%〜約25%w/wの量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記合体溶剤または可塑剤が全固形分の約5%〜約20%w/wの量で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記合体溶剤または可塑剤が全固形分の約7%〜約15%w/wの量で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
が約1℃〜約40℃である、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
が約3℃〜約20℃である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
が約5℃〜約15℃である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
次式:
【化15】

【化16】

【化17】

および
【化18】

(式中、
は各場合に独立して、ヒドロキシ、水素、(A)−O−、(G)−O−、C1〜4アルコキシ、ベンジルオキシおよびベンゾイルオキシからなる群から選択され、
R’は独立して、水素、(A)−、(G)−、C1〜4アルキル、ベンジルおよびベンゾイルからなる群から選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、水素、(A)−、(G)−、C1〜4アルキル、ベンジルおよびベンゾイルからなる群から選択され、
MはOであり、
ZはOであり、
Aは、各場合に、
【化19】

であり、
そして、Gは、各場合に、
【化20】

である)
の1つを有する化合物。
【請求項25】
次式I:
【化21】

(式中、MはOであり、ZはOであり、Rは、水素、C1〜4アルキルおよび(A)−からなる群から選択され、
そして
は、水素およびヒドロキシからなる群から選択される)
を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
式XX:
【化22】

を有する、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
式II:
【化23】

(式中、MはOであり、ZはOであり、そしてRは、水素、C1〜4アルキル、(G)−および(A)−からなる群から選択される)
を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
式XXI:
【化24】

を有する、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
式IV:
【化25】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、(G)−および(A)−からなる群から選択される)
を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項30】
式XXII:
【化26】

を有する、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
式VIII:
【化27】

(式中、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立して、水素および(A)−からなる群から選択される)
を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項32】
式XXIII:
【化28】

(式中、(A)は、各場合に、
【化29】

である)
を有する、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
a)触媒の存在下で、レブリン酸およびレブリン酸エステルの少なくとも1つを次の化合物:
【化30】

【化31】

および
【化32】

の1つもしくはそれ以上と組み合わせることによって混合物を形成する工程と、
b)前記混合物を約50℃〜約200℃の温度で加熱する工程であって、請求項24に記載の化合物が製造される工程と、
を含む、請求項24に記載の化合物の製造方法。
【請求項34】
a)酵素触媒の存在下で、レブリン酸およびレブリン酸エステルの少なくとも1つを次の化合物:
【化33】

および
【化34】

の1つもしくはそれ以上と組み合わせることによって混合物を形成する工程と、
b)前記混合物を約25℃〜約90℃の温度で加熱する工程であって、請求項24に記載の化合物が製造される工程と、
を含む、請求項24に記載の化合物の製造方法。
【請求項35】
前記ポリマーを前記合体溶剤または可塑剤と組み合わせる工程であって、請求項1または13に記載の組成物が製造される工程を含む、請求項1または13に記載の組成物の製造方法。
【請求項36】
式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIX、XX、XXI、XXIIおよびXXIIIのいずれかの1つもしくはそれ以上の化合物を含む組成物。
【請求項37】
第1のTを有するポリマーを含む組成物のガラス転移温度(T)を低下させる方法であって、
ポリマーを含む前記組成物と請求項36に記載の組成物とを組み合わせる工程を含み、前記第1のTを約2℃以上低下させる方法。
【請求項38】
前記第1のTを約5℃以上低下させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のTを約10℃以上低下させる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記合体溶剤または可塑剤の前記1つもしくはそれ以上の化合物が、OまたはNによって−(A)または−(G)の1つもしくはそれ以上に直接共有結合した多糖類およびポリオールの残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
多糖類およびポリオールの前記残基が植物繊維の加水分解によって製造される、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記植物繊維がトウモロコシ繊維である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
多糖類およびポリオールの前記残基が、アラビノース、キシロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、およびグルコース、ならびにそれらの組み合わせおよび誘導体からなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
多糖類およびポリオールの前記残基が、混合ポリオールの接触分解によって製造された多糖類およびポリオールの残基を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
多糖類およびポリオールの前記残基が、炭水化物の接触分解によって製造された多糖類およびポリオールの残基を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
多糖類およびポリオールの前記残基が、ソルビトール、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、マルトース、アルファ−メチル−d−グルコシド、ペンタアセチルグルコースおよびグルコン酸ラクトン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択された炭水化物の接触分解によって製造された多糖類およびポリオールの残基を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
多糖類およびポリオールの前記残基が、植物繊維加水分解物を発酵させることによって製造された多糖類およびポリオールの残基を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項48】
前記加水分解物がトウモロコシ繊維加水分解物である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
(b)の1つもしくはそれ以上の化合物が、前記多糖類、ポリオール、前記多糖類もしくはポリオールの前記残基、またはそれらの混合物のOまたはNに、不飽和脂肪酸上のカルボニルによって直接共有結合した前記不飽和脂肪酸をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項50】
前記脂肪酸が、植物油から誘導された多価不飽和脂肪酸である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記多糖類、ポリオール、前記多糖類もしくはポリオールの残基、またはそれらの混合物がデンプンもしくはセルロース系多糖類またはそれらの誘導体である、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−523896(P2009−523896A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551441(P2008−551441)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/001563
【国際公開番号】WO2007/094922
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507303309)アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド カンパニー (16)
【Fターム(参考)】