説明

反応性含フッ素オリゴマー及びその製造方法

【課題】高度に分岐したパーフルオロアルケニル基を主鎖にもつ、新規な反応性含フッ素オリゴマーを提供する。
【解決手段】ポリアクリレート主鎖構造において、特定の側鎖[−R−O−Rf]、[−R−OH]、[−R−O−CO−NH−(O−CO−CR=CH)x]、[−R]によるエステル基を持つアクリレート単位を各n、m、p、q個(R,R,R,R:各々C1〜C50,C1〜C100,C2〜C10,C1〜C50の飽和脂肪族炭化水素基で、R,Rは二価、Rは二価又は三価、Rは一価。R、R〜R:水素又はメチル基。n,m:1〜30の整数。p+q:1〜60の整数。x:1又は2。Rfは特定のパーフルオロアルケニル基。)にてなる構造の反応性含フッ素オリゴマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の表面処理剤、表面改質剤等として有用な反応性含フッ素オリゴマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の表面に、撥水撥油性、防汚性等の諸特性を付与する有用な方法として、フルオロカーボン鎖を分子内に導入した化合物を該表面に塗布する方法等が知られており、このような方法が幅広く利用されている。
【0003】
含フッ素オリゴマーは、界面活性剤、表面改質剤、帯電防止剤、分散剤として有用であることが知られている(特許文献1)。しかしながら、含フッ素オリゴマーは、樹脂等の表面への結合力が弱いため、一時的には撥水撥油性、防汚性等の諸特性を発現するものの、持続的に表面特性を改質することができない、また、樹脂等の表面強度が低下するといった問題を抱えていた。また、主鎖が高度に分岐したパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を持つ含フッ素オリゴマーは報告されていない。
【特許文献1】特開2006−249130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高度に分岐したパーフルオロアルケニル基を主鎖にもつ、新規な反応性含フッ素オリゴマーを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、下記項1〜9の反応性含フッ素オリゴマー及びその製造方法を提供する。
項1. 下記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマー。
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、Rfは下記式(2)または(3)で示される基である。Rは炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。Rは、Hまたはメチル基を示す。Rは、Hまたは炭素原子数が1〜50の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である。R、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。n、pの各々は、1〜30の整数であり、m+qは1〜60の整数である。ただし繰り返し単位の各基の順番は特定されない。xは、1または2の整数である。]
【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
項2. 重量平均分子量が2,000〜50,000である項1に記載の反応性含フッ素オリゴマー。
項3. nとm+p+qの割合が、0.1≦n/(m+p+q)≦10.0であり、mとm+pの割合が、0≦m/(m+p)<1.0であり、qとn+m+pの割合が、0≦q/(n+m+p)≦5.0である項1または2に記載の反応性含フッ素オリゴマー。
項4. 上記一般式(1)のRが炭素数2〜30の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
項5. 上記一般式(1)のRが炭素数2〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合またはアリール基を有していてもよい。)である項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
項6. 上記一般式(1)のRが炭素数2〜5の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
項7. 上記一般式(1)のRが、Hまたは炭素原子数が1〜30の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
項8. 項1〜7のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマーの製造方法であって、下記一般式(4)
【0011】
【化4】

【0012】
[式中、Rfは下記式(2)または(3)で示される基である。Rは炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは、Hまたは炭素原子数が1〜50の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である。R、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。n、mの各々は、1〜30の整数であり、qは0〜30の整数である。ただし繰り返し単位の各基の順番は特定されない。]
【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーと下記一般式(5)
【0016】
【化7】

【0017】
[式中、Rは、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。RはHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物とを、アルカリ性触媒存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする反応性含フッ素オリゴマーの製造方法。
項9. 前記一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマー1モルに対し、前記一般式(5)で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物を0.1〜30モル用いて反応させることを特徴とする項8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の表面改質剤として有用であり、それらの表面に撥水撥油性、防汚性、レベリング性を付与させることができる反応性含フッ素オリゴマーが提供される。本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、分子内に反応性アクリレート基またはメタクリレート基を有することから、基材表面への化学結合を用いた密着性強化による表面改質効果の高い持続性が期待できる。また、分子内の反応性基の量、反応条件等を制御することにより、表面改質剤としての膜強度の向上や目的に応じた強度設計を行うことができる。さらに、本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、分子内に炭化水素系置換基、親水性置換基等を導入することにより、表面改質する際の溶媒への溶解度を向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
反応性含フッ素オリゴマー
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、下記一般式(1)
【0020】
【化8】

【0021】
[式中、Rfは下記式(2)または(3)で示される基である。
は炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。
は炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。
は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。
は、Hまたはメチル基を示す。
は、Hまたは炭素原子数が1〜50の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である。
、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。
n、pの各々は、1〜30の整数であり、m+qは1〜60の整数である。ただし繰り返し単位の各基の順番は特定されない。xは、1または2の整数である。]
【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
で表される化合物である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、上記の一般式(1)中、n、pの各々は1〜30の整数であり、m+qは1〜60の整数であり、nとm+p+qの割合が、0.1≦n/(m+p+q)≦10.0であることが好ましく、特に0.1≦n/(m+p+q)≦8.0であることが好ましい。
【0026】
また、mとm+pとの割合は、0≦m/(m+p)<1.0、特に0≦m/(m+p)≦0.9であることが好ましい。qとn+m+pの割合は、0≦q/(n+m+p)≦5.0であることが好ましく、特に0≦q/(n+m+p)≦3.0であることが好ましい。
【0027】
一般式(1)中のRは、炭素原子数が1〜50、好ましくは、炭素原子数が2〜30の二価の飽和脂肪族炭化水素基である。該飽和脂肪族炭化水素基は、所望によりハロゲン原子、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−または−O−CO−)、アミド結合(−NHCO−または−CONH−)又はアリール基を有していてもよい。
【0028】
本発明において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基、アントラニル基、フェナントリル基等の炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0029】
一般式(1)において、特に好ましいRとしては、具体的に以下の構造の二価の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0030】
−(CHn1− (n1=2〜10)
−(CHn2OCOC− (n2=2〜10)
−(CHn3− (n3=1〜10)
−(CHCHO)n4CHCH− (n4=1〜10)
−(CHCHO)n5COC− (n5=1〜10)。
【0031】
一般式(1)において、Rは、通常、炭素原子数が1〜100、好ましくは炭素原子数が2〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基である。該飽和脂肪族炭化水素基は、所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。
【0032】
特に好ましいRとしては、具体的に以下の構造の二価の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0033】
−(CHn6− (n6=2〜10)
−(CHCHO)n7CHCH− (n7=1〜20)
−(CHCHCHO)n8CHCHCH− (n8=1〜10)。
【0034】
一般式(1)において、Rは、炭素原子数2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基である。該飽和脂肪族炭化水素基は、所望によりエーテル結合を有していてもよい。
【0035】
好ましいRとしては、具体的に以下の基が挙げられる。
【0036】
【化11】

【0037】
一般式(1)中のRは、Hまたはメチル基である。
【0038】
一般式(1)中のRは、Hまたは炭素原子数が1〜50、好ましくは炭素原子数が1〜30の一価の飽和脂肪族炭化水素基又はアリール基である。該飽和脂肪族炭化水素基は、所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。
【0039】
好ましいRの具体例としては、−H基、シクロへキシル基、イソボルニル基、ベンジル基、2−エチルヘキシル基、ジシクロペンタニル基、イソオクチル基、式−(CHn9CH (n9=0〜20)で表される基、式−(CHCHO)n10CH (n10=1〜10)で表される基等が挙げられる。
【0040】
一般式(1)中のR、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。また、一般式(1)において、繰り返し単位の各基の順番は特定されず、ランダムでもブロックでもよい。xは、1または2の整数である。
【0041】
一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーの重量平均分子量は、例えば2,000〜50,000程度であり、特に2,500〜30,000程度が好ましい。
【0042】
反応性含フッ素オリゴマーの製造方法
本発明の前記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマーの製造方法は、下記一般式(4)
【0043】
【化12】

【0044】
[式中、Rfは下記式(2)または(3)で示される基である。
は炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。
は炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。
は、Hまたは炭素原子数が1〜50の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である。
、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。
n、mの各々は、1〜30の整数であり、qは0〜30の整数である。ただし繰り返し単位の各基の順番は特定されない。]
【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーと下記一般式(5)
【0048】
【化15】

【0049】
[式中、Rは、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。
はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物とを、アルカリ性触媒存在下、有機溶剤中で反応させることを特徴とする。
【0050】
一般式(4)中のRf、R、R、R、R、R、R、n、m及びqは、前記一般式(1)で表される化合物のものと同じである。また、一般式(5)中のR、R及びxは、前記一般式(1)で表される化合物のものと同じである。一般式(4)において、繰り返し単位の各基の順番は特定されず、ランダムでもブロックでもよい。
【0051】
一般式(4)で示される水酸基含有含フッ素オリゴマーは、例えば、下記式(4A)
CH=CR−COO−R−O−Rf (4A)
(式中、R、R及びRfは、前記に定義されるとおりである)
で表される含フッ素モノマー、下記式(4B)
CH=CR−COO−R−OH (4B)
(式中、R及びRは、前記に定義されるとおりである)
で表される水酸基含有モノマー、及び下記式(4C)
CH=CR−COO−R (4C)
(式中、R及びRは、前記に定義されるとおりである)
で表されるエステル系モノマーを、前記n:m:qの比率で混合し、重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を適量加えて、溶媒の存在下に室温から100℃程度の温度で1〜24時間程度反応させることにより得ることができる。前記式(4A)、(4B)及び(4C)の混合順序は特に限定されない。
【0052】
式(4A)、(4B)及び(4C)で表されるモノマーは、公知の方法により得ることができ、市販品を使用することもできる。
【0053】
一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量は、例えば2,000〜50,000 程度であり、特に2,000〜30,000程度が好ましい。
【0054】
本発明の製造方法において、一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーは、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0055】
また、前記一般式(5)で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物は、従来公知のものを使用すればよく、市販品を入手することもできる。一般式(5)で表される化合物は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0056】
本発明の製造方法に使用する有機溶媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。該非プロトン性溶媒としては、ジメトキシエタン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく例示される。該有機溶媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0057】
また、アルカリ性触媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、好ましいアルカリ性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機系のアルカリ性触媒が挙げられる。該アルカリ性触媒は、特に、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。該アルカリ性触媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0058】
本発明の製造方法において、好ましい反応温度は、−20℃〜100℃程度であるが、特に20℃〜90℃程度が好ましい。
【0059】
本発明の製造方法においては、一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマー1モルに対して、一般式(5)の末端にイソシアネート基を有する反応性化合物を0.1〜30モル程度、好ましくは0.2〜20モル程度、より好ましくは0.5〜15モル程度使用すればよい。一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物の使用割合は、目的生成物である上記一般式(1)で表される化合物に求められる特性に応じて適宜設定すればよい。
【0060】
また、アルカリ性触媒の使用量は、一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマー1モルに対して、通常0.0001〜0.5モル程度、好ましくは0.001〜0.1モル程度である。
【0061】
有機溶媒の使用量は、一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマー1重量部に対して、通常0.5〜20重量部程度、好ましくは1〜10重量部程度である。
【0062】
本発明の製造方法において、反応時間は特に限定されないが、通常1〜48時間程度とすればよい。
【0063】
この様にして得られる本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、パーフルオロカーボン鎖の中でも、上記一般式(2)及び(3)で示される分岐状パーフルオロカーボン鎖を分子内に有する。本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、表面エネルギーの低下に効果的であるトリフルオロメチル基を分子内に多数有することにより、高い表面改質効果をもたらす。
【0064】
また、上記一般式(2)及び(3)で示される分岐状パーフルオロカーボン鎖の原料である含フッ素化合物(ヘキサフルオロプロペン3量体)は、分岐度が高く、比較的安価であり、実用上極めて有用なフルオロカーボン鎖導入剤又はその調製原料である。
【0065】
使用方法
前記一般式(1)で表される本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒の溶液として、または、塗料などの塗工液に添加した溶液として使用することができる。
【0066】
一般式(1)で表される本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。また、該溶液に使用する前記溶媒も、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0067】
本発明の反応性含フッ素オリゴマーを含む前記溶液を、例えば、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の基材表面に塗布、コーティング、スプレー等により付着させることにより、基材表面の特性を改質することができる。すなわち、該溶液中の溶媒が蒸発することにより、基材表面に本発明の反応性含フッ素オリゴマーの膜が形成される。該膜は、撥水撥油性、防汚性、レベリング性等を有する。溶媒の乾燥(蒸発)条件は、溶液中の溶媒の種類、量等によって変化するが、通常 室温〜200℃で、10秒間〜10分間程度乾燥させればよい。
【0068】
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、分子内に反応性アクリレート基またはメタクリレート基を有することから、基材表面への化学結合を用いた密着性強化による表面改質効果の高い持続性が期待できる。すなわち、本発明の反応性含フッ素オリゴマー中の反応基であるアクリル基又はメタクリル基は、通常は光によって、基材表面及び/又は反応性含フッ素オリゴマー自身と反応する。該光反応はその条件によって異なるため限定はできないが、通常、250nm〜400nm程度の波長の光を100〜500mJ/cm照射することにより達成できる。該光反応は、上記乾燥処理を行った後に行えばよい。該光反応は、場合によっては太陽光も使用することができる。これにより、含フッ素オリゴマーの膜が基材表面上に密着し、撥水撥油性、防汚性、レベリング性等の高い持続性が達成される。
また、含フッ素オリゴマー分子内の反応性基の量、反応条件等を制御することにより、表面改質剤としての膜強度の向上や目的に応じた強度設計を行うことができる。
【0069】
該溶液中の反応性含フッ素オリゴマーの溶液の濃度は、特に限定されないが、例えば0.1〜90.0重量%程度とすればよい。該溶液中の反応性含フッ素オリゴマーの溶液の濃度が低すぎると、表面上に存在する反応性含フッ素オリゴマーの量が少なくなり、塗布あるいはスプレーした改質表面が薄くなったり、反応性低下の要因になる。また、改質表面の強度が十分に得られない等の問題も生じ得る。一方、該濃度が高すぎる場合には、塗布むらなどが出る場合がある。該溶液中の反応性含フッ素オリゴマーの溶液の濃度は、溶媒の種類、ポリマーの分子量等による溶解度にも影響される。
【0070】
また、光重合開始剤を使用する場合、光重合開始剤の使用量は該溶液中0.01〜10重量%程度とすればよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0072】
合成例1
滴下ロートを備えた三つ口フラスコ(3L)内に、4−ヒドロキシブチルアクリレート259.5g(1.8mol)、トリエチルアミン218.6g(2.16mol)、アセトニトリル1000gを入れた。滴下ロートにヘキサフルオロプロペントリマー973.0g(2.16mol)を入れフラスコ内の溶液中へ約60分間かけて攪拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温で攪拌をさらに3時間続行した。
【0073】
反応混合物に1N塩酸2200gを加えて反応を停止させ、次いで、反応混合物を5Lのビーカー内へ移した後、水1Lを用いる洗浄処理を3回行った。水洗処理後の溶液を減圧下脱水することにより、次式(6)で表されるフッ素化アクリレートを964.0g(収率93%)得た。得られたフッ素化アクリレート(6)のH−NMRのデータを表1に示す。
【0074】
【化16】

【0075】
[式中、Rfは下記一般式(2)または(3)で示される基である。]
【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
【表1】

【0079】
合成例2
滴下ロートを備えた三つ口フラスコ(3L)内に、2−ヒドロキエチルメタクリレート130.1g(1.0mol)、トリエチルアミン111.1g(1.1mol)、酢酸エチル600gを入れた。滴下ロートに次式(7)で表される含フッ素酸クロライド586.5g(1.0mol)、酢酸エチル100gを入れフラスコ内の溶液中へ約60分間かけて攪拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温で攪拌をさらに3時間続行した。
【0080】
反応混合物に1N塩酸1050gを加えて反応を停止させ、次いで、該反応混合物を3Lのビーカー内へ移した後、水1Lを用いる洗浄処理を3回行った。水洗処理後の溶液を減圧下脱水することにより、次式(8)で表されるフッ素化メタクリレートを634.8g(収率93%)得た。得られたフッ素化メタクリレート(8)のH−NMRのデータを表2に示す。
【0081】
【化19】

【0082】
[式中、Rfは下記の一般式(3)で示される基である。]
【0083】
【化20】

【0084】
【化21】

【0085】
[式中、Rfは下記の一般式(3)である。]
【0086】
【化22】

【0087】
【表2】

【0088】
合成例3
冷却管を備えた三つ口フラスコ(2L)内に、合成例1で合成した含フッ素アクリレート(6)287.1g(0.5mol)、日油社製ブレンマーAE−400[HO(CH2CH2O)10C(=O)CH=CH2]256.1g(0.5mol)、酢酸エチル543.2g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.8g(29.3mmol)、ラウリルメルカプタン41.5g(204.8mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量1132.7g、50質量%酢酸エチル溶液)に得られた。
【0089】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)を用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0090】
合成例4
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例1で合成した含フッ素アクリレート(6)28.71g(0.05mol)、4−ヒドロキシブチルアクリレート21.64g(0.15mol)、酢酸エチル51.02g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.96g(5.85mmol)、ラウリルメルカプタン8.91g(43.88mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量111.24g、50質量%酢酸エチル溶液)に得られた。
【0091】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0092】
合成例5
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例2で合成した含フッ素メタクリレート(8)34.17g(0.05mol)、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.27g(0.05mol)、酢酸エチル41.45g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.48g(2.93mmol)、ラウリルメルカプタン4.14g(20.48mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート、メタクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量87.51g、50質量%酢酸エチル溶液)に得られた。
【0093】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0094】
合成例6
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例1で合成した含フッ素アクリレート(6)17.22g(0.03mol)、日油社製ブレンマーAE−400、15.38g(0.03mol)、日油社製ブレンマーLA[CH3(CH2)11OC(=O)CH=CH2]、14.42g(0.06mol)、酢酸エチル47.12g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.58g(3.51mmol)、ラウリルメルカプタン3.56g(17.55mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量98.28g、50質量%酢酸エチル溶液)に得られた。
【0095】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0096】
合成例7
冷却管を備えた三つ口フラスコ(2L)内に、合成例1で合成した含フッ素アクリレート(6)258.88g(0.45mol)、日油社製ブレンマーAE−400を230.93g(0.45mol)、酢酸エチル490.81g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.32g(26.3mmol)、ラウリルメルカプタン11.75g(57.92mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量996.69g、50質量%酢酸エチル溶液)に得られた。
【0097】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0098】
合成例8
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例2で合成した含フッ素メタクリレート(8)8.95g(13.1mmol)、4−ヒドロキシブチルアクリレート10.37g(71.9mmol)、メタクリル酸0.61g(7.1mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15g(0.92mmol)、ラウリルメルカプタン0.16g(0.79mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら90℃まで加熱し反応を開始した。その後90℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート、メタクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量50.24g、40質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)に得られた。
【0099】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0100】
合成例9
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例2で合成した含フッ素メタクリレート(8)9.56g(14.0mmol)、4−ヒドロキシブチルアクリレート10.27g(71.2mmol)、メタクリル酸1.34g(15.5mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15g(0.91mmol)、ラウリルメルカプタン0.15g(0.74mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら90℃まで加熱し反応を開始した。その後90℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート、メタクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量51.47g、41.7質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)に得られた。
【0101】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0102】
合成例10
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例2で合成した含フッ素メタクリレート(8)6.80g(10.0mmol)、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.48g(10.0mmol)、ラウリルアクリレート4.80g(20.0mmol)、ジメトキシエタン13.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0673g(0.41mmol)、ラウリルメルカプタン0.20g(0.99mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート、メタクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量26.35g、50.7質量%ジメトキシエタン溶液)に得られた。
【0103】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0104】
合成例11
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、合成例2で合成した含フッ素メタクリレート(8)6.80g(10.0mmol)、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.45g(10.0mmol)、ベンジルアクリレート7.04g(40.0mmol)、ジメトキシエタン15.3g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.102g(0.61mmol)、ラウリルメルカプタン0.30g(1.48mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート、メタクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の水酸基含有含フッ素オリゴマーが定量的(収量30.99g、49.4質量%ジメトキシエタン溶液)に得られた。
【0105】
得られた水酸基含有含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0106】
合成比較例1
冷却管を備えた三つ口フラスコ(200mL)内に、日油社製ブレンマーAE−400、51.2g(0.1mol)、酢酸エチル51.2g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.64g(10mmol)、ラウリルメルカプタン6.07g(30mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を21時間続行した。反応の終了をH−NMRのアクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の比較オリゴマーが定量的(収量110.11g、53.3質量%酢酸エチル溶液)に得られた。
【0107】
得られた水酸基含有オリゴマーの重量平均分子量はGPCを用いて確認した。測定結果を表3に示す。
【0108】
【表3】

【0109】
実施例1
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、酢酸エチルで50質量%に調製した、合成例3で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CH−、Rが−(CHCHO)9CHCH−、R及びRがH、qが0、m/nが1である化合物)20.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.712g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.010gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を12時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量20.72g)で得られた。
【0110】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。
【0111】
合成した反応性含フッ素オリゴマー3.00g(50重量%酢酸エチル溶液)に光開始剤(チバスペシャリティーケミカル製イルガキュア819)を0.06g加え、ガラス板(100mm×100mm×2mm、アセトン脱脂後に使用)にスピンコーター(ミカサ製1H07)を用いて1000rpmで10秒間コーティング処理を施した。その後、90℃で60秒間乾燥させた後、UV照射(254nm,20分)(UVP CL1000)して硬化させ、表面の状態を触感で確認し、水の接触角は協和界面科学社製DropMaster700を用いて測定した。その測定結果を表6に示す。
【0112】
実施例2
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、酢酸エチルで50質量%に調製した、合成例4で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CH−、Rが−(CH−、R及びRがH、qが0、m/nが3である化合物)10.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート2.304g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.017gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を40時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量12.32g)で得られた。
【0113】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。また、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0114】
実施例3
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、酢酸エチルで50質量%に調製した、合成例5で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHOCOC−、Rが−(CH−、RがCH、RがH、qが0、m/nが1である化合物)10.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.216g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.007gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を5時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量10.22g)で得られた。
【0115】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0116】
実施例4
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、酢酸エチルで50質量%に調製した、合成例7で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CH−、Rが−(CHCHO)9CHCH−、R及びRがH、qが0、m/nが1である化合物)20.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.725g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.011gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を12時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量20.74g)で得られた。
【0117】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0118】
実施例5
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで20質量%に調製した、合成例8で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHOCOC−、Rが−(CH−、RがH、RがCH、RがH、RがCH、(m+q)/nが6.0、q/mが0.1である化合物)10.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.224g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.01gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を4時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量10.225g)で得られた。
【0119】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0120】
実施例6
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで20質量%に調製した、合成例9で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHOCOC−、Rが−(CH−、RがH、RがCH、RがH、RがCH、(m+q)/nが6.2、q/mが0.22である化合物)10.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート1.05g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.01gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を21時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量11.06g)で得られた。
【0121】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0122】
実施例7
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、ジメトキシエタンで50質量%に調製した、合成例10で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHOCOC−、Rが−(CH−、R−(CH11CH、RがCH、RがH、RがH、(m+q)/nが3、q/mが2である化合物)10.01g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.124g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.004gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を19時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量10.14g)で得られた。
【0123】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0124】
実施例8
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、ジメトキシエタンで50質量%に調製した、合成例11で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHOCOC−、Rが−(CH−、Rが−CH、RがCH、RがH、RがH、(m+q)/nが5、q/mが4である化合物)10.01g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.251g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.004gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を24時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量10.26g)で得られた。
【0125】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0126】
実施例9
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで20質量%に調製した、合成例8で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHOCOC−、Rが−(CH−、RがH、RがCH、RがH、RがCH、(m+q)/nが6.0、q/mが0.1である化合物)10.00g、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート0.38g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.009gを入れた。その後、80℃で反応溶液の攪拌を9時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(収量10.389g)で得られた。
【0127】
合成した反応性含フッ素オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性含フッ素オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0128】
比較例1
実施例1で用いた酢酸エチルで50質量%に調製した、合成例3で合成した水酸基含有含フッ素オリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CH−、Rが−(CHCHO)9CHCH−、RがH、qが0、m/nが1である化合物)を3.00g秤量し、ガラス板(100mm×100mm×2mm、アセトン脱脂後に使用)にスピンコーター(ミカサ製1H07)を用いて1000rpmで10秒間コーティング処理を施した。その後、90℃で60秒間乾燥させた後、UV照射(254nm,20分)(UVP CL1000)して硬化させ、表面の状態を触感で確認し、水の接触角は協和界面科学社製DropMaster700を用いて測定した。その測定結果を表6に示す。
【0129】
比較例2
比較例2として、アセトンで脱脂したのみのガラス板の水の接触角は協和界面科学社製DropMaster700を用いて測定した。その測定結果を表6に示す。
【0130】
比較例3
窒素置換を行ったナスフラスコ(50ml)内に、酢酸エチルで20質量%に調製した、比較合成例1で合成したオリゴマー(前記一般式(4)で表される化合物において、Rが−(CHCHO)9CHCH−、RがH、n、qが0である化合物)8.00g、2−(イソシアネートエチル)メタクリレート0.101g及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.004gを入れた。その後、50℃で反応溶液の攪拌を13時間続行した。反応の終了はFT−IRを用いて確認した。比較の反応性オリゴマーが定量的(収量8.105g)で得られた。
【0131】
合成した反応性オリゴマーのFT−IRデータを表4に示す。また、重量平均分子量はGPCを用いて確認し、その測定結果を表5に示す。さらに、合成した反応性オリゴマーを実施例1と同様に処理し、水の接触角を測定した。その測定結果を表6に示す。
【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
実施例では表面の状態が、固化した状態(ゲルも含む)でガラス表面への硬化膜処理が可能であった。実施例の接触角は全て比較例2の未処理のガラス板に比べ高い値となり、ガラス表面への疎水化効果を示した。比較例1は反応性を付与していない含フッ素オリゴマーであり、ガラス表面への硬化膜処理ができなかった。比較例3はフッ素非含有の反応性オリゴマーであり、ガラス表面への硬化膜処理は可能であったが、ガラス表面を疎水化することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明による、反応性含フッ素オリゴマーは、例えば、ガラス、フィルム等の表面改質剤として有用であり、フィルム表面に撥水撥油性、防汚性を付与させることができる化合物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される反応性含フッ素オリゴマー。
【化1】

[式中、Rfは下記式(2)または(3)で示される基である。Rは炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。Rは、Hまたはメチル基を示す。Rは、Hまたは炭素原子数が1〜50の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である。R、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。n、pの各々は、1〜30の整数であり、m+qは1〜60の整数である。ただし繰り返し単位の各基の順番は特定されない。xは、1または2の整数である。]
【化2】

【化3】

【請求項2】
重量平均分子量が2,000〜50,000である請求項1に記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【請求項3】
nとm+p+qの割合が、0.1≦n/(m+p+q)≦10.0であり、mとm+pの割合が、0≦m/(m+p)<1.0であり、qとn+m+pの割合が、0≦q/(n+m+p)≦5.0である請求項1または2に記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【請求項4】
上記一般式(1)のRが炭素数2〜30の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である請求項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【請求項5】
上記一般式(1)のRが炭素数2〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合、エステル結合またはアリール基を有していてもよい。)である請求項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【請求項6】
上記一般式(1)のRが炭素数2〜5の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である請求項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【請求項7】
上記一般式(1)のRが、Hまたは炭素原子数が1〜30の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である請求項1〜3のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマーの製造方法であって、下記一般式(4)
【化4】

[式中、Rfは下記式(2)または(3)で示される基である。Rは炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)である。Rは、Hまたは炭素原子数が1〜50の一価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはアリール基を有していてもよい。)またはアリール基である。R、R及びRは相互に独立してHまたはメチル基である。n、mの各々は、1〜30の整数であり、qは0〜30の整数である。ただし繰り返し単位の各基の順番は特定されない。]
【化5】

【化6】

で表される水酸基含有含フッ素オリゴマーと下記一般式(5)
【化7】

[式中、Rは、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。RはHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物とを、アルカリ性触媒存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする反応性含フッ素オリゴマーの製造方法。
【請求項9】
前記一般式(4)で表される水酸基含有含フッ素オリゴマー1モルに対し、前記一般式(5)で表される末端にイソシアネート基を有する反応性化合物を0.1〜30モル用いて反応させることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−47680(P2010−47680A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212715(P2008−212715)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】