説明

反応性希釈剤を有するコポリマー水性分散体

【課題】低溶媒含量を有し、被覆フィルムにおいて高耐性レベル(特に非常に良好な耐スクラッチ性および耐酸性)を有するコポリマー水性分散体等を提供すること。
【解決手段】A)a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、およびd)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマーから合成された、一以上のヒドロキシ官能性コポリマーと、B)反応性希釈剤として、一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールを含んでなる、コポリマー水性分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシ官能性コポリマーに基づく、低溶媒含量のコポリマー水性分散体、それらの製造方法、該コポリマー水性分散体を含有する結合剤組成物、および、耐スクラッチ性被覆物の製造のための該結合剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆系(例えば、独国特許公開DE-A 3 209 421(特許文献1)、欧州特許公開EP-A 95 263(特許文献2)、EP-A 105 293(特許文献3)、EP-A 133 949(特許文献4)、EP-A 288 763(特許文献5)に記載)において、水に希釈可能なコポリマー系結合剤を使用することが知られている。しかしながら、これらの結合剤は、通常、安定化用乳化剤および/または相当部分の有機共溶媒を含む。
【0003】
相当量の有機溶媒を使用することは、環境上の理由から望ましくない。しかしながら、それは、ポリマー製造において、十分な攪拌性、反応混合物の熱除去および反応器の所定の最小充填量を確保するという目的を追求するためには不可避なものである。さらに、水性被覆組成物において、有機溶媒は、改善された保存安定性、顔料の濡れ、フィルムの光学的性質、および平滑化のような有利な効果を導く。
【0004】
方法に関連した溶媒含量を、その後にコポリマーまたはコポリマー分散体から低減することは、装置およびエネルギーに関して、したがって、費用に関しても、高いレベルの消費を必要とする。その結果、いかなる性能低下もさせずに、主として有機溶媒を使用せずに製造することができる水性ポリマー分散体が要望されている。
【0005】
化学反応によって硬化されるコポリマー分散体(例えば、アミノ樹脂またはブロックトまたは非ブロックトポリイソシアネートを有するもの)は、特定量の反応性基(例えば、ヒドロキシル基)を含有しなければならない。これらの基は、通常、共重合の間にヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルを使用することによってコポリマー中に導入される。しかしながら、非官能性(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと比較して、これらのヒドロキシ官能性原料は、非常に高価である。また、より大きい架橋密度によって被覆フィルムの親水性を補うために、有機溶液中のコポリマーと比較して、かなりの量のこれらの原料の使用をしばしば必要とする。
【0006】
重合のために主として溶媒を使用しないヒドロキシ官能性コポリマー二次分散体を製造するための一つの方法は、欧州特許公開EP-A 0 758 007(特許文献6)に開示されている。典型的に用いられる溶媒は、完全にまたは部分的にヒドロキシ官能性ポリエーテルによって置き換えられる。該ヒドロキシ官能性ポリエーテルは、二次分散体中に反応性希釈剤として残留し、その後のウレタンを形成するためのブロックトまたは非ブロックトイソシアネートとの架橋反応に関与する。その結果として、それらはVOCの一因とならない。しかしながら、塗布の特定分野において、被覆組成物中のポリエーテル画分は、低耐性、例えば、低耐スクラッチ性を導くことが知られている。
【特許文献1】独国特許公開DE-A 3 209 421
【特許文献2】欧州特許公開EP-A 95 263
【特許文献3】欧州特許公開EP-A 105 293
【特許文献4】欧州特許公開EP-A 133 949
【特許文献5】欧州特許公開EP-A 288 763
【特許文献6】欧州特許公開EP-A 0 758 007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今日、低溶媒含量を有し、被覆フィルムにおいて高耐性レベル(特に非常に良好な耐スクラッチ性および耐酸性)を有するコポリマー水性分散体は、ヒドロキシ官能性ポリカーボネートを反応性希釈剤として使用する場合、ヒドロキシ官能性コポリマーをベースとすることができることが分かった。
本発明は、このようなコポリマー水性分散体、それらの製造方法、該コポリマー水性分散体を含有する結合剤組成物、および、耐スクラッチ性被覆物の製造のための該結合剤の使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、A)a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、
b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、および
d)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマー
から合成された、一以上のヒドロキシ官能性コポリマーと、
B)反応性希釈剤として、一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオール
を含んでなる、コポリマー水性分散体に関する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明のコポリマー水性分散体の製造方法であって、
a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、
b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、および
d)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマー
を含有する、一以上のモノマー混合物を、反応性希釈剤B)として一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールの存在下、フリーラジカル重合し、次いで、
中和剤の添加前または添加後に、得られたコポリマーを水中に分散させることを含む、
方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、上記本発明のコポリマー水性分散体を含有する被覆組成物およびこれらの被覆組成物から製造された耐スクラッチ性被覆物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
使用される成分a)のモノマーは、エステル基のアルコール部分中に1〜18個の炭素原子を有するアクリレートおよびメタクリレート(以下、(メタ)アクリレートと称する)である。このアルコール部分は、直鎖状脂肪族、分枝状脂肪族または脂環族であり得る。
【0012】
適当なモノマーa)としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、異性体ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルまたはシクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、およびイソボルニル(メタ)アクリレートまたはアセトアセトキシエチルメタクリレートが挙げられる。適当なビニル芳香族化合物としては、とりわけスチレン、置換スチレン、およびビニルトルエンが挙げられる。また、成分a)として適当なものは、上記化合物の混合物である。
【0013】
成分b)として適当なものは、エチレン性不飽和OH含有モノマー、例えば、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、好適にはヒドロキシアルキル基中に2〜12個、好適には2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。その例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、異性体ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-、3-、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および異性体ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
イオン性および/または潜在的イオン性モノマーc)は、フリーラジカル重合可能なものであり、カルボン酸または無水カルボン酸基を有するオレフィン性不飽和モノマーが挙げられる。その例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、または二塩基酸のモノアルキルエステルおよび/または無水物、例えば、マレイン酸モノアルキルが挙げられ、好適には、アクリル酸および/またはメタクリル酸が挙げられる。
【0015】
他の適当なモノマーc)は、例えば、WO-A 00/39181(第8頁第13行〜第9頁第19行)に記載されるような、ホスフェイト、ホスホネート、スルホン酸またはスルホネート基を有する不飽和のフリーラジカル重合可能な化合物であり、好適には、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
【0016】
また、成分d)としてフリーラジカル共重合可能な他のモノマーを使用することもできる。その例としては、アクリル酸またはメタクリル酸の誘導体、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル;ビニルエーテル;および酢酸ビニルが挙げられる。他の適当なモノマーd)としては、二以上の官能価を有する(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはビニルモノマー、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはジビニルベンゼンが挙げられる。また、モノマーd)として適当なものは、アルキレンオキシドで変性された、または鎖延長された、≦3000g/モル、好適には≦500g/モルの数平均分子量を有する重合可能なヒドロキシ官能性モノマーである。この目的に使用されるアルキレンオキシドは、好適には、エチレン、プロピレンまたはブチレンオキシドであり、これらは個々にまたは混合物の状態で使用することができる。
【0017】
他のモノマーd)としては、ビニルエステル、例えば、バーサチック酸のビニルエステルが挙げられ、これは、Resolution Performance ProductsからVEOVA(商標) 9、10、および11のもと市販されている。それらは、式(I):
【0018】
【化1】

【0019】
〔式中、RおよびRは、6、7または8個の炭素原子を含有する分枝状アルキル基であり、Rは、メチルである。〕
で示される高度に分枝した構造を有するビニルエステルである。これらの酸は、VEOVA(商標) 9、10、および11酸に対応する。
【0020】
VEOVAシリーズのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、70℃(VEOVA 9)、−3℃(VEOVA 10)、および−40℃(VEOVA 11)であると報告されている。
【0021】
他のモノマーd)としては、アルコキシポリエチレングリコールまたはアルコキシプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、例えば、一官能性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノールまたはブタノールの異性体の一つ)から出発して製造されたエチレンオキシドポリエーテルまたはプロピレンオキシドポリエーテルとのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル化により得られたものが挙げられる。好適には、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0022】
適当なヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、好適には、モノマージオール(例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジ-、トリ-またはテトラエチレングリコール、ジ-、トリ-またはテトラプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、4,4'-ジメチロールシクロヘキサンおよび/またはそれらの混合物)を、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネート)、アルキレンカーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)、またはホスゲンと反応させることによって製造されたものである。必要に応じて、少量のより高い官能性のモノマーポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトールを使用することができる。
【0023】
ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.6〜6、好適には1.8〜3、より好適には1.9〜2.3の平均ヒドロキシル官能価を有し、240〜5000、好適には500〜3000、より好適には700〜1500の数平均分子量を有する。ポリカーボネートポリオールB)は、好適には、欧州特許EP 1 404 740 B1(第6頁〜第8頁、実施例1〜6)および欧州特許公開EP 1 477 508 A1(第5頁、実施例3)に記載された製造方法によって製造される。
【0024】
特に好適なポリカーボネートポリオールB)は、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールまたは二つの上記ジオールの混合物から製造され、1.9〜2.05の平均ヒドロキシル官能価を有する。
【0025】
成分A)およびB)の重量に基づく成分B)の量は、通常、5〜60重量%、好適には10〜40重量%、より好適には15〜30重量%である。
【0026】
不飽和モノマーの重合のための手順は、既知であり、反応性希釈剤B)を反応容器中に初充填物として導入し、そしてフリーラジカル開始剤を使用して不飽和モノマーを重合することを含む。共重合は、好適には、一般に40〜200℃、より好適には60〜180℃、最も好適には80〜160℃で行う。
【0027】
必要に応じて、有機溶媒を少量で用いることもできる。適当な溶媒としては、被覆技術から既知のもの、例えば、アルコール、エーテル、エーテル基含有アルコール、エステル、ケトン、非極性炭化水素、または、これらの溶媒の混合物が挙げられる。該溶媒は、最終分散体中のそれらの量が0〜5重量%となるような量で使用される。必要な場合、使用された溶媒は、蒸留によって再度部分的に除去することができる。
【0028】
重合反応用の適当な開始剤の例としては、有機ペルオキシド(例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシドまたはtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)およびアゾ化合物(例えば、アゾジイソブチロニトリル(AIBN))が挙げられる。使用される開始剤の量は、所望の分子量に依存する。また、操作の確実性およびより容易な取扱性のため、ペルオキシド開始剤を上記タイプの適当な有機溶媒中の溶液として使用することもできる。
【0029】
上記方法の好適な一実施態様において、成分B)の存在下、二段階の不飽和モノマーの付加重合を行う。この実施態様において、第一工程(I)において、12〜200、好適には15〜190、より好適には100〜165mgKOH/g固体のOH価および0〜50、好適には0〜20、より好適には0〜15mgKOH/g固体の酸価を有するヒドロキシ官能性コポリマーを、55〜90重量%の成分a)、2.5〜50重量%の成分b)、0〜6.5重量%の成分c)、および0〜42.5重量%の成分d)から製造する。
【0030】
その後の工程(II)において、別のポリマーを、工程(I)から得られた、モノマーa)〜d)由来の反応混合物中に製造する。このポリマーは、20〜200、好適には20〜190、より好適には50〜165mgKOH/g固体のOH価および50〜200、好適には75〜185、より好適には77〜150mgKOH/g固体の酸価を有する。工程(II)からのポリマーは、45〜80重量%の成分a)、5〜50重量%の成分b)、6.5〜25重量%の成分c)および0〜43.5重量%の成分d)から製造される。
【0031】
両工程において、ポリマー組成物の%データは、ポリマー当たり合計100重量%になる。二つのポリマーの製造のモノマー量は、工程(I)からのポリマーと工程(II)からのポリマーとの重量比が10:1〜1:2、好適には6:1〜2:1になるように選択される。
【0032】
合成成分a)〜d)の量は、好適には、コポリマーが12.5〜200mgKOH/g、好適には15〜190mgKOH/g、より好適には95〜165mgKOH/g固体のOH価および4.5〜150mgKOH/g、好適には7〜75mgKOH/g、より好適には10〜60mgKOH/g固体の酸価を有するように選択される。工程(I)および(II)から得られたポリマーは、54〜83重量%、好適には53.5〜87重量%の成分a);2.5〜50重量%、好適には3〜50重量%の成分b);0.6〜19重量%、好適には1〜12.5重量%の成分c);および0〜43.5重量%、好適には0〜43重量%の成分d)から製造される。
【0033】
多段階重合方法の代わりに、コポリマーA)の組成にしたがって変化する組成を有するモノマー混合物を添加することによる連続的操作(グラジエント重合)を行うことができる。成分c)、および必要に応じてd)の親水性モノマー画分は、好適には、フィードの終わりに向かって開始時より高くなる。
【0034】
本発明の方法により得ることができるコポリマーは、500〜30,000g/モル、好適には1000〜15,000g/モル、より好適には1500〜10,000g/モルの数平均分子量Mを有する。
【0035】
水中へのヒドロキシ官能性コポリマーA)の分散前、分散の間または分散後、存在する酸基の少なくとも一部を、適当な中和剤を添加することによって、それらの塩の形態に変換する。適当な中和剤としては、有機アミンまたは水溶性無機塩基、例えば、可溶性の金属水酸化物、金属炭酸塩または金属炭酸水素塩が挙げられる。
【0036】
適当なアミンの例としては、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブタノールアミン、モルホリン、2-アミノメチル-2-メチルプロパノールまたはイソホロンジアミンが挙げられる。混合物において、比例的にアンモニアを使用することができる。特に好適には、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンおよびエチルジイソプロピルアミンが挙げられる。
【0037】
中和剤は、40%〜150%、好適には60%〜120%の理論上の酸基の中和度となるような量で添加される。中和度は、添加した中和成分の塩基とコポリマーの酸官能基との間の比率であると理解される。本発明の結合剤水性分散体のpHは、6〜10、好適には6.5〜9である。
【0038】
本発明のコポリマー水性分散体は、25〜70重量%、好適には35〜60重量%、より好適には40〜55重量%の固形分を有し、0〜5重量%、好適には0.5〜3.5重量%の有機溶媒含量を有する。
【0039】
本発明のコポリマー分散体は、水性被覆組成物の製造に使用することができる。それらを架橋剤と組み合わせることによって、反応性に応じて、または、必要に応じて架橋剤をブロックすることに応じて、一成分および二成分の被覆組成物の両方を製造することができる。本発明のための一成分被覆組成物は、いかなる有意な程度、または、その後の塗布に弊害となるいかなる程度の架橋反応を生じさせずに、結合剤成分および架橋剤成分を一緒に保存することができる被覆組成物である。架橋反応は、架橋剤の活性化に続く塗布の間または塗布の後にのみ起こる。この活性化は、例えば、温度を上昇させることによって引き起こすことができる。
【0040】
本発明のための二成分被覆組成物は、結合剤成分および架橋剤成分を、それらの高い反応性に起因して、別々の容器に保存しなければならない被覆組成物である。二成分を塗布直前にのみ混合する。ここで、それらは、通常、さらなる活性化をせずに反応する。架橋反応を促進するため、触媒を使用すること、または、より高い温度を用いることもできる。
【0041】
また、本発明は、
i)一以上の本発明のコポリマー水性分散体と、
ii)少なくとも一つのOH反応性架橋剤
を含有する水性被覆組成物に関する。
【0042】
適当なOH反応性架橋剤の例としては、ポリイソシアネート架橋剤、アミド-およびアミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂およびケトン樹脂、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、尿素樹脂、カルバミン酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂およびアニリン樹脂が挙げられる。
【0043】
好適な架橋剤は、一分子当たり二以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートであり、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトノナンまたは異性体トリレン2,4-および2,6-ジイソシアネート(TDI)から製造される。該ポリイソシアネートは、ウレタン、イソシアヌレートおよび/またはビウレット基をさらに含有することができる。該ポリイソシアネートは、必要に応じてブロックすることができる。
【0044】
特に好適には、脂肪族または脂環族イソシアネートから製造された低粘度ポリイソシアネートを使用することが挙げられる。また、必要に応じて、これらのポリイソシアネートも親水性であり得る。
【0045】
架橋剤として使用されるポリイソシアネートは、好適には、10〜5000mPa・sの粘度(23℃)を有し、そして粘度調整のため、少量の不活性溶媒とのブレンドとして用いることができる。
【0046】
本発明のコポリマーは、通常、疎水性架橋剤樹脂でさえも、さらなる乳化剤を用いずに分散することができるように十分に親水性である。しかしながら、このことは、外部乳化剤の使用を除外するものではない。
【0047】
水溶性または水分散性ポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート、スルホネートおよび/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基による変性によって得られる。ポリイソシアネートの親水性変性は、例えば、未化学量論的量の一価の親水性ポリエーテルアルコールと反応させることによって行うことができる。このタイプの親水性ポリイソシアネートの製造は、例えば、欧州特許公開EP-A 0 540 985(第3頁第55行〜第4頁第5行)に記載されている。
【0048】
また、高度に適当なものは、欧州特許公開EP-A 959 087(第3頁第39行〜第51行)に記載された、アロファネート基を含有し、低モノマー含量のポリイソシアネートをポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとアロファン化条件下で反応させることによって製造されたポリイソシアネートである。また、適当なものは、独国特許公開DE-A 100 078 21(第2頁第66行〜第3頁第5行)に記載された水分散性ポリイソシアネート混合物であり、これは、例えば、独国特許公開DE-A 100 24 624(第3頁、第13行〜第33行)に記載されるように、トリイソシアナトノナンと、イオン性基(スルホネート基、ホスホネート基)を含有する親水性ポリイソシアネートから製造される。
また、異なる架橋剤樹脂の混合物を使用することもできる。
【0049】
本発明のコポリマー水性分散体の製造前、製造の間または製造後、被覆技術から既知の添加剤、例えば、消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、触媒、皮張り防止剤、沈降防止剤または乳化剤を添加することができる。また、これらの添加剤は、本発明のコポリマー水性分散体を含有する被覆組成物に添加することもできる。
【0050】
本発明のコポリマー水性分散体を含有する水性被覆組成物は、例えば、水性被覆組成物にフィルム安定性に関する厳しい要求を満たすことを要求する全ての使用分野に適している。該組成物は、鉱物の建築材料の表面の被覆、木材および木材系材料の被覆およびシーリング、金属面の被覆(金属被覆)、アスファルトまたは瀝青質表面材の被覆およびニスかけ、種々のプラスチック表面の被覆およびシーリング(プラスチック被覆)、および高光沢ワニスに使用することができる。
【0051】
本発明のコポリマー水性分散体を含有する水性被覆組成物は、例えば、工業的被覆または自動車のOEM仕上げまたは再仕上げの分野において、低溶媒プライマー、サーフェイサー、着色または透明トップコート材料、クリアコート材料および高光沢ワニス、ならびに、一回および連続的に塗布されたシングルコート材料を製造するのに適している。本発明のコポリマー水性分散体は、特に高耐性、例えば、耐スクラッチ性および耐薬品性が必要とされる、自動車のOEM仕上げ用の水性クリアコート材料を製造するのに特に適している。
【0052】
また、本発明は、本発明のコポリマー分散体を含有する被覆組成物を、基材に塗布し、その後硬化する、被覆物を製造するための方法に関する。得られた被覆物は、通常、90%を超える、リフロー後の残留光沢度を有する。
【0053】
本発明の被覆組成物は、典型的に、0〜180℃、好適には18〜160℃、より好適には40〜140℃の温度で硬化することができる。
【0054】
該被覆物は、一成分または必要に応じて二成分の噴霧装置を使用する、種々の噴霧法、例えば、圧縮空気噴霧法、無気噴霧法または静電噴霧法によって製造することができる。また、本発明のヒドロキシ官能性コポリマー水性分散体を含んでなる被覆組成物は、他の方法、例えば、拡散法、ローリング法またはナイフ被覆法によって塗布することができる。
【実施例】
【0055】
他に示さない限り、全てのパーセンテージは、重量%である。
粘度測定は、DIN 53019にしたがって、Physica(シュトゥットガルト、独国)からのPhysica Viscolab(登録商標) LC3 ISO コーン/プレート粘度計を使用して、剪断速度40s−1で行った。
平均粒度は、レーザー相関分光法(Zetasizer(登録商標) 1000、Malvern Instruments、ヘレンベルク、独国)を用いて決定した。
報告したOH価は、用いたモノマーに基づいて算出した。
酸価:決定法-DIN ISO 3682
【0056】
〔実施例1〕
攪拌機構を備えた4Lの多口フラスコに、469gの1,6-ヘキサンジオールおよび454gのε-カプロラクトン、さらに0.2gのチタンテトライソプロポキシドを充填し、そして、この初充填物を、不活性ガス(窒素)流下、油浴を用いて110℃に加熱した。401gのジメチルカーボネートを、15分間に亘ってポンプを用いて反応混合物に添加した。その後、該混合物を、さらなる24時間、環流下に維持した。次いで、ジメチルカーボネートとメタノールの混合物を、油浴温度を7時間に亘って110℃〜150℃に連続的に上昇させて、大気圧下、蒸留カラムを介して反応混合物から除去した。これに続いて、油浴温度を100℃に低下させ、同時に20ミリバール(絶対)までの圧力下、メタノールおよび残りのジメチルカーボネートの除去を行った。その後、油浴温度を5時間に亘って180℃まで上昇させ、そして、この温度を2時間維持した。その後、反応混合物を室温に冷却し、そして0.2gのジブチルホスフェイトを添加した。得られたポリカーボネートエステルジオールは、113mgKOH/gのヒドロキシル価を有した。
【0057】
〔実施例2〕
861gの1,6-ヘキサンジオールおよび0.2gのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートを初充填物として導入し、826gのジメチルカーボネートをポンプで注入したことを除いて、実施例1を繰り返した。実施例1のような、0.2gのジブチルホスフェイトの添加は省略した。得られたポリカーボネートジオールは、109mgKOH/gのヒドロキシル価を有した。
【0058】
〔実施例3〕
616gの1,6-ヘキサンジオール、1408gの1,4-ブタンジオールおよび0.2gのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートを初充填物として導入し、2477gのジメチルカーボネートをポンプで注入したことを除いて、実施例1を繰り返した。実施例1のような、0.2gのジブチルホスフェイトの添加は省略した。得られたポリカーボネートジオールは、113mgKOH/gのヒドロキシル価を有した。
【0059】
〔実施例4〕
上端に設置された蒸留アタッチメント、攪拌機および受容器を備えた60Lの圧力反応器中に、34,092gの3-メチル-1,5-ペンタンジオール、8.0gのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートおよび10,223gのジメチルカーボネートを、80℃で充填した。その後、反応混合物を、窒素雰囲気下、150℃に2時間加熱し、これを、環流下、攪拌しながら2時間維持した。圧力は、3.9バール(絶対)まで上昇した。次いで、メタノール脱離生成物を、ジメチルカーボネートとの混合物として蒸留により除去した。圧力は、連続的に4時間の間に合計で2.2バール低下した。その後、蒸留手順を終了し、さらなる10,223gのジメチルカーボネートを、150℃で反応混合物中にポンプで注入し、そして、反応混合物を、環流下、攪拌しながら、2時間その温度に維持した。圧力は、3.9バール(絶対)まで上昇した。その後、メタノール脱離生成物を、ジメチルカーボネートとの混合物の状態で、蒸留により再度除去した。圧力は、連続的に4時間の間に合計で2.2バール低下した。その後、蒸留操作を終了し、さらなる7147gのジメチルカーボネートを、150℃で反応混合物中にポンプで注入し、そして、反応混合物を、環流下、攪拌しながら、2時間その温度に維持した。圧力は、3.5バール(絶対)まで上昇した。次いで、再度、メタノール脱離生成物を、ジメチルカーボネートとの混合物の状態で、蒸留により除去した。圧力は、4時間の間に大気圧まで低下した。その後、反応混合物を、2時間に亘って180℃まで加熱し、そして、攪拌しながら2時間その温度に維持した。その後、温度を130℃まで低下させ、そして、窒素流(5l/時間)を反応混合物に通過させた。その間、圧力は20ミリバールまで低下した。その後、温度を4時間に亘って180℃まで高め、そして、6時間その温度に維持した。これに続いて、反応混合物から、ジメチルカーボネートとの混合物の状態でメタノールを除去した。
【0060】
室温までの反応バッチの曝気および冷却によって、以下の特性を有する無色液体オリゴカーボネートジオールを得た:
分子量M:675g/モル
OH数:166.0mgKOH/g
粘度:6940mPa・s(23℃およびD:16)。
【0061】
〔実施例5〕
攪拌、冷却および加熱装置を備えた10Lの反応容器に、600gの実施例1からのポリカーボネートジオールを充填し、そして、この初充填物を143℃に加熱した。その温度にて、7.75gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を20分間に亘って滴下した。その後、81.5gの2-エチルヘキシルアクリレート、566.5gのヒドロキシエチルメタクリレート、435gのブチルメタクリレート、567.5gのイソボロニルメタクリレートおよび135gのスチレンを含有するモノマー混合物、および、それと同時に、34.25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の27.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で4.5時間に亘って計量供給した。その温度を約20分間維持した。その後、122.5gのメチルメタクリレート、172.75gのヒドロキシエチルメタクリレート、96gのブチルアクリレートおよび46.25gのアクリル酸を含有するモノマー混合物、および、それと同時に、25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で1.5時間に亘って計量供給した。これを143℃で1時間攪拌し、次いで、100℃に冷却し、そして29.25gのN,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30分間の均質化後、このバッチを、3400gの水を用いて80℃で2時間に亘って分散させた。得られたコポリマー分散体は、以下の特性を有した:
OH含量(固体、理論的に計算):4.3%
酸価(固体):14mgKOH/g
固形分:45.0%
粘度:850mPa・s/23℃
pH(水中10%):8.5
中和度:105%
平均粒度:105nm
共溶媒:1.1重量%
【0062】
〔実施例6〕
攪拌、冷却および加熱装置を備えた10Lの反応容器に、600gの実施例2からのポリカーボネートジオールを充填し、そして、この初充填物を143℃に加熱した。その温度にて、7.75gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を20分間に亘って滴下した。その後、81.5gの2-エチルヘキシルアクリレート、566.5gのヒドロキシエチルメタクリレート、435gのブチルメタクリレート、567.5gのイソボロニルメタクリレートおよび135gのスチレンを含有するモノマー混合物、および、それと同時に、34.25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の27.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で4.5時間に亘って計量供給した。該反応混合物を約20分間この温度に維持した。その後、122.5gのメチルメタクリレート、172.75gのヒドロキシエチルメタクリレート、96gのブチルアクリレートおよび46.25gのアクリル酸を含有するモノマー混合物、および、それと同時に、25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で1.5時間に亘って計量供給した。これを143℃で1時間攪拌し、次いで、100℃に冷却し、そして29.25gのN,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30分間の均質化後、このバッチを、3625gの水を用いて80℃で2時間に亘って分散させた。得られたコポリマー分散体は、以下の特性を有した:
OH含量(固体;理論的に計算):4.3%
酸価(固体):15mgKOH/g
固形分:43.5%
粘度:400mPa・s/23℃
pH(水中10%):8.5
中和度:105%
平均粒度:110nm
共溶媒:1.0重量%
【0063】
〔実施例7〕
攪拌、冷却および加熱装置を備えた6Lの反応容器に、600gの実施例3からのポリカーボネートジオールを充填し、そして、この初充填物を143℃に加熱した。その温度にて、7.75gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を20分間に亘って滴下した。その後、81.5gの2-エチルヘキシルアクリレート、566.5gのヒドロキシエチルメタクリレート、435gのブチルメタクリレート、567.5gのイソボロニルメタクリレートおよび135gのスチレンを含有するモノマー混合物、および、それと同時に、34.25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の27.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で4.5時間に亘って計量供給した。該反応混合物を約20分間この温度に維持した。その後、122.5gのメチルメタクリレート、172.75gのヒドロキシエチルメタクリレート、96gのブチルアクリレートおよび46.25gのアクリル酸を含有するモノマー混合物、および、それと同時に、25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で1.5時間に亘って計量供給した。これを143℃で1時間攪拌し、次いで、100℃に冷却し、そして29.25gのN,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30分間の均質化後、このバッチを、3625gの水を用いて80℃で2時間に亘って分散させた。得られたコポリマー分散体は、以下の特性を有した:
OH含量(固体;理論的に計算):4.3%
酸価(固体):14mgKOH/g
固形分:43.5%
粘度:2360mPa・s/23℃
pH(水中10%):8.5
中和度:105%
平均粒度:130nm
共溶媒:1.1重量%
【0064】
〔実施例8〕
攪拌、冷却および加熱装置を備えた6Lの反応容器に、600gの実施例4からのポリカーボネートジオールを充填し、そして、この初充填物を143℃に加熱した。その温度にて、7.75gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を20分間に亘って滴下した。その後、595.25gのヒドロキシエチルメタクリレート、487.75gのブチルメタクリレート、692.5gのイソボロニルメタクリレートおよび135gのスチレンを含有するモノマー混合物、および、それと同時に、34.25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の27.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で4.5時間に亘って計量供給した。該反応混合物を約20分間この温度に維持した。その後、102.5gのメチルメタクリレート、173gのヒドロキシエチルメタクリレート、96gのブチルアクリレートおよび75gのアクリル酸を含有するモノマー混合物、および、それと同時に、25gのDowanol(登録商標) PnB(プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル;溶媒、Dow Europe S.A.、ホルゲン/スイス)中の7.75gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、一定の速度で1.5時間に亘って計量供給した。これを143℃で1時間攪拌し、次いで、100℃に冷却し、そして97gのN,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30分間の均質化後、このバッチを、3500gの水を用いて80℃で2時間に亘って分散させた。得られたコポリマー分散体は、以下の特性を有した:
OH含量(固体;理論的に計算):4.4%
酸価(固体):21mgKOH/g
固形分:44.5%
粘度:1060mPa・s/23℃
pH(水中10%):8.5
中和度:105%
平均粒度:94nm
共溶媒:1.0重量%
【0065】
〔実施例9〕
比較(欧州特許公開EP-A 0 758 007、実施例1)
攪拌、冷却および加熱装置を備えた6Lの反応容器に、116gのブチルグリコールおよび150gのDesmophen(登録商標) V218(プロピレンオキシドおよびグリセロールに基づくポリエーテル、OH価245mgKOH/g、Bayer AG、レバークーゼン、独国)を充填し、そして、この初充填物を155℃に加熱した。その温度にて、321gのブチルアクリレート、366gのスチレンおよび198gのヒドロキシエチルメタクリレートと、それと同時に、28.6gのブチルグリコール中の17.1gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を、2時間に亘って計量供給した。その後、83gのヒドロキシエチルメタクリレート、180gのブチルアクリレート、139gのスチレンおよび34gのアクリル酸を含有するモノマー混合物を計量供給し、それと同時に、21.4gのブチルグリコール中の12.9gのジ-tert-ブチルペルオキシドを、1時間に亘って計量供給した。その後、該バッチを150〜155℃で2時間攪拌し、100℃に冷却し、そして50gのジメチルエタノールアミンを添加した。30分間の均質化後、1980gの水を用いて80℃で2時間に亘って分散を行った。得られたコポリマー分散体は、以下の特性を有した:
OH含量(固体;理論的に計算):3.2%
酸価(固体):18mgKOH/g
固形分:40%
粘度:830mPa・s/23℃
pH(水中10%):9.4
中和度:100%
平均粒度:51nm
共溶媒:4.0重量%
【0066】
〔実施例10〕
比較(EP 947 557、実施例3)
攪拌、冷却および加熱装置を備えた6Lの反応容器に、186gのブチルグリコールおよび186gの溶媒ナフサを充填し、そして、この初充填物を145℃に加熱した。その温度にて、750gのメチルメタクリレート、125gのスチレン、445gのヒドロキシエチルメタクリレート、538gのブチルアクリレートおよび87gのブチルメタクリレートの混合物1)を、3時間に亘って計量供給し、その後直ぐに128gのメチルメタクリレート、180gのヒドロキシエチルメタクリレート、100gのブチルアクリレートおよび60gのアクリル酸の混合物2)を、1.5時間に亘って計量供給した。それと同時に、5時間に亘って、ブチルグリコールと溶媒ナフサの1:1混合物(70g)中の88gのジ-tert-ブチルペルオキシドの溶液を計量供給した。これに続いて145℃で2時間攪拌し、次いで、100℃に冷却し、そして76gのN,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30分間の均質化後、2700gの水を用いて80℃で2時間に亘って分散を行った。得られたコポリマー分散体は、以下の特性を有した:
OH含量(固体;理論的に計算):3.3%
酸価(固体):18mgKOH/g
固形分:43.8%
粘度:1400mPa・s/23℃
pH(水中10%):8.1
中和度:105%
平均粒度:110nm
共溶媒:7.7重量%
【0067】
〔実施例11〕
ポリイソシアネート架橋剤
攪拌、冷却および加熱装置を備えた6Lの反応容器に、相次いで、3500gのBayhydrol(登録商標) XP 2570(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく親水性脂肪族ポリイソシアネート、Bayer AG、レバークーゼン)および1500gのDesmodur(登録商標) XP 2410(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく低粘度脂肪族ポリイソシアネート樹脂、Bayer AG、レバークーゼン)を充填し、そして、この初充填物を、30℃で60分間均質化した。次いで、37gのTinuvin(登録商標) 384-2(Ciba、バーゼル)および24gのTinuvin(登録商標) 292(Ciba、バーゼル)を添加し、続いて、さらに30分間均質化した。得られた親水性ポリイソシアネート混合物は、20.1%のイソシアネート含量を有した。
【0068】
〔使用実施例12〕
成分Aを、所定の量で添加剤Byk(登録商標) 347(基材濡れを改善するためのシリコーン界面活性剤、Byk Chem.、ヴェーゼル/独国)と混合し、そして、水で希釈した。
成分Bを、欧州特許公開EP-A-0 685 544にしたがって、塗布前に、0.4mmの大きさのホールノズルを有するノズルジェット分散機を用いて50バールで成分A中に分散させた。混合2K[二成分]水性クリアコート材料を、スプレーガンを用いて、自動車のOEM仕上げに関して既知の水性サーフェイサーコートおよびブラック水性ベースコートで予備コートしたアルミニウムパネル(耐スクラッチ性)およびスチールパネル(耐薬品性)に塗布した。塗布後、パネルを室温で5分間および80℃で10分間フラッシュオフし、次いで、130℃で30分間乾燥した。クリアコートの乾燥フィルム厚みは、約40μmであった。
【0069】
【表1】

【0070】
〔耐スクラッチ性〕
クリアコートについての耐スクラッチ性試験は、DIN 55668にしたがって行った。
相対残留光沢度(%)は、スクラッチする前の損失度と比較した、DIN 5668にしたがってスクラッチした後の光沢度[20°]のレベルを示す。この数値が高いほど、良好な耐スクラッチ性である。
【0071】
〔耐薬品性〕
耐薬品性は、単位℃で報告する。その目的のため、クリアコート被覆物に、それぞれ蒸留水または1%濃度の水酸化ナトリウム溶液または1%濃度の硫酸のしずくを当て、そして、グラジエントオーブン中で加熱した。クリアコート被覆物に対する目に見える損傷が最初に発生した温度を測定した。この温度が高いほど、より高い耐性のクリアコート被覆物である。
【0072】
実施例は、本発明のコポリマー分散体を、先行技術の生成物と比較した場合、実質的に良好な耐スクラッチ性(リフロー後の残留光沢度>90%)および非常に良好な耐薬品性を有する被覆組成物の製造に使用することができることを明らかに示す。
【0073】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。
【0074】
本発明の好適な実施態様には以下のものが含まれる。
〔1〕 A)a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、
b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、および
d)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマー
から合成された、一以上のヒドロキシ官能性コポリマーと、
B)反応性希釈剤として、一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオール
を含んでなる、コポリマー水性分散体。
〔2〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.6〜6の平均ヒドロキシル官能価および240〜5000Daの数平均分子量を有する、上記〔1〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔3〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールまたはそれらの混合物から製造したものである、上記〔1〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔4〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールまたはそれらの混合物から製造したものである、上記〔2〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔5〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.9〜2.05の平均ヒドロキシル官能価を有する、上記〔1〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔6〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.9〜2.05の平均ヒドロキシル官能価を有する、上記〔2〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔7〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.9〜2.05の平均ヒドロキシル官能価を有する、上記〔3〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔8〕 ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.9〜2.05の平均ヒドロキシル官能価を有する、上記〔4〕に記載のコポリマー水性分散体。
〔9〕 上記〔1〕に記載のコポリマー水性分散体の製造方法であって、
a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、
b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、および
d)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマー
を含有する、一以上のモノマー混合物を、反応性希釈剤B)として一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールの存在下、フリーラジカル重合し、次いで、
中和剤の添加前または添加後に、得られたコポリマーを水中に分散させることを含む、
方法。
〔10〕 I)成分a)〜c)および必要に応じてd)を含有するモノマー混合物を、反応性希釈剤B)として一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールの存在下、フリーラジカル重合して、12〜200mgKOH/g固体のOH価および0〜50mgKOH/g固体の酸価を有するヒドロキシ官能性コポリマーを形成し、
II)その後、工程(I)で得られた反応混合物中の成分a)〜c)および必要に応じてd) を含有するモノマー混合物を、フリーラジカル重合して20〜200mgKOH/g固体のOH価および50〜200mgKOH/g固体の酸価を有するヒドロキシ官能性コポリマーを形成することを含み、
二つのモノマー混合物のモノマー量は、工程(I)からのヒドロキシ官能性コポリマーと工程(II)からのヒドロキシ官能性コポリマーとの重量比10:1〜1:2を与えるのに十分な量で存在する、
上記〔9〕に記載の方法。
〔11〕 i)一以上の上記〔1〕に記載のコポリマー水性分散体と、
ii)一以上のOH反応性架橋剤
を含んでなる、水性被覆組成物。
〔12〕 上記〔1〕に記載のコポリマー水性分散体を含んでなる被覆組成物を、基材に塗布し、その後、該被覆組成物を硬化して被覆物を形成することを含む、
被覆物の製造方法。
〔13〕 上記〔11〕に記載の被覆組成物で被覆された基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、
b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、および
d)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマー
から合成された、一以上のヒドロキシ官能性コポリマーと、
B)反応性希釈剤として、一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオール
を含んでなる、コポリマー水性分散体。
【請求項2】
ヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールB)は、1.6〜6の平均ヒドロキシル官能価および240〜5000Daの数平均分子量を有する、請求項1に記載のコポリマー水性分散体。
【請求項3】
請求項1に記載のコポリマー水性分散体の製造方法であって、
a)一以上のOH非含有(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物、
b)一以上のヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)一以上のフリーラジカル共重合可能なイオン性および/または潜在的イオン性モノマー、および
d)必要に応じて、一以上の成分a)〜c)以外のフリーラジカル共重合可能なモノマー
を含有する、一以上のモノマー混合物を、反応性希釈剤B)として一以上のヒドロキシ官能性ポリカーボネートポリオールの存在下、フリーラジカル重合し、次いで、
中和剤の添加前または添加後に、得られたコポリマーを水中に分散させることを含む、
方法。
【請求項4】
i)一以上の請求項1に記載のコポリマー水性分散体と、
ii)一以上のOH反応性架橋剤
を含んでなる、水性被覆組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の被覆組成物で被覆された基材。

【公開番号】特開2006−249432(P2006−249432A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62744(P2006−62744)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】