説明

反応性置換基を有するフォトクロミック物質

【課題】種々のホスト重合体に配合してよく、そして、ホスト重合体の極性(即ち親水性又は親油性)により緊密に適合した極性を有する反応性置換基1つ以上を含むフォトクロミック物質を開発すること。
【解決手段】本開示の種々の非限定的実施形態は、反応性置換基を含むフォトクロミック物質に関する。例えば、本開示は、フォトクロミック物質、例えばフォトクロミックナフトピラン及び1つ以上の連結基によりフォトクロミックナフトピランに連結した反応性部分を含む反応性置換基を有するインデノ縮合ナフトピランを意図している。特定の非限定的実施形態において、反応性部分は重合性部分を含む。他の非限定的実施形態において、反応性部分は、親核部分又は親電子部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
本開示の種々の非限定的実施形態は、反応性置換基を含むフォトクロミック物質に関する。本開示の他の非限定的実施形態は、フォトクロミック物品、組成物及びフォトクロミック物品の製造方法に関し、この場合フォトクロミック物品及び組成物は、本明細書に記載のフォトクロミック物質を含む。
【0002】
多くの従来のフォトクロミック物質、例えば、フォトクロミック物質ナフトピランは、電磁放射の吸収に反応して1つの状態から別の状態への変換を受けることができる。例えば、多くの従来のフォトクロミック物質は、電磁放射の特定の波長の吸収に反応して第1の「クリア」又は「脱色」の基底状態と第2の「着色」活性化状態の間の変換が可能である。本明細書において「化学線放射」という用語は、1つの形態又は状態から別のものへの変換をフォトクロミック物質に起こさせることができる電磁放射を指す。次にフォトクロミック物質は化学線放射の非存在下における熱エネルギーに反応してクリアな基底状態に復帰してよい。フォトクロミック物質1つ以上を含有するフォトクロミック物品及び組成物、例えば、眼鏡類用途のフォトクロミックレンズは一般的に、それらが含有するフォトクロミック物質に対応するクリア及び着色の状態を示す。即ち、例えばフォトクロミック物質を含有する眼鏡類用のレンズは、化学線放射、例えば、太陽光中に存在する特定の波長への曝露時にクリア状態から着色状態に変換することができ、そしてそのような放射の非存在下においてクリア状態に復帰することができる。
【0003】
フォトクロミック物品及び組成物において利用する場合、従来のフォトクロミック物質は典型的には浸潤、混合及び/又は結合の1つによりホスト重合体マトリックス内に取り込まれる。例えば、フォトクロミック物質1つ以上を重合体物質又はその前駆体と混合し、その後、フォトクロミック組成物を成型してフォトクロミック物品としてよく、或いは、フォトクロミック組成物を薄膜又は薄層として光学素子表面上にコーティングしてよい。本明細書において「フォトクロミック組成物」という用語は、フォトクロミック物質であってもなくてもよい他の物質1つ以上と組み合わせられたフォトクロミック物質を指す。或いはフォトクロミック物質は予備成型された物品又はコーティング中に浸潤させてもよい。
【0004】
特定の実施形態において、フォトクロミック物質の配合相手となるホスト重合体との適合性を変更することが望ましい場合がある。例えば、フォトクロミック物質をホスト重合体とより適合性のあるものとすることにより、この複合物が、相分離やフォトクロミック物質のホスト重合体への移行によるくもり又はヘイズ(haze)を呈する可能性が低くなる。更に又、適合化されたフォトクロミック物質はホスト重合体中でより可溶性になり、そして/又は重合体マトリックス全体に渡ってより均一に分布するようになる。更に又、ホスト重合体とのフォトクロミック物質の適合性を変更することにより、フォトクロミック組成物の他の特性(例えば、退色(fade)及び/又は活性化の速度、飽和光学密度、モル吸光係数又はモル消光係数(molar extinction coefficient)及び活性化した色であるが、これに限定されない)が影響を受ける場合もある。そのような特性の変更は、例えば補完的なフォトクロミック物質の同じ特性を適合させるため、又は親水性又は疎水性のコーティング組成物、薄膜、又は、合成乃至は可撓性のプラスチックマトリックス中におけるそのような化合物の使用を可能にするために行ってよい。
【0005】
ホスト重合体とのフォトクロミック物質の適合性を変更するための1つの経路は、ポリアルコキシルか連結基、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリブチレングリコール連結基を介してフォトクロミック物質に重合性物質を結合することである。ポリアルコキシル化連結基を利用することの1つの潜在的制約は、容易に達成できる生成フォトクロミック物質の純度の程度である。例えば、これらのフォトクロミック物質の連結基に配合される場合がある市販のポリグリコールは各鎖内に異なる数のグリコール単位を保有するグリコール鎖の混合物を含む場合がある。これらの市販のポリグリコールをフォトクロミック物質に配合すると鎖長及び分子量が異なる化合物の混合物がもたらされる場合がある。その場合、それらの混合物から所望のフォトクロミック物質を容易に分離できないため、精製が困難となる場合がある。
【0006】
更に又、ポリアルコキシル化連結基は、本質的に親水性である、多数のエーテル酸素官能基を含有する長鎖を含む場合がある。これはホスト重合体との適合性に関しては特定の望ましい特質を呈する場合があるが、異なる親水性の連結基、例えば疎水性である連結基又はより短鎖の連結基は、ホスト重合体及び生成したフォトクロミック物品に対して異なる相互作用を呈する場合がある。
【0007】
従って、一部の用途のためには、種々のホスト重合体に配合してよく、そして、ホスト重合体の極性(即ち親水性又は親油性)により緊密に適合した極性を有する反応性置換基1つ以上を含むフォトクロミック物質を開発することが望ましい。別の用途においては、ホスト重合体の極性に適合しない極性を有する反応性置換基1つ以上を含むフォトクロミック物質を開発することが望ましい場合がある。更に又、例えば結晶化、クロマトグラフィー又は当該分野で知られた他の精製方法により容易に精製できる均一な組成/分子量の反応性置換基を含むフォトクロミック物質を開発することが好都合な場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(簡潔な要旨)
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は、フォトクロミック物質に関する。一非限定的実施形態において、フォトクロミック物質は、フォトクロミックナフトピラン、及びフォトクロミックナフトピランに結合した少なくとも1つの反応性置換基を含み、各反応性置換基は、以下の1つにより独立して表され:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中:(i)各−A−は独立して−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−であり;(ii)各−D−は独立して:(a)ジアミン残基又はその誘導体(前記ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、前記ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する);又は、(b)アミノアルコール残基又はその誘導体(前記アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、前記アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;又は前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成する)であり;(iii)各−E−は独立してジカルボン酸残基又はその誘導体(前記ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、前記ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成し、前記ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する)であり;(iv)各−G−は独立して:(a)−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である);又は、(b)ポリオール残基又はその誘導体(前記ポリオール残基は、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基であり、前記ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する)であり;(v)各−Jは独立して反応性部分を含む基又はその残基であるか、或いは−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分を形成する。
【0009】
別の非限定的実施形態は、化学式PC−[R]により表されるフォトクロミック物質を含み、式中、(a)PCはフォトクロミックナフトピラン(前記フォトクロミックナフトピランは、2H−ナフト[1,2−b]ピラン、3H−ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、又はそれらの混合物である)を含み;(b)rは1〜4の範囲の整数であり;(c)各R基は以下の1つにより独立して表される反応性置換基であり:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中、(i)各−A−は独立して−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−であり;(ii)各−D−は独立して:(a)ジアミン残基又はその誘導体(前記ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、前記ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する);又は、(b)アミノアルコール残基又はその誘導体(前記アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、前記アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又はPCと結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;又は前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素は、−A−又はPCと結合を形成する)であり;(iii)各−E−は独立してジカルボン酸残基又はその誘導体(前記ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、前記ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は−G−又は−D−と結合を形成し、前記ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は−G−と結合を形成する)であり;(iv)各−G−は独立して:(a)−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である);又は、(b)ポリオール残基又はその誘導体(前記ポリオール残基は脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基であり、前記ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又はPCと結合を形成し、前記ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する)であり;(v)各−Jは独立してアクリル、クロチル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシを含む基であるか;或いは、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合する。
【0010】
更なる非限定的実施形態は、以下の構造I〜IVの1つにより表されるフォトクロミック物質又はその混合物を含み:
【0011】
【化8】

式中:
(a)Rは反応性置換基Rであり、この場合前記反応性置換基Rは、以下の1つにより表され:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中:
−A−は−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−であり;
−D−は:ジアミン残基又はその誘導体(前記ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、前記ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成し、前記ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する);又は、アミノアルコール残基又はその誘導体(前記アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、前記アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;又は前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素は、−A−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成する)であり;
−E−はジカルボン酸残基又はその誘導体(前記ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、前記ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成し、前記ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する)であり;
各−G−は独立して:−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である);又は、ポリオール残基又はその誘導体(前記ポリオール残基は、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基であり、前記ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成し、前記ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する)であり;
−Jはアクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシを含む基であるか;又は、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合し;
或いはRは水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;又は−C(=O)W基(式中、Wは−OR、−N(R)R、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合Rはアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル、モノ置換フェニル、又はジ置換フェニルであり、この場合前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、前記ハロ置換基はクロロ又はフルオロである)であり;
(b)R’は:該反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;又は−C(=O)W基(式中、Wは−OR、−N(R)R、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合Rはアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル、モノ置換フェニル、又はジ置換フェニルであり、前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、前記ハロ置換基はクロロ又はフルオロである)であり;
(c)Rは:該反応性置換基R;水素;C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換又は非置換フェニル;又は−OR10又は−OC(=O)R10(式中、R10は水素、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルであり、前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである)であり;
(d)nは0〜4の範囲の整数であり、この場合R及びRは各出現につき独立して:該反応性置換基R;水素;フルオロ;クロロ;C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換又は非置換フェニル;又は−OR10又は−OC(=O)R10(式中、R10は水素、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルであり、前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);モノ置換フェニル(前記フェニルは、パラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CHt−又は−[O−(CH−(式中、tは整数2、3、4、5又は6であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に結合している);−N(R11)R12(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して水素、C−Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル、又はC−C20アルコキシアルキルであり、前記アリール基はフェニル又はナフチルであるか、又はR11及びR12は窒素原子と一緒になってC−C20ヘテロビシシクロアルキル環又はC−C20ヘテロトリシクロアルキル環を形成する);以下の図式VAにより表される窒素含有環:
【0012】
【化9】

(式中、各−Y−は各出現につき独立して、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−及び−C(R13)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R13)−又は−N(アリール)−であり、この場合各R13は独立してC−Cアルキルであり、各アリールは独立してフェニル又はナフチルであり、mは整数1、2又は3であり、pは整数0、1、2又は3であり、pが0である場合、Zは−Y−である);以下の図式VB又はVCの1つにより表される基:
【0013】
【化10】

(式中:R15、R16及びR17はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、フェニル又はナフチルであるか、又はR15及びR16は一緒になって5〜8炭素原子の環を形成し、各R14は各出現につき独立して、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、フルオロ又はクロロであり、pは整数0、1、2又は3である);及び非置換、モノ又はジ置換C−C18スピロ二環アミン;及び非置換、モノ又はジ置換C−C18スピロ三環アミン(前記置換基は独立してアリール、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、又はフェニル(C−C)アルキルである)であるか;或いは、
6位のR基及び7位のR基は一緒になって以下のVD及びVEの1つにより表される基を形成し:
【0014】
【化11】

(式中:T及びT’はそれぞれ独立して酸素又は−NR11−基であり、この場合R11、R15及びR16は上記の通りである);
(e)R及びRはそれぞれ独立して:該反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル:C−Cシクロアルキル;アリル;置換又は非置換フェニル;置換又は非置換ベンジル;クロロ;フルオロ;−C(=O)W’基であり、(式中、W’は水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、非置換、モノ又はジ置換アリール基フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C−C)アルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノである);−OR18(式中、R18はC−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、モノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル、C−Cクロロアルキル、C−Cフルオロアルキル、アリル又は−CH(R19)Y’基であり、この場合R19は水素又はC−Cアルキルであり、Y’はCN、CF又はCOOR20であり、この場合R20は水素又はC−Cアルキルであるか、或いは式中、R18は−C(=O)W’’基であり、この場合W’’は水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、非置換、モノ又はジ置換アリール基フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C−C)アルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノであり、前記フェニル、ベンジル又はアリール基の置換基は独立してC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);又はモノ置換フェニル(前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CH−又は−[O−(CH−(式中、tは2、3、4、5又は6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に連結されている)であるか;或いは、R及びRは一緒になってオキソ基、炭素原子3〜6個を含有するスピロ炭素環基、酸素原子1〜2個及びスピロ炭素原子を含め炭素原子3〜6個を含有するスピロ複素環基を形成し、前記スピロ炭素環及びスピロ複素環基は、0、1又は2個のベンゼン環によって環生成されており;
(f)B及びB’はそれぞれ独立して:置換フェニル;置換アリール;置換9−ジュロリジニル;ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルから選択される置換複素芳香族基(この場合、該フェニル、アリール、9−ジュロリジニル又は複素芳香族置換基は該反応性置換基Rである);非置換、モノ、ジ又はトリ置換フェニル又はアリール基;9−ジュロリジニル;又はピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルから選択される非置換、モノ又はジ置換複素芳香族基(この場合該フェニル、アリール及び複素芳香族置換基はそれぞれ独立して:ヒドロキシル、−C(=O)R21基[この場合R21は−OR22、−N(R23)R24、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合R22はアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R23及びR24はそれぞれ独立して、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル又は置換フェニルであり、この場合前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、前記ハロ置換基はクロロ又はフルオロである]、アリール、モノ(C−C12)アルコキシアリール、ジ(C−C12)アルコキシアリール、モノ(C−C12)アルキルアリール、ジ(C−C12)アルキルアリール、ハロアリール、C−Cシクロアルキルアリール、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルキル、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルコキシ、アリール(C−C12)アルキル、アリール(C−C12)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C−C12)アルキル、アリールオキシ(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルコキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N−(C−C12)アルキルピペラジノ、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジル、C−C12アルキル、C−C12ハロアルキル、C−C12アルコキシ、モノ(C−C12)アルコキシ(C−C12)アルキル、アクリロキシ、メタクリロキシ又はハロゲンである);ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル及びアクリジニルから選択される非置換又はモノ置換基(前記置換基はそれぞれC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、フェニル又はハロゲンである);モノ置換フェニル(前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CHt−又は−[O−(CH−(式中、tは整数2、3、4、5又は6であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に結合している);以下の1つにより表される基:
【0015】
【化12】

(式中、Kは−CH−又は−O−であり、Mは−O−又は置換窒素であるが、但し、Mが置換窒素である場合、Kは−CH−であり、該置換窒素置換基は水素、C−C12アルキル又はC−C12アシルであり、各R25は各出現につき独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、ヒドロキシ及びハロゲンから選択され、R26及びR27はそれぞれ独立して水素又はC−C12アルキルであり、uは0〜2の範囲の整数である];又は以下により表される基:
【0016】
【化13】

(式中、R28は水素又はC−C12アルキルであり、R29は非置換、ナフチル、フェニル、フラニル及びチエニルから選択されるモノ又はジ置換基(該置換基はC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、又はハロゲンである)あるか;或いは、
B及びB’は一緒になってフルオレン−9−イリデン、モノ又はジ置換フルオレン−9−イリデンを形成し、前記フルオレン−9−イリデン置換基はそれぞれ独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ及びハロゲンから選択されるが;
但し、該フォトクロミック物質は少なくとも1つの反応性置換基Rを含む。
【0017】
更に他の非限定的実施形態は、フォトクロミック組成物、フォトクロミック物品、光学素子及びそれらの製造方法に関し、これらのフォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及び光学素子は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質を含む。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
フォトクロミックナフトピラン;及び、
該フォトクロミックナフトピランに結合した少なくとも1つの反応性置換基、
を含むフォトクロミック物質であって、
各反応性置換基は以下の1つにより独立して表され:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中:
(i)各−A−は独立して−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−であり;
(ii)各−D−は独立して:
(a)ジアミン残基又はその誘導体(該ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、該ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、該ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する);又は、
(b)アミノアルコール残基又はその誘導体(該アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、該アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、該アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;又は該アミノアルコール残基の該アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、該アミノアルコール残基の該アルコール酸素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成する);
であり;
(iii)各−E−は独立してジカルボン酸残基又はその誘導体(該ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、該ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成し、該ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する)であり;
(iv)各−G−は独立して:
(a)−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である);又は、
(b)ポリオール残基又はその誘導体(該ポリオール残基は、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基であり、該ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、該ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する);
であり;
(v)各−Jは独立して反応性部分を含む基又はその残基であるか、或いは−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分を形成する、
物質。
(項目2)
前記フォトクロミックナフトピランが2H−ナフト[1,2−b]ピラン、3H−ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、又はそれらの混合物である、項目1に記載のフォトクロミック物質。
(項目3)
各−Jが独立してアクリル、クロチル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシである、項目1に記載のフォトクロミック物質。
(項目4)
前記フォトクロミック物質が再結晶により精製される、項目1に記載のフォトクロミック物質。
(項目5)
以下により表されるフォトクロミック物質であって:
PC−[R]
式中:
(a)PCは、フォトクロミックナフトピラン(該フォトクロミックナフトピランは、2H−ナフト[1,2−b]ピラン、3H−ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、又はそれらの混合物である)を含み;
(b)rは1〜4の範囲の整数であり;
(c)各R基は以下の1つにより独立して表される反応性置換基であり:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中:
(i)各−A−は独立して−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−であり;
(ii)各−D−は独立して:
(a)ジアミン残基又はその誘導体(該ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、該ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又はPCと結合を形成し、該ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する);又は、
(b)アミノアルコール残基又はその誘導体(該アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、該アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又はPCと結合を形成し、該アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;又は該アミノアルコール残基の該アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、該アミノアルコール残基の該アルコール酸素は、−A−又はPCと結合を形成する);
であり;
(iii)各−E−は独立してジカルボン酸残基又はその誘導体(該ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、該ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成し、該ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する)であり;
(iv)各−G−は独立して:
(a)−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である);又は、
(b)ポリオール残基又はその誘導体(該ポリオール残基は、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基であり、該ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又はPCと結合を形成し、該ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する)
であり;
(v)各−Jは独立してアクリル、クロチル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシを含む基であるか;又は、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合する、
物質。
(項目6)
rが1又は2である、項目4に記載のフォトクロミック物質。
(項目7)
以下により表されるフォトクロミック物質:
【化1】

又はその混合物であって、
式中:
(a)Rは反応性置換基Rであり、この場合該反応性置換基Rは、以下の1つにより表され:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中:
−A−は−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−であり;
−D−は:ジアミン残基又はその誘導体(該ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、又は芳香族ジアミン残基であり、該ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成し、該ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する);又は、アミノアルコール残基又はその誘導体(該アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、又は芳香族アミノアルコール残基であり、該アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成し、該アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;又は該アミノアルコール残基の該アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、該アミノアルコール残基の該アルコール酸素は、−A−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成する)であり;
−E−はジカルボン酸残基又はその誘導体(該ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基、又は芳香族ジカルボン酸残基であり、該ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成し、該ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する)であり;
各−G−は独立して:−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である);又は、ポリオール残基又はその誘導体(該ポリオール残基は、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基であり、該ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成し、該ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する)であり;
−Jはアクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシを含む基であるか;又は、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合し;
或いはRは水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;又は−C(=O)W基(式中、Wは−OR、−N(R)R、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合Rはアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル、モノ置換フェニル、又はジ置換フェニルであり、この場合該フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、該ハロ置換基はクロロ又はフルオロである)であり;
(b)R’は:該反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;又は−C(=O)W基(式中、Wは−OR、−N(R)R、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合Rはアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル、モノ置換フェニル、又はジ置換フェニルであり、該フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、該ハロ置換基はクロロ又はフルオロである)であり;
(c)Rは:該反応性置換基R;水素;C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換又は非置換フェニル;又は−OR10又は−OC(=O)R10(式中、R10は水素、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルであり、該フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである)であり;
(d)nは0〜4の範囲の整数であり、この場合R及びRは各出現につき独立して:該反応性置換基R;水素;フルオロ;クロロ;C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換又は非置換フェニル;又は−OR10又は−OC(=O)R10(式中、R10は水素、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルであり、該フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);モノ置換フェニル(該フェニルは、パラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CHt−又は−[O−(CH−(式中、tは整数2、3、4、5又は6であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に結合している);−N(R11)R12(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して水素、C−Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル、又はC−C20アルコキシアルキルであり、該アリール基はフェニル又はナフチルであるか、又はR11及びR12は窒素原子と一緒になってC−C20ヘテロビシシクロアルキル環又はC−C20ヘテロトリシクロアルキル環を形成する);以下の図式VAにより表される窒素含有環:
【化2】

(式中、各−Y−は各出現につき独立して、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−及び−C(R13)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R13)−又は−N(アリール)−であり、この場合各R13は独立してC−Cアルキルであり、各アリールは独立してフェニル又はナフチルであり、mは整数1、2又は3であり、pは整数0、1、2又は3であり、pが0である場合、Zは−Y−である);以下の図式VB又はVCの1つにより表される基:
【化3】

(式中:R15、R16及びR17はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、フェニル又はナフチルであるか、又はR15基及びR16基は一緒になって5〜8炭素原子の環を形成し、各R14は各出現につき独立して、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、フルオロ又はクロロであり、pは整数0、1、2又は3である);及び非置換、モノ又はジ置換C−C18スピロ二環アミン;及び非置換、モノ又はジ置換C−C18スピロ三環アミン(該置換基は独立してアリール、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、又はフェニル(C−C)アルキルである)であるか;或いは、
6位のR基及び7位のR基は一緒になって以下のVD及びVEの1つにより表される基を形成し:
【化4】

(式中:T及びT’はそれぞれ独立して酸素又は−NR11−基であり、この場合R11、R15及びR16は上記の通りである);
(e)R及びRはそれぞれ独立して:該反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル:C−Cシクロアルキル;アリル;置換又は非置換フェニル;置換又は非置換ベンジル;クロロ;フルオロ;−C(=O)W’基であり、(式中、W’は水素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、非置換、モノ又はジ置換アリール基フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C−C)アルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノである);−OR18(式中、R18はC−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、モノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル、C−Cクロロアルキル、C−Cフルオロアルキル、アリル又は−CH(R19)Y’基であり、この場合R19は水素又はC−Cアルキルであり、Y’はCN、CF又はCOOR20であり、この場合R20は水素又はC−Cアルキルであるか、或いは式中、R18は−C(=O)W’’基であり、この場合W’’は水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、非置換、モノ又はジ置換アリール基フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C−C)アルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノであり、該フェニル、ベンジル又はアリール基の各々の置換基は独立してC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);又はモノ置換フェニル(該フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CH−又は−[O−(CH−(式中、tは2、3、4、5又は6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に連結されている)であるか;或いは、R及びRは一緒になってオキソ基、炭素原子3〜6個を含有するスピロ炭素環基、酸素原子1〜2個及びスピロ炭素原子を含め炭素原子3〜6個を含有するスピロ複素環基を形成し、該スピロ炭素環及びスピロ複素環基は、0、1又は2個のベンゼン環によって環生成されており;
(f)B及びB’はそれぞれ独立して:置換フェニル;置換アリール;置換9−ジュロリジニル;ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルから選択される置換複素芳香族基(この場合、該フェニル、アリール、9−ジュロリジニル又は複素芳香族置換基は、該反応性置換基Rである);非置換、モノ、ジ又はトリ置換フェニル又はアリール基;9−ジュロリジニル;又はピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルから選択される非置換、モノ又はジ置換複素芳香族基(この場合該フェニル、アリール及び複素芳香族置換基はそれぞれ独立して:ヒドロキシル、−C(=O)R21基[この場合R21は−OR22、−N(R23)R24、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合R22はアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R23及びR24はそれぞれ独立して、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル又は置換フェニルであり、この場合該フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、該ハロ置換基はクロロ又はフルオロである]、アリール、モノ(C−C12)アルコキシアリール、ジ(C−C12)アルコキシアリール、モノ(C−C12)アルキルアリール、ジ(C−C12)アルキルアリール、ハロアリール、C−Cシクロアルキルアリール、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルキル、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルコキシ、アリール(C−C12)アルキル、アリール(C−C12)アルコキシ、アリール、アリールオキシ(C−C12)アルキル、アリールオキシ(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルコキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N−(C−C12)アルキルピペラジノ、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジル、C−C12アルキル、C−C12ハロアルキル、C−C12アルコキシ、モノ(C−C12)アルコキシ(C−C12)アルキル、アクリロキシ、メタクリロキシ又はハロゲンである);ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル及びアクリジニルから選択される非置換又はモノ置換基(該置換基はそれぞれC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、フェニル又はハロゲンである);モノ置換フェニル(該フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CHt−又は−[O−(CH−(式中、tは整数2、3、4、5又は6であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に結合している);以下の1つにより表される基:
【化5】

(式中、Kは−CH−又は−O−であり、Mは−O−又は置換窒素であるが、但し、Mが置換窒素である場合、Kは−CH−であり、該置換窒素置換基は水素、C−C12アルキル又はC−C12アシルであり、各R25は各出現につき独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、ヒドロキシ及びハロゲンから選択され、R26及びR27はそれぞれ独立して水素又はC−C12アルキルであり、uは0〜2の範囲の整数である);又は以下により表される基:
【化6】

(式中、R28は水素又はC−C12アルキルであり、R29は、ナフチル、フェニル、フラニル及びチエニルから選択される非置換、モノ又はジ置換された基(該置換された基はC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、又はハロゲンである)である)であるか;或いは、
B及びB’は一緒になってフルオレン−9−イリデン、モノ又はジ置換フルオレン−9−イリデンを形成し、該フルオレン−9−イリデン置換基はそれぞれ独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ及びハロゲンから選択されるが;
但し、該フォトクロミック物質は少なくとも1つの反応性置換基Rを含む、
フォトクロミック物質又はその混合物。
(項目8)
前記フォトクロミック物質が2つの反応性置換基Rを含む、項目6に記載のフォトクロミック物質。
(項目9)
が構造III又は構造IV上の6位及び7位に置換基を含み、該6位及び7位の前記置換基がそれぞれ独立して:前記反応性置換基R;−OR10(式中、R10は水素である);C−Cアルキル;又は窒素含有基(該窒素含有基は:
(i)−N(R11)R12[式中、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、フェニル又はC−C20アルコキシアルキルである]、又は、
(ii)以下の図式VAにより表される窒素含有環:
【化7】

[式中、各−Y−は各出現につき独立して、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−及び−C(R13)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R13)−又は−N(アリール)−であり、各R13は独立してC−Cアルキルであり、各アリールは独立してフェニル又はナフチルであり、mは整数1、2又は3であり、pは整数0、1、2又は3であり、pが0である場合、Zは−Y−である]である)である、項目6に記載のフォトクロミック物質。
(項目10)
及びRがそれぞれ独立して反応性置換基R;C−Cアルキル;ヒドロキシ;又は−OR18(式中、R18はC−Cアルキルである)である、項目6に記載のフォトクロミック物質。
(項目11)
重合体物質;及び、
該重合体部分の少なくとも一部分に取り込まれている、項目1に記載のフォトクロミック物質
を含むフォトクロミック組成物。
(項目12)
前記重合体物質が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C−C12)アルキル化メタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリレート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、コポリ(スチレンメチルメタクリレート)、コポリ(スチレンアクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、或いはポリオール(アリルカーボネート)単量体、単官能性アクリレート単量体、単官能性メタクリレート単量体、多官能性アクリレート単量体、多官能性メタクリレート単量体、ジエチレングリコールジメタクリレート単量体、ジイソプロピルベンゼン単量体、アルコキシル化多価アルコール単量体、ジアリデンペンタエリスリトール単量体のメンバーの重合体、並びにこれらの組み合わせである、項目10に記載のフォトクロミック組成物。
(項目13)
前記重合体物質が、アクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、エチレングリコールビスメタクリレート、チオキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルブチラール、ウレタン、チオウレタン、ジエチレングリコール、ビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロピルベンゼン、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、並びにこれらの組み合わせである、項目10に記載のフォトクロミック組成物。
(項目14)
前記フォトクロミック組成物が、補完的フォトクロミック物質、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカルスカベンジャー及び接着促進剤の少なくとも1つを含む、項目10に記載のフォトクロミック組成物。
(項目15)
前記フォトクロミック組成物がコーティング組成物である、項目10に記載のフォトクロミック組成物。
(項目16)
基材;及び、
該基材の少なくとも一部分に連結した、項目1に記載のフォトクロミック物質
を含むフォトクロミック物品。
(項目17)
前記フォトクロミック物品が光学素子であり、前記光学素子が、眼科用素子、ディスプレイ素子、ウィンドウ、ミラー、能動液晶セル素子又は受動液晶セル素子の少なくとも1つである、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目18)
前記フォトクロミック物品が眼科用素子であり、該眼科用素子が、矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグル又は光学機器用レンズの少なくとも1つである、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目19)
前記基材が重合体物質を含み、前記フォトクロミック物質が、該基材の該重合体物質の少なくとも一部分と混合されること、及び該基材の該重合体物質の少なくとも一部分に結合すること、の少なくとも1つに付されている、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目20)
前記フォトクロミック物質が該基材の該重合体物質の少なくとも一部分との共重合により結合している、項目18に記載のフォトクロミック物品。
(項目21)
重合体物質の少なくとも部分的なコーティングが、該基材の表面の少なくとも一部分に連結しており、該重合体物質が該フォトクロミック物質を含む、項目18に記載のフォトクロミック物品。
(項目22)
前記フォトクロミック物品が、補完的フォトクロミック物質、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、フリーラジカルスカベンジャー及び接着促進剤の少なくとも1つを含む、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目23)
少なくとも部分的なコーティング又はフィルムが、該基材の少なくとも一部分に連結しており、該少なくとも部分的なコーティング又はフィルムが、プライマーコーティング又はフィルム、保護コーティング又はフィルム、抗反射コーティング又はフィルム、従来のフォトクロミックコーティング又はフィルム、及び偏光コーティング又はフィルムの少なくとも1つである、項目15に記載のフォトクロミック物品。
(項目24)
フォトクロミック物品を製造する方法であって、項目1に記載のフォトクロミック物質を基材の少なくとも一部分に連結することを含む、方法。
(項目25)
前記基材が重合体物質を含み、連結が、前記フォトクロミック物質を該基材の該重合体物質の少なくとも一部分と混合すること、及び該フォトクロミック物質を該基材の該重合体物質の少なくとも一部分に結合すること、の少なくとも1つにより、該基材の少なくとも一部分に該フォトクロミック物質を配合することを含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記基材の該重合体物質の少なくとも一部分に前記フォトクロミック物質を共重合することによって、該フォトクロミック物質を結合させる、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記基材が重合体物質を含み、基材の少なくとも一部分に該フォトクロミック物質を連結することが、該フォトクロミック物質及び該重合体物質をキャスト−イン−プレースに付すことを含む、項目23に記載の方法。
(項目28)
前記基材が重合体物質又はガラスを含み、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することが、該フォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティングを該基材の少なくとも一部分に適用することを含む、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記フォトクロミック物質を含む前記少なくとも部分的なコーティングを前記基材の少なくとも一部分に適用することが、スピンコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング及び鋳型内キャスティングの1つを含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
(i)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(ii)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(iii)3−フェニル−3−(4−(4−フェニルピペラジノ)フェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(iv)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(v)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(vi)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(vii)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(viii)3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−ピペリジノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(ix)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(x)3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xi)3−フェニル−3−(4−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xii)3−フェニル−3−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xiii)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xiv)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xv)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xvi)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xvii)3−フェニル−3−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xviii)3−フェニル−3−(4−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエチル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
及びこれらの組み合わせから選択されるフォトクロミック物質。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に開示される本発明の種々の非限定的実施形態は、以下の図面と組み合わせて読むと、よりよく理解できるようになる。
【図1】図1は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によりフォトクロミック物質を合成するための反応図式の概略図である。
【図2】図2は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によりフォトクロミック物質を合成するための反応図式の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数表記の物品は1つの対象であるという明白で明瞭な記載がない限り複数対象も包含するものとする。
更に又、本明細書において、特に指示がない限り、本明細書で使用される成分、反応条件及び他の特性又はパラメータの量を示す全ての数は、「約」という用語により全ての例において修飾された状態であると見なさなければならない。従って、特に指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは概数であることが理解されなければならない。最低でも、そして特許請求の範囲の均等物の見解の適用を制限することを意図せず、数値パラメータは報告された有効桁数及び通常の四捨五入方法の適用を鑑みて読み取らねばならない。
【0020】
更に、本発明の広範な範囲を説明する数値範囲及びパラメータは、上記の通り概数であるが、実施例の項に示される数値は、可能な限り厳密に報告している。しかしながら、そのような数値は本来、測定装置及び/又は測定手法から生じる特定の誤差を含むものであると理解しなければならない。
【0021】
本発明の種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質をこれより説明する。本明細書において「フォトクロミック」という用語は、少なくとも化学線放射の吸収に反応して変化する少なくとも可視の放射に関する吸収スペクトルを有することを意味する。更に又、本明細書において「フォトクロミック物質」という用語は、フォトクロミックの特性を示すように適応された、即ち少なくとも化学線放射の吸収に反応して変化する少なくとも可視の放射に関する吸収スペクトルを有するように適応された何れかの物質を指す。
【0022】
一非限定的実施形態は、フォトクロミックナフトピラン、及びフォトクロミックナフトピランに結合した反応性置換基を含むフォトクロミック物質を提供し、この反応性置換基は、以下の1つにより表される:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J。
【0023】
本開示の種々の非限定的実施形態による−A−の構造の非限定的な例には、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−又は−CH−が含まれる。
【0024】
本開示の種々の非限定的実施形態による−D−の構造の非限定的な例には、ジアミン残基又はその誘導体(前記ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する)、及びアミノアルコール残基又はその誘導体(前記アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成するか;或いは、前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成し、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素は、−A−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成する)が含まれる。
【0025】
−D−がジアミン残基又はその誘導体である、特定の非限定的実施形態において、前記ジアミン残基の非限定的な例には、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基、及び芳香族ジアミン残基が含まれる。Dの選択元となる場合があるジアミン残基の非限定的な例には、以下の構造の何れかにより表されるジアミン残基が含まれる。
【0026】
【化14】

−D−がアミノアルコール残基又はその誘導体である、他の非限定的実施形態において、前記アミノアルコールの非限定的な例には、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基、及び芳香族アミノアルコール残基が含まれる。Dの選択元となる場合があるアミノアルコール残基の非限定的な例には、以下の構造の何れかにより表されるアミノアルコール残基が含まれる。
【0027】
【化15】

本開示の種々の非限定的実施形態による−E−の構造の非限定的な例には、ジカルボン酸残基又はその誘導体が含まれ、前記ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成し、前記ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する。好適なジカルボン酸残基の非限定的な例には、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基及び芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。Eの選択元となる場合があるジカルボン酸残基の非限定的な例には、以下の構造の何れかにより表されるジカルボン酸残基が含まれる。
【0028】
【化16】

本開示の種々の非限定的実施形態による−G−の構造の非限定的な例には、ポリアルキレングリコール残基及びポリオール残基及びその誘導体が含まれ、前記ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又はフォトクロミックナフトピランと結合を形成し、前記ポリオール残基の第2ポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する。好適なポリアルキレングリコール残基の非限定的な例には、以下の構造:−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、y及びzはそれぞれ独立して0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50の範囲である)が含まれる。好適なポリオール残基の非限定的な例には、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基、及び芳香族ポリオール残基が含まれる。
【0029】
上で考察した通り、−G−はポリオールの残基であってもよく、これは本明細書において、ヒドロキシ含有炭水化物、例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム7の56行〜コラム8の17行に記載のものを含むものとして定義される。ポリオール残基は、例えば、1つ以上のポリオールヒドロキシル基と−E−又は−D−の前駆体(例えば、カルボン酸又はメチレンハライド、ポリアルコキシル化基の前駆体(例えば、ポリアルキレングリコール)又はインデノ縮合ナフトピランのヒドロキシル置換基)との反応により形成される場合がある。ポリオールはU−(OH)により表される場合があり、ポリオールの残基は−O−U−(OH)a−1により表される場合があり、この場合、Uは、ポリヒドロキシ化合物の骨格又は主鎖であり、「a」は少なくとも2である。
【0030】
−G−を形成する場合があるポリオールの例には、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリオール、例えば、(a)平均分子量500未満を有する低分子量ポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム4の48〜50行及びコラム4の55行〜コラム6の5行に記載のものであるが、これに限定されない);(b)ポリエステルポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム5の7〜33行に記載のものであるが、これに限定されない);(c)ポリエーテルポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム5の34〜50行に記載のものであるが、これに限定されない);(d)アミド含有ポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム5の51〜62行に記載のものであるが、これに限定されない);(e)エポキシポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム5の63行〜コラム6の3行に記載のものであるが、これに限定されない);(f)多価ポリビニルアルコール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム6の4〜12行に記載のものであるが、これに限定されない);(g)ウレタンポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム6の13〜43行に記載のものであるが、これに限定されない);(h)ポリアクリルポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム6の43行〜コラム7の40行に記載のものであるが、これに限定されない);(i)ポリカーボネートポリオール(例えば、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,555,028号のコラム7の41〜55行に記載のものであるが、これに限定されない);及び(j)このようなポリオールの混合物が含まれる。
【0031】
本発明の種々の非限定的実施形態において、−Jは反応性部分を含む基又はその残基であるか、或いは−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分を形成する。
【0032】
本明細書において「フォトクロミックナフトピラン」という用語は、フォトクロミックの特性を示すコアナフトピラン下部構造を有するフォトクロミックの化合物として定義される。例えば、種々の非限定的実施形態によれば、フォトクロミックナフトピランは化学線放射の吸収に反応して第1の「閉環」型と第2の「開環」型の間で変換することが可能である。コアナフトピラン下部構造の例は、以下に示す通りである。
【0033】
【化17】

本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、B及びB’基(上記)はフォトクロミックナフトピランコア下部構造の部分である。特定の理論に制約されないが、B及びB’基はコアナフトピラン下部構造の開環型のπ系と共役することによりコアナフトピラン下部構造の開環型を安定化させるのに寄与していると考えられる。B及び/又はB’に関する好適な構造は、コアナフトピラン下部構造の開環型のπ系と共役関係にある少なくとも1つのπ結合を有する何れかの構造であり、例えば、置換又は非置換アリール環(例えば、置換又は非置換フェニル環又はナフチル環)及び置換又は非置換複素芳香族の構造であるが、これに限定されない。B及び/又はB’構造の種々の非限定的な例については、以下で詳述する。
【0034】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態との関連において使用するのに適するフォトクロミックナフトピランには、置換2H−ナフト[1,2−b]ピラン、置換3H−ナフト[2,1−b]ピラン、置換インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、置換インデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。これらの構造を有するフォトクロミックナフトピランは、それぞれ以下の構造1〜4に示す通りである。
【0035】
【化18】

上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質、例えば、フォトクロミックナフトピランは反応性置換基を含む。本明細書において「反応性置換基」という用語は、原子の配列を意味し、この場合は、その配列の一部が反応性の部分又はその残基を含んでいる。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、反応性置換基は更に、フォトクロミックナフトピランに反応性部分を連結する連結基を含む。本明細書において「部分(moiety)」という用語は、特徴的な化学的特性を有する有機分子の一部分又は一部を意味する。本明細書において「反応性部分」という用語は、反応して重合反応における中間体と結合1つ以上を形成するか、又は、自身が取り込まれている重合体と反応する場合がある、有機分子の一部分又は一部を意味する。本明細書において「重合反応における中間体」という表現は、反応してさらなるホスト単量体単位と結合1つ以上を形成し、重合反応を継続すること、又は、フォトクロミック物質上の反応性置換基の反応性部分と反応することができる、ホスト単量体単位2つ以上の任意の組み合わせを意味する。例えば、一非限定的実施形態において、反応性部分は重合反応においてコモノマーとして反応する場合がある。或いは、本明細書において、限定しないが、反応性部分は、親核物質又は親電子物質として中間体と反応する場合がある。本明細書において「ホスト単量体又はオリゴマー」という用語は、本開示のフォトクロミック物質が取り込まれる場合がある単量体又はオリゴマーの物質を意味する。本明細書において「オリゴマー」又は「オリゴマー物質」という用語は、追加的単量体単位と反応することができる2つ以上の単量体単位の組み合わせを指す。本明細書において「連結基」という用語は、フォトクロミックナフトピランと反応性部分とを連結する1つ以上の基又は原子鎖を意味する。本明細書において「反応性部分の残基」という用語は、重合反応において保護基又は中間体の何れかと反応性部分が反応した後に残存するものを意味する。本明細書において「保護基」という用語は、その基が除去されるまでは反応性部分が反応に関与できないようにする反応性部分に除去可能に結合した原子の基を意味する。
【0036】
一非限定的実施形態において、反応性部分は重合性部分を含む。本明細書において「重合性部分」という用語は、ホスト単量体又はオリゴマーの重合反応にコモノマーとして関与できる有機分子の一部分又は一部を意味する。他の非限定的実施形態において、反応性部分は重合反応における中間体又はホスト重合体の何れかの上にある親電子部分と反応して結合を形成する親核性部分を含む。或いは別の非限定的実施形態において、反応性部分は重合反応における中間体又はホスト重合体の何れかの上にある親核部分と反応して結合を形成する親電子部分を含む。本明細書において「親核部分」という用語は、電子に富んでいる原子又は原子団を意味する。本明細書において「親電子部分」という用語は、電子に乏しい原子又は原子団を意味する。親核部分は親電子部分と反応して、例えば、その間に共有結合を形成することは当業者の知る通りである。
【0037】
上で考察した通り、一非限定的実施形態においてフォトクロミック物質はフォトクロミックナフトピラン及びフォトクロミックナフトピランに結合した反応性置換基を含む。反応性置換基はフォトクロミックナフトピラン上の種々の位置においてフォトクロミックナフトピランに結合する場合がある。上に示す構造1、2、3及び4に関連する付番号方式を参照すると、特定の非限定的実施形態によれば、反応性置換基は、以下の通りナフトピランに結合する場合がある。構造1及び2の場合、反応性置換基は、5〜10の番号が付いた位置の何れかにおいてナフトピランに結合する場合がある。構造3及び4の場合、反応性置換基は、5〜13の番号が付いた位置の何れかにおいてインデノ縮合ナフトピランに結合する場合がある。更に、構造1、2、3及び4の場合、更に又は代替的に、反応性置換基は、B基及び/又はB’基に結合する場合がある。
【0038】
例えば、それぞれ構造1又は2である2H−ナフト[1,2−b]ピラン又は3H−ナフト[2,1−b]ピランをフォトクロミックナフトピランが含む場合の本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、反応性置換基は、フォトクロミックナフトピランのナフト部分の環上の水素を反応性置換基で置き換えることにより、フォトクロミックナフトピランに結合する場合がある。或いは、又は更に、反応性置換基は、フォトクロミックナフトピランのB及び/又はB’基上の水素を反応性置換基で置き換えることによりフォトクロミックナフトピラン1又は2に結合する場合がある。それぞれ構造3又は4であるインデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン又はインデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピランをフォトクロミックナフトピランが含む場合の他の非限定的実施形態によれば、反応性置換基は、フォトクロミックナフトピランのインデノ縮合ナフト部分の環上の水素を反応性置換基で置き換えることにより、フォトクロミックナフトピランに結合する場合がある。或いは、又は更に、反応性置換基は、フォトクロミックナフトピランのB及び/又はB’基上の水素を反応性置換基で置き換えることによりフォトクロミックナフトピラン3又は4に結合する場合がある。
【0039】
上で考察した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、反応性置換基は、以下の構造の1つにより表される場合があり:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中:−A−、−D−、−E−及び−G−基は上記の通りであり、−Jは反応性部分又は反応性部分の残基を含む基であるか;或いは、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分を形成する。−J基は、重合反応中の中間体又はホスト単量体と反応することができる任意の部分を含む場合がある。例えば、一非限定的実施形態において、−J基は、ホスト単量体の付加型の重合反応又は縮合型の重合反応においてコモノマーとして反応してフォトクロミック物質とホスト重合体との共重合体を生じ得るような、重合性部分を含む。本明細書において「付加型の重合反応」という用語は、得られる重合体が単量体単位に元から存在していた原子の全てを含有する重合反応を意味する。本明細書において「縮合型の重合反応」という用語は、得られる重合体が単量体単位に元から存在していた原子の全てを含有しない重合反応を意味する。本明細書において「ホスト重合体」という用語は、ホスト単量体の重合により形成される重合体を意味する。例えば、特定の非限定的実施形態において、ホスト重合体はフォトクロミック物質上の反応性置換基と反応して結合を形成できる官能基を含有してよい重合体を包含し得る。他の非限定的実施形態において、ホスト重合体はフォトクロミック物質が内部に取り込まれる重合体であるか、さもなければ共重合又は結合する重合体である場合がある。他の非限定的実施形態において、−J基は重合反応における中間体上、又はホスト重合体上の、それぞれ親電子又は親核の部分と反応できる親核又は親電子の部分を含む。別の非限定的実施形態において、−Jは水素を含むが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分、即ちヒドロキシル基を形成する。
【0040】
−Jが酸素又は窒素に結合する場合は、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態における使用に適する反応性部分は限定しないがアクリル、メタクリル、クロチル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシを包含する。このような反応性部分に相当する構造を以下に示す。
【0041】
【化19】

或いは、−Jは水素である場合があるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは、酸素に結合し、それによって、反応性ヒドロキシル基により連結が終了する(ここで、ヒドロキシル基が反応性部分を含む)。
【0042】
上に示した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による反応性置換基はフォトクロミックナフトピランに−J基を連結する−A−、−D−、−E−及び−G−基の1つ以上を含む場合がある。本明細書においては、上に定義した連結基は−A−、−D−、−E−及び−G−基1つ以上を含む場合がある。即ち−A−、−D−、−E−及び−G−基の種々の組み合わせは反応性置換基の連結基部分を形成できる。本明細書において定義した通り、「基」という用語は、原子1つ以上の配列を意味する。
【0043】
種々の非限定的実施形態の連結基の構造を以下に詳述する。上で考察した通り、反応性置換基の連結基部分は−A−、−D−、−E−及び−G−基の種々の組み合わせを含む。例えば特定の非限定的実施形態において、反応性置換基の連結基部分は、−A−D−E−G−、−G−E−G−、−D−E−G−、−A−D−、−D−G−又は−D−を含み、この場合連結基の第1の基は上記した位置においてフォトクロミックナフトピランに結合し、そして連結基の第2の基は以下に詳述する−J基に結合する。当業者の知る通り、−A−、−D−、−E−及び−G−基の種々の組み合わせを含む連結基は種々の方法により合成でき、そして後述する結合の連結は説明を目的とするのみであり、反応性置換基の形成のための特に所望されるか又は好適な合成経路を示唆する意図はない。
【0044】
種々の非限定的実施形態による種々の基、即ち−A−、−D−、−E−及び−G−の間の連結を以下に記載する。一非限定的実施形態において、−A−基はフォトクロミックナフトピランとの結合及び−D−基との結合を形成する。この非限定的実施形態によれば、A−D結合は−A−基のカルボニル又はメチレン炭素と−D−基のジアミン残基又はアミノアルコール残基の窒素又は酸素との間の共有結合である場合がある。例えば、種々の非限定的実施形態によれば、−A−がカルボニル炭素を含む場合は、A−D結合はアミド又はエステル結合である場合がある。別の非限定的実施形態において、−A−がメチレン炭素を含む場合は、A−D結合はアミン又はエーテル結合である場合がある。本明細書において「メチレン」という用語は、構造−CH−を有する有機基を意味する。
【0045】
他の非限定的実施形態において、−D−基は−A−基(上記)又はフォトクロミックナフトピランとの結合及び−E−又は−G−基との結合を形成する。一非限定的実施形態によれば、D−E結合は−D−基のジアミン残基又はアミノアルコール残基の窒素又は酸素と−E−基のカルボン酸残基の1つのカルボニル炭素との間の共有結合であり、これによりその間にアミド又はエステル結合を形成する場合がある。別の非限定的実施形態によれば、D−G結合は−D−基のジアミン残基又はアミノアルコール残基の窒素又は酸素が−G−基のポリオール残基又はポリアルキレングリコール残基上の末端酸素残基を置き換えることによりアミン又はエーテル結合を形成する共有結合である場合がある。
【0046】
別の非限定的実施形態において、−E−基は−D−基(上記)又は第1の−G−基との結合及び第2の−G−基との結合を形成する。これらの非限定的実施形態によれば、E−G結合は−G−基のポリオール残基又はポリアルキレングリコール残基上の末端酸素残基と−E−基のカルボン酸残基の1つのカルボニル炭素との間の共有結合であり、これによりその間にエステル結合を形成する場合がある。
【0047】
先に考察した通り、連結基の物理的及び化学的な性質はフォトクロミック物質の全体的特性に影響する場合がある。例えば、一非限定的実施形態において、反応性置換基の連結基は、フォトクロミック物質が親水性又は極性のホスト単量体に更に容易に溶解し得るように親水性の性質を有してよい。別の非限定的実施形態において、反応性置換基の連結基は、フォトクロミック物質が親油性又は非極性のホスト単量体に更に容易に溶解するように親油性の性質を有してよい。
【0048】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による連結基は又、得られるフォトクロミック物質が非均一な長さの連結基を有するフォトクロミック物質と比較してより容易に精製できるように、均一な長さ及び/又は組成のものである場合がある。例えば、連結基が均一な長さ及び/又は組成のものである特定の非限定的実施形態において、得られるフォトクロミック物質は結晶性であり、したがって、再結晶により精製され得る。連結基が均一な長さ及び/又は組成のものである別の非限定的実施形態において、得られるフォトクロミック物質はクロマトグラフィー法又は当該分野で知られた別の精製方法で容易に精製してよい。例えば、実施例3に示す一非限定的実施形態において、フォトクロミック物質(即ち3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン)は−D−Jに相当する反応性置換基を有するフォトクロミックナフトピランを含む。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質は酢酸エチル/ヘキサン混合物を使用した結晶化により精製してよく、紫色味を帯びた結晶を与える。実施例5に示す別の非限定的実施形態において、フォトクロミック物質(即ち3−フェニル−3−(4−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン)は−D−Jに相当する反応性置換基を有するフォトクロミックナフトピランを含む。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質はシリカゲルクロマトグラフィーにより精製してよく、緑色の発泡した泡状固体を与える。他の非限定的実施形態おいては、フォトクロミック物質の合成における中間体は、再結晶法、クロマトグラフィー法又は当該分野で知られた他の精製法により容易に精製され得る。
【0049】
種々の連結基と−J基の間の結合を以下に説明する。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−J基はG−J結合又はD−J結合により連結基に結合する場合がある。反応性部分−JがG−J結合により連結基に結合する特定の非限定的実施形態において、G−J結合は多くの可能な構造を有してよい。例えば、−Jがアクリル、メタクリル又はクロチルである場合はG−J結合はエステル結合である場合があり、即ち、−G−基の末端酸素残基は−J基のカルボニルと結合する。或いは、−Jが2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル又は2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニルである場合は、G−J結合はそれぞれカーバメート及びカーボネート結合である場合があり、その場合−G−基の末端酸素残基は−J基のエチルカルバモイル又はエトキシカルボニル部分のカルボニルと結合する。更に又−Jが4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシである場合は、G−J結合は−G−基の末端酸素残基と−J基の炭素との間のエーテル結合である場合がある。特定の非限定的実施形態において、G−J結合が連結基上に反応性部分、即ちヒドロキシ基をもたらす酸素−水素結合となるように、−J基は水素である場合がある。
【0050】
反応性部分−JがD−J結合により連結基に結合する別の非限定的実施形態において、D−J結合は多くの可能な構造を有してよい。例えば、−Jがアクリル、メタクリル又はクロチルである場合、D−J結合はエステル又はアミド結合である場合があり、即ち、−D−基のアミノアルコール残基又はジアミン残基の上のアルコール酸素又はアミン窒素が−J基のカルボニルと結合する。或いは、−Jが2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル又は2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニルである場合は、D−J結合は尿素、カーバメート又はカーボネート結合である場合があり、その場合、−D−基のジアミン残基又はアミノアルコール残基上のアミン窒素又はアミノアルコール残基上のアルコール酸素は−J基のエチルカルバモイル又はエトキシカルボニル部分のカルボニルと結合する。更に又−Jが4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル、又はエポキシである場合は、D−Jは−D−基のそれぞれアミン窒素又はアルコール酸素と−J基の炭素との間のアミン又はエーテル結合である場合がある。特定の非限定的実施形態において、−D−がアミノアルコールである場合、D−J結合が連結基上に反応性部分、即ちヒドロキシ基をもたらす酸素−水素結合となるように、−J基はアミノアルコール残基の酸素に結合した水素である場合がある。
【0051】
−Jがアクリル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル又はエポキシである本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、−Jは、それぞれアクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、2−イソシアナトエチルメタクリレート又はエピクロロヒドリンとの−D−又は−G−の縮合により連結基の−D−又は−G−基に結合する場合がある。
【0052】
別の非限定的実施形態は、以下により表されるフォトクロミック物質を提供し:
PC−[R]
式中:(a)PCはフォトクロミックナフトピラン(これは、例えば2H−ナフト[1,2−b]ピラン、3H−ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、インデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピラン、又はそれらの混合物であるが、これらに限定されない)を含み;(b)rは1〜4の範囲の整数であり;(c)各R基は以下の1つにより独立して表される反応性置換基であり:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J;
式中、−A−、−D−、−E−及び−G−基は上記の通りであり、−Jは反応性部分又はその残基を含む基であるか;或いは、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分を形成する。特定の非限定的実施形態によれば、−Jの非限定的な例には、アクリル、クロチル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニル及びエポキシが含まれる。
【0053】
上記の種々の非限定的実施形態に関して考察した通り、この非限定的実施形態による反応性置換基Rは、種々の位置においてフォトクロミックナフトピランPCに結合する場合がある。例えば、PCが2H−ナフト[1,2−b]ピラン又は3H−ナフト[2,1−b]ピランである場合、反応性置換基Rは、上に示す構造1又は2にて5〜10の番号が付いた位置の何れかにおいて結合する場合がある。PCがインデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン又はインデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピランである場合、反応性置換基Rは、上に示す構造3又は4において5〜13の番号が付いた位置の何れかにおいて結合する場合がある。更に又は或いは、PCが2H−ナフト[1,2−b]ピラン、3H−ナフト[2,1−b]ピラン、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン又はインデノ[1’,2’;4,3]ナフト[2,1−b]ピランである場合、反応性置換基RはB基及び/又はB’基に結合する場合がある。
【0054】
更に、上に示した通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質は1つの反応性置換基Rを含むか、又は、各々が同じである場合もあれば、異なる場合もある複数の反応性置換基Rを含む場合がある。例えば、rが2である一非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質は2つの反応性置換基Rを含み、これらは同じである場合もあれば、異なる場合もあり、上記の番号を付けた位置の2つ、番号を付けた位置の1つ及びB又はB’基の1つにおいて、フォトクロミックナフトピランPCに結合する場合があり、或いは、両方のR置換基がB及び/又はB’基においてフォトクロミックナフトピランに結合する場合がある。
【0055】
本明細書に開示される更に他の非限定的実施形態によれば、少なくとも1つの反応性置換基を含むフォトクロミック物質は以下の構造I〜IV、又はその混合物により示すことができる。
【0056】
【化20】

上に示す構造IIを参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、R基の構造の非限定的な例は、反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;及び−C(=O)W基であり、この場合Wは−OR、−N(R)R、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合Rはアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル、モノ置換フェニル、又はジ置換フェニルから選択され、前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、前記ハロ置換基はクロロ又はフルオロであるものを包含する。
【0057】
上に示す構造Iを参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、R’基の構造の非限定的な例は、反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル;及び−C(=O)W基であり、この場合Wは−OR、−N(R)R、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合Rはアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立してC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル、モノ置換フェニル、又はジ置換フェニルであり、この場合前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、前記ハロ置換基はクロロ又はフルオロであるものを包含する。
【0058】
上に示す構造I及びIIを参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、R基の構造の非限定的な例は、反応性置換基R;水素;C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換又は非置換フェニル;又は−OR10又は−OC(=O)R10であり、この場合R10は水素、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルであり、前記フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであるものを包含する。
【0059】
ここで上記の構造I、II、III及びIVを参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態において、各R及び各Rの構造の非限定的な例には独立して:反応性置換基R;水素;フルオロ;クロロ;C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換又は非置換フェニル;又は−OR10又は−OC(=O)R10(式中、R10は水素、C−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、又はモノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキルであり、前記フェニル置換基は、C−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);及びモノ置換フェニル(前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、この置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CHt−又は−[O−(CH−(式中、tは整数2、3、4、5又は6であり、kは1〜50の整数である)であり、この置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に結合する)が含まれる。構造I、II、III及びIVの場合、nは1〜4の整数である。
【0060】
各R及び各Rの構造のその他の非限定的な例には、窒素含有基が含まれ、この場合窒素含有基は、−N(R11)R12(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して、C−Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C−Cアルキルアリール、C−C20シクロアルキル、C−C20ビシクロアルキル、C−C20トリシクロアルキル、又はC−C20アルコキシアルキルであり、前記アリール基は、フェニル又はナフチルであるか、又はR11及びR12は窒素原子と一緒になって、C−C20ヘテロビシシクロアルキル環又はC−C20ヘテロトリシクロアルキル環を形成する);以下の図式VAにより表される窒素含有環:
【0061】
【化21】

(式中:各−Y−は各出現につき独立して、−CH−、−CH(R13)−、−C(R13−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、又は−C(R13)(アリール)−から選択され、Zは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R13)−又は−N(アリール)−であり、この場合各R13は独立してC−Cアルキルであり、各アリールは独立してフェニル又はナフチルであり、mは整数1、2又は3であり、pは整数0、1、2又は3であり、pが0である場合、Zは−Y−である);以下の図式VB又はVCの1つにより表される基:
【0062】
【化22】

(式中:R15、R16及びR17はそれぞれ独立して、水素、C−Cアルキル、フェニル又はナフチルであるか、又はR15及びR16は一緒になって5〜8炭素原子の環を形成し、各R14は各出現につき独立して、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、フルオロ又はクロロであり、pは整数0、1、2又は3である);及び非置換、モノ又はジ置換C−C18スピロ二環アミン;及び非置換、モノ又はジ置換C−C18スピロ三環アミン(前記スピロ二環アミン及びスピロ三環アミンの置換基は独立してアリール、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、又はフェニル(C−C)アルキルである)である場合がある。
【0063】
或いは、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、上に示す構造1、2、3及び4に示した付番によれば、6位のR基及び7位のR基は、一緒になって以下の図式VD及びVEにより表される基を形成し:
【0064】
【化23】

式中、T及びT’はそれぞれ独立して酸素又は−NR11−基であり、R11、R15及びR16は上記の通りである。
【0065】
上に示す構造III及びIVを参照すると、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、R及びR基の各々の構造の非限定的な例には独立して;反応性置換基R;水素;ヒドロキシ;C−Cアルキル:C−Cシクロアルキル;アリル;フェニル;モノ置換フェニル;ベンジル;モノ置換ベンジル;クロロ;フルオロ;−C(=O)W’基(式中、W’はヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、フェニル、モノ置換フェニル、アミノ、モノ(C−C)アルキルアミノ又はジ(C−C)アルキルアミノ;−OR18であり、この場合R18はC−Cアルキル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、C−Cシクロアルキル、モノ(C−C)アルキル置換C−Cシクロアルキル、C−Cクロロアルキル、C−Cフルオロアルキル、アリル又は−CH(R19)Y’基であり、この場合R19は水素又はC−Cアルキルであり、Y’はCN、CF又はCOOR20であり、この場合R20は水素又はC−Cアルキルであるか、或いは式中、R18は−C(=O)W’’基であり、この場合W’’は水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、非置換、モノ又はジ置換アリール基フェニル又はナフチル、フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェノキシ、モノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C−C)アルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ又はジ(C−C)アルキル置換フェニルアミノ、又はモノ又はジ(C−C)アルコキシ置換フェニルアミノであり、前記フェニル、ベンジル又はアリール基の置換基は独立してC−Cアルキル又はC−Cアルコキシである);又はモノ置換フェニル(前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CH−又は−[O−(CH−(式中、tは2、3、4、5又は6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に連結されている)である。
【0066】
或いは、特定の非限定的実施形態において、R及びRは一緒になってオキソ基、炭素原子3〜6個を含有するスピロ炭素環基、酸素原子1〜2個及びスピロ炭素原子を含め炭素原子3〜6個を含有するスピロ複素環基を形成し、前記スピロ炭素環及びスピロ複素環基は、0、1又は2個のベンゼン環によって環生成されている。
【0067】
又、上に示す構造I、II、III及びIVを参照すると、種々の非限定的実施形態によれば、B及びB’基の構造の非限定的な例にはそれぞれ独立して;置換アリール;置換9−ジュロリジニル;置換複素芳香族基(例えば、ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルが含まれ、1つ以上のフェニル、アリール、9−ジュロリジニル又は複素芳香族置換基は、反応性置換基Rである);非置換、モノ、ジ又はトリ置換フェニル又はアリール基;9−ジュロリジニル;又はピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾイル、ベンゾピリジル、インドリニル及びフルオレニルから選択される非置換、モノ又はジ置換複素芳香族基(この場合、各フェニル、アリール及び複素芳香族置換基は、それぞれ独立して:ヒドロキシル、−C(=O)R21基[この場合R21は−OR22、−N(R23)R24、ピペリジノ又はモルホリノであり、この場合R22はアリル、C−Cアルキル、フェニル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルキル置換フェニル(C−C)アルキル、モノ(C−C)アルコキシ置換フェニル(C−C)アルキル、C−Cアルコキシ(C−C)アルキル、又はC−Cハロアルキルであり、R23及びR24はそれぞれ独立して、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニル又は置換フェニルであり、この場合フェニル置換基はC−Cアルキル又はC−Cアルコキシであり、前記ハロ置換基はクロロ又はフルオロである]、アリール、モノ(C−C12)アルコキシアリール、ジ(C−C12)アルコキシアリール、モノ(C−C12)アルキルアリール、ジ(C−C12)アルキルアリール、ハロアリール、C−Cシクロアルキルアリール、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルキル、C−Cシクロアルキルオキシ(C−C12)アルコキシ、アリール(C−C12)アルキル、アリール(C−C12)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C−C12)アルキル、アリールオキシ(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルキル、モノ又はジ(C−C12)アルキルアリール(C−C12)アルコキシ、モノ又はジ(C−C12)アルコキシアリール(C−C12)アルコキシ、アミノ、モノ又はジ(C−C12)アルキルアミノ、ジアリールアミノ、ピペラジノ、N−(C−C12)アルキルピペラジノ、N−アリールピペラジノ、アジリジノ、インドリノ、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノ、テトラヒドロイソキノリノ、ピロリジル、C−C12アルキル、C−C12ハロアルキル、C−C12アルコキシ、モノ(C−C12)アルコキシ(C−C12)アルキル、アクリロキシ、メタクリロキシ又はハロゲンである);ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニル及びアクリジニルから選択される非置換又はモノ置換基(前記置換基はそれぞれC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、フェニル又はハロゲンである);モノ置換フェニル(前記フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は:ジカルボン酸残基又はその誘導体、ジアミン残基又はその誘導体、アミノアルコール残基又はその誘導体、ポリオール残基又はその誘導体、−CH−、−(CHt−又は−[O−(CH−(式中、tは整数2、3、4、5又は6であり、kは1〜50の整数である)であり、該置換基は別のフォトクロミック物質上のアリール基に結合している);以下の1つにより表される基:
【0068】
【化24】

(式中:Kは−CH−又は−O−であり、Mは−O−又は置換窒素であるが、但し、Mが置換窒素である場合、Kは−CH−であり、該置換窒素置換基は水素、C−C12アルキル又はC−C12アシルであり、各R25は各出現につき独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、ヒドロキシ又はハロゲンであり、R26及びR27はそれぞれ独立して水素又はC−C12アルキルであり、uは整数0、1または2である];又は、以下により表される基:
【0069】
【化25】

(式中、R28は水素又はC−C12アルキルであり、R29は、ナフチル、フェニル、フラニル及びチエニルのような非置換、モノ又はジ置換された基(該置換基は独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ、又はハロゲンである)である)である。
【0070】
或いは、特定の非限定的実施形態によれば、B及びB’は一緒になって非置換、モノ又はジ置換フルオレン−9−イリデンを形成し、前記フルオレン−9−イリデン置換基はそれぞれ独立してC−C12アルキル、C−C12アルコキシ及びハロゲンである。
【0071】
基が反応性置換基Rを含む、上で考察したR、R’、R、R、R、R、R、B及びB’基のそれぞれの場合、各反応性置換基Rは、以下の1つから独立して選択され、これにより表され得る:
−A−D−E−G−J;
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−A−D−J;
−D−G−J;及び、
−D−J。
【0072】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による−A−の構造の非限定的な例には、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−及び−CH−が含まれる。
【0073】
本開示の種々の非限定的実施形態による−D−の構造の非限定的な例には、上記の通り、ジアミン残基又はその誘導体、及びアミノアルコール残基又はその誘導体が含まれる。
【0074】
−D−がジアミン残基又はその誘導体である、特定の非限定的実施形態において、ジアミン残基の第1アミン窒素は、−A−、構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成する場合があり、ジアミン残基の第2アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する場合がある。−D−がアミノアルコール残基又はその誘導体である、別の非限定的実施形態において、アミノアルコール残基のアミン窒素は、−A−、構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成する場合があり、アミノアルコール残基のアルコール酸素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する場合があり;又は前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素は、−E−、−G−又は−Jと結合を形成する場合があり、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素は、−A−、構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成する場合がある。
【0075】
本開示の種々の非限定的実施形態による−E−の構造の非限定的な例には、上記の通り、ジカルボン酸残基又はその誘導体が含まれる。−E−の特定の非限定的実施形態において、前記ジカルボン酸残基の第1カルボニル基は、−G−又は−D−と結合を形成する場合があり、前記ジカルボン酸残基の第2カルボニル基は、−G−と結合を形成する場合がある。
【0076】
本開示の種々の非限定的実施形態による−G−の構造の非限定的な例には、上記の通り、ポリアルキレングリコール残基及びポリオール残基、並びにその誘導体が含まれる。−G−がポリアルキレングリコール残基である、特定の非限定的実施形態において、前記ポリアルキレングリコールの非限定的な例には、以下の構造が含まれ:
−[(OC(OC(OC]−O−
式中、x、y及びzはそれぞれ0〜50の数であり、x、y及びzの合計は1〜50である。−G−がポリオール残基又はその誘導体である、他の非限定的実施形態において、ポリオール残基の第1ポリオール酸素は、−E−、−D−又は構造I、構造II、構造III又は構造IVと結合を形成する場合があり、ポリオールの第2のポリオール酸素は、−E−又は−Jと結合を形成する場合がある。
【0077】
本開示の種々の非限定的実施形態によれば、−Jは反応性部分又はその残基を含むか;或いは、−Jは水素であるが、但し、−Jが水素である場合、−Jは−D−又は−G−基の酸素に結合して反応性部分を形成する。反応性部分の非限定的実施形態は、上に考察した通りである。
【0078】
更に、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、構造I、II、III及びIVのそれぞれのR、R’、R、R、R、R、R、B及びB’基の1つが、反応性置換基Rを含む。別の非限定的実施形態において、構造I、II、III及びIVのそれぞれのR、R’、R、R、R、R、R、B及びB’基の2つが、反応性置換基Rを含む場合があり、これらの反応性置換基Rは、同じである場合もあれば、異なる場合もある。更に別の非限定的実施形態において、構造I、II、III及びIVのそれぞれのR、R’、R、R、R、R、R、B及びB’基の1〜4つが、反応性置換基Rを含む場合があり、これらの反応性置換基Rは、同じである場合もあれば、異なる場合もある。
【0079】
本開示の種々の実施形態による反応性置換基Rを含むナフトピランを含むフォトクロミック物質の非限定的な例には、以下が含まれる:
(i)3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(ii)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(iii)3−フェニル−3−(4−(4−フェニルピペラジノ)フェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(iv)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(v)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(vi)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(vii)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(viii)3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−ピペリジノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(ix)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(x)3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xi)3−フェニル−3−(4−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)フェニル−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xii)3−フェニル−3−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xiii)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xiv)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xv)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xvi)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xvii)3−フェニル−3−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(xviii)3−フェニル−3−(4−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエチル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
及びそれらの混合物。
【0080】
本明細書に開示される反応性置換基を含むフォトクロミック物質の種々の非限定的実施形態によるフォトクロミックナフトピラン上の反応性置換基Rを合成する非限定的な方法を、図1及び2に示した反応図式を参照しながら説明する。図1は、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピランの7位に反応性置換基Rを合成する種々の非限定的な方法を示す。図2は、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピランのB基上の反応性置換基Rを合成する一非限定的な方法を示す。当業者の知る通り、フォトクロミックナフトピラン上の反応性置換基を合成する方法は複数存在し、従って当然ながら、それらの反応図式は、単に図示する目的で提示しており、これに限定することを意図していない。
【0081】
ここで図1を参照すると、2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール5は、置換2−プロピン−1−オールと反応させて、インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン6を形成する場合がある。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態の合成での使用に好適な、7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを合成する非限定的な方法は、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第6,296,785号のコラム11の6行〜コラム28の35行に記載されている。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態の合成での使用に好適な、置換2−プロピン−1−オールを合成する非限定的な方法は、参考として本明細書に組み入れられている米国特許第5,458,814号のコラム4の11行〜コラム5の9行及び実施例1、4〜6、11、12及び13の手順1、及び、米国特許第5,645,767号のコラム5の12行〜コラム6の30行に記載されている。次にインデノ縮合ナフトピラン6をジアミン又はアミノアルコールと反応させる場合がある。例えば、6をジアミン、例えばピペラジンと反応させることにより6−メトキシ−7−(ピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン7を得る場合がある。7のピペアジン部分を2−イソシアナトエチルメタクリレートと縮合させることにより、Dがジアミン残基である、上に定義したように、−D−Jを含むR置換基を有するフォトクロミックナフトピラン8を得る場合がある。或いは、インデノ縮合ナフトピラン6は、アミノアルコール、例えば3−ピペリジノメタノールと反応させることにより、6−メトキシ−7−(3−ヒドロキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン9を得る場合がある。9のヒドロキシ部分を2−イソシアナトエチルメタクリレートと縮合させることによりDがアミノアルコール残基である、上に定義したように、−D−Jを含むR置換基を有するフォトクロミックナフトピラン10を得る場合がある。
【0082】
更に図1を参照すると、9のヒドロキシ部分は別法として環状無水物、例えば、無水コハク酸と反応させることにより6−メトキシ−7−(3−(2−ヒドロキシカルボニルエチルカルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン11を得る場合がある。11のカルボン酸をポリエチレングリコールメタクリレートでエステル化することにより、上に定義したように、−D−E−G−Jを含むR置換基を有するフォトクロミックナフトピラン12を得る場合がある。
【0083】
図2を参照すると、7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール13を1−フェニル−1−(4−(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−イル)フェニル−2−プロピン−1−オールと反応させることによりインデノ[2’,3’;3,4]ナフト[1,2−b]ピラン14を得る場合がある。14のヒドロキシ部分を2−イソシアナトエチルメタクリレートと縮合させることによりDがアミノアルコール残基である、上に定義したように、−D−Jを反応性置換基Rが含んでいる、B基上にR置換基を有するフォトクロミックナフトピラン15を得る場合がある。
【0084】
本開示のフォトクロミック物質、例えば、反応性置換基が本明細書に記載する構造を有するフォトクロミックナフトピラン及びフォトクロミックナフトピランに結合した反応性置換基を含むフォトクロミック物質は、フォトクロミック物質を使用される場合がある用途、例えば光学素子、例えば眼科用素子、ディスプレイ素子、ウィンドウ、ミラー、能動液晶セル素子及び受動液晶セル素子において使用される場合がある。本明細書において「光学的」という用語は、光及び/又は視野に関係するか関連することを意味する。本明細書において「眼科用」という用語は、眼及び視野に関係するか関連することを意味する。本明細書において「ディスプレイ」という用語は、単語、数、符号、デザイン又は描画の、目視可能な、又は機械読み取り可能な情報の提示を意味する。ディスプレイ素子の非限定的な例はスクリーン、モニター及びセキュリティ部品、例えば、セキュリティマークを包含する。本明細書において「ウィンドウ」という用語は、放射線が通過できるように適合された開口部を意味する。ウィンドウの非限定的な例は航空機及び自動車のフロントガラス、自動車及び航空機の透明部、例えばTルーフ、サイドライト及びバックライド、フィルター、シャッター及び光学的スイッチを包含する。本明細書において「ミラー」という用語は、入射光の大部分を鏡のように反射する表面を意味する。本明細書において「液晶セル」という用語は、液晶物質を含有する、整列させることができる構造を指す。液晶セル素子の一非限定的な例は液晶ディスプレイである。
【0085】
特定の非限定的実施形態において、本開示のフォトクロミック物質は眼科用素子、例えば矯正レンズ、例えば単焦点レンズ又はセグメント複焦点レンズ及び非セグメント複焦点レンズの何れかである場合がある複焦点レンズ(例えば2焦点レンズ、3焦点レンズ及び二重焦点レンズであるが、これに限定されない)、非矯正レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグル又は光学機器用レンズ、例えばカメラ又はテレスコープレンズにおいて使用される場合がある。別の非限定的実施形態において、本開示のフォトクロミック物質はプラスチックフィルム及びシート、生地及びコーティングにおいて使用される場合がある。
【0086】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質は、有機性の物質、例えば重合体、オリゴマー又はモノマー物質に配合してよく、これらは、例えば、製品(例えば光学素子、及びその他の基材に適用できるコーティング)を形成するために使用される場合がある。本明細書において「配合する」という用語は、物理的及び/又は化学的に組み合わせることを意味する。即ち、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質は有機性物質の少なくとも一部分に物理的及び/又は化学的に組み合わせてよい。本明細書において「重合体」及び「重合体物質」という用語は、モノポリマー又は共重合体(例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体及び交互共重合体)並びにその混合物及び他の組み合わせを指す。更に又、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質は各々単独で、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による別のフォトクロミック物質と組み合わせて、又は、適切な補完的な従来のフォトクロミック物質と組み合わせて使用される場合があることも意図している。例えば、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質は300〜1000ナノメートルの範囲内に活性化吸収の最大値を有する他の補完的な従来のフォトクロミック物質と共に使用される場合がある。補完的な従来のフォトクロミック物質は他の重合性又は適合化されたフォトクロミック物質を包含してよい。
【0087】
本開示は又、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による重合体物質及びフォトクロミック物質を含むフォトクロミック組成物を意図している。本明細書において「フォトクロミック組成物」という用語は、フォトクロミック物質であってもなくてもよい別の物質と組み合わせたフォトクロミック物質を指す。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック組成物の特定の非限定的な例において、フォトクロミック物質は重合体物質の少なくとも一部分に配合される。例えば、そして限定しないが、本明細書に開示されるフォトクロミック物質は、例えば、重合体物質の一部分にフォトクロミック物質を共重合させることにより重合体物質の一部分に結合させるか;又は重合体物質と混合することにより、重合体物質の一部分に配合してよい。本明細書において「混合された」又は「混合すること」という用語は、フォトクロミック物質が重合体物質のような有機物質の少なくとも一部分と相互混合又は相互混和するが、有機物質に結合するわけではないことを意味している。本明細書において「結合された」又は「結合すること」という用語は、フォトクロミック物質が重合体物質のような有機物質又はその前駆体の一部分に連結していることを意味する。例えば、特定の非限定的実施形態において、フォトクロミック物質は反応性置換基(例えば、上記の反応性置換基であるが、これに限定されない)を介して有機物質の一部分に結合する場合がある。
【0088】
有機物質が重合体物質である一非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質は、重合体物質の少なくとも一部分、又は、重合体物質を形成する元となる単量体物質又はオリゴマー物質の少なくとも一部分に配合してよい。例えば、反応性置換基を有する本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質は、反応性部分が反応する場合がある基を有する単量体、オリゴマー又は重合体のような有機物質に混合してよく、或いは、反応性部分は、有機物質が形成される重合反応中、例えば共重合過程において、コモノマーとして反応させることができる。本明細書において「共重合する」という用語は、フォトクロミック物質が重合体物質を形成するホスト単量体の重合反応中にコモノマーとして反応することにより重合体物質の一部分に連結することを意味する。例えば、重合性部分を含む反応性置換基を有する本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質はホスト単量体の重合の間にコモノマーとして反応する場合がある。
【0089】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態に適する重合体物質は限定しないが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C−C12)アルキル化メタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシル化フェノールメタクリレート)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリレート)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール及びポリオール(アリルカーボネート)単量体、単官能性アクリレート単量体、単官能性メタクリレート単量体、多官能性アクリレート単量体、多官能性メタクリレート単量体、ジエチレングリコールジメタクリレート単量体、ジイソプロペニルベンゼン単量体、アルコキシル化多価アルコール単量体及びジアリリデンペンタエリスリトール単量体からなる群のメンバーの重合体を包含する。本開示のフォトクロミック組成物の特定の非限定的実施形態において、重合体物質は単独重合体又はアクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、エチレングリコールビスメタクリレート、チオキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルブチラール、ウレタン、チオウレタン、ジエチレングリコール、ビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート及びこれらの組み合わせから選択される単量体の共重合体を含む。
【0090】
透明な共重合体及び透明な重合体の混合物も又本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック組成物のための好適なホスト重合体物質である。例えば、種々の非限定的実施形態によれば、重合体物質は、熱可塑性ポリカーボネート樹脂、例えば、商標LEXAN(登録商標)の下に販売されているビスフェノールAとホスゲンから誘導された樹脂;ポリエステル、例えば、商標MYLAR(登録商標)の下に販売されているような物質;ポリ(メチルメタクリレート)、例えば、商標PLEXIGLAS(登録商標)の下に販売されているような物質;ポリオール(アリルカーボネート)、特にジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の単量体の重合物、即ち単量体が商標CR−39(登録商標)の下に販売されているもの;及び、例えばポリウレタンプレポリマーとジアミン硬化剤の反応により製造されるポリ尿素−ポリウレタン(ポリ尿素ウレタン)重合体、即ちそのような重合体の1つの組成物がPPG Industries, Inc.(米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)より商標TRIVEX(登録商標)の下に販売されているもの;から製造された光学的にクリアな重合体物質である場合がある。好適な重合体物質の他の非限定的な例はポリオール(アリルカーボネート)、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の他の共重合性単量体物質との共重合体(例えば、酢酸ビニルとの共重合体)、末端ジアクリレート官能性を有するポリウレタンとの共重合体;及び末端部分がアリル又はアクリロイル官能基を含有する脂肪族ウレタンとの共重合体の重合物を包含する。更に別の好適な重合体物質は限定しないが、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ジエチレングリコールジメタクリレート単量体、ジイソプロペニルベンゼン単量体、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート単量体、エチレングリコールビスメタクリレート単量体、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレート単量体、エトキシル化フェノールビスメタクリレート単量体及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアセテート単量体から選択される重合体、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレン及びスチレンとメチルメタクリレートの共重合体、酢酸ビニル、アクリロニトリル及びこれらの組み合わせを包含する。一非限定的実施形態によれば、重合体物質はCR標記、例えばCR−307、CR−407及びCR−607の下にPPG Industries, Inc.より販売されている光学樹脂である場合がある。
【0091】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態は基材及び基材の一部分に連結された上記非限定的実施形態の何れかによるフォトクロミック物質を含むフォトクロミック物品を提供する。本明細書において「連結された」という用語は、直接、又は、別の物質又は構造を介して間接的に会合していることを意味する。一非限定的実施形態において、本開示のフォトクロミック物品は、光学素子(例えば、眼科用素子、ディスプレイ素子、ウィンドウ、ミラー、能動液晶セル素子及び受動液晶セル素子であるが、これに限定されない)である場合がある。特定の非限定的実施形態において、フォトクロミック物品は、眼科用素子、例えば、矯正レンズ(例えば、単焦点レンズ、又はセグメント複焦点レンズ及び非セグメント複焦点レンズの何れかである場合がある複焦点レンズ(例えば、2焦点レンズ、3焦点レンズ及び二重焦点レンズであるが、これに限定されない))、非矯正レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグル、又は光学機器用レンズであるが、これに限定されない。
【0092】
例示であり限定することなく、本明細書に開示されるフォトクロミック物質は、例えば基材物質にフォトクロミック物質を共重合又は他の態様で結合することにより基材の原料である物質の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を結合させること;基材物質にフォトクロミック物質を混合すること;又は基材表面の少なくとも一部分上にフォトクロミック物質をコーティングすることによるなどして、基材の少なくとも一部分に連結してよい。或いは、フォトクロミック物質は中間コーティング、膜又は層を介して基材の少なくとも一部分に連結してよい。
【0093】
フォトクロミック物品の基材が重合体物質を含む本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によれば、基材の重合体物質の少なくとも一部分、又は、基材を形成する原料のオリゴマー又は単量体物質の少なくとも一部分に、フォトクロミック物質を配合することにより、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結してよい。例えば、一非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質はキャスト−イン−プレース(cast−in−place)法により基材の重合体物質に配合してよい。更に又は或いは、フォトクロミック物質は浸潤により基材の重合体物質の少なくとも一部分に連結してもよい。浸潤及びキャスト−イン−プレースの方法を以下に説明する。
【0094】
例えば、一非限定的実施形態によれば、基材は重合体物質を含み、そしてフォトクロミック物質は重合体物質の少なくとも一部分に結合される。他の非限定的実施形態によれば、基材は重合体物質を含み、フォトクロミック物質は重合体物質の少なくとも一部分に混合される。他の非限定的実施形態によれば、基材は重合体物質を含み、フォトクロミック物質は重合体物質の少なくとも一部分と共重合される。本明細書に開示される種々の非限定的実施形態による基材の形成において有用な重合体物質の非限定的な例は上記において詳述した通りである。
【0095】
他の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質は、フォトクロミック物品の基材の少なくとも一部分に、基材の少なくとも一部分に連結された少なくとも部分的コーティングの部分として、連結してよい。この非限定的実施形態によれば、基材は重合体基材又は無機の基材(例えば、ガラス基材)である場合がある。更に又、フォトクロミック物質は基材へのコーティング組成物の適用の前にコーティング組成物の少なくとも一部分に配合してよく、或いは、コーティング組成物を基材に適用し、少なくとも部分的に固着させ、そしてその後、フォトクロミック物質をコーティングの少なくとも一部分に浸潤させてもよい。本明細書において「固着させる(set)」及び「固着」という用語は、限定しないが、硬化、重合、交差結合、冷却及び乾燥を包含する。
【0096】
例えば、本発明の開示の一非限定的実施形態において、フォトクロミック物品はその表面の少なくとも一部分に連結された重合体物質の少なくとも部分的なコーティングを含む場合がある。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質は少なくとも部分的なコーティングの重合体物質の少なくとも一部分と混合してよく、又は、フォトクロミック物質は少なくとも部分的なコーティングの重合体物質の少なくとも一部分に結合させてよい。1つの特異的な非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質は少なくとも部分的なコーティングの重合体物質の少なくとも一部分と共重合させてよい。
【0097】
フォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティングは、例えばフォトクロミック物質を含むコーティング組成物を基材表面の少なくとも一部分に直接適用し、そして、コーティング組成物を少なくとも部分的に固着させることにより、基材に直接連結してよい。更に又は或いは、フォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティングは、例えば、別のコーティング1つ以上を介して基材に連結してよい。例えば、限定しないが、種々の非限定的実施形態によれば、別のコーティング組成物を基材表面の少なくとも一部分に適用し、少なくとも部分的に固着させ、そしてその後、フォトクロミック物質を含むコーティング組成物を別のコーティングの上に適用し、そして少なくとも部分的に固着させてよい。
【0098】
本明細書に開示される光学素子と組み合わせて使用される場合がある別のコーティング及びフィルムの非限定的な例はプライマーコーティング及びフィルム;保護コーティング及びフィルム、例えば転移コーティング及びフィルム及び耐摩擦性コーティング及びフィルム;反射防止コーティング及びフィルム;従来のフォトクロミックコーティング及びフィルム;偏光コーティング及びフィルム;及びこれらの組み合わせを包含する。本明細書において「保護コーティング及びフィルム」という用語は、磨耗や摩滅を防止し、一方のコーティング及びフィルムからもう一方への特性の転移をもたらし、重合反応の薬品の作用からの保護及び/又は水分、熱、紫外線、酸素などのような環境条件による劣化からの保護をもたらすコーティング及びフィルムを指す。
【0099】
本明細書に開示される種々の非限定的実施形態と組み合わせて使用される場合があるプライマーコーティング及びフィルムの非限定的な例はカップリング剤、カップリング剤の部分加水分解物及びそれらの混合物を含むコーティング及びフィルムを包含する。本明細書において「カップリング剤」という用語は、表面1つ以上の上の基と反応、結合及び/又は会合することができる基を有する物質を意味する。一非限定的実施形態において、カップリング剤は類似または非類似の表面である場合がある2つ以上の表面の界面において分子架橋として機能してよい。別の非限定的実施形態において、カップリング剤は単量体、オリゴマー及び/又は重合体である場合がある。このような物質は限定しないが、有機金属、例えばシラン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、ジルコニウムアルミネート、その加水分解物及びその混合物を包含する。本明細書において「カップリング剤の部分加水分解物」という用語は、カップリング剤上の加水分解可能な基の一部〜全てが加水分解されることを意味する。
【0100】
本明細書において「転移コーティング及びフィルム」という用語は、2つのコーティング又はフィルム又はコーティング及びフィルムの間に特性の勾配を生じさせる場合に有効なコーティング又はフィルムを意味する。例えば、この場合は限定しないが、転移コーティングは、比較的硬質のコーティングと比較的軟質のコーティングの間の硬度の勾配を生じさせる場合に有効である。
【0101】
本明細書において「耐摩擦性コーティング及びフィルム」という用語は、振動砂方法(Oscillating Sand Method)を使用した透明プラスチック及びコーティングの耐摩擦性に関するASTMF−735標準試験法に匹敵する方法で試験した場合に、標準的な比較対照材料、例えば、PPG Industries,Inc.から入手されるCR−39(登録商標)単量体から作成した重合体よりも高値の耐摩擦性を示す保護重合体物質のコーティングを指す。耐摩擦性コーティングの非限定的な例は有機シラン、有機シロキサンを含む耐摩擦性コーティング、シリカ、チタニウム及び/又はジルコニウムのような無機物質系の耐摩擦性コーティング、紫外線硬化性型の有機耐摩擦性コーティング、酸素バリヤコーティング、UV遮断コーティング及びこれらの組み合わせを包含する。
【0102】
反射防止コーティング及びフィルムの非限定的な例は本明細書に開示される物品又はフィルム上に、真空蒸着、スパッタリング又は何らかの他の方法により付着させてよい金属酸化物、金属フッ化物又は他のそのような物質の単層、多層又はフィルムを包含する。従来のフォトクロミックのコーティング及びフィルムの非限定的な例は、限定しないが、従来のフォトクロミック物質を含むコーティング及びフィルムを包含する。偏光コーティング及びフィルムの非限定的な例は、限定しないが、当該分野で知られた二色性化合物を含むコーティング及びフィルムを包含する。
【0103】
上で考察した通り、種々の非限定的実施形態によれば、これらのコーティング及びフィルムは本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティングを適用する前に基材に適用してよい。或いは又は更に、これらのコーティングは、例えばフォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティングの上のオーバーコーティングとしてフォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティングを適用した後に基材に適用してよい。例えば、本明細書において限定しないが、種々の他の非限定的実施形態によれば、上記したコーティングは、基材の同じ表面の少なくとも一部分に対し、表面から以下の順序、即ち:プライマー、フォトクロミック、転移、耐摩擦性、偏光のフィルム又はコーティング、反射防止、及び、耐摩擦性;プライマー、フォトクロミック、転移、耐摩擦性及び反射防止;又はフォトクロミック、転移及び偏光;又はプライマー、フォトクロミック及び偏光;又はプライマー、フォトクロミック及び反射防止の順序で連結してよい。更に又、上記したコーティングは基材の両方の表面に適用してもよい。
【0104】
本開示は又、基材の少なくとも一部分に本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック物質を連結することを含むフォトクロミック物品の製造の種々の方法を意図している。例えば、基材が重合体物質を含む一非限定的実施形態において、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは、基材の重合体物質の少なくとも一部分とフォトクロミック物質を混合することを含む。別の非限定的実施形態において、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは、基材の重合体物質の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を結合することを含む場合がある。例えば一非限定的実施形態において、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは、基材の重合体物質の少なくとも一部分とフォトクロミック物質を共重合することを含む場合がある。重合体物質にフォトクロミック物質を連結する非限定的な方法は、例えば、重合体、オリゴマー又は単量体物質の溶液又は溶融物にフォトクロミック物質を混合し、その後、重合体、オリゴマー又は単量体物質を少なくとも部分的に固着させることを包含する。当業者の知る通り、この非限定的実施形態によれば、得られるフォトクロミック組成物において、フォトクロミック物質は重合体物質と混合されている(即ち相互に混合されているが結合していない)か、又は重合体物質と結合している。例えば、重合体物質が有機物質の固着の間に重合体、オリゴマー又は単量体物質と適合する重合性の基を含有している場合は、フォトクロミック物質はその少なくとも一部分と反応してそこにフォトクロミック物質を結合させることができる。
【0105】
別の非限定的実施形態において、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは、基材の重合体物質の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を浸潤させることを含む。この非限定的実施形態によれば、例えば加熱を伴うか伴うことなく、フォトクロミック物質を含有する溶液に重合体物質を浸積することにより、フォトクロミック物質が物質中に拡散するようにしてよい。その後、フォトクロミック物質を、上で考察した通り、重合体物質に結合する場合がある。別の非限定的実施形態において、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは、基材の重合体物質の少なくとも一部分に対する、フォトクロミック物質の混合、結合(例えば、共重合)及び浸潤の2つ以上の組み合わせを含む場合がある。
【0106】
基材が重合体物質を含む一非限定的実施形態によれば、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を配合することはキャスト−イン−プレース法を含む。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質を重合体の溶液又は溶融物又は他のオリゴマー及び/又は単量体の溶液又は混合物と混合し、その後これを所望の形状を有する鋳型に流し込み、そして少なくとも部分的に固着させて基材を形成する場合がある。更に又、この非限定的実施形態によれば必須ではないが、フォトクロミック物質は重合体物質と結合させることができる。
【0107】
基材が重合体物質を含む別の非限定的実施形態によれば、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは鋳型内キャスティングを含む。この非限定的実施形態によれば、液体コーティング組成物又は粉末コーティング組成物である場合があるフォトクロミック物質を含むコーティング組成物を鋳型の表面に適用し、そして少なくとも部分的に固着させる。その後、重合体の溶液もしくは溶融物もしくは他のオリゴマー又は単量体の溶液あるいは混合物をコーティング上に注入し、そして少なくとも部分的に固着させる。固着後、コーティングを有する基材を鋳型から取り外す。
【0108】
基材が重合体物質又は無機物質、例えばガラスを含む更に別の非限定的実施形態によれば、基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を連結することは基材の少なくとも一部分にフォトクロミック物質を含む少なくとも部分的なコーティング又はラミネーションを適用することを含む。好適なコーティング方法の非限定的な例はスピンコーティング、スプレーコーティング(例えば、液体又は粉末のコーティングを使用)、カーテンコーティング、ロールコーティング、スピンアンドスプレーコーティング及びオーバーモールディングを包含する。例えば、一非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質はオーバーモールディングにより基材に連結してよい。この非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質を含むコーティング組成物(これは前記した通り液体コーティング組成物又は粉末コーティング組成物である場合がある)を鋳型に適用し、そして次に基材がコーティングに接触してそれが基材表面の少なくとも一部分の上に延展されるように鋳型内に基材を入れる。その後、コーティング組成物を少なくとも部分的に固着させ、そしてコーティングされた基材を鋳型から取り外す。或いは、オーバーモールディングは、基材と鋳型との間に開放領域が規定されるように鋳型内に基材を入れ、そしてその後、フォトクロミック物質を含むコーティング組成物を開放領域に注入することにより行ってよい。その後、コーティング組成物を少なくとも部分的に固着させ、そしてコーティングされた基材を鋳型から取り外す。
【0109】
更に別の非限定的実施形態によれば、フォトクロミック物質を含むフィルムを接着剤及び/又は熱及び圧力の適用を伴うか伴うことなく、基材の一部分に付着させてよい。その後、所望により第2の基材を第1の基材の上に適用してよく、そして2つの基材をラミネート(即ち熱及び圧力の適用による)することにより、フォトクロミック物質を含むフィルムが2基材の間に挟まれた素子を形成する場合がある。フォトクロミック物質を含むフィルムを形成する方法は、例えば限定しないが、重合体溶液又はオリゴマー溶液又は混合物とフォトクロミック物質を混合し、そこからフィルムをキャスティング又は押出成型し、所望によりフィルムを少なくとも部分的に固着させる。更に又は或いは、フィルムを成型(フォトクロミック物質を使用するか使用することなく)し、そしてフォトクロミック物質を浸潤(上記)させてよい。
【0110】
更に又、当業者の知る通り、本明細書に開示される種々の非限定的実施形態によるフォトクロミック組成物、フォトクロミック物品及びフォトクロミックコーティング組成物は、更に、組成物の製造及び/又は性能において有用な他の添加物を含む場合がある。例えば限定しないが、そのような添加剤には、補完的フォトクロミック物質、光開始剤、熱開始剤、重合阻害剤、溶媒、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤、例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS))、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(例えば、界面活性剤であるが、これに限定されない)、フリーラジカルスカベンジャー及び接着促進剤(例えば、ヘキサンジオールジアクリレート及びカップリング剤)が含まれる場合があるが、これに限定されない。
【0111】
本明細書に記載のフォトクロミック物質はそれぞれ、フォトクロミック物質が会合する、即ち混合、共重合又は他の態様の結合、コーティング及び/又は浸潤に付される基材又は重合体物質が所望の最終色を示すような、例えばフォトクロミック物質が閉環型の場合は実質的にクリア及び無色であり、化学線放射により活性化されてフォトクロミック物質が開環型になった場合には着色となるような量(又は比)において使用される場合がある。
【0112】
コーティング組成物、重合体物質、基材、フォトクロミック組成物及び/又はフォトクロミック物品に連結又は配合するべき本開示のフォトクロミックナフトピランの量は所望の光学的作用をもたらすために十分な量が使用される限り、重要ではない。一般的に、そのような量は「フォトクロミック量」と記載してよい。使用するフォトクロミック物質の特定の量は種々の要因、例えば使用するフォトクロミック物質の吸収特性、その照射時に必要とされる色の強度、及び、フォトクロミック物質を配合又は適用するために使用される方法に応じて変動してよい。
【0113】
本明細書に開示される非限定的実施形態の種々の方法において使用する上記したフォトクロミック物質の相対的な量は、部分的には、そのような物質の活性種の色の相対強度、所望の最終的な色、化学性放射に関するモル吸光係数(「消光係数」)及び重合体物質又は基材への適用の方法に応じて変動する。一般的に、重合体物質又は基材に配合又は連結されるフォトクロミック物質の総量は、フォトクロミック物質が配合又は連結される面の平方センチメートル当たり約0.05〜約5.0ミリグラムの範囲である。コーティング組成物に配合又は連結されるフォトクロミック物質の量は、液体コーティング組成物の重量に基づいて、0.1〜40重量%の範囲である場合がある。キャスト−イン−プレース型の方法等によりホスト重合体フォトクロミック組成物又はフォトクロミック物品に配合、即ち混合、共重合又は結合されるフォトクロミック物質の量は、重合体組成物又はフォトクロミック物品の重量に基づいて0.01〜40重量%の範囲である場合がある。
【実施例】
【0114】
以下の実施例は本開示内の組成物及び方法の種々の非限定的実施形態を説明するものであり、本明細書において別途記載するとおり本発明を限定するものではない。
【0115】
(実施例1:)
(手順1)
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメトキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール(10g)、1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オール(13g)、ドデシルベンゼンスルホン酸(10滴)及びクロロホルム(400mL)を反応フラスコ中に合わせた。反応混合物を3時間還流下に加熱し、濃縮した。残存物にアセトンを添加し、スラリーを濾過し、オフホワイトの固体18gを得た。
【0116】
(手順2)
手順1の3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(20g)、3−ピペリジノメタノール(7.6g)及びテトラヒドロフラン(250mL)を窒素雰囲気下にアイスバスで冷却した乾燥反応フラスコ中に合わせた。ヘキサン中のブチルリチウム(2.5M、50mL)を反応混合物に攪拌しながら滴加した。添加後、冷却バスを除去し、フラスコを室温に戻した。暗色の溶液を氷水(400mL)に注ぎ込み、混合物を酢酸エチルで(400mLで2回)抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上に乾燥し、濃縮した。残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1.5)により精製した。発泡性の茶色味を帯びた泡状物として生成物を得た(17g)。
【0117】
(手順3)
手順1からの手順2の3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−ヒドロキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(9g)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(3mL)、ジブチルスズラウレート(5滴)及び酢酸エチル(200mL)を大気開放型濃縮器付き反応フラスコに合わせた。混合物を30分間還流下に加熱した。メタノール(15mL)を混合物に添加し、過剰の2−イソシアナトエチルメタクリレートをクエンチングした。反応混合物を濃縮し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)により精製した。発泡性の紫味を帯びた泡状物として生成物を得た(11g)。核磁気共鳴分光器(NMR)により3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの構造を裏付けた。
【0118】
(実施例2:)
(手順1)
3−ピペリジノメタノールの代わりに4−ヒドロキシピペリジンを使用した以外は実施例1の手順2の操作法に従った。オフホワイトの結晶として生成物を得た。
【0119】
(手順2)
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−ヒドロキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順1の)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用した以外は実施例1の手順3の操作法に従った。紫味を帯びた結晶として生成物を得た。質量分析により3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量を裏付けた。
【0120】
(実施例3:)
(手順1)
3−ピペリジノメタノールの代わりにピペラジンを使用した以外は実施例1の手順2の操作法に従った。紫味を帯びた結晶として生成物を得た。
【0121】
(手順2)
手順1の3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−ピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(10g)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(3mL)及び酢酸エチル(150mL)を大気開放型乾燥反応フラスコ中に合わせた。混合物を20分間室温で攪拌した。メタノール(5mL)を混合物に添加し、過剰の2−イソシアナトエチルメタクリレートをクエンチングした。混合物を濃縮し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)により精製した。クロマトグラフィー後、生成物を酢酸エチル/ヘキサン(v/v:1/1)から結晶化し、紫味を帯びた結晶として濾去した(10g)。質量分析により3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量を裏付けた。
【0122】
(実施例4:)
(手順1)
4−ヒドロキシベンゾフェノン(100g)、2−クロロエタノール(50g)、水酸化ナトリウム(20g)及び水(500mL)を反応フラスコ中に合わせた。混合物を6時間還流下に加熱した。油層を分離し、冷却下に結晶化し、結晶を水酸化ナトリウム水、次いで水で洗浄し、乾燥し、オフホワイトの固体85gを得た。生成物を更に精製することなく使用した。
【0123】
(手順2)
手順1の4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン(30g)をオーバーヘッドで攪拌しながらフラスコ中に無水ジメチルホルムアミド(250mL)中に溶解した。激しく攪拌しながらトルエン中のナトリウムアセチリド(15g)を反応フラスコに添加した。反応完了後、混合物を水(500mL)に添加し、溶液をエチルエーテルで(500mLで2回)抽出した。有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上に乾燥した。次に溶液を濾過し、濃縮し、暗色の残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)により精製した。白色固体として生成物を得た(33g)。
【0124】
(手順3)
1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オンの代わりに(手順2の)1−フェニル−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−プロピン−1−オールを使用した以外は実施例1の手順1の操作法に従った。クロマトグラフィー後、酢酸エチル/ヘキサン(v/v:1/1)から沈殿させ、黄色味を帯びた固体として濾去した。
【0125】
(手順4)
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順3からの)3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用し、3−ピペリジノメタノールの代わりにピペリジンを使用した以外は実施例1の手順2の操作法に従った。暗緑色の発泡性泡状物として生成物を得た。
【0126】
(手順5)
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−ヒドロキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順4の)3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−ピペリジノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用した以外は実施例1の手順3の操作法に従った。黄色味を帯びた発泡性泡状物として生成物を得た。質量分析により3−フェニル−3−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−ピペリジノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量を裏付けた。
【0127】
(実施例5:)
(手順1)
4−フルオロベンゾフェノン(30g)、ピペラジン(23g)、トリエチルアミン(23mL)、炭酸カリウム(22g)及びジメチルスルホキシド(50mL)を反応フラスコ中に合わせ、混合物を20時間還流下に加熱した。この後、混合物を冷却し、水に注ぎ込み、スラリーをクロロホルムで抽出し、クロロホルム層を水で2回洗浄し、硫酸ナトリウム上に乾燥した。溶液を濃縮し、橙色油状物45gにした。更に精製することなく生成物を使用した。
【0128】
(手順2)
手順1の4−ピペラジノベンゾフェノンを反応フラスコ中にジメチルホルムアミド(50mL)に溶解し、過剰量のナトリウムアセチリド(トルエン中の9重量%)を一部ずつ添加した。反応完了後、混合物を水に注ぎ込み、次に混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸ナトリウム上に乾燥した。溶液を濾過し、濃縮した。残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)により精製し、黄色固体17gを得た。
【0129】
(手順3)
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]−フルオレン−5−オールの代わりに3,9−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]−フルオレン−5−オールを使用し、1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールの代わりに1−フェニル−1−(4−ピペラジノフェニル)−2−プロピン−1−オールを使用する以外は実施例1の手順1の操作法に従った。クロマトグラフィー後、アセトン/メタノール(v/v:1/1)から沈殿させ、緑味を帯びた固体として濾去した。
【0130】
(手順4)
手順3のフェニル−3−(4−ピペラジノフェニル)−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(1g)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(1.5mL)及び酢酸エチル(30mL)を乾燥反応フラスコ中に合わせた。混合物を1時間室温で攪拌した。メタノール(5mL)を混合物に添加し、過剰の2−イソシアナトエチルメタクリレートをクエンチングした。混合物を濃縮し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)により精製した。緑色発泡性泡状物として生成物を得た。質量分析により、3−フェニル−3−(4−(4−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルピペラジン−1−イル)フェニル)−6,11−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量を裏付けた。
【0131】
(実施例6:)
(手順1)
4−フルオロベンゾフェノン(20g)及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(40g)を3時間DMSO200ml中に160℃に加熱した。混合物を水(1L)に注ぎ込み、固体を濾取した。固体を水で洗浄し、乾燥し、ヘキサン中にスラリーにし、再び乾燥した。更に精製することなくオフホワイトの固体(25g)を次手順に使用した。
【0132】
(手順2)
手順1の4−(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)−ベンゾフェノンを反応フラスコ中にジメチルホルムアミド(50mL)中に溶解し、過剰量のナトリウムアセチリド(トルエン中の9重量%)を一部ずつ添加した。反応完了後、混合物を水に注ぎ込み、白色固体20gを濾去した。
【0133】
(手順3)
2,3−ジメトキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールの代わりに7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールを使用し、1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールの代わりに(手順2の)1−フェニル−1−(4−(4−(2−ヒドロキシエチルピペラジン−1−イル)フェニル)−2−プロピン−1−オールを使用する以外は実施例1の手順2の操作法に従った。生成物を酢酸エチル/メタノール80/20(v/v)で溶離したカラムクロマトグラフィーにより単離し、オフホワイトの固体としてメタノールから結晶化した。
【0134】
(手順4)
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−ヒドロキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順3の)3−フェニル−3−(4−(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用する以外は実施例1の手順3の操作法に従った。クロロホルム/メタノール90/10(v/v)、酢酸エチル/メタノール95/5(v/v)での連続したクロマトグラフィー分離により、紫味を帯びた発泡性泡状物として単離された純粋な油状物を得た。質量分析により3−フェニル−3−(4−(4−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエチル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの分子量を裏付けた。
【0135】
(実施例7:)
(手順1)
1−フェニル−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールの代わりに1−フェニル−(4−メトキシフェニル)−2−プロピン−1−オールを使用する以外は実施例1の手順1の操作法に従った。オフホワイトの結晶として生成物を得た。
【0136】
(手順2)
3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順1からの)3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6,7−ジメトキシ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用し、3−ピペリジノメタノールの代わりに4−ヒドロキシピペリジンを使用する以外は実施例1の手順2の操作法に従った。クロマトグラフィー後、生成物をエチルエーテル/メタノール/ヘキサン(1/1/1)から結晶化し、黄色味を帯びた結晶を得た。
【0137】
(手順3)
手順2の3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、無水コハク酸(0.3g)、トリエチルアミン(0.5mL)及びトルエン(20mL)を乾燥反応フラスコ中に合わせた。混合物を7時間還流下に加熱した。水(50mL)を溶液に添加し、混合物を分画した。トルエン層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上に乾燥した。溶液を濃縮し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):2/1)により精製し、発泡性の黄色味を帯びた泡状物1.2gを得た。
【0138】
(手順4)
手順3の3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(1.2g)、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(平均分子量360、1mL)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.7g)、4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(0.4g)及び塩化メチレン(10mL)を乾燥反応フラスコ中に合わせた。混合物を5時間還流下に加熱し、濾過した。溶液を濃縮し、残存物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(v/v):1/1)により精製し、油状の混合物1.8gを得た。MSは主な成分が3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの化合物を含有するポリエチレングリコール鎖中に5〜8のエトキシ基を有することを示した。
【0139】
(実施例8:)
(手順1)
3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(実施例1の手順2の)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(3−ヒドロキシメチレンピペリジン)−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用する以外は実施例7の手順3の操作法に従った。紫味を帯びた発泡性泡状物として生成物を得た。
【0140】
(手順2)
3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順1からの)3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)カルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用する以外は実施例7の手順4の操作法に従った。油状の混合物として生成物を得た。質量分析は主な成分が3−フェニル−3−(4−モルホリノフェニル)−6−メトキシ−7−(3−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシメチレンピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含有するポリエチレングリコール鎖中に5〜8エトキシ基を有することを示した。
【0141】
(実施例9:)
(手順1)
3−ピペリジンの代わりにモルホリンを使用する以外は実施例4の手順4の操作法に従った。クロマトグラフィー後、t−ブチルメチルエーテル/ヘキサン(2/1)から再結晶し、オフホワイトの結晶を得た。
【0142】
(手順2)
3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順1からの)3−フェニル−3−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用する以外は実施例7の手順3の操作法に従った。茶色の発泡性泡状物として生成物を得た。
【0143】
(手順3)
3−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−6−メトキシ−7−(4−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)カルボキシピペリジン−1−イル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランの代わりに(手順2の)3−フェニル−3−(4−(2−(2−ヒドロキシカルボニルエチル)カルボキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モルホリノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを使用する以外は実施例7の手順4の操作法に従った。油状の混合物として生成物を得た。質量分析は主な成分が3−フェニル−3−(4−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−(2−メタクリルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニルエチル)カルボキシエトキシ)フェニル)−6−メトキシ−7−モノホリノ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含有するポリエチレングリコール鎖中に5〜8エトキシ基を有することを示した。
【0144】
(実施例10: フォトクロミック重合体試験用方形片の合成及びフォトクロミック性能試験)
(フォトクロミック性能試験)
実施例1〜9のフォトクロミック物質のフォトクロミック性能を以下の通り試験した。
【0145】
1.5×10−3モル溶液を得るように計算された試験すべきフォトクロミック物質の量をエトキシ化ビフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)4部、ポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレート1部及び2,2’−アゾビズ(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)0.033重量%のモノマー混合物50gを含有するフラスコに添加した。フォトクロミック物質を攪拌しゆっくり加熱してモノマー混合物に溶解した。透明な溶液が得られた後、これを2.2mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)の内寸を有する平坦なシート状鋳型に注ぎ込んだ。鋳型を密封し、水平気流中の5時間間隔に渡って40℃〜95℃の温度に上昇するようにプログラムされたプログラム可能なオーブン中に置き、3時間95℃の温度を保持し、次に少なくとも2時間60℃に低下させた。メタクリレート末端のフォトクロミック染料はこの時間後にシート中に共重合した。鋳型を開封後、ポリマーシートをダイアモンドブレードソーを使用して2インチ(5.1cm)の試験用方形片に切断した。
【0146】
上述の通り製造したフォトクロミック試験用方形片を光学ベンチ上のフォトクロミック反応について試験した。光学ベンチ上の試験の前にフォトクロミック試験用方形片を15分間365nmの紫外光に露光し、フォトクロミック物質を非活性(又は脱色)状態から活性(又は着色)状態にし、次に約15分間76℃のオーブン中に置いて、フォトクロミック物質を脱色された状態に戻した。次に試験用方形片を室温に冷却し、少なくとも2時間蛍光室内光に露光し、次に24℃に維持された光学ベンチ上の試験の前に少なくとも2時間被覆しておいた(即ち、暗環境中を保持した)。ベンチは300ワットのキセノンアークランプ、遠隔制御されたシャッター、アークランプ用のヒートシンクとして機能するKG−2フィルター及び中間濃度フィルターを備えた。試験されるべき方形片が入る試料ホルダーを23℃に保持されたウォーターバス中に置いた。タングステンランプからの光の視準光線を方形片と直角に対し小角度(約30°)で方形片に通した。方形片に通した後、タングステンランプからの光を集光球に向け、散乱光及び再混合光線を収集することを防いだ。集光球から光はファイバー光学ケーブルを介してOcean Optics S2000分光光度計に至り、そこで得られたスペクトルを試験中のフォトクロミック物質の可視ラムダ最大値(λmax−vis)において測定した。λmax−visは試験用方形片中のフォトクロミック化合物の活性(着色)形態の最大吸光が発生する可視スペクトルの波長である。λmax−vis波長はVarian Cary 4000UV−可視分光光度計中の試験用方形片の試験により決定した。検知器からの出力信号はラジオメーターにより処理した。
【0147】
各試験用方形片に対する飽和光学濃度(Sat’dOD)はキセノンランプからシャッターを開放し、試験片を30分間UV放射に露光後、透過率を測定することにより決定した。キセノン光線は染料のこの種類の計測に対して1W/mに設定されるが、一部の例では3W/mの電力設定を使用した。放射照度は光源の中間濃度フィルターを変更すること及びランプの出力を調整することにより調整した。初期半減期間(T1/2)は活性光源除去後,試験用方形片中のフォトクロミック物質の活性形態の吸収が室温(24℃)で、2分の1のSat’dOD吸収に到達する秒時間間隔である。試験したフォトクロミック物質に対する結果を下記の表1に示す。
【0148】
(表1:フォトクロミック試験データ)
【0149】
【表1】

本説明は本発明の明確な理解に関わる本発明の特徴を説明するものである。当業者には明らかであり、従って本発明のよりよい理解を促進するわけではない本発明の特定の特徴は本説明の簡素化のために提示しなかった。本発明は特定の実施形態との関連において説明したが、本発明は開示した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨及び適用範囲内にある変更を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−149030(P2011−149030A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−103289(P2011−103289)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2008−505300(P2008−505300)の分割
【原出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】