反応性近赤外吸収性ポリマー粒子、その調製方法、及びその使用
約60nm乃至約1000nmの粒径を有し、且つポリマーを含むポリマー粒子であって、前記ポリマーが、疎水性骨格、近赤外吸収性セグメントであって、約700nm乃至約1100nmの吸収ピークを有する近赤外吸収性発色団が結合したセグメント、及び近赤外透過性セグメントを含むポリマー粒子が提供される。これら粒子の製造方法もまた提供される。前記ポリマー粒子及び反応性ヨードニウムオリゴマーを含むコーティング組成物もまた提供される。最後に、基板、親水性下地層、及びレーザー画像形成性表面層を含み、ここで、前記レーザー画像形成性表面層が前記ポリマー粒子を含むネガ型リソグラフオフセット印刷版もまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2006年8月24日に出願された、米国特許仮出願No.60/823,415に基づいて優先権を主張する。前記の文献は、ここに参照のために取り込むこととする。
【0002】
本発明は、リソグラフ印刷版コーティングに有用なポリマー粒子及び印刷版及びこれらの粒子を含むコーティングに関する。更に詳しくは、これらは新規なポリマー粒子であり、コーティングは近赤外レーザー光による直接デジタル画像形成のためのリソグラフオフセット印刷版の調製に有用である。
【背景技術】
【0003】
機上現像可能なネガ型リソグラフオフセット印刷版は、当業者には既知である。例えば、米国特許No.5,569,573には、親水性ポリマーバインダー中にマイクロカプセル封入された親油性物質を含むレーザー画像形成層を含むリソグラフ印刷版が教示されている。
【0004】
欧州特許0770495には、近赤外吸収性物質、ポリマーバインダー、及び熱時融着しうる熱可塑性粒子を含むリソグラフ印刷版が教示される。
【0005】
米国特許No.6,983,694には、熱可塑性ポリマー粒子、例えばポリスチレンまたはポリ(アクリロニトリル-コ-スチレン)粒子、非反応性親水性ポリマーバインダー、及び近赤外吸収性染料を含む、近赤外感光性コーティング組成物でコーティングされた、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示される。
【0006】
米国特許No.6,262,740には、メトキシメタクリルアミドコポリマー、フェノール樹脂、インドニウム塩、及び近赤外吸収性染料を含む近赤外感光性コーティング組成物でコーティングされた、ネガ型オフセット印刷版が教示される。
【0007】
米国特許No6,124,425及びNo.6,177,182には、熱反応性近赤外吸収性コポリマーで被覆された機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示されており、前記コポリマーは近赤外光への暴露に際してカチオン性重合による架橋反応を経る。近赤外発色団部分は、エーテル及びアンモニウム結合を介してポリマー骨格の官能基化されている。これらの近赤外吸収性ポリマーは、均質な溶液として調製される。
【0008】
米国特許No.6,960,422には、ネガ型オフセット印刷版を調製することが教示されており、これには分子近赤外染料、ラジカル開始剤、ラジカル重合性ウレタン化合物、反応性ポリマーバインダー、及び別の添加剤を含む、近赤外感光性ベースコート組成物が含まれる。
【0009】
欧州特許No.1234662には、ネガ型オフセット印刷版を調製することが教示されており、そのコーティング組成物には、近赤外吸収性剤、オニウム開始剤、及びポリ(エチレンオキシド)側鎖を含むウレタンポリマーが含まれる。これらのウレタンポリマーは、近赤外光を吸収しない。
【0010】
米国特許No.6,969,575及びNo.7,001,704には、画像形成層を有し、これが近赤外吸収性マイクロカプセル及び酸発生化合物を含む、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示される。同様に、米国特許No.7,001,673及びNo.7,078,145には、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示される。コーティング組成物は近赤外吸収性マイクロカプセルを含むが、前記マイクロカプセルは、親水性ポリマー水溶液中に疎水性ポリマー、近赤外吸収性剤、及び開始剤を含むオイル相を、高速ホモジェナイザーを用いて乳化させることにより調製されたものである。これらマイクロカプセルの調製は複雑であり、またこれらコーティングは低い引掻き耐性を示して外装層を要する。
【0011】
米国特許No.6,037,102及び欧州特許出願No.1117005には、ポリ(エチレンオキシド)側鎖がグラフトしたコポリマーを含む、ネガ型感光性コーティング組成物を調製することが教示される。これらのコポリマーは近赤外線を吸収しない。
【0012】
米国特許No.6,582,882には、オフセット印刷版での使用のための、ポリ(エチレンオキシド)側鎖を含む「グラフト」ポリマー及びコポリマーを調製することが教示されており、前記側鎖は非架橋疎水性ポリマー骨格上にグラフトしている。これらのポリマーは、近赤外線を吸収しない。
【0013】
米国特許No.6,899,994及び同時係属の米国特許出願No.2003/0157433、No.2003/0664318、及びNo.2005/0123853には、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示されており、これはポリマーバインダー、開始剤系、及び重合性成分を含む熱画像形成組成物でコーティングされている。記載のポリマーバインダーは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンブロックを有する非架橋コポリマー、あるいは疎水性モノマー、例えばスチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、及びアルファ-オレフィンと共重合したグラフトコポリマーである。重合性成分は、多数のアクリル及びメタクリル官能基を含む粘性の液体オリゴマーである。開始剤系は、近赤外吸収性染料及びラジカル産生化合物、例えばトリアジン及びヨードニウム塩を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許仮出願No.60/823,415
【特許文献2】米国特許No.5,569,573
【特許文献3】欧州特許0770495
【特許文献4】米国特許No.6,983,694
【特許文献5】米国特許No.6,262,740
【特許文献6】米国特許No6,124,425
【特許文献7】米国特許No.6,177,182
【特許文献8】米国特許No.6,960,422
【特許文献9】欧州特許No.1234662
【特許文献10】米国特許No.6,969,575
【特許文献11】米国特許No.7,001,704
【特許文献12】米国特許No.7,001,673
【特許文献13】米国特許No.7,078,145
【特許文献14】米国特許No.6,037,102
【特許文献15】欧州特許出願No.1117005
【特許文献16】米国特許No.6,582,882
【特許文献17】米国特許No.6,899,994
【特許文献18】米国特許出願No.2003/0157433
【特許文献19】米国特許出願No.2003/0664318
【特許文献20】米国特許出願No.2005/0123853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これらコーティング組成物及び印刷版の全てが、べたつく表面を有して取扱及び貯蔵に困難をもたらす、貯蔵に際して相分離及び/または表面結晶化を呈する、画像化を達成するために高いレーザー出力を要する、基板付着性に乏しく、十分な機上連続運転時間にしばしば満たない、地かぶり(background toning)を引き起こす染料汚染のために機上現像可能でない、低い引掻き耐性を示す、オーバーコート層及び/または特段の基板表面処理を要して製造が高コストもしくは困難である等の、いくつかの欠点を示す。
【0016】
然るに、従来技術の欠点の幾つかまたは全てを解消する、リトグラフ印刷版のための新規な物質及び新規なコーティングが依然求められている。
【0017】
本発明の詳細な説明では多数の文献に言及するが、これらの内容は参照のためにその全体をここに取り込むこととする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、まず、約60nm乃至約1000nmの粒径を有し、且つポリマーを含むポリマー粒子に関する。このポリマーは、(a)疎水性骨格、(b)近赤外吸収性セグメントであって、約700nm乃至約1100nmの吸収ピークを有する近赤外吸収性発色団が結合したセグメント、及び(c)近赤外透過性セグメントを含む。
【0019】
実施態様では、ポリマー粒子は約200nm乃至約600nmの粒径を有して良い。また、実施態様では、ポリマーは、約300ダルトン以上の分子量を有してよい。
【0020】
特定の実施態様では、ポリマーは、下記の構造:
【化1】
[式中、
・ G1は吸収性セグメントを表し、
・ G2は透過性セグメントを表し、
・ G1及びG2は疎水性骨格を形成し、
・ a及びbは個別に0.01乃至0.99のモル比を表し、更に
・ 発色団は、ペンダント基として、共有結合的または静電的に前記疎水性骨格に結合している]
を有してよい。
【0021】
実施態様では、吸収性セグメントは、下記:
【化2】
[式中、
・ NIRは発色団を表し、
・ R1は水素またはC1-C18アルキルを表し、
・ Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾスルホネート、テトラフェニルボレート、アルキル-トリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートアニオン性対イオンを表し、
・ Mは酸素、臭素、またはジアルキルアミノを表し、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ mは1乃至5の反復単位数を表す]
のいずれかを含んでよい。
【0022】
別の実施態様では、吸収性セグメントは、発色団をポリマー骨格に共有結合的に結合させるポリエーテルリンカーを含んでよい。更に詳しくは、吸収性セグメントは、下記:
【化3】
[式中、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ R1はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、
・ wは10乃至50の反復単位数を表し、
・ mは1乃至10の反復単位数を表し
・ Yは直鎖状または分枝状のC2-C4アルキルを表し、
・ Qはスペーサー基を表し、
・ NIRは発色団を表し、
・ Lは下式:
【化4】
(式中、
Q-NIR及び(YO)w基は明確にするために記され、jは0乃至10の反復単位数を表す)
のいずれかを表す]
のいずれかを含んでよい。
【0023】
更に詳しい実施態様では、スペーサー基は、下記:
【化5】
[式中、L及びNIR基は明確にするために記され、R2はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、R3はR2と同様かまたはHもしくはR2で置換されたフェニル環であり、更にAはアニオンを表す]
のいずれかであってよい。実施態様では、このアニオンは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、テトラフェニルボレート、アルキルトリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートであってよい。
【0024】
特段の実施態様では、ポリマー粒子の二つのポリマー骨格が、二つの吸収性セグメントと一つの発色団を介して架橋している。
【0025】
別の実施態様では、発色団は、下記:
【化6】
[式中、
・ D1及びD2は、それぞれ独立に-O-、-S-、-Se-、-CH=CH-、または-C(CH3)2を表し、
・ Z1及びZ2は、それぞれ独立に1つまたは複数の縮合した置換もしくは無置換の芳香環を表し、
・ hは2乃至8の整数を表し、
・ nは0または1を表し、
・ Mは、水素またはNa、K、またはテトラアルキルアンモニウム塩カチオン性対イオンを表し、
・ A1は、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートアニオン性対イオンを表し、
・ R3は水素またはアルキルを表し、更に
・ R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アセトキシルアルキル、ポリエーテル、または下式:
【化7】
(式中、
mは0乃至50の反復単位数を表し、更にRは水素またはメチルを表す)
のいずれかの重合性置換基を表す]
のいずれかであってよい。
【0026】
実施態様では、透過性セグメントが、スチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンズアルデヒド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、9-ビニルカルバゾール、またはビニル燐酸透過性モノマー単位、及びこれらの混合物を含んでよい。
【0027】
別の実施態様では、透過性セグメントは、下式:
【化8】
[式中、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ YはC2-C4アルキルを表し、
・ wは5乃至50の反復単位数を表し、更に
・ Tはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸、スルホン酸、または燐酸末端基、及びこれらの塩を表す]
のポリエーテルモノマーまたはこれらの混合物を重合させることにより得られる透過性モノマー単位を含んでよい。
【0028】
実施態様では、透過性セグメントは、
・ ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
のモノマー単位またはこれらの混合物を含んでよい。
【0029】
実施態様では、透過性セグメントは、二つの重合性官能基を有するモノマーを重合させ、これにより二つのポリマー骨格を一つの透過性モノマー単位を介して架橋させることによって得られる、一つまたは複数の透過性モノマー単位を含んでよい。
【0030】
更に詳しい実施態様では、二つの重合性官能基を有する前記モノマーは、
・ ジビニルベンゼン、
・ ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリテトラヒドロフランジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロール-エトキシレート-ジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、または
・ これらの混合物
であってよい。
【0031】
本発明はまた、ポリマー粒子の製造方法にも関する。この方法は、(a)近赤外吸収性発色団、第1及び第2の重合性モノマーを準備する工程であって、前記第2のモノマーと前記発色団とが互いに結合するために適当な官能基を有する工程、前記モノマーを、親水性媒質中で開始剤の存在下にて重合させ、これによりポリマー粒子を製造する工程、及び前記発色団を、前記ポリマー粒子の表面上で前記第2のモノマーに結合させる工程を含む。
【0032】
この方法の実施態様では、発色団を、共有結合によって第2のモノマーに結合させてよい。あるいはまた、発色団を、静電相互作用によって第2のモノマーに結合させても良い。
【0033】
詳しい実施態様では、開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、または臭化銅であってよい。
【0034】
実施態様では、親水性媒質が、水、アルコール、アセトニトリル、ケトン、またはこれらの混合物であってよい。
【0035】
本発明はまた、本発明のポリマー粒子及び反応性ヨードニウムオリゴマーを含むコーティング組成物にも関する。
【0036】
実施態様では、コーティング組成物は、約10乃至約90固体重量%のポリマー粒子を含んでよい。また、コーティング組成物は、約10乃至約80固体重量%の反応性ヨードニウムオリゴマーを含んでよい。詳しい実施態様では、反応性ヨードニウムオリゴマーが、Tuxedo(登録商標)06C051A感光樹脂であってよい。
【0037】
更に、実施態様では、コーティング組成物はポリマーバインダーを更に含んで良い。更に詳しい実施態様では、コーティング組成物は、約2乃至約40固体重量%のポリマーバインダーを含んでよい。詳しい実施態様では、ポリマーバインダーはTuxedo(登録商標)XCP10またはTuxedo(登録商標)XAP02であってよい。
【0038】
実施態様では、コーティング組成物は、着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を更に含んでよい。コーティング組成物は、約0.5乃至約10固体重量%の前記着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を含んでよい。
【0039】
本発明はまた、(a)基板、(b)親水性下地層、及び(c)レーザー画像形成性表面層を含み、ここで前記レーザー画像形成性表面層が本発明のポリマー粒子を含む、ネガ型リソグラフオフセット印刷版にも関する。更に詳しくは、レーザー画像形成性表面層は、上述の本発明によるコーティング組成物を含んで良い。
【0040】
本発明をより詳細に見ると、700nm乃至1100nm(すなわち近赤外領域内)に少なくとも一つの吸収ピークを有するポリマーを含む、近赤外吸収性ポリマー粒子及びその製造方法及びその使用が提供される。
【0041】
より詳しくは、本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子に含まれるポリマーは、疎水性ポリマー骨格を有し、且つ少なくとも一つの近赤外吸収性セグメント及び少なくとも一つの近赤外透過性セグメントを含む。
【0042】
本明細書中で使用される通り、近赤外吸収性セグメントは、一つまたは複数の近赤外吸収性モノマー単位を含むポリマーのセグメントである。同様に、近赤外透過性セグメントは、一つまたは複数の非熱反応性近赤外透過性モノマー単位を含むポリマーのセグメントである。
【0043】
本明細書中で使用される通り、ポリマーの「骨格」は、そのポリマーの連続する鎖を共に形成する、一連の共有結合した原子である。
【0044】
このポリマーでは、近赤外吸収性セグメント、すなわちこれに含まれる吸収性モノマー単位の少なくとも幾つかには、少なくとも一つの近赤外吸収性発色団、すなわち、700乃至1100nmに少なくとも一つの吸収ピークを有する発色団が結合している。上述の通り、透過性セグメントは、一つまたは複数の非熱反応性近赤外透過性モノマー単位を含む。
【0045】
近赤外吸収性ポリマー粒子は、60乃至1000nmの粒径を有する。詳しい実施態様では、本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子は、200乃至600nmの粒径を有して良い。
【0046】
使用に当たっては、近赤外吸収性セグメントは、入ってくる近赤外光を吸収して熱を発生し、これがポリマー粒子の融着を引き起こす。本明細書中で使用される通り、「融着」とは隣接するポリマー粒子が接触して縮合する過程を意味する。
【0047】
ポリマー粒子が本発明のコーティング組成物に使用される場合、これらのセグメントはまた、コーティング中に存在する反応性ヨードニウムオリゴマーを増感させてフリーラジカルを産生させる。理論に縛られるものではないが、これはおそらく溶血性(hemolytic)開裂反応によると考えられている。発生したフリーラジカルは、その後、反応性ヨードニウムオリゴマー及びポリマーバインダーの反応性官能基(例えばアクリレート及びメタクリレート)が存在するならば、これらに架橋反応を起こさせる。
【0048】
ポリマー粒子の融着及び反応性ヨードニウムオリゴマーの架橋反応、並びに存在するならばポリマーバインダーが、コーティングの露光領域の凝集をより強くし、ひいては露光領域の基板への付着を改善する。従って、本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子を含むコーティングは、機上現像に特に有利であるが、この応用のみに限定されない。
【0049】
対照的に、近赤外透過性セグメントは近赤外光に対して透過性であり、これは前記セグメントがこうした光に露光した際に、化学的にも物理的にも特に反応しないことを意味する。換言すれば、これらのセグメントは、非熱反応性である。これらはポリマー粒子の融着を経るが、これらはこうした融着の、あるいは近赤外光への露光に起因するあらゆる他の物理的または化学的変化の、主役でも原因でもない。
【0050】
実施態様では、ポリマーの分子量は約3000ダルトン以上であってよい。
【0051】
実施態様では、近赤外発色団は、ポリマーの骨格に共有結合的に結合するか、または静電相互作用によって結合してよい。本明細書中に使用される通り、「共有結合的に結合する」とは共有結合によって結合していることを意味する。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる化学結合のよく知られた形態である。本明細書中で使用される通り、「静電相互作用により結合する」とは、イオン結合によって結合していることを意味する。イオン結合は、二つの逆に帯電したイオン間の静電力に基づく化学結合のよく知られたタイプである。
【0052】
本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子に含まれるポリマーの一般的な化学構造は、下記の通りである。
【化9】
式中、
・ G1は近赤外吸収性セグメントを表し、
・ G2は非熱反応性、すなわち近赤外透過性のセグメントを表し、
・ G1及びG2は疎水性骨格を形成し、
・ a及びbは個別に0.01乃至0.99の範囲をとりうるモル比を表し、更に
・ 前記発色団が、ペンダント基として、共有結合的または静電的に前記疎水性骨格に結合している。
【0053】
本明細書中で使用される通り、側基とも呼称される「ペンダント基」は、ポリマー等の長い分子の骨格鎖に結合した原子団である。
【0054】
近赤外吸収性セグメント
本発明の近赤外吸収性セグメントは、参照のためにここに取り込むこととする米国特許No.6,124,425及びNo.6,177,182に、「近赤外吸収性セグメントE」について記載されているように得られる。
【0055】
詳しい実施態様では、近赤外吸収性発色団は、下記:
【化10】
[式中、
・ NIRは近赤外吸収性発色団を表し、
・ R1は水素または1乃至18の炭素原子を有するアルキルを表し、
・ Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾスルホネート、テトラフェニルボレート、アルキル-トリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートアニオン性対イオンを表し、
・ Mは酸素、臭素、またはジアルキルアミノを表し、
・ aは0.01乃至0.99の範囲をとりうるモル比を表し、
・ mは1乃至5の範囲をとりうる反復単位数を表す]
の近赤外吸収性セグメントに見られるように、共有結合によりポリマー骨格に結合していて良い。
【0056】
別の実施態様では、近赤外吸収性発色団は、ポリエーテルリンカーを介してポリマー骨格に結合していてよい。こうしたポリエーテルリンカーを含む近赤外吸収性セグメントの非限定的例には、下記:
【化11】
[式中、
・ aは0.01乃至0.99の範囲をとりうるモル比を表し、
・ Rは水素原子またはメチル基を表し、
・ R1はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、
・ wは10乃至50の範囲をとりうる反復単位数を表し、
・ mは1乃至10の範囲をとりうる反復単位数を表し
・ Yは2乃至4の炭素を有する直鎖状または分枝状のアルキルを表し、
・ Lは二価のリンカーを表し、これは下記:
【化12】
の構造を有して良く、ここでQ-NIR及び(YO)w基は明確にするために記され、jは0乃至10の範囲をとりうる反復単位数を表し、
・ Qは近赤外吸収性発色団を二価のリンカーに結合するスペーサー基を表し、
・ NIRは近赤外吸収性発色団を表す]
が含まれる。
【0057】
さらに詳しい実施態様では、Qスペーサー基は、下記の構造:
【化13】
[式中、R2はC1-C8アルキル鎖またはC1-C8アルキルオキシ鎖を表し、R3はR2と同様かまたはHもしくはR2で置換されたフェニル環であり、更にAはアニオンを表す]
を有して良く、L及びNIR基もまた明確にするために記される。更に詳しい実施態様では、アニオンAは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、テトラフェニルボレート、アルキルトリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートであってよい。
【0058】
吸収性セグメントに結合した近赤外吸収性発色団(NIR)は、下記の構造:
【化14】
[式中、
・ D1及びD2は、それぞれ独立に-O-、-S-、-Se-、-CH=CH-、または-C(CH3)2であり、
・ Z1及びZ2は、それぞれ独立に1つまたは複数の縮合した置換もしくは無置換の芳香環を表し、
・ hは2乃至8の範囲をとってよく、
・ nは0または1を表し、
・ Mは、水素またはNa、K、またはテトラアルキルアンモニウム塩から選択されるカチオン性対イオンを表し、
・ A1は、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートアニオン性対イオンを表し、
・ R3及びR7は、それぞれ独立に水素またはアルキルを表し、更に
・ R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アセトキシルアルキル、ポリエーテル、または下式:
【化15】
(式中、
mは0乃至50の範囲をとりうる反復単位数を表し、更にRは水素またはメチルである)
のいずれかの重合性置換基を表す]
のいずれかを有して良い。
【0059】
本発明のポリマー粒子の実施態様では、二つのポリマー骨格間の架橋は、実施例10(図34)に見られるように二つの近赤外吸収性セグメント及び一つの近赤外吸収性発色団を介して起こりうる。この場合、NIR発色団は二つの近赤外吸収性セグメントの一部でなければならず、よって二つの共有結合を可能にしなければならない。こうしたNIR発色団の例は、下記:
【化16】
[式中、A1は対イオンである]
である。詳しい実施態様では、この対イオンは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートであってよい。
【0060】
本明細書中で使用される通り、「架橋」は、ポリマー骨格を別のポリマー骨格に結合させる共有結合である。
【0061】
詳しい実施態様では、近赤外吸収性セグメントは、図1−10中に示される通りであってよく、ここではRは水素又はメチルであり、aは0.1乃至0.9の範囲のモル比であり、wは5乃至70の範囲をとりうるモノマー単位の数であり、R4及びR5はNIR発色団について上述される通りであり、且つA1は対イオンである。詳しい実施態様では、この対イオンは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートであってよい。
【0062】
近赤外透過性セグメント
近赤外透過性セグメントは、一つまたは複数の下記のコモノマー:
スチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンズアルデヒド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、9-ビニルカルバゾール、またはビニル燐酸
の重合によって得られる。
【0063】
さらに、近赤外透過性セグメントは、下記の一般構造:
【化17】
[式中、
・ Rは水素原子またはメチル基を表し、
・ Yは2乃至4の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、
・ wは5乃至50の範囲をとりうる反復単位数を表し、更に
・ Tはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸、スルホン酸、または燐酸末端基、及びこれらの塩を表す]
を有する直鎖状または分枝状のポリエーテルモノマーの重合により得られる。
【0064】
更に詳しくは、近赤外セグメントは、一つまたは複数の:
・ ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、または
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)アルキルエーテル(メタ)アクリレート
を含んで良い。
【0065】
近赤外透過性セグメントはまた、鎖間架橋ネットワークを形成可能な二つの重合性官能基を有する一つまたは複数のモノマーの重合によって得られる。こうしたモノマーの非限定的な例には、下記:
・ ジビニルベンゼン、
・ ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリテトラヒドロフランジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロール-エトキシレート-ジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、または
・ これらの混合物
が含まれる。
【0066】
その近赤外透過性セグメントによって架橋されたポリマーの例は、図11−13に見られ、ここではa及びbは分子比であって0.01乃至0.99の範囲をとってよく、k、h、及びlは0.02乃至0.098の範囲をとりうる分子比であり、更にm及びwは5乃至50の範囲を取り得る反復単位数である。
【0067】
いずれのタイプの架橋も、すなわち、二つの近赤外吸収性セグメントと一つの近赤外吸収性発色団とによる架橋及び近赤外透過性セグメントによる架橋は、同時に存在しても良い。
【0068】
製造方法
本発明はまた、上述の近赤外吸収性ポリマー粒子の製造方法にも関する。
【0069】
近赤外吸収性ポリマー粒子は、ワンポット合成を利用して製造することができ、ここでは粒子は、親水性媒質、例えば水、アルコール、アセトニトリル、ケトン、またはこれらの混合物中でのモノマーのフリーラジカル重合、イオン重合、または原子移動重合によって、対応する開始剤を用いて調製される。近赤外吸収性発色団は、その後共有結合によってポリマー粒子の表面にグラフト化される。
【0070】
より詳しくは、ポリマー粒子は、(A)近赤外吸収性発色団、第1及び第2の重合性モノマーを準備する工程であって、前記第2のモノマーと前記発色団とが互いに結合するために適当な官能基を有する工程、(B)前記第1及び第2のモノマーを、親水性媒質中で開始剤の存在下にて重合させ、これによりポリマー粒子を製造する工程、及び(C)前記発色団を、前記ポリマー粒子の表面上で前記第2のモノマーに結合させる工程によって製造して良い。
【0071】
開始剤は、重合反応を開始させる化合物である。本発明における使用に適合であると当業者に知られたあらゆる開始剤を使用して良い。本発明の重合反応のためにこうした開始剤を選択し、使用することは、十分に当業者の通常の能力の範囲内である。開始剤の非限定的例には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、及び臭化銅である。
【0072】
コーティング組成物
本発明は、ネガ型レーザー画像形成リソグラフオフセット印刷版の製造における使用のためのコーティング組成物にも関する。
【0073】
更に詳しくは、本発明は、(a)上述の近赤外吸収性ポリマー粒子、(b)反応性ヨードニウムオリゴマー、及び任意の(c)反応性ポリマーバインダー、及び(d)着色剤及び安定剤を含む、コーティング組成物に関する。
【0074】
本発明の組成物は、約10乃至約80固体重量%のポリマー粒子及び約10乃至約80固体重量%のヨードニウムオリゴマーを含んで良い。存在する場合は、ポリマーバインダーはこの組成物の約2乃至約40固体重量%を占めて良い。着色剤及び安定剤は、この組成物のそれぞれ約0.5固体重量%及び約10固体重量%を占めて良い。
【0075】
反応性ヨードニウムオリゴマー
反応性ヨードニウムオリゴマーは、1つまたは複数の官能基を含むヨードニウム塩であり、これはラジカル及び/またはカチオン性重合を起こしうる。より詳しくは、ヨードニウム塩はラジカル重合性基、例えばアクリレート、メタクリレート、及びビニルエーテルを含んで良い。これらラジカル重合性基は、ウレタン及び/またはウレア結合を介してヨードニウム塩のアリール環に置換されて良い。こうした重合性ヨードニウムオリゴマーの構造は、米国特許仮出願No.60/747,474に開示されており、これは参照のためにここに取り込むこととする。
【0076】
より詳しくは、反応性ヨードニウムオリゴマーは、American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)06C051A感光樹脂の商品名で市販のものであってよい。
【0077】
この製品は、245グラムのDesmodur(登録商標)N100 (Bayer社(カナダ)より入手可能)、310グラムのポリ(エチレングリコール)アクリレート(Mn〜375、Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)、244グラムのペンタエリスリトールトリアクリレート (SR-444、Sartomer社(USA)より入手可能)、1グラムのヒドロキノン (Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)、10グラムのIrganox 1035 (Ciba Specialty Chemicals社(スイス)より入手可能)、及び1グラムのジブチルスズジラウレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)を含む、137グラムの1,3-ジオキソラン溶液を、酸素雰囲気下で60℃に加熱し、10時間に亘り撹拌を継続することによって調製される。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは-N=C=Oピークを2274cm-1に示した。その後、75グラムの[4-(2-ヒドロキシ-1-テトラデシルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムテトッラフェニルボレート(American Dye Source社(カナダ)より入手可能)を、反応混合物にゆっくりと加え、これを60℃にて更に6時間に亘って撹拌した。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは-N=C=Oピークを2274cm-1に示した。その後、100グラムのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer社(USA)より入手可能なSR-399)を反応混合物に加え、これを60℃にて更に3時間撹拌し続けた。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは2274cm-1に-N=C=Oピークを示さず、これにより反応が完了したことが示された。透明な粘性生成物が得られ、これを1,3-ジオキソランを用いて85固体重量%の溶液に調整した。この反応性ヨードニウムオリゴマーの可能な理論化学構造を、図14乃至19に示す。
【0078】
ポリマーバインダー
本発明の組成物に使用されるポリマーバインダーは、優れたフィルム形成特性及び2乃至14のpHを有する水溶液への可溶性をもたらす。
【0079】
より詳しくは、ポリマーバインダーは、非イオン性ペンダント基、例えばヒドロキシ、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、またはポリブチレンオキシドを有するセルロースポリマーであってよい。セルロースポリマーは、アニオン性ペンダント基、例えばカルボン酸、スルホン酸、燐酸、及びこれらの対応するリチウム、ナトリウム、及びカリウムアルカリ塩を含んでよい。セルロースポリマーは、カチオン性ペンダント基、例えばテトラ-アルキル-アンモニウム塩を含んでよい。セルロースポリマーは、反応性官能基、例えばアクリレート、メタクリレート、及びビニルエーテル等の、フリーラジカル重合により架橋反応を起こしうる基を含んでよい。
【0080】
セルロースポリマーバインダーは、American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XCP10の商品名で市販のものであってよく、これは図20に示される理論化学構造を有する。
【0081】
メタクリレート含有セルロースポリマーTuxedo(登録商標)XCP10感光樹脂は、9.0グラムのヒドロキシプロピルセルロース(Klucel E、Aqualon社(USA)より入手可能)及び0.1グラムのジブチルスズジラウレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)を含む、90グラムの1,3-ジオキソラン溶液を、攪拌しつつ酸素雰囲気下で60℃に加熱することにより調製された。1グラムの2-イソシアナトエチルメタクリレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)を、反応にゆっくりと加え、これを60℃にて3時間に亘り攪拌し続けた。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは2274cm-1に-N=C=Oピークを示さず、これにより反応が完了したことが示された。透明な粘性生成物が、10固体重量%をもって得られた。
【0082】
ポリマーバインダーは、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシフェニル、アルキル、及びヒドロキシ官能基を有する水溶性アセタールコポリマーであってもよい。実施態様では、前記アルキルは1乃至12の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキルであってよい。アセタールコポリマーは、フリーラジカル反応性官能基、例えばアクリレート及びメタクリレートを更に含んでもよい。
【0083】
水溶性アセタールコポリマーバインダーは、American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XAP02の商品名で市販のものであってよく、これは図21に示される理論化学構造を有し、ここではa=0.02、b=0.18、c=0.78、及びd=0.02である。
【0084】
水溶性アセタールコポリマーTuxedo(登録商標)XAP02感光樹脂は、44.0グラムのポリビニルアルコール(Celvol 103、Celanese社(USA)より入手可能)を含む220グラムのジメチルスルホキシド溶液を窒素雰囲気下で絶えず攪拌しつつ60℃に加熱することにより合成された。濃硫酸(1.0グラム)を触媒として前記溶液に加えた。30分後、12.2グラムの4-ヒドロキシベンズアルデヒドを反応混合物にゆっくりと加えた。反応を、60℃にて20時間に亘り継続させた。アセタールコポリマーが、アセトン中で沈殿させることにより得られ、その後一定重量になるまで風乾させた。1.5グラムの2-イソシアナトエチルメタクリレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)及び5滴のジブチルスズジラウレートを、上記の通り得られたアセタールコポリマー48.5グラムに溶解させた150グラムのジメチルスルホキシドにゆっくりと加えた。反応物は酸素雰囲気下で60℃にて3時間に亘り攪拌した。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは2274cm-1に-N=C=Oピークを示さず、これにより反応が完了したことが示された。Tuxedo(登録商標)XAP02感光樹脂が、アセトン中での沈殿により得られ、これをろ過して一定重量になるまで風乾した。
【0085】
着色料及び安定剤
任意に、本発明のコーティングは、レーザー画像化の後に優れた画像プリントアウトを提供するために、着色剤を更に含んでよい。本発明における使用に適当であると当業者に知られた、あらゆる着色剤を使用してよい。これらの着色剤は、例えば、ビクトリア・ブルーBO、クリスタルヴァイオレット、マラカイトグリーン、及びこれらの誘導体であってよい。また、これらの着色剤は、発色剤であってもよく、これはトリアリールピリジン、キサンテン、及びイソベンゾフラノンの誘導体であってよい。これらの発色性化合物は、フリーラジカルまたは酸の存在下で第一の色から別の色に変化しても、無色であって、後に有色になってもよい。更に詳しくは、これらの化合物は、
・3',6'-ビス[N-[2-クロロフェニル]-N-メチルアミノ]スピロ[2-ブチル-1,1-ジオキソ[1,2-ベンズイソチアゾール-3(3H),9'-(9H)キサンテン]](米国特許No.4,345,017の方法により調製);
・3',6'-ビス[N-[2-[メタンスルホニル]フェニル]-N-メチルアミノ]スピロ[2-ブチル-1,1-ジオキソ[1,2-ベンズイソチアゾール-3(3H),9'-(9H)キサンテン]]( 米国特許No.4,345,017の方法により調製);
・9-ジエチルアミノ[スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1'(3'H)-イソベンゾフラン)-3'-オン](BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・2'-ジ(フェニルメチル)アミノ-6'-[ジエチルアミノ]スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-(9H)-キサンテン]-3-オン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・3-[ブチル-2-メチルインドール-3-イル]-3-[1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル]-1-(3H)-イソベンゾフラノン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・6-[ジメチルアミノ]-3,3-ビス[4-ジメチルアミノ]-フェニル-(3H)-イソベンゾフラノン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・2-[2-オクチルオキシフェニル]-4-[4-ジメチルアミノフェニル]-6-フェニルピリジン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue-63、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(Blue-502、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(Blue-503、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3-[2,2-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)ビニル]-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド(GN169、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(Red-40、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);または
・ロイコクリスタルヴァイオレット及びロイコマラカイトグリーン(これらはSigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)
であってよい。
【0086】
上記発色剤は、増感剤、例えばトリアジン及びアリールビスイミダゾールの誘導体と組み合わせて使用してよい。本発明の増感剤は、Triazine B、Triazine E、及びオルトクロロヘキシルアリールビスイミダゾールであってよい。発色剤と増感剤との組み合わせは、本発明のコーティング中に、0.5乃至5固体重量%の範囲の量で使用してよい。
【0087】
本発明のコーティング組成物はまた、貯蔵及び取扱の間の印刷版の貯蔵寿命を延長するために、光-及び熱-安定剤を任意に含んでよい。これらの安定剤は、メトキシフェノール、ヒドロキシフェノール、フェノチアジン、3-メルカプトトリアゾール、モノメチルエーテルヒドロキノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、及び別のフェノール化合物であってよく、これらはCiba Specialty Chemicals社より入手可能であり、例えばIrganox 1035、Irganox 1010、及びIrganox 565等である。これらの安定剤は、本発明のコーティング中に、0.5乃至5固体重量%の量で使用してよい。
【0088】
ネガ型リソグラフオフセット印刷版
本発明はまた、ネガ型リソグラフオフセット印刷版にも関し、これは基板、親水性下地層、及び上述のポリマー粒子を含むレーザー画像形成性表面層を含む。
【0089】
より詳しくは、レーザー画像形成性表面層は、上述のコーティング組成物を含んでよい。
【0090】
基板は、ブラッシュグレイニング(brush graining)もしくは電解グレイニングしたアルミニウムであってよく、これはその後燐酸でまたは燐酸と硫酸との混合物で陽極酸化処理される。また、基板はポリエステルであってよく、これはポリマー、例えばポリビニルアルコール及びポリビニルアセタールコポリマーと架橋したシリカ、アルミナ、または酸化チタンを含む親水層でコーティングされている。
【0091】
実施態様では、親水性下地層は、水溶性ポリマー及び/またはアクリル酸、メタクリル酸、ビニル燐酸、ポリ(エチレングリコール)アクリレート燐酸末端、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート燐酸末端、ポリ(エチレングリコール)アクリレートカルボン酸末端、ポリ(エチレングリコール)メタクリレートカルボン酸末端、ポリ(エチレングリコール)アクリレートスルホン酸末端、またはポリ(エチレングリコール)メタクリレートスルホン酸末端を含む。
【0092】
特記のない限り、本明細書中で使用される通り、「アルキル」は1乃至12の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキル基を意味し、「アリール」は5乃至12の炭素原子を有するアリール基を意味する。
【0093】
本発明の別の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して例示のために与えられる、本発明の特定の実施態様の下記の非限定的説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図2】図2は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図3】図3は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図4】図4は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図5】図5は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図6】図6は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図7】図7は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図8】図8は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図9】図9は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図10】図10は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図11】図11は、本発明の例示実施態様による架橋ポリマーを表す。
【図12】図12は、本発明の例示実施態様による架橋ポリマーを表す。
【図13】図13は、本発明の例示実施態様による架橋ポリマーを表す。
【図14】図14は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図15】図15は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図16】図16は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図17】図17は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図18】図18は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図19】図19は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図20】図20は、Tuxedo(登録商標)XCP10の商品名で市販のセルロースポリマーバインダーの理論化学構造である。
【図21】図21は、Tuxedo(登録商標) XAP02の商品名で市販のセルロースポリマーバインダーの理論化学構造である。
【図22】図22は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子の製造に使用してよい近赤外吸収性発色団を表す。
【図23】図23は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子の製造に使用してよいポリ(エチレングリコール)ベースのモノマーを表す。
【図24】図24は、Irganox 1035の商品名で市販の処理及び熱安定剤の構造を表す。
【図25】図25は、本発明の例示実施態様によるNIRP01ポリマーを表す。
【図26】図26は、本発明の例示実施態様によるNIRP02ポリマーを表す。
【図27】図27は、本発明の例示実施態様によるNIRP03ポリマーを表す。
【図28】図28は、本発明の例示実施態様によるNIRP04ポリマーを表す。
【図29】図29は、本発明の例示実施態様によるNIRP05ポリマーを表す。
【図30】図30は、本発明の例示実施態様によるNIRP06ポリマーを表す。
【図31】図31は、本発明の例示実施態様によるNIRP07ポリマーを表す。
【図32】図32は、本発明の例示実施態様によるNIRP08ポリマーを表す。
【図33】図33は、本発明の例示実施態様によるNIRP09ポリマーを表す。
【図34】図34は、本発明の例示実施態様によるNIRP10ポリマーを表す。
【図35】図35は、本発明の例示実施態様によるNIRP11ポリマーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
本発明は、以下に示す非限定的実施例によって、更に詳しく説明する。
【0096】
用語解説
実施例において近赤外吸収性ポリマー粒子の合成及びコーティング配合物に使用される種々の薬品の用語を解説する。
【0097】
Al基板:
アルミニウムの基板は、ブラッシュグレイニングもしくは電解グレイニング、燐酸で陽極酸化処理されることによって製造される。この基板は、続いて希釈された水溶性ポリマー溶液を用いて洗浄され、110℃で乾燥された。この水溶性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、及びビニル燐酸ポリマー、ならびにそれらのコポリマーであってよい。本明細書中に含まれる例として、以下に示す水溶性ポリマーが用いられる:ポリアクリル酸(Colloid 140、米国ペンシルバニア州のKemira社より入手可能)、ポリ(アクリル酸−コ−ビニル燐酸)(CP30、米国のRhodia社より入手可能)、及びポリ(アクリル酸−コ−メタクリルアミド(PAMA10、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能)。
【0098】
近赤外吸収性発色団:
ADS796WS:図22Aの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=796nm(メタノール溶液中))。
【0099】
ADS828WS:図22Bの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=828nm(メタノール溶液中))。
【0100】
ADS825TC:図22Cの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=825nm(メタノール溶液中))。
【0101】
ADS838WS:図22Dの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=838nm(メタノール溶液中))。
【0102】
ADS856WS:図22Eの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=856nm(メタノール溶液中))。
【0103】
ADS825NA:図22Fの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=825nm(メタノール溶液中))。
【0104】
モノマー:
AN:アクリロニトリル、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0105】
PEGDA700DA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、平均分子量〜700、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0106】
PEGMA2080ME:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、50%水溶液、平均分子量〜2080、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0107】
PEGMA620CL:mが約14である図23Aの構造式で示される、クロロ末端ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、平均分子量〜615、カナダのAmerican Dye Source社.より入手可能。
【0108】
PEGMA1500CL:wが約30である図23Bの構造式で示され、平均分子量〜1500を有するクロロ末端ポリ(エチレングリコール)メタクリレートであり、カナダのAmerican Dye Source社.より入手可能。
【0109】
PEGMA1500N:wが約30である図23Cの構造式で示され、平均分子量〜1500を有する、クロロ末端ポリ(エチレングリコール)メタクリレートトリメチルアンモニウムであり、カナダのAmerican Dye Source社.より入手可能。
【0110】
ST:スチレン、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0111】
VBC:4-ビニルベンジルクロリド、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0112】
VCBZ:9-ビニルカルバゾール、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0113】
VPD:4-ビニルピリジン、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0114】
反応性オリゴマー及びポリマー:
Tuxedo(登録商標)06C051A:American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)06C051Aフォトポリマーの商標名で入手可能な、反応性ヨードニウムオリゴマーの混合物。
【0115】
Tuxedo(登録商標)XCP10:American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XCP10フォトポリマーの商標名で入手可能な、メタクリレート官能基(1グラムあたり1.0ミリモル)を有するヒドロキシプロピルセルロース。
【0116】
Tuxedo(登録商標)XAP02:American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XAP02フォトポリマーの商標名で入手可能な、メタクリレート官能基(1グラムあたり1.0ミリモル)を有する水溶性アセタールコポリマー。
【0117】
開始剤、安定剤、及び着色剤:
V64:DuPont社(米国)よりVazo 64(商標)の商標名で入手可能な、2,2’-アゾビスイソブチロ二トリルフリーラジカル開始剤。
【0118】
Irganox 1035:図24の構造式で示される、Ciba Specialty Chemicals社(スイス)より入手可能な処理及び熱安定剤。
【0119】
Mercapto triazole:PCAS社(フランス)より入手可能なメルカプト−3−トリアゾール-1H,2,4。
【0120】
Blue-503:山本化学工業株式会社(日本)より入手可能な、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド。
【0121】
近赤外吸収性ポリマー粒子の合成及び特性:
これらの合成は、水冷凝縮器、メカニカルスターラー、滴下漏斗、及び窒素もしくは空気ガス導入口が設けられた4つ口ガラス反応器内で行われた。得られた物質の分子構造は、FTIR分光法(Perkin-Elmer社製、Model Spectrum 100)で測定された。得られたコポリマーの平均分子量は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を用い、且つ標準ポリスチレンで較正されたサイズ排除クロマトグラフィー(Waters社製、Model Breeze)で測定された。合成されたポリマーのUV-Visible近赤外スペクトルは、UV-VIS分光高度計(Perkin-Elmer社製、Model Lambda 35)を用いてメタノール溶液中または固体薄膜上で測定された。粒子のサイズは、Utrafine Particle Analyzer(Microtrac社製、Model UPA 150)を用いて測定された。
【0122】
[実施例1]
近赤外吸収性ポリマー粒子NIRP01は、1Lの4つ口フラスコ中、75℃、窒素雰囲気下で、200グラムのイソプロパノール、50グラムの脱イオン水、18.0グラムのPEGMA1500CL、40.0グラムのAN、及び14.0グラムのSTを含む反応混合物を加熱し、絶え間なく撹拌することにより合成された。30分間加熱後、反応混合物に0.5グラムのV64が添加された。この反応溶液は、重合反応30分以内に懸濁状態となり、これはポリマー粒子の形成を示唆するものである。10時間後、反応混合物中に0.5グラムのV64が添加され、75℃でさらに14時間重合反応が継続して進行された。重合反応を停止するために、反応混合物は空気にさらされ、75℃でさらに2時間撹拌することで、ポリマー粒子の安定な乳白色の溶液が得られた。この粒子は、約65,000ダルトンの平均分子量を有する。続いて、10.5グラムのADS828WSが反応混合物中に添加され、75℃で5時間撹拌することで、近赤外吸収性ポリマー粒子の濃緑色粘性溶液が生成された。この溶液の固体重量含有量(solid weight content)は、イソプロパノールで20%(質量比)に調整された。
【0123】
メタノールで希釈されたNIRP01の溶液は、825nm付近に最大吸収波長を有する強い吸収帯を示し、これは近赤外発色団がポリマー粒子の表面上に結合したことを示唆するものである。得られた近赤外吸収性ポリマー粒子NIRP01の平均的な直径は約280nmであると測定され、理論化学構造は図25に示され、式中、a=0.0133、b=0.987、k=0.849、h=0.151、及びw=30である。
【0124】
[実施例2〜11]
実施例2〜10の近赤外吸収性ポリマー粒子は、実施例1に記載のとおりに合成された。これらの実施例で調製された化合物は図26〜35に図示され、表1に特性、及びそれらの調製に用いられる化合物とともに記載される。より明確にするために、実施例1の化合物もまたこの表に記載している。
【0125】
すべての実施例において、反応混合物が懸濁状態になるための時間は、約30分から約90分の間であった。
【0126】
実施例1〜7は、架橋ポリマー骨格を含まない近赤外吸収性ポリマー粒子と関連がある一方で、実施例8〜10は、架橋ポリマー骨格を含む近赤外吸収性ポリマー粒子に関連する。
【0127】
図32及び図33に図示される実施例8〜9の粒子において、架橋構造は、“I”に相当する反復単位数を有する2つのモノマー単位の間に配置される。図示された一方のモノマー単位と架橋される第2のポリマーの他のモノマー単位は、図示されていない。
【0128】
実施例10において、近赤外吸収性ポリマー粒子のポリマー骨格は、図34に示されるように近赤外吸収性発色団を経て架橋されている。
【0129】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0130】
機上現像可能なネガ型平版印刷版
以下の実施例において、コーティング混合物は巻き線棒(wire-wound rod)を用いてAl基板上にコーティングされ、熱風によって80℃で乾燥させた。得られたコーティングは、一般的におよそ0.9g/m2である。
【0131】
コーティングされた版は、それぞれの実施例において定めたエネルギー密度を用いてCreo Trendsetter 3244上で画像形成した。すべての場合において、レーザーの露光領域には目に見える茶色がかった焼付けが示された。
【0132】
すべての画像版は、HyPlus-H-Series黒インク(東洋インキ製造株式会社(日本)より入手可能)及びMyLan-UF200湿し溶液(fountain solution)を使用して、Komori Sheet-Fed Press Sprint S26モデルに取り付けられた。高品質な印刷画像は、典型的には約30刷りされた後に紙上に得られ、すべての版は10,000以上の高品質な複写画像が得られる。
【0133】
[実施例12]
機上現像可能なネガ型平版印刷版用のコーティング組成物は、表2に記載された材料を混合することによって調製される。得られたコーティング混合物は、一般的にイソプロパノール中の固体全体の約7.0wt%含有する。
【0134】
【表2】
【0135】
コーティングされた版は、150mJ/cm2のエネルギー密度で画像化される。
【0136】
[実施例13]
NIRP08がNIRP01の代わりに使用されることを除いては、コーティング溶液は実施例12と同様の方法で調製された。コーティングされた版は、100mJ/cm2のエネルギー密度で画像化された。
【0137】
[実施例14〜22]
NIRP01が表3に示される他の近赤外吸収性ポリマー粒子と置き換えられた以外は、コーティング溶液は実施例12と同様の方法で調製された。コーティングされた版は、エネルギー密度80から200mJ/cm2の間で、20 mJ/cm2ずつ増加して画像化された。表3に記載されるエネルギー密度は、10,000の複写物を作成可能な版を得るために必要なエネルギー密度である。
【0138】
【表3】
【0139】
[実施例23]
機上現像可能なネガ型平版印刷版用のコーティング組成物は、表4に記載された原料を混合することによって調製される。得られたコーティング混合物は、一般的にイソプロパノール中の固体全体の約7.0wt%含有する。
【0140】
【表4】
【0141】
コーティングされた版は、150mJ/cm2のエネルギー密度で画像化される。
【0142】
以上、本発明は具体的な実施例によって説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されたような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得るであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2006年8月24日に出願された、米国特許仮出願No.60/823,415に基づいて優先権を主張する。前記の文献は、ここに参照のために取り込むこととする。
【0002】
本発明は、リソグラフ印刷版コーティングに有用なポリマー粒子及び印刷版及びこれらの粒子を含むコーティングに関する。更に詳しくは、これらは新規なポリマー粒子であり、コーティングは近赤外レーザー光による直接デジタル画像形成のためのリソグラフオフセット印刷版の調製に有用である。
【背景技術】
【0003】
機上現像可能なネガ型リソグラフオフセット印刷版は、当業者には既知である。例えば、米国特許No.5,569,573には、親水性ポリマーバインダー中にマイクロカプセル封入された親油性物質を含むレーザー画像形成層を含むリソグラフ印刷版が教示されている。
【0004】
欧州特許0770495には、近赤外吸収性物質、ポリマーバインダー、及び熱時融着しうる熱可塑性粒子を含むリソグラフ印刷版が教示される。
【0005】
米国特許No.6,983,694には、熱可塑性ポリマー粒子、例えばポリスチレンまたはポリ(アクリロニトリル-コ-スチレン)粒子、非反応性親水性ポリマーバインダー、及び近赤外吸収性染料を含む、近赤外感光性コーティング組成物でコーティングされた、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示される。
【0006】
米国特許No.6,262,740には、メトキシメタクリルアミドコポリマー、フェノール樹脂、インドニウム塩、及び近赤外吸収性染料を含む近赤外感光性コーティング組成物でコーティングされた、ネガ型オフセット印刷版が教示される。
【0007】
米国特許No6,124,425及びNo.6,177,182には、熱反応性近赤外吸収性コポリマーで被覆された機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示されており、前記コポリマーは近赤外光への暴露に際してカチオン性重合による架橋反応を経る。近赤外発色団部分は、エーテル及びアンモニウム結合を介してポリマー骨格の官能基化されている。これらの近赤外吸収性ポリマーは、均質な溶液として調製される。
【0008】
米国特許No.6,960,422には、ネガ型オフセット印刷版を調製することが教示されており、これには分子近赤外染料、ラジカル開始剤、ラジカル重合性ウレタン化合物、反応性ポリマーバインダー、及び別の添加剤を含む、近赤外感光性ベースコート組成物が含まれる。
【0009】
欧州特許No.1234662には、ネガ型オフセット印刷版を調製することが教示されており、そのコーティング組成物には、近赤外吸収性剤、オニウム開始剤、及びポリ(エチレンオキシド)側鎖を含むウレタンポリマーが含まれる。これらのウレタンポリマーは、近赤外光を吸収しない。
【0010】
米国特許No.6,969,575及びNo.7,001,704には、画像形成層を有し、これが近赤外吸収性マイクロカプセル及び酸発生化合物を含む、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示される。同様に、米国特許No.7,001,673及びNo.7,078,145には、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示される。コーティング組成物は近赤外吸収性マイクロカプセルを含むが、前記マイクロカプセルは、親水性ポリマー水溶液中に疎水性ポリマー、近赤外吸収性剤、及び開始剤を含むオイル相を、高速ホモジェナイザーを用いて乳化させることにより調製されたものである。これらマイクロカプセルの調製は複雑であり、またこれらコーティングは低い引掻き耐性を示して外装層を要する。
【0011】
米国特許No.6,037,102及び欧州特許出願No.1117005には、ポリ(エチレンオキシド)側鎖がグラフトしたコポリマーを含む、ネガ型感光性コーティング組成物を調製することが教示される。これらのコポリマーは近赤外線を吸収しない。
【0012】
米国特許No.6,582,882には、オフセット印刷版での使用のための、ポリ(エチレンオキシド)側鎖を含む「グラフト」ポリマー及びコポリマーを調製することが教示されており、前記側鎖は非架橋疎水性ポリマー骨格上にグラフトしている。これらのポリマーは、近赤外線を吸収しない。
【0013】
米国特許No.6,899,994及び同時係属の米国特許出願No.2003/0157433、No.2003/0664318、及びNo.2005/0123853には、機上現像可能なネガ型オフセット印刷版が教示されており、これはポリマーバインダー、開始剤系、及び重合性成分を含む熱画像形成組成物でコーティングされている。記載のポリマーバインダーは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンブロックを有する非架橋コポリマー、あるいは疎水性モノマー、例えばスチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、及びアルファ-オレフィンと共重合したグラフトコポリマーである。重合性成分は、多数のアクリル及びメタクリル官能基を含む粘性の液体オリゴマーである。開始剤系は、近赤外吸収性染料及びラジカル産生化合物、例えばトリアジン及びヨードニウム塩を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許仮出願No.60/823,415
【特許文献2】米国特許No.5,569,573
【特許文献3】欧州特許0770495
【特許文献4】米国特許No.6,983,694
【特許文献5】米国特許No.6,262,740
【特許文献6】米国特許No6,124,425
【特許文献7】米国特許No.6,177,182
【特許文献8】米国特許No.6,960,422
【特許文献9】欧州特許No.1234662
【特許文献10】米国特許No.6,969,575
【特許文献11】米国特許No.7,001,704
【特許文献12】米国特許No.7,001,673
【特許文献13】米国特許No.7,078,145
【特許文献14】米国特許No.6,037,102
【特許文献15】欧州特許出願No.1117005
【特許文献16】米国特許No.6,582,882
【特許文献17】米国特許No.6,899,994
【特許文献18】米国特許出願No.2003/0157433
【特許文献19】米国特許出願No.2003/0664318
【特許文献20】米国特許出願No.2005/0123853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これらコーティング組成物及び印刷版の全てが、べたつく表面を有して取扱及び貯蔵に困難をもたらす、貯蔵に際して相分離及び/または表面結晶化を呈する、画像化を達成するために高いレーザー出力を要する、基板付着性に乏しく、十分な機上連続運転時間にしばしば満たない、地かぶり(background toning)を引き起こす染料汚染のために機上現像可能でない、低い引掻き耐性を示す、オーバーコート層及び/または特段の基板表面処理を要して製造が高コストもしくは困難である等の、いくつかの欠点を示す。
【0016】
然るに、従来技術の欠点の幾つかまたは全てを解消する、リトグラフ印刷版のための新規な物質及び新規なコーティングが依然求められている。
【0017】
本発明の詳細な説明では多数の文献に言及するが、これらの内容は参照のためにその全体をここに取り込むこととする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、まず、約60nm乃至約1000nmの粒径を有し、且つポリマーを含むポリマー粒子に関する。このポリマーは、(a)疎水性骨格、(b)近赤外吸収性セグメントであって、約700nm乃至約1100nmの吸収ピークを有する近赤外吸収性発色団が結合したセグメント、及び(c)近赤外透過性セグメントを含む。
【0019】
実施態様では、ポリマー粒子は約200nm乃至約600nmの粒径を有して良い。また、実施態様では、ポリマーは、約300ダルトン以上の分子量を有してよい。
【0020】
特定の実施態様では、ポリマーは、下記の構造:
【化1】
[式中、
・ G1は吸収性セグメントを表し、
・ G2は透過性セグメントを表し、
・ G1及びG2は疎水性骨格を形成し、
・ a及びbは個別に0.01乃至0.99のモル比を表し、更に
・ 発色団は、ペンダント基として、共有結合的または静電的に前記疎水性骨格に結合している]
を有してよい。
【0021】
実施態様では、吸収性セグメントは、下記:
【化2】
[式中、
・ NIRは発色団を表し、
・ R1は水素またはC1-C18アルキルを表し、
・ Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾスルホネート、テトラフェニルボレート、アルキル-トリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートアニオン性対イオンを表し、
・ Mは酸素、臭素、またはジアルキルアミノを表し、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ mは1乃至5の反復単位数を表す]
のいずれかを含んでよい。
【0022】
別の実施態様では、吸収性セグメントは、発色団をポリマー骨格に共有結合的に結合させるポリエーテルリンカーを含んでよい。更に詳しくは、吸収性セグメントは、下記:
【化3】
[式中、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ R1はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、
・ wは10乃至50の反復単位数を表し、
・ mは1乃至10の反復単位数を表し
・ Yは直鎖状または分枝状のC2-C4アルキルを表し、
・ Qはスペーサー基を表し、
・ NIRは発色団を表し、
・ Lは下式:
【化4】
(式中、
Q-NIR及び(YO)w基は明確にするために記され、jは0乃至10の反復単位数を表す)
のいずれかを表す]
のいずれかを含んでよい。
【0023】
更に詳しい実施態様では、スペーサー基は、下記:
【化5】
[式中、L及びNIR基は明確にするために記され、R2はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、R3はR2と同様かまたはHもしくはR2で置換されたフェニル環であり、更にAはアニオンを表す]
のいずれかであってよい。実施態様では、このアニオンは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、テトラフェニルボレート、アルキルトリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートであってよい。
【0024】
特段の実施態様では、ポリマー粒子の二つのポリマー骨格が、二つの吸収性セグメントと一つの発色団を介して架橋している。
【0025】
別の実施態様では、発色団は、下記:
【化6】
[式中、
・ D1及びD2は、それぞれ独立に-O-、-S-、-Se-、-CH=CH-、または-C(CH3)2を表し、
・ Z1及びZ2は、それぞれ独立に1つまたは複数の縮合した置換もしくは無置換の芳香環を表し、
・ hは2乃至8の整数を表し、
・ nは0または1を表し、
・ Mは、水素またはNa、K、またはテトラアルキルアンモニウム塩カチオン性対イオンを表し、
・ A1は、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートアニオン性対イオンを表し、
・ R3は水素またはアルキルを表し、更に
・ R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アセトキシルアルキル、ポリエーテル、または下式:
【化7】
(式中、
mは0乃至50の反復単位数を表し、更にRは水素またはメチルを表す)
のいずれかの重合性置換基を表す]
のいずれかであってよい。
【0026】
実施態様では、透過性セグメントが、スチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンズアルデヒド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、9-ビニルカルバゾール、またはビニル燐酸透過性モノマー単位、及びこれらの混合物を含んでよい。
【0027】
別の実施態様では、透過性セグメントは、下式:
【化8】
[式中、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ YはC2-C4アルキルを表し、
・ wは5乃至50の反復単位数を表し、更に
・ Tはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸、スルホン酸、または燐酸末端基、及びこれらの塩を表す]
のポリエーテルモノマーまたはこれらの混合物を重合させることにより得られる透過性モノマー単位を含んでよい。
【0028】
実施態様では、透過性セグメントは、
・ ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
のモノマー単位またはこれらの混合物を含んでよい。
【0029】
実施態様では、透過性セグメントは、二つの重合性官能基を有するモノマーを重合させ、これにより二つのポリマー骨格を一つの透過性モノマー単位を介して架橋させることによって得られる、一つまたは複数の透過性モノマー単位を含んでよい。
【0030】
更に詳しい実施態様では、二つの重合性官能基を有する前記モノマーは、
・ ジビニルベンゼン、
・ ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリテトラヒドロフランジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロール-エトキシレート-ジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、または
・ これらの混合物
であってよい。
【0031】
本発明はまた、ポリマー粒子の製造方法にも関する。この方法は、(a)近赤外吸収性発色団、第1及び第2の重合性モノマーを準備する工程であって、前記第2のモノマーと前記発色団とが互いに結合するために適当な官能基を有する工程、前記モノマーを、親水性媒質中で開始剤の存在下にて重合させ、これによりポリマー粒子を製造する工程、及び前記発色団を、前記ポリマー粒子の表面上で前記第2のモノマーに結合させる工程を含む。
【0032】
この方法の実施態様では、発色団を、共有結合によって第2のモノマーに結合させてよい。あるいはまた、発色団を、静電相互作用によって第2のモノマーに結合させても良い。
【0033】
詳しい実施態様では、開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、または臭化銅であってよい。
【0034】
実施態様では、親水性媒質が、水、アルコール、アセトニトリル、ケトン、またはこれらの混合物であってよい。
【0035】
本発明はまた、本発明のポリマー粒子及び反応性ヨードニウムオリゴマーを含むコーティング組成物にも関する。
【0036】
実施態様では、コーティング組成物は、約10乃至約90固体重量%のポリマー粒子を含んでよい。また、コーティング組成物は、約10乃至約80固体重量%の反応性ヨードニウムオリゴマーを含んでよい。詳しい実施態様では、反応性ヨードニウムオリゴマーが、Tuxedo(登録商標)06C051A感光樹脂であってよい。
【0037】
更に、実施態様では、コーティング組成物はポリマーバインダーを更に含んで良い。更に詳しい実施態様では、コーティング組成物は、約2乃至約40固体重量%のポリマーバインダーを含んでよい。詳しい実施態様では、ポリマーバインダーはTuxedo(登録商標)XCP10またはTuxedo(登録商標)XAP02であってよい。
【0038】
実施態様では、コーティング組成物は、着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を更に含んでよい。コーティング組成物は、約0.5乃至約10固体重量%の前記着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を含んでよい。
【0039】
本発明はまた、(a)基板、(b)親水性下地層、及び(c)レーザー画像形成性表面層を含み、ここで前記レーザー画像形成性表面層が本発明のポリマー粒子を含む、ネガ型リソグラフオフセット印刷版にも関する。更に詳しくは、レーザー画像形成性表面層は、上述の本発明によるコーティング組成物を含んで良い。
【0040】
本発明をより詳細に見ると、700nm乃至1100nm(すなわち近赤外領域内)に少なくとも一つの吸収ピークを有するポリマーを含む、近赤外吸収性ポリマー粒子及びその製造方法及びその使用が提供される。
【0041】
より詳しくは、本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子に含まれるポリマーは、疎水性ポリマー骨格を有し、且つ少なくとも一つの近赤外吸収性セグメント及び少なくとも一つの近赤外透過性セグメントを含む。
【0042】
本明細書中で使用される通り、近赤外吸収性セグメントは、一つまたは複数の近赤外吸収性モノマー単位を含むポリマーのセグメントである。同様に、近赤外透過性セグメントは、一つまたは複数の非熱反応性近赤外透過性モノマー単位を含むポリマーのセグメントである。
【0043】
本明細書中で使用される通り、ポリマーの「骨格」は、そのポリマーの連続する鎖を共に形成する、一連の共有結合した原子である。
【0044】
このポリマーでは、近赤外吸収性セグメント、すなわちこれに含まれる吸収性モノマー単位の少なくとも幾つかには、少なくとも一つの近赤外吸収性発色団、すなわち、700乃至1100nmに少なくとも一つの吸収ピークを有する発色団が結合している。上述の通り、透過性セグメントは、一つまたは複数の非熱反応性近赤外透過性モノマー単位を含む。
【0045】
近赤外吸収性ポリマー粒子は、60乃至1000nmの粒径を有する。詳しい実施態様では、本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子は、200乃至600nmの粒径を有して良い。
【0046】
使用に当たっては、近赤外吸収性セグメントは、入ってくる近赤外光を吸収して熱を発生し、これがポリマー粒子の融着を引き起こす。本明細書中で使用される通り、「融着」とは隣接するポリマー粒子が接触して縮合する過程を意味する。
【0047】
ポリマー粒子が本発明のコーティング組成物に使用される場合、これらのセグメントはまた、コーティング中に存在する反応性ヨードニウムオリゴマーを増感させてフリーラジカルを産生させる。理論に縛られるものではないが、これはおそらく溶血性(hemolytic)開裂反応によると考えられている。発生したフリーラジカルは、その後、反応性ヨードニウムオリゴマー及びポリマーバインダーの反応性官能基(例えばアクリレート及びメタクリレート)が存在するならば、これらに架橋反応を起こさせる。
【0048】
ポリマー粒子の融着及び反応性ヨードニウムオリゴマーの架橋反応、並びに存在するならばポリマーバインダーが、コーティングの露光領域の凝集をより強くし、ひいては露光領域の基板への付着を改善する。従って、本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子を含むコーティングは、機上現像に特に有利であるが、この応用のみに限定されない。
【0049】
対照的に、近赤外透過性セグメントは近赤外光に対して透過性であり、これは前記セグメントがこうした光に露光した際に、化学的にも物理的にも特に反応しないことを意味する。換言すれば、これらのセグメントは、非熱反応性である。これらはポリマー粒子の融着を経るが、これらはこうした融着の、あるいは近赤外光への露光に起因するあらゆる他の物理的または化学的変化の、主役でも原因でもない。
【0050】
実施態様では、ポリマーの分子量は約3000ダルトン以上であってよい。
【0051】
実施態様では、近赤外発色団は、ポリマーの骨格に共有結合的に結合するか、または静電相互作用によって結合してよい。本明細書中に使用される通り、「共有結合的に結合する」とは共有結合によって結合していることを意味する。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる化学結合のよく知られた形態である。本明細書中で使用される通り、「静電相互作用により結合する」とは、イオン結合によって結合していることを意味する。イオン結合は、二つの逆に帯電したイオン間の静電力に基づく化学結合のよく知られたタイプである。
【0052】
本発明の近赤外吸収性ポリマー粒子に含まれるポリマーの一般的な化学構造は、下記の通りである。
【化9】
式中、
・ G1は近赤外吸収性セグメントを表し、
・ G2は非熱反応性、すなわち近赤外透過性のセグメントを表し、
・ G1及びG2は疎水性骨格を形成し、
・ a及びbは個別に0.01乃至0.99の範囲をとりうるモル比を表し、更に
・ 前記発色団が、ペンダント基として、共有結合的または静電的に前記疎水性骨格に結合している。
【0053】
本明細書中で使用される通り、側基とも呼称される「ペンダント基」は、ポリマー等の長い分子の骨格鎖に結合した原子団である。
【0054】
近赤外吸収性セグメント
本発明の近赤外吸収性セグメントは、参照のためにここに取り込むこととする米国特許No.6,124,425及びNo.6,177,182に、「近赤外吸収性セグメントE」について記載されているように得られる。
【0055】
詳しい実施態様では、近赤外吸収性発色団は、下記:
【化10】
[式中、
・ NIRは近赤外吸収性発色団を表し、
・ R1は水素または1乃至18の炭素原子を有するアルキルを表し、
・ Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾスルホネート、テトラフェニルボレート、アルキル-トリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートアニオン性対イオンを表し、
・ Mは酸素、臭素、またはジアルキルアミノを表し、
・ aは0.01乃至0.99の範囲をとりうるモル比を表し、
・ mは1乃至5の範囲をとりうる反復単位数を表す]
の近赤外吸収性セグメントに見られるように、共有結合によりポリマー骨格に結合していて良い。
【0056】
別の実施態様では、近赤外吸収性発色団は、ポリエーテルリンカーを介してポリマー骨格に結合していてよい。こうしたポリエーテルリンカーを含む近赤外吸収性セグメントの非限定的例には、下記:
【化11】
[式中、
・ aは0.01乃至0.99の範囲をとりうるモル比を表し、
・ Rは水素原子またはメチル基を表し、
・ R1はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、
・ wは10乃至50の範囲をとりうる反復単位数を表し、
・ mは1乃至10の範囲をとりうる反復単位数を表し
・ Yは2乃至4の炭素を有する直鎖状または分枝状のアルキルを表し、
・ Lは二価のリンカーを表し、これは下記:
【化12】
の構造を有して良く、ここでQ-NIR及び(YO)w基は明確にするために記され、jは0乃至10の範囲をとりうる反復単位数を表し、
・ Qは近赤外吸収性発色団を二価のリンカーに結合するスペーサー基を表し、
・ NIRは近赤外吸収性発色団を表す]
が含まれる。
【0057】
さらに詳しい実施態様では、Qスペーサー基は、下記の構造:
【化13】
[式中、R2はC1-C8アルキル鎖またはC1-C8アルキルオキシ鎖を表し、R3はR2と同様かまたはHもしくはR2で置換されたフェニル環であり、更にAはアニオンを表す]
を有して良く、L及びNIR基もまた明確にするために記される。更に詳しい実施態様では、アニオンAは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、テトラフェニルボレート、アルキルトリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートであってよい。
【0058】
吸収性セグメントに結合した近赤外吸収性発色団(NIR)は、下記の構造:
【化14】
[式中、
・ D1及びD2は、それぞれ独立に-O-、-S-、-Se-、-CH=CH-、または-C(CH3)2であり、
・ Z1及びZ2は、それぞれ独立に1つまたは複数の縮合した置換もしくは無置換の芳香環を表し、
・ hは2乃至8の範囲をとってよく、
・ nは0または1を表し、
・ Mは、水素またはNa、K、またはテトラアルキルアンモニウム塩から選択されるカチオン性対イオンを表し、
・ A1は、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートアニオン性対イオンを表し、
・ R3及びR7は、それぞれ独立に水素またはアルキルを表し、更に
・ R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アセトキシルアルキル、ポリエーテル、または下式:
【化15】
(式中、
mは0乃至50の範囲をとりうる反復単位数を表し、更にRは水素またはメチルである)
のいずれかの重合性置換基を表す]
のいずれかを有して良い。
【0059】
本発明のポリマー粒子の実施態様では、二つのポリマー骨格間の架橋は、実施例10(図34)に見られるように二つの近赤外吸収性セグメント及び一つの近赤外吸収性発色団を介して起こりうる。この場合、NIR発色団は二つの近赤外吸収性セグメントの一部でなければならず、よって二つの共有結合を可能にしなければならない。こうしたNIR発色団の例は、下記:
【化16】
[式中、A1は対イオンである]
である。詳しい実施態様では、この対イオンは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートであってよい。
【0060】
本明細書中で使用される通り、「架橋」は、ポリマー骨格を別のポリマー骨格に結合させる共有結合である。
【0061】
詳しい実施態様では、近赤外吸収性セグメントは、図1−10中に示される通りであってよく、ここではRは水素又はメチルであり、aは0.1乃至0.9の範囲のモル比であり、wは5乃至70の範囲をとりうるモノマー単位の数であり、R4及びR5はNIR発色団について上述される通りであり、且つA1は対イオンである。詳しい実施態様では、この対イオンは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートであってよい。
【0062】
近赤外透過性セグメント
近赤外透過性セグメントは、一つまたは複数の下記のコモノマー:
スチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンズアルデヒド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、9-ビニルカルバゾール、またはビニル燐酸
の重合によって得られる。
【0063】
さらに、近赤外透過性セグメントは、下記の一般構造:
【化17】
[式中、
・ Rは水素原子またはメチル基を表し、
・ Yは2乃至4の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、
・ wは5乃至50の範囲をとりうる反復単位数を表し、更に
・ Tはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸、スルホン酸、または燐酸末端基、及びこれらの塩を表す]
を有する直鎖状または分枝状のポリエーテルモノマーの重合により得られる。
【0064】
更に詳しくは、近赤外セグメントは、一つまたは複数の:
・ ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、または
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)アルキルエーテル(メタ)アクリレート
を含んで良い。
【0065】
近赤外透過性セグメントはまた、鎖間架橋ネットワークを形成可能な二つの重合性官能基を有する一つまたは複数のモノマーの重合によって得られる。こうしたモノマーの非限定的な例には、下記:
・ ジビニルベンゼン、
・ ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリテトラヒドロフランジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロール-エトキシレート-ジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、または
・ これらの混合物
が含まれる。
【0066】
その近赤外透過性セグメントによって架橋されたポリマーの例は、図11−13に見られ、ここではa及びbは分子比であって0.01乃至0.99の範囲をとってよく、k、h、及びlは0.02乃至0.098の範囲をとりうる分子比であり、更にm及びwは5乃至50の範囲を取り得る反復単位数である。
【0067】
いずれのタイプの架橋も、すなわち、二つの近赤外吸収性セグメントと一つの近赤外吸収性発色団とによる架橋及び近赤外透過性セグメントによる架橋は、同時に存在しても良い。
【0068】
製造方法
本発明はまた、上述の近赤外吸収性ポリマー粒子の製造方法にも関する。
【0069】
近赤外吸収性ポリマー粒子は、ワンポット合成を利用して製造することができ、ここでは粒子は、親水性媒質、例えば水、アルコール、アセトニトリル、ケトン、またはこれらの混合物中でのモノマーのフリーラジカル重合、イオン重合、または原子移動重合によって、対応する開始剤を用いて調製される。近赤外吸収性発色団は、その後共有結合によってポリマー粒子の表面にグラフト化される。
【0070】
より詳しくは、ポリマー粒子は、(A)近赤外吸収性発色団、第1及び第2の重合性モノマーを準備する工程であって、前記第2のモノマーと前記発色団とが互いに結合するために適当な官能基を有する工程、(B)前記第1及び第2のモノマーを、親水性媒質中で開始剤の存在下にて重合させ、これによりポリマー粒子を製造する工程、及び(C)前記発色団を、前記ポリマー粒子の表面上で前記第2のモノマーに結合させる工程によって製造して良い。
【0071】
開始剤は、重合反応を開始させる化合物である。本発明における使用に適合であると当業者に知られたあらゆる開始剤を使用して良い。本発明の重合反応のためにこうした開始剤を選択し、使用することは、十分に当業者の通常の能力の範囲内である。開始剤の非限定的例には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、及び臭化銅である。
【0072】
コーティング組成物
本発明は、ネガ型レーザー画像形成リソグラフオフセット印刷版の製造における使用のためのコーティング組成物にも関する。
【0073】
更に詳しくは、本発明は、(a)上述の近赤外吸収性ポリマー粒子、(b)反応性ヨードニウムオリゴマー、及び任意の(c)反応性ポリマーバインダー、及び(d)着色剤及び安定剤を含む、コーティング組成物に関する。
【0074】
本発明の組成物は、約10乃至約80固体重量%のポリマー粒子及び約10乃至約80固体重量%のヨードニウムオリゴマーを含んで良い。存在する場合は、ポリマーバインダーはこの組成物の約2乃至約40固体重量%を占めて良い。着色剤及び安定剤は、この組成物のそれぞれ約0.5固体重量%及び約10固体重量%を占めて良い。
【0075】
反応性ヨードニウムオリゴマー
反応性ヨードニウムオリゴマーは、1つまたは複数の官能基を含むヨードニウム塩であり、これはラジカル及び/またはカチオン性重合を起こしうる。より詳しくは、ヨードニウム塩はラジカル重合性基、例えばアクリレート、メタクリレート、及びビニルエーテルを含んで良い。これらラジカル重合性基は、ウレタン及び/またはウレア結合を介してヨードニウム塩のアリール環に置換されて良い。こうした重合性ヨードニウムオリゴマーの構造は、米国特許仮出願No.60/747,474に開示されており、これは参照のためにここに取り込むこととする。
【0076】
より詳しくは、反応性ヨードニウムオリゴマーは、American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)06C051A感光樹脂の商品名で市販のものであってよい。
【0077】
この製品は、245グラムのDesmodur(登録商標)N100 (Bayer社(カナダ)より入手可能)、310グラムのポリ(エチレングリコール)アクリレート(Mn〜375、Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)、244グラムのペンタエリスリトールトリアクリレート (SR-444、Sartomer社(USA)より入手可能)、1グラムのヒドロキノン (Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)、10グラムのIrganox 1035 (Ciba Specialty Chemicals社(スイス)より入手可能)、及び1グラムのジブチルスズジラウレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)を含む、137グラムの1,3-ジオキソラン溶液を、酸素雰囲気下で60℃に加熱し、10時間に亘り撹拌を継続することによって調製される。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは-N=C=Oピークを2274cm-1に示した。その後、75グラムの[4-(2-ヒドロキシ-1-テトラデシルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムテトッラフェニルボレート(American Dye Source社(カナダ)より入手可能)を、反応混合物にゆっくりと加え、これを60℃にて更に6時間に亘って撹拌した。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは-N=C=Oピークを2274cm-1に示した。その後、100グラムのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer社(USA)より入手可能なSR-399)を反応混合物に加え、これを60℃にて更に3時間撹拌し続けた。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは2274cm-1に-N=C=Oピークを示さず、これにより反応が完了したことが示された。透明な粘性生成物が得られ、これを1,3-ジオキソランを用いて85固体重量%の溶液に調整した。この反応性ヨードニウムオリゴマーの可能な理論化学構造を、図14乃至19に示す。
【0078】
ポリマーバインダー
本発明の組成物に使用されるポリマーバインダーは、優れたフィルム形成特性及び2乃至14のpHを有する水溶液への可溶性をもたらす。
【0079】
より詳しくは、ポリマーバインダーは、非イオン性ペンダント基、例えばヒドロキシ、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、またはポリブチレンオキシドを有するセルロースポリマーであってよい。セルロースポリマーは、アニオン性ペンダント基、例えばカルボン酸、スルホン酸、燐酸、及びこれらの対応するリチウム、ナトリウム、及びカリウムアルカリ塩を含んでよい。セルロースポリマーは、カチオン性ペンダント基、例えばテトラ-アルキル-アンモニウム塩を含んでよい。セルロースポリマーは、反応性官能基、例えばアクリレート、メタクリレート、及びビニルエーテル等の、フリーラジカル重合により架橋反応を起こしうる基を含んでよい。
【0080】
セルロースポリマーバインダーは、American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XCP10の商品名で市販のものであってよく、これは図20に示される理論化学構造を有する。
【0081】
メタクリレート含有セルロースポリマーTuxedo(登録商標)XCP10感光樹脂は、9.0グラムのヒドロキシプロピルセルロース(Klucel E、Aqualon社(USA)より入手可能)及び0.1グラムのジブチルスズジラウレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)を含む、90グラムの1,3-ジオキソラン溶液を、攪拌しつつ酸素雰囲気下で60℃に加熱することにより調製された。1グラムの2-イソシアナトエチルメタクリレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)を、反応にゆっくりと加え、これを60℃にて3時間に亘り攪拌し続けた。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは2274cm-1に-N=C=Oピークを示さず、これにより反応が完了したことが示された。透明な粘性生成物が、10固体重量%をもって得られた。
【0082】
ポリマーバインダーは、4-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、2-ヒドロキシフェニル、アルキル、及びヒドロキシ官能基を有する水溶性アセタールコポリマーであってもよい。実施態様では、前記アルキルは1乃至12の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキルであってよい。アセタールコポリマーは、フリーラジカル反応性官能基、例えばアクリレート及びメタクリレートを更に含んでもよい。
【0083】
水溶性アセタールコポリマーバインダーは、American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XAP02の商品名で市販のものであってよく、これは図21に示される理論化学構造を有し、ここではa=0.02、b=0.18、c=0.78、及びd=0.02である。
【0084】
水溶性アセタールコポリマーTuxedo(登録商標)XAP02感光樹脂は、44.0グラムのポリビニルアルコール(Celvol 103、Celanese社(USA)より入手可能)を含む220グラムのジメチルスルホキシド溶液を窒素雰囲気下で絶えず攪拌しつつ60℃に加熱することにより合成された。濃硫酸(1.0グラム)を触媒として前記溶液に加えた。30分後、12.2グラムの4-ヒドロキシベンズアルデヒドを反応混合物にゆっくりと加えた。反応を、60℃にて20時間に亘り継続させた。アセタールコポリマーが、アセトン中で沈殿させることにより得られ、その後一定重量になるまで風乾させた。1.5グラムの2-イソシアナトエチルメタクリレート(Sigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)及び5滴のジブチルスズジラウレートを、上記の通り得られたアセタールコポリマー48.5グラムに溶解させた150グラムのジメチルスルホキシドにゆっくりと加えた。反応物は酸素雰囲気下で60℃にて3時間に亘り攪拌した。反応混合物のサンプルを反応フラスコから抜き取ったところ、KBrペレットに記録したそのFTRスペクトルは2274cm-1に-N=C=Oピークを示さず、これにより反応が完了したことが示された。Tuxedo(登録商標)XAP02感光樹脂が、アセトン中での沈殿により得られ、これをろ過して一定重量になるまで風乾した。
【0085】
着色料及び安定剤
任意に、本発明のコーティングは、レーザー画像化の後に優れた画像プリントアウトを提供するために、着色剤を更に含んでよい。本発明における使用に適当であると当業者に知られた、あらゆる着色剤を使用してよい。これらの着色剤は、例えば、ビクトリア・ブルーBO、クリスタルヴァイオレット、マラカイトグリーン、及びこれらの誘導体であってよい。また、これらの着色剤は、発色剤であってもよく、これはトリアリールピリジン、キサンテン、及びイソベンゾフラノンの誘導体であってよい。これらの発色性化合物は、フリーラジカルまたは酸の存在下で第一の色から別の色に変化しても、無色であって、後に有色になってもよい。更に詳しくは、これらの化合物は、
・3',6'-ビス[N-[2-クロロフェニル]-N-メチルアミノ]スピロ[2-ブチル-1,1-ジオキソ[1,2-ベンズイソチアゾール-3(3H),9'-(9H)キサンテン]](米国特許No.4,345,017の方法により調製);
・3',6'-ビス[N-[2-[メタンスルホニル]フェニル]-N-メチルアミノ]スピロ[2-ブチル-1,1-ジオキソ[1,2-ベンズイソチアゾール-3(3H),9'-(9H)キサンテン]]( 米国特許No.4,345,017の方法により調製);
・9-ジエチルアミノ[スピロ[12H-ベンゾ(a)キサンテン-12,1'(3'H)-イソベンゾフラン)-3'-オン](BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・2'-ジ(フェニルメチル)アミノ-6'-[ジエチルアミノ]スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-(9H)-キサンテン]-3-オン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・3-[ブチル-2-メチルインドール-3-イル]-3-[1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル]-1-(3H)-イソベンゾフラノン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・6-[ジメチルアミノ]-3,3-ビス[4-ジメチルアミノ]-フェニル-(3H)-イソベンゾフラノン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・2-[2-オクチルオキシフェニル]-4-[4-ジメチルアミノフェニル]-6-フェニルピリジン(BF Goodrich(社)(カナダ)より入手可能);
・3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue-63、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(Blue-502、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(Blue-503、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3-[2,2-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)ビニル]-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド(GN169、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);
・3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(Red-40、Yamamoto Chemicals社(日本)より入手可能);または
・ロイコクリスタルヴァイオレット及びロイコマラカイトグリーン(これらはSigma-Aldrich社(カナダ)より入手可能)
であってよい。
【0086】
上記発色剤は、増感剤、例えばトリアジン及びアリールビスイミダゾールの誘導体と組み合わせて使用してよい。本発明の増感剤は、Triazine B、Triazine E、及びオルトクロロヘキシルアリールビスイミダゾールであってよい。発色剤と増感剤との組み合わせは、本発明のコーティング中に、0.5乃至5固体重量%の範囲の量で使用してよい。
【0087】
本発明のコーティング組成物はまた、貯蔵及び取扱の間の印刷版の貯蔵寿命を延長するために、光-及び熱-安定剤を任意に含んでよい。これらの安定剤は、メトキシフェノール、ヒドロキシフェノール、フェノチアジン、3-メルカプトトリアゾール、モノメチルエーテルヒドロキノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、及び別のフェノール化合物であってよく、これらはCiba Specialty Chemicals社より入手可能であり、例えばIrganox 1035、Irganox 1010、及びIrganox 565等である。これらの安定剤は、本発明のコーティング中に、0.5乃至5固体重量%の量で使用してよい。
【0088】
ネガ型リソグラフオフセット印刷版
本発明はまた、ネガ型リソグラフオフセット印刷版にも関し、これは基板、親水性下地層、及び上述のポリマー粒子を含むレーザー画像形成性表面層を含む。
【0089】
より詳しくは、レーザー画像形成性表面層は、上述のコーティング組成物を含んでよい。
【0090】
基板は、ブラッシュグレイニング(brush graining)もしくは電解グレイニングしたアルミニウムであってよく、これはその後燐酸でまたは燐酸と硫酸との混合物で陽極酸化処理される。また、基板はポリエステルであってよく、これはポリマー、例えばポリビニルアルコール及びポリビニルアセタールコポリマーと架橋したシリカ、アルミナ、または酸化チタンを含む親水層でコーティングされている。
【0091】
実施態様では、親水性下地層は、水溶性ポリマー及び/またはアクリル酸、メタクリル酸、ビニル燐酸、ポリ(エチレングリコール)アクリレート燐酸末端、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート燐酸末端、ポリ(エチレングリコール)アクリレートカルボン酸末端、ポリ(エチレングリコール)メタクリレートカルボン酸末端、ポリ(エチレングリコール)アクリレートスルホン酸末端、またはポリ(エチレングリコール)メタクリレートスルホン酸末端を含む。
【0092】
特記のない限り、本明細書中で使用される通り、「アルキル」は1乃至12の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキル基を意味し、「アリール」は5乃至12の炭素原子を有するアリール基を意味する。
【0093】
本発明の別の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して例示のために与えられる、本発明の特定の実施態様の下記の非限定的説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図2】図2は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図3】図3は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図4】図4は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図5】図5は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図6】図6は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図7】図7は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図8】図8は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図9】図9は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図10】図10は、本発明の例示実施態様による近赤外吸収性セグメントを表す。
【図11】図11は、本発明の例示実施態様による架橋ポリマーを表す。
【図12】図12は、本発明の例示実施態様による架橋ポリマーを表す。
【図13】図13は、本発明の例示実施態様による架橋ポリマーを表す。
【図14】図14は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図15】図15は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図16】図16は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図17】図17は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図18】図18は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図19】図19は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子と共に使用してよい反応性ヨードニウムオリゴマーを表す。
【図20】図20は、Tuxedo(登録商標)XCP10の商品名で市販のセルロースポリマーバインダーの理論化学構造である。
【図21】図21は、Tuxedo(登録商標) XAP02の商品名で市販のセルロースポリマーバインダーの理論化学構造である。
【図22】図22は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子の製造に使用してよい近赤外吸収性発色団を表す。
【図23】図23は、本発明の例示実施態様によるポリマー粒子の製造に使用してよいポリ(エチレングリコール)ベースのモノマーを表す。
【図24】図24は、Irganox 1035の商品名で市販の処理及び熱安定剤の構造を表す。
【図25】図25は、本発明の例示実施態様によるNIRP01ポリマーを表す。
【図26】図26は、本発明の例示実施態様によるNIRP02ポリマーを表す。
【図27】図27は、本発明の例示実施態様によるNIRP03ポリマーを表す。
【図28】図28は、本発明の例示実施態様によるNIRP04ポリマーを表す。
【図29】図29は、本発明の例示実施態様によるNIRP05ポリマーを表す。
【図30】図30は、本発明の例示実施態様によるNIRP06ポリマーを表す。
【図31】図31は、本発明の例示実施態様によるNIRP07ポリマーを表す。
【図32】図32は、本発明の例示実施態様によるNIRP08ポリマーを表す。
【図33】図33は、本発明の例示実施態様によるNIRP09ポリマーを表す。
【図34】図34は、本発明の例示実施態様によるNIRP10ポリマーを表す。
【図35】図35は、本発明の例示実施態様によるNIRP11ポリマーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
本発明は、以下に示す非限定的実施例によって、更に詳しく説明する。
【0096】
用語解説
実施例において近赤外吸収性ポリマー粒子の合成及びコーティング配合物に使用される種々の薬品の用語を解説する。
【0097】
Al基板:
アルミニウムの基板は、ブラッシュグレイニングもしくは電解グレイニング、燐酸で陽極酸化処理されることによって製造される。この基板は、続いて希釈された水溶性ポリマー溶液を用いて洗浄され、110℃で乾燥された。この水溶性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、及びビニル燐酸ポリマー、ならびにそれらのコポリマーであってよい。本明細書中に含まれる例として、以下に示す水溶性ポリマーが用いられる:ポリアクリル酸(Colloid 140、米国ペンシルバニア州のKemira社より入手可能)、ポリ(アクリル酸−コ−ビニル燐酸)(CP30、米国のRhodia社より入手可能)、及びポリ(アクリル酸−コ−メタクリルアミド(PAMA10、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能)。
【0098】
近赤外吸収性発色団:
ADS796WS:図22Aの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=796nm(メタノール溶液中))。
【0099】
ADS828WS:図22Bの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=828nm(メタノール溶液中))。
【0100】
ADS825TC:図22Cの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=825nm(メタノール溶液中))。
【0101】
ADS838WS:図22Dの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=838nm(メタノール溶液中))。
【0102】
ADS856WS:図22Eの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=856nm(メタノール溶液中))。
【0103】
ADS825NA:図22Fの構造式で示される、カナダのAmerican Dye Source社より入手可能な近赤外吸収性染料(λmax=825nm(メタノール溶液中))。
【0104】
モノマー:
AN:アクリロニトリル、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0105】
PEGDA700DA:ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、平均分子量〜700、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0106】
PEGMA2080ME:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、50%水溶液、平均分子量〜2080、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0107】
PEGMA620CL:mが約14である図23Aの構造式で示される、クロロ末端ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、平均分子量〜615、カナダのAmerican Dye Source社.より入手可能。
【0108】
PEGMA1500CL:wが約30である図23Bの構造式で示され、平均分子量〜1500を有するクロロ末端ポリ(エチレングリコール)メタクリレートであり、カナダのAmerican Dye Source社.より入手可能。
【0109】
PEGMA1500N:wが約30である図23Cの構造式で示され、平均分子量〜1500を有する、クロロ末端ポリ(エチレングリコール)メタクリレートトリメチルアンモニウムであり、カナダのAmerican Dye Source社.より入手可能。
【0110】
ST:スチレン、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0111】
VBC:4-ビニルベンジルクロリド、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0112】
VCBZ:9-ビニルカルバゾール、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0113】
VPD:4-ビニルピリジン、カナダのSigma-Aldrich社より入手可能。
【0114】
反応性オリゴマー及びポリマー:
Tuxedo(登録商標)06C051A:American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)06C051Aフォトポリマーの商標名で入手可能な、反応性ヨードニウムオリゴマーの混合物。
【0115】
Tuxedo(登録商標)XCP10:American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XCP10フォトポリマーの商標名で入手可能な、メタクリレート官能基(1グラムあたり1.0ミリモル)を有するヒドロキシプロピルセルロース。
【0116】
Tuxedo(登録商標)XAP02:American Dye Source社(カナダ)よりTuxedo(登録商標)XAP02フォトポリマーの商標名で入手可能な、メタクリレート官能基(1グラムあたり1.0ミリモル)を有する水溶性アセタールコポリマー。
【0117】
開始剤、安定剤、及び着色剤:
V64:DuPont社(米国)よりVazo 64(商標)の商標名で入手可能な、2,2’-アゾビスイソブチロ二トリルフリーラジカル開始剤。
【0118】
Irganox 1035:図24の構造式で示される、Ciba Specialty Chemicals社(スイス)より入手可能な処理及び熱安定剤。
【0119】
Mercapto triazole:PCAS社(フランス)より入手可能なメルカプト−3−トリアゾール-1H,2,4。
【0120】
Blue-503:山本化学工業株式会社(日本)より入手可能な、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド。
【0121】
近赤外吸収性ポリマー粒子の合成及び特性:
これらの合成は、水冷凝縮器、メカニカルスターラー、滴下漏斗、及び窒素もしくは空気ガス導入口が設けられた4つ口ガラス反応器内で行われた。得られた物質の分子構造は、FTIR分光法(Perkin-Elmer社製、Model Spectrum 100)で測定された。得られたコポリマーの平均分子量は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を用い、且つ標準ポリスチレンで較正されたサイズ排除クロマトグラフィー(Waters社製、Model Breeze)で測定された。合成されたポリマーのUV-Visible近赤外スペクトルは、UV-VIS分光高度計(Perkin-Elmer社製、Model Lambda 35)を用いてメタノール溶液中または固体薄膜上で測定された。粒子のサイズは、Utrafine Particle Analyzer(Microtrac社製、Model UPA 150)を用いて測定された。
【0122】
[実施例1]
近赤外吸収性ポリマー粒子NIRP01は、1Lの4つ口フラスコ中、75℃、窒素雰囲気下で、200グラムのイソプロパノール、50グラムの脱イオン水、18.0グラムのPEGMA1500CL、40.0グラムのAN、及び14.0グラムのSTを含む反応混合物を加熱し、絶え間なく撹拌することにより合成された。30分間加熱後、反応混合物に0.5グラムのV64が添加された。この反応溶液は、重合反応30分以内に懸濁状態となり、これはポリマー粒子の形成を示唆するものである。10時間後、反応混合物中に0.5グラムのV64が添加され、75℃でさらに14時間重合反応が継続して進行された。重合反応を停止するために、反応混合物は空気にさらされ、75℃でさらに2時間撹拌することで、ポリマー粒子の安定な乳白色の溶液が得られた。この粒子は、約65,000ダルトンの平均分子量を有する。続いて、10.5グラムのADS828WSが反応混合物中に添加され、75℃で5時間撹拌することで、近赤外吸収性ポリマー粒子の濃緑色粘性溶液が生成された。この溶液の固体重量含有量(solid weight content)は、イソプロパノールで20%(質量比)に調整された。
【0123】
メタノールで希釈されたNIRP01の溶液は、825nm付近に最大吸収波長を有する強い吸収帯を示し、これは近赤外発色団がポリマー粒子の表面上に結合したことを示唆するものである。得られた近赤外吸収性ポリマー粒子NIRP01の平均的な直径は約280nmであると測定され、理論化学構造は図25に示され、式中、a=0.0133、b=0.987、k=0.849、h=0.151、及びw=30である。
【0124】
[実施例2〜11]
実施例2〜10の近赤外吸収性ポリマー粒子は、実施例1に記載のとおりに合成された。これらの実施例で調製された化合物は図26〜35に図示され、表1に特性、及びそれらの調製に用いられる化合物とともに記載される。より明確にするために、実施例1の化合物もまたこの表に記載している。
【0125】
すべての実施例において、反応混合物が懸濁状態になるための時間は、約30分から約90分の間であった。
【0126】
実施例1〜7は、架橋ポリマー骨格を含まない近赤外吸収性ポリマー粒子と関連がある一方で、実施例8〜10は、架橋ポリマー骨格を含む近赤外吸収性ポリマー粒子に関連する。
【0127】
図32及び図33に図示される実施例8〜9の粒子において、架橋構造は、“I”に相当する反復単位数を有する2つのモノマー単位の間に配置される。図示された一方のモノマー単位と架橋される第2のポリマーの他のモノマー単位は、図示されていない。
【0128】
実施例10において、近赤外吸収性ポリマー粒子のポリマー骨格は、図34に示されるように近赤外吸収性発色団を経て架橋されている。
【0129】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0130】
機上現像可能なネガ型平版印刷版
以下の実施例において、コーティング混合物は巻き線棒(wire-wound rod)を用いてAl基板上にコーティングされ、熱風によって80℃で乾燥させた。得られたコーティングは、一般的におよそ0.9g/m2である。
【0131】
コーティングされた版は、それぞれの実施例において定めたエネルギー密度を用いてCreo Trendsetter 3244上で画像形成した。すべての場合において、レーザーの露光領域には目に見える茶色がかった焼付けが示された。
【0132】
すべての画像版は、HyPlus-H-Series黒インク(東洋インキ製造株式会社(日本)より入手可能)及びMyLan-UF200湿し溶液(fountain solution)を使用して、Komori Sheet-Fed Press Sprint S26モデルに取り付けられた。高品質な印刷画像は、典型的には約30刷りされた後に紙上に得られ、すべての版は10,000以上の高品質な複写画像が得られる。
【0133】
[実施例12]
機上現像可能なネガ型平版印刷版用のコーティング組成物は、表2に記載された材料を混合することによって調製される。得られたコーティング混合物は、一般的にイソプロパノール中の固体全体の約7.0wt%含有する。
【0134】
【表2】
【0135】
コーティングされた版は、150mJ/cm2のエネルギー密度で画像化される。
【0136】
[実施例13]
NIRP08がNIRP01の代わりに使用されることを除いては、コーティング溶液は実施例12と同様の方法で調製された。コーティングされた版は、100mJ/cm2のエネルギー密度で画像化された。
【0137】
[実施例14〜22]
NIRP01が表3に示される他の近赤外吸収性ポリマー粒子と置き換えられた以外は、コーティング溶液は実施例12と同様の方法で調製された。コーティングされた版は、エネルギー密度80から200mJ/cm2の間で、20 mJ/cm2ずつ増加して画像化された。表3に記載されるエネルギー密度は、10,000の複写物を作成可能な版を得るために必要なエネルギー密度である。
【0138】
【表3】
【0139】
[実施例23]
機上現像可能なネガ型平版印刷版用のコーティング組成物は、表4に記載された原料を混合することによって調製される。得られたコーティング混合物は、一般的にイソプロパノール中の固体全体の約7.0wt%含有する。
【0140】
【表4】
【0141】
コーティングされた版は、150mJ/cm2のエネルギー密度で画像化される。
【0142】
以上、本発明は具体的な実施例によって説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されたような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得るであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約60nm乃至約1000nmの粒径を有し、且つポリマーを含むポリマー粒子であって、前記ポリマーが、
(a)疎水性骨格、
(b)近赤外吸収性セグメントであって、約700nm乃至約1100nmの吸収ピークを有する近赤外吸収性発色団が結合したセグメント、及び
(c)近赤外透過性セグメント
を含むポリマー粒子。
【請求項2】
前記粒径が、約200nm乃至約600nmである、請求項1のポリマー粒子。
【請求項3】
前記ポリマーが、約300ダルトン以上の分子量を有する、請求項1または2のポリマー粒子。
【請求項4】
前記ポリマーが、下記の構造:
【化1】
[式中、
・ G1は前記吸収性セグメントを表し、
・ G2は前記透過性セグメントを表し、
・ G1及びG2は前記疎水性骨格を形成し、
・ a及びbは個別に0.01乃至0.99のモル比を表し、更に
・ 前記発色団が、ペンダント基として、共有結合的または静電的に前記疎水性骨格に結合している]
を有する、請求項1乃至3のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項5】
前記吸収性セグメントが、下記:
【化2】
[式中、
・ NIRは前記発色団を表し、
・ R1は水素またはC1-C18アルキルを表し、
・ Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾスルホネート、テトラフェニルボレート、アルキル-トリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートアニオン性対イオンを表し、
・ Mは酸素、臭素、またはジアルキルアミノを表し、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ mは1乃至5の反復単位数を表す]
のいずれかを含む、請求項1乃至4のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項6】
前記吸収性セグメントが、前記発色団を前記ポリマー骨格に共有結合的に結合させるポリエーテルリンカーを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー粒子。
【請求項7】
前記吸収性セグメントが、下記:
【化3A】
【化3B】
[式中、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ R1はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、
・ wは10乃至50の反復単位数を表し、
・ mは1乃至10の反復単位数を表し
・ Yは直鎖状または分枝状のC2-C4アルキルを表し、
・ Qはスペーサー基を表し、
・ NIRは前記発色団を表し、
・ Lは下式:
【化4】
(式中、
Q-NIR及び(YO)w基は明確にするために記され、jは0乃至10の反復単位数を表す)
のいずれかを表す]
のいずれかを含む、請求項6のポリマー粒子。
【請求項8】
前記スペーサー基が、下記:
【化5】
[式中、L及びNIRは明確にするために記され、R2はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、R3はR2と同様かまたはHもしくはR2で置換されたフェニル環であり、更にAはアニオンを表す]
のいずれかである、請求項7のポリマー粒子。
【請求項9】
前記アニオンが、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、テトラフェニルボレート、アルキルトリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートである、請求項8のポリマー粒子。
【請求項10】
二つのポリマー骨格が、二つの吸収性セグメントと一つの発色団を介して架橋している、請求項1乃至9のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項11】
前記発色団が、下記:
【化6】
[式中、
・ D1及びD2は、それぞれ独立に-O-、-S-、-Se-、-CH=CH-、または-C(CH3)2を表し、
・ Z1及びZ2は、それぞれ独立に1つまたは複数の縮合した置換もしくは無置換の芳香環を表し、
・ hは2乃至8の整数を表し、
・ nは0または1を表し、
・ Mは、水素またはNa、K、またはテトラアルキルアンモニウム塩カチオン性対イオンを表し、
・ A1は、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートアニオン性対イオンを表し、
・ R3は水素またはアルキルを表し、更に
・ R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アセトキシルアルキル、ポリエーテル、または下式:
【化7】
(式中、
mは0乃至50の反復単位数を表し、更にRは水素またはメチルを表す)
のいずれかの重合性置換基を表す]
のいずれかである、請求項1乃至9のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項12】
前記透過性セグメントが、スチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンズアルデヒド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、9-ビニルカルバゾール、またはビニル燐酸透過性モノマー単位を含む、請求項1乃至11のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項13】
前記透過性セグメントが、下式:
【化8】
[式中、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ YはC2-C4アルキルを表し、
・ wは5乃至50の反復単位数を表し、更に
・ Tはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸、スルホン酸、または燐酸末端基、及びこれらの塩を表す]
のポリエーテルモノマーまたはこれらの混合物を重合させることにより得られる透過性モノマー単位を含む、請求項1乃至12のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項14】
前記透過性セグメントが、
・ ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
のモノマー単位またはこれらの混合物を含む、請求項1乃至13のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項15】
前記透過性セグメントが、二つの重合性官能基を有するモノマーを重合させ、これにより二つのポリマー骨格を一つの透過性モノマー単位を介して架橋させることによって得られる、一つまたは複数の透過性モノマー単位を含む、請求項1乃至14のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項16】
二つの重合性官能基を有する前記モノマーが、
・ ジビニルベンゼン、
・ ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリテトラヒドロフランジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロール-エトキシレート-ジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、または
・ これらの混合物
である、請求項15のポリマー粒子。
【請求項17】
(a)近赤外吸収性発色団、第1及び第2の重合性モノマーを準備する工程であって、前記第2のモノマーと前記発色団とが互いに結合するために適当な官能基を有する工程、
(b)前記第1及び第2のモノマーを、親水性媒質中で開始剤の存在下にて重合させ、これによりポリマー粒子を製造する工程、及び
(c)前記発色団を、前記ポリマー粒子の表面上で前記第2のモノマーに結合させる工程、
を含む、ポリマー粒子の製造方法。
【請求項18】
前記発色団を、共有結合によって第2のモノマーに結合させる、請求項17の方法。
【請求項19】
前記発色団を、静電相互作用によって第2のモノマーに結合させる、請求項17の方法。
【請求項20】
前記開始剤が、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、または臭化銅である、請求項17乃至19のいずれか一項の方法。
【請求項21】
前記親水性媒質が、水、アルコール、アセトニトリル、ケトン、またはこれらの混合物である、請求項17乃至20のいずれか一項の方法。
【請求項22】
(a)請求項1乃至16のいずれか一項のポリマー粒子、及び
(b)反応性ヨードニウムオリゴマー
を含む、コーティング組成物。
【請求項23】
約10乃至約90固体重量%の前記ポリマー粒子を含む、請求項22のコーティング組成物。
【請求項24】
約10乃至約90固体重量%の前記反応性ヨードニウムオリゴマーを含む、請求項22または23のコーティング組成物。
【請求項25】
前記反応性ヨードニウムオリゴマーが、Tuxedo(登録商標)06C051A感光樹脂である、請求項22乃至24のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項26】
ポリマーバインダーを更に含む、請求項22乃至25のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項27】
約2乃至約40固体重量%の前記ポリマーバインダーを含む、請求項26のコーティング組成物。
【請求項28】
前記ポリマーバインダーが、Tuxedo(登録商標)XCP10またはTuxedo(登録商標)XAP02である、請求項26または27のコーティング組成物。
【請求項29】
着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を更に含む、請求項22乃至28のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項30】
約0.5乃至約10固体重量%の前記着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を含む、請求項29のコーティング組成物。
【請求項31】
(a)基板、
(b)親水性下地層、及び
(c)レーザー画像形成性表面層
を含み、ここで、前記レーザー画像形成性表面層が、請求項1乃至16のいずれか一項のポリマー粒子を含む、ネガ型リソグラフオフセット印刷版。
【請求項32】
レーザー画像形成性表面層が、請求項22乃至30のいずれか一項のコーティング組成物を含む、請求項31の印刷版。
【請求項1】
約60nm乃至約1000nmの粒径を有し、且つポリマーを含むポリマー粒子であって、前記ポリマーが、
(a)疎水性骨格、
(b)近赤外吸収性セグメントであって、約700nm乃至約1100nmの吸収ピークを有する近赤外吸収性発色団が結合したセグメント、及び
(c)近赤外透過性セグメント
を含むポリマー粒子。
【請求項2】
前記粒径が、約200nm乃至約600nmである、請求項1のポリマー粒子。
【請求項3】
前記ポリマーが、約300ダルトン以上の分子量を有する、請求項1または2のポリマー粒子。
【請求項4】
前記ポリマーが、下記の構造:
【化1】
[式中、
・ G1は前記吸収性セグメントを表し、
・ G2は前記透過性セグメントを表し、
・ G1及びG2は前記疎水性骨格を形成し、
・ a及びbは個別に0.01乃至0.99のモル比を表し、更に
・ 前記発色団が、ペンダント基として、共有結合的または静電的に前記疎水性骨格に結合している]
を有する、請求項1乃至3のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項5】
前記吸収性セグメントが、下記:
【化2】
[式中、
・ NIRは前記発色団を表し、
・ R1は水素またはC1-C18アルキルを表し、
・ Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾスルホネート、テトラフェニルボレート、アルキル-トリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートアニオン性対イオンを表し、
・ Mは酸素、臭素、またはジアルキルアミノを表し、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ mは1乃至5の反復単位数を表す]
のいずれかを含む、請求項1乃至4のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項6】
前記吸収性セグメントが、前記発色団を前記ポリマー骨格に共有結合的に結合させるポリエーテルリンカーを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー粒子。
【請求項7】
前記吸収性セグメントが、下記:
【化3A】
【化3B】
[式中、
・ aは0.01乃至0.99のモル比を表し、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ R1はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、
・ wは10乃至50の反復単位数を表し、
・ mは1乃至10の反復単位数を表し
・ Yは直鎖状または分枝状のC2-C4アルキルを表し、
・ Qはスペーサー基を表し、
・ NIRは前記発色団を表し、
・ Lは下式:
【化4】
(式中、
Q-NIR及び(YO)w基は明確にするために記され、jは0乃至10の反復単位数を表す)
のいずれかを表す]
のいずれかを含む、請求項6のポリマー粒子。
【請求項8】
前記スペーサー基が、下記:
【化5】
[式中、L及びNIRは明確にするために記され、R2はC1-C8アルキルまたはC1-C8アルキルオキシを表し、R3はR2と同様かまたはHもしくはR2で置換されたフェニル環であり、更にAはアニオンを表す]
のいずれかである、請求項7のポリマー粒子。
【請求項9】
前記アニオンが、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、テトラフェニルボレート、アルキルトリフェニルボレート、テトラフルオロボレート、またはヘキサフルオロアンチモネートである、請求項8のポリマー粒子。
【請求項10】
二つのポリマー骨格が、二つの吸収性セグメントと一つの発色団を介して架橋している、請求項1乃至9のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項11】
前記発色団が、下記:
【化6】
[式中、
・ D1及びD2は、それぞれ独立に-O-、-S-、-Se-、-CH=CH-、または-C(CH3)2を表し、
・ Z1及びZ2は、それぞれ独立に1つまたは複数の縮合した置換もしくは無置換の芳香環を表し、
・ hは2乃至8の整数を表し、
・ nは0または1を表し、
・ Mは、水素またはNa、K、またはテトラアルキルアンモニウム塩カチオン性対イオンを表し、
・ A1は、臭化物、塩化物、ヨウ化物、トシレート、トリフレート、トリフルオロメタンカーボネート、ドデシルベンゾシルホネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、またはトリフェニル-n-ブチルボレートアニオン性対イオンを表し、
・ R3は水素またはアルキルを表し、更に
・ R4及びR5は、それぞれ独立にアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アセトキシルアルキル、ポリエーテル、または下式:
【化7】
(式中、
mは0乃至50の反復単位数を表し、更にRは水素またはメチルを表す)
のいずれかの重合性置換基を表す]
のいずれかである、請求項1乃至9のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項12】
前記透過性セグメントが、スチレン、置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンズアルデヒド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、9-ビニルカルバゾール、またはビニル燐酸透過性モノマー単位を含む、請求項1乃至11のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項13】
前記透過性セグメントが、下式:
【化8】
[式中、
・ Rは水素またはメチルを表し、
・ YはC2-C4アルキルを表し、
・ wは5乃至50の反復単位数を表し、更に
・ Tはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボン酸、スルホン酸、または燐酸末端基、及びこれらの塩を表す]
のポリエーテルモノマーまたはこれらの混合物を重合させることにより得られる透過性モノマー単位を含む、請求項1乃至12のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項14】
前記透過性セグメントが、
・ ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-プロピレングリコール)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ブロック-カプロラクトン)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、
のモノマー単位またはこれらの混合物を含む、請求項1乃至13のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項15】
前記透過性セグメントが、二つの重合性官能基を有するモノマーを重合させ、これにより二つのポリマー骨格を一つの透過性モノマー単位を介して架橋させることによって得られる、一つまたは複数の透過性モノマー単位を含む、請求項1乃至14のいずれか一項のポリマー粒子。
【請求項16】
二つの重合性官能基を有する前記モノマーが、
・ ジビニルベンゼン、
・ ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリカプロラクトンジ(メタ)アクリレート、
・ ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリテトラヒドロフランジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロール-エトキシレート-ジ(メタ)アクリレート、
・ グリセロールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、または
・ これらの混合物
である、請求項15のポリマー粒子。
【請求項17】
(a)近赤外吸収性発色団、第1及び第2の重合性モノマーを準備する工程であって、前記第2のモノマーと前記発色団とが互いに結合するために適当な官能基を有する工程、
(b)前記第1及び第2のモノマーを、親水性媒質中で開始剤の存在下にて重合させ、これによりポリマー粒子を製造する工程、及び
(c)前記発色団を、前記ポリマー粒子の表面上で前記第2のモノマーに結合させる工程、
を含む、ポリマー粒子の製造方法。
【請求項18】
前記発色団を、共有結合によって第2のモノマーに結合させる、請求項17の方法。
【請求項19】
前記発色団を、静電相互作用によって第2のモノマーに結合させる、請求項17の方法。
【請求項20】
前記開始剤が、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、または臭化銅である、請求項17乃至19のいずれか一項の方法。
【請求項21】
前記親水性媒質が、水、アルコール、アセトニトリル、ケトン、またはこれらの混合物である、請求項17乃至20のいずれか一項の方法。
【請求項22】
(a)請求項1乃至16のいずれか一項のポリマー粒子、及び
(b)反応性ヨードニウムオリゴマー
を含む、コーティング組成物。
【請求項23】
約10乃至約90固体重量%の前記ポリマー粒子を含む、請求項22のコーティング組成物。
【請求項24】
約10乃至約90固体重量%の前記反応性ヨードニウムオリゴマーを含む、請求項22または23のコーティング組成物。
【請求項25】
前記反応性ヨードニウムオリゴマーが、Tuxedo(登録商標)06C051A感光樹脂である、請求項22乃至24のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項26】
ポリマーバインダーを更に含む、請求項22乃至25のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項27】
約2乃至約40固体重量%の前記ポリマーバインダーを含む、請求項26のコーティング組成物。
【請求項28】
前記ポリマーバインダーが、Tuxedo(登録商標)XCP10またはTuxedo(登録商標)XAP02である、請求項26または27のコーティング組成物。
【請求項29】
着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を更に含む、請求項22乃至28のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項30】
約0.5乃至約10固体重量%の前記着色剤、安定剤、増感剤、またはこれらの混合物を含む、請求項29のコーティング組成物。
【請求項31】
(a)基板、
(b)親水性下地層、及び
(c)レーザー画像形成性表面層
を含み、ここで、前記レーザー画像形成性表面層が、請求項1乃至16のいずれか一項のポリマー粒子を含む、ネガ型リソグラフオフセット印刷版。
【請求項32】
レーザー画像形成性表面層が、請求項22乃至30のいずれか一項のコーティング組成物を含む、請求項31の印刷版。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2010−501650(P2010−501650A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524851(P2009−524851)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001397
【国際公開番号】WO2008/022431
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(508287459)アメリカン・ダイ・ソース・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001397
【国際公開番号】WO2008/022431
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(508287459)アメリカン・ダイ・ソース・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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