説明

反応検証装置及び反応検証方法

【課題】 多量の反応ガスを流しながらX線回折で試料(亜鉛フェライト脱硫剤)の反応過程(炭素析出)をその場で観察する。
【解決手段】 試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成が変化しない状態に試料21を保持する微分反応評価試料保持部15を備え、検証条件を保持した状態でX線回折装置(X線発生手段25、二次元X線検出手段26)により試料21の組成の形態変化をその場で直接解析し、炭素の析出が生じる過程での形態変化を検証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検証条件を模擬した状態で反応ガスを流通させて試料の検証を行うことができる反応検証装置及び反応検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化炉で発生する石炭ガス化ガスを精製して燃料ガスとして適用し、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasfication Combined Cycle)の燃料とすることが知られている。石炭ガス化複合発電では、石炭ガス化ガスを燃料としてガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
石炭ガス化炉で発生する石炭ガス化ガスには硫黄分化合物(硫化物)等の不純物や後続機器に対して影響を与える不純物、微量成分が含まれるため、ガス精製設備により石炭ガス化ガスの不純物を除去して燃料ガスとしている。
【0004】
ガス精製設備では、石炭ガス化ガスを流通させる過程で、不純物を除去する除去剤に様々な反応現象が生じている。除去剤の反応現象を解明することは、除去剤の反応評価や耐久性評価等を行う上で重要である。また、反応現象に基づいて関連する機器への影響を把握する上で除去剤の反応現象を解明することは重要である。
【0005】
除去剤の反応現象を解明する一つの手法として、積分反応器におけるガス組成の変化を、ガス分析装置を用いたガス分析によって測定することが考えられる。ガス分析では、除去剤の充填層に模擬ガスを流通させ、入口ガスの組成と出口ガスの組成を比較分析することで、除去剤での反応現象を推定することができる。しかし、模擬ガスの状態(組成)は除去剤の充填層を流通する過程で反応に伴い変化するため、均一な組成の模擬ガスを流通させたことにはならない。このため、実際の石炭ガス化ガスのガス組成と、当該ガス組成により除去剤にどのような反応現象が生じているかを対応付けた検証を行うことができない。
【0006】
また、除去剤の成分と同一成分の小さな試料を作成し、模擬ガスを試料に流通させながら試料の重量変化から反応現象を分析する装置(熱重量分析装置)も知られている。しかし、実際に石炭ガス化ガスを流通させる条件の温度・圧力で試料に模擬ガスを流通させることはできても、反応現象を推定する手段として試料の重量変化しか利用できないため、複数の反応減少が同時並行的に起こる場合には、実際の運転中に除去剤にどのような反応現象が生じているかを検証することができない。
【0007】
上述したように、石炭ガス化炉で発生する石炭ガス化ガスを精製して燃料ガスとするガス精製設備においては、除去剤の反応現象を解明することが重要なことであるにも拘らず、石炭ガス化ガスを実際に流通させた場合の温度条件や圧力条件で除去剤の反応現象を直接監視して解明できる手法が確立されていないのが現状である。ガス精製設備に限らず、ガスを流通させる機器において、実際の温度、圧力、ガス組成、ならびにガスの流通条件を含む反応条件全体(検証条件)でガスを流通させた場合に、機器材料等に生じる反応現象を解明できる手法は確立されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005―171148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、検証条件を模擬した状態で反応ガスを流通させて試料の検証を行うことができる反応検証装置及び反応検証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の反応検証装置は、検証条件を保持することができる所定流量で反応ガスを流通させる通路と、前記通路に備えられ前記反応ガスに反応する試料が前記検証条件と同等の温度と圧力に維持されて保持される試料保持部とを備え、前記試料保持部は、前記試料保持部に試料を保持した状態で前記反応ガスを流通させた際に、前記試料を流通する前と流通した後の前記反応ガスの組成等が変化しない前記検証条件を保持した状態に前記試料を保持することを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る本発明では、試料保持部は、試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成等が変化しない検証条件を保持した状態に試料を保持するので、即ち、試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成等が変化しない状態に通過する反応ガスの流量を保持して検証条件を保持した状態に試料を保持するので、検証条件と同等の組成の反応ガスを流通させることができる。このため、所望の検証条件の反応ガスを流通させて、変化しない検証条件において試料の実際の反応現象を検証することができる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明の反応検証装置は、請求項1に記載の反応検証装置において、前記検証条件を保持した状態で、前記試料の反応状況を観察する観察手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、検証条件が保持されている状態での試料の状況を観察手段により観察することができ、試料の反応過程の状況をその場で観察することができる。
【0014】
また、請求項3に係る本発明の反応検証装置は、請求項2に記載の反応検証装置において、前記観察手段は、前記検証条件が保持されている状態での前記試料の成分の形態変化を解析するX線回折装置であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、検証条件が保持されている状態でX線の回折により試料の成分の形態変化を解析し、特定成分の析出を誘発する形態変化等の状況をその場で検証することができる。例えば、反応ガスが流通する試料は、反応ガスの組成や試料の組成により様々な反応が重複して生じて形態変化が起きている。この状況で、試料の形態変化をその場で検証することにより、ある特定の成分(例えば炭素)の析出が生じる過程での形態変化を検証条件が保持されている状態で検証することができ、試料中における特定成分の析出のきっかけを捉えることができる。
【0016】
また、請求項4に係る本発明の反応検証装置は、請求項3に記載の反応検証装置において、前記観察手段として、前記検証条件が保持されている状態での前記試料の実態像を観察する観察カメラを更に備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る本発明では、観察カメラにより、検証条件が保持されている状態での試料の実態像を観察することができ、特定成分の析出等、形態変化の結果の状態を合わせて捉えることができる。例えば、特定成分の析出によるひび割れなどの進行状況をその場で捉えることができる。
【0018】
また、請求項5に係る本発明の反応検証装置は、請求項3もしくは請求項4に記載の反応検証装置において、前記試料保持部は、前記反応ガスを流通させるための前記通路を形成する石英管に備えられ、前記石英管の外周には金属管が配されると共に、前記金属管の外周に前記試料を所定の温度に維持する加熱手段が配され、前記金属管の前記試料保持部に対応する部位には、前記X線回折装置のX線が透過する透過窓が形成され、前記石英管の前記試料保持部には、前記試料に対して前記X線回折装置のX線を直接反射させるために前記試料が外部に臨む切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る本発明では、実際の反応ガスの流通状況を模擬した高温・高圧の反応ガスを流通させて、検証条件が保持されている状態での試料の成分の形態変化をX線回折により解析することができる。高温・高圧の雰囲気の調整や、X線回折装置の機器、透過窓等を最適な状態に保つため、石英管と金属管の大きさを任意に設定することができる。また、石英管と金属管の間に不活性ガスを流通させる等して、石英管に圧力がかからないようにすると共に、検証条件の圧力を保つことができる。さらに、不活性ガスは金属管やX線回折装置の機器、透過窓等を腐蝕や熱劣化から保護するためのシールガスとしても機能するため、反応検証装置の検証条件を最適に設定し保持することができる。
【0020】
また、請求項6に係る本発明の反応検証装置は、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の反応検証装置において、前記X線回折装置は、X線源に回転対陰極型のX線発生手段を備え、回折X線の検出器として二次元X線検出手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る本発明では、高出力のX線と高速な二次元検出手段とにより試料の成分の形態変化を解析することができる。このため、X線を反射させるための面を試料に形成しなくても、解析を行いたい試料そのものに対してX線回折が可能になり、例えば、不純物を除去する除去剤を運用中と同じ状態でX線回折測定し、除去剤の成分の形態変化を直接解析することができる。
【0022】
また、請求項7に係る本発明の反応検証装置は、請求項2に記載の反応検証装置において、前記観察手段は、前記検証条件が保持されている状態での前記試料の実態像を観察する観察カメラであることを特徴とする。
【0023】
請求項7に係る本発明では、検証条件が保持されている状態の反応ガスが流通している過程で、観察カメラにより試料の実態像を観察することができ、特定成分の析出等、形態変化の結果の状態をその場で捉えることができる。例えば、特定成分の析出によるひび割れなどの進行状況をその場で捉えることができる。
【0024】
上記目的を達成するための請求項8に係る本発明の反応検証装置は、反応ガスを所定の圧力と流量で流通させる通路と、前記通路に備えられ反応ガスに反応する試料が保持される試料保持部と、前記試料保持部に保持された試料を所定の温度に維持する加熱手段と、前記反応ガスを前記試料に流通させて検証条件が保持されている状態で、前記試料の反応状況を高温・高圧下で観察する観察カメラを備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項8に係る本発明では、所定の温度と圧力に維持された反応ガスが流通している状態で観察カメラにより試料を観察することができる。このため、検証条件と同等の状態で反応ガスを流通させた試料の状態をその場で検証することができる。
【0026】
また、請求項9に係る本発明の反応検証装置は、請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の反応検証装置において、前記反応ガスは、石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスもしくは前記石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガスであることを特徴とする。
【0027】
請求項9に係る本発明では、反応ガスとして石炭ガス化ガスそのもの、もしくは石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガスを用いて、石炭ガス化ガスが流通する試料の状態を検証条件と同等の状態でその場で検証することができる。
【0028】
また、請求項10に係る本発明の反応検証装置は、請求項8又は請求項9に記載の反応検証装置において、前記試料は、石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスの不純物を除去するための除去剤であることを特徴とする。
【0029】
請求項10に係る本発明では、石炭ガス化ガスが流通して不純物を除去する除去剤の状態を、検証条件と同等の石炭ガス化ガス(模擬ガス)を流通させた状況でその場で検証することができる。
【0030】
また、請求項11に係る本発明の反応検証装置は、請求項10に記載の反応検証装置において、前記除去剤は、石炭ガス化ガスの硫化物を除去する脱硫剤であり、前記観察装置では、前記検証条件が保持されている状態で前記脱硫剤での炭素の析出の状況を観察することを特徴とする。
【0031】
請求項11に係る本発明では、石炭ガス化ガス(模擬ガス)を流通させ炭素の析出の状況をその場で検証することができる。つまり、脱硫剤の組成の形態変化により炭素の析出のきっかけをその場で捉えたり、脱硫剤の外観の変化により炭素の析出の結果をその場で捉えることができる。
【0032】
上記目的を達成するための請求項12に係る本発明の反応検証方法は、石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスもしくは前記石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガスである反応ガスを用いると共に、前記石炭ガス化炉で生成された前記石炭ガス化ガスの不純物を除去する除去剤である試料を用い、石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により不純物を除去する運転条件と同じ運転条件で前記反応ガスを試料に流通させ、前記運転条件が保持されている状態で、前記試料の反応状況を観察して前記反応ガスの流通による前記試料の反応状況を検証することを特徴とする。
【0033】
請求項12に係る本発明では、石炭ガス化ガスの不純物を除去するための乾式精製での運転条件で、即ち、検証条件と同等の状態で、反応ガスを流通させて試料である除去剤の状況を検証することができる。
【0034】
また、請求項13に係る本発明の反応検証方法は、請求項12に記載の反応検証方法において、前記試料の反応状況をX線回折による解析により反応過程での前記試料の形態変化を解析し、特定成分の析出状況を把握することを特徴とする。
【0035】
請求項13に係る本発明では、石炭ガス化ガスが流通する除去剤の形態変化を分析し、特定成分の析出のきっかけや結果を把握することができる。
【0036】
また、請求項14に係る本発明の反応検証方法は、請求項13に記載の反応検証方法において、前記試料は、前記石炭ガス化ガスの硫化物を除去する亜鉛フェライト系の脱硫剤であり、前記X線回折により炭素発生を誘発する鉄系の組成物を解析し、鉄系の組成物の経時変化により前記脱硫剤の炭素析出のきっかけを検証することを特徴とする。
【0037】
請求項14に係る本発明では、石炭ガス化ガスが流通して硫化物を除去する過程で、亜鉛フェライト系の脱硫剤に鉄系の組成物が生成されることをその場で認識することで炭素析出のきっかけを知ることができる。このため、石炭ガス化ガスの組成を制御する等を実施することで、脱硫剤の炭素析出を最小限に抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の反応検証装置及び反応検証方法は、検証条件を模擬した状態で反応ガスを流通させた試料の形態変化をその場で観察して、反応現象の検証を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の反応検証装置で解析する試料の一例を備えた乾式ガス精製設備の概略系統図である。
【図2】本発明の一実施例に係る反応検証装置の概略系統図である。
【図3】図2中の要部断面図である。
【図4】図3中の平面断面図である。
【図5】試料保持部の斜視状態の外観図である。
【図6】図5中の断面図である。
【図7】試料と流通する反応ガスとの関係を説明する概念図である。
【図8】試料の成分の形態変化の分析結果を表すグラフである。
【図9】試料の成分の経時変化を表すグラフである。
【図10】反応ガスの組成を変更した際の試料の成分の経時変化を表すグラフである。
【図11】本発明の他の実施例に係る反応検証装置の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の反応検証装置及び反応検証方法は、石炭ガス化ガスを生成して燃料ガスにする乾式ガス精製設備で用いられる不純物除去剤の反応を検証する装置及び方法である。即ち、石炭ガス化ガスもしくは石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガス(反応ガス)を高温・高圧下で不純物除去剤に流通させ、高温・高圧下で不純物除去剤を反応させながら成分の形態変化等をその場で観察する反応検証装置及び反応検証方法である。
【0041】
具体的には、乾式ガス精製設備の脱硫剤の炭素析出の現象を解明するため、脱硫剤に反応ガスを高温・高圧下で流通させながら、X線回折により組成の形態変化をその場で解析し、炭素析出のきっかけとなる鉄成分の生成状況を分析する。これにより、炭素析出が生じにくい反応ガスの組成を検証したり、特定組成の反応ガスで炭素析出までの脱硫剤の使用時間を検証する等を行うことができる。
【0042】
この時、脱硫剤は実際の乾式ガス精製設備の反応器に収められる形状と同じ形状の試料とされ、試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成が変化しない状態に試料が保持される(微分反応評価)。また、CCDカメラで脱硫剤の様子をその場で観察し、炭素析出の実態像、即ち、炭素析出の結果を把握して物理的影響等を検証し、実機への脱硫剤の配置状況の検討等に反映させる。
【0043】
本発明の反応検証装置及び反応検証方法は、脱硫剤の炭素析出の解明に用いるだけでなく、乾式ガス精製設備のハロゲン化物吸収剤やアンモニア分解触媒、水銀吸収剤に対して、ペレットやハニカム剤等の状態で反応ガスを高温・高圧下で流通させながら、その場で成分の形態変化等の観察に適用することができる。また、乾式ガス精製設備の不純物除去剤の観察だけでなく、反応ガスが流通する配管の成分の形態変化(鉄系配管の炭素析出)をその場で観察することに適用することができる。
【0044】
不純物除去剤等の固体の試料と反応ガスのような気体との間で起きる反応(固気反応)を固定床反応器で評価する場合、通常は、反応後の気体成分を分析して析出成分の特定等の反応特性を解析している。ガス分析では、反応が進んだ後にガスをサンプリングして分析を行っているので、即時性に劣り解析時間も長時間になる。また、反応が終了した後の試料を分析してガスの分析と合わせて総合的に析出成分等の特定等の反応特性を評価している。このため、反応特性を評価するためには長時間を要していた。
【0045】
本発明の反応検証装置及び反応検証方法は、反応ガスを高温・高圧下で試料に流通させ、高温・高圧下で試料を反応させながら成分の形態変化等をその場で観察するため、観察の即時性に優れ、特定成分の析出等における反応開始のきっかけとなる成分の生成や、特定成分の成長過程を直接観察でき、解析時間を飛躍的に短縮すると共に、その場での生成の進行の同時観察が可能になる。
【0046】
以下図面に基づいて本発明の反応検証装置及び反応検証方法の実施例を説明する。
【0047】
本発明の実施例では、反応ガスとして、石炭と酸化剤(酸素、空気)の反応により得られる石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガスを適用した例を示してある。試料として、石炭ガス化ガスの不純物である硫化硫黄(HS)や硫化カルボニル(COS)等の硫化物を除去する酸化亜鉛系の脱硫剤を適用した例を示してある。そして、反応ガスを流通させる過程で、脱硫剤の結晶構造(組成)の解析をその場で行い、特定成分として炭素の析出の解析を行う例を挙げて説明してある。
【0048】
初めに、図1に基づいて反応ガスである石炭ガス化ガスの不純物を除去する乾式ガス精製設備の概要を説明する。図1には本発明の一実施例に係る反応検証装置で解析する脱硫剤を備えた乾式ガス精製設備の一例の概略系統を示してある。
【0049】
図に示すように、乾式ガス精製設備1は、石炭ガス化炉2で石炭と酸化剤(酸素、空気)の反応により生成された石炭ガス化ガスgを約400℃を超える高温でハロゲン化物を除去するハロゲン化物除去装置3と、ハロゲン化物除去装置3によりハロゲン化物が除去された石炭ガス化ガスgが導入され、石炭ガス化ガスgを高温で硫化物を除去する脱硫装置4が備えられている。
【0050】
脱硫装置4の下流には水銀除去装置5が備えられ、水銀除去装置5では石炭ガス化ガスgに含まれる水銀が所定の運転温度で除去される。水銀除去装置5の下流にはバグフィルター6が備えられ、水銀除去装置5で水銀が除去された石炭ガス化ガスgに含まれる固体析出物、微粒子、粉体を含む不純物がバグフィルター6で濾過される。石炭ガス化ガスgはバグフィルター6で不純物が濾過されて燃料ガスfとされ、燃料ガスfは、熱交換器7で所定の温度に昇温されてタービン設備8(ガスタービン燃焼器)に送られる。
【0051】
ハロゲン化物除去装置3では、ナトリウム系のハロゲン化物吸収剤がペレット状に成形されて使用され、塩化水素(HCl)及びフッ化水素(HF)が同時に除去される。脱硫装置4では、酸化亜鉛系の脱硫剤である亜鉛フェライト脱硫剤がハニカム形状化されて使用され、亜鉛フェライト脱硫剤に石炭ガス化ガスgを接触させることで、硫化硫黄(HS)や硫化カルボニル(COS)等が極低濃度まで除去される。亜鉛フェライト脱硫剤自体が水素化触媒の機能を持つため、硫化カルボニル(COS)をはじめとする有機硫黄化合物にも性能を発揮することができる。水銀除去装置5では、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤が使用され、銅系吸収剤に石炭ガス化ガスgを接触させることで水銀を吸収させて除去する。
【0052】
本発明の一実施例に係る反応検証装置及び反応検証方法は、上述した石炭ガス化ガスgが接触する亜鉛フェライト脱硫剤(試料)に石炭ガス化ガスgを模擬した模擬ガス(反応ガス)を流通させ、試料の結晶構造(組成)の解析をその場で行うものである。この時、反応ガスは、実際に乾式ガス精製設備1で運転される条件と同じ条件の高温・高圧下で試料に流通させ、試料の組成の解析をその場で行い、炭素析出の状況、即ち、炭素析出の反応開始のきっかけになる特定の金属炭化物(鉄系の炭化物)の生成や、固体炭素の成長過程を直接観察して検証するものである。
【0053】
図2から図7に基づいて本発明の一実施例に係る反応検証装置及び反応検証方法を説明する。
【0054】
図2には本発明の一実施例に係る反応検証装置の概略構成を説明するためのブロック系統、図3には試料を保持している部位の概略構成を表す断面視状態、図4には図3中の平面視方向から見た概略断面構成、図5には試料保持部の石英管の状態を説明する外観状態、図6には図5中の断面状態、図7には試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成が変化しない状態に試料が保持されている状況(微分反応評価)の概念を示してある。
【0055】
図2に基づいて反応検証装置の全体を説明する。
【0056】
図2に示すように、反応検証装置11には、模擬燃料ガス供給系12及び不純物ガス供給系13からなる反応ガス供給手段14が備えられ、石炭ガス化ガスgを模擬したガスに対して想定される不純物を含ませた状態の模擬ガス(反応ガス)が模擬燃料ガス供給系12及び不純物ガス供給系13で調整される。反応ガス供給手段14からの反応ガスは微分反応評価試料保持部15に送られる。反応ガスは、脱硫装置4(図1参照)での運転条件(検証条件)と略同じ条件の高温・高圧状態で微分反応評価試料保持部15に送られる。
【0057】
反応ガス供給手段14では、模擬ガス(反応ガス)として、例えば、CO、HO(水蒸気)、CO、H、N、CH、COS、HCl、F、NH、水銀蒸気等が調整される。これにより、石炭ガス化ガスgを模擬したガスに対して想定される不純物を含ませた状態の反応ガスが得られる。
【0058】
微分反応評価試料保持部15には脱硫装置4(図1参照)の亜鉛フェライト脱硫剤が試料として保持され、反応ガスが試料に接触して流通するようになっている。試料は、実際の乾式ガス精製設備の反応器に収められる形状と同じハニカム形状(ハニカム形状の一部)の亜鉛フェライト脱硫剤とされ、試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成が変化しない状態に試料が保持される(微分反応評価)。
【0059】
具体的には後述するが、試料を流通する前の、例えば、CO濃度と試料を流通した後のCO濃度が同じ状態、即ち、試料を通過する過程で反応ガスが試料と反応して組成が変化しない状態に試料が保持され、反応ガスの流量が設定される。
【0060】
微分反応評価試料保持部15に保持された試料は、反応ガスを流通させている状態で観察手段としてのX線回折装置16により組成の形態変化がその場で解析される。また、微分反応評価試料保持部15に保持された試料は、反応ガスが流通している過程での実態像が観察カメラとしてのCCDカメラ17で撮影されて観察される。
【0061】
微分反応評価試料保持部15に保持された試料を流通した後の反応ガスは、排ガス処理系18で処理される。
【0062】
上述した反応検証装置11は、試料を流通する前と流通した後の反応ガスの組成が変化しない状態に試料を保持する微分反応評価試料保持部15を備え、反応ガスを検証条件に類似させて流通させるようにしているので、組成が変化しない所望状態の反応ガスを流通させて試料の実際の反応現象を検証することができる。
【0063】
また、反応ガスが流通している過程でX線回折装置16によるX線の回折により試料の成分の形態変化を解析し、亜鉛フェライト脱硫剤での炭素の析出を誘発する形態変化等の状況をその場で検証することができる。
【0064】
例えば、反応ガスが試料(亜鉛フェライト脱硫剤)に接触する脱硫反応の過程では、
水性ガスシフト反応(CO+HO→CO+H
水素化反応(COS+H→CO+HS)
加水分解反応(COS+HO→CO+HS)
Boudouard反応(2CO→CO+C)
メタネーション(CO+2H→CH
が並行し、重複した形態変化が生じている。
【0065】
ガス分析により、炭素の析出の主反応としてのBoudouard反応による炭素の析出状況を検証しようとした場合、COやCOの状態を検証して炭素析出を推定することになるが、上述したように、様々な反応が重複して生じているので、Boudouard反応によるCOやCOの状態の変化であるか否かを特定することができない。
【0066】
本実施例の反応検証装置11では、X線回折装置16により亜鉛フェライト脱硫剤の組成の形態変化をその場で直接解析するので、炭素の析出が生じる過程での形態変化(具体例は後述する)を反応ガスが流通している状態で検証することができ、試料に対する炭素の析出のきっかけを確実に捉えることができる。
【0067】
また、反応検証装置11では、微分反応評価試料保持部15に保持された試料の実態像をCCDカメラ17で撮影して観察するので、試料の前後で組成が変化しない状態の反応ガスが流通している過程で、炭素の析出の結果の状態をその場で捉えることができる。例えば、炭素析出による試料の色の変化やひび割れや等の進行状況をその場で捉えることができる。
【0068】
図3から図6に基づいて微分反応評価試料保持部15及びX線回折装置16を具体的に説明する。
【0069】
微分反応評価試料保持部15は、亜鉛フェライト脱硫剤の試料21が保持される石英管22を備え、石英管22の内部に反応ガス供給手段14からの反応ガスが送られる。石英管22の外周には耐圧容器としてSUS製の金属管23が配され、石英管22と金属管23の間には不活性ガス(He、Ar、N等)が所定の圧力(例えば、反応ガスよりも若干高い圧力)で供給され、石英管22の内部の反応ガスの状況が所定状態に保持される。
【0070】
また、金属管23の外周には加熱手段としてのヒータ28が設けられ、ヒータ28により試料21の温度が所定温度(亜鉛フェライト脱硫剤の運転温度)になるように反応ガス雰囲気が調整され、反応ガスの耐圧は金属管23により保たれている。また、石英管22と金属管23の間の不活性ガスの流通により石英管に圧力がかからないようにすると共に、検証条件の圧力を保つことができる。さらに、不活性ガスは金属管やX線回折装置の機器、透過窓等を腐蝕や熱劣化から保護するためのシールガスとしても機能するため、反応検証装置の検証条件を最適に設定し保持される。
【0071】
試料21が保持されている部位に対応して金属管23の外側にはX線回折装置16が備えられている。つまり、金属管23の試料21に対応する部位にはX線が透過する透過窓24(例えば、Be製)が設けられ、透過窓24の位置には回転対陰極型のX線発生手段25及び二次元X線検出手段26が備えられている(X線回折装置16)。
【0072】
回転対陰極型のX線発生手段25からの高出力のX線は透過窓24を通して試料21に照射され、試料21を反射したX線は透過窓24を介して二次元X線検出手段26で検出され、二次元X線検出手段26による短時間のX線回折により試料21の成分がその場観察で測定され、試料の形態変化が解析される。
【0073】
つまり、実際の反応ガスの流通状況を模擬した高温・高圧の反応ガスを流通させ、反応ガスが流通している過程での試料21の成分の形態変化をX線回折により解析することができる。また、石英管22と金属管23の大きさを任意に設定し、石英管22と金属管23の間に不活性ガスを流通させることで、X線回折装置16の機器、透過窓24が保護され、機器や構成部品を最適な状態に保つことができる。
【0074】
X線回折装置16は、X線源に回転対陰極型のX線発生手段25を備え、入射X線の検出器として二次元X線検出手段26を備えているので、高出力のX線と高速な回折線の検出器により試料21の成分の形態変化を短時間で解析することができる。このため、X線を反射させるための面を試料21に形成しなくても、解析を行いたい試料21そのものに対してX線回折が可能になり、亜鉛フェライト脱硫剤を運用中と同じ状態でX線回折し、亜鉛フェライト脱硫剤の成分の形態変化を直接解析することができる。他の不純物除去剤であっても、運用中と同じ状態のペレット状の試料を使用してX線回折させて成分の形態変化を解析することが可能になる。
【0075】
また、図4に示すように、X線回折装置16の位置に対して試料21の位置を調整する位置調整手段27が備えられており、その場観察によりX線回折測定を行う試料の最適な部位を選択できる機能を備えている。
【0076】
尚、図3から図6には図示は省略したが、試料21の外観状況がCCDカメラ17(図2参照)で観察される。
【0077】
一方、図4から図6に示すように、石英管22の試料21が保持される部位は、試料21が外部に臨むように周面の半周部分が切り欠かれて切欠き部31とされている。試料21は切欠き部31以外の石英管22に密着するように、半円柱型に形成されている。切欠き部31の部位には縦壁32が備えられ、切欠き部31の位置の反応ガスは縦壁32に規制され、試料21だけに接触して下流に送られる(図6中白抜き矢印)。
【0078】
石英管22と金属管23の間には不活性ガス(He、Ar、N等)が所定の圧力で供給されているので、反応ガスが試料21に接触して下流に送られる際に不活性ガスの圧力により反応ガスが石英管22の外部に漏れ出ることがない。また、不活性ガスは、試料21から石英管22の内部に入り込むことがない圧力に設定されている。
【0079】
従って、切欠き部31がX線の通路となり、外部に臨む試料21の面に切欠き部31からX線が照射され、石英管22を透過させずにX線を直接試料21に当てることができる。このため、X線の減衰を最小限に抑えることができる。
【0080】
亜鉛フェライト脱硫剤の試料21は、反応ガスが流通する前と流通した後で、反応ガスの組成が変化しない状態に保持されている(微分反応評価)。微分反応評価の場合、例えば、空塔速度が10000h-1から60000h-1に設定される。図7を参照して微分反応評価に関して説明する。
【0081】
図7(a)に示す積分反応評価の場合に見られるように、反応ガスが流通する前と流通した後で反応ガスの組成が変化する状態の試料21Aの場合、例えば、COがX%の組成の反応ガスが流通し、出口側ではCOがZ%の組成の反応ガスになると仮定する。この状態で、試料21Aの中のある部分(例えば、COがY%の組成の反応ガスが流通する部分:X>Y>Z)の成分の変化を検証したい場合、反応ガスを流通させた後に試料21Aを取り出して当該部分の試料を分析することによって間接的な推定をするか、出口側の反応ガスの組成を分析して変化の状態を予測することになる。
【0082】
これに対し、図7(b)に示すように、微分反応評価を行う本実施例の試料21は、反応ガスが流通する前と流通した後で反応ガスの組成が変化しないので、例えば、COがY%の組成の反応ガスを流通させることで、COがY%の組成の反応ガスが流通する部分の試料21として、所望の検証条件において、その場で、X線回折装置16による組成の形態変化を分析することができる。また、その場で、CCDカメラ17により実態像を観察することができる。
【0083】
図8から図10に基づいて、脱硫剤である試料21に反応ガスを流通させ、脱硫反応が生じている過程で炭素が析出する場合の組成の形態変化の一例を説明する。図8には試料21の成分の形態変化の分析結果の一例を説明するグラフ、図9にはCOがY%の組成の反応ガスを流通させたときの試料21の成分の経時変化の一例を説明するグラフ、図10にはCOがy%(Y>y)の組成の反応ガスを流通させたときの試料21の成分の経時変化の一例を説明するグラフである。
【0084】
亜鉛フェライト脱硫剤の試料21は、反応ガスと接触した際に、脱硫反応と並び、前述したBoudouard反応(2CO→CO+C)が生じて炭素析出が生じると考えられている。亜鉛フェライト脱硫剤での炭素析出は、亜鉛フェライト脱硫剤に化学的・物理的に様々な影響を及ぼすため、炭素析出の状況を把握する必要がある。脱硫反応では鉄分(硫化鉄)が生成され、鉄分が触媒として介在することでBoudouard反応が進み、炭素が析出すると考えられる。このため、鉄分の形態変化をその場で検証することで、炭素析出のきっかけとなる反応(鉄分の生成)をその場で把握することができる。
【0085】
COがY%の組成の反応ガスを流通させながら、微分反応評価でX線回折装置16による組成の形態変化を分析する。例えば、図8に示すように、反応ガスの流通開始後10分程度の間に鉄分(Fe)が確認され、時間が経過して60分程度経過するとFeCが確認されたとする。COがY%の組成の反応ガスを流通させた場合の試料21の組成の形態変化は、図9に示すように、例えば、Feがある時間に増加して(実線で示してある)その後、例えば、FeCが増加して一定量となる(一点鎖線で示してある)。
【0086】
FeCが一定量に達した後、CCDカメラ17により炭素の実態像が確認されたとすると(図中点線で示してある)、COがY%の組成の反応ガスを試料21に流通させることで、Feが生成された後にFeCが生成され、FeCが生成されてから炭素が析出することがその場で検証される。つまり、例えば、Fe、FeCの検証を行うことで、COがY%の組成の反応ガスを流通させた場合の炭素析出のきっかけとなる状況をその場で検証することができる。
【0087】
同じように、COの割合が少ないCOがy%の組成の反応ガスを流通させながら、微分反応評価でX線回折装置16による組成の形態変化を分析した際に、図10に示すように、時間の経過と共にFeOが確認されたとする。この状態で、反応ガスを流し続けてもCCDカメラ17により炭素の実態像が確認されないとすると、COがy%の組成の反応ガスを流通させても炭素が析出しないことがその場で検証される。
【0088】
このように、X線回折装置16やCCDカメラ17を用いて試料21の組成の形態変化の把握や実態像の把握をその場で行うことで、亜鉛フェライト脱硫剤の試料21の脱硫反応中の炭素の析出の状況を、反応ガスを流通させながらその場で検証することができる。これらの検証結果に基づき、脱硫剤の組成に応じて石炭ガス化ガスの組成を制御することで、炭素が析出しない状態で脱硫反応を実施する等に検証結果を適用することができる。
【0089】
つまり、反応ガスを流通させながら検証条件が保持されている状態で、固気反応を固定床反応容器で行う場合の評価において、固体側で生じている化学反応特性をその場で把握することができる。同時に、ガス分析装置を用いることで、気体分析による反応特性の解析を併用することができる。このため、反応器に充填した不純物除去剤等の様子を、高温・高圧下で反応させながら実態像と共にその場で解析することができる。
【0090】
特に、脱硫剤における炭素析出の条件を把握する上で、重要な情報をその場で得ることができる。しかも、その場での解析が可能であるため、観察や分析の即時性が高く、反応の進行をリアルタイムに細かく分析することができる。これにより、炭素析出が生じにくい反応ガスの組成を検証したり、特定組成の反応ガスで炭素析出までの脱硫剤の使用時間を検証する等を行うことができる。
【0091】
これらの利点は、亜鉛フェライト脱硫剤の試料21を用いた場合だけでなく、ガス精製装置のハロゲン除去剤として用いられるハロゲン化物吸収剤のペレットの試料としたときの特定成分の解析に適用した場合、水銀除去剤として用いられる銅系吸収剤の粉末やペレット、粒の試料としたときの特定成分の解析に適用した場合にも同様に得ることができる。また、これらの利点は、石炭ガス化ガスが流通する配管の材料を試料として用い、配管材料の炭素析出の評価に適用した場合も同様に得ることができる。
【0092】
上述した反応検証装置11では、石炭ガス化炉で発生する石炭ガス化ガスを燃料とする乾式ガス精製設備1において、石炭ガス化ガスを実際に流通させた場合の温度条件や圧力条件で、除去剤の反応現象を解明することができる。
【0093】
図11に基づいて反応検証装置の他の実施例を説明する。
【0094】
図11には本発明の他の実施例に係る反応検証装置の概略構成を説明するためのブロック系統を示してある。尚、図2に示した構成部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0095】
図11に示すように、反応検証装置41には、模擬燃料ガス供給系12及び不純物ガス供給系13からなる反応ガス供給手段14が備えられ、石炭ガス化ガスgを模擬したガスに対して想定される不純物を含ませた状態の模擬ガス(反応ガス)が模擬燃料ガス供給系12及び不純物ガス供給系13で調整される。反応ガス供給手段14からの反応ガスは積分反応評価試料保持部42に送られる。反応ガスは、脱硫装置4(図1参照)での運転条件(検証条件)と略同じ条件の高温・高圧状態で積分反応評価試料保持部42に送られる。
【0096】
積分反応評価試料保持部42には脱硫装置4(図1参照)の亜鉛フェライト脱硫剤が試料として保持され、反応ガスが試料に接触して流通するようになっている。試料は、実際の乾式ガス精製設備の反応器に収められる形状と同じハニカム形状の亜鉛フェライト脱硫剤とされている。積分反応評価試料保持部42に保持された試料は、反応ガスが流通している過程での実態像が観察カメラとしてのCCDカメラ17で撮影されて観察される。
【0097】
積分反応評価試料保持部42では、反応ガスが試料を流通する過程で反応ガスの組成が変化し、出口側の反応ガスはガス分析装置43に送られる。ガス分析装置43では試料を流通した後の反応ガスが分析され、試料の中で生じている反応状況が分析される。ガス分析装置43で分析された後の反応ガスは排ガス処理系18で処理される。
【0098】
反応検証装置41を用いることで、反応器内部での実際の状態に近似する亜鉛フェライト脱硫剤の実態像を反応中に観察することができる。
【0099】
反応検証装置としては、図2に示した反応検証装置11と図11に示した反応検証装置41を並列に備え、所定の検証条件で微分反応評価と積分反応評価を並行して進める構成にすることも可能である。微分反応評価試料保持部15と積分反応評価試料保持部42を備えた反応検証装置とすることで、微分反応評価にて検証条件を保持した状態においてX線回折で不純物除去剤等の反応過程を観察することができると同時に、積分反応評価にて検証条件を含む条件での固定床反応器内での不純物除去剤等の反応中の実態像を観察することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、検証条件を模擬した状態で反応ガスを流通させて試料の検証を行うことができる反応検証装置及び反応検証方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 乾式ガス精製設備
2 石炭ガス化炉
3 ハロゲン化物除去装置
4 脱硫装置
5 水銀除去装置
6 バグフィルター
7 熱交換器
8 タービン設備
11、41 反応検証装置
12 模擬燃料ガス供給系
13 不純物ガス供給系
14 反応ガス供給手段
15 微分反応評価試料保持部
16 X線回折装置
21 試料
22 石英管
23 金属管
24 透過窓
25 X線発生手段
26 二次元X線検出手段
27 位置調整手段
28 ヒータ
42 積分反応評価試料保持部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
検証条件を保持することができる所定流量で反応ガスを流通させる通路と、
前記通路に備えられ前記反応ガスに反応する試料が前記検証条件と同等の温度と圧力に維持されて保持される試料保持部とを備え、
前記試料保持部は、
前記試料保持部に試料を保持した状態で前記反応ガスを流通させた際に、前記試料を流通する前と流通した後の前記反応ガスの組成等が変化しない前記検証条件を保持した状態に前記試料を保持する
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反応検証装置において、
前記検証条件を保持した状態で、前記試料の反応状況を観察する観察手段を備えた
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項3】
請求項2に記載の反応検証装置において、
前記観察手段は、
前記検証条件が保持されている状態での前記試料の成分の形態変化を解析するX線回折装置である
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項4】
請求項3に記載の反応検証装置において、
前記観察手段として、
前記検証条件が保持されている状態での前記試料の実態像を観察する観察カメラを更に備えた
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4に記載の反応検証装置において、
前記試料保持部は、前記反応ガスを流通させるための前記通路を形成する石英管に備えられ、
前記石英管の外周には金属管が配されると共に、前記金属管の外周に前記試料を所定の温度に維持する加熱手段が配され、
前記金属管の前記試料保持部に対応する部位には、前記X線回折装置のX線が透過する透過窓が形成され、
前記石英管の前記試料保持部には、前記試料に対して前記X線回折装置のX線を直接反射させるために前記試料が外部に臨む切欠き部が形成されている
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の反応検証装置において、
前記X線回折装置は、X線源に回転対陰極型のX線発生手段を備え、回折X線の検出器として二次元X線検出手段を備えた
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項7】
請求項2に記載の反応検証装置において、
前記観察手段は、
前記検証条件が保持されている状態での前記試料の実態像を観察する観察カメラである
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項8】
反応ガスを所定の圧力と流量で流通させる通路と、
前記通路に備えられ反応ガスに反応する試料が保持される試料保持部と、
前記試料保持部に保持された試料を所定の温度に維持する加熱手段と、
前記反応ガスを前記試料に流通させて検証条件が保持されている状態で、前記試料の反応状況を高温・高圧下で観察する観察カメラを備えた
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の反応検証装置において、
前記反応ガスは、
石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスもしくは前記石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガスである
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の反応検証装置において、
前記試料は、
石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスの不純物を除去するための除去剤である
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項11】
請求項10に記載の反応検証装置において、
前記除去剤は、石炭ガス化ガスの硫化物を除去する脱硫剤であり、
前記観察装置では、前記検証条件が保持されている状態で前記脱硫剤での炭素の析出の状況を観察する
ことを特徴とする反応検証装置。
【請求項12】
石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスもしくは前記石炭ガス化ガスを模擬した模擬ガスである反応ガスを用いると共に、前記石炭ガス化炉で生成された前記石炭ガス化ガスの不純物を除去する除去剤である試料を用い、
石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により不純物を除去する運転条件と同じ運転条件で前記反応ガスを試料に流通させ、
前記運転条件が保持されている状態で、前記試料の反応状況を観察して前記反応ガスの流通による前記試料の反応状況を検証する
ことを特徴とする反応検証方法。
【請求項13】
請求項12に記載の反応検証方法において、
前記試料の反応状況をX線回折による解析により反応過程での前記試料の形態変化を解析し、特定成分の析出状況を把握する
ことを特徴とする反応検証方法。
【請求項14】
請求項13に記載の反応検証方法において、
前記試料は、前記石炭ガス化ガスの硫化物を除去する亜鉛フェライト系の脱硫剤であり、
前記X線回折により炭素発生を誘発する鉄系の組成物を解析し、鉄系の組成物の経時変化により前記脱硫剤の炭素析出のきっかけを検証する
ことを特徴とする反応検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−33483(P2011−33483A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180154(P2009−180154)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクト/革新的ガス化技術に関する基盤研究事業/CO2回収型次世代IGCC技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】