説明

反応比率の測定方法及び装置

【課題】生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。
【解決手段】
生物処理槽12内で生物学的処理を行う嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌との反応比率を定量的に測定する反応比率の測定方法であって、嫌気性アンモニア酸化細菌及び/又は従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体を用いて生物学的処理を行って、嫌気性アンモニア酸化細菌の代謝により発生する第1のガスと、従属性脱窒菌の代謝により発生する第2のガスとのガス発生量比を測定することにより、反応比率を定量的に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応比率の測定方法及び装置に係り、特に、アンモニアを含有する廃水から生物学的にアンモニアを脱窒するアンモニア含有廃液の処理方法において、生物反応での嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定する反応比率の測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場や化学工場などでは、低濃度から高濃度のアンモニアが排出される。これらのアンモニア廃液は、水域の富栄養化や溶存酸素の低下等の一因となっており、環境負荷を低減させる処理の必要性が高まっている。
【0003】
一般に、中高濃度のアンモニア処理では、生物処理が多く行われている。微生物を用いた硝化反応と脱窒反応とにより、窒素ガスに変換している。アンモニアは、硝化細菌による硝化反応により亜硝酸や硝酸に酸化され、亜硝酸と硝酸は従属栄養細菌の一つである脱窒菌により脱窒処理されて、除去される。この脱窒処理には、有機物が必要であるため、窒素濃度の3倍量のメタノールが使用されている。
【0004】
このような背景から、最近では、中高濃度のアンモニアの生物処理をさらに効率的に行うために、嫌気性アンモニア酸化反応が利用されている(特許文献1参照)。この方法は、アンモニアの一部を硝化菌により亜硝酸に変換し、この亜硝酸と残りのアンモニアを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒させる。この方法では、アンモニアの一部を亜硝酸にするので、硝化反応時の必要酸素量が少なく、さらに脱窒処理において有機物が不要であり、これにより、極めて安価に処理することができる。
【特許文献1】特開2001−37467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような方法では、亜硝酸を生成する反応が不安定であり、実用化が困難であるのが現状であった。特に、安定供給可能な硝酸を用いた嫌気性アンモニア酸化反応によって廃水処理を行う場合、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応(脱窒菌等の従属栄養細菌による反応)とが、競合しているため、処理槽において、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を見極める(測定する)ことが、安定かつ効率的に廃水処理を行う上で重要であった。
【0006】
上記の反応を見極める方法としては、水質分析方法があり、廃水中のアンモニア濃度が減少すれば、嫌気性アンモニア酸化反応が進行していることが示唆されるが、アンモニアが菌体合成や吸着により減少していることもあるため、水質分析だけでは、嫌気性アンモニア酸化反応の活性を正確に測定・評価することは困難であるといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる反応比率の測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、生物処理槽内で生物学的処理を行う嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌との反応比率を定量的に測定する反応比率の測定方法であって、前記嫌気性アンモニア酸化細菌及び/又は前記従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体を用いて前記生物学的処理を行って、前記嫌気性アンモニア酸化細菌の代謝により発生する第1のガスと、従属性脱窒菌の代謝により発生する第2のガスとのガス発生量比を測定することにより、前記反応比率を定量的に測定することを特徴とする反応比率の測定方法を提供する。
【0009】
本発明者は、嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌とが存在する生物反応系での嫌気性アンモニア酸化反応において、嫌気性アンモニア酸化反応の、従属性脱窒反応に対する反応比率が所定値以下になると嫌気性アンモニア酸化細菌の増殖が停止し、自己分解により嫌気性アンモニア酸化細菌数が減少することを見出した。嫌気性アンモニア酸化反応の、従属性脱窒反応に対する反応比率が低下する要因としては、例えば前記生物反応系に有機物が多く含まれる場合には、従属性脱窒菌の反応が活発化し、それによって嫌気性アンモニア酸化細菌の反応が低下する。従って、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応を活発化するには、前記反応比率を精度良くモニタリングすることが重要になる。
【0010】
本発明は、このような知見に基づいて、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を測定する方法及び装置を提供したものである。
【0011】
本発明の請求項1によれば、生物処理槽より採取した嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌に、嫌気性アンモニア酸化細菌及び/又は従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体を含む標準化合物を添加して生物学的処理(嫌気性アンモニア酸化細菌による嫌気性アンモニア酸化反応と、従属性脱窒菌による脱窒反応と、を行わせることにより、その代謝物中の第1、第2のガスのガス発生量比を分析し、これにより、生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。従って、この反応比率を加味して生物処理槽で生物学的処理を行えば、嫌気性アンモニア酸化反応を安定且つ効率的に行うことができる。
【0012】
なお、上記第1、第2のガスとしては、種類の異なる安定同位体ガスである場合、又は一方が安定同位体ガスで他方は安定同位体でない通常ガスである場合と、がある。
【0013】
請求項2は請求項1において、前記生物処理槽から密閉された容器に前記嫌気性アンモニア酸化細菌と前記従属性脱窒菌とを採取する採取工程と、前記嫌気性アンモニア酸化細菌と前記従属性脱窒菌とに安定同位体を含む標準化合物を前記容器内に供給する試薬供給工程と、前記容器内において前記嫌気性アンモニア酸化細菌と前記従属性脱窒菌とによる代謝を行わせる反応工程と、前記代謝により発生するガスを採取するガス採取工程と、該ガス採取工程で採取したガス中の前記第1のガスと前記第2のガスとのガス発生量比を測定する測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2は、請求項1の測定方法を具体的に示したものである。請求項2によれば、安定同位体を含む標準化合物を、生物処理槽より採取した嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌に添加して、その代謝により生じるガス中の安定同位体ガスのガス発生量比を分析し、これにより、生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。
【0015】
請求項3は請求項1又は2において、前記基質に対応する安定同位体を含む標準化合物が、安定同位体の硝酸、亜硝酸、又はアンモニアのいずれか1であることを特徴とする。
【0016】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、第1のガスが29であり、第2のガスが30であることを特徴とする。
【0017】
請求項3及び4によれば、安定同位体を含む標準化合物が、嫌気性アンモニア酸化細菌及び又は従属性脱窒菌が基質とする物質であり、それぞれに特有の安定同位体ガスを発生する(ここでは、窒素安定同位体ガスの2930)ので、これにより、生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。
【0018】
請求項5は請求項1〜3のいずれか1において、前記生物処理槽が、硝酸とアンモニアとにより生物学的処理を行う嫌気性アンモニア酸化反応槽であることを特徴とする。
【0019】
請求項5は、嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌とが存在する嫌気性アンモニア酸化槽における生物学的処理において、嫌気性アンモニア酸化反応を活発化させるために本発明が特に有効だからである。
【0020】
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、密閉された容器と、嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌とを生物処理槽から前記容器に採取する採取部と、前記容器内に前記嫌気性アンモニア酸化細菌及び/又は前記従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体を含む標準化合物を供給する試薬供給部と、前記容器内で発生するガスを採取するガス採取部と、前記ガス採取部で採取されたガス中の前記嫌気性アンモニア酸化細菌の代謝により発生する第1のガスと、前記従属性脱窒菌の代謝により発生する第2のガスと、のガス発生量比をオンライン又はオフラインにて測定する質量分析測定部と、を備えたことを特徴とする反応比率の測定装置を提供する。
【0021】
本発明の請求項6によれば、安定同位体を含む標準化合物を、生物処理槽より容器に採取した嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌に添加して、その代謝物であるガスを採取する構成とし、採取ガス中の嫌気性アンモニア酸化反応による第1のガスと、従属性脱窒反応による第2のガスとのガス発生量比を分析する質量分析測定部を備える構成とした。これにより、生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。
【0022】
この場合、質量分析測定部をオンライン上に設けて、反応比率をリアルアイムに測定及び評価してもよく、質量分析測定部をオフライン上に設けて、反応比率を定期的に測定及び評価してもよい。
【0023】
請求項7は請求項6において、前記基質に対応する安定同位体を含む標準化合物が、安定同位体の硝酸、亜硝酸、又はアンモニアのいずれか1であることを特徴とする。
【0024】
請求項8は請求項6又は7において、第1のガスが29であり、第2のガスが30であることを特徴とする。
【0025】
請求項7及び8は、請求項7における安定同位体を含む標準化合物と、安定同位体ガスの種類について具体的に示したものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の反応比率の測定方法及び装置によれば、生物処理槽における、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。従って、この反応比率を加味して安定かつ効率的に廃水処理運転が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面に従って、本発明に係る反応比率の測定方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0028】
まず、本発明の反応比率の測定方法及び装置を説明する前に、本発明に至った理論的根拠について説明する。
【0029】
本発明者は、上述した課題を解決するべく、嫌気性アンモニア酸化反応において、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を測定する方法を以下のように検討した。
【0030】
すなわち、嫌気性アンモニア酸化反応槽から嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌を採取し、これにアンモニア(14N)試薬と安定同位体の硝酸(15N)試薬とを添加して、生成する窒素ガスを回収して質量分析し、窒素安定同位体ガスのガス発生量比2930(以下、ガス発生量比εと記す)を測定する。なお、29は嫌気性アンモニア酸化細菌の代謝によって発生するガスであり、30は従属性脱窒菌の代謝によって発生するガスである。また、実際は、生物処理槽より嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌を採取する際、これらの嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌以外の微生物(雑菌等)が含まれるが、本発明の反応比率の測定においては、特に問題はない。
【0031】
これと同時に、実際の嫌気性アンモニア酸化反応槽内から廃水を採取し、廃水中の嫌気性アンモニア酸化細菌数を測定し、比増殖速度を算出した。
【0032】
なお、嫌気性アンモニア酸化細菌の菌数は、嫌気性アンモニア酸化細菌のプローブAMX820を用いて、ダイレクトカウントにより測定した。同様に、従属性脱窒菌の菌数は、MPN法を用いて、測定した。なお、MPN法の詳細については、引用文献(角野立夫ら:硝化細菌の包括固定化担体内における増殖特性と硝化速度、日本水処理生物学会誌、36、(4)、173−181(2000))に記載されている。
【0033】
安定同位体ガスのガス発生量比ε(2930)と嫌気性アンモニア酸化細菌の比増殖速度との関係を図1に示す。
【0034】
図1に示されるように、ガス発生量比εと比増殖速度は、ほぼ比例関係となる。これは、比増殖速度が高いほど、嫌気性アンモニア酸化細菌の増殖速度が大きいことを示しており、嫌気性アンモニア酸化反応の活性が高いことを示す。
【0035】
また、ガス発生量比εが0.3以上の場合、比増殖速度は0以上で嫌気性アンモニア酸化細菌の菌数が増加していることを意味し、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応が活性化していることがわかる。一方、ガス発生量比εが0.3以下である場合、非増殖速度は0以下で嫌気性アンモニア酸化細菌の菌数が減少していることを意味し、従属性脱窒菌による反応の活性が高く、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応の活性が著しく低いことを示す。
【0036】
また、アンモニア及び亜硝酸を含む廃水(後述する1)及び2)の廃水)を用いる場合、ガス発生量比εが、好ましくは0.8〜5の範囲であれば、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応の活性が高いことを示す。また、アンモニア及び硝酸を含む廃水(後述する3)の廃水)を用いる場合、ガス発生量比εが、好ましくは0.4〜1の範囲であれば、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応の活性が高いことを示す。
【0037】
このように、窒素安定同位体ガスのガス発生量比εを測定し、このガス発生量比εが0.3よりも大きいかどうかを判定することにより、実際の嫌気性アンモニア酸化反応槽内の嫌気性アンモニア酸化反応の活性を把握することができることを見出し、これに基づいて、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を測定する本発明の測定方法及び装置を発明した。
【0038】
図2は、本発明に係る反応比率の測定装置20を、嫌気性アンモニア酸化反応槽12を備えた廃水処理システム10に組み込んだ一例である。また、図3は本発明に係る測定装置20の構成図である。なお、図3において、図2と同一の符号を示す部分は、同一の物又は機能を有するものとする。
【0039】
まず、図2の廃水処理システム10の全体構成について説明する。
【0040】
図2に示されるように、廃水処理システム10は、主として、嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌との微生物を槽内に少なくとも含む嫌気性アンモニア酸化反応槽12(以下、生物処理槽12という)と、反応比率の測定装置20と、測定装置20の測定結果に基づいて従属性脱窒菌の菌数を低減する固液分離槽40と、を備えて構成される。本実施形態に使用される対象廃水は、嫌気性アンモニア酸化細菌の基質であるアンモニアと亜硝酸とを含むことが基本であるが、次の廃水でもよい。
【0041】
1)アンモニアのみを含む廃水。この場合には、生物処理槽12に亜硝酸を別途添加し、添加した亜硝酸と廃水中のアンモニアとを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する。又は、廃水を微好気条件下でアンモニア酸化細菌により処理することで、アンモニアの一部を亜硝酸に酸化させ(アンモニアと亜硝酸がほぼ1:1)、生成した亜硝酸とアンモニアとを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒するようにしてもよい。
【0042】
2)アンモニア及び亜硝酸を含む廃水。この場合には、通常の嫌気性アンモニア酸化反応を行うことができる。
【0043】
3)アンモニア及び硝酸を含む廃水。この場合には、廃水中の硝酸を従属性脱窒菌により有機物を水素供与体として還元させて亜硝酸を生成させ、この亜硝酸とアンモニアとを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する。
【0044】
以下、本実施形態においては、上記3)の廃水を使用する例について説明する。
【0045】
生物処理槽12内には、嫌気性アンモニア酸化細菌は包括固定化又は付着固定化された固定化担体として存在することが好ましく、従属性脱窒菌は生物処理槽12内を浮遊する汚泥中に存在することが好ましい。
【0046】
上記嫌気性アンモニア酸化細菌としては、活性汚泥等の微生物から集積培養したものでも、嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する活性汚泥でもよく、純粋細菌でもよい。嫌気性アンモニア酸化細菌は、その詳細は不明であるが、Planctomycetesを代表とする菌群であると言われている。
【0047】
また、上記嫌気性アンモニア酸化細菌等の固定化方法としては特に限定はしないが、不織布やプラスチックなどの付着固定化材料に付着固定する方法、ゲル材内に包括固定する方法等がある。付着固定する方法では、球状や筒状などの担体、ひも状材料、ゲル状担体、不織布状材料など、凹凸の多い材料が付着しやすく除去率が向上する。包括固定化担体の製造方法は、嫌気性アンモニア酸化細菌等の微生物と固定化材料(モノマ、プレポリマ等)を混合し、さらに重合開始剤等を添加して重合させ、ゲルの内部に嫌気性アンモニア酸化細菌等の微生物を包括固定化する。
【0048】
上記モノマ材料としては、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマール等が好ましい。また、上記プレポリマ材料としては、ポリエチレングリコールジアクリレートやポリエチレングリコールメタアクリレートが好ましく、その誘導体も使用できる。
【0049】
包括固定化担体16は、球状、筒状や立方体状の包括担体、ひも状包括担体、不織布状等であり、凹凸が多い形状の包括固定化担体が接触効率もよく、除去率が高く好ましい。
【0050】
上記包括固定化担体の充填率としては、容積%として30〜40%が好ましく、15〜30%がより好ましい充填率である。不織布の充填率については、見かけ充填率として40〜90%が好ましく、50〜80%がより好ましい。
【0051】
また、生物処理槽12内には、廃水と包括固定化担体16とを均一に攪拌する攪拌機18が備えられ、処理水の排出部には、包括固定化担体16の流出を防止するスクリーン19が設けられる。
【0052】
生物処理槽12は、アンモニアと硝酸とを含む廃水を供給する配管11と、嫌気性アンモニア酸化処理した処理水を排出する配管41と、に接続される。これにより、配管11から廃水が供給され、生物処理槽12内で嫌気性アンモニア酸化処理された処理水が、配管41より固液分離槽40へ排出される。
【0053】
また、生物処理槽12は、採取部24を介して本発明に係る測定装置20と接続され、生物処理槽12内の包括固定化担体16や浮遊汚泥が測定装置20内へ採取される。これにより、生物処理槽12内の嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌との微生物が少なくとも測定装置20に採取される。
【0054】
本発明に係る測定装置20は、生物処理槽12内の嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌を採取し、生物処理槽12内の反応状態を測定する装置である。
【0055】
図3に示されるように、測定装置20は、主に、密閉可能な容器22と、生物処理槽12内の嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌を容器22に採取する採取部24と、容器22内に採取した嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌に、安定同位体を含む試薬を供給する試薬供給部26と、容器22内で発生するガスを採取するガス採取部30と、を備えて構成される。
【0056】
密閉可能な容器22は、生物処理槽12より採取した嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌の反応を行わせる容器である。この容器22は、生物処理槽12内の嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌を採取する採取部24と連通している。採取部24は、例えば、図示しないポンプ等により、生物処理槽12内より包括固定化担体16や汚泥等の嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌をくみ上げる配管であるが、容器22内に嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌を採取可能な手段であれば、他の手段でもよい。
【0057】
試薬供給部26は、容器22内に安定同位体を含む標準化合物(以下、安定同位体試薬と記す)を供給するものである。本実施形態では、標準化合物として、硝酸、亜硝酸、又はアンモニアのうち何れか1が使用される。また、試薬供給部28は、容器22内に上記安定同位体試薬以外の一般試薬を供給するものである。
【0058】
ここで、上記安定同位体試薬及び一般試薬は、測定対象である嫌気性アンモニア酸化細菌の反応及び従属性脱窒菌の微生物反応の基質となる試薬であり、本実施形態では、嫌気性アンモニア酸化細菌の基質に対応する試薬としては、安定同位体でない一般試薬としてのアンモニアを使用し、従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体試薬として硝酸を使用した例で説明する。しかし、これに限定するものではなく、嫌気性アンモニア酸化細菌の基質に対応する一般試薬として亜硝酸を使用し、従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体試薬として硝酸を使用してもよい。更には、嫌気性アンモニア酸化細菌の基質に対応する安定同位体試薬としてアンモニアを使用し、従属性脱窒菌の基質に対応する一般試薬として硝酸を使用することもできる。また、安定同位体試薬として亜硝酸が使用される場合には一般試薬として硝酸を使用することもできる。
【0059】
要は、嫌気性アンモニア酸化細菌の基質であるアンモニア及び亜硝酸、従属性脱窒菌の基質である硝酸のうち何れか1つが安定同位体試薬であればよい。これにより、容器22内で発生した窒素ガス総量のうち、第1及び第2の安定同位体ガス(29及び30)の発生量比、又は1の安定同位体ガス(29又は30)と1の通常ガス(28)との発生量比を測定することができ、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応と、従属性脱窒菌による反応との反応比率を測定することができる。なお、容器22内で発生する窒素ガスは、嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌の代謝による窒素ガス量とほぼみなされる。
【0060】
本実施形態では、容器22に採取された嫌気性アンモニア酸化細菌と、従属性脱窒菌とが、それぞれ安定同位体試薬の硝酸と、一般試薬のアンモニアと、を基質として反応(代謝)し、窒素ガスを発生する。このとき発生した総窒素ガス量をガス量検出器33で検出する。
【0061】
ガス採取部30は、容器22内の嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌によるそれぞれの反応(代謝)により発生したガスを、所定時間経過ごとに、バルブ29…等を制御して、各ガス採取瓶31…に採取する。このように、密閉されたガス採取瓶31…をそれぞれ測定装置20から取り出し、採取したガスを質量分析測定する。
【0062】
ここで、発生する窒素安定同位体ガスのうち、29は嫌気性アンモニア酸化細菌から発生し、30は従属性脱窒菌から発生する。質量分析測定では、容器22内から採取したガスに含まれる上記の安定同位体ガスのガス発生量比ε(=2930)を分析・測定する。これにより、生物処理槽12内における嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を測定する。また、この反応比率に、発生した総窒素ガス量を積算することによって、嫌気性アンモニア酸化反応及び従属性脱窒反応それぞれの絶対値的な活性を評価することもできる。
【0063】
また、容器22内に採取した測定後の嫌気性アンモニア酸化細菌及び従属性脱窒菌は、戻し部38により生物処理槽12に戻される。
【0064】
固液分離槽40は、生物処理槽12の後段に配され、上記測定装置20の測定結果に基づいて生物処理槽12内の従属性脱窒菌の菌濃度を低減する装置である。
【0065】
固液分離槽40では、生物処理槽12から排出される処理水に同伴されて流出する汚泥(従属性脱窒菌を含む)を槽底部に沈降させる。沈降した汚泥の一部は循環配管46を介して生物処理槽12に戻されると共に、残りの汚泥は引き抜き配管48を介して系外に引き抜かれる。これにより、生物処理槽12内の浮遊汚泥中に含まれる従属性脱窒菌の菌数を低減する。
【0066】
次に、上記の如く構成された廃水処理システム10に組み込まれた測定装置20の作用について説明する。図4は、このときの処理の流れを示すフローチャートである。
【0067】
まず、生物処理槽12内から、嫌気性アンモニア酸化細菌を包括固定した包括固定化担体16…及び生物処理槽12内の汚泥(従属性脱窒菌を含む)が、所定量、採取部24によって測定装置20の容器22内に採取される。
【0068】
次に、試薬供給部26より、安定同位体の亜硝酸又は硝酸が容器22内に供給され、試薬供給部28より、一般試薬のアンモニアが容器22内に供給される。そして、容器22内で嫌気性アンモニア酸化細菌、従属性脱窒菌等による代謝が行われ、窒素ガスが発生する。このとき発生した窒素ガス量が、窒素ガス量検出器33により測定される(S1)。
【0069】
検出された窒素ガス量が理論値の50%以上である場合、ガス採取部30において、所定時間毎にバルブ29…等を開閉し、窒素ガスをガス採取瓶31…に採取する(S2)。
【0070】
また、検出された窒素ガス量が理論値の50%未満である場合、供給した試薬量に対して採取した嫌気性アンモニア酸化細菌や従属性脱窒菌が不足しているので、更に包括固定化担体16及び汚泥を容器22に採取する(S5)。
【0071】
次に、S2において、容器22から発生した窒素ガスを採取したガス採取瓶31…を測定装置20から取り出し、採取したガスを質量分析測定する。この質量分析によって、上記の安定同位体ガスのガス発生量比ε、すなわち、2930の値を計算する(S3)。
【0072】
ガス発生量比εが0.3以上であれば、嫌気性アンモニア酸化細菌による嫌気性アンモニア酸化反応が活性であるので、そのまま運転条件を維持させる(S4)。一方、ガス発生量比εが0.3以下であれば、従属性脱窒反応の方が活性であるため、嫌気性アンモニア酸化反応を促進させるための各種制御を行う(S6)。この制御は、例えば、生物処理槽12にさらに嫌気性アンモニア酸化細菌を追加投入する操作、上記の如く固液分離槽40を使用して従属性脱窒菌を生物処理槽12から除去低減する操作、生物処理槽12の前段で曝気して廃水中のBOD(有機物)を低減させる操作等、を手動又は自動で行う。
【0073】
このように、本発明に係る測定装置20を廃水処理システム10に組み込むことにより、生物処理槽12における嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を定量的に測定及び評価することができる。したがって、この反応比率を加味して安定かつ効率的に処理運転を行うことが可能となる。
【0074】
以上、本発明に係る測定装置20及びこれを組み込んだ廃水処理システム10の第一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0075】
たとえば、本実施形態において、測定装置20は生物処理槽12とは別に設ける構成としたが、生物処理槽12と一体化させてもよい。
【0076】
また、本実施形態において、測定装置20は、安定同位体ガスのガス発生量比εをオフラインで測定する構成について説明したが、測定装置20内で、上記安定同位体ガスのガス発生量比εをオンラインで測定する構成をも採用できる。
【0077】
図5は、本発明に係る測定装置20の別態様である。図5の実施形態は、本発明の測定装置20において、オンラインで質量分析測定し、嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を算出するものである。なお、図5において、図3と同様の符号及び部材については、その詳細な説明を省略する。
【0078】
図5の測定装置20は、主に、ガス採取部30内のガスを質量分析測定する質量分析測定部32と、その分析結果に基づいて、嫌気性アンモニア酸化細菌による反応と従属性脱窒菌による反応との反応比率等の各種計算、ガス採取部30や質量分析測定部32等の各種制御を行う計測・制御部36と、を備えたこと以外は、図3と同様に構成される。
【0079】
ガス採取部30は、容器22内の嫌気性アンモニア酸化細菌や従属性脱窒菌の反応(代謝)により発生したガスを、循環ポンプ34により採取するガスサンプラである。このガス採取部30には、校正・基準ガス等が供給、排出される。
【0080】
質量分析測定部32は、容器22内から採取したガスに含まれる安定同位体ガス(29及び30)のガス発生量比εを分析、測定する。
【0081】
また、ガス採取部30や質量分析測定部32は、計測・制御部36により制御される。また、この計測・制御部36内に、質量分析測定部32で得られた各種分析データが送られ、安定同位体ガスのガス発生量比ε等が計算される。
【0082】
なお、図2の廃水処理システム10において、上記質量分析測定部32で測定されたガス発生量比εの値に基づいて、各種フィードバック制御を自動的に行う構成としてもよい。
【0083】
上述のような構成とすることにより、オンラインで生物処理槽12内の嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率をオンラインで測定することできる。
【0084】
次に、本発明に係る廃水処理システム10の第二実施形態について説明する。本実施形態は、図6の廃水処理システム10において、測定装置20の測定結果に基づいて、処理槽12の前段で廃水を曝気させる制御を行うシステムである。図6は、本実施形態に係る廃水処理システム10の構成を説明する図である。
【0085】
図6に示されるように、廃水処理システム10は、主に、生物処理槽12の前段において、廃水を曝気する曝気槽50が設けられたこと以外は、図1とほぼ同様に構成される。なお、図5において、図1と同様に、生物処理槽12の後段に固液分離槽40を備えてもよいが、本例では備えない例について説明する。
【0086】
曝気槽50は、生物処理槽12に供給する廃水をエア曝気する。エア曝気された廃水は、配管13を介して生物処理槽12に供給される。これにより、生物処理槽12に供給される廃水中のBOD(有機物)が低減されるので、生物処理槽12内における従属性脱窒菌の活性を低下させるとともに、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を向上させることができる。
【0087】
本実施形態においては、ガス発生量比εが0.3以下である場合に、嫌気性アンモニア酸化反応を促進させる各種制御方法を説明したが、これに限られることはなく、その他の方法であってもよい。
【0088】
また、本実施形態においては、嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌とのガス発生量比を窒素安定同位体ガスのガス発生量比により測定する方法について述べたが、本発明を応用すれば、異なる種類の微生物(菌)が共存する場合の、それぞれの微生物(菌)のガス発生量比(存在比)、又はそれぞれの微生物反応の反応比率を、種々の安定同位体ガスのガス発生量比により測定及び評価する技術にも幅広く応用することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アンモニアと亜硝酸を含む廃水の場合について、以下の条件で廃水処理運転を行った。
【0090】
(包括固定化担体16の組成)
・嫌気性アンモニア酸化細菌の集積汚泥 50質量部
(嫌気性アンモニア酸化細菌の濃度2×10cells/mL)
・ポリエチレングリコールジアクリレート 4質量部
・アクリルアミド 1質量部
・NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン 0.50質量部
・過硫酸カリウム 0.25質量部
・水 44.25質量部
上記材料を混合して、重合温度20℃下で30分間重合させた後、3mmの角型状に成形し、包括固定化担体16を製造した。
【0091】
(生物処理槽12の運転条件)
・供試廃水:アンモニア−亜硝酸型廃水
(NH−N 90〜120mg/L、NO−N 90〜130mg/L含有廃水)
・滞留時間:2時間
・包括固定化担体16の充填率:20%
また、生物処理槽12内の供試廃水を機械攪拌した。
【0092】
(測定装置20の測定条件)
・安定同位体試薬:亜硝酸(昭光通商株式会社製)
・一般試薬:アンモニア
また、測定装置としては、図3の測定装置20(オフライン型)を使用した。
【0093】
以上の運転条件で、図6の廃水処理システム10において、生物処理槽12を連続運転しながら、生物処理槽12における嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率を測定した。なお、前述のガス発生量比εの測定は、図3の測定装置20を用いて、上述の測定条件で1日1〜2回行った。また、比較例として、図5において、測定装置20と生物処理槽12’とを備え、前段の曝気槽50がないシステム(不図示)を採用した。
【0094】
また、廃水中のアンモニア性窒素NH−N、亜硝酸性窒素NO−N、硝酸性窒素NO−Nの分析はイオンクロマトグラフィーで分析した。また、廃水中の窒素濃度は全窒素濃度T−Nで評価し、全窒素濃度T−Nは東亜ディーケーケー株式会社製TNC−250で測定した。
【0095】
1ヶ月連続運転後、嫌気的にアンモニアと亜硝酸とが同時に除去され、廃水中の窒素濃度は、12〜20mg/Lで推移し、εは10以上で良好であった。
【0096】
しかし、その後、廃水中にBODが90〜100mg/Lの有機物が混在し始め、ガス発生量比εが低下し始めた。ガス発生量比εが0.3以下になった時点で、廃水中のBOD成分を分解させるために、図6のように生物処理槽12の前段で、廃水を曝気した。これにより、廃水中のBOD成分を50%以上除去し、生物処理槽12内の嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を向上させた。このとき、廃水の窒素濃度は、12〜20mg/Lで推移し、安定して嫌気性アンモニア酸化反応が行われるようになった。
【0097】
一方、比較例として、εが0.3以下になっても何らの制御も行わずに、放置した生物処理槽12’では、さらに2週間経過後、廃水中の窒素濃度が52〜120mg/Lまで増加し、嫌気性アンモニア酸化反応がほとんど停止していることが確認された。
【0098】
以上から、ガス発生量比εの値が0.3以下になった時点で、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を向上させる制御を行う効果があることが解った。
(実施例2)
次に、アンモニアと硝酸を含む廃水の場合について、実施例1と同様に、廃水処理運転を行った。なお、包括固定化担体16は、実施例1と同じものを使用した。
【0099】
(生物処理槽12の運転条件)
・供試廃水:アンモニア−硝酸型廃水
(NH−N 90〜120mg/L、NO−N 90〜130mg/L含有廃水)
・滞留時間:2時間
・包括固定化担体16の充填率:20%
また、生物処理槽12内に、脱窒汚泥として1000mg/L浮遊汚泥を投入し、供試廃水を機械攪拌した。(なお、従属性脱窒菌は、硝酸がBODを水素供与体として亜硝酸に還元される過程で必要となる。)
(測定装置20の測定条件)
・安定同位体試薬:硝酸(昭光通商株式会社製)
・一般試薬:アンモニア
また、測定装置としては、図5の測定装置20(オンライン型)を使用した。
【0100】
以上の運転条件で、図2の廃水処理システム10において、生物処理槽12を連続運転しながら、生物処理槽12における嫌気性アンモニア酸化反応と従属性脱窒反応との反応比率をオンラインで測定した。なお、前述のガス発生量比εの測定は、図5の測定装置を用いて、1時間間隔で行った。また、比較例として、図2において、測定装置20を備えない廃水処理システム(不図示)を採用した。
【0101】
ガス発生量比εをオンラインで測定し、ガス発生量比εが0.3以下になった時点で、固液分離槽40の汚泥引き抜き配管48から汚泥を引き抜き、汚泥保持量を10%低減させた。
【0102】
さらに、この状態で1ヶ月運転後、嫌気的にアンモニアと硝酸とが同時に除去され、廃水中の窒素濃度は、15〜20mg/Lで安定に推移した。6ヶ月経過後も、安定に廃水中の窒素が除去され、処理されていることが確認された。
【0103】
一方、比較例として、図5の測定装置20を用いた測定は行わず、引き抜き配管48から汚泥を通常量のみ引き抜いて運転した結果、水質は不安定で処理液の窒素濃度は16〜40mg/Lであり、廃水中の窒素除去反応がほとんど行われていないことが解った。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る安定同位体ガスのガス発生量比εと比増殖速度との関係を示すグラフである
【図2】本発明の第一実施形態に係る廃水処理システムを示す図である
【図3】本発明の第一実施形態に係る測定装置を示す図である
【図4】本発明の第一実施形態に係るフローチャートである
【図5】本発明の測定装置の別態様を示す図である
【図6】本発明の第二実施形態に係る廃水処理システムを示す図である
【符号の説明】
【0105】
10…廃水処理システム、11、13…配管、12…嫌気性アンモニア酸化反応槽(生物処理槽)、16…包括固定化担体、19…スクリーン、20…測定装置、22…容器、24…採取部、26…試薬供給部(安定同位体)、28…試薬供給部(一般試薬)、29…バルブ、30…ガス採取部、31…ガス採取瓶、32…質量分析部(MS)、33…ガス量検出器、34…循環ポンプ、36…計測・制御部(コンピュータ)、38…差し戻し部、40…固液分離槽、41…配管、46…循環配管、48…引き抜き配管、50…曝気槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物処理槽内で生物学的処理を行う嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌との反応比率を定量的に測定する反応比率の測定方法であって、
前記嫌気性アンモニア酸化細菌及び/又は前記従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体を用いて前記生物学的処理を行って、前記嫌気性アンモニア酸化細菌の代謝により発生する第1のガスと、従属性脱窒菌の代謝により発生する第2のガスとのガス発生量比を測定することにより、前記反応比率を定量的に測定することを特徴とする反応比率の測定方法。
【請求項2】
前記生物処理槽から密閉された容器に前記嫌気性アンモニア酸化細菌と前記従属性脱窒菌とを採取する採取工程と、
前記嫌気性アンモニア酸化細菌と前記従属性脱窒菌とに安定同位体を含む標準化合物を前記容器内に供給する試薬供給工程と、
前記容器内において前記嫌気性アンモニア酸化細菌と前記従属性脱窒菌とによる代謝を行わせる反応工程と、
前記代謝により発生するガスを採取するガス採取工程と、
該ガス採取工程で採取したガス中の前記第1のガスと前記第2のガスとのガス発生量比を測定する測定工程と、を備えたことを特徴とする請求項1の反応比率の測定方法。
【請求項3】
前記基質に対応する安定同位体を含む標準化合物が、安定同位体の硝酸、亜硝酸、又はアンモニアのいずれか1であることを特徴とする請求項2の反応比率の測定方法。
【請求項4】
第1のガスが29であり、第2のガスが30であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1の反応比率の測定方法。
【請求項5】
前記生物処理槽が、硝酸とアンモニアとにより生物学的処理を行う嫌気性アンモニア酸化反応槽であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の反応比率の測定方法。
【請求項6】
密閉された容器と、
嫌気性アンモニア酸化細菌と従属性脱窒菌とを生物処理槽から前記容器に採取する採取部と、
前記容器内に前記嫌気性アンモニア酸化細菌及び/又は前記従属性脱窒菌の基質に対応する安定同位体を含む標準化合物を供給する試薬供給部と、
前記容器内で発生するガスを採取するガス採取部と、
前記ガス採取部で採取されたガス中の前記嫌気性アンモニア酸化細菌の代謝により発生する第1のガスと、前記従属性脱窒菌の代謝により発生する第2のガスと、
のガス発生量比をオンライン又はオフラインにて測定する質量分析測定部と、を備えたことを特徴とする反応比率の測定装置。
【請求項7】
前記基質に対応する安定同位体を含む標準化合物が、安定同位体の硝酸、亜硝酸、又はアンモニアのいずれか1であることを特徴とする請求項6の反応比率の測定装置。
【請求項8】
第1のガスが29であり、第2のガスが30であることを特徴とする請求項6又は7の反応比率の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−90148(P2007−90148A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279769(P2005−279769)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】