説明

反応混合ポンプを用いたα,β−不飽和アルデヒドの製造

本発明はα,β−不飽和アルデヒドの製造法に関し、その際、連続的に貫流される反応器内部で、供給アルデヒドの接触アルドール縮合を水性塩基の存在下で実施する。本発明が基礎とする課題は、特に経済的に行われ得る、アルデヒドのアルドール化法を提供することである。前記課題は、反応器として反応混合ポンプを使用することによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はα,β−不飽和アルデヒドの製造法に関し、その際、連続的に貫流される反応器内部で、供給アルデヒドの接触アルドール縮合を水性塩基の存在下で実施する。
【0002】
このような方法は、WO2004/065342A1から公知である。
【0003】
不飽和アルデヒドは、その反応性ゆえに、数多くの有機化合物の製造用原料である。その選択水素化は、相応する飽和アルデヒド類を生み出し、これらも同様に多数の合成の基礎である。アルデヒドの酸化によりカルボン酸類がもたらされ、これらは技術的に利用される。アルデヒドの水素化により飽和アルコール類がもたらされ、これらは可塑剤や洗浄剤の製造に使用される。
【0004】
同時に水脱離下で2−エチルヘキセナールが生じるn−ブチルアルデヒドのアルドール反応は世界的に大規模に行われており、それというのも、水素化生成物の2−エチルヘキサノールは広く可塑剤アルコールとして使用されるからである。触媒として、通常は、水に溶解された塩基が用いられる。典型的には、パーセント範囲でNaOHの含有量を有する苛性ソーダ水溶液が使用される。反応は頻繁に、80〜150℃の温度範囲、5barより低い圧力、及び1:20の有機相と水性触媒相との相比において実施される(Hydrocarbon Processing,October 1980,Section 2,pages 93〜102)。この反応は、例えば攪拌槽(DE1906850、DE927626)内、向流運転される充填カラム(G.Duembgen,D.Neubauer,Chemie−Ing.−Techn.,41,974(1969))内、又は流路管(GB761203)内で実施されることができる。これらの全ての方法は、98.5%の変換率にて2−エチルヘキセナールを98%までの選択率で供給する。その際に欠点なのは、比較的高い温度の場合に、使用されたn−ブチルアルデヒドの一部がカニッツァーロ反応によって不可逆的に失われることである。カニッツァーロ反応に際して形成された酪酸は塩基性触媒を中和する。それゆえ、有機材料の高い負荷をともなう触媒溶液の一部が常に排出され、そして新しい触媒と取り替えられなければならない。
【0005】
n−ブチルアルデヒドと同じように、n−ペンタナール(n−バレルアルデヒド)が不飽和C10−アルデヒドの2−プロピル−ヘプテナールに変換され得る。C5−アルデヒドのアルドール縮合は、攪拌される反応器中で実施されることができ、該反応器には、熱の排出のために内部熱交換器が備え付けられている。この反応操作は、例えばWO93/20034A1に記載され、そして可動部があることに基づき機械的に弱く、且つ組立及び保全の面で、反応器中に組み込まれた熱交換器のために費用が掛かる。
【0006】
アルデヒドのアルドール縮合に特徴的なのは、反応事象に2つの液相(アルデヒド有機相、水性触媒の相)が関与することであり、それらは実際に混和可能ではない。それゆえ、高い変換率と選択率の達成には、互いに混和可能ではない2つの液相が、該相間の物質移動抑制を排するために、反応中に相互に完全に接触させられることが前提とされる。それゆえ、適したプロセス工学的な措置によって、2つの相間での可能な限り大きな物質移動面が生み出されなければならない。
【0007】
WO93/20034A1に記された先行技術によれば、含アルデヒド有機相と水性触媒相との間の物質移動は、攪拌槽が使用される場合、強力な攪拌によって、また管形反応器が使用される場合は、乱れた流によって保証される。
【0008】
しかしながら、攪拌槽中での攪拌には、攪拌ユニットを駆動させるための機械的なエネルギーの導入を要する。製造コストを下げるために、反応の維持に要する機械的な攪拌作業を可能な限り効率的なものとし、そうして全体のエネルギー需要を下げることが所望されている。
【0009】
WO2004/065342A1からは、アルドール化を、管並びに固定された渦流形素子を有するセグメントから構成されている反応器中で実施することが公知である。渦巻ポンプが反応混合物を管によって循環させ、そのことによって渦流形素子において乱流が発生する。反応液の乱れた流は、その相の渦流をもたらし、そのことによって相間の物質移動が可能となる。ここに記載された装置の型式は、ループ式反応器の可能性がある。係るアルドール化反応器の渦流効果が回転攪拌ユニットを有する反応器より良好なものであることを示す比較例は存在しない。
【0010】
いずれにしても、WO2004/065342A1に記載される、渦巻ポンプの外側に配置された固定の渦流形素子を有するアルドール化反応器の構造タイプは、固有容量が大きいという欠点を有する。運転中に貫流される装置の固有容量(滞流)は−プラントの静止状態において−ポンプの作動が停止された場合に装置中に留まる液体の容量を表す。WO2004/065342A1に開示されたアルドール化反応器の固有容量は、管路容量、渦流反応器の容量及びポンプケーシングの容量から成っている。
【0011】
反応性の及び毒性の反応体の連続的な反応用の反応器として、その小さい固有容量のおかげで、いわゆる反応混合ポンプが傑出している。
【0012】
ここで用いられる意味での反応混合ポンプには、以下のものが包含されている:
a)固定されたポンプケーシング、
b)該ポンプケーシング中で回転可能に支持された羽根車であって、これは、半径方向に延在し、該羽根車の周囲に向かって広がる混合チャンバーを有する、
c)該混合チャンバーを取り囲む混合チャネルであって、これは、該ポンプケーシング内部で羽根車の周囲に沿って延在する、
d)少なくとも1つの反応原料用の供給部及び反応生成物用の排出部であって、その際、供給部及び排出部は、混合チャネルを介して流動的に相互接続されている、
e)該羽根車を回転駆動可能であるモーター。
【0013】
反応混合ポンプを用いた反応の実施については、これまで次の通り報告されていた:
・Phosgenumsetzung in Fink,Dieter und Woelfert,Andreas:Pumpen,die mitmischen.Chemie Technik,Juli 2007 pp.52〜54
・DE102008008841A1におけるポリカーボネート製造
・WO97/43254における相応するイオノンを得るための擬似イオノンの反応。しかしながら、この反応は、酸性条件下での環化であって、アルカリ性条件下でのアルドール縮合ではない。
【0014】
とはいっても、これまで、アルドール化反応を反応混合ポンプを用いて実施することは知られていない。
【0015】
この先行技術に鑑みて、本発明が基礎とする課題は、特に経済的に行われ得る、アルデヒドのアルドール化法を提供することである。
【0016】
該課題は、反応器として反応混合ポンプを使用することによって解決される。
【0017】
したがって、本発明の対象は、連続的に貫流される反応器内部で、供給アルデヒドの接触アルドール縮合を水性塩基の存在下で実施するα,β−不飽和アルデヒドの製造法であり、その際、該反応器は反応混合ポンプである。その際、ポンプは、アルカリ液、アルデヒド及び生成物の移送手段としてのみならず、同時に反応器として用いられる。
【0018】
反応混合ポンプによるアルドール縮合の実施は、プロセスの経済性の期待を予期せぬことに上回る。これは、反応混合ポンプがプロセスの経済性の3つの要因に同じく好ましい影響を及ぼすことに十分帰せられることができる;ここでは、まず反応混合ポンプの比較的小さい固有容量が挙げられ、これは投資資本の無駄な割合を減少させる。さらに、反応混合ポンプ特有の機械的なエネルギーの需要が低く、それというのも、該反応混合ポンプは効果的な渦流を達成するからである。
【0019】
予想外にも、最終的に改善された選択率、つまり、製造されるべきα,β−不飽和アルデヒドのより良好な収率が、不所望の副生成物の僅かな形成下で得られる。殊に最後に挙げた効果は予測可能なものではなかった。
【0020】
全体として、本発明による方法の利点は、シングルパスにおけるα,β−不飽和アルデヒドの高い収率及び粗α,β−不飽和アルデヒドからの混合物(蒸留前の混合物)の製造用のプラント部分の所要スペース及び慣例の反応器を有するプラントと比較してより低い資本投入費の点にある。
【0021】
本発明の好ましい発展形態は下位請求項に記されており、且つこれから先の説明並びに実施例からわかる。
【0022】
供給物質
本発明による方法は、縮合反応することができるアルデヒド又はアルデヒド混合物の変換に適している。アルデヒドのみが用いられる場合、これは同じ炭素原子上で2個のα−水素原子をCO基に隣接して有していなければならない。2つ以上の異なるアルデヒドが用いられる場合、該アルデヒドの少なくとも1つは同じ炭素原子上で2個のα−水素原子を有していなければならない。
【0023】
上の定義に従った2個のα−水素原子を有するアルデヒドは、例えば:アセトアルデヒド、プロパナール、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、n−ヘキサナール、3−メチルペンタナール、4−メチルペンタナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、n−デカナールである。これらは単独縮合にも適している。
【0024】
上の定義に従った1個のα−水素原子を有するアルデヒドの例は:イソブチルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、2−メチルペンタナール、2−エチルヘキサナール、シクロヘキシルアルデヒドである。α−水素原子を有さないアルデヒドの例は:ベンゾアルデヒド、2,2−ジメチルプロパナール及びホルムアルデヒドである。最後に挙げた2つのグループのアルデヒドは、2個のα−水素原子を有するアルデヒドとのみアルドール縮合することができる。
【0025】
本発明による方法の有利な供給アルデヒドは:n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒドからの混合物、n−バレルアルデヒドと2−メチルブチルアルデヒド若しくは3−メチルブチルアルデヒドとからの混合物又は相応する三成分混合物である。殊に、n−ペンタナールを90質量%より多く、極めて有利にはn−ペンタナールを95質量%より多く含有するC5−アルデヒド混合物が使用される。同様に、C4−アルデヒド及びC5−アルデヒドからの混合物が使用されることができる。これらのアルデヒドは、例えばオレフィンのヒドロホルミル化によって製造されることができる。
【0026】
1つより多いアルデヒド又はアルデヒド混合物が使用される場合、個々の成分は分けて、好ましくはポンプ中に、触媒溶液の流中に供給されることができる。同様に、全ての原料を供給前に混合し、且つ一緒に供給することも可能である。さらに、アルデヒドは溶液として使用されることができる。溶剤として、触媒溶液にほとんど溶けない不活性の液体、例えば炭化水素(ペンタン、シクロヘキサン、トルエン)が用いられることができる。
【0027】
本発明による方法での触媒として、水溶性の塩基性化合物、例えば水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、カルボン酸塩又はそれらの混合物が、それらのアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の形態で用いられることができる。好ましくは、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物が使用される。
【0028】
連続相内での触媒の濃度は、0.1〜15質量%、殊に0.3〜5質量%である。
【0029】
本発明による方法によりペンタナールがデセナールに変換される場合、好ましくは苛性ソーダ液が触媒として使用される。苛性ソーダ液の少量が、排出される反応水により搬出される。苛性ソーダ液の損失を補うために、新しい苛性ソーダ液が計量供給される。その際、新しい苛性ソーダ液は返送アルカリ液と一緒に処理アルカリ液を形成し、これが反応混合ポンプに供給される。返送アルカリ液は、水酸化ナトリウムの他に、カルボン酸、主としてペンタン酸のナトリウム塩を含有する。カルボン酸塩は、実質的にカニッツァーロ反応によって発生する。
【0030】
本発明による方法では、デセナールが製造される場合、処理アルカリ液の反応器入口におけるナトリウム含有率は、0.60〜1.75質量%、殊に1.1〜1.20質量%である。処理アルカリ液のナトリウム濃度の調整のために、返送アルカリ液に、2.5質量%より大きい濃度を有する新しい苛性ソーダ液が供給される。反応系に導入する水を少しとするために、有利には、より高い濃度を有する苛性ソーダ液が使用される。本発明による方法では、有利には、苛性ソーダ液は5〜30質量%の濃度範囲で、例えば10質量%の苛性ソーダ液が使用される。
【0031】
反応混合ポンプ
原料、生成物及び触媒溶液の移送のために並びに変換の実施のために、アルドール縮合による不飽和アルデヒドの本発明による製造法では反応混合ポンプが使用される。反応混合ポンプは、最も広義には、ポンプの混合チャンバーの周囲壁において原料及び触媒溶液用の複数の導入ノズル(移送チャネル)並びに反応混合物用の排出ノズルを有する周辺インペラーポンプ(Peripheralradpumpe)である。これらの装置は、ポンプ、効果的なミキサーの特性及び反応器の特性を有する。これらの装置のいくつかには冷却装置若しくは加熱装置が備え付けられているか、又はそれらは他の方法で、反応器が所望の温度にて該装置中で実施さることができるように調温されることができる。
【0032】
反応混合ポンプの構造及び作用原理は、専門文献(D.Fink,A.Woelfert,Chemie Technik,Juli 2007,第52頁〜第54頁)に記載されている。
【0033】
典型的な反応混合ポンプ(反応ミキサー)は、実質的にモーター、ポンプケーシング及びその中にある混合ローター(羽根車)から成る。羽根車はモーターにより、好ましくは電磁クラッチを介して駆動される。羽根車の両面で半径方向に配置されたチャンバー(移送セル)、それぞれの導入ノズル(移送チャネル)及び遮断ピースは、反応混合ポンプの典型的な移送挙動及び混合挙動をもたらす。混合ローター内の移送セルは、環状チャネルと混合チャンバーの前面で周辺インペラー特有の圧力セルを形成する。移送空間及び反応空間内での特徴的な渦流は、交互に、比較的素早く循環する圧力セルの液体内容分と、移送チャネルの領域内の比較的ゆっくりと流れる液体流との恒常的な交換、ひいては液体の完全混合をもたらす。完全混合によって、均一且つ安定な混合物が作り出され、これは連続的に流出口から搬出される。反応ポンプのこの顕著なパルス交換及び混合効果は、本発明においてアルデヒドのアルドール縮合の実施に適用される。
【0034】
本発明による方法の実施例で示されるように、反応ポンプの使用は、化学的に反応性の強い成分が変換のために混合され、且つ均一に分散されるべき場合に特に好ましい。反応条件及びプロセス工学的な限界条件に依存して、反応ミキサーに特別な特殊装置を備え付けてよい。そのため、例えば、原料の粘度及び反応性に依存して又は反応時間に依存して、ポンプヘッドに、付加的な滞留時間チャンバー及び予混合チャンバー又は移送空間に中間生成物を返送するための付加的な導入ノズルを装着させてよい。
【0035】
反応条件
本発明によれば、アルドール縮合は50〜160℃の温度範囲で実施される。ペンタナールがデセナールに変換される場合、反応温度は、100〜150℃の範囲、殊に110〜140℃の範囲、極めて有利には120〜140℃の範囲にある。
【0036】
反応混合ポンプ中の反応圧力は少なくとも、処理アルカリ液も有機物質(原料、生成物及び場合により溶剤)もそれぞれ液相として存在するほど高い。ペンタナールからデセナールへの変換に際して、反応混合ポンプ中の圧力は、0.1〜2MPa、殊に0.3〜1MPa、極めて有利には0.3〜0.5MPaである。
【0037】
ポンプ入口での原料に対する処理アルカリ液の量比[kg/kg]は、5〜500の範囲、殊に20〜400の範囲にある。ペンタナールからデセナールへの変換に際して、この比は、10〜300、殊に40〜240である。
【0038】
本発明による方法では、反応混合ポンプ中の液体(有機相及び水相)の平均滞留時間は、両方の相が同時に素早く流れることを想定した場合、0.05〜3秒の範囲、殊に0.1〜2秒の範囲にある。ペンタナールからデセナールへの変換に際して、平均滞留時間は、好ましくは0.1〜1.5秒、殊に0.1〜1秒、極めて有利には0.2〜0.5秒である。
【0039】
後処理
ポンプ排出物は冷却され、且つ有機相はアルカリ液相から分離される。相分離は、20〜130℃の温度範囲で実施される。
【0040】
ペンタナールから生じたデセナール混合物の分離に際して、相分離は、60〜130℃の温度範囲、殊に70〜120℃の範囲、極めて有利には90〜110℃の範囲で行われる。
【0041】
比較的重い水相を比較的軽い有機相から分離するために、重力を唯一利用した相分離を可能にする分離器が使用されることができる。これらのいわゆる重力分離器は、凝集を促進する、分離能を高めるための手段として内部構造物を用いて実施されることもできる。内部構造物の使用によって、凝集プロセス及び沈殿プロセスが促進される。凝集手段として、例えば、プレート、不規則充填物又は織物充填物又は繊維層分離器が使用されることができる。重力分離器は、横型の容器として又は縦型の容器として構成されていてよい。
【0042】
重力分離器の代わりに遠心機が、セパレーターからの液液分離のために遠心機の原理に従って使用されることができる。その際、回転するドラム内での遠心力によって、重い相が分離される。
【0043】
重い水相を分離するために、本発明による方法において、好ましくは重力分離器、有利には内部構造物を有する横型の容器として構成された重力分離器が使用される。
【0044】
分離されたアルカリ液の一部が、反応水の分離のために排出され、他の部分は反応器中に返送される。排出流により、副生成物として形成されたカルボン酸(ナトリウム塩として)の一部及び水酸化ナトリウムも分離される。この流は浄化プラントに供給されることができる。しかしながら、例えばDE19849922及びDE19849924に記載されるように、この流を後処理し、且つ部分的にプロセスに返送することも可能である。
【0045】
有機相が、アルドール縮合生成物及び少量の反応しなかった原料以外に、他の副生成物、例えばカルボン酸塩、水酸化ナトリウム及び溶解した水を含有する場合、微量の塩基及びカルボン酸塩の一部が水洗浄によって除去されることができる。その際に発生する水抽出物は、新しいアルカリ液をつぎ足すために用いられることができる(図1〜2には示されていない)。
【0046】
有機相は蒸留により後処理されることができる。その際に分離された原料は、部分的に反応混合部ポンプに返送されることができる。
【0047】
製造されたα,β−不飽和アルデヒドは、オレフィン性二重結合の水素化及びアルデヒド基の酸化による)カルボン酸の製造のために又は(完全水素化による)第一級アルコールの製造のために使用されることができる。
【0048】
第一級アルコールの製造に際して、任意に粗混合物も水素化され、且つ蒸留分離は水素化後に行われることができる。
【0049】
本発明の更なる選択肢は、反応混合物を反応器の通過後及び相分離前に短路蒸留にかけることである。その際、高温反応混合物は減圧によって容器中に送り込まれる。留出物として、水及び主として原料からの混合物が発生し、これは完全に又は部分的に反応器中に返送されることができる。(留出物の分離及び有機留出物の一部の返送は図2には示されていない)係る方法は、DE19956410には記載されていない。
【0050】
方法変法
図1及び2に基づいて、本発明を以下で詳細に説明する。
【0051】
本発明による方法を実施することができる実施形態のブロック図が、図1に表されている。原料(1)としての供給アルデヒド、並びに返送アルカリ液(6)及び新しいアルカリ液(7)から成る、触媒的に作用する処理アルカリ液(8)としての水性塩基を、反応混合ポンプ(RMP)により吸引する。反応混合ポンプ(RMP)中では、アルドール縮合が行われる。ポンプ搬出物(2)を、分離容器(3)中で、目標生成物を有する有機相(4)とアルカリ液相とに分け、そこから一部(5)を排出し、且つ他の部分(6)は反応混合ポンプ(RMP)に返送する。
【0052】
図2は、本発明による方法の更なる実施形態を示す。図2に従った方法変法は、図1に従った変法とは、ポンプ搬出物(2)を、容器(3)中での相分離前に装置(9)中での短路蒸留にかけるという点で区別され、その際、低沸点物(10)の一部、主として反応しなかった原料が分離される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による方法を実施することができる実施形態のブロック図
【図2】本発明による方法の更なる実施形態を示す図
【実施例】
【0054】
次の実施例は本発明を説明するものであるが、明細書及び特許請求の範囲から生じる適用範囲を制限するものではない。
【0055】
試験装置
本発明による方法に従ったC5−アルデヒドのアルドール縮合を、図1で概略的に示される方法変法に相当する試験装置中で行った。
【0056】
連続的な触媒相(返送アルカリ液)6及び7(新しい苛性ソーダ液)を、導入ノズルを介してFink社のHR060型の反応混合ポンプに供給し、且つ循環処理する。反応混合ポンプの第二の導入ノズルを介して、C5−アルデヒド(n−ペンタナール)を管路1によって混ぜ込んだ。反応混合ポンプの後に発生する液体流(生成物相及び触媒相)を、管路2を介して相分離容器3に導いた。ここで水性触媒相(下方の相)を分離し、且つ管路6を介して新たに循環流に供給した。反応生成物を含有する有機相(上方の相)を、管路4を介して取り出した。形成された反応水は、管路5を介して連続的に排出することができる。反応水の排出による苛性アルカリ液の損失を補うために、管路7を介して連続的に新しい10%の苛性アルカリ液を計量供給する。反応熱を、反応器の外側にある熱交換器(図1には示されていない)により除去した。本発明によらない比較となるペンタナールのアルドール縮合の実施のために、実施例1で表したように、反応混合ポンプの代わりに反応器として管形反応器を使用した。
【0057】
実施例1〜2に付け加えた表は、該表の上の領域では、C5−アルデヒド縮合の反応条件を記載する。各実施例の表の下の領域では、生成物組成を同様にGC分析による質量パーセント記載で一覧にしている。一覧としてより見やすくするために、個々のC10−アルデヒド若しくはC10−ヒドロキシアルカナール(アルドール)の異性体間で区別は行われない。これらの値は、"2−プロピルヘプテナール"若しくは"C10−アルドール"としてまとめている。同様に"高沸点物/残分"としてまとめられているのは、3つ若しくは4つのC5−アルデヒドのアルドール反応(付加反応及び縮合反応)から生じている、トリマー及びテトラマーのようなアルドール化の副生成物である。
【0058】
例1(比較例):
管形反応器中でのn−ペンタナールからの2−プロピルヘプテナールの製造
2−プロピルヘプテナールを、攪拌軸に取り付けられた4枚の攪拌羽根を備えた10個の混合チャンバーを有する抽出塔(容積2.1リットルの)形態における管形反応器中でのn−ペンタナールの縮合によって製造した。連続的な触媒相(2%の苛性ソーダ液)を、渦巻ポンプによって循環処理した。原料のn−バレルアルデヒドを、100lの容器(原料受け器)から取り出し、そして連続的に細管を介して反応器入口前でNaOH循環流にポンプ供給した。生成物相と水性触媒相とからの混合物を、反応器後に相分離容器に供給した。相分離容器中で、生成物有機相を80℃で触媒相から分離した。生成物相の分離後に、水相をNaOH循環流に供給した。
【0059】
触媒循環量(2.0%の水性NaOH)は、全ての試験において80l/hであった。原料n−ペンタナールを、1:10の有機相対水相の相比(PV)に相当する8l/hの流量でNaOH循環流に供給した。原料は、n−ペンタナール99.12質量%に加えて、副成分0.88質量%(そのうち高沸点物/残分0.70質量%)を含有していた。
【0060】
次の表1には、2000rpm(単位:1分間当たりの回転数/rpm)の攪拌回転数にて3つの温度110℃、120℃及び130℃並びに4barの圧力におけるn−ペンタナールのアルドール化の結果を示している。定常状態において連続的な運転での3時間の試験時間後に、次の結果が得られた:
【表1】

【0061】
表から読み取ることができるように、n−ペンタナール変換率は反応温度とともに上昇する。95%より高いn−ペンタナール変換率を達成するために、選択された反応条件下で120℃を上回る反応温度が必要とされる。
【0062】
実施例2(本発明による):
反応混合ポンプ中でのn−ペンタナールからの2−プロピルヘプテナールの製造
次の例では、反応混合ポンプ中でのn−ペンタナールの縮合による2−プロピルヘプテナールの製造を記載する。反応ミキサーとして、およそ15mlのポンプストローク量をともなう、加熱ケーシングを有するFink社のHR060型の反応混合ポンプを使用した。
【0063】
連続的な触媒相(2%の苛性ソーダー液)を、導入ノズルを介して反応混合ポンプに導いた。原料のn−バレルアルデヒドを、100lの容器(原料受け器)から取り出し、そして連続的に第二の導入ノズルを介して反応ポンプの混合チャンバーにポンプ供給した。生成物相と水性触媒相とからの混合物を、反応ポンプから排出ノズルを介して抜き取り、且つステンレス鋼製の管路(長さ2m、内径12mm)を介して相分離容器に供給した。相分離容器中で、生成物有機相を80℃で触媒相から分離した。生成物相の分離後に、水相をNaOH循環流に供給した。
【0064】
160l/hの触媒循環流(2.0%の水性NaOH)を、全ての試験設定において一定に維持した。原料のn−ペンタナールを、1:80の有機相対水相の相比(PV)に相当する、2l/hの流量で反応ミキサーに供給した。原料は、n−ペンタナール98.82質量%に加えて、副成分1.18質量%(そのうちn−ペンタノール0.07質量%、2−プロピルヘプテナール0.53質量%及び高沸点物/残分0.58質量%)を含有していた。
【0065】
次の表2には、3つの温度110℃、120℃及び130℃並びに5barの圧力におけるn−ペンタナールのアルドール化の結果を示している。定常状態において連続的な運転での3時間の試験時間後に、次の結果が得られた:
【表2】

【0066】
表から読み取ることができるように、n−ペンタナールのアルドール化のために反応混合ポンプを使用した場合、選択された反応条件下で120℃を上回る温度にて、反応容積がより小さいにも関わらず、>94%のn−ペンタナールの変換率及び>97%の2−プロピルヘプテナールの選択率が達成される。
【0067】
実施例3(本発明による):
反応混合ポンプ中でのn−ペンタナールからの2−プロピルヘプテナールの製造
次の例では、およそ1l/hのペンタナール流量及び1:160の相比における2−プロピルヘプテナールの製造を記載する。実施例2と比較して、n−ペンタナール流量を半分にし、それ以外は同じ反応条件を用いた。
【0068】
表3は、110℃、120℃及び130℃の3つの反応温度並びに5barの圧力でのアルドール化の試験結果を報告する。定常において連続的な運転での3時間の試験時間後に、次の結果が得られた:
【表3】

【0069】
表から読み取ることができるように、n−ペンタナール変換率は、実施例2と比較して、n−ペンタナール流量を減少させることによって改善することができた。そうして、120℃及び130℃の反応温度の場合、98%より高い選択率にて、およそ97%の高いn−ペンタナール変換率が達成された。
【0070】
実施例4(本発明による):
反応混合ポンプ中でのn−ペンタナールからの2−プロピルヘプテナールの製造
次の例では、一定に維持されたペンタナール流量にてNaOHの循環流を高めたことによる、アルドール化の変換率及び選択率への影響が調べられる。そのために、120℃及び5bar及び2l/hのペンタナール流量にて、触媒循環量を80〜240l/hの間で変更した。
【0071】
表4は、循環流を80l/h、160l/h及び240l/hの3つに設定した場合の、アルデヒド流量が一定であるアルドール化の試験結果を報告する。定常状態において連続的な運転での3時間の試験時間後に、次の結果が得られた:
【表4】

【0072】
表から読み取ることができるように、1:40から1:80及び1:120への相比の増加に相当する、80l/hから160l/h及び240h/lへの循環流の増加が、93.4%から97.7%へのn−ペンタナール変換率の明らかな上昇をもたらすことができた。
【符号の説明】
【0073】
1 供給アルデヒド、 2 ポンプ搬出物、 3 分離容器、 4 有機相、 5 一部、 6 他の部分、 7 新しいアルカリ液、 8 処理アルカリ液、 9 装置、 10 低沸点物、 RMP 反応混合ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に貫流される反応器内部で、供給アルデヒドの接触アルドール縮合を水性塩基の存在下で実施するα,β−不飽和アルデヒドの製造法において、該反応器が反応混合ポンプであることを特徴とする、α,β−不飽和アルデヒドの製造法。
【請求項2】
前記反応混合ポンプが、以下の特徴部:
a)固定されたポンプケーシング、
b)該ポンプケーシング中で回転可能に支持された羽根車であって、該羽根車は、半径方向に延在し、該羽根車の周囲に向かって広がる混合チャンバーを有する、
c)該混合チャンバーを取り囲む混合チャネルであって、該混合チャネルは、該ポンプケーシング内部で該羽根車の周囲に沿って延在する、
d)少なくとも1つの反応原料用の供給部及び反応生成物用の排出部であって、その際、供給部及び排出部は、該混合チャネルを介して流動的に相互接続されている、
e)該羽根車を回転駆動可能であるモーター
を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
回転する羽根車において、前記供給アルデヒド及び前記水性塩基が反応原料として、共通の又は別個の供給部によって混合チャネル内に達すること、前記アルドール縮合が前記混合チャネル内部で行われること、及びα,β−不飽和アルデヒドが反応生成物として前記排出部を通って前記混合チャネルを抜けることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アルドール縮合がもっぱら前記混合チャネル内部で行われることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記羽根車が、前記混合チャネルに沿った反応体の平均流速より高い周辺速度で回転することを特徴とする、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記混合チャネル中の温度が50〜180℃の範囲に維持されることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
供給流中での供給アルデヒドに対する水性塩基の量比が20〜400の範囲にあることを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合ポンプ中での滞留時間が0.1〜2秒であることを特徴とする、請求項3から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ペンタナールがデセナールに変換されることを特徴とする、請求項3から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも90質量%のn−ペンタナール含有率を有するC5−アルデヒド混合物が使用されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
少なくとも95質量%のn−ペンタナール含有率を有するC5−アルデヒド混合物が使用されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記混合チャネル中での温度が110℃〜140℃であることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項13】
供給流中での供給アルデヒドに対する水性塩基の量比が40〜240の範囲にあることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合ポンプ中での滞留時間が0.1〜1.5秒であることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合ポンプを前記排出部を通って抜ける前記ポンプ搬出物が70〜120℃の温度範囲で相分離に供されることを特徴とする、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−506627(P2013−506627A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531293(P2012−531293)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061238
【国際公開番号】WO2011/038957
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】