説明

反応現像画像形成法

【課題】半導体集積回路、プリント配線基板又は液晶パネルの製造に用いることのできるフォトレジスト技術に関し、従来の反応現像画像形成法により形成されるフォトレジストの耐熱性を向上させ、かつ適正な現像時間を確保する手段を提供する。
【解決手段】所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後この層をアルカリを含む溶剤で洗浄することから成る現像画像形成法において、該フォトレジスト層が、アマダンタン骨格を有する耐熱性ポリカーボネート樹脂と光酸発生剤とから成り、該アルカリがアミンであることを特徴とする反応現像画像形成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路、プリント配線基板又は液晶パネルの製造に用いることのできるフォトレジスト技術に関し、より詳細には、ポリカーボネート樹脂と光酸発生剤とを用いて成膜し、光照射した反応性アルカリ現像液を用いてポジ型画像を形成するためのフォトレジスト技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは通常、写真甲板加工における関連技術において、印刷板プリント電子回路及びプリント回路基板の製造、又はミクロ電子工学における半導体積層品の製造のために使用される光造形可能な有機ポリマーに用いられる。
フォトレジストには、ポジ型レジストとネガ型レジストがあり、ポジ型のフォトレジストの露光域は現像プロセスにより除去され、未露光域が基材上に層として残り、ネガ型のフォトレジストの露光域はレリーフ構造として残る。ポジ型フォトレジストは本質的に高い画像分解能を有していて、VLSI(超大規模集積回路)の製造に使用されている。
発明者らは、ポジ型のフォトレジスト技術として、既に「反応現像画像形成法」を開発した(特許文献1)。この方法においては、フォトレジスト層をヘテロ原子に結合したカルボニル基(C=O)を主鎖に含む汎用樹脂と光酸発生剤とから成る混合物により形成する。次に、この層を適宜所望のパターンにマスクした後に、紫外線を照射する。これを求核性のアミンを含む現像液で洗浄すると、露光域のカルボニル基で主鎖は切断され、ポリマーは低分子化され、現像液に溶解し、ポジ型フォトレジストが形成される。
また、発明者らは、アマダンタン骨格を有する耐熱性ポリカーボネート樹脂を開発している(特許文献2,3等)。
【特許文献1】特許第3965434号
【特許文献2】特開2003-212986
【特許文献3】特開2003-212987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の反応現像画像形成法(特許文献1)により形成されるフォトレジストの耐熱性を向上させ、かつ適正な現像時間を確保する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、アマダンタン骨格を有する耐熱性ポリカーボネート樹脂(以下「PC樹脂」という。)を用いて、反応現像画像形成法(特許文献1)によって形成されるフォトレジストが優れた耐熱性を有することを見出した。更に、アマダンタン骨格を有する耐熱性PC樹脂を用いて耐熱性を向上させたために、反応性が低下するという問題が生じたが、ポリカーボネート樹脂に電子求引性のモノマー単位を導入することにより、反応性を向上させて適正な現像時間を確保することができることを見出した。
即ち、本発明は、所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後この層を求核性アミンを含む溶剤で洗浄することから成る現像画像形成法であって、該フォトレジスト層がポリカーボネート樹脂と光酸発生剤とから成り、該ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、Rはハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、m及びnは、それぞれ独立して、0〜4の整数、oは0〜14の整数を表す。)で表される繰返し単位(1)又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、p及びqは、それぞれ独立して、1〜4の整数を表す。)で表される繰返し単位(2)、及び少なくとも1種の下記一般式(3)
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、Xは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−C(R)−(但し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換若しくは無置換のピラジリデン基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリーレン基、又は−C(CH−ph−C(CH−(但し、phはフェニレン基を表す。)を表し、r及びsは、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)で表される繰返し単位(3)からなる反応現像画像形成法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明で用いるPC樹脂は、下記に詳述する繰返し単位(1)又は繰返し単位(2)、及び少なくとも1種の繰返し単位(3)から成る。
【0006】
繰返し単位(1)は下記一般式(1)で表される。
【化1】

この一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表す。
この炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが挙げられる。さらに、炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0007】
この一般式(1)におけるR及びRが表わす各種の置換基の中でも、炭素数1〜6のアルキル基であるものが耐熱性に優れることから好ましく、より好ましいのはメチル基である。このほか、上記の各種置換基の中では、シクロヘキシル基、メトキシ基、フェニル基、トリフルオロメチル基などが好ましいものとして挙げられる。
そして、この一般式(1)におけるm及びnは、それぞれ独立して、0すなわち水素原子であってもよいし、1〜4個の上記置換基を有していてもよい。このm及びnについては、0〜2であるものがより好ましい。
【0008】
この一般式(1)において、Rはハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表す。
このハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子が挙げられる。そして、炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが挙げられる。さらに、炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。これら各種の置換基の中でも、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、トリフルオロメチル基などが好ましいものとして挙げられる。
さらに、この一般式(1)におけるoについては、0すなわち水素原子のみであってもよいし、1〜14のいずれの数の置換基を有するものであってもよい。
【0009】
繰返し単位(2)は下記一般式(2)で表される。
【化2】

一般式(2)における、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表す。
このハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。また、このアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、この炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが挙げられる。更に、炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。更に、一般式(2)におけるp及びqは、それぞれ独立して、1〜4の整数であるが、好ましくは1又は2である。また、p又はqが2以上の場合、R又はRは、それぞれ同一であっても異なってもよい。
そして、一般式(2)における、R及びRが、炭素数1〜6のアルキル基である場合、PC樹脂の耐熱性が優れことから特に好ましい。
【0010】
繰返し単位(3)は下記一般式(3)で表される。
【化3】

繰返し単位(3)として、上記一般式(3)で表される単位を2種以上用いてもよい。
この繰返し単位(3)としては、下記一般式(4)
【化4】

で表される構造単位を有するものが、PC樹脂の耐熱性や機械的強度などに優れることから好ましい。
【0011】
及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表す。
このハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。そして、炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基などが挙げられる。さらに、炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。これら各種の置換基の中でも、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが好ましいものとして挙げられる。
【0012】
Xは、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−C(R)−(但し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、−PO(R10)−(但し、R10は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換若しくは無置換のピラジリデン基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリーレン基、又は−C(CH−ph−C(CH−(但し、phはフェニレン基を表す。)を表す。
【0013】
このR及びRが表わす炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好適なものとして挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、α又はβ−ナフチル基などが挙げられる。さらに、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基などが挙げられ、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)基、1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)基などが挙げられる。炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
そして、Xが表わす二価の基としては、−C(R)−(ただし、R及びRは上記と同様に定義される。)、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基又は9,9’−フルオレニリデン基であるものが、より耐熱性に優れていることから好ましい。
r及びsは、それぞれ独立して、0すなわち水素原子のみであってもよいし、1〜4のいずれの数の置換基を有するものであってもよい。
【0014】
また、Xが電子求引性の場合には、形成されたフォトレジストが露光した場合に溶解しやすくなり、現像時間の短縮が図られるため好ましい。このような電子吸引性のXとして、−CO−、−SO−、−SO−、−C(R)−(但し、R及びRは、それぞれ、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、又は−PO(R10)−(但し、R10は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)、好ましくは−CO−、−SO−、又は−C(R)−(R及びRは上記と同様に定義される。)が挙げられる。
この芳香族PC樹脂を構成する繰返し単位(1)又は(2)と繰返し単位(3)との含有割合については、特に制約はないが、この繰返し単位(1)又は(2)の全繰返し単位に対する含有割合(モル比)((1)又は(2))/((1)又は(2)+(3))は0.05〜0.99が好ましく、より好ましくは0.05〜0.95、更に好ましくは0.25〜0.75である。このモル比が0.05よりも低い場合には、成形加工性は良好であるが耐熱性の向上の度合いが小さく、また、このモル比が0.99より高いものは、優れた耐熱性を示すが、溶媒に対する溶解性が低いために成形加工性が低下することがある。
また、全繰返し単位(3)に対する、Xが電子求引性である繰返し単位(3)の割合(モル比)は、0.1〜0.6の範囲内にあるものが好ましい。この割合が0.1よりも小さい場合には、現像時間の短縮効果が小さく、また、この割合が0.6よりも大きい場合には、現像時間の短縮効果は大きいが、適正な現像時間の範囲が狭くなり、パターン形状の劣化が大きくなることがある。
【0015】
本発明で用いる求核性アミンは、非共有電子対を有する窒素原子を有する化合物であり、有機アミン(アミノ酸を含む)と無機アミンに分類される。これらは求核性を有する化合物であり、光酸発生剤により生ずる酸によって、極性の増大した露光域のポリマー中のヘテロ原子に結合したカルボニル基に求核的に反応する。
但し、求核性でないと考えられるアミンであっても、現像条件、特に溶媒の設定によってはカルボニル基に求核的に反応する場合がある。例えば、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)は通常条件では求核性でないため本発明の反応現像画像形成法には好ましいアミンとはいえないが、アルコール/N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)のような水を含まない系やあるいは少量の水しか含まないような溶媒系では、TMAHのOHアニオンは水があると求核性が大きく低下するので、水の代わりにアルコールあるいはアルコールも含まない有機溶媒/NMPのような系ではカルボニル基への反応性が高くなると考えられる。
アミンの塩基性は酸性度指数(pK)が大きいほど強いが、本発明の反応現像画像形成法においては塩基性よりもカルボニル基(C=O)のC原子に対する反応性(求核性)が重要であり、それは分子サイズの小さいほど強いと考えられる。従って、一般にN原子に大きな炭素鎖が結合した有機アミンよりも無機アミンのほうが求核性が強く、本発明の反応現像画像形成法に適している。本発明の求核性アミンの具体例を酸解離定数とともに下表に列挙する。
【0016】
【表1】

【0017】
好ましいアミンとしては、表1に記載のヒドロキシルアミン、ヒドラジン、及びアンモニアの無機アミン、並びに、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルモルホリン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、及びモルホリン、並びにグリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸等の有機アミンが挙げられる。
無機アミンは有機アミンに比べて防爆設備を必要とせず環境負荷が小さいなどの利点がある。
【0018】
本発明のポジ型フォトレジスト中に存在する光酸発生剤は化学放射線の照射により酸を発生する化合物であり、キノンジアジド化合物,オニウム塩、スルホン酸エステル類、有機ハロゲン化合物等が使用される。特にキノンジアジド化合物は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸又は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸と低分子芳香族ヒドロキノン化合物、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンや2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン及びトリヒドロキシベンゼン、例えば1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、又はクレゾールのエステル生成化合物である。オニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等がある。これらは安息香酸t−ブチルなどのエステルと一緒に使用される。これらの中で、特に、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸−p−クレゾールエステルが好ましい。
光酸発生剤はフォトレジスト中に全固形含量に基づいて5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜30重量%用いられる。
なお、データは示さないが、これらの光酸発生剤には、未露光部において、光酸発生剤を混合しない単独の樹脂膜に比べ、未反応の光酸発生剤が混在した樹脂膜は現像液(アミン)に対する溶解速度が著しく遅いという溶解抑制効果がある。
【0019】
フォトレジスト溶液の製造に適する溶剤は原則としてフォトレジストの不揮発成分、例えば縮合ポリマー及び光酸発生剤及び所望のその他の添加剤が十分に可溶であり、かつこれらの成分と不可逆的に反応しない全ての溶剤である。適する溶媒の実例は、非プロトン性極性溶媒、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジアセトキシエチレングリコール、スルホラン、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジグラム、フェノール、クレゾール、トルエン等である。
【0020】
本発明のポジ型フォトレジスト中に存在し得る別の慣用の改良添加剤としては、カップリング剤、均添剤、可塑剤、別の膜形成樹脂、界面活性剤及び安定剤よりなる。これらの改質剤は当業者にとって周知であり、そして関連文献には詳細に記載されている。かかる改質剤の量は全て合わせてもフォトレジスト溶剤の固形分全含有量に基づいて25重量%を超えることはない。
本発明のフォトレジストはそれ自身公知の方法により成分を溶剤又は溶剤混合物中に混合又は溶解することにより配合される。一旦成分は溶液中に溶解され、得られたフォトレジスト溶液は0.1〜1μmの細孔を有するろ過膜を用いてろ過される。
主用な用途分野はミクロ電子工学及びオプトエレクトロニクス回路ならびに部品の製造である。この利用のためにこれら材料は一時の間に合わせのフォトレジストマスク並びに永久構造体として例えば絶縁層、保護膜もしくは不導体層、誘電層又は液晶表示要素における配向膜として働く。
【0021】
基板上への被覆は通常、浸漬、噴霧、ロール塗り又はスピンコーティングによって行われる。生じた層の厚さはフォトレジスト溶液の粘度、固形分含量及びスピンコーティング速度に依存する。本発明のフォトレジストは0.1〜500μm、好ましくは1〜100μmの層厚を持つ層及びレリーフ構造を作ることができる。多層回路における薄層は一時の間に合わせのフォトレジストとして又は絶縁層として1〜50μmにすることができる。
フォトレジストを基材に塗布した後、これに普通50〜120℃の温度範囲で予備乾燥させる。オーブン又は加熱プレートを使用できる。オーブン中での乾燥時間は5〜60分である。
【0022】
その後、フォトレジスト層は輻射を受ける。通常、化学線の光が使用されるが、また高エネルギー放射線、例えばX線又は電子ビーム線を試用することができる。直接照射又は露光マスクを介して行うことができる。また、輻射線ビームをフォトレジスト層の表面に当てることもできる。
普通、輻射は250〜450nm、好ましくは300〜400nmの中心波長を発する紫外線ランプを用いて行われる。市販で入手できる輻射装置、例えば接触又は非接触露光機、走査投光型露光装置又はウエハステッパーを使用することが好ましい。
露光の後、ついでパターンはフォトレジストの照射域を取り除くアルカリ性現像液で層を処理する。例えば、浸漬又は噴霧により基材の露光部を現像する。
【0023】
現像液は上記のアミンを含む、水若しくは有機溶剤、又は水と有機溶剤との混合物が用いるのがよい。
有機溶剤は用いた縮合系化合物を溶解し、光酸発生剤や各種添加物を溶解する性能を持つ溶媒が用いられる。好ましい例としてジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ブチロラクトン、ジアセトキシエチレングリコール、シクロヘキサノン等が用いられる。
光酸発生剤の存在下での縮合型ポリマーの化学放射線の照射による分子量の変化はない。むしろ、その後の現像液中への浸漬によって光照射部分が分解し、アルカリ性溶液に溶解して現像が認められる。標題に示す反応現像である。
従来の酸付加によるアルカリ性溶液への溶解性の増大という溶解性の変化に基づく現像法と著しく異なる。
現像は露光エネルギー、現像剤のアルカリ性の強さ、現像の形式、予備乾燥温度、現像温度、現像時間を調節して行う。
現像停止は、普通、非溶剤、例えばイソプロパノール、脱イオン水、微酸性水溶液中への浸漬又は噴霧によって行われる。
本発明のポジ型フォトレジストは0.1〜500μm、好ましくは1〜100μmの層厚を有するポリマー被膜及び鋭い輪郭丸みを付けられたれレリーフ構造をとることができる。
ポストベークは材料の種類によって異なるが、150〜350℃の範囲で行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。本実施例においては、以下の方法でフォトレジストを形成させて観察した。フォトレジストは、各実施例のフォトレジスト配合物を、3μm細孔径のろ過膜でろ過して製造した。このフォトレジスト配合物を表面処理していない直径10cmの銅箔の表面上に、スピンコート法で塗布した。次いで、赤外線熱風乾燥機中で90℃ 10分間乾燥した。このフォトレジスト配合物塗布膜上に、ポジ型フォトマスク用のテストパターン(10-120μmのラインアンドスペースパターン)を置き、2kw超高圧水銀灯照射装置(オーク製作所製JP-2000G)を用いて、画像が得られる露光量で照射した。
現像液中に、上記照射後の塗布膜を浸漬又は超音波処理した後、純水で洗浄し、赤外線ランプで乾燥後、解像度を観察した。形成したフォトレジストを走査型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所製S-2600N、加速電圧:15-20kV)により観察し、その現像限界の線幅を解像度とした。
【0025】
実施例1
シクロヘキサノン(和光純薬(株)製、一級、以下「CHN」という。)8.25gに、下式で表されるポリカーボネート(粘度平均分子量32,000、ガラス転移温度265℃、k:m:n = 61:26:13) 1.75gを添加して溶解させた後、光酸発生剤としてジアゾナフトキノン系感光剤PC-5(R)(東洋合成製、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸-p-クレゾールエステル)0.35gを添加して室温で約1時間、スターラーで撹拌してフォトレジスト配合物を調製した。
【化5】

【0026】
この溶液を厚さが35μmの電解銅箔上(マット面)にスピンコート法(700rpm/10sec+1100rpm/40sec)にて塗布し、遠赤外線熱風循環式乾燥機でプリベーク(90℃/10分)後、膜厚約13.6μmの感光性ポリカーボネート被塗膜を得た。
これにPET製のフォトマスクを介して、紫外線露光機(オーク社製)によりi線からg線帯域の光を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は400mJ/cm2であった。
露光後、エタノールアミン(EA)/NMP/イオン交換水=2/1/1(重量比)からなる現像液20gを用いて、超音波処理下、40℃で現像を行い、イオン交換水100gで1分間洗浄した。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は7分32秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで10μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図1に示す。
【0027】
実施例2
CHN8.25gに、下式で表されるポリカーボネート(粘度平均分子量30,100、ガラス転移温度262℃、k:m:n = 61:26:13) 1.75gを添加して溶解させた後、感光剤PC-5(R) 0.35gを添加して室温で約1時間、スターラーで撹拌してフォトレジスト配合物を調製した。
【化6】

【0028】
実施例1と同様に、塗布、プリベークを行い、11.4μmの感光性ポリカーボネート被塗膜を得た。
これに実施例1と同様に露光を行った後に、エタノールアミン(EA)/NMP/イオン交換水=2/1/1(重量比)からなる現像液20gを用いて、超音波処理下、40℃で現像を行い、イオン交換水100gで1分間洗浄した。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は10分13秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで15μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図2に示す。
【0029】
実施例3
CHN8.25gに、下式で表されるポリカーボネート(粘度平均分子量29,500、ガラス転移温度270℃、m:n = 75:25) 1.75gを添加して溶解させた後、感光剤PC-5(R) 0.35gを添加して室温で約1時間、スターラーで撹拌してフォトレジスト配合物を調製した。
【化7】

【0030】
実施例1と同様に、塗布、プリベークを行い、11.4μmの感光性ポリカーボネート被塗膜を得た。
これに実施例1と同様に露光を行った後に、エタノールアミン(EA)/NMP/イオン交換水=2/1/1(重量比)からなる現像液20gを用いて、超音波処理下、40℃で現像を行い、イオン交換水100gで1分間洗浄した。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は12分24秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで15μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図3に示す。
【0031】
実施例4
実施例1で用いたポリカーボネートの代わりに下式で表されるポリカーボネート(粘度平均分子量31000、ガラス転移温度212℃、k:m:n = 61:26:13)を用いて、実施例1と同様にしてフォトレジストを作成した。その結果、実施例1と同様に良好なパターニングが得られた。
【化8】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1のフォトレジストのSEM写真を示す図である。
【図2】実施例2のフォトレジストのSEM写真を示す図である。
【図3】実施例3のフォトレジストのSEM写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後この層を求核性アミンを含む溶剤で洗浄することから成る現像画像形成法であって、該フォトレジスト層がポリカーボネート樹脂と光酸発生剤とから成り、該ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜6のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、Rはハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、m及びnは、それぞれ独立して、0〜4の整数、oは0〜14の整数を表す。)で表される繰返し単位(1)又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、p及びqは、それぞれ独立して、1〜4の整数を表す。)で表される繰返し単位(2)、及び少なくとも1種の下記一般式(3)
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜13のアリール置換アルケニル基及び炭素数1〜12のフルオロアルキル基の群から選ばれる基を表し、Xは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−C(R)−(但し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、9,9’−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換若しくは無置換のピラジリデン基、炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリーレン基、又は−C(CH−ph−C(CH−(但し、phはフェニレン基を表す。)を表し、r及びsは、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)で表される繰返し単位(3)からなる反応現像画像形成法。
【請求項2】
繰り返し単位(3)の一部にXが電子吸引性である化学構造を含む請求項1に記載の反応現像画像形成法。
【請求項3】
電子吸引性であるXが、−CO−、−SO−、又は−C(R)−(但し、R及びRは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)である請求項2に記載の反応現像画像形成法。
【請求項4】
全繰返し単位に対する前記繰返し単位(1)又は(2)の含有割合(モル比)が0.05〜0.99である請求項1〜3のいずれか一項に記載の反応現像画像形成法。
【請求項5】
前記求核性アミンを含む溶液が、求核性アミン並びに水及び有機溶剤の少なくとも一方から成る混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応現像画像形成法。
【請求項6】
照射する紫外線の波長が250〜450nmである請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応現像画像形成法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応現像画像形成法により形成された形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−271155(P2009−271155A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119448(P2008−119448)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】