説明

反応管洗浄装置、自動分析装置、及び反応管洗浄装置の洗剤流路の洗浄方法

【課題】洗剤ラインからの析出物の発生を防止する。
【解決手段】反応管洗浄装置32は、複数の洗剤を収容する複数の洗剤ボトル38、40と、複数の洗剤が流通する複数の流路SL、ALと、複数の洗剤を複数の洗剤ボトル38、40からそれぞれ吸入し複数の流路SL,ALへ吐出する複数のポンプ42、44と、複数の流路SL、ALにそれぞれつながれ、各流路SL,ALを流通する各洗剤で反応管を洗浄する洗浄ノズル46s、46aと、複数の洗剤ポンプ42、44と複数の流路SL、ALとの間の接続を切り替える弁48と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤により反応管を洗浄する反応管洗浄装置、自動分析装置、及び反応管洗浄装置の洗剤流路の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検試料と試薬とを撹拌することにより生成される反応液の、例えば吸光度等を測定することにより、被検試料の分析を行なう自動分析装置がある。自動分析装置には、純水等で希釈された酸性洗剤やアルカリ性洗剤によって反応管を洗浄する反応管洗浄装置が設けられている。反応管洗浄装置の酸性洗剤が流れる酸性洗剤ラインとアルカリ性洗剤が流れるアルカリ性洗剤ラインとは、固定されている。つまり、酸性洗剤ラインには酸性洗剤しか流れず、また、アルカリ性洗剤ラインにはアルカリ性洗剤しか流れない。
【0003】
このように洗剤ラインが固定されていると、各洗剤ラインには各洗剤の液性に固有の析出物が発生し、各洗剤ラインにはこれら析出物による詰まりが発生しやすい。洗剤ラインに析出物が発生すると、反応管の洗浄効果が低下してしまう。その結果、分析時において、反応液が汚染され、分析結果の信頼性が低下してしまう。また、洗剤ラインが完全に詰まってしまうと、洗剤を希釈しているポンプから水漏れが発生してしまう。
【0004】
このような析出物による洗剤ラインの詰まりを防止するためには、洗剤ラインを定期的に交換する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、洗剤ラインからの析出物の発生を防止することが可能な反応管洗浄装置、自動分析装置、及び反応管洗浄装置の洗剤流路の洗浄方法。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に係る反応管洗浄装置は、複数の洗剤を収容する複数の洗剤容器と、前記複数の洗剤が流通する複数の流路と、前記複数の洗剤を前記複数の洗剤容器からそれぞれ吸入し前記複数の流路へ吐出する複数のポンプと、前記複数の流路にそれぞれつながれ、前記各流路を流通する前記各洗剤で反応管を洗浄する複数の洗浄部と、前記複数のポンプと前記複数の流路との間の接続を切り替える弁と、を具備する。
【0007】
本発明のある局面に係る自動分析装置は、被検試料を保持するサンプラと、試薬を保持する試薬庫と、反応管を保持する反応ディスクと、前記被検試料と前記試薬とを前記反応管に分注し反応液を生成する反応液生成機構と、前記生成された反応液を分析する分析装置と、前記反応管を洗浄する反応管洗浄装置とを具備し、前記反応管洗浄装置は、複数の洗剤を収容する複数の洗剤容器と、前記複数の洗剤が流通する複数の流路と、前記複数の洗剤を前記複数の洗剤容器からそれぞれ吸入し前記複数の流路へ吐出する複数のポンプと、前記複数の流路にそれぞれつながれ、前記各流路を流通する前記各洗剤で反応管を洗浄する複数の洗浄部と、前記複数のポンプと前記複数の流路との間の接続を切り替える弁と、を有する。
【0008】
本発明のある局面に係る反応管洗浄装置の洗剤流路の洗浄方法は、酸性洗剤を収容する酸性洗剤容器と、前記酸性洗剤が流通する酸性洗剤流路と、前記酸性洗剤を前記酸性洗剤容器から吸入し前記酸性洗剤流路へ吐出する酸性洗剤ポンプと、前記酸性洗剤流路につながれ、前記酸性洗剤で反応管を洗浄する酸性洗剤洗浄部と、アルカリ性洗剤を収容するアルカリ性洗剤容器と、前記アルカリ性洗剤が流通するアルカリ性洗剤流路と、前記アルカリ性洗剤を前記アルカリ性洗剤容器から吸入し前記アルカリ性洗剤流路へ吐出するアルカリ性洗剤ポンプと、前記アルカリ性洗剤流路につながれ、前記アルカリ性洗剤で反応管を洗浄するアルカリ性洗剤洗浄部と、前記酸性洗剤ポンプ及び前記アルカリ性洗剤ポンプと、前記酸性洗剤流路及び前記アルカリ性洗剤ポンプとの間の接続を切り替える弁と、を具備する反応管洗浄装置の洗剤流路の洗浄方法であって、前記弁を動作させて前記接続を切り替えることによって前記酸性洗剤を前記アルカリ性洗剤流路へ、前記アルカリ性洗剤を前記酸性洗剤流路へ流通させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗剤ラインからの析出物の発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態を説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る自動分析装置1の全体構成を示す斜視図である。図1に示すように、自動分析装置1は、被検試料の各種成分と反応する試薬が納められている複数の試薬ボトルを収納した第1試薬ラック及び第2試薬ラック各々を設置可能な第1試薬庫12及び第2試薬庫14と、円周状に複数の反応管16を配置した反応ディスク18と、被検試料が納められた被検試料容器がセットされるディスクサンプラ20とを有する。
【0012】
第1試薬庫12、第2試薬庫14、反応ディスク18、及びディスクサンプラ20は、それぞれ駆動装置により回動される。測定に必要な試薬は、第1試薬ラック又は第2試薬ラックに収納されている試薬ボトルから、第1分注アーム22又は第2分注アーム24を用いて反応ディスク18上の反応管16に分注される。
【0013】
ディスクサンプラ20上に配置されている被検試料容器に納められた被検試料は、サンプリングアーム26のサンプリングプローブにより、反応ディスク18上の反応管16に分注される。被検試料と試薬とが分注された反応管16は、反応ディスク18の回動により撹拌位置まで移動し、撹拌ユニット28により被検試料と試薬とが撹拌され反応液が生成される。その後、測光ユニット30は、測光位置まで移動した反応管16に光を照射して反応管16内の反応液の吸光度変化を測定することにより、被検試料の成分分析を行なう。また、電極ユニット32は、イオン選択性電極と参照電極とを用いて、電解質測定位置まで移動した反応管16内の反応液の起電力を測定することにより、被検試料の電解質分析を行う。これら被検試料の分析が終了すると、反応管洗浄装置34は、反応管16の反応液を廃棄し、反応管16を酸性洗剤の原液を純水で希釈した酸性洗剤(以下、酸性洗剤液と呼ぶ)とアルカリ性洗剤の原液を純水で希釈したアルカリ性洗剤(以下、アルカリ性洗剤液と呼ぶ)とで洗浄する。
【0014】
反応管洗浄装置34は、酸性洗剤液が流通する酸性洗剤ラインとアルカリ性洗剤液が流通するアルカリ性洗剤ラインとを有する。この酸性洗剤ラインとアルカリ性洗剤ラインとを固定していると、すなわち、酸性洗剤ラインに酸性洗剤液しか流さず、また、アルカリ性洗剤ラインにアルカリ性洗剤液しか流さないと、各洗剤ラインに液性固有の析出物が発生しやすい。
【0015】
酸性洗剤ラインには、酸性洗剤液に起因する析出物、例えば、希釈に用いる純水中の好酸性微生物が酸性洗剤成分を栄養源として繁殖する場合がある。また、アルカリ性洗剤ラインには、アルカリ性洗剤液に起因する析出物、例えば、希釈に用いる純水中の金属イオンと反応して水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が発生する場合がある。
【0016】
酸性洗剤ラインに析出しやすい好酸性微生物、例えば糸状菌の至適発育pHは5〜6である。従って強アルカリ下では、糸状菌等の好酸性微生物は成育不可能である。また、アルカリ性洗剤ラインに析出しやすい金属水酸化物は、酸性下では溶解する。
【0017】
そこで、反応管洗浄装置34は、酸性洗剤ラインにアルカリ性洗剤液を、アルカリ性洗剤ラインに酸性洗剤液を流すことを可能とする構成を有する。
【0018】
図2は、反応管洗浄装置34の一部の構成を示す図である。純水タンク36は純水を収容し、酸性洗剤ボトル38は酸性洗剤の原液を収容し、アルカリ性洗剤ボトル40はアルカリ性洗剤の原液を収容する。酸性洗剤ポンプ42は、酸性洗剤ボトル38から酸性洗剤の原液を、純水タンク36から純水を吸入し、酸性洗剤の原液を純水により希釈し、酸性洗剤液を酸性洗剤ラインSLに吐出する。アルカリ性洗剤ポンプ44は、アルカリ性洗剤ボトル40からアルカリ性洗剤の原液を、純水タンク36から純水を吸入し、アルカリ性洗剤の原液を純水により希釈し、アルカリ性洗剤液をアルカリ性洗剤ラインALに吐出する。酸性洗剤ラインSLは、酸性洗剤ポンプ42と反応管洗浄ユニット46の酸性洗剤ノズル46sとを接続する。アルカリ性洗剤ラインALは、アルカリ性洗剤ポンプ44と反応管洗浄ユニット46のアルカリ性洗剤ノズル46aとを接続する。
【0019】
反応管洗浄ユニット46は、例えば、図3に示すような構造を有する。反応管洗浄ユニット46は、被検試料の分析が終わった反応管16内の反応液を、高濃度廃液ノズル46hによって排出する。次に、反応管洗浄ユニット46は、アルカリ性洗剤ノズル46aにより反応管16にアルカリ性洗剤液を吐出し、吐出されたアルカリ性洗剤液を吸入する。次に、反応管洗浄ユニット46は、酸性洗剤ノズル46sにより反応管16に酸性洗剤液を吐出し、吐出された酸性洗剤液を吸入する。次に、反応管洗浄ユニット46は、第1水ノズル46iにより反応管16に水を吐出し、吐出された水を吸入する。次に、反応管洗浄ユニット46は、第2水ノズル46nにより反応管16に水を吐出し、吐出された水を吸入する。そして、反応管洗浄ユニット46は、乾燥ノズル46kにより反応管16を乾燥させる。乾燥された反応管16は、次の分析に再利用される。なお、高濃度廃液ノズル46h、第1水ノズル46i、及び第2水ノズル46nに関する配管系は、従来装置と同様なので簡単のため図2に図示していない。
【0020】
図2に示すように、二方弁48は、酸性洗剤ラインSLとアルカリ性洗剤ラインALとを接続する接続ラインCLに設けられる。酸性洗剤ラインSLと接続ラインCLの接続点を接続点P1、アルカリ性洗剤ラインALと接続ラインCLとの接続点をP2とする。二方弁48は、制御部49からの通電によって、開閉される。例えば、非通電時において二方弁48は、閉状態であり、接続ラインCLを閉鎖する。通電時において二方弁48は、開状態であり、接続ラインCLを開放する。つまり制御部49は、通電によって二方弁48を動作させることにより、各洗剤液の流れを制御する。具体的には、制御部49は、酸性洗剤液の流通ラインを酸性洗剤ラインSLのみから両洗剤ラインSL及びALへ切り替えることが可能である。また、アルカリ性洗剤液の流通ラインをアルカリ性洗剤ラインALのみから両洗剤ラインSL及びALへ切り替えることが可能である。
【0021】
被検試料の分析中、制御部49による二方弁48の開閉動作は行なわれず、二方弁48は閉状態のままである。分析終了後における両洗浄ラインSL及びALの洗浄中等に、二方弁48の開閉動作が行われる。
【0022】
以下、両洗浄ラインSL及びALの洗浄時における制御部49による二方弁48の開閉動作を説明する。なお、両洗浄ラインSL及びALの洗浄開始時においては、酸性洗剤ポンプ42及びアルカリ性洗剤ポンプ44は稼働しており、酸性洗剤液が酸性洗剤ラインを、アルカリ性洗剤液がアルカリ性洗剤ラインを流れているものとする。
【0023】
まず、両洗浄ラインSL及びALに酸性洗剤液を流す場合について説明する。図4は、両洗浄ラインSL及びALに酸性洗剤液を流す場合における制御部49による二方弁48の開閉動作の流れを示す図である。
【0024】
制御部49は、被検試料の分析終了後、ライン洗浄(両洗浄ラインSL及びALに酸性洗剤液を流す)の要求を待機している(ステップSA1)。ユーザにより反応管洗浄装置34又は自動分析装置1に設けられたライン洗浄の開始ボタンが押されることを契機として、制御部49は、ライン洗浄を開始する(ステップSA1:YES)。まず制御部49は、アルカリ性洗剤ポンプ44を停止する(ステップSA2)。ステップSA2の時点では、アルカリ性洗剤は流れず、酸性洗剤液は酸性洗剤ポンプ42から酸性洗剤ラインSLを通って酸性洗剤ノズル46aへ流れている。ステップSA2にてアルカリ性洗剤ポンプ44を停止すると、制御部49は、二方弁48に通電することにより、二方弁48を開く(ステップSA3)。ステップSA3の時点で、酸性洗剤液は、接続点P1から接続ラインCLを通って接続点P2へ流れ、接続点P2からアルカリ性洗剤ラインALを通ってアルカリ性洗剤ノズル46aへ流れる。
【0025】
次に、両洗浄ラインSL及びALにアルカリ性洗剤液を流す場合について説明する。図5は、両洗浄ラインSL及びALにアルカリ性洗剤液を流す場合における制御部49による二方弁48の開閉動作の流れを示す図である。
【0026】
制御部49は、被検試料の分析終了後、ライン洗浄(両洗浄ラインSL及びALにアルカリ性洗剤液を流す)の要求を待機している(ステップSB1)。ユーザにより反応管洗浄装置34又は自動分析装置1に設けられたライン洗浄の開始ボタンが押されることを契機として、制御部49は、ライン洗浄を開始する(ステップSB1:YES)。まず制御部49は、酸性洗剤ポンプ42を停止する(ステップSB2)。ステップSB2の時点では、酸性洗剤液は流れず、アルカリ性洗剤液はアルカリ性洗剤ポンプ44からアルカリ性洗剤ラインALを通ってアルカリ性洗剤ノズル46aへ流れている。ステップSB2にて酸性洗剤ポンプ42を停止すると、制御部49は、二方弁48に通電することにより、二方弁48を開く(ステップSB3)。ステップSB3の時点で、アルカリ性洗剤液は、接続点P2から接続ラインCLを通って接続点P1へ流れ、接続点P1から酸性洗剤ラインSLを通って酸性洗剤ノズル46sへ流れる。
【0027】
図4及び図5に記載のライン洗浄方法は、どちらを先に実施してもよい。ただ、両洗浄ラインSL及びALの析出物の発生を防止するためには、例えば、先に両洗浄ラインSL及びALに酸性洗剤液を流した後はアルカリ性洗剤液を流さなければならない。同様に、先に両洗浄ラインSL及びALにアルカリ性洗剤液を流した後は酸性洗剤液を流さなければならない。
【0028】
両洗浄ラインSL及びALに対して初めに酸性洗剤液を流し、次にアルカリ性洗剤液を流す場合、制御部49は、図4の動作を行い、所定時間経過後、図5のステップSB2〜ステップSB4を行い、最後にアルカリ性洗剤ポンプ44を稼働させる。また、両洗浄ラインSL及びALに対して初めにアルカリ性洗剤液を流し、次に酸性洗剤液を流す場合、制御部49は、図5の動作を行い、所定時間経過後、図4のステップSA2〜ステップSA4の動作を行い、最後に酸性洗剤ポンプ42を稼働させる。
【0029】
但し、両洗浄ラインSL及びALに対して片方の洗剤だけ流せばよい場合は、図4又は図5に記載の流れに沿って、片方の洗剤のみ流せばよい。
【0030】
なお、両洗浄ラインSL及びALの洗浄処理の開始時において、両ポンプ42及び44は稼働していない場合がある。その場合、二方弁48の切り替えを行なった後、酸性洗剤ポンプ42又はアルカリ性洗剤ポンプ44を稼働させればよい。
【0031】
上記構成により、第1実施形態に係る反応管洗浄装置34は、酸性洗剤ラインSLとアルカリ性洗剤ラインALとを接続する接続ラインCLを有しており、その接続ラインCLに二方弁48を設けている。このような構成により、酸性洗剤ラインSLにアルカリ性洗剤液を、アルカリ性洗剤ラインALに酸性洗剤液を流すことができる。従って、定期的にライン洗浄を行なうことによって、酸性洗剤ラインSLに発生した好酸性微生物を死滅させ、アルカリ性洗剤ラインALに発生した金属水酸化物を溶解することができる。かくして第1実施形態によれば、洗剤ラインSL及びALからの析出物の発生を防止することが可能となる。また、洗剤ラインSL及びALに析出物が発生しないことにより、反応管洗浄ユニット46による反応管16の洗浄効果が増し、その結果、分析結果の精度及び信頼性が向上する。また、洗剤ラインSL及びALを交換する必要がなくなり、洗剤ラインSL及びALの交換に係る手間やコストがなくなる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる構成を有する反応管洗浄装置50について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0033】
図6は、第2実施形態に係る反応管洗浄装置50の一部の構成を示す図である。図6に示すように、酸性洗剤ラインSLには第1三方電磁弁52が設けられ、アルカリ性洗剤ラインALには第2三方電磁弁54が設けられている。第1三方電磁弁52とアルカリ性洗剤ラインALの接続点P3との間は、第1接続ラインILによって接続され、第2三方電磁弁54と酸性洗剤ラインSLの接続点P4との間は、第2接続ラインNLによって接続されている。
【0034】
第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54の開閉動作は、制御部56による通電によって制御される。図5中の第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54に付した記号は、それぞれ以下の意味を有する。
NO(ノーマルオープン)…通電時において開状態、非通電時において閉状態
NC(ノーマルクローズ)…通電時において閉状態、非通電時において開状態
C(共通孔) …常に開状態
つまり、第1三方電磁弁52の開閉により、酸性洗剤液の流通ラインを酸性洗剤ラインSLからアルカリ性洗剤ラインALへ切り替えられる。また、第2三方電磁弁54の開閉により、アルカリ性洗剤液の流通ラインをアルカリ性洗剤ラインALから酸性洗剤ラインSLへ切り替えられる。
【0035】
制御部56による第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54の制御は、例えば、被検試料の分析終了後における両洗浄ラインSL及びALの洗浄中に行われる。以下、両洗浄ラインSL及びALの洗浄時における制御部56による第1三方電磁弁52、第2三方電磁弁54の制御動作を説明する。なお、両洗浄ラインSL及びALの洗浄開始時においては、酸性洗剤ポンプ42及びアルカリ性洗剤ポンプ44は稼働しており、酸性洗剤液が酸性洗剤ラインを、アルカリ性洗剤液がアルカリ性洗剤ラインを流れているものとする。
【0036】
まず図7を参照しながら、アルカリ性洗剤ラインALに酸性洗剤液を流す場合について説明する。
【0037】
制御部56は、被検試料の分析終了後、ライン洗浄(アルカリ性洗剤ラインALに酸性洗剤液を流す)の要求を待機している(ステップSC1)。ユーザにより反応管洗浄装置50又は自動分析装置1に設けられたライン洗浄の開始ボタンが押されることを契機として、制御部56は、ライン洗浄を開始する(ステップSC1:YES)。まず制御部56は、アルカリ性洗剤ポンプ44を停止する(ステップSC2)。ステップSC2の時点では、アルカリ性洗剤液は流れず、酸性洗剤液は酸性洗剤ポンプ42から酸性洗剤ラインSLを通って酸性洗剤ノズル46sへ流れている。ステップSC2にてアルカリ性洗剤ポンプ44を停止すると、制御部56は、第1三方電磁弁52に通電することにより、第1三方電磁弁52を切り替える(ステップSC3)。ステップSV3の時点で、酸性洗剤液は、第1三方電子弁52から第1接続ラインILを通って接続点P3へ流れ、接続点P3からアルカリ性洗剤ラインALを通ってアルカリ性洗剤ノズル46aへ流れる。
【0038】
次に図7を参照しながら、酸性洗剤ラインSLにアルカリ性洗剤液を流す場合について説明する。
【0039】
制御部56は、分析終了後、ライン洗浄(酸性洗剤ラインSLにアルカリ性洗剤液を流す)の要求を待機している(ステップSD1)。ユーザにより反応管洗浄装置50又は自動分析装置1に設けられたライン洗浄の開始ボタンが押されることを契機として、制御部56は、ライン洗浄を開始する(ステップSD1:YES)。まず制御部56は、酸性洗剤ポンプ42を停止する(ステップSD2)。ステップSD2の時点では、酸性洗剤液は流れず、アルカリ性洗剤液はアルカリ性洗剤ポンプ44からアルカリ性洗剤ラインALを通ってアルカリ性洗剤ノズル46aへ流れる。ステップSD2にて酸性洗剤ポンプ42を停止すると、制御部56は、第2三方電磁弁54に通電することにより、第2三方電磁弁54を切り替える(ステップSD3)。ステップSD3の時点で、アルカリ性洗剤液は、第2三方電子弁54から第2接続ラインNLを通って接続点P4へ流れ、接続点P4から酸性洗剤ラインSLを通って酸性洗剤ノズル46sへ流れる。
【0040】
図7及び図8に記載のライン洗浄方法は、第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54を個別に切り替える方法である。しかし、第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54を同時に切り替えることが可能である。
【0041】
次に、図9を参照しながら、第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54を同時に切り替えることにより、酸性洗剤ラインSLにアルカリ性洗剤液を、アルカリ性洗剤ラインALに酸性洗剤液を同時に流す場合について説明する。
【0042】
制御部56は、分析終了後、ライン洗浄(酸性洗剤ラインSLにアルカリ性洗剤液を、アルカリ性洗剤ラインALに酸性洗剤液を流す)の要求を待機している(ステップSE1)。ユーザにより反応管洗浄装置50又は自動分析装置1に設けられたライン洗浄の開始ボタンが押されることを契機として、制御部56は、ライン洗浄を開始する(ステップSE1:YES)。まず制御部56は、第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54に同時に通電することにより、第1三方電磁弁52及び第2三方電磁弁54を切り替える(ステップSE2)。ステップSE2の時点で、酸性洗剤液は、酸性洗剤ポンプ42から酸性洗剤ラインSLを通って第1三方電磁弁52へ流れ、第1三方電子弁52から第1接続ラインILを通って接続点P3へと流れ、接続点P3からアルカリ性洗剤ラインALを通ってアルカリ性洗剤ノズル46aへ流れる。また、アルカリ性洗剤液は、アルカリ性洗剤ポンプ44からアルカリ性洗剤ラインALを通って第2三方電磁弁54へ流れ、第2三方電子弁54から第2接続ラインNLを通って接続点P4へ流れ、接続点P4から酸性洗剤ラインSLを通って酸性洗剤ノズル46sへ流れる。
【0043】
なお、両洗浄ラインSL及びALの洗浄処理の開始時において、両ポンプ42及び44は稼働していない場合がある。その場合、第1三方電磁弁52又は/及び第2三方電磁弁54の切り替えを行なった後、酸性洗剤ポンプ42又は/及びアルカリ性洗剤ポンプ44を稼働させればよい。
【0044】
上記構成により、第2実施形態に係る反応管洗浄装置50は、酸性洗剤ラインSLに第1三方電磁弁52を、アルカリ性洗剤ラインALに第2三方電磁弁54を有し、第1三方電磁弁52とアルカリ性洗剤ラインALとの間を接続する第1接続ラインIL、第2三方電磁弁54と酸性洗剤ラインSLとの間を接続する第2接続ラインNLを有する。このような構成により、酸性洗剤ラインSLにアルカリ性洗剤液を、アルカリ性洗剤ラインALに酸性洗剤液を流すことができる。かくして第2実施形態によれば、洗剤ラインSL及びALからの析出物の発生を防止することが可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では、洗剤ラインは酸性洗剤ラインSLとアルカリ性洗剤ラインALとの2系統であるとした。しかしながら本発明は、これに限定されず、洗剤ラインは3系統以上であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、洗剤は酸性洗剤及びアルカリ性洗剤であるとした。しかしながら本発明はこれに限定されず、例えば、中性洗剤を用いる場合にも本発明は適用可能である。
【0047】
また、上記本実施形態では、反応管洗浄装置34、50は、純水が収容されている純水タンク36、酸性洗剤の原液が収容されている酸性洗剤ボトル38、及びアルカリ性洗剤の原液が収容されているアルカリ性洗剤ボトル40を有し、酸性洗剤の原液を純水で希釈し、又、アルカリ性洗剤の原液を純水で希釈するとした。しかしながら本発明はこれに限定されず、反応管洗浄装置は、純水が収容されている純水タンク36を有さず、酸性洗剤液を収容する酸性洗剤ボトル、アルカリ性洗剤液を収容するアルカリ性洗剤ボトルを有するとしてもよい。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の構成を示す斜視図。
【図2】図1の反応管洗浄装置の一部の構成を示す図。
【図3】図2の反応管洗浄ユニットの構成を示す図。
【図4】図2の反応管洗浄装置の両洗浄ラインに酸性洗剤液を流す場合における反応管洗浄装置の動作の流れを示す図。
【図5】図2の反応管洗浄装置の両洗浄ラインにアルカリ性洗剤液を流す場合における反応管洗浄装置の動作の流れを示す図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る反応管洗浄装置の一部の構成を示す図。
【図7】図6の反応管洗浄装置のアルカリ性洗剤ラインに酸性洗剤液を流す場合における反応管洗浄装置の動作の流れを示す図。
【図8】図6の反応管洗浄装置の酸性洗剤ラインにアルカリ性洗剤液を流す場合における反応管洗浄装置の動作の流れを示す図。
【図9】図6の反応管洗浄装置のアルカリ性洗剤ラインに酸性洗剤液を、酸性洗剤ラインにアルカリ性洗剤液を流す場合における反応管洗浄装置の動作の流れを示す図。
【符号の説明】
【0050】
1…自動分析装置、12…第1試薬庫、14…第2試薬庫、16…反応管、18…反応ディスク、20…ディスクサンプラ、22…第1分注アーム、24…第2分注アーム、26…サンプリングアーム、28…撹拌ユニット、30…測光ユニット、32…電極ユニット、34…第1実施形態に係る反応管洗浄装置、36…純水タンク、38…酸性ボトル、40…アルカリ性ボトル、42…酸性洗剤ポンプ、44…アルカリ性洗剤ポンプ、46…反応管洗浄ユニット、46a…アルカリ性洗剤ノズル、46s…酸性洗剤ノズル、48…二方弁、49…第1実施形態に係る制御部、SL…酸性洗剤ライン、AL…アルカリ性洗剤ライン、CL…接続ライン、50…第2実施形態に係る反応管洗浄装置、52…第1三方電磁弁、54…第2三方電磁弁、56…第2実施形態に係る制御部、IL…第1接続ライン、NL…第2接続ライン、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤を収容する複数の洗剤容器と、
前記洗剤が流通する複数の流路と、
前記洗剤を前記複数の洗剤容器からそれぞれ吸入し前記複数の流路へ吐出する複数のポンプと、
前記複数の流路にそれぞれつながれ、前記各流路を流通する前記洗剤で反応管を洗浄する複数の洗浄部と、
前記複数のポンプと前記複数の流路との間の接続を切り替える弁と、
を具備する反応管洗浄装置。
【請求項2】
前記弁を動作させて前記接続を切り替える制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の反応管洗浄装置。
【請求項3】
前記複数の洗剤は、第1の洗剤と第2の洗剤とであり、
前記複数の流路は、第1の流路と第2の流路とであり、
前記複数のポンプは、第1のポンプと第2のポンプとであり、
前記弁は、前記第1の流路と第2の流路とを接続する、前記第1の流路と前記第2の流路との間を閉鎖又は開放する二方弁であり、
前記制御部は、前記第1の洗剤を前記第1の流路と第2の流路とに流通させるように、又は、前記第2の洗剤を前記第1の流路と前記第2の流路とに流通させるように、前記二方弁と前記第2のポンプ又は前記第1のポンプとを切り替える、
ことを特徴とする請求項2記載の反応管洗浄装置。
【請求項4】
前記複数の洗剤は、第1の洗剤と第2の洗剤とであり、
前記複数の流路は、第1の流路と第2の流路とであり、
前記複数のポンプは、第1のポンプと第2のポンプとであり、
前記弁は、前記第1のポンプと前記第1の流路と前記第2の流路とを接続する、前記第1の流路を開放し前記第2の流路を閉鎖する又は前記第1の流路を閉鎖し前記第2の流路を開放する第1の三方弁と、前記第2のポンプと前記第1の流路と前記第2の流路とを接続する、前記第2の流路を開放し前記第1の流路を閉鎖する又は前記第2の流路を閉鎖し前記第1の流路を開放する第2の三方弁とであり、
前記制御部は、前記第1の洗剤を前記第2の流路に、前記第2の洗剤を前記第1の流路に流通させるように前記第1の三方弁と前記第2の三方弁とを切り替える、
ことを特徴とする請求項2記載の反応管洗浄装置。
【請求項5】
前記2つの洗剤は、酸性の洗剤とアルカリ性の洗剤とであることを特徴とする請求項3又は4記載の反応管洗浄装置。
【請求項6】
被検試料を保持するサンプラと、試薬を保持する試薬庫と、反応管を保持する反応ディスクと、前記被検試料と前記試薬とを前記反応管に分注し反応液を生成する反応液生成機構と、前記生成された反応液を分析する分析装置と、前記反応管を洗浄する反応管洗浄装置とを具備する自動分析装置において、
前記反応管洗浄装置は、
複数の洗剤を収容する複数の洗剤容器と、
前記複数の洗剤が流通する複数の流路と、
前記複数の洗剤を前記複数の洗剤容器からそれぞれ吸入し前記複数の流路へ吐出する複数のポンプと、
前記複数の流路にそれぞれつながれ、前記各流路を流通する前記各洗剤で反応管を洗浄する複数の洗浄部と、
前記複数のポンプと前記複数の流路との間の接続を切り替える弁と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
酸性洗剤を収容する酸性洗剤容器と、
前記酸性洗剤が流通する酸性洗剤流路と、
前記酸性洗剤を前記酸性洗剤容器から吸入し前記酸性洗剤流路へ吐出する酸性洗剤ポンプと、
前記酸性洗剤流路につながれ、前記酸性洗剤で反応管を洗浄する酸性洗剤洗浄部と、
アルカリ性洗剤を収容するアルカリ性洗剤容器と、
前記アルカリ性洗剤が流通するアルカリ性洗剤流路と、
前記アルカリ性洗剤を前記アルカリ性洗剤容器から吸入し前記アルカリ性洗剤流路へ吐出するアルカリ性洗剤ポンプと、
前記アルカリ性洗剤流路につながれ、前記アルカリ性洗剤で反応管を洗浄するアルカリ性洗剤洗浄部と、
前記酸性洗剤ポンプ及び前記アルカリ性洗剤ポンプと、前記酸性洗剤流路及び前記アルカリ性洗剤ポンプとの間の接続を切り替える弁と、を具備する反応管洗浄装置の洗剤流路の洗浄方法であって、
前記弁を動作させて前記接続を切り替えることによって前記酸性洗剤を前記アルカリ性洗剤流路へ、前記アルカリ性洗剤を前記酸性洗剤流路へ流通させる、
ことを特徴とする反応管洗浄装置の洗剤ラインの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−115661(P2009−115661A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290034(P2007−290034)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】