説明

反応試薬区域に流体を均一に塗布する方法

【課題】支持された乾燥試薬を含有する区域に、その区域での試料の流れを所定の均一なやり方で向け、空気のパージを促進する構造的特徴を設けることにより、マイクロ流体装置を用いて得られる分析結果を改善する。
【解決手段】10μL以下の生物学的液体試料を分析試験するための、試薬又はコンディショニング剤が基材上に固定化されている少なくとも一つの空間を含むマイクロ流体装置であって、前記試薬を含有する前記基材上に前記試料を所定の均一なやり方で導き、前記空間から空気を排除するための、前記空間中に配置された前記試料の流れに対して直角に配置された柱状物の二つ以上の列を有する柱状物の均一な配列である微細構造を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、マイクロ流体装置、特に、生物学的試料の分析に使用されるマイクロ流体装置に関する。このような装置は、血液、尿などの非常に小さな試料を受けるためのものである。試料は、試料中に見いだされる分析対象物の存在及び量を示すことができる試薬と接触させられる。マイクロ流体装置は、高速分析に使用されて、それにより、生物学的試料を中央研究所に送る際に免れない遅れを避けるためのものである。
【0002】
患者の近くでの分析のための多くの装置が提案されており、そのいくつかを以下に論じる。一般に、このような装置は、小さな試料、通常は0.1〜200μLの試料しか使用しない。マイクロ流体装置の発展とともに、必要とされる試料は、より小さく、通常は約0.1〜20μLになり、これはこのような使用にとって好ましい側面である。しかし、より小さな試料は難題を招く。正確かつ再現精度の高い結果を得なければならないならば、試料の量が正確に計測され、試薬に送達されなければならない。特に、試薬が乾燥しており、たとえば基材に付着している場合、支持された試薬に試料を分散させ、反応チャンバから空気をパージすることが決定的な要因である。本発明は、これら及び他の課題を解決しようとし、試料流体を試薬と均一に接触させるための手段を提供する。
【0003】
多くの従来装置は、毛細管通路を使用して試料を試薬区域に移し、過剰な試料が別個の空間に引き込まれていた。通常、これらの装置は、存在する試薬の量を画定する試薬チャンバを含むものであった。試薬と接触する試料の量が正しいということ、及び試料の分散が均一であるということが仮定されていた。このような装置が正確かつ再現精度の高い結果を提供するかどうかにかかわらず、分析される試料のサイズが非常に小さく、たとえば約2μL未満になるにつれ、所望の性能を得ることがますます困難になるということがわかった。
【0004】
Blattらの米国特許第4,761,381号は、約5〜10μLの試料に使用される装置を記載している。試料の一部が試薬チャンバを満たす間、過剰分が毛細管通路を介して隣接空間に引き込まれる。通気孔を介して空気がパージされたとき試薬チャンバを満たすと考えられる、試料を分散させるための手段は設けられていない。
【0005】
Charltonらの米国特許第5,208,163号は、約2μL以上の試料とで使用するための同様な装置を記載している。この場合もまた、試料の一部が試薬区域に送達され、同時に過剰分が毛細管を通じて抜き出される。この装置の一つの特徴は、全血試料から赤血球をろ別するための繊維パッドの使用である。しかし、試料を試薬領域上に均一に分散させるための試みは成されていない。
【0006】
Weiglの米国特許公開公報第2001/0046453号は、血液型決定に使用される装置を記載している。小さな試料が液体試薬と接触すると、毛細管路を通って廃棄チャンバに入る間に反応が起こる。このような装置は、上記特許で提供されている種類の反応チャンバを有しない。
【0007】
Kelloggらの米国特許第6,063,589号は、小さな試料を分析するためのマイクロ流体装置の冗長な説明を含むが、試料流体が試薬区域上に均一に分散することを保証することに関する課題を解決しようとしていない。
【0008】
Mushoらの米国特許第5,202,261号及び第5,250,439号は、彼らの装置が1μL未満の試料に有用であると述べている。分析される試料は、毛細管を介して試薬含有領域に通されるが、試料を計量してはない。試料が試薬区域で均一に分散することを保証するための手段は設けられていない。
【0009】
Nilssonらの米国特許第5,286,454号は、試料を液体試薬と混合することによって試料を分析するためのキュベットを記載している。小さな液体試料を乾燥試薬と接触させることは論じられていない。
【0010】
Shanksらの米国特許第5,141,868号は、計測のために試料が毛細管通路に引き込まれる電気化学的装置を開示している。試料と乾燥試薬との接触は、この装置には含まれない。
【0011】
Mooreの米国特許第5,141,868号は、試料を細分し、多数の毛細管によって試薬パッド上に分散させる装置を記載している。乾燥試薬が使用されているが、毛細管によって提供される分散以外、パッド上での分散は起こらない。
【0012】
BlattらのEP287,883は、試料が試薬区域に提供され、その間に毛細管路が過剰な試薬を除くという点でBlattらの上記381号米国特許と概念が類似する装置を開示している。先と同じく、乾燥試薬上に試料を均一に分散させるための配慮はされていない。
【0013】
Tanらは、Anal. Chem. 1999, 71, 1464-1468で、粒子を小さな試料から取り出さなければならない場合、たとえば赤血球を全血から取り出さなければならない場合に使用するための微細加工フィルタを記載している。マイクロフィルタ構造は、マイクロ流体装置に含まれるものであった。この論文は、ろ過後の試料を乾燥試薬と接触させることに関するものではなかった。
【0014】
米国特許第6,296,126号に開示されている発明の一つは、毛細管から液体を取り出し、自由に流れる液体として収集チャンバに集めることを支援するためのくさび形の切欠きの使用である。
【0015】
本発明者らは、非常に小さな試料がマイクロ流体装置で使用されるときには、試料を乾燥試薬と接触させるための手段を提供することが重要であることを見いだした。そのための方法を以下で詳細に記載する。
【0016】
発明の概要
本発明は、特に、基材上に配置された試薬上に10μL以下の小さな試料を均一に分散させ、それにより、そのような試料中の分析対象物の正確かつ再現精度の高い分析試験を可能にするように適合された微細構造の、マイクロ流体装置における使用に関する。
【0017】
一つの態様で、本発明は、小さな試料と試薬との接触を促進するためにそのような微細構造を含むマイクロ流体装置である。一つの好ましい微細構造は、試薬を含有する基材上に試料を分散させるように整列した柱状物の配列である。柱状物の配列は、試料の流れのおおよその方向に対して直角に整列した一連の互い違いの柱状物であってもよい。一部の実施態様では、柱状物は、流れを試薬に導くように設計されていてもよい。たとえば、柱状物は、試薬を含有する基材に対して垂直に整列したくさび形の切欠きを含むことができる。他の有用な微細構造としては、液体の流れを均一な最前部で分散させるための、試料の流れに対して平行に配置された溝又は堰状物がある。平坦域に配置された試薬に向かって試料が上向きに流れる傾斜路を設けてもよい。
【0018】
本発明の一つの実施態様は、血液試料中の糖化ヘモグロビンの量を分析試験するためのマイクロ流体装置である。もう一つの実施態様は、血液試料中のグルコースの量を分析試験するためのマイクロ流体装置である。
【0019】
もう一つの態様で、本発明は、基材上に配置された試薬上に10μL以下の小さな液体試料を分散させる方法である。
【0020】
一部の実施態様では、本発明は、一連の反応を実施するための細長い吸収性ストリップに液体試料を導入する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1のマイクロ流体チップを示す図である。
【図2】実施例2のマイクロ流体チップを示す図である。
【図3】実施例4のマイクロ流体チップの断面図である。
【図4】実施例4のマイクロ流体チップで使用される微細構造を示す図である。
【0022】
好ましい実施態様の説明
マイクロチャネル中の流れ
本発明を使用する装置は通常、当該分野で以前の研究者たちによって提案されてきたものよりも小さな通路を使用する。特に、本発明で使用される通路は、幅が約10〜500μm、好ましくは約20〜100μmの範囲であり、毛細管力を使用して流体を動かす場合、他者によっては、一桁大きな通路が一般に使用されている。小さめの通路が、分析される試料中の成分を効果的にろ別することができるため、このような通路の最小寸法は約5μmであると考えられる。本発明で好ましいサイズの通路は、毛細管力だけで液体試料を移動させることを可能にする。また、試料流体に対して疎水性になるように処理しておいた毛細管壁によって移動を止めることも可能である。流れに対する抵抗には、たとえばポンピング、真空、電気浸透、加熱、吸収材、追加的な毛細管力又は遠心力によって圧力差を加えることによって打ち勝つことができる。その結果、実施される分析による要求に応じて、液体を計量し、装置の一つの領域から別の領域に移動させることができる。
【0023】
遠心力、流体の物性、流体表面張力、毛細管壁の界面エネルギー、毛細管サイズ及び分析される流体に含まれる粒子の界面エネルギーを関連させるためには、数学モデルを使用することができる。毛細管を通過する流体の流量及び所望の疎水性又は親水性の程度を予測することが可能である。これらの要因どうしの関係から以下の一般原則を導くことができる。
【0024】
所与の通路の場合、液体と通路表面との相互作用が液体の移動に対して重大な影響を及ぼすこともあるし、及ぼさないこともある。通路の表面対容積比が大きい、すなわち断面積が小さい場合、液体と通路の壁との相互作用が非常に重要になる。これは、約200μm未満の公称直径の通路に関して、液体試料及び壁の界面エネルギーに対して毛細管力が優勢である場合に特に当てはまる。壁が液体で濡れている場合、液体は、外力を受けることなく、通路中を移動する。逆に、壁が液体で濡れていない場合、液体は、通路から抜けようとする。これらの一般的な傾向を利用すると、液体を通路中で移動させたり、異なる断面積を有する別の通路との接合部で移動を止めたりすることができる。液体が静止しているならば、圧力差によって、たとえば遠心力を加えることによって動かすことができる。異なる断面積又は界面エネルギーを有する通路どうしの接合部で必要な圧力差を誘発することができる、空気圧、真空、電気浸透、加熱、吸収材、さらなる毛細管力などを含む他の手段を使用してもよい。本発明では、液体が中を移動する通路は、これまで使用されてきたものよりも小さい。これは、結果として、より高い毛細管力を利用可能にし、毛細管ストッパに打ち勝たなければならない短い期間を除いて、外力を要することなく、毛細管力だけで液体を移動させることを可能にする。しかし、より小さな通路は本来、生物学的試料又は試薬の中の粒子による閉塞の影響を受け易い可能性がより高い。その結果、通路壁の界面エネルギーは、試験される試料流体、たとえば血液、尿などとの使用に関する要求に応じて調節される。この特徴は、より融通の利く分析装置設計を可能にする。装置は、従来使用されてきたディスクよりも小さくすることができ、より小さな試料とで作動することができる。しかし、より小さな試料を使用することは、本発明によって解決される新たな課題を招く。たとえば、装置中に捕らえられた空気が、充填不足をもたらしたり、下流側での液体取り扱い工程を妨害したりするおそれがある。特に重要なことは、試薬を含有する基材上への液体試料の分散である。
【0025】
マイクロ流体分析装置
本発明の分析装置は「チップ」と呼ぶこともできる。分析装置は一般に小さく平坦であり、典型的には約1〜2インチ四方(25〜50mm四方)であるか、半径が約40〜80mmのディスクである。試料の量は小さくなる。たとえば、検出試験ごとに約0.1〜10μLしか含まないが、試料の全量は10〜200μLの範囲である場合がある。試料流体のための溜めは、試料を容易に観察でき、試料の反応から生じる変化を適当な器具によって計測することができるよう、比較的幅広く浅くなる。相互接続する毛細管通路は通常、幅が10〜500μm、好ましくは20〜100μmの範囲であり、その形状は、通路を形成するために使用される方法によって決まる。通路の深さは少なくとも5μmであるべきである。
【0026】
毛細管及び試料溜めを形成することができるいくつかの方法、たとえば射出成形、レーザ融食、ダイヤモンド加工又はエンボス加工があるが、チップのコストを下げるために射出成形を使用することが好ましい。一般に、チップのベース部をカットして試料溜め及び毛細管の所望のネットワークを形成し、次いで試薬を所望の溜めに配置したのち、ベースの上にトップ部を取り付けてチップを完成させる。
【0027】
チップは、1回の使用ののち廃棄処分されるためのものである。したがって、可能な限り廉価であると同時に試薬及び分析される試料とで適合性である材料で製造される。大部分の場合、チップは、プラスチック、たとえばポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリレート又はポリウレタンで製造されるが、代替的に、ケイ酸塩、ガラス、ロウ又は金属から製造することもできる。
【0028】
毛細管通路は、液体試料又は試薬によって固体面に形成される接触角に関して定義される疎水性又は親水性に調節される。通常、表面は、接触角が90°未満であるならば親水性とみなされ、接触角が90°よりも大きいならば疎水性とみなされる。意図する試料流体との使用に備えて毛細管壁の界面エネルギー、すなわち親水性又は疎水性の程度を調節することが好ましい。たとえば、疎水性通路の壁への沈着物を防ぐため、又は液体が通路中に残らないことを保証するため。好ましくは、接触角を調節するため、プラズマ重合が通路表面で実施される。毛細管壁の界面エネルギーを制御するために、他の方法、たとえば親水性又は疎水性材料による被覆、グラフト又はコロナ処理を使用してもよい。本発明における大部分の通路の場合、液体が表面を濡らす傾向にあり、表面張力が液体を通路中で流れさせるため、表面は一般に親水性である。たとえば、毛細管通路の界面エネルギーは、水の接触角が、通路が全血と接触する場合には10°〜60°になり、通路が尿と接触する場合には25°〜80°になるよう、公知の方法によって調節することができる。
【0029】
毛細管路を通過する液体の移動は、通常、その名が示すように液体が毛細管路を通過して流れることを防ぐ毛細管ストッパによって妨げられる。毛細管通路が親水性であり、液流を促進するならば、疎水性の毛細管ストッパ、すなわち、疎水性の壁を有する小さめの通路を使用することができる。小さなサイズと非湿潤性の壁との組み合わせが液体の浸入に対抗する表面張力を生じさせるため、液体は疎水性ストッパを通過することができない。あるいはまた、毛細管が疎水性であるならば、試料溜めと毛細管との間にストッパは必要ない。試料溜め中の液体は、液体によって対抗する表面張力に打ち勝ち、液体を疎水性通路に通過させるのに十分な力、たとえば遠心力が加えられるまで、毛細管に入ることを妨げられる。このようなマイクロ流体チップの特徴は、液体の流れを開始させるために遠心力しか要らないということである。ひとたび疎水性通路の壁が液体と完全に接触すると、液体の存在が疎水性面に関連するエネルギー障壁を下げるため、対抗力は減少する。その結果、液体はもはや流れるために遠心力を要しない。必要ではないが、場合によっては、速やかな分析を促進するため、液体が毛細管通路を通って流れる間、遠心力を加え続けることが好都合であるかもしれない。
【0030】
毛細管通路が親水性であるとき、試料流体(水性であると仮定する)は当然、さらなる力を要することなく、毛細管を通って流れる。毛細管ストッパが必要であるならば、一つの代替方法は、上記のようにストッパとして働くことができるより狭められた疎水性区分を使用することである。毛細管が親水性であるとしても親水性ストッパを使用することもできる。このようなストッパは毛細管よりも幅広かつ深く「毛細管ジャンプ」を形成し、したがって、液体の表面張力が、液体の流れを促進する低めの力を生成する。毛細管と幅広のストッパとの間の寸法の変化が十分であるならば、液体は、毛細管ストッパへの入口で停止する。液体は、最終的にはストッパの親水性壁に沿って浸入するが、適切な形状設計により、壁が親水性であるとしてもストッパが効果的になるように、この動きを十分に遅らせることができることがわかった。
【0031】
疎水性ストッパが親水性毛細管中に位置している場合、疎水性ストッパの効果に打ち勝つために、圧力差が適用されなければならない。一般に、必要な圧力差は、液体の表面張力、親水性毛細管とのその接触角の余弦及び毛細管の寸法の変化の関数である。すなわち、大きい表面張力を有する液体は、小さい表面張力を有する液体よりも疎水性ストッパに打ち勝つために必要な力が少なくて済む。親水性毛細管の壁を濡らす、すなわち小さい接触角を有する液体は、より大きい接触角を有する液体よりも疎水性ストッパに打ち勝つために、より大きな力を要する。疎水性通路が小さければ小さいほど、加えなければならない力が大きくなる。
【0032】
親水性又は疎水性ストッパに打ち勝つために遠心力が加えられるチップを設計するためには、実験又は計算機フローシミュレーションを使用して、回転速度を調節することによって必要な力を提供することによって液体試料を必要に応じて動かすことができるよう、チップ上の液溜めの位置を定め、相互接続毛細管通路の大きさを決めることを可能にするのに有用な情報を提供することができる。
【0033】
マイクロ流体装置は、分析対象物を計測する分析手法の必要性に応じて多くの形態をとることができる。マイクロ流体装置は通常、乾燥又は液状の試薬又はコンディショニング材料を含有する溜めと接続する毛細管通路のシステムを用いる。分析手法は、試料を希釈し、分析対象物を後続の反応への用意のために予め反応させ、干渉性化合物を除去し、試薬を混合し、細胞を溶解し、生体分子を捕捉し、酵素反応を実施し、又は結合イベント、染色もしくは析出のためにインキュベートすることによる、計量される試料の準備を含むこともある。このような準備工程は、試料の計量の前、最中又は後に、ただし、分析対象物の計測を提供する反応を実施する前に実施することができる。
【0034】
試薬溜めへの試料の塗布
一部の溜めは、分析対象物の存在及び量を示すための反応に備えて試料をコンディショニングするための液体を含有する。他の溜めの中では、液体試料は、基材、たとえばろ紙製のパッド上に支持された試薬又はコンディショニング剤と接触する。このような場合、試薬又はコンディショニング剤は、実質的に乾燥しているか、他の方法で固定化される。応答は、存在する試料の量及び均一さならびに試薬又はコンディショニング剤に応答する成分の量に依存する。しかし、試薬又はコンディショニング剤の応答はまた、試料へのそのアクセスにも依存する。試薬又はコンディショニング剤が支持体上に均一に分散して試薬の濃度が溜めの中のいかなる場所ででも同じであると仮定するならば、均一な試料に対する試薬又はコンディショニング剤の応答もまた均一になる。すなわち、計測される全応答は、溜めの各領域の応答の合計になる。しかし、試料そのものが均一ではないか、試料が試薬上に均一に分散しないならば、計測される全応答は不正確になる。たとえば、試料により溜めから全ての空気が排除されないために、試薬の一部が試料に応答しないならば、あるいは、試料が、すべての試薬の上に分散しているが、均一には分散していないならば、一部の領域が他の領域よりも強く応答する。結果は、試料の含有量の正確な計測値である可能性は低い。本発明は、このような難題を解決する手段を提供する。
【0035】
試料が小さくなるにつれ、試薬含有基材への液体試料の導入がより困難になるということがわかった。試薬の量に比べて多量の液体で試薬含有基材を速やかに覆うことが可能である場合、試薬をパッド中に均一に導く特徴を提供することは重要でないかもしれない。しかし、多くの場合、試料の導入が、正確かつ信頼しうる分析結果を得るために重要であることがわかった。
【0036】
1種以上の試薬が付着している典型的な基材を考えてみる。試料中の成分との反応が、検出可能な応答、たとえば、UV、VIS、IRもしくは近IR波長での色、反射率、透過率もしくは吸収率の変化又はラマン、蛍光、化学発光もしくはリン光事象の変化又は電気化学的シグナル変換を生じさせる。試料中の多量の成分が反応するならば、かつ、特に応答が性質上定性的であるならば、基材表面上での試料の分散はさほど重要ではない。しかし、成分の量が試薬の量に対して小さいならば、応答が均一にならず、したがって、さほど正確には計測されないかもしれない。成分は、基材のうち、成分が基材に入るところの縁で反応し、基材の他の部分に達する前に使い尽くされてしまうかもしれない。あるいはまた、吸収性基材に引き込まれ、パッド中で不均一な応答を生じさせて、同じくさほど正確ではない計測をもたらすかもしれない。したがって、そのような状況では、正確かつ一貫した結果を出すためには、試料の分散を可能な限り均一にすべきであるということは明白である。
【0037】
他の状況では、基材は、液体試料の塗布に対して均一な応答を生じさせるとは予想されない。それどころか、試料は、細長い試薬区域の一端で吸収されたのち、毛細管作用によって試薬区域中を移動し、その中で一連の試薬と遭遇し、多様な応答を生じさせる。液体試料が一連の試薬をバイパスするようなかたちで液体試料を表面上で流れさせるべきではないことは明白である。また、試料は、基材の縁での毛細管作用によって細長い試薬区域の全部又は一部をバイパスすべきでもない。そのような状況では、細長い試薬区域への試料の導入は、入念に制御されなければならない。
【0038】
マイクロ流体チップ中の液体の流れは、毛細管力の使用及び、多くの状況では、液体の流れを生じさせる他の何らかの手段、たとえば遠心力の使用を含む。液体試料は、入口から、試料が計測され、洗液、緩衝剤などとの接触によってプレコンディショニングされたのち、試薬と反応して所望の応答を出すところの一つ以上のチャンバまで、毛細管通路を通って移動する。毛細管通路は通常、それらが接続するチャンバよりも小さい。したがって、試料は、比較的狭い通路からずっと幅広いチャンバに流れ込み、その中で、たとえば、試薬を含有する吸収性基材と接触する。比較的大きなチャンバに入り、吸収性基材の縁又は他の領域と接触し、そこから毛細管作用によって広がる液体の流れを視覚化することができる。明らかに、試薬と反応する試料中の成分の量、反応の速度及び試料が広がる速度が応答に影響する。理想的には、試料は、吸収性基材中に均一に分散し、試薬と均一に反応する。多くの場合、これは、試料の流れを吸収性基材に対して均一に導く微細構造を設けることなく達成することはできない。あるいはまた、吸収性パッドがクロマトグラフィーストリップである場合、試料は、ストリップ上で均一に送るではなく、ストリップの前縁と接触するように制限しなければならない。このような結果を効果的に達成することが本発明の目的である。
【0039】
微細構造
本明細書で使用する「微細構造」とは、マイクロリットルサイズの液体試料が、液体ではない、基材上に固定化されている試薬又はコンディショニング剤ともっとも効果的に接触することを保証するための手段に関する。通常、試薬又はコンディショニング剤は、多孔質支持体上に塗布し、乾燥させた液体であろう。必要に応じて液体試料を分散させ、同時に溜めから空気をパージすることは、様々なタイプの微細構造で実施することができる。「微細構造」とは、液体試料の流れをランダムではなく所定のやり方で試薬に導く、マイクロ流体チップ中に形成された構造的特徴をいう。「微細構造」とは対照的に、本明細書で使用する「基材」とは、試薬又はコンディショニング剤が付着されている、吸収性又は非吸収性の固体材料をいう。試薬含有基材は、微細構造とは別個であり、微細構造と接していてもよいし、接していなくてもよい。このような基材としては、セルロース、ニトロセルロース、プラスチック、たとえばポリアミド類及びポリエステル類、ガラスなどのような材料があり、紙、フィルム、膜、繊維などの形態で、中実又は多孔質の形態で製造されている。
【0040】
二つの好ましい微細構造を図4に見ることができる。液体が入口チャンバを直線的に通過することができないよう、柱状物の配列が配置されている。液体は、柱状物の配列を通過するとき、絶えず方向を変えるように強いられる。同時に、柱状物間の空間の寸法は、液体の流れを誘発する毛細管力を生じさせるのに十分な小ささである。試料液が柱状物の配列の中を急進するにつれ、空気が試薬区域からパージされる。有用である他のタイプの微細構造としては、円形、星形、三角形、四角形、五角形、八角形、六角形、七角形、楕円形、十字形もしくは長方形又はそれらを組み合わせたものであることができる断面形状を有する三次元柱状形がある。図4はまた、均一な液最前部を提供するために液流の方向に対して垂直に配置された溝又は堰状物を示す。二次元形状を有する微細構造、たとえば平坦域にある試薬まで上方又は下方に通じる傾斜路もまた有用である。そのような傾斜路は、移動する液を支援するために液流に対して平行な溝を含むこともできるし、カーブしていることもできる。
【0041】
微細構造の数及び位置は、特定の試薬に望まれる毛細管力ならびに流動を起こすべき方向及び場所に依存する。通常、微細構造の数が多いほど毛細管流が増す。一つの微細構造しか使用しないでもよい。
【0042】
微細構造は、流れを試薬に向けることを支援するためのさらなる幾何学的特徴を含んでもよいし、含まなくてもよい。これらの幾何学形状としては、円形、凸状又は凹状の縁、くぼみ又は溝及び部分毛細管がある。たとえば、各柱状物は、試薬を含有する基材上への液の移動を促進する一つ以上のくさび形の切欠きを含むことができる。このようなくさび形の切欠きは、米国特許第6,296,126号に示されている。
【0043】
用途
本発明のマイクロ流体装置には数多くの用途がある。分析は、血液、尿、水、唾液、髄液、腸液、食品及び血漿をはじめとする多くの生物学的流体の試料に対して実施することができる。血液及び尿が特に対象である。試験する流体の試料を試料溜めに付着させたのち、一つ以上の計量溜めの中で分析量になるまで計量する。計量した試料を、タンパク質、細胞、小さな有機分子又は金属をはじめとする分析対象物に関して分析試験する。そのようなタンパク質の例としては、アルブミン、HbAlc、プロテアーゼ、プロテアーゼ抑制因子、CRP、エステラーゼ及びBNPがある。分析することができる細胞としては、大腸菌、シュードモナス、白血球、赤血球、ピロリ菌、A群連鎖球菌、クラミジア及び単核症がある。検出する金属としては、鉄、マンガン、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムがある。
【0044】
多くの用途では、試薬と試料との反応によって発する色を計測する。また、チップ中の小さなくぼみに配置した電極を使用すると、試料の電気的計測を実施することも可能である。そのような分析の例としては、電流滴定、インピーダンス測定、電気測定検出法に基づく電気化学的シグナル変換器がある。例としては、酸化及び還元化学反応の検出及び結合事象の検出がある。
【0045】
本発明のチップで使用することができる様々な試薬方法がある。試薬は、発されるシグナルの強さが臨床試料中で計測される分析対象物の濃度に比例するような変化を受ける。これらの試薬としては、指示染料、金属、酵素、ポリマー、抗体、電気化学的に反応性の成分及び基材上に乾燥付着させた他の様々な化学物質がある。これらの試薬を本発明のチップの試薬溜めに導入すると、試薬ストリップを使用する分析で遭遇する課題を解決することができる。
【0046】
分析対象物を第一の溜めの中で試薬と反応させたのち、反応した試薬をさらなる反応のために第二の溜めに送る分離工程が可能である。加えて、試薬を第一の溜めに再懸濁させ、反応のために第二の溜めに移すこともできる。分析対象物又は試薬を第一又は第二の溜めに捕らえ、非結合試薬対結合試薬の判定を実施することができる。
【0047】
非結合試薬対結合試薬の判定は、マルチゾーンイムノアッセイ及び核酸アッセイで特に有用である。この装置に適合させることができるマルチゾーンイムノアッセイには様々なタイプがある。免疫クロマトグラフィーアッセイへの適用の場合には、試薬フィルタが個別の溜めの中に配置され、クロマトグラフィー力が作用しないときには物理的に接触していなくてもよい。イムノアッセイ又はDNAアッセイは、バクテリア、たとえばグラム陰性種(たとえば大腸菌、エンテロバクター、シュードモナス、クレブシエラ)及びグラム陽性種(たとえば黄色ブドウ球菌、腸球菌)の検出のために開発することができる。イムノアッセイは、タンパク質及びペプチド、たとえばアルブミン、ヘモグロビン、ミオグロブリン、α−1−ミクログロブリン、免疫グロブリン、酵素、糖タンパク、プロテアーゼ抑制因子及びサイトカインの完全なパネルのために開発することができる。たとえば、Greenquistの米国特許第4,806,311号「MUltizone Analytical Element Having Labeled Reagent Concentration Zone」1989年2月21日、Liottaの米国特許第4,446,232号「Enzyme Immunoassay with Two-Zoned Device Having Bound Antigens」1984年5月1日を参照のこと。
【0048】
乾燥試薬が再溶解される潜在的な用途としては、ろ過、沈降分析、細胞溶解、細胞選別(質量差)及び遠心分離がある。固相(たとえばマイクロビーズ)上での試料分析対象物の濃縮を使用して感度を改善することができる。濃縮したマイクロビーズは、連続遠心分離によって分離することもできる。それぞれが別個の明確な結果を出す多数の通路を可能にする多重化(たとえば、多様な試薬チャンバの同時平行及び/又は逐次的な計量)を使用することもできる。多重化は、入口と流動的に接続した多数の計量毛細管ループを含む毛細管配列あるいは計量供給通路及び/又は各計量毛細管ループに接続された毛細管ストッパの配列によって実施することができる。二次的な力、たとえば磁力との組み合わせをチップ設計で使用することができる。磁性ビーズのような粒子が、試薬のための、又は試料成分、たとえば分析対象物もしくは干渉性物質の捕捉のためのキャリヤとして使用される。密度のような物性による粒子の分別(分別蒸留と類似)。
【0049】
以下、最初の実施例は、糖尿病患者の状態を示すことができる患者血液中の糖化ヘモグロビン(HbAlc)含量を計測するための分析試験を実施する際に使用される本発明を例示する。使用した方法は、数多くの特許、最近のものとしては米国特許第6,043,043号の主題である。正常には、糖化ヘモグロビン濃度は3〜6%の範囲である。しかし、糖尿病患者では、それが約3〜4倍の高さに増大することがある。分析試験は、ヘモグロビンが約100日間にわたってさらされていた平均血中グルコース濃度を計測する。ヘモグロビンAlc中の糖化N末端ペプチド残基に特異的に開発されたモノクロナール抗体を色付きラテックス粒子で標識し、血液試料と接触させて、その標識抗体を糖化ヘモグロビンに付着させる。標識抗体を付着させる前に、まず、Lewisの米国特許第5,258,311号に記載されているように、血液試料を変性剤/酸化剤、たとえばチオシアン酸リチウムとの接触によって変性させる。次に、変性し、標識した血液試料を凝集試薬と接触させると、形成する濁りが、試料中に存在する糖化ヘモグロビンの量と比例する。また、糖化されているヘモグロビンの割合を提供するため、存在するヘモグロビンの総量を計測する。
【0050】
実施例1
この実施例では、図1に示すタイプのマイクロ流体チップでHbAlcの試験を実施する。血液試料を試料導入口10から導入すると、そこから毛細管作用によってプレチャンバ12まで進み、さらに計量毛細管14に達する。補助的な計量溜め16があってもよいが、試料サイズがさらなる容積を要する場合だけ設けられる。変性剤/酸化液が溜め18に含まれている。混合チャンバ20が血液試料のための空間を提供し、変性剤/酸化剤溜め22が洗液を含む。チャンバ24が、プレコンディショニングされた試料と、乾燥基材上に配置された標識モノクロナール抗体との均一な接触を提供する。標識試料と、基材上に配置された凝集剤との接触がチャンバ26中で起こって色が発され、この色が計測されて試料中の糖化ヘモグロビンの量が測定される。残りの溜めは、過剰な試料(28)、過剰な変性試料(30)及び試料をチャンバ26中の基材に引き込むために使用される吸取り材(32)のための空間を提供する。
【0051】
試料2μLをピペットで試料導入口10に移すと、そこから、チップ(図示せず)内に位置する通路を通過し、プレチャンバ12、計量毛細管14及び補助的な計量チャンバ16に進入した。過剰な試料は、湿潤度検出器を含むあふれ溜め28に通過する。遠心力は適用しなかったが、400rpmまで使用してもよい。毛細管14及び計量チャンバ16の容積によって試料サイズ(0.3μL)を測定した。溜め16と混合溜め20とを接続する毛細管の入口にある毛細管ストッパが、この実施例ではチップを700rpmで回転させることによって提供される遠心力によって打ち負かされるまで、血液試料のさらなる移動を阻止した。また、700rpmを使用して変性剤/酸化剤溶液10μLを計量された血液試料とともに混合チャンバ20に移すまで、毛細管ストッパにより、Lewisの米国特許第5,258,311号に記載されている変性剤/酸化剤溶液チオシアン酸リチウムが溜め18から出ないようにした。混合チャンバ20の容積は、変性剤/酸化剤溶液と血液試料とを合わせたサイズの約2倍であった。次に、回転速度を約100〜1500rpmで変動させて、チャンバ20中での液体の混合を保証した。混合ののち、混合物2μLが混合チャンバ20から毛細管を通って出て、チャンバ24に進入し、その中で、微細構造が、HbAlc用のラテックス標識モノクロナール抗体を含有する基材(繊維質パッドWhatmanガラスセルロース複合体剥離紙)の均一な湿潤を保証する。インキュベーションは数分の内に完了し、その後、回転速度を1300rpmに上げてチャンバ24の出口の毛細管ストッパに打ち勝つことによって標識試料を凝集チャンバ26に解放した。標識試料は、Whatmanの孔径5ミクロンのニトロセルロース試薬上に0.1〜5.0mg/mLの濃度で筋状に付された凝集剤(ポリアミノアスパラギン酸HbAlcペプチド)と接触した。溜め32中の吸収材(Whatmanセルロース吸取り紙)がストリップ上での標識試料の均一な通過を促進した。(あるいはまた、遠心力を使用してもよい)。ストリップ上での標識試料の分散は、チャンバ26の入口に位置する微細構造によって提供した。最後に、回転速度を2500rpmに上げて、洗液が溜め22から出るのを防ぐ毛細管ストッパに打ち勝った。緩衝液(リン酸緩衝食塩水)がチャンバ24を通過し、チャンバ26中のストリップの上を通過して、ストリップ上のバンドの読み取りの精度を改善する。デジタルカメラ、スキャナ又は他の反射率計、たとえばBayerのCLINITEK機器を用いて反射率を読み取ることにより、発色を計測した。
【0052】
このような計測の結果を以下の表に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例2
図2に示す変形マイクロ流体チップを使用して、実施例1に記載した試験を繰り返した。図2では、凝集剤チャンバ26は、標識された試料が、ストリップの上り坂端に配置された吸収材の吸取り作用によって支援されて「上り方向」、すなわち回転中心に向かって流れるように配置されたものであった。同等な結果が得られた。この場合、流れの向きを決める微細構造は、ニトロセルロース試薬が配置されている平坦域へと上に通じる傾斜路34である。代替態様では、ストリップは、試料液体を含有するプレチャンバ36の中に延びる。
【0055】
実施例3
標識された試料が凝集ストリップ26の中央部から進入して二つの方向に吸い取られるようにしたマイクロ流体チップを用いて、実施例1の試験を繰り返した。
【0056】
実施例4
血中グルコースの計測のために試料ディスク上に配置される多くの1種であるマイクロ流体装置を示す図3及び4で本発明をさらに例示する。図3の断面図では、血液試料が入口30に付着されると、そこから、毛細管作用により、均一な液最前部を形成するために試料の流れに対して垂直に配置されたうね状部及び溝を含み、同じ毛細管力を試薬の縁に適用することを可能にする入口通路32を通過して流れる。通路32は、チャンバ34に達するまで開散し、このチャンバが、多孔質基材上に配置された発色性グルコース試薬との接触を容易にする微細構造を含む(Bellの米国特許第5,360,595号に記載のとおり)。図4は、使用される微細構造柱状物35の配列を示す。試料が試薬チャンバ34に入るにつれ、空気がいくつかの毛細管通路36を通ってパージされて、出口38から出る。
【0057】
図3のマイクロ流体装置を使用して血中グルコース含量を計測した。ヘパリンで前処理した全血を250℃でインキュベートして、血液試料中に生来存在するグルコースを分解した。血液を、グルコース基準試験機器(YSI社)で分析試験して0、50、100、200、400及び600mg/μLのグルコースでスパイクした。グルコース試薬(Bellの米国特許第5,360,595号に記載)を、プラスチック基材上に配置したナイロン膜(Pall社のBiodyn)に塗布した。その基材(図示せず)上の試薬の試料を、チャンバ34中、微細構造35と接触させて配置し、装置の底をExcelの感圧接着性のふたSealplateで覆った。
【0058】
プランジャ付き2μL毛細管(Drummond社のAquaCap)を使用して、いずれかの濃度のグルコースを含有する血液試料を入口30に導入した。試料が小出しされるとき入口は封止されるため、正圧が発生し、それが試料を入口通路32に押し込み、次いで試薬区域34に押し込む。試料が試薬と反応して色を発したのち、それを、白黒基準に照らして修正した状態で、分光計によって680nmで読み取る。
【0059】
さらには、二つのプラスチック基材PES及びPETを一連の血液試料とともに使用した。試薬を塗布したPETを使用した場合、500nm〜950nmの透過率計を使用して試料との反応を読み取った。試薬を塗布したPESを使用した場合、ボトムリード反射率計(YSI機器)を使用して試料との反応を読み取った。
【0060】
以下の表で見とれるように、匹敵しうる結果が得られた。
【0061】
【表2】

【0062】
比較例
試薬との均一な接触を提供するための微細構造を有しない試薬区域34を用いて実施例4の実験を繰り返した。空気が排除されなかったため、試薬溜めが完全には充填されず、一部は充填されていないことがわかった。
【0063】
実施例5
試料を試薬チャンバに押し込むための正の圧を入口30で用いることなく、実施例4の実験を繰り返した。代わりに、出口38で真空を適用した。同等な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10μL以下の生物学的液体試料を分析試験するための、試薬又はコンディショニング剤が基材上に固定化されている少なくとも一つの空間を含むマイクロ流体装置であって、前記試薬を含有する前記基材上に前記試料を所定の均一なやり方で導き、前記空間から空気を排除するための、前記空間中に配置された微細構造を含むマイクロ流体装置。
【請求項2】
前記微細構造が、前記試料の流れに対して直角に配置された柱状物の二つ以上の列を有する柱状物の均一な配列である、請求項1記載のマイクロ流体装置。
【請求項3】
前記微細構造が、柱状物の第一の列に隣接する柱状物の第二の列を有し、前記第二の列の前記柱状物が、前記第一の列の柱状物の間に配置され、それによって前記試料液が前記空間中を直線的に流れることを防ぐ、請求項2記載のマイクロ流体装置。
【請求項4】
前記柱状物が、前記基材上への試料液の移動を促進するための、前記基材に対して垂直に整列した少なくとも一つのくさび形の切欠きを有する、請求項2記載のマイクロ流体装置。
【請求項5】
前記微細構造が前記基材の上方に配置されている、請求項1記載のマイクロ流体装置。
【請求項6】
前記微細構造が前記基材と接している、請求項1記載のマイクロ流体装置。
【請求項7】
前記微細構造が、平坦域に配置された基材へと流れを上又は下に導くための傾斜路である、請求項1記載のマイクロ流体装置。
【請求項8】
前記微細構造が、試料の流れの方向に対して垂直に配置された溝又は堰状物である、請求項1記載のマイクロ流体装置。
【請求項9】
マイクロ流体装置の溜めの中で基材上に固定化された試薬又はコンディショニング剤の上に10μL以下の液体試料を均一に分散させる方法であって、所定の均一なやり方で前記試料を前記基材上へ移動させることを促進して前記溜めから空気を排除する微細構造に前記試料を通すこと、を含む方法。
【請求項10】
前記微細構造が、試料の流れに対して直角に配置された柱状物の均一な配列である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記微細構造が、柱状物の第一の列に隣接する柱状物の第二の列を有し、前記第二の列の前記柱状物が、前記第一の列の柱状物の間に配置され、それによって前記液体試料が前記基材上を直線的に流れることを防ぐ、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記柱状物が、前記基材上への前記液体の移動を促進するための、前記基材に対して垂直に整列した少なくとも一つのくさび形の切欠きを有する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記微細構造が前記基材の上方に配置されている、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記微細構造が前記基材と接している、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記微細構造が、平坦域に配置された基材へと流れを上に導くための傾斜路である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造が、試料の流れの方向に対して垂直に配置された溝又は堰状物である、請求項9記載の方法。
【請求項17】
10μL以下の生物学的液体試料を分析試験するためのマイクロ流体装置であって、
(a)前記試料を受けるための入口と、
(b)前記入口と流体連通した毛細管通路と、
(c)(b)の毛細管通路と流体連通し、それによって前記試料をそれ自体に流れ込ませることができる計量毛細管又は計量溜めと、
(d)前記試料をコンディショニングするための試薬を含有する少なくとも一つのコンディショニング溜めと、
(e)(d)の前記コンディショニング溜め及び(c)の前記計量毛細管又は計量溜めと流体連通した少なくとも一つの毛細管通路と、
(f)コンディショニング後の前記試料を、前記試料中の分析対象物の量を分析試験するための試薬と接触させるための少なくとも一つの試薬溜めであって、基材上に配置された試薬と、前記試料を所定の均一なやり方で前記基材上に通し、前記溜めから空気を排除するための微小構造とを含む試薬溜めと
を含むマイクロ流体装置。
【請求項18】
前記微細構造が、前記試料の流れに対して直角に配置された柱状物の均一な配列である、請求項17記載のマイクロ流体装置。
【請求項19】
前記微細構造が、平坦域に配置された基材へ流れを上に導くための少なくとも一つの溝を含む傾斜路である、請求項17記載のマイクロ流体装置。
【請求項20】
前記微細構造が、試料の流れに対して垂直に配置された溝又は堰状物である、請求項17記載のマイクロ流体装置。
【請求項21】
生物学的試料を分析試験するための、入口端及び出口端を有し、前記試料と反応するための一連の試薬を含有する吸収性基材ストリップを含むマイクロ流体装置であって、前記試料が前記ストリップの前記入口端と接し、前記ストリップの前記出口端が、前記出口端から液体を取り出すための吸収性材料と接しているマイクロ流体装置。
【請求項22】
前記ストリップの前記入口端が、前記試料を保持するためのプレチャンバの中に延びている、請求項21記載のマイクロ流体装置。
【請求項23】
前記ストリップの前記入口端が、前記試料を保持するためのプレチャンバの上方の平坦域にあり、少なくとも一つの溝を含む壁が前記プレチャンバ中の前記試料から前記平坦域まで延びている、請求項21記載のマイクロ流体装置。
【請求項24】
血液試料中のグルコースの量を分析試験するためのマイクロ流体装置であって、
(a)前記試料を受けるための入口と、
(b)試料の流れに対して垂直に配置されて均一な液最前部を形成するためのうね状部及び溝を含み、試薬チャンバの中へと幅が拡がる入口通路と、
(c)(b)の前記試薬チャンバが、多孔質基材上に配置された微細構造及び発色性グルコース試薬を含有することと、
(d)前記試薬チャンバから押し出された空気を抜くための、前記試薬チャンバと連通した通気路と
を含むマイクロ流体装置。
【請求項25】
(c)の前記微細構造が、前記試料の流れに対して直角に配置された柱状物の二つ以上の列を有する柱状物の均一な配列である、請求項24記載のマイクロ流体装置。
【請求項26】
前記柱状物が、前記試料の前記基材への移動を促進するための、前記基材に対して垂直に整列した少なくとも一つのくさび形の切欠きを有する、請求項25記載のマイクロ流体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117363(P2010−117363A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−9814(P2010−9814)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【分割の表示】特願2006−517353(P2006−517353)の分割
【原出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】