説明

反応速度論的に安定した塩素化ポリシラン、この製造及び使用

本発明は、反応速度論的に安定した、化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシランに関し、ここで各々の混合成分は少なくとも4つの連結したケイ素原子を有しており、これの置換基は塩素、および塩素と水素であり、この組成は、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、a)該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは塩素による酸化的開裂に関して反応速度論的に高い安定性を有し、摂氏120度での10時間内の変換率は、1013hPaの過剰量の塩素ガスの存在のもとで30mol%を越えるものでなく、且つb)該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、該ポリシラン分子中における分岐部位の部分が8mol%より大きく、好ましくは11mol%より大きい。当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、これに比べ安定性が劣る従来のハロゲン化ポリシランよりも新しい用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一形態において、ハロゲン対ケイ素の原子比が少なくとも1:1である反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランに関するものであり、該ハロゲン化ポリシランはその反応速度論的安定性の故に多様の用途に適する。
【背景技術】
【0002】
先行技術、例えば、非特許文献1からわかるように、高分子二塩化ケイ素[SiCl2]xは、窒素で1:1の体積比に希釈された温度60℃の塩素流によって、少なくとも部分的に分解できる。置換されなかった高分子二塩化ケイ素以外に、、特にSi2Cl6 乃至 Si5Cl12の次塩化物を分離することができた。しかし、ただ一部の高分子二塩化ケイ素が置換しただけである。出発物質としての高分子二塩化ケイ素46.5gから、たった20gの次塩化物が得られるだけであり、このことは出発物質の50%足らずしか置換しなかったことを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M.Schmeisser and P.Voss, Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie, volume334, 1994, 50〜56ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一形態の目的は、例えば、酸化雰囲気において分解を起こしにくい安定性に富んだ、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項1及び独立請求項21に記載された反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物によって達成される。他の特許請求項の主題は、当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法とその使用である。
【0006】
本発明の一形態の対象は、反応速度論的に安定した、化合物混合物としてのハロゲン化ポリシランであって、これは各々において、主鎖が3個を越えるケイ素原子を有し、これらのうち少なくとも4つが相互に結合したケイ素原子であり、これの置換基は塩素又は塩素と水素とを含み、この組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、
a)これらポリシランは塩素による酸化的開裂に関して反応速度論的に高い安定性を有し、120℃で10時間に亘り1013hPaの過剰量の塩素ガスのもとで30mol%を越えるポリシランは未置換であり、好ましくは20mol%を越えるポリシランは未置換であり、及び
b)該ポリシランは、該ポリシラン分子中において分岐部位の部分(Anteil)が8mol%より大きく、好ましくは11mol%より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】ハロゲン化ポリシランを塩素化によって部分分解して得られた、本発明の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの混合物の29Si NMRスペクトルである。
【図1b】図1aの部分拡大図である。
【図2】図1a及び図1bにおけるポリシラン混合物のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の対象は、反応速度論的に安定した、化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシランであって、これは各々において、その主鎖が3個を越えるケイ素原子を有し、これらのうち少なくとも4つが相互に結合したケイ素原子であり、これの置換基は塩素又は塩素と水素とを含み、この組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、
a)これらポリシランは塩素による酸化的開裂に関して反応速度論的に高い安定性を有し、120℃で10時間に亘り1013hPaの過剰量の塩素ガスのもとで30mol%を越えるポリシランは未置換であり、好ましくは20mol%を越えるポリシランは未置換であり、及び
b)該ポリシランは、該ポリシラン分子中において分岐部位の部分が8mol%より大きく、好ましくは11mol%より大きい。
【0009】
本発明者らは、ハロゲン化ポリシランの反応速度論的安定性の向上は、ポリシラン分子中において分岐部位の部分が8mol%を越えて高いことにその一因があると知見した。本発明のポリシラン分子中の分岐部位の部分は、ポリシラン分子の主鎖からの分岐を代表する第3級及び第4級ケイ素原子の顕著な有意の29Si NMRシグナルを積分することにより測定できる。Xが塩素又は水素であるところの式Si−SiX(Si)−Siを有した第3級ケイ素原子群と、式Si−(Si)Si(Si)−Siを有した第4級ケイ素原子群とは、29Si NMRスペクトルにおいて、(第3級ケイ素原子の場合)−20ppm〜−33ppmのシフト範囲で、(第4級ケイ素原子の場合)−73ppm〜−93ppmのシフト範囲で、有意な生成物のシグナルによって検出可能である。
【0010】
これらの29Si NMRスペクトルはzg30パルス系列でもってBruker Avance 400型の250MHzの装置に記録され、外部標準[δ(29Si)=0.0]としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して関係付けられる。ここで取得パラメータは、TD=65536, D1=20s, NS=350, O1P=−50, 及び SW=300である。
【0011】
前記ハロゲン化ポリシランの反応速度論的安定性を測るための反応混合物において、塩素ガス過剰分が存在するのは、溶液が塩素ガスにより飽和されているという意味において、遊離塩素ガスが定常的に存在するときである。これは、反応によって消費される量を上回る量の塩素ガスを常に溶液に供給することによって達成できる。
【0012】
29Si NMRにおける顕著で有意な生成物のシグナルが存在するのは、各々の場合において、少なくとも4つの相互に結合したケイ素原子があって、一方では29Si NMRスペクトルにおける、生成物のシグナルの積分がすべての生成物のシグナルの総積分の1%より大きく(有意な生成物のシグナル)、これと同時に生成物のシグナルの半値幅が10Hz未満であるとき(鋭い生成物のシグナル)である。
【0013】
反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランはその高い反応速度論的安定性の故に、副反応を起こすクラスのハロゲン化ポリシランではこれまでおぼつかなかった用途に用いることができる。従って、例えば、ハロゲン化ポリシランの層を塩素ガス等の強酸化雰囲気で基板に利用することは、本発明の反応速度論的に安定したポリシランを用いるなら可能である。さらに、得られた該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランを誘導体化して他のポリシラン誘導体に変えることが可能であり、これは更に、その高い安定性の故に例えば主鎖の切断のような副反応を起こすことが少ない。得られる塩素化ポリシランの部分のいくつかは、高い割合で環状化合物を有しており、従って、開環重合に好適である。
【0014】
本発明の本実施形態の対象は、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランのうちでも1つの特に興味深い部分であって、3より多くのケイ素原子より成る鎖長を有している。この部分は当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの生成直後の粗製混合物から分別蒸留することにより分離することができる。例えば、Si2Cl6は、3つより多いケイ素原子を有したハロゲン化ポリシランを有した部分から、70mbarにて、130℃以下の温度での分別蒸留により分離でき、同様にSi3Cl8は20mbarにて140℃未満の温度で分離できる。
【0015】
例えば、Si2Cl6とは異なり、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの3つより多いケイ素原子を有した長鎖部分は、商業的には一般的に入手することができない。反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの粗製混合物において、出発物質によっては、3つより多いケイ素原子を有した特に興味深い部分が重量比で10%〜20%存在することがあり、且つまた重量比で約80%〜90%の短鎖部分、Si2Cl6及びSi3Cl8が存在することがある。
【0016】
また本発明の他の実施形態によると、当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、2つの第2級ケイ素原子の直接結合を複数有した部分を10mol%未満有しており、これの式は−SiX2−SiX2−を含み、Xは塩素又は水素である。
【0017】
本発明者らは2つの第2級ケイ素原子の間の結合は、例えば塩素ガスのような、酸化性雰囲気によって、塩素を介入させることにより、ごく容易に切断できること、且つこれにより反応速度論的安定性が弱まることを見つけた。本発明の一実施形態によると、前記反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、結合に関与するケイ素原子に基づいて(29Si NMRにおけるプロダクト信号で)、2つの第2級ケイ素原子を直接結合する部分を10mol%未満有する。この種の第2級ケイ素原子は、比較的長鎖のハロゲン化ポリシラン(nが3より大きい)の場合に、0ppm未満および−10ppmの化学シフトで、生成物のシグナルを呈示する。
【0018】
本発明の別の実施形態によると、前記反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、2つの第2級ケイ素原子を直結するボンドの部分を5mol%未満, 好ましくは2mol%未満有している。
【0019】
前記反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、引き続き、1つの第2級ケイ素原子−SiX2−と、例えば、1つの第3級ケイ素原子−Si(Si)SiX−Si、または1つの第4級ケイ素原子Si−(Si)Si(Si)−Siとの間に結合を有することもある。また可能なのは、第2級と第1級ケイ素原子との間の結合である。
【0020】
さらに好適なことには、当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、塩素による酸化的開裂に関して反応速度論的安定性を有し、1013hPaの過剰量の塩素ガスの存在のもと120℃で10時間おくと、20mol%を越える量は未置換であり、好ましくは15mol%、より好ましくは10mol%以下である。
【0021】
当該ハロゲン化ポリシラン混合物の反応速度論的安定性を測定する方法は以下の通りになされる。
【0022】
試験方法により得られる反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの塩素による酸化的開裂によるところの変換率は、次のようにして算出可能である。第一のステップで、塩素によって塩素化され部分的に分解される物質の実験式が確かめられる。この目的で、例えばモール法により、塩化物の定量を行い、ついで水素原子の部分を1H NMRスペクトル中のピークの積分によりつきとめる。これで、出発物質中に存在するケイ素は分別定量(Differenzwaegung)により測定でき、よって用いられる物質の実験式、例えばSiCl2.5が得られる。塩素による酸化的開裂がなされたら、当該実験式はそのとき得られる混合物、例えばSiCl2.8から同様の方法で確かめることができ、その物質の塩化物含量は、塩素化の結果、当該反応物質の塩素含量に応じて増加する。もし、完全な塩素化が成されたときの形式的な熱力学的最終生成物がSiCl4であると仮定するなら、出発化合物と結果としての生成物の式を、出発物質と当該反応の熱力学的最終生成物としてのSiCl4とを足し合わせることにより、次のように表すことができる、すなわちSiCl2.8=a×SiCl2.5+b×SiCl4、ここでaとbとの和は1である。数学的には、これは等式2.8=2.5a+4bを与え、ここでb=1−aである。これに基づいて、式2.8=2.5a+4(1−a)が得られ、これよりこの場合、最終的には a=0.8が得られ、このことは言い換えると出発物質であるSiCl2.5の20mol%だけがSiCl4になる反応をしたということを意味する。このことは本発明の理解においては、反応率が20mol%しかないときには、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは混合物の形で存在していることを意味する。
【0023】
各々の構成成分に比較しても、本発明の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの混合物は、種々の不活性溶媒、例えばシクロヘキサン、ベンゼン、トルエンあるいは四塩化ケイ素に対して増大した溶解度を示すが、これは反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の種々の構成成分が互いに溶解補助剤として働くからである。これのおかげで、本発明の高い反応速度論的安定性を有したハロゲン化ポリシラン混合物は、各々の構成成分に比べて取扱特性が優れている。
【0024】
特に、本発明の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物は、不活性溶媒に対してすこぶる溶解しやすく、そのような不活性溶媒としては例えば芳香族化合物、アルカン等の非プロトン性の非求核性溶媒が挙げられる。ここで「すこぶる溶解しやすく」とは、50質量%を越える溶解度を意味する。
【0025】
本発明の他の実施形態によると、ポリシラン混合物はネオペンタクロロシラン(Neo−Si5Cl12)の部分を、少なくとも10mol%、好ましくは18mol%より多く、より好ましくは25mol%より多く有している。ネオペンタクロロシランは特に高い反応速度論的安定性を有している分岐鎖化合物である。
【0026】
さらに、本発明の高い反応速度論的安定性を有したハロゲン化ポリシラン混合物は実験式SiClxで表され、xは2.2〜2.5, 好ましくは2.25〜2.4である。
【0027】
主鎖に3より多くのケイ素原子を有した反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの平均鎖長nは4〜10, 好ましくは4〜8である。当該実験式を、平均鎖長を勘案すると、n=4〜10及びx=2.2〜2.5であるところの実験式(SiClx)nが得られ、好ましいn及びxの範囲は上記したものと同じである。
【0028】
本発明の更なる実施形態によると、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランのポリシラン混合物は、29Si NMRスペクトルにおいて、15ppm〜−10ppmの化学シフト範囲(第1級及び第2級ケイ素原子)、−28〜−35ppmの化学シフト範囲(第3級ケイ素原子)、及び−70〜−85ppmの化学シフト範囲(第4級ケイ素原子)において著しい有意な生成物のシグナルを呈する。第3級ケイ素原子に関して好ましいと考えられるシフト範囲は−31ppm〜−33ppmであり、第4級ケイ素原子に関して好ましいと考えられるシフト範囲は−77〜−82ppmである。これらのシフト範囲におけるシグナルは反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランに特有である。
【0029】
本発明の更なる実施形態によると、特に第1級及び第2級ケイ素原子の化学シフト範囲において、当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物は、有意で顕著な生成物のシグナルを、8.5ppm〜3ppm、1ppm〜−1ppm、−3ppm〜−5ppm、及び−6ppm〜−8.63ppm、またはこれらの組み合わせの化学シフト範囲に有する。
【0030】
好ましくは、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物は、それぞれ、著しい有意な生成物のシグナルシグナルを、7〜3ppmの化学シフト範囲に少なくとも4つ、1 〜−1ppmの化学シフト範囲に少なくとも1つ、−29.5〜−33ppmの化学シフト範囲に少なくとも1つ、−78〜−82ppmの化学シフト範囲に少なくとも2つ有している。
【0031】
この種の生成物のシグナルは、本発明の特定された実施形態によれば、本発明の反応速度論的安定性を有したハロゲン化ポリシランにおける異なる第1級および第2級のケイ素原子の混合物、また第3級及び第4級ケイ素原子の混合物に特有の現象である。
【0032】
さらに、反応速度論的に安定したポリシラン混合物は塩素置換基のみならず水素置換基を含むことが可能であり、この場合、水素含量は2atom%より小さく、好ましくは1atom%より小さくてもよい。反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン、特には塩素化ポリシランにおける、水素原子の部分は、当該生成物のシグナルを積分し、当該積分結果を1H NMRスペクトルにおいて内部標準の積分値と比較することにより定められる。
【0033】
塩素置換基のみならず水素置換基も有するハロゲン化ポリシランは、1H NMRスペクトルにおいて、6.5から3.5ppm、好ましくは5.9から3.8ppmの化学シフト範囲に、特異な生成物のシグナルを有する。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態によれば、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの置換基はハロゲン、好ましくは塩素より構成される。ここで「構成される」とは0.5mol%未満の、好ましくは0.05mol%未満の他の置換基、例えば水素が存在することを意味する。ハロゲン化された反応速度論的に安定した当該ポリシラン混合物は、少なくとも99.5%の高純度を有した精密化学品として得られよう。不純物群は10ppmに満たない量であろう。
【0035】
反応速度論的に安定した当該ハロゲン化ポリシランの更なる特徴は、ラマンスペクトルを記録することにより可能である。ここでラマンスペクトルの測定は、波長可変レーザ励起機能(アルゴンイオン・レーザにより励起されるT−サファイヤ・レーザー)と共焦点ラマンと発光顕微鏡を有し、液体窒素冷却CCD探知器を備えたDilor社製のXY 800分光計を使って行い、測定温度は室温であり、可視スペクトル域における励起波長は514.53nm及び750nmを含む。
【0036】
本発明の一実施形態によると、ラマンスペクトルにおいて、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、有意な生成物のシグナルを波数650(cm-1)より小さい範囲に、好ましくは波数270〜350(cm-1)の範囲、及び波数520〜600(cm-1)の範囲に呈する。ラマンスペクトルでの有意な生成物のシグナルとは、当該ラマンスペクトル中での最高ピークの強度の10%を越える強度を呈する生成物のシグナルである。本発明者らはこの種の有意な生成物のシグナルを持つラマンスペクトルは、実質的に環状化合物を含まない開鎖状分岐化合物に主に由来することを見つけた。
【0037】
具体的には、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランは、波長270〜340において少なくとも3つの有意な生成物のシグナルを有し、波長540〜640において少なくとも2つの有意な生成物のシグナルを有する。
【0038】
当該ポリシラン混合物は、無色から淡黄色又は象牙色に呈色することがある。当該反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランが低粘度で及び/又は結晶質で得られる場合、室温での液体部分の粘度は1000mPasより低く、好ましくは400mPasより低い。さらに、この溶解可能分の80%より多くが、好ましくは1〜100Paの減圧下で、蒸留及び/又は揮発することが分解することなく可能である。
【0039】
本発明のまた1つの実施形態の対象は、やはり反応速度論的に安定した化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシランであって、各々において、その主鎖が3個を越えるケイ素原子を有し、これらのうち少なくとも4つが相互に結合したケイ素原子であり、これの置換基は塩素又は塩素と水素とを含み、この組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、
a)これらポリシランは塩素による酸化的開裂に対して反応速度論的に高い安定性を有し、120℃の温度で10時間に亘り1013hPaの過剰量の塩素ガス雰囲気で当該ポリシランの30mol%を越えるものは反応せず、且つ
b)該ポリシランは、
1.熱的に生成された塩素化ポリシラン、及び
2.プラズマ化学的に生成された塩素化ポリシラン
のいずれかを含むハロゲン化ポリシランの部分分解によって得ることが可能であり、
前記部分分解は200〜2000hPaの圧力下で4〜29時間に亘り行われる塩素化工程を含むこととした、ハロゲン化ポリシラン。
【0040】
この種のハロゲン化ポリシランは反応速度論的安定性に関して上述したいくつかの有利な特性を有している。
【0041】
反応速度論的に安定した当該ハロゲン化ポリシランを生成するために塩素化により部分分解される出発物質としては、例えば、PCT出願の国際公開第2009/143824号に記載された種類の熱的に調整された塩素化ポリシランがあげられる。当該PCT出願の記載内容で、熱的に調整された塩素化ポリシランの特性と合成に関してのものをここに一切編入されたものとする。
【0042】
熱的に生成されたポリシランとして、各々が、少なくとも1つのSi−Si直接結合を有し、その置換基はハロゲン、好ましくは塩素であり、その組成において、置換基対ケイ素の原子比が少なくとも1:1であるポリシランを用いることが可能であり、
・ここに、該ポリシランは高い割合で分岐位置を有した環鎖や直鎖より成り、この割合はプロダクト混合物全体の1mol%より大きく、
・該ポリシランは、強度比がI100/I132<1であるラマン分子振動スペクトルを有し、I100は100cm-1におけるラマン強度であり、I132は132cm-1におけるラマン強度であり、且つ
29Si NMRスペクトルにおいて、前記有意な生成物のシグナルは、+23ppm〜−13ppm、−18ppm〜−33ppm、−73ppm〜−93ppmの化学シフト範囲にある。
【0043】
代わりに、または付加的に、例えばPCT出願の国際公開第2009/143823号に記載された種類のプラズマ化学的に生成されたポリシランを用いることも可能である。当該PCT出願の記載内容で、プラズマ化学法により調整された塩素化ポリシランの特性と製造方法に関してのものをここに一切編入されたものとする。
【0044】
これらのプラズマ化学的に生成されたポリシランは同様に、少なくとも1つのSi−Si直接結合を有し、その置換基はハロゲン又はハロゲンと水素とであり、その組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、
a) 該ハロゲンは塩素であり、
b) 該ポリシランの水素含量は2atom%未満であり、
c) 該ポリシランは、短鎖が分岐した直鎖や環鎖を実質的に有さず、生成混合物全体を基準として、短鎖の分岐部位の部分、特にはネオヘキサシラン、ネオペンタシラン、イソテトラシラン、イソペンタシラン、ペルクロロ−2,3ジシリルテトラシラン及びイソヘキサシランの過ハロゲン化誘導体の合計した部分は、1mol%未満であり、
d)ラマン分子振動スペクトルは強度I100:I132>1を有し、I100は100cm-1 におけるラマン強度であり、I132は132cm-1におけるラマン強度であり、
e) 29Si NMRスペクトルにおいて、有意な生成物のシグナルを+15ppm〜−7ppmの化学シフト範囲に有している。
【0045】
鎖長nが2〜10である反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物は、プラズマ化学的に生成されるハロゲン化ポリシランの部分分解の場合に好適に得られ、熱的に生成されたハロゲン化ポリシランの部分分解では反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の鎖長nは2〜8である。
【0046】
反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランを生成するためのハロゲン化ポリシランの部分分解は、60℃から140℃の温度で成されることが好ましい。
【0047】
200〜2000hPaの気圧下での4〜29時間にわたる塩素化による部分分解により、本発明の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの生成を確実にすることができる。特に、一方で、用いられたすべてのハロゲン化ポリシラン混合物が可能な限り最終生成物SiCl4またはSi2Cl6に分解せしめられるような過剰に厳しい塩素化条件が生じるのを防ぐことが可能となり、他方では、塩素化により生成したポリシラン混合物群が十分な反応速度論的安定性を有することを確実にする。本発明者らはこうして、当該ハロゲン化ポリシランの部分分解の際にこれらの特定反応条件に従うことにより、従来のハロゲン化ポリシランに比してまったく新しい分野への用途を切り開く反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの生成を実現できることを知った。
【0048】
本発明の対象はさらに、反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法であり、この方法において、熱処理及び/又はプラズマ化学処理によって生成されたハロゲン化ポリシランの部分分解が成されるが、これは、
a)塩素化を含み、
b)その反応温度が60〜140℃、好ましくは90〜130℃であり、
c)200〜2000hPaの気圧下で、好ましくは800〜1500hPaの気圧下で成される。
【0049】
本発明の方法のもう1つの実施形態によると、前記部分分解のあとに、得られた反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの粗製混合物がさらに分別蒸留に供され、鎖長nが2及び3である前記反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの部分を分別、すなわち、ヘキサクロロジシランとオクタクロロトリシランを分離する。この分別分留は、Si2Cl6の分離の場合には浴温を140℃より高くし気圧を70mbarにして行われ、Si3Cl8の分離には浴温を約140℃とし気圧は20mbarとすることができる。
【0050】
さらに、前記ハロゲン化ポリシランは前記部分分解の前に希釈されることができ、このとき使用される希釈剤としてはSiCl4、Si2Cl6及び/又はSi3Cl8が好ましい。この希釈により粘度が低下し、これによって、より効果的な塩素化が当該部分分解において成される。
【0051】
主鎖に3つより多いケイ素原子を有し且つヘキサクロロジシランとオクタクロロトリシランの更なる部分を有する本発明の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物は、不活性溶媒での溶解性が高く質量で50%より多くが溶解する。ここで使用できる不活性溶媒は、好ましくは、芳香族化合物、アルカン等の非プロトン性の非求核性溶媒であって、例としてトルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、SiCl4がある。
【実施例】
【0052】
以下の記載において、本発明のいくつかの実施形態を、実施例と図を用いてより詳細に説明する。
【0053】
図1a及び図1bは、ハロゲン化ポリシランを塩素化によって部分分解して得られた、本発明の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの混合物の29Si NMRスペクトルを示す。
【0054】
図2は、図1a及び図1bにおける同じポリシラン混合物のラマンスペクトルを示す。
【0055】
<実施例1>
プラズマ化学的に生成したペルクロロポリシラン33.02gが低温分留により希釈剤から分離され、120℃に加熱される。この加熱の結果、この粘性物質は攪拌可能となる。攪拌しながら、塩素ガス流を当該液体上に通過させる。排出された物質は0℃の冷却トラップにて凝固させられる。液体の粘度は反応とともに低下する。9.5時間後、集められた生成物は分留される。29Si NMR分光分析によると、主生成物として少量のSiCl4、Si2Cl6およびSi3Cl8が確認される。高沸点留分において、n−テトラシラン, イソテトラシラン、ネオペンタシラン、及びネオヘキサシランの過塩素化誘導体を特定することができる。鎖長が4を越えるn−ペルクロロシランは検知されない。
【0056】
<実施例2>
プラズマ化学的に生成したハロゲン化ポリシラン31.5gが低温分留により希釈剤から大部分が分離され、100℃に加熱される。この加熱の過程で、この物質は攪拌可能となる。攪拌しながら、塩素ガスが装置の後ろのバッファ体積(Puffervolumen)に対して分割量ごとに加えられる。排出された物質は0℃に冷された冷却トラップにて凝縮する。この反応の過程で、オレンジ色の粘性液体は黄色となり粘度が下降する。この反応時間は15時間である。冷却トラップの内容物と反応フラスコの内容物が化合されて分別分留される。これらの部分の29Si NMRスペクトルにおいて、実施例1と同じ化合物を特定することが可能である。
【0057】
<実施例3>
SiCl4 とSi元素との反応により熱的に生成されたハロゲン化ポリシラン44.93gが、低温分留により大部分がSiCl4から遊離され、100℃に加熱される。この加熱の過程で、この物質は攪拌可能となる。攪拌しながら、塩素ガスが装置の後ろのバッファ体積に対して分割量ごとにガス注入管を通して該反応混合物に導入される。排出された物質は0℃に冷された付属の冷却トラップにて凝縮する。この反応の過程で、オレンジ色の粘性液体は黄色となり粘度が下降する。この反応時間は11時間である。冷却トラップの内容物と反応フラスコの内容物が化合されて分別分留される。これらの留分の29Si NMRスペクトルにおいて、実施例1と同じ化合物を特定することが可能である。
【0058】
<実施例4>
SiCl4内にプラズマ化学的に生成したPCS 3052.7gの溶液をSi2Cl6 1388.7gと混合し、SiCl4を蒸留で分離する。この溶液は60℃に加熱される。攪拌しながら、塩素ガスが装置の後ろのバッファ体積に対して、ガラスフリットとともに、ガス注入管を通して該溶液に導入される。排出された物質は0℃に冷された付属の冷却トラップにて凝縮する。反応熱の故に、該溶液の温度は上昇する。加熱浴温度の閉ループ調整及び導入される塩素ガスの量の調整により、反応溶液の温度は110℃と120℃の間に保持される。該反応のあいだ、装置内の圧力は1013hPaと1213hPaの間にある。12時間の間には、元は濃いオレンジ赤色である溶液が黄色化する。其の後は反応混合物による塩素の吸収が顕著に減少する。25.5時間の後には、反応は終結し、SiCl4, Si2Cl6及び大部分のSi3Cl8が反応生成物から分別蒸留される。分留によって分離された部分の29Si NMRスペクトルにおいて、予測された化合物を検出することが可能である。得られるのは、少量のSi2Cl6を伴ったSiCl4 760.1g、Si2Cl6 3354.9g、及び少量のSi2Cl6を伴ったSi3Cl8 861.8gである。
【0059】
蒸留残渣は401.7gである。該蒸留残渣の29Si NMRスペクトルは図1aに示し、図1bはこの29Si NMRスペクトルの部分拡大図である。第1級と第2級ケイ素原子に係わる顕著な有意な生成物のシグナルが+7pmmと−8ppmの化学シフトの間に明確に生じており、約−32ppmの生成物のシグナルは第3級ケイ素原子に係わり、−77ppmと−81ppmの間の生成物のシグナルは第4ケイ素原子のものである。
【0060】
図2は蒸留残渣のラマンスペクトルを示す。約290から350cm-1の間、520から640cm-1の間の生成物のシグナルはすぐ見極められる。
【0061】
<実施例5>
SiCl4内にプラズマ化学的に生成したPCS 3933.7gの溶液をSi3Cl8 765.9gと混合し、SiCl4を蒸留で分離する。この溶液は60℃に加熱される。攪拌しながら、塩素ガスが装置の後ろの緩衝体積に対して、ガラスフリットとともに、ガス注入管を通して該溶液に導入される。排出された物質は0℃に冷された付属の冷却トラップにて凝縮する。反応熱の故に、該溶液の温度は上昇する。加熱浴温度の閉ループ調整及び導入される塩素ガスの量の調整により、反応溶液の温度は110℃と120℃の間に保持される。該反応のあいだ、装置内の圧力は1013hPaと1213hPaの間にある。17時間の間には、元は濃いオレンジ赤色である溶液が黄色化する。この後は反応混合物による塩素の吸収が顕著に減少する。29時間の後には、反応は終結し、SiCl4, Si2Cl6 及び大部分のSi3Cl8が反応生成物から分別蒸留される。分留によって分離された部分の29Si NMRスペクトルにおいて、予測された化合物を検出することが可能である。蒸留残渣のスペクトルは図1aと図1bとに対応する。分離されたSi3Cl8部分の量649.9gは導入された量より少ない。
【0062】
<反応速度論的安定性の定量のための試験的塩素化のための実施例>
プラズマ化学的に生成された、鎖長が10より長いポリクロロシランを塩素化して得られた反応速度論的に安定した複数のクロロシランよりなる混合物100gを収容する装置の中で、まず、室温において保護ガスを塩素ガスの強制的導入により置き換える。その後、装置を密閉し、攪拌を加えながら120℃に加熱し、さらに塩素ガスをガス注入管により該装置の後ろのバッファ部から分割して、反応混合物に導入する。排出された物質は0℃に冷された付属の冷却トラップにて凝縮させる。該反応のあいだ、装置内の圧力は1013hPaと1213hPaとの間に保持する。10時間にわたる反応時間の後、29Si NMRスペクトルでの比較によると、該溶液においてSiCl4及びSi2Cl6が増加しており、一方Si3Cl8に対応するシグナルは弱くなっており、n−Si4Cl10の残渣の形跡はない。出発物質と反応生成物との比較蒸留検査によると、Si3Cl8部分が重量で約20%だけ減少し、鎖長nが4以上の反応速度論的に安定した塩素化ポリシランより成る蒸留残渣はその重量に変化がほとんどなかった。これと対照的に、主にSiCl4やSi2Cl6より成る低沸点部分は重量が増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々において、主鎖に3個を越えケイ素原子を有し、少なくとも4つが相互に結合したケイ素原子であり、この置換基は、塩素、又は塩素と水素とを含み、この組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1である化合物の混合物としての、、反応速度論的に安定した化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシランであって、
a)これらポリシランは塩素による酸化的開裂に対して反応速度論的に高い安定性を有し、120℃で10時間に亘り1013hPaで過剰量の塩素ガスのもとで30mol%を越える未置換の前記ポリシランが存在し、好ましくは20mol%を越える未置換のポリシランが存在し、及び
b)前記ポリシランは、前記ポリシラン分子中で分岐部位の部分(Anteil)が8mol%より大きく、好ましくは11mol%より大きい
ことを特徴とする化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシラン。
【請求項2】
ネオ−Si5Cl12の部分が、少なくとも10mol%、好ましくは18mol%より多く、更に好ましくは25mol%より多く有することを特徴とする請求項1に記載のポリシラン混合物。
【請求項3】
実験式が4SiClxであり、xは2.2〜2.5、より好ましくは2.25〜2.4であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリシラン混合物。
【請求項4】
平均鎖長nが4〜10, 好ましくは4〜8であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項5】
29Si NMRスペクトルにおいて、15〜−10ppmの化学シフトの範囲と、−28〜−35ppm(好ましくは−31〜−33ppm)の化学シフトの範囲と、−70〜−85ppm(好ましくは−77〜−82ppm)の化学シフトの範囲とで生成物が鋭い有意のシグナルを呈することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項6】
29Si NMRスペクトルにおける前記生成物の鋭いシグナルは、8.5〜3ppm、1〜−1ppm、−3〜−5ppm、−6〜−8.3ppm、又はこれらの組み合わせから選択される化学シフトの範囲に生じることを特徴とする請求項5に記載のポリシラン混合物。
【請求項7】
29Si NMRスペクトルにおいて、7〜3ppmの化学シフトの範囲に少なくとも4つ、1〜−1ppmの化学シフトの範囲に少なくとも1つ、−29.5〜−33ppmの化学シフトの範囲に少なくとも1つ、−78〜−82ppmの化学シフトの範囲に少なくとも2つの前記生成物の鋭いシグナルを有することを特徴とする請求項5または6に記載のポリシラン混合物。
【請求項8】
塩素置換基の他に水素置換基を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項9】
水素含量が2atom%より小さく、好ましくは1atom%より小さいことを特徴とする請求項8に記載のポリシラン混合物。
【請求項10】
1H NMRスペクトルにおいて、6.5〜3.55ppmの化学シフトの範囲に、好ましくは5.9〜3.8ppmの化学シフトの範囲に有意な生成物のシグナルを有することを特徴とする請求項8または9に記載のポリシラン混合物。
【請求項11】
ラマンスペクトルでは、波数650未満に、好ましくは波数270〜350の間、及び波数520〜640の間で有意な生成物のシグナルを分析することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項12】
ラマンスペクトルでは、波数270〜340の間に少なくとも3つの有意な生成物のシグナル、波数540〜640の間に少なくとも2つの有意な生成物のシグナルを分析することを特徴とする請求項11に記載のポリシラン混合物。
【請求項13】
無色から淡黄色、又は無色から象牙色の色合いであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項14】
低粘度形態及び/又は結晶形で得られ、好ましくは高粘度でなく、室温での液体の粘度は1000mPasより低く、好ましくは400mPasより低いことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項15】
大部分が不活性溶媒に溶解可能であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項16】
可溶性画分は、好ましくは1〜100Paの減圧下で、80%より多くが分解することなく蒸留可能及び/又は揮発することを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項17】
前記置換基は塩素からなることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項18】
鎖長nがn=2〜3のハロゲン化ポリシラン(Si2Cl6やSi3Cl8は蒸留により長鎖ポリシランから容易に分離できる)の部分を更に含むことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項19】
化学当量式SiClxを有し、xは2.2〜2.5、好ましくは2.25〜2.4であることを特徴とする請求項18に記載のポリシラン混合物。
【請求項20】
2つの第2級ケイ素原子間の直接結合は、10mol%未満の部分を有することを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項21】
反応速度論的に安定した化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシランであって、
各々において、主鎖に3個を越えるケイ素原子を有し、少なくとも4つが相互に結合したケイ素原子であり、この置換基は、塩素、又は塩素と水素とを含み、この組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、
a)これらポリシランは塩素による酸化的開裂に対して反応速度論的に高い安定性を有し、120℃の温度で10時間に亘り1013hPaで過剰量の塩素ガスのもとで30mol%を越える未置換のポリシランが存在し、並びに
b)前記ポリシランは、
1.熱的に生成された塩素化ポリシラン、及び
2.プラズマ化学的に生成された塩素化ポリシラン
のうちいずれかを含むハロゲン化ポリシランの部分分解によって得られ、
前記部分分解は、塩素化を含み、200〜2000hPaの圧力下で4乃至29時間に亘り行われることを特徴とする化合物の混合物としてのハロゲン化ポリシラン。
【請求項22】
前記熱的に生成されたポリシランが、各々において、少なくとも1つのSi−Si直接結合を有し、その置換基はハロゲン、好ましくは塩素からなり、その組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、前記ポリシランは高い割合で分岐部位を有する環鎖及び直鎖からなり、この割合は生成混合物全体を基準として1mol%より大きく、前記ポリシランは、I100/I132<1のラマン分子振動スペクトルを有し、I100 は100cm-1におけるラマン強度であり、I132 は132cm-1でのラマン強度であり、且つ29Si NMRスペクトルで、有意なシグナルは、+23〜−13ppm、−18〜−33ppm、及び−73〜−93ppmの化学シフトの範囲にあり、または、
前記プラズマ化学的に生成されたポリシランは、少なくとも1つのSi−Si直接結合を有し、その置換基は、ハロゲン、又はハロゲンと水素とであり、その組成において、置換基対ケイ素の原子比は少なくとも1:1であり、
a)前記ハロゲンは塩素であり、
b)前記ポリシランの水素含有量は2atom%未満であり、
c)前記ポリシランは、分岐した直鎖及び分岐した環鎖の短鎖を実質的に有さず、生成混合物全体を基準として、前記短鎖の分岐部位の部分、特にネオヘキサシラン、ネオペンタシラン、イソテトラシラン、イソペンタシラン及びイソヘキサシランの過ハロゲン化誘導体の合計した部分は、1mol%未満であり、
d)前記ポリシランはI100/I132>1のラマン分子振動スペクトルを有し、I100は100cm-1におけるラマン強度であり、I132は132cm-1におけるラマン強度であり、及び
e)29Si NMRスペクトルにおいて、+15〜−7ppmの化学シフトの範囲に有意なシグナルを有する
ことを特徴とする請求項21に記載されたポリシラン混合物。
【請求項23】
前記部分分解は60〜140℃の温度で行われることを特徴とする請求項21または22に記載のポリシラン混合物。
【請求項24】
請求項1乃至19の少なくとも1つの請求項の特徴を有する請求項21乃至23のいずれかに記載のポリシラン混合物。
【請求項25】
熱処理及び/又はプラズマ化学処理によって生成されたハロゲン化ポリシランの部分分解は、
a)塩素化を含み、
b)反応温度が60〜140℃、好ましくは90〜130℃であり、
c)200〜2000hPaの気圧下で、好ましくは800〜1500hPaの気圧下で起こる
ことを特徴とする請求項1乃至24のいずれかに記載の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法。
【請求項26】
前記部分分解のあとに、鎖長nが2〜3で構成される反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシランの部分を除去する蒸留が行われることを特徴とする請求項25に記載のハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法。
【請求項27】
前記ハロゲン化ポリシラン混合物は前記部分分解の前に希釈され、使用される希釈剤は好ましくはSiCl4、Si2Cl6及び/又はSi3Cl8であることを特徴とする請求項25または26に記載の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法。
【請求項28】
熱処理により生成されたポリシランとして、各々において少なくとも1つのSi−Si直接結合を有しており、この置換基はハロゲン、好ましくは塩素からなり、この組成において、置換基対ケイ素の原子比が少なくとも1:1であるポリシランが使用され、前記ポリシランは分岐部位の高い割合を有した環鎖及び直鎖より成り、生成混合物全体を基準としてこの割合が1mol%より大きく、前記ポリシランはI100/I132<1のラマン分子振動スペクトルを有し、I100は100cm-1 におけるラマン強度であり、I132は132cm-1におけるラマン強度であり、及び29Si NMRスペクトルにおいて、有意なシグナルが+23〜−13ppm、−18〜−33ppm、及び−73〜−93ppmの化学シフトの範囲に存在することを特徴とする請求項25乃至27のいずれかに記載の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法。
【請求項29】
プラズマ化学処理で生成されたポリシランとして、少なくとも1つのSi−Si直接結合を有しており、この置換基は、ハロゲン、又はハロゲンと水素とからなり、この組成において、置換基対ケイ素の原子比が少なくとも1:1であるポリシランが使用され、
a)前記ハロゲンは塩素であり、
b)前記ポリシランの水素含有量は2atom%より小さく、
c)前記ポリシランは分岐した直鎖及び分岐した環鎖の短鎖を実質的に有しておらず、前記短鎖の分岐部位の部分、特にネオヘキサシラン、ネオペンタシラン、イソテトラシラン、イソペンタシラン及びイソヘキサシランの過ハロゲン化誘導体の合計した部分は、1mol%未満であり、
d)前記ポリシランがI100/I132>1のラマン分子振動スペクトルを有し、I100は100cm-1 におけるラマン強度であり、I132は132cm-1におけるラマン強度であり、
e)29Si NMRスペクトルにおいて、+15〜−7ppmの化学シフトの範囲に有意なシグナルを有する
ことを特徴とする請求項25乃至28のいずれかに記載の反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の製造方法。
【請求項30】
酸化雰囲気下でハロゲン化ポリシランの層を生成するための請求項1乃至24のいずれかに記載された反応速度論的に安定したハロゲン化ポリシラン混合物の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512843(P2013−512843A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541537(P2012−541537)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068991
【国際公開番号】WO2011/067415
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(510313360)シュパウント プライベート ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテ (14)
【氏名又は名称原語表記】Spawnt Private S.a.r.l
【住所又は居所原語表記】16, Rue Jean l’Aveugle, 1148 Luxembourg, Luxembourg
【Fターム(参考)】