説明

反芻動物のメタン排出を減少させ、および/または反芻動物の能力を改善するための、飼料中のニトロオキシアルカン酸およびその誘導体

本発明は、動物に飼料と共に投与される、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体を活性化合物として使用して、反芻動物の消化活動から生じるメタン産生を減少させる、および/または反芻動物の能力を改善する方法に関する。本発明はまた、プレミックス、濃縮物、および完全混合飼料(TMR)などの飼料および飼料添加剤中の、または大丸薬形態の、これら化合物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、反芻動物の消化活動から生じるメタン産生を減少させ、および/または反芻動物の能力を改善するための、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の使用に関する。
【0002】
本発明はまた、これらの前述の化合物を含んでなる、動物飼料または動物飼料組成物および飼料添加剤にも関する。飼料または飼料組成物という用語は、動物による摂取に適し、またはそれが意図される、あらゆる化合物、調製品、混合物、または組成物を意味する。
【0003】
本文脈では、反芻動物は、植物ベースの食物を最初に反芻胃として知られている第一胃内で軟化して、次に反芻食塊として知られている半消化塊を吐き戻し、それを再度噛みくだくことで消化する偶蹄目の哺乳類である。反芻食塊を再度噛みくだいて植物材料をさらに分解し、消化を促進する過程は、「反芻」と称される。反芻哺乳類としては、畜牛、ヤギ、ヒツジ、キリン、アメリカバイソン、ヨーロッパバイソン、ヤク、水牛、シカ、ラクダ、アルパカ、ラマ、ヌー、カモシカ、プロングホーン、およびニルガイが挙げられる。
【0004】
本発明の全ての実施形態で、家畜牛、ヒツジ、およびヤギがより好ましい種である。本目的で最も好ましい種は、家畜牛である。本用語は、全ての系統の家畜牛、および全ての生産種の畜牛、特に乳牛および肉牛を含む。
【0005】
反芻胃発酵は、いくつかの不都合をもたらす。嫌気性発酵の自然の帰結としてメタンが生成され、それは宿主動物のエネルギー損失を意味する。炭水化物は、典型的な乳牛飼料中において、乾燥物質の70〜80%を構成するにもかかわらず、胃腸管からの炭水化物の吸収は、常態では非常に限定的である。この理由は、主生成物として酢酸、プロピオン酸、および酪酸生成をもたらす、反芻胃内における炭水化物の徹底的発酵である。これらの生成物は、いわゆる揮発性脂肪酸(VFA)に属する。
【0006】
エネルギー損失に加えて、メタンはまた、COよりも何倍も強力な温室ガスである。その大気中濃度は過去1世紀間で倍加し、驚くほど増え続けている。反芻動物は生物起源メタン形成の主要原因であり、反芻動物からのメタン形成防止によって、大気中メタン濃度はほぼ安定化されると推定されている。
【0007】
さらに京都プロトコルのアセスメントは、多成分ガス戦略の一環として、メタン排出削減により重きを置いている。メタン形成を減少させるために、目下使用されている最も効果的な添加剤は、メタン産生菌(methanogenes)に水素(H)供給する微生物増殖を減少させる抗生物質を含有する。しかし短期間(2〜3週間)で意図される効果の完全な損失をもたらす、細菌叢の迅速な適応および/または耐性発現のために、メタン形成に対する抗生物質の効果には、いくつかの不都合がある。
【0008】
近年、動物飼料中における抗生物質使用に関する激しい議論があり、多くの国々では、飼料添加剤へのこの種の添加の禁止が検討されており、または既に禁止されている。
【0009】
生体外反芻胃シミュレーションモデルを使用して試験した際にメタン排出減少をもたらす非抗生物質製品(胆汁酸誘導体)が、最近公開されている(国際公開第2010072584号パンフレット)。しかしメタン排出に中程度の減少を生じるのに要する量は、反芻動物飼料産業の費用制約条件と両立し得ない。さらにいくつかの天然の植物抽出物(ニンニク(国際公開第2009150264号パンフレット)、ユッカ、シナモン、ルーバーブなど)が、生体外実験に基づいて反芻動物のメタン排出を減少させる強力な解法として科学文献で記載されている。しかしこれらのいずれも副作用(ミルク中の残留)、または生体内試験時の有効性欠如のために、市販製品となるに至っていない。
【0010】
このような状況下で、信頼できる一般に認められている慣例に沿った、医療用のものでない、メタン形成を減少させる新しい物質を開発する必要がある。メタン排出を減少させるのに加えて、このような物質はまた、飼料要求率を改善し、飼料摂取量を低下させ、体重増加を改善し、および/または屠体、または乳量を改善することで、反芻動物の能力改善に寄与し得る。
【0011】
本発明者らは、宿主動物に有害な形で微生物発酵に影響を及ぼすことなく、メタン形成を本質的に減少させるために、下文中で規定される化合物を動物飼料中で使用する大きな可能性があることを、驚くべきことに発見した。さらに本発明の化合物はまた、飼料要求率、飼料摂取量、体重増加、屠体収率、または乳量によって測定される、総合的動物能力に関わる大きな利点も有する。前記化合物はまた、先行技術に記載されるものよりも安定しており、動物およびヒトに対してより安全であり、持続性のメタン減少効果をもたらし、美味性に影響を及ぼさず、動物栄養産業に適合する経費で工業規模で生産し得て、何よりもそれらは処置動物のミルクまたは肉にいかなる代謝産物の蓄積も引き起こさない。
【0012】
特に、本発明に従った少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の添加は、生体外実験で総VFA生成に影響を及ぼすことなくメタン形成を減少させ、生体内で全体的メタン産生を減少させるのに高度に効果的であることが観察されている。
【0013】
したがって本発明は、反芻動物の消化活動から生じるメタン形成を減少させるための、および/または反芻動物能力を改善するための、動物飼料中の活性化合物としての式(I)によって定義される少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の使用を提供する。
【0014】
本発明は、式(I)によって定義される十分な量の少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体を、動物に経口的に投与するステップを含んでなる、反芻動物の消化活動から生じるメタン産生低下させ、および/または反芻動物の能力を改善する方法をさらに提供する。
【0015】
本発明の全ての実施形態で、ニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体は、式(I)、
【化1】


によって定義され、
式中、
nは0〜23、好ましくは0〜9であり、n≠0であれば、炭素鎖は、一価または多価不飽和であってもあらゆる異性体形態であってもよい直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xは独立してO、NH、またはN−R3であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルまたは二級アミド誘導体を表し、
R1は独立して、水素であるか、1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖、環状鎖または分枝鎖であり、
R2は独立して、水素であるか、1〜23個、好ましくは1〜9個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖または分枝鎖であり、
R3は独立して、水素であるか、1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖、環状鎖または分枝鎖である。
【0016】
上の式(I)の化合物の定義では、n>2であれば、炭素鎖は直鎖であるか、炭素鎖に沿ったあらゆる位置で分枝し得るものとする。さらに炭素鎖は、炭素鎖に沿った異なる位置で多重分岐によって分枝し得る。さらにn>4であれば、脂肪族炭素鎖は環状部分を形成してもよい。このシクロアルキル−カルボン酸部分は、位置2、3、4にニトロオキシ部分を有し得て、それはまたあらゆる脂肪族基によって多重位置で分枝し得る。分枝脂肪族基は、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルである。
【0017】
上の式(I)の誘導体の定義では、好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、二級ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、および2−エチル−ヘキシル、およびオクチルである。さらに3つ以上の炭素原子を含有するあらゆるアルキルまたはアルケニル基は、直鎖、分枝鎖、または環状鎖であり得る。さらに直鎖または分枝C〜C10−アルケニレン基では、これは、1つまたはそれ以上(Cから)の二重結合があるアルケニレン基を包含するものとし;このようなアルケニレン基の例は、式−CH=CH−、−CH=CH−CH−、−CH=CH−(CH−、および−(CH=CH)−である。
【0018】
特定の実施形態では、本発明に従った好ましいエステルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、二級ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−エチル−ヘキシル、およびオクチルである。さらに、好ましいアミド誘導体は、メチル−アミド、エチル−アミド、プロピル−アミド、ブチル−アミド、ペンチル−アミド、ジメチル−アミド、ジエチルアミド、およびメチル−エチル−アミドである。
【0019】
別の実施形態では、式(I)のより好ましい誘導体は、
nが0〜23、好ましくは0〜9であり、n≠0であれば、炭素鎖は、一価または多価不飽和であってもあらゆる異性体形態であってもよい直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xが独立してO、NH、またはN−R3であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルまたは二級アミド誘導体を表し、
R1、R2、およびR3が3つとも全て独立して、水素、メチル、またはエチル基である、誘導体である。
【0020】
別の実施形態では、さらにより好ましい化合物は、
nが0〜23、好ましくは0〜9であり、n≠0であれば、炭素鎖は、一価または多価不飽和であってもあらゆる異性体形態であってもよい直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xが独立してO、NH、またはN−R3であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルまたは二級アミド誘導体を表し、
R2が水素である、誘導体である。
【0021】
別の実施形態では、さらにより好ましい化合物は、
nが0〜23、好ましくは0〜9であり、n≠0であれば、炭素鎖は、一価または多価不飽和であってもあらゆる異性体形態であってもよい直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xが酸素(O)であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルを表し、
R2が水素である、誘導体である。
【0022】
さらに別の実施形態では、式(I)のより好ましい誘導体は、ニトロオキシエタン酸、3−ニトロオキシプロピオン酸、4−ニトロオキシブタン酸、5−ニトロオキシペンタン酸、6−ニトロオキシヘキサン酸、7−ニトロオキシヘプタン酸、2−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボン酸、3−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボン酸、4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボン酸、8−ニトロオキシオクタン酸、9−ニトロオキシノナン酸、10−ニトロオキシデカン酸、11−ニトロオキシウンデカン酸、メチル−ニトロオキシエタノエート、メチル−3−ニトロオキシプロピオネート、メチル−4−ニトロオキシブタノエート、メチル−5−ニトロオキシペンタノエート、メチル−6−ニトロオキシヘキサノエート、メチル−7−ニトロオキシヘプタノエート、メチル−2−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、メチル−3−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、メチル−4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、メチル−8−ニトロオキシオクタノエート、メチル−9−ニトロオキシノナノエート、メチル−10−ニトロオキシデカノエート、メチル−11−ニトロオキシウンデカノエート、エチル−ニトロオキシエタエート、エチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−4−ニトロオキシブタノエート、エチル−5−ニトロオキシペンタエート、エチル−6−ニトロオキシヘキサエート、エチル−7−ニトロオキシヘプタエート、エチル−2−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、エチル−3−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、エチル−4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、エチル−8−ニトロオキシオクタエート、エチル−9−ニトロオキシノナエート、エチル−10−ニトロオキシデカノエート、エチル−11−ニトロオキシウンデカノエート、ニトロオキシ−N−エタン酸アミド、ニトロオキシ−N−メチル−エタン酸アミド、ニトロオキシ−N−ジメチル−エタン酸アミド、ニトロオキシ−N−エチル−エタン酸アミド、ニトロオキシ−N−ジエチル−エタン酸アミド、ニトロオキシ−N−メチル−エチル−エタン酸アミド、3−ニトロオキシ−N−プロピオン酸アミド、3−ニトロオキシ−N−メチル−プロピオン酸アミド、3−ニトロオキシ−N−ジメチル−プロピオン酸アミド、3−ニトロオキシ−N−エチル−プロピオン酸アミド、3−ニトロオキシ−N−ジエチル−プロピオン酸アミド、3−ニトロオキシ−N−メチル−エチル−プロピオン酸アミド、4−ニトロオキシ−N−ブタン酸アミド、4−ニトロオキシ−N−メチル−ブタン酸アミド、4−ニトロオキシ−N−ジメチル−ブタン酸アミド、4−ニトロオキシ−N−エチル−ブタン酸アミド、4−ニトロオキシ−N−ジエチル−ブタン酸アミド、4−ニトロオキシ−N−メチル−エチル−ブタン酸アミド、5−ニトロオキシ−N−ペンタン酸アミド、5−ニトロオキシ−N−メチル−ペンタン酸アミド、5−ニトロオキシ−N−ジメチル−ペンタン酸アミド、5−ニトロオキシ−N−エチル−ペンタン酸アミド、5−ニトロオキシ−N−ジエチル−ペンタン酸アミド、5−ニトロオキシ−N−メチル−エチル−ペンタン酸アミド、6−ニトロオキシ−N−ペンタン酸アミド、6−ニトロオキシ−N−メチル−ペンタン酸アミド、6−ニトロオキシ−N−ジメチル−ペンタン酸アミド、6−ニトロオキシ−N−エチル−ペンタン酸アミド、6−ニトロオキシ−N−ジエチル−ペンタン酸アミド、6−ニトロオキシ−N−メチル−エチル−ペンタン酸アミド、2−ニトロオキシプロピオン酸、メチル−2−ニトロオキシプロピオネート、エチル−2−ニトロオキシプロピオネート、2−ニトロオキシブタン酸、メチル−2−ニトロオキシブタノエート、エチル−2−ニトロオキシブタノエート、3−ニトロオキシブタン酸、メチル−3−ニトロオキシブタノエート、エチル−3−ニトロオキシブタノエート、2,2−ジメチル−3−ニトロオキシプロピオン酸、メチル−2,2−ジメチル−3−ニトロオキシプロピオネート、およびエチル−2,2−ジメチル−3−ニトロオキシプロピオネートからなる群から選択される。
【0023】
上の式(I)の誘導体の定義で、本発明の全ての実施形態で、反芻動物によって産生されるメタンを減少させるそれらの諸特性の観点から、最も好ましい式(I)の誘導体、または式(I)は、その化学構造を表1に示す、エチル−ニトロオキシ−エタノエート、3−ニトロオキシプロピオン酸、メチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−2−ニトロオキシプロパノエート、4−ニトロオキシブタン酸、エチル−4−ニトロオキシ−ブタノエート、エチル−3−ニトロオキシ−ブタノエート、5−ニトロオキシペンタン酸、エチル−5−ニトロオキシペンタノエート、2,2−ジメチル−3−ニトロオキシプロピオン酸、6−ニトロオキシヘキサン酸、エチル−6−ニトロオキシヘキサノエート、8−ニトロオキシオクタン酸、エチル−8−ニトロオキシオクタノエート、11−ニトロオキシウンデカン酸、エチル−11−ニトロオキシウンデカノエート、エチル−4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、5−ニトロオキシ−N−ペンタン酸アミド、および5−ニトロオキシ−N−メチル−ペンタン酸アミドからなる群から選択される。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
さらにより好ましい式(I)の誘導体、または式(I)は、3−ニトロオキシプロピオン酸、メチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−4−ニトロオキシ−ブタノエート、エチル−3−ニトロオキシ−ブタノエート、5−ニトロオキシペンタン酸、エチル−5−ニトロオキシペンタノエート、6−ニトロオキシヘキサン酸、エチル−6−ニトロオキシヘキサエート、エチル−4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、8−ニトロオキシオクタン酸、エチル−8−ニトロオキシオクタノエート、11−ニトロオキシウンデカン酸、エチル−11−ニトロオキシウンデカノエート、5−ニトロオキシ−ペンタン酸アミド、および5−ニトロオキシ−N−メチル−ペンタン酸アミドからなる群から選択される。
【0028】
「その誘導体」という用語は、本明細書の用法では、ニトロオキシアルカン酸の塩もまた含んでなる。塩の調製に好ましいカチオンは、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、リチウム(Li+)、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、バリウム(Ba2+)、ストロンチウム(Sr2+)、およびアンモニウム(NH4+)からなる群から選択されてもよい。塩はまた、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から調製されてもよい。
【0029】
本発明化合物は、原則として、それ自体が既知である、ニトロオキシアルカン酸の合成、エステル化またはアミド化方法に従って製造し得る。
【0030】
これらの全例において、生成物(式(I)の化合物)を精製する適切な方法は、当業者によって選択され得て、すなわちカラムクロマトグラフィーにより、または式(I)の化合物は、例えば反応後にジエチルエーテルまたは酢酸エチルなどの溶剤を添加して混合物からの粗生成物分離を誘発し、収集された粗生成物をNaSO上で乾燥させることで、それ自体既知の方法によって単離精製し得る。
【0031】
反芻動物によるメタン排出は、当該技術分野で知られている方法(Grainger et al.,2007 J.Dairy Science;90:2755−2766)によって、代謝チャンバー内の個々の動物において容易に測定し得る。さらにそれはまた、レーザー光線を使用した新たな技術によって家畜小屋レベルでも評価し得る(McGinn et al.,2009,Journal of Environmental Quality;38:1796−1802)。代案としては、酪農反芻動物により産生されるメタンはまた、国際公開第2009/156453号パンフレットに従った、ミルク中のVFAプロフィールの測定によっても評価し得る。
【0032】
反芻動物の能力は、当該技術分野で良く知られている方法によって評価し得て、通常、飼料要求率、飼料摂取量、体重増加、屠体収量、または乳量により特徴付けられる。
【0033】
本発明はまた、二硫化ジアリル、ニンニク油、アリルイソチオシアネート、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、反芻胃中のメタン形成に関して同様の効果を示す少なくとも1つの追加的活性物質と組み合わされた、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の使用にも関する。
【0034】
本発明に従った化合物と共に与えることもあり得るさらなる構成要素は、例えば酵母、精油、そしてMonensinやRumensinなどのイオノフォアである。
【0035】
二硫化ジアリル、ニンニク油、アリルイソチオシアネートデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびそれらの誘導体を、例えば飼料1kgあたり0.01〜500mgの活性物質(ppm)の投与量範囲で、単独投与することが現在のところ考察される。これらの化合物は市販されているか、または先行技術で良く知られている工程と方法を使用して、当業者によって容易に調製され得る。
【0036】
本発明はまた、乾物摂取量キログラムあたりリットルで計算される反芻動物におけるメタン産生が、代謝チャンバー内で測定すると少なくとも10%減少する、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の使用にも関する。好ましくは、メタン減少は、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%である。レーザー光線の使用、または酪農反芻動物では、メタン産生とミルク中VFAプロフィールの相関などの代案のメタン排出測定もまた使用してもよい。
【0037】
本発明はまた、反芻動物飼料要求率が、従来の性能試験で測定すると少なくとも1%低下する、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の使用にも関する。好ましくは、飼料要求率は、少なくとも2%、より好ましくは少なくとも2.5%、さらにより好ましくは少なくとも3%、最も好ましくは少なくとも3.5%低下する。
【0038】
本発明はまた、反芻動物に投与される式(I)で定義される少なくとも1つの活性化合物の量が、飼料1kgあたり1mg〜10g、好ましくは飼料1kgあたり10mg〜1g、より好ましくは飼料1kgあたり50mg〜500mgである、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体の使用にも関する。しかし動物飼料中での使用では、ニトロオキシアルカン酸およびその誘導体はそれほど純粋である必要はなく、それは例えば他の化合物および誘導体を含んでもよい。
【0039】
上述の通り、反芻動物用の飼料添加剤および動物飼料組成物のための化合物として、本発明の化合物は有用であり、したがって動物消化管内のメタン形成を減少させ、または反芻動物の能力を改善する飼料中の活性成分として有用である。
【0040】
反芻動物飼料のためのこのような成分としてのそれらの使用を実現するために、飼料配合および加工技術分野でそれ自体既知の方法によって、化合物を飼料中に組み込んでもよい。
【0041】
したがって本発明のさらなる態様は、調合物、すなわち上で定義される化合物を含有する飼料添加剤および動物飼料組成物である。飼料摂取によって動物に提供される、本発明に従った化合物の通常の1日投与量は、動物種およびその状態に左右される。常態ではこの投与量は、1kgの飼料あたり約1mg〜約10g、好ましくは約10mg〜約1g、より好ましくは50mg〜500mgの化合物の範囲内であるべきである。
【0042】
少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体は、炭酸カルシウム、塩化アンモニウムなどの電解質、大豆ミールなどのタンパク質、小麦、デンプン、ひまわり油かす、コーン、肉骨粉、アミノ酸、動物性脂肪、ビタミン、および微量ミネラルなどの動物飼料組成物(食餌)中に存在する従来の成分と組み合わせて使用されてもよい。
【0043】
本発明の組成物の特定例は、
−(a)表1から選択される少なくとも1つの化合物、および(b)少なくとも1つの脂溶性ビタミン、(c)少なくとも1つの水溶性ビタミン、(d)少なくとも1つの微量ミネラル、および/または(e)少なくとも1つのマクロミネラルを含んでなる動物飼料添加剤;
−表1から選択される少なくとも1つの化合物と、50〜800g/kg飼料の粗製タンパク質含量とを含んでなる動物飼料組成物
である。
【0044】
いわゆるプレミックスは、本発明の動物飼料添加剤の例である。プレミックスは、好ましくは1つまたは複数の微量成分と、希釈剤および/またはキャリアとの均質混合物を指す。プレミックスは、より多量の混合物中において、微量成分の均質分散を容易にするために使用される。
【0045】
本発明のプレミックスは、本発明の活性成分の他に、少なくとも1つの脂溶性ビタミン、および/または少なくとも1つの水溶性ビタミン、および/または少なくとも1つの微量ミネラル、および/または少なくとも1つのマクロミネラルを含有する。換言すれば本発明のプレミックスは、本発明に従った少なくとも1つの化合物と共に、脂溶性ビタミン、水溶性ビタン、微量ミネラル、およびマクロミネラルからなる群から選択される少なくとも1つの追加的構成要素を含んでなる。
【0046】
マクロミネラルは、飼料に別々に添加されてもよい。したがって特定の実施形態では、プレミックスは、本発明の活性成分と共に、脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン、および微量ミネラルからなる群から選択される、少なくとも1つの追加的構成要素を含んでなる。
【0047】
以下は、これらの構成要素例の非排他的一覧である。
−脂溶性ビタミンの例は、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、および例えばビタミンK3などのビタミンKである。
−水溶性ビタミンの例は、ビタミンB12、ビオチンおよびコリン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸、および例えばCa−D−パントテネート(panthothenate)などのパントテネート(panthothenate)である。
−微量ミネラルの例は、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ヨウ素、セレン、およびコバルトである。
−マクロミネラルの例は、カルシウム、リン、およびナトリウムである。
【0048】
雌牛などの反芻動物用飼料組成物ならびにその成分に関して、反芻動物食餌は、通常、易分解性画分(濃縮物と呼ばれる)と、繊維に富む難分解性画分(乾草、茎葉飼料、または不消化食料と呼ばれる)から構成される。
【0049】
乾草は、乾燥させた牧草、マメ科植物または穀物全体からできている。牧草としては、特にオオアワガエリ、ドクムギ、ウシノケグサが挙げられる。マメ科植物としては、特にクローバー、ムラサキウマゴヤシまたはアルファルファ、エンドウ豆、マメ、およびカラスノエンドウが挙げられる。穀物全体としては、特に大麦、トウモロコシ(コーン)、オート麦、ソルガムが挙げられる。他の茎葉飼料作物としては、サトウキビ、ケール、ナタネ、およびキャベツが挙げられる。カブ、スウェーデンカブ、マングル、飼料用ビート、および(甜菜パルプおよび甜菜糖蜜をはじめとする)甜菜などの根菜類菜作物もまた、飼料反芻動物を養うために使用されている。さらに他の作物は、ジャガイモ、キャッサバ、および甘藷などの塊茎である。サイレージは、それによって高水分含有の材料が制御された嫌気性発酵過程によって処理される、(例えば牧草、マメ科植物または全粒粉からの)繊維に富む画分の(自然発酵され、または添加剤処理された)サイロ貯蔵バージョンである。
【0050】
濃縮物は、概して(醸造穀物および蒸留穀物をはじめとする大麦、トウモロコシ、小麦、ソルガムなどの)穀物で構成されるが、ダイズ、ナタネ、パーム核、綿実、およびヒマワリなどのタンパク質に富む飼料成分もまた含有することが多い。
【0051】
雌牛はまた、例えば茎葉飼料、サイレージ、および濃縮物などの全ての食餌構成要素が給餌前に混合される、完全混合飼料(TMR)を与えられてもよい。
【0052】
上述したように、プレミックスは、本発明に従った活性化合物を含んでなってもよい飼料添加剤の一例である。化合物は、異なる他の形態で動物に投与してもよいものと理解される。例えば化合物はまた、反芻胃内に配置され、特定期間にわたり、明確に定義された投与量で規定量の活性化合物を連続的に放出する、大丸薬中に含め得る。
【0053】
本発明は、十分な量の式(I)で定義される少なくとも1つの活性化合物を経口的に投与するステップを含んでなる、反芻動物の消化活動から生じるメタン産生を減少させ、および/または反芻動物の能力を改善する方法にさらに関し、好ましい実施形態は誘導体について記載される。
【0054】
さらに本発明は、活性化合物が、二硫化ジアリル、ニンニク油、アリルイソチオシアネート、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの追加的活性物質と組み合わされて動物に投与される、上述の方法にさらに関する。
【0055】
本発明はまた、反芻動物が、畜牛、ヤギ、ヒツジ、キリン、アメリカバイソン、ヨーロッパバイソン、ヤク、水牛、シカ、ラクダ、アルパカ、ラマ、ヌー、カモシカ、プロングホーン、およびニルガイからなる群、より好ましくは畜牛、ヤギ、およびヒツジからなる群から選択される、上述の方法にも関する。
【0056】
本発明はまた、反芻動物に投与される式(I)で定義される少なくとも1つの活性化合物の量が、1kgの飼料あたり約1mg〜約10g、好ましくは約10mg〜約1gであり、より好ましくは1kgの飼料あたり50mg〜500mgの化合物である、上述の方法にも関する。
【0057】
本発明はまた、乾物摂取量キログラムあたりリットルで計算される反芻動物におけるメタン産生が、代謝チャンバー内で測定すると、少なくとも10%減少する上述の方法にも関する。好ましくは、メタン減少は少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%である。レーザー光線の使用、または酪農反芻動物では、メタン産生とミルク中VFAプロフィールの相関などの代案のメタン排出測定もまた使用してもよい。
【0058】
本発明はまた、反芻動物飼料要求率が、従来の性能試験で測定すると少なくとも1%低下する上述の方法にも関する。好ましくは、飼料要求率は、少なくとも2%、より好ましくは少なくとも2.5%、さらにより好ましくは少なくとも3%、最も好ましくは少なくとも3.5%低下する。
【0059】
本発明の範囲を制限するものではない以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0060】
[実施例]
[実施例1:メタン産生の生体外試験]
この生体外システムによって模倣される、反芻胃機能に対する特定の化合物の効果を試験するために、「Hohenheim茎葉飼料値試験(HFT)」の修正版を使用した。
【0061】
[原理:]
飼料を反芻胃液組成物および適切な緩衝液混合物と共に、シリンジ内に供給する。溶液を39℃でインキュベートする。8時間後、メタン生成量(および組成)が測定され、変換のために式に入れられる。
【0062】
[試薬:]
[質量要素溶液:]
−6.2gカリウム二水素リン酸塩(KHPO
−0.6g硫酸マグネシウム七水和物(MgSO・7HO)
−9ml濃縮リン酸(1mol/l)
−蒸留水に溶解して1lにする(pH約1.6)
[緩衝溶液:]
−35.0g炭酸水素ナトリウム(NaHCO
−4.0g炭酸水素アンモニウム((NH)HCO
−蒸留水に溶解して1lにする
[微量ミネラル溶液:]
−13.2g塩化カルシウム二水和物(CaCl・2HO)
−10.0g塩化マンガン(ll)四水和物(MnCl・4HO)
−1.0g塩化コバルト(ll)六水和物(CoCl・6HO)
−8.0g塩化鉄(lll)(FeCl・6HO)
−蒸留水に溶解して100mlにする
[ナトリウム塩溶液:]
−100mgナトリウム塩
−蒸留水に溶解して100mlにする
[還元液:]
−最初に3mlの水酸化ナトリウム(c=1mol/l)、次に427.5mgの硫化ナトリウム水和物(NaS・HO)を71.25mlのHOに添加する
−溶液は、媒体液にそれを添加するすぐ前に調製しなくてはならない
【0063】
[手順:]
[サンプル秤量:]
通常はTMR(44%濃縮物、6%乾草、37%トウモロコシサイレージ、および13%牧草サイレージ)である飼料を1mmの篩に掛けて、64本のシリンジ内に正確に秤量する。これらのシリンジの4本は、試験化合物の効果なしにガス生成を示す基質対照である。別の4本のシリンジは、ブロモエタンスルホネートが0.1mM添加される陽性対照である。必要であれば、4本のシリンジはキャリア対照を含有する(試験化合物がキャリアを要する場合)。残りのシリンジは、4本のシリンジを1群として試験物質を含有する。
【0064】
[媒体液の調製:]
構成要素を以下の順にWoulffボトル内で混合する。
−711mlの水
−0.18mlの微量ミネラル溶液
−355.5mlの緩衝溶液
−355.5mlの質量要素溶液
完成溶液を39℃に加温し、1.83mlのナトリウム塩溶液の添加、36℃の還元液の添加がそれに続く。指示薬が無色になったら、反芻胃液を添加する。
【0065】
[反芻胃液の抽出:]
持続的撹拌とCOガス処理の下で、750mlの反芻胃液をおよそ1,400mlの媒体液に添加する。
【0066】
[シリンジ充填、インキュベーション、およびガス容積とVFA値の測定:]
希釈反芻胃液(24ml)をガラスシリンジに添加する。次にシリンジを穏やかに撹拌しながら、39℃で8時間インキュベートする。8時間後、生成ガス容積を測定し、ガスクロマトグラフィーによって気相中のメタン百分率を判定する。
【0067】
[結果]
発酵された食物は、人工TMR(44%濃縮物、6%乾草、37%トウモロコシサイレージ、および13%牧草サイレージ)であった。実施例3〜20に記載するようにして生成された化合物を、乾燥物質(DM)の2〜0.01%の濃度で発酵シリンジに添加した。結果を以下の表に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
[実施例2:メタン抑制の生体内試験]
[1.材料と方法]
実験デザインは、各期間中の処置あたり2匹のヒツジを用いた、交差法からなった。試験は次の3連続期間からなった。チャンバー内における14日間の用量への適応と、それに加えて3日間の連続的メタン測定。この14日間の適応相は、連続期間中にアッセイされる異なる用量間の洗い出しに必要な期間として、確立された。チャンバー内でのメタン測定の最後の2日間、朝の給餌の2時間後に反芻胃内容物サンプルを収集し、副標本を採って、DNAの抽出および揮発性脂肪酸とアンモニア窒素濃度の測定前に、即座に凍結した。実験動物は、2匹ずつの3つの下位群に無作為に配分し、3種の処置(対照、用量1、および用量2)の1つを割り当てた。3つの下位群は、チャンバー内でのメタン測定に先だって同数の適応日を有するように、3日間間隔で適応期間を開始した。各動物はケージ内で飼育し、新鮮な水が常にあるようにした。動物に提供される食餌は、エネルギー必要量維持レベルのおよそ1.1倍である、1:1の比率の15〜20cmに刻んだアルファルファ乾草と濃縮物(Prietoら,1990)に、ミネラル−ビタミン補給剤を加えたものからなった。試験全体を通じて、新鮮物摂取について各動物を毎日モニターした。食餌は、9時および14時に、2回の等しい飼料で動物に提供された。
【0071】
添加剤は、反芻胃カニューレを通じて、餌と同時に日に2回提供される。反芻胃内に入れる直前に、各用量の対応する量を10グラムの粉砕濃縮物に添加し、セルロース紙に包んだ。活性分子の揮発減量を避けるために、双方の添加剤を4℃の低温室内に保ち、そこにおいてセルロースバッグ内へ定量供給する日課を実施した。
【0072】
用量は毎日50(用量1)および500(用量2)mg/動物であった。より高い用量は、適応期間全体が結果的にさらに3日間延長するように、3日間の漸進的増大(50、200、および500mg)後に達成された。
【0073】
この実験で試験された添加剤は、式、
【化2】


のエチル−3−ニトロオキシプロピオネートであった。
【0074】
[メタン測定]
14日目に、連続3日間のメタン測定のために、動物をチャンバー内に誘導した。各チャンバーは、幅1.8m×奥行き1.8m×高さ1.5mであった。チャンバーの気温は、15〜20℃に保った。各チャンバー内では、動物を適応期間と同一のケージ内で個別に拘束した。中断は、毎日チャンバー床が掃除されて動物が給餌される、8時30分に起きた。流動は毎日3回計算してから平均し、23時間排出値を導き出したので、これらの中断は、日々の排出にわずかな影響しか及ぼさない。各チャンバーの吸気および排気ダクトについて、気流とメタン濃度を測定した。各チャンバーの各吸気および排気ダクト内で、気流速度を連続的に1日中モニターした。3つの各ダクト中の気流(チャンバー1、チャンバー2、およびバックグラウンド)の副標本を採り、ガス分析器ADM MGA3000(Spurling works,Herts,UK)を使用して、メタン濃度を連続的に測定した。双方のチャンバー(チャンバー1および2では3分間、バックグラウンドでは2分間)において、全ての吸気および排気ダクトで逐次、気流のサンプル採取をするのに8分かかった。要約すれば、各チャンバーのメタン流量は、新鮮吸気とチャンバー排気メタン濃度の差、および気流速度から、3日間の測定期間のそれぞれで計算した。
【0075】
[反芻胃サンプル分析]
反芻胃内容物のサンプルを凍結乾燥して、ビーズビーター(Mini−bead Beater;BioSpec Products,Bartlesville,OK,USA)を使用して物理的破壊によって十分混合してから、溶解インキュベーションでより高い温度(95℃)を使用する修正を加えて、製造業者の使用説明書に従ってQIAamp(登録商標)DNA Stool Mini Kit(Qiagen Ltd,West Sussex,UK)を使用し、およそ50mgのサンプルからDNAを抽出した。DNAサンプルを定量的リアルタイムPCR(qPCR)増幅のテンプレートとして使用した。リアルタイムPCR(qPCR)によって、総細菌数、総原生動物数、および総メタン産生古細菌数を定量化した。
【0076】
異なるプライマーセットを使用して、16S rRNA標的遺伝子組換え総細菌(Maeda et al.FEMS Inmunology and Medical Microbiology 39,81−86,2003)、および原生動物(Sylvester et al.Journal Dairy Science.88,2083−2095 2005)を増幅した。メタン産生古細菌を検出するために設計されたプライマーは、メチル補酵素M還元酵素(mcrA)遺伝子(Denman et al.FEMS Microbiology Ecology.62,313−322,2007)を標的とする。増幅混合物は、最終容積23μl中に、11.5μlの2×RT−PCR supermix BioRad(Bio−Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA,USA)、0.4μlの各プライマー(50pmol)、および0.5μlのサンプルを含有した。各プライマーペアについて、以下のプログラムによって増幅効率を評価した。95℃で5分間のサイクル、95℃で15秒間、60℃で30秒間、72℃で55秒間の40サイクル、および6秒間の蛍光放射測定中は75℃。温度を55℃から95℃に増大させて融解曲線を構築し、5℃毎に読み取った。各標的群の増幅は、以下のプログラムで実施した。95℃で5分間のサイクル、95℃で15秒間、60℃で15秒間、および72℃で45秒間(蛍光放射測定を含む)の40サイクル、および設定値温度45℃で終了温度95℃の融解曲線。DNAコピー数で表される細菌、原生動物、およびメタン産生古細菌の絶対量は、標準を使用して測定された。qPCR標準は、プラスミドpCR(登録商標)4−TOPO(InvitrogenTM,Carlsbad,CA,USA)からなった。それぞれのプライマーセットを使用して得られるPCR産物を精製し、次にPCR(登録商標)4−TOPO(登録商標)プラスミド(InvitrogenTM,Carlsbad,CA,USA)にクローンして、組換えプラスミドを作成した。PCRを使用して予期される挿入断片について確認された単一コロニーを、抗生物質およびX−gal添加固体培地で一晩培養した。その後、形質転換大腸菌(E.coli)コロニーのスクリーニングを実施して陽性コロニーのいくつかを無作為に選択した。PCRによってコロニー中の挿入断片存在についてチェックした後、陽性コロニーの大量培養を液体培地内で一晩行った。Pure LinkTM Miniprep kit(InvitrogenTM,Carlsbad,CA,USA)を使用して、これらの培養物に属するプラスミドを抽出し、次に配列決定して挿入断片の存在を確認した。プラスミドDNAの濃度と、挿入断片のあるベクターの分子量とを使用して、プラスミド抽出物中に存在する16S rRNA遺伝子のコピー数を計算した。濃縮プラスミドを連続的希釈(10−fold)して、10〜10範囲のコピーを提供した。連続希釈サンプルを使用して、標準曲線を作成した。
【0077】
揮発性脂肪酸をガスクロマトグラフィーによって分析し、アンモニアN濃度を(Cantalapiedra−Hijar et al.Journal of Animal Science.87,622−631,2009)に従って、比色定量で分析した。
【0078】
[統計学的分析]
個別メタン排出、VFAプロフィール、酢酸とプロピオン酸の比率、アンモニアN濃度、および総細菌、総原生動物、およびメタン産生古細菌濃度のlog10変換を以下の効果について分析した。添加剤用量、測定日、および実験の交差法配置下における分散の反復測定分析を使用した、それらの相互作用。各分析について標準誤差(SEM)を計算した。測定日の顕著な効果、またはその添加剤用量との相互作用はいずれの実験でも検出されず、したがって用量の効果のみを表に含める。最小有意差(LSD)手順を使用して、手段をさらに比較した。データ入力と統計学的分析のために、SPSS for Windows,version 14.0(2005;SPSS Inc.,Chicago,IL)を使用した。
【0079】
[2.結果]
新鮮物摂取は、試験動物の適応期間中に変化しなかった。同様に、体重(チャンバー測定前後の体重の平均としての)は、処置間で異ならなかった(表3)。統計的差違(P<0.05)は高用量を使用した場合にのみ達成されたが、エチル−3−ニトロオキシプロピオネート添加剤を食餌に組み込むと、正味のまたは重量/摂取単位当たりのメタン排出が顕著に減少した。観察された減少は、用量1および2でそれぞれ18%および29%であり、各期間の開始7日後に得られた中間値が、上述したのと同じ傾向を示したことから、適応の最初の数日間に起きたようであった。
【0080】
【表6】

【0081】
反芻胃発酵パラメータの研究は、添加剤を与えた動物、特により高用量で処置した動物の反芻胃内で、プロピオン酸タイプのプロフィールに向かう、発酵経路中のシフト(表4)を示した。これは添加剤用量の増大に連動する、酢酸とプロピオン酸比率の低下(P<0.05)に反映された。アンモニアN濃度は、処置間で同様であった。
【0082】
【表7】

【0083】
反芻胃内における主要微生物群の濃度の研究は、処置間の差を示さなかった。しかし動物に、より高用量の添加剤を与えると、総細菌およびメタン産生古細菌では、それぞれ数的増大と数的減少が観察された。
【0084】
【表8】

【0085】
[3.結論]
エチル−3−ニトロオキシプロピオネートは、H転移に関与する代謝経路中にシフトを引き起こす、メタン産生の強力な阻害剤のようである。
【0086】
[実施例3:エチル3−ニトロキシ−プロピオネートの合成]
【化3】


150mlのアセトニトリルに溶解した30mmolのエチル3−ブロモプロピオネートと、75mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で5時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、4.88g(29.9mmol、99.7%)が残った。
【0087】
[実施例4:3−ニトロキシ−プロピオン酸の合成]
【化4】


120mlのアセトニトリルに溶解した14.6mmolの3−ブロモプロピオン酸と、36.5mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で7時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、1.17gが残った。
【0088】
ヘキサン/酢酸エチル4:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:0.51g(3.77mmol、25.8%)。
【0089】
[実施例5:エチル4−ニトロキシ−ブタノエートの合成]
【化5】


120mlのアセトニトリルに溶解した14.6mmolのエチル4−ブロモブタノネート(4−bromobutanonate)と、36.5mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で7時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、2.63gが残った。
【0090】
ヘキサン/酢酸エチル4:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:1.9g(10.7mmol、73.5%)。
【0091】
[実施例6:4−ニトロキシ−ブタン酸の合成]
【化6】


115mlのアセトニトリルに溶解した14.1mmolの4−ブロモブタン酸と、35.1mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で6時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、1.04gが残った。
【0092】
ヘキサン/酢酸エチル4:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:0.54g(3.6mmol、25.4%)。
【0093】
[実施例7:エチル5−ニトロキシ−ペンタノエートの合成]
【化7】


115mlのアセトニトリルに溶解した14.1mmolの5−ブロモ吉草酸エチルと、35.1mmolの亜硝酸銀を遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で6時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、2.66gが残った。
【0094】
ヘキサン/酢酸エチル4:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:2.23g(11.7mmol、83%)。
【0095】
[実施例8:5−ニトロキシ−vペンタン酸(vpentanoic acid)の合成]
【化8】


78.7mmolの5−ブロモ吉草酸200mlのアセトニトリル(78.7 mmol 5−bromovaleric acid 200 ml acetonitrile)と、196.75mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で4時間30分撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣を水に溶解し、TMBEで2回抽出した。有機相を水および鹹水で洗浄し、合わせてNaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、7.54gが残った。
【0096】
ヘプタン/酢酸エチル1:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:7.19g(44.1mmol、56.0%)。
【0097】
[実施例9:エチル2−ニトロキシ−プロピオネートの合成]
【化9】


115mlのアセトニトリルに溶解した14.1mmolのエチル2−ブロモプロピオネートと、36.1mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で6時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、2.02g(12.4mmol、88.1%)が残った。
【0098】
[実施例10:エチル6−ニトロオキシ−ヘキサノエートの合成]
【化10】


100mlのアセトニトリルに溶解した48.80mmolのエチル6−ブロモヘキサノエートと、122.0mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で19時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、10.06gが残った。
【0099】
ヘキサン/酢酸エチル4:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:9.72g(47.4mmol、97.1%)。
【0100】
[実施例11:6−ニトロオキシ−ヘキサン酸の合成]
【化11】


19.1mmolのエチル6−ニトロオキシ−ヘキサノエートを222mlのメタノール/THF1:1に溶解した。37.5mlの1M水酸化リチウム水溶液を反応に添加して、濁った溶液を50℃で18時間加熱した。室温への冷却後、溶液を真空内で濃縮した。溶液のpHレベルを25%HClで1に低下させ、TMBEで2回抽出した。有機相を合わせて鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、3.43gが残った。
【0101】
ヘキサン/酢酸エチル1:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:2.96g(16.7mmol、87.5%)。
【0102】
[実施例12:メチル3−ニトロキシ−プロピオネートの合成]
【化12】


40mlのアセトニトリルに溶解した10mmolのメチル3−ブロモプロピオネートと、25mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で5時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで2回再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、1.39gが残った。
【0103】
ヘキサン/酢酸エチル5:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:0.43g(2.9mmol、28%)。
【0104】
[実施例13:エチル3−ニトロキシ−ブタノエートの合成]
【化13】


80mlのアセトニトリルに溶解した14.1mmolのエチル3−ブロモブタノエートと、35.1mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で5時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで2回再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、2.03gが残った。
【0105】
ヘキサン/酢酸エチル5:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率1.35g(7.6mmol、53.3%)。
【0106】
[実施例14:8−ニトロオキシ−オクタン酸の合成]
【化14】


60mlのアセトニトリルに溶解した21.75mmolの8−ブロモオクタン酸と、54.4mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で20時間30分撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣を水に溶解し、TMBEで抽出した。有機相を水および鹹水で洗浄し、合わせてNaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、4.44gが残った。
【0107】
ヘプタン/酢酸エチル1:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:3.99g(19.4mmol、89.4%)。
【0108】
[実施例15:エチル8−ニトロオキシ−オクタノエートの合成]
【化15】


80mlのアセトニトリルに溶解した20.0mmolのエチル8−ブロモオクタノエートと、50.0mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で18時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液をシリカゲル上で濾過して酢酸エチルで洗浄し、真空内で濃縮した。
【0109】
ヘプタン/酢酸エチル4:1を使用して、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:4.35g(18.6mmol、93.2%)。
【0110】
[実施例16:エチル11−ニトロオキシ−ウンデカノエートの合成]
【化16】


60mlのアセトニトリルに溶解した13.8mmolのエチル11−ブロモウンデカノエートと、34.6mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を60℃で19.5時間撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を真空内で濃縮した。残渣をジクロロメタンに溶解し、水で抽出した。水相をジクロロメタンで再度洗浄した。合わせた有機相を水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、4.86gが残った。
【0111】
ヘプタン/酢酸エチル20:1を使用してシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:3.6g(13.1mmol、95.0%)。
【0112】
[実施例17:11−ニトロオキシ−ウンデカン酸の合成]
【化17】


60mlのアセトニトリルに溶解した18.7mmolの11−ブロモウンデカン酸と、46.6mmolの亜硝酸銀とを遮光したフラスコに入れた。この懸濁液を70℃で21時間30分撹拌した。室温への冷却後、懸濁液を濾過して真空内で濃縮した。残渣を水に溶解し、TMBEで抽出した。有機相を水および鹹水で洗浄した、合わせて、NaSO上で乾燥させて溶剤を真空中で除去すると、4.34gが残った。
【0113】
ヘプタン/酢酸エチル2:1を使用してシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製した。収率:4.01g(16.1mmol、86.2%)。
【0114】
[実施例18:5−ニトロオキシ−ペンタン酸メチルアミドの合成]
【化18】


[5−ニトロオキシ−ペンタン酸2の合成:]
50.0mLの乾燥アセトニトリル中の5−ブロモ吉草酸1(5.00g、1.0eq)溶液に、硝酸銀(5.10g、1.1eq)を添加した。反応混合物を暗下において、70℃で2時間加熱した。得られた混合物をセライトを通して濾過し、濾液を真空下で濃縮した。残渣を塩酸(1N)(100.0mL)水溶液に溶解し、ジクロロメタン(2×100.0mL)で抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥させて溶剤を真空下で蒸発させ、化合物2を無色液体として得た(2.92g、収率=65%)。
【0115】
5−ニトロオキシ−ペンタン酸メチルアミド3の合成:
0℃に冷却した乾燥ジクロロメタン(20.0mL)中の化合物2(1.60g、1.0eq)の溶液に、トリエチルアミン(1.70mL、1.2eq)、続いてクロロギ酸エチル(1.10mL、1.1eq)を添加した。反応混合物を0℃で45分間撹拌して、40%水性メチルアミン(20.0mL)を添加した。溶液を0℃からRTで18時間撹拌し、硫酸ナトリウムを添加して反応混合物を乾燥させた。得られた混合物を濾過して、濾液を真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[Biotage(登録商標)、ジクロロメタン/メタノール100/0→97/3(15CV)]によって、残渣をシリカゲル上に吸着させて精製し、化合物3を無色の液体として得た(0.84g、収率=47%)。
【0116】
最終化合物を減圧下60℃で18時間乾燥させた。分解をH NMRによって観察した。フラッシュクロマトグラフィー[Biotage(登録商標)、ジクロロメタン/メタノール100/0→98/2(15CV)、98/2(4CV)]によって、分解化合物をシリカゲル上に吸着して精製し、化合物3を淡黄色液体として得た(0.59g、収率=33%)。
【0117】
室温で1週間後に、さらなる分解は観察されなかった。
*CV=カラム体積
【0118】
[実施例19:4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボン酸エチルエステルの合成]
【化19】


0℃の発煙硝酸100%(0.97mL、2.0eq)に、濃硫酸96%(1.24mL、2.0eq)を滴下して添加した。0℃で10分間撹拌後、ジクロロメタン(20.0mL)中の1(2.00g、1.0eq)の溶液を滴下して添加した。反応混合物を0℃〜RTで3時間撹拌し、水(30.0mL)でクエンチした。有機層を水(20.0mL)および鹹水(20.0mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させて濾過し、真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[Biotage(登録商標)、ジクロロメタン/メタノール100/0→97/3(10CV)、97/3(5CV)]によって、残渣をシリカゲル上に吸着して精製し、化合物2を無色の液体として得た(1.47g、収率=58%)。
【0119】
[実施例20:5−ニトロオキシ−ペンタン酸アミドの合成]
【化20】


5−ニトロオキシ−ペンタン酸2の合成:
50.0mLの乾燥アセトニトリル中の5−ブロモ吉草酸1(5.00g、1.0eq)の溶液に硝酸銀(5.10g、1.1eq)を添加した。反応混合物を暗下で70℃で2時間加熱した。得られた混合物をセライトを通して濾過し、濾液を真空下で濃縮した。残渣を塩酸(1N)水溶液(100.0mL)に溶解し、ジクロロメタン(2×100.0mL)で抽出して、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶剤を真空下で蒸発させて、化合物2を無色の液体として得た(2.92g、収率=65%)。
【0120】
5−ニトロオキシ−ペンタン酸アミド3の合成:
0℃に冷却した乾燥ジクロロメタン(20.0mL)中の化合物2(1.30g、1.0eq)の溶液に、トリエチルアミン(1.30mL、1.2eq)、続いてクロロギ酸エチル(0.83mL、1.1eq)を添加した。反応混合物を0℃で45分間撹拌し、30%水性アンモニア溶液(15.0mL)を添加した。溶液を0℃〜RTで18時間撹拌し、硫酸ナトリウムを乾燥混合物に添加した。得られた混合物を濾過して、濾液を真空下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー[Biotage(登録商標)、ジクロロメタン/メタノール100/0→98/2(12CV)、98/2(6CV)]によって、残渣をシリカゲル上に吸着して精製し、化合物3を白色固体として得た(1.10g、収率=85%)。
【0121】
最終化合物を60℃減圧下で18時間乾燥させた。分解をH NMRによって観察した。フラッシュクロマトグラフィー[Biotage(登録商標)、ジクロロメタン/メタノール100/0→98/2(12CV)、98/2(6CV)]によって、分解化合物をシリカゲル上に吸着して精製し、化合物3を白色固体として得た(0.90g、収率=70%)。
【0122】
室温で1週間後に、さらなる分解は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、
【化1】


(式中、
nは0〜23であり、n≠0であれば、炭素鎖は、一価または多価不飽和であってもよくあらゆる異性体形態であってもよい、直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xは独立してO、NH、またはN−R3であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルまたは二級アミド誘導体を表し、
R1は独立して、水素であるか、1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖、環状鎖または分枝鎖であり、
R2は独立して、水素であるか、1〜23個、好ましくは1〜9個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖または分枝鎖であり、
R3は独立して、水素でるか、1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖、環状鎖または分枝鎖である)
によって定義される、少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸、および/またはその誘導体の、反芻動物の消化活動から生じるメタン形成を減少させるための、および/または反芻動物の能力を改善するための動物飼料中の活性化合物としての使用。
【請求項2】
nが0〜9であり、n≠0であれば、炭素鎖は、任意の異性体形態の直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xが独立して、O、NH、またはN−R3であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルまたは二級アミド誘導体を表し、
R1が独立して、水素であるか、1〜5個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖または分枝鎖であり、
R2が独立して、水素であるか、1〜9個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖または分枝鎖であり、
R3が独立して、水素であるか、1〜5個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖または分枝鎖である、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R1が水素(H)、メチル、およびエチルからなる群から選択され、
R2が独立して水素(H)、メチル、およびエチルからなる群から選択され、
R3が独立して水素(H)、メチル、およびエチルからなる群から選択される、
請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
R1が水素(H)、メチル、およびエチルからなる群から選択され、
R2が水素(H)であり、
R3が独立して水素(H)、メチル、およびエチルからなる群から選択される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
Xが酸素(O)であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルを表し、
R2が水素(H)である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸および/またはその誘導体が、3−ニトロオキシプロピオン酸、メチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−3−ニトロオキシプロピオネート、エチル−4−ニトロオキシ−ブタノエート、エチル−3−ニトロオキシ−ブタノエート、5−ニトロオキシペンタン酸、エチル−5−ニトロオキシペンタノエート、6−ニトロオキシヘキサン酸、エチル−6−ニトロオキシヘキサエート、エチル−4−ニトロオキシ−シクロヘキシルカルボキシレート、8−ニトロオキシオクタン酸、エチル−8−ニトロオキシオクタノエート、11−ニトロオキシウンデカン酸、エチル−11−ニトロオキシウンデカノエート、5−ニトロオキシ−N−ペンタン酸アミド、および5−ニトロオキシ−N−メチル−ペンタン酸アミドからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ニトロオキシアルカン酸またはその誘導体が、二硫化ジアリル、ニンニク油、アリルイソチオシアネート、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、少なくとも1つの追加的活性物質と組み合わせられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記反芻動物が、畜牛、ヤギ、ヒツジ、キリン、アメリカバイソン、ヨーロッパバイソン、ヤク、水牛、シカ、ラクダ、アルパカ、ラマ、ヌー、カモシカ、プロングホーン、およびニルガイからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
乾物摂取量キログラムあたりリットルで計算される反芻動物におけるメタン産生が、代謝チャンバー内で測定すると少なくとも10%減少する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記反芻動物に投与される式(I)で定義される前記少なくとも1つの活性化合物の量が、飼料1kgあたり1mg〜10gである、請求項1〜9〜のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのニトロオキシアルカン酸およびその誘導体を含んでなる、いずれ飼料組成物または飼料添加剤。
【請求項12】
ミネラルプレミックス、ビタミンプレミックス、またはビタミンおよびミネラルを含むプレミックス、または大丸薬である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
式(I)、
【化2】


(式中、
nは0〜23であり、n≠0であれば、炭素鎖は、一価または多価不飽和であってもよく、あらゆる異性体形態であってもよい直鎖、環状鎖、または分枝直鎖または環式脂肪族炭素鎖であり、
Xは独立してO、NH、またはN−R3であり、R1≠Hであれば、X−R1−はエステルまたは二級アミド誘導体を表し、
R1は独立して、水素であり、または1〜10個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖、環状鎖または分枝鎖であり、
R2は独立して、水素であるか、1〜23個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖または分枝鎖であり、
R3は独立して、水素であるか、1〜10個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルケニル基の飽和直鎖、環状鎖または分枝鎖である)
で定義される、十分な量の少なくとも1つの活性化合物を経口的に投与するステップを含んでなる、反芻動物の消化活動から生じるメタン産生を減少させ、および/または反芻動物の能力を改善する方法。
【請求項14】
前記活性化合物が、二硫化ジアリル、ニンニク油、アリルイソチオシアネート、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの追加的活性物質と組み合わされて動物に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反芻動物が、畜牛、ヤギ、およびヒツジからなる群から選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記反芻動物に投与される式(I)で定義される少なくとも1つの活性化合物の量が、飼料1kgあたり1mg〜10gである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
乾物摂取量キログラムあたりリットルで計算される反芻動物におけるメタン産生が、代謝チャンバー内で測定すると少なくとも10%減少する、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−513577(P2013−513577A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542556(P2012−542556)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069338
【国際公開番号】WO2011/070133
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】