説明

反転印刷方法およびそれに使われる除去版、その製造方法

【課題】除去版のパターンサイズが小さい場合であっても、パターンの高解像性を維持することができる反転印刷方法およびそれに使われる除去版、その製造方法を提供する。
【解決手段】版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部15と凹部12とからなるパターンを形成した除去版6を用意する。ブランケット3上に塗布されたインキ材料に除去版6を押し当てることにより凸部15の頂面16に対応するインキ材料をブランケット3から除去することでブランケット3上に残存するインキ材料からなる凹部12に対応する形状のパターンインキを形成する。パターンインキを基材4に転写することによって基材4上に凹部12に対応する形状のパターンを形成する。除去版6は、凸部15の頂面16で凹部12の外周に位置する部分に凹部12の輪郭に沿って延在する溝状の凹型補正線13が連続してあるいは断続して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂性の薄いフィルムにパターンを形成するための、反転印刷方法およびそれに使われる除去版、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイは薄型化の一途をたどり、ガラス基板に0.3mm厚のものを使ったパネル等が登場している。
【0003】
また、これまで液晶表示方式が主流だったが、新たな表示デバイスである有機ELや電子ペーパー等が誕生し、表示品質も向上しつつある。
【0004】
さらに、薄型化だけではなく、湾曲させることが可能なフレキシブルディスプレイも注目され始め、特に電子ペーパーはその技術に特化した表示デバイスと言える。
【0005】
湾曲させるためには、ガラス基材ではなく、樹脂フィルムを使う必要がある。樹脂フィルムを使うことによって、ガラスでは不可能だったフレキシブル性を付加することができる。
【0006】
樹脂フィルムにパターンを転写する方法として、反転印刷法がよく用いられる。反転印刷法は、版銅に巻きつけたブランケット上にインキを塗工してインキ膜を形成し、その後に凸部、凹部のパターンからなる除去版をインキ膜に押圧することによりブランケット上から不要なパターンを除去し、最後にブランケットに残ったパターンを基材に印刷する技術である。(特許文献1参照)
【0007】
フレキシブル部材へのパターン形成に反転印刷法が用いられるのは、ロール巻きでの基材処理に適していることと、解像性が高い点が挙げられる。高精細なパターンについては、フォトリソ法以上に優位と言える。
【0008】
除去版は、ガラス、または石英等の版材をエッチングすることによって作られる。Cr等の金属膜が蒸着された版材に光硬化性を持つレジストを使ってフォトリソ法によってパターニングする。その後、Cr膜をエッチングした後にレジストを剥離すると、Crのパターンが形成される。更に版材をエッチングしてCr膜を剥離すれば、凸部と凹部のパターンからなる除去版が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−56405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
反転印刷法では、前述の通り除去版を使う。除去版とは、ガラス、または石英等の版材に凸部と凹部からなるパターンが形成されたものであり、ブランケット上のインキ膜に押圧すると、凸部がインキ膜に接触し、凹部は接触しない。したがって、ブランケットから除去版を剥離すると、凹部のパターンがブランケットに残る。ブランケットに残ったパターンは、ラミネート等の処理により、製品となる樹脂基材に転写される。
【0011】
問題となるのは解像性である。反転印刷法の利点として解像性が高い点を先に述べたが、凹部となるパターンのサイズが小さいと、直角コーナー等の形状が丸みを帯びてしまい、解像性が落ちてしまうという欠点がある。
【0012】
除去版がブランケットのインキ膜に接触する際、凸部分のみがインキ膜に接触し、凹部分は接触しない。つまり、除去版の凹部分にはインキはが入りこまず、空隙を生じた状態となる。
【0013】
除去版とブランケットを剥離すると、インキ膜と接触していた除去版の凸部分にのみブランケットのインキが転写される。凹部分は、空隙によって除去版とインキ膜が接触していないため、空隙の形状がブランケットに残る。
【0014】
最近問題となっているのが、小パターンの解像度悪化である。近年、ディスプレイの高精細化に伴って、カラーフィルター等の画素パターンが小さくなってきている。画素パターンの小さな除去版を使って、反転印刷法によりパターンを転写すると、四角形の画素のコーナーが丸みを帯びてしまうといった不具合が報告されている。
【0015】
パターンが形成された除去版をインキ膜に接触させると、例えばパターンとなる四角形の凹部にはインキは接触しない。しかし、四角形が小さくなると、あるサイズからインキの表面張力の働きが顕著になり、四隅にインキが侵食するという現象が発生する。
【0016】
除去版の凹部四隅にインキが侵食すると、本来ブランケットに残すべき四角形のコーナーインキが除去版に取られてしまうために、ブランケットから基材に転写されるパターンは丸みを帯びた四角形になる。
【0017】
印刷物、とりわけディスプレイの光学素子として使われるものにおいて、解像度は非常に重要である。例えばカラーフィルターにおける解像度不良は、開口率に大きな影響を与える。
【0018】
カラーフィルターの形状は、大きく分けて、ストライプ型とアイランド型がある。ストライプ型のものは、各色がストライプ状に並んで配色されているのに対し、アイランド型は各色の四角形が縦横に並べられる。
【0019】
ディスプレイにあらゆる方式があることは前述の通りだが、それに使われるカラーフィルターは、近年アイランド型が多くなってきた。また、方式によっては、ブラックマトリックスを採用しないものも出始めており、アイランド形における各色の形状は、丸みを帯びない、高解像のものが求められている。
【0020】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、除去版のパターンサイズが小さい場合であっても、パターンの高解像性を維持することができる反転印刷方法およびそれに使われる除去版、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明は、版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部と凹部とからなるパターンを形成した除去版を用意し、ブランケット上に塗布されたインキ材料に前記除去版を押し当てることにより前記凸部の頂面に対応する前記インキ材料を除去することで前記ブランケット上に残存する前記インキ材料からなる前記凹部に対応する形状のパターンインキを形成し、前記パターンインキを基材に転写することによって前記基材上に前記凹部に対応する形状のパターンを形成する反転印刷方法であって、前記除去版は、前記凸部の頂面で前記凹部の外周に位置する部分に前記凹部の輪郭に沿って延在する溝状の凹型補正線が連続してあるいは断続して形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項2の発明は、版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部と凹部とからなるパターンを形成した除去版を用意し、ブランケット上に塗布されたインキ材料に前記除去版を押し当てることにより前記凸部の頂面に対応する前記インキ材料を除去することで前記ブランケット上に残存する前記インキ材料からなる前記凹部に対応する形状のパターンインキを形成し、前記パターンインキを基材に転写することによって前記基材上に前記凹部に対応する形状のパターンを形成する反転印刷方法であって、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項3の発明は、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記凹型補正線を含む前記除去版のパターンを、ガラスエッチングによって形成することを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明は、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記除去版のパターンを、ガラスエッチングによって形成することを特徴とする。
【0025】
請求項5の発明は、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記凹型補正線を含む前記除去版のパターンを、光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成することを特徴とする。
【0026】
請求項6の発明は、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記除去版のパターンを、光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成することを特徴とする。
【0027】
請求項7の発明は、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版であって、前記凹型補正線の線幅が2.0μm以上、8.0μm以下であることを特徴とする。
【0028】
請求項8の発明は、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版であって、前記第1の凸部の頂面の幅が2.0μm以上、8.0μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は以上の構成であるから、以下に示す如き効果がある。すなわち、請求項1に係わる発明によれば、版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部と凹部とからなるパターンを形成した除去版を用意し、ブランケット上に塗布されたインキ材料に前記除去版を押し当てることにより前記凸部の頂面に対応する前記インキ材料を除去することで前記ブランケット上に残存する前記インキ材料からなる前記凹部に対応する形状のパターンインキを形成し、前記パターンインキを基材に転写することによって前記基材上に前記凹部に対応する形状のパターンを形成する反転印刷方法であって、前記除去版は、前記凸部の頂面で前記凹部の外周に位置する部分に前記凹部の輪郭に沿って延在する溝状の凹型補正線が連続してあるいは断続して形成されている。
したがって、凹型補正線を形成することによって、転写時の余剰インキが当該凹型補正線にトラップされ、凹部パターン内部には侵入しない。凹型補正線とは、パターン外周に設けられた凹型の溝であり、パターンを囲む形状で形成されている。これは連続的な直線であっても、断続的な点線であっても良い。これによって、除去版から基材にパターンを転写した際に、例えば四角形のコーナーが丸みを帯びることなく、高精細なパターンを形成することができる。
【0030】
また、請求項2に係わる発明によれば、版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部と凹部とからなるパターンを形成した除去版を用意し、ブランケット上に塗布されたインキ材料に前記除去版を押し当てることにより前記凸部の頂面に対応する前記インキ材料を除去することで前記ブランケット上に残存する前記インキ材料からなる前記凹部に対応する形状のパターンインキを形成し、前記パターンインキを基材に転写することによって前記基材上に前記凹部に対応する形状のパターンを形成する反転印刷方法であって、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成されている。
したがって、除去版の凹部のパターン外周に第1の凸部を形成することによって、転写時に凹部パターン内部への余剰なインキの進入を防ぐことができる。したがって、請求項1と同様に、除去版から基材にパターンを転写した際に、例えば四角形のコーナーが丸みを帯びることなく、高精細なパターンを形成することができる。
【0031】
また、請求項3に係わる発明によれば、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記凹型補正線を含む前記除去版のパターンを、ガラスエッチングによって形成する。
また、請求項4に係わる発明によれば、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記除去版のパターンを、ガラスエッチングによって形成する。
したがって、例えば、Cr膜ガラス基材を用いてフォトリソ法によって除去版を作製するという公知の技術を使うため、本発明に係わる除去版を容易に作成することができる。
【0032】
また、請求項5に係わる発明によれば、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記凹型補正線を含む前記除去版のパターンを、光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成する。
また、請求項6に係わる発明によれば、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、前記除去版のパターンを、光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成する。
したがって、請求項5、6は、請求項3、4のエッチング法と対比するものである。フォトリソ法で当該発明の除去版を作製するメリットは、除去版自体の解像性が向上すること、および安価で製造できることが挙げられる。
【0033】
また、請求項7に係わる発明によれば、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版であって、前記凹型補正線の線幅が2.0μm以上、8.0μm以下である。
また、請求項8の発明に係わる発明によれば、ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版であって、前記第1の凸部の頂面の幅が2.0μm以上、8.0μm以下である。
したがって、凹型補正線の線幅、および、第1の凸部の幅を上記の通り定義することによって、効率良くパターンの解像性を向上させることができる。凹型補正線の線幅、および、第1の凸部の幅が上記定義より細い場合、解像性の良化は見られない。また、凹型補正線の線幅、および、第1の凸部の幅が上記定義より逆に太い場合はパターン形状に不具合を発生、若しくは不要なパターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】転写装置概略図であり、(a)は上から見た転写装置の図、(b)は除去版6による転写を横から見た図、(c)は基材への転写を横から見た図である。
【図2】本願における除去版概略図であり、(a)は除去版6を上から見た図、(b)−1は請求項1に対応する除去版6のパターンを上から見た拡大図、(b)−2は請求項1に対応する除去版6のパターンの断面の拡大図、(c)−1は請求項2に対応する除去版6のパターンを上から見た拡大図、(b)−2は請求項2に対応する除去版6のパターンの断面の拡大図である。
【図3】実施例とその効果を示す説明図であり、(a)は実施例で使った除去版6のパターンの設計の図、(b)は従来の方法で形成した除去版6のパターンの図、(c)は本発明方法を使って形成した除去版6のパターンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明における高解像のパターンを得るための反転印刷の実施形態について説明する。
【0036】
図1に転写装置の概略を示した。ブランケット3は1、2の延伸ローラーによって両側から張力がかけられている。5はインキの塗工領域である。
【0037】
図1(a)は転写時におけるブランケット3、除去版6、および基材4の位置関係を示したものである。コート領域(塗工領域5)は、例えば塗工ステージにブランケット3を吸着し、ダイ方式等によって塗工して形成する。塗工領域は、ブランケット3を搬送することによって、8の基材ステージまで運ばれる。
【0038】
図1(b)は塗工領域5を除去版6にラミネートする工程を示した図である。ブランケット3上の塗工領域5は、1、2の延伸ローラーによって両側から張力をかけながら、7のラミネートローラーによって除去版6にラミネートされる。
【0039】
除去版6には、図2(a)の12に示すように、凹部によるパターンが形成されている。ラミネート時に凹部12にはインクが接触しないため、剥離すると、接触した部分のみのインキがブランケット3から取り除かれる。つまり、除去版6の凹部12からなるパターンがブランケット3に残されることになる。
【0040】
図1(c)は除去版転写後のインキパターン9を基材4に転写する工程を示した図である。ラミネートの方法は除去版と同じく、1、2の延伸ローラーによって両側から張力をかけながら、7のラミネートローラーによって基材4にラミネートされる。つまり、除去版6の凹部12からなるパターンが反転して基材4に転写される。
上記工程を言い換えると、版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部15と凹部12とからなるパターンを形成した除去版6を用意する。
ブランケット3上に塗布されたインキ材料に除去版6を押し当てることにより凸部15の頂面16に対応するインキ材料をブランケット3から除去することでブランケット3上に残存するインキ材料からなる凹部12に対応する形状のパターンインキを形成する。
パターンインキを基材4に転写することによって基材4上に凹部12に対応する形状のパターンを形成する。
【0041】
既述の通り、除去版6の凹部12のサイズが小さいほど解像度が悪くなる。これは除去版6にインキ塗工領域5をラミネートする際に、凹部12にインキが侵入するために発生する。特に4隅のコーナー部への侵入が顕著なため、四角形のコーナーが丸みを帯びた形状となる。この丸みを軽減するために、本願では除去版6の凹部12の形状を新たに提案する。
【0042】
図2(b)−1、(b)−2は、除去版6の凹部12の外周に凹型補正線13を形成したものである。より詳細には、除去版6は、凸部15の頂面16で凹部12の外周に位置する部分に凹部12の輪郭に沿って延在する溝状の凹型補正線13が連続してあるいは断続して形成されている。
凹型補正線13の深さは特に限定するものではないが、凹部パターン12と同じ深さが一般的と考える。これは、凹部12のパターンと凹型補正線13は同一工程で形成する場合が多いためである。また、線幅については、請求項7に示すとおり、2.0μm以上8.0μm以下とする。
【0043】
2.0μmを下回る線幅で凹型補正線13を形成することは解像度の関係で困難であり、仮にできたとしてもインキが侵入せず効果はほとんど無い。また8.0μmを上回る線幅の凹型補正線13を形成した場合、補正線自体がパターンとして基材4に形成されてしまう。以上より、凹型補正線13の線幅は2.0μm以上8.0μm以下とした。
このような凹型補正線13を形成することによって、転写時の余剰インキが当該凹型補正線13にトラップされ、凹部12のパターン内部には侵入しない。これによって、除去版6から基材4にパターンを転写した際に、例えば四角形のコーナーが丸みを帯びることなく、高精細なパターンを形成することができる。
【0044】
図2(c)−1、(c)−2は、除去版6の凹部12のパターンの端部を凸状に形成したものである。より詳細には、凸部15の頂面16は、凹部12の外周縁に沿って延在する第1の凸部15Aの頂面と、第1の凸部15Aよりも高さが低く第1の凸部15Aを除いた頂面の残りの部分を形成する第2の凸部15Bの頂面とで構成されている。
第1の凸部15Aの高さについては特に限定するものではないが、2.0μm以下が望ましい。2.0μm以上の場合、不要なパターンが形成されるためである。また、第1の凸部15Aの幅(線幅)については、請求項8に示すとおり、2.0μm以上8.0μm以下とする。
【0045】
2.0μmを下回る幅で第1の凸部15Aを形成することは(端部を凸状にすることは)解像度の関係で困難であり、仮にできたとしても凹部12へのインキの侵入を妨げるまでの効果が無い。また、8.0μmを上回る幅で第1の凸部15Aを形成すると(端部を凸状にすると)、基材4に転写した際に第1の凸部15Aの外周にインキが転写されてしまう。
このように除去版6の凹部12のパターン外周に第1の凸部15Aを形成することによって、転写時に凹部12のパターン内部への余剰なインキの進入を防ぐことができる。したがって、凹型補正線13を形成した場合と同様に、除去版6から基材4にパターンを転写した際に、例えば四角形のコーナーが丸みを帯びることなく、高精細なパターンを形成することができる。
【0046】
上記の除去版6はガラスのエッチング方式、もしくはガラス上に光硬化型樹脂をパターニングする方式の何れかによって作製する。
すなわち、図2(b)−1,(b)−2の除去版6については、凹型補正線13を含む除去版6のパターンを、ガラスエッチングあるいは光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成する。
また、図2(c)−1,(c)−2の除去版6については、凸部16および凹部12からなるパターンを、ガラスエッチングあるいは光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成する。
【実施例】
【0047】
以下、実施形態に沿った具体的な反転印刷方法について説明する。本検証においては、本願方法を用いてカラーフィルターを想定したパターンを形成し、その効果について検証した。
【0048】
除去版6のパターン形状は80μmの四角形とし、配列は図2−(a)と同一のものとした。版材には0.7mm厚の無アルカリガラスを使用した。
【0049】
パターンは請求項1記載のものを採用し、80μm四角形の端部から5μm離して、線幅5μmの外周補正線13を形成した。設計については、図3−(a)に示した。
【0050】
除去版6のパターン形成には、エッチング法を採用した。Cr膜付の無アルカリガラスにポジレジストを塗工し、図3−(a)に示す設計のパターンを配列させた石英マスクによって露光した。露光には365nmを主輝線とする平行光を採用した。レジストを現像した後にCr膜をエッチングし、レジストを剥離。さらにCr膜を保護層としてガラスをエッチング、最後にCr膜をエッチング剥離することによって除去版6を作製した。
【0051】
上記除去版6を使って、図1に示す反転印刷法により樹脂基材にパターンを転写した。インキは紫外線硬化型のRedインキを用い、ダイコーターにより塗工した。塗工後は1Torr下20secの減圧乾燥処理を施し、減圧後膜厚は1.0μmとなった。
【0052】
乾燥させた塗工領域は基材ステージに搬送し、前記の除去版6にラミネートした、これによりブランケット上の不要なインキは除去されたため、ブランケット上の残ったインキパターンを基材に転写した。
【0053】
以上の工程によって基材に形成した四角形パターンを図3−(c)に示す。これに対し、本願で提案する外周補正線13の無い通常の四角形からなる凹部12のパターンが形成された除去版6を使用した場合の転写結果が図3−(b)である。
【0054】
図3−(b)は、4隅のコーナーが丸みを帯びていることが分かる。これに対して、図3−(c)では、4隅のコーナーが比較的直角に近い形状に改善していることが分かる。
【0055】
以上の結果から、本願で提案する反転印刷方法、およびそれに使われる除去版6、その製造方法が、パターンの解像性を顕著に向上させることが分かった。
【符号の説明】
【0056】
1…延伸ローラー
2…延伸ローラー
3…ブランケット
4…基材
5…インキ塗工領域
6…除去版
7…ラミネートローラー
8…基材ステージ
9…除去版転写後インキパターン
10…ラミネート方向
11…延伸方向
12…除去版6における凹部
13…除去版6における凹部12の外周に沿った凹型補正線
15…凸部
15A…第1の凸部
15B…第2の凸部
16…頂面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部と凹部とからなるパターンを形成した除去版を用意し、
ブランケット上に塗布されたインキ材料に前記除去版を押し当てることにより前記凸部の頂面に対応する前記インキ材料を除去することで前記ブランケット上に残存する前記インキ材料からなる前記凹部に対応する形状のパターンインキを形成し、
前記パターンインキを基材に転写することによって前記基材上に前記凹部に対応する形状のパターンを形成する反転印刷方法であって、
前記除去版は、前記凸部の頂面で前記凹部の外周に位置する部分に前記凹部の輪郭に沿って延在する溝状の凹型補正線が連続してあるいは断続して形成されている、
ことを特徴とする反転印刷方法。
【請求項2】
版材の厚さ方向の一方に位置する表面に凸部と凹部とからなるパターンを形成した除去版を用意し、
ブランケット上に塗布されたインキ材料に前記除去版を押し当てることにより前記凸部の頂面に対応する前記インキ材料を除去することで前記ブランケット上に残存する前記インキ材料からなる前記凹部に対応する形状のパターンインキを形成し、
前記パターンインキを基材に転写することによって前記基材上に前記凹部に対応する形状のパターンを形成する反転印刷方法であって、
前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成されている、
ことを特徴とする反転印刷方法。
【請求項3】
ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、
前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、
前記凹型補正線を含む前記除去版のパターンを、ガラスエッチングによって形成する、
ことを特徴とする反転印刷用除去版製造方法。
【請求項4】
ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、
前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、
前記除去版のパターンを、ガラスエッチングによって形成する、
ことを特徴とする反転印刷用除去版製造方法。
【請求項5】
ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、
前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、
前記凹型補正線を含む前記除去版のパターンを、光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成する、
ことを特徴とする反転印刷用除去版製造方法。
【請求項6】
ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、
前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版の製造方法であって、
前記除去版のパターンを、光硬化型の樹脂レジストを用いたフォトリソ工程によって構成されたレジストパターンによって形成する、
ことを特徴とする反転印刷用除去版製造方法。
【請求項7】
ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、
前記凹部の外周に位置する前記凸部の部分に前記凹部の輪郭に沿って前記凸部よりも高さが低い溝部からなる凹型補正線が連続してあるいは断続して形成された反転印刷方法に用いられる除去版であって、
前記凹型補正線の線幅が2.0μm以上、8.0μm以下であることを特徴とする反転印刷用除去版。
【請求項8】
ブランケット上に塗布されたインキ材料に押し当てられ前記インキ材料を除去する凸部の頂面と、前記ブランケット上に前記インキ材料を残存させる凹部とからなるパターンを備え、
前記頂面は、前記凹部の外周縁に沿って延在する第1の凸部の頂面と、前記第1の凸部よりも高さが低く前記第1の凸部を除いた前記頂面の残りの部分を形成する第2の凸部の頂面とで構成された反転印刷方法に用いられる除去版であって、
前記第1の凸部の頂面の幅が2.0μm以上、8.0μm以下であることを特徴とする反転印刷用除去版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76820(P2013−76820A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216284(P2011−216284)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】