説明

収斂剤

【課題】腐植土抽出物を有効成分とする収斂剤の提供。
【解決手段】水及びアルコール類から選ばれる1種以上のもので得られる腐植土抽出物で、フミン質を100mg/L以上含有したものが収斂剤として好適であり、固形分濃度として0.0001〜0.1質量%の上記腐植土抽出物を有効成分として含有する組成物又は化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐植土抽出物を有効成分とする収斂剤に関するものである。
【0002】
化粧料において収斂とは肌を引き締めることを指し、物理的収斂と化学的収斂の2種類に大別され、両者を適宜組み合わせて用いることが一般的である。物理的収斂とは肌を冷却することによって引き締めるもので、水やエタノールが蒸発するときの気化熱を利用している。通常10質量%以上の比較的多量のアルコールを用いるが、アルコールに刺激感を感じる肌タイプや敏感肌への使用には適さないなどの問題があった。敏感肌に向けてアルコールの配合量が1質量%以下の油中水型乳化組成物などの技術開発(例えば特許文献1)も行われているが、収斂効果や効果の持続が十分とは言えないという課題があった。
【0003】
化学的収斂とは、収斂剤が皮膚や粘膜のタンパク質を一時的に変性、凝集させる働きを利用したものである。医薬品としてはタンニン類が腸粘膜のタンパク質に結合、収斂する性質を利用して止瀉、整腸薬として広く用いられている。化粧料においても肌表面のタンパク質に結合することで肌を引き締め、キメを整える効果がある。さらに毛穴のタンパク質と結合することで一時的に発汗や皮脂を抑制し、化粧崩れを防止する。このような化学的収斂効果に着目し、薬用植物をはじめとする多種類の植物の抽出物が収斂剤として評価されている。(例えば非特許文献1、特許文献2、3)しかし、いずれも皮膚への安全性、製剤中での安定性、使用感、コスト、その収斂効果等の面において十分とは言えず、有用な素材の検討はまだまだ十分とはいえない。
【0004】
ところで、腐植土は、地上植物、大型・微細藻類などの植物(広義)や魚介類及びその他無機物が、海、沼、池や湖の底部に堆積したものやこれが地表に隆起したもの、また森林の地表部に堆積したもの等のように植物(広義)などやこれを含む堆積物が、長い年月の間に嫌気性微生物等により分解、有機化を受けたものである。
この腐植土の水抽出物製造法に関する技術が知られている(特許文献4及び特許文献5参照)。また、腐植土抽出液には、殺菌の効用や毛髪の損傷低減の効用が知られている(特許文献6及び特許文献7参照)。しかしながら、腐植土抽出物の効用は、未だ不明な点が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−137909号公報
【特許文献2】特開2006−104074号公報
【特許文献3】特開2007−302620号公報
【特許文献4】特開2000−136140号公報
【特許文献5】特開2006−181460号公報
【特許文献6】特開2003−267821号公報
【特許文献7】特開2010−270063号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル48,105,1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、肌に十分な効果を与え得る収斂剤及び化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、腐植土水抽出物が高い収斂効果を有することを見出し、これを有効成分とする収斂剤及び化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、肌に十分な効果を与え得る収斂剤及び化粧料を提供することができる。また本発明によれば、皮膚に適用することによって、皮膚を引き締め、キメを整えると同時に、発汗、皮脂を抑制し、化粧崩れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する腐植土抽出物の腐植土は、産地、状態を問わずいずれのものも使用することができる。具体的には、この腐植土として、例えば、森林、河川、湖沼、海洋などを起源とするものを使用することが可能であり、この腐植土とは、そこで生息していた地上植物、大型・微細藻類などの植物(広義)などやこれを含む堆積物が、嫌気性微生物などにより分解、合成、有機化を受けたものである。このうち、海洋でできた堆積物を起源とする腐植土、より好ましくは海洋でできた堆積物が隆起してなったような日本列島由来の腐植土であり、更に九州由来の腐植土が好ましい。
この腐植土の腐植の程度も特に限定されないが、腐植が進行し、高分子有機化合物であるフルボ酸やフミン酸が含まれるものが好ましい。
【0011】
本発明で使用する腐植土抽出物は、抽出手段にて前記腐植土を抽出溶媒に接触させて、収斂に作用効果のある成分を得、これを回収することによって得られる。更に、不要物除去や除菌のため、ろ過手段を行うのが好ましい。
斯様にして得られた腐植土抽出物は、必要に応じて、希釈、濃縮や乾燥を行ったり、また不純物除去等のため分離や精製等を行ってもよい。
前記腐植土抽出物の形態としては、特に限定されず、例えば、固体状、半固体状や液状が挙げられる。具体的には、例えば、溶液、懸濁液、濃縮液、エマルジョン、スラリー、粉末、顆粒及び固形などの状態が挙げられる。
【0012】
好適な腐植土抽出物を製造する方法の一例として、前記腐植土に、抽出溶媒を加えて混合攪拌後、有効成分を分離することなどによって腐植土抽出物を得ることなどが挙げられる。
【0013】
前記抽出手段としては、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超臨界流体抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、混合攪拌等が挙げられる。これらを適宜組み合わせてもよい。
また、前記分離手段としては、特に限定されないが、例えば、ろ過分離手段や遠心分離手段などが挙げられる。これらを単独で又は組み合わせて使用してもよい。
ろ過分離手段としては、自然ろ過、減圧ろ過及び加圧ろ過などが挙げられる。このとき、セルロースフィルター、ガラス繊維フィルター、メンブランフィルターなどのろ材を用い、必要に応じてセライト、砂利及び活性炭などのろ過助剤を用いる。孔径は特に限定されないが、例えば0.1〜1μmが好適である。これらを適宜組み合わせてもよい。
また、抽出に先立って行う腐植土の乾燥や前処理の有無及び方法に特に限定はなく、また腐植土と溶媒との割合、抽出時間などといった抽出手段に特に限定はない。
【0014】
前記抽出溶媒としては、特に限定されず、極性溶媒又は非極性溶媒の何れも使用してもよい。この抽出溶媒としては、例えば、水(温泉水、海洋深層水などのミネラル分を含む水や精製水等);直鎖、分岐鎖又は環状のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコールなどのポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;トルエンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;及び超臨界二酸化炭素などが挙げられる。なお、これらは単独で又は2種以上組み合わせた混合溶媒として使用してもよい。また、有機溶媒は水溶性のものが、好適である。
【0015】
前記抽出溶媒のうち、水、アルコール類、ケトン類及び超臨界二酸化炭素から選ばれる1種以上のものが好ましい。それらのうちでも、水及びアルコール類から選ばれる1種以上のものが好ましく、例えば、水、アルコール類及び水とアルコール類との混液が挙げられる。
【0016】
ここで、前記アルコール類は、一価又は多価アルコール類の何れでもよく、一価アルコル類としては、例えば、メタノール、エタノール及びプロパノールなどが挙げられ、多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン及びジプロピレングリコールなどが挙げられる。
前記アルコール類のうち、例えば、エタノール及び1,3−ブチレングリコールなどの炭素数1〜5の低級アルコール類が好ましく、このうち低級一価アルコール類が好ましく、このうち更にエタノールが好ましい。
【0017】
このうち、更に、水及び水アルコール類混液が好適である。具体的には、アルコール類を0〜90容量%含む水溶液が好適であり、好ましくは0〜70容量%、より好ましくは0〜50容量%、更に好ましくは0〜20容量%を含む水溶液が好適である。
【0018】
前記溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、腐植土(乾燥状態)100kgに対して、100〜1000Lとするのが好ましく、200〜600Lとするのがより好ましく、腐植土成分の抽出効率及び作業効率の点で、好適である。
【0019】
前記抽出期間は、特に限定されないが、好ましくは1日〜3年間、より好ましくは10〜180日間とする。
このときの腐植土と抽出溶媒との混合攪拌は、特に限定されないが、例えば、0.5〜48時間程度行えばよい。これにより腐植土と抽出溶媒が接触し、有効成分を抽出しやすくなる。また、連続又は不連続に混合攪拌を行えばよい。
例えば、混合撹拌した後、更に一定期間混合攪拌する若しくは一定期間混合攪拌後放置するか、又は放置して熟成させるのが、抽出効率の点で、好適である。混合攪拌後に放置することで腐植土が沈降し、分離の際に有利であるため、好ましい。
例えば、前記抽出期間内(例えば1日〜3年間)、連続又は不連続に混合攪拌を行う;1〜24時間混合攪拌後、1〜60日間(好適には20〜40日間)放置する;1〜24時間混合攪拌後、引き続き1〜20日間(好適には3〜9日間)混合攪拌した後、1日〜3年間(好適には6ヶ月〜2年間)放置するなどが挙げられる。
【0020】
前記抽出温度は、特に限定されず、好ましくは低温〜高温(例えば、0〜100℃程度)、より好ましくは低温(例えば、0〜9℃程度)〜常温(例えば、10〜40℃程度)とするのが、腐植土を熱変性させないために、好適である。
【0021】
なお抽出に先立って行う腐植土の乾燥としては、天日乾燥、自然乾燥、風乾燥、熱乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、腐植土が熱変性しない乾燥であれば好適である。このとき、腐植土が微粉砕できる程度に乾燥するのが望ましく、粉砕することによって腐植土の抽出効率が向上するので、好適である。
【0022】
前記腐植土抽出物には、フルボ酸、フミン酸などの腐植土壌特有の構成物質(フミン質など)や、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラルなどが含まれている。なお、腐植土抽出物は、除菌用フィルターを用いてろ過されているものが、腐植土が熱変性されず、また不溶性物質などが除去されているので、好ましい。
【0023】
前記腐植土抽出物には、固形分濃度0.5質量%水溶液換算したときに、フミン質が、少なくとも100mg/L以上、好ましくは100〜1000mg/L、より好ましくは200〜700mg/L、更に350〜650mg/L含まれているのが好適である。
ここで、フミン質(腐植質)とは、例えば、植物成分などが土壌中に分解、縮合して生成する高分子物質を指す。ここで、フミン質は、鉱泉試験法の腐植質測定法記載の方法で測定した場合の値である。
【0024】
前記腐植土抽出物には、固形分濃度0.5質量%水溶液換算したときに、フミン酸が、好ましくは0.1〜15mg/L、より好ましくは1〜10mg/L、更に好ましくは2〜8mg/L、より更に好ましくは5〜8mg/L含まれているのが好適である。
前記腐植土抽出物には、固形分濃度0.5質量%水溶液換算したときに、フルボ酸が、好ましくは1〜20mg/L、より好ましくは5〜15mg/L、更に好ましくは5〜13mg/L、より更に好ましくは8〜13mg/L含まれているのが好適である。
このときのフミン酸:フルボ酸の混合割合は、特に限定されないが、好ましくは1:10〜10:1とするのが好適である。
【0025】
ここで、フミン酸は、腐植物質のうちアルカリ可溶で酸性領域で沈殿するものを指す。詳細な化学構造は不明であるが、多価フェノール形の芳香族化合物と含チッ素化合物との縮合物であり、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有するとされている。
また、フルボ酸とは、植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質のうち、酸によって沈殿しない無定形高分子有機酸を指すものであり、重金属などを吸着、放出するキレート作用をもつものである。
また、フミン酸及びフルボ酸の定量方法は、「Soil Science Plant
Nutrition, 38巻, 23-30頁(Kuwatsuka A et al. 1992); Soil Science Plant Nutrition,
40巻, 601-608頁(Watanabe A. et al. 1994);Humic Substances Reseacrh, 1巻, 18-28頁(Watanabe
A. et al. 2004)」等の参考文献に従って行えばよい。
【0026】
前記腐植土抽出物のpHは、酸性領域、好ましくはpH1〜6、より好ましくはpH2〜5とするのが、薬理活性及び安定性の点で、好適である。このとき、固形分濃度0.1〜1質量%水溶液とし、20℃で適宜pH調整剤にて調整してもよい。
前記pH調整剤としては、通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの無機酸類;クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、尿素、ε−アミノカプロン酸、ピロリドンカルボン酸などの有機酸類;グリシンベタイン、リジンベタインなどのベタイン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物(アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物など)などの無機アルカリ類;グアニジン、2−アミノ−2−メチルプロパンなどの有機アミン類;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;アルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
後記実施例に示すように、前記腐植土抽出物は皮膚に適用することによって、皮膚を引き締め、キメを整え、発汗、皮脂を抑制し、化粧崩れを防止するという作用効果を奏することができる。よって、前記腐植土抽出物は、ヒトを含む動物に塗布、投与や摂取して、皮膚を引き締め、キメを整えると同時に、発汗、皮脂を抑制し、化粧崩れを防止するために使用することができる。また、前記腐植土抽出物は、収斂剤などとなり得、これを製造するために使用することができる。
従って、前記腐植土抽出物は、皮膚を引き締め、キメを整える、発汗、皮脂を抑制し、化粧崩れを防止するなどのための、化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品及び医薬品などに配合するための素材又は製剤として有用である。
【0028】
前記腐植土抽出物を含む収斂剤の使用形態は、特に限定されない。このうち、化粧料、皮膚外用剤及び医薬部外品が好ましく、前記腐植土抽出物は肌への効用が認められることから、化粧料や皮膚外用剤に使用するのが好適である。
前記化粧料や前記皮膚外用剤の使用形態は、例えば、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗浄料、メーキャップ化粧料、育毛料、シャンプー、コンディショナーなどの化粧料;また、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤などの皮膚外用剤(外用医薬品)であってもよい。
【0029】
なお、前記製剤には、必要に応じて、任意成分として、上述の化粧料や皮膚外用剤などに通常使用される各種の成分(例えば、水、アルコール、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、細胞賦活剤等の各種薬効剤、動植物・微生物由来の抽出物、香料など)を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合してもよい。
【0030】
前記腐植土抽出物の配合量は、前記製剤中、固形分濃度として0.0001〜1質量%、好ましくは0.0001〜0.1質量%とするのが、効用の点で好適である。このような量で使用するのが、好適である。
また、前記製剤のpH(25℃)は、好ましくは、酸性〜中性領域であり、より好ましくは2〜7、更に好ましくは3〜7とするのが、効用の点で好適である。このようなpHにて肌に使用するのが、好適である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0032】
<腐植土抽出物の製造例1>
地中(九州地方海岸付近土壌)から採取した腐食土壌を乾燥させた後、微粉砕した。この粉砕物5kgと、精製水20リットルを2時間混合攪拌し、更に常温(10〜30℃程度)で7日間撹拌し、20日間静置した。静置後、メンブランフィルター(孔径0.45μm)を用いてろ過し、腐植土抽出物(原液)を得た。このときのpH(20℃)は3.0であった。また、この乾燥固形分(固形分濃度)は0.4質量%であった。
この原液に含まれるフミン質の総量は520mg/L(乾燥固形分5g/水1Lの水溶液換算としたとき、650mg/L)であり、フミン酸及びフルボ酸の含有量は、それぞれ6mg/L及び10mg/L(乾燥固形分5g/水1Lの水溶液換算としたとき、それぞれ7.5mg/L及び12.5mg/L)であった。この水溶液を、製造例1の腐植土抽出物とした。
【0033】
<腐植土抽出物の製造例2>
地中(長崎県水田)から採取した腐食土壌を乾燥させた後、微粉砕した。この粉砕物5kgと、20%(v/v)エタノール含有のエタノール水溶液20リットルを2時間混合攪拌し、更に冷暗所(4℃程度)にて20日静置して、熟成させた。静置後、メンブランフィルター(孔径0.3μm)を用いてろ過し、腐食土抽出物(原液)を得た。このときのpH(20℃)は2.6であった。また、この乾燥固形分(固形分濃度)は0.5質量%であった。
この原液に含まれるフミン質の総量は350mg/L(乾燥固形分5g/水1Lの水溶液換算としたとき、350mg/L)、フミン酸及びフルボ酸の含有率は、それぞれ5mg/L及び8.5mg/L(乾燥固形分5g/水1Lの水溶液換算としたとき、それぞれ5mg/L及び8.5mg/L)であった。この水溶液を、製造例2の腐植土抽出物とした。
【0034】
これらのフミン酸及びフルボ酸の定量方法は、上述の参考文献「Soil Science
Plant Nutrition, 40巻, 601-608頁(Watanabe A. et al. 1994)に従って、行った。
[実施例1 収斂効果(タンパク凝集率)の測定]
腐植土抽出物を乾燥後9.5%のエタノール水溶液で、0.2及び0.4mg/mlの濃度に希釈して、2種の試験サンプルを調製した。この試験サンプル4重量部に対して、0.5%アルブミン水溶液1重量部を添加し、5分混合した後に、紫外可視分光光度計UV−2500PC(島津社製)を用いて、波長660nmにおける透過率を測定した。また、比較例として、収斂剤として一般的に知られているタンニン酸についても9.5%のエタノール水溶液を用いて1mg/mlの試験サンプルを調整し、同様に透過率の測定を行った。結果は、以下の式から収斂効果を算出した。

収斂効果(タンパク凝集率)(%)={1―(S/A)}×100
(S)=0.5重量%アルブミン水溶液に試験サンプルを加えたときの透過率
(A)=0.5重量%アルブミン水溶液の透過率
【0035】
上記の式より算出した値を収斂効果(タンパク凝集率)とし、表1に示した。腐植土抽出物は0.2及び0.4mg/mlの濃度で、収斂剤として一般的に知られているタンニン酸1mg/mlよりも高いタンパク凝集効果を示し、非常に高い収斂作用を有していることがわかった。
本結果は製造例2の腐植土抽出物でも同様に得られる。
【0036】
【表1】

【0037】
[例2:化粧水]
(成分) (質量%)
1 ジプロピレングリコール 3
2 1,3−ブチレングリコール 3
3 エデト酸2ナトリウム 0.02
4 クエン酸 0.02
5 リン酸1水素ナトリウム 0.1
6 製造例1の腐植土抽出物 5.0
7 ポリエチレンングリコール(分子量約10000) 0.1
8 エタノール 20.0
9 l−メントール 0.02
10 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1
11 香料 0.02
12 精製水 残量
【0038】
(製造方法)
A:成分(7)、(12)を60度に加熱し混合溶解する。
B:成分(1)〜(6)とAを混合する。
C:成分(8)〜(11)を混合する。
D:BにCを添加混合し、化粧水を得た。
【0039】
[例3:水中油型下地化粧料]
(成分) (質量%)
1 セタノール 2.0
2 ステアリン酸 1.0
3 モノステアリン酸グリセリン 0.5
4 流動パラフィン 5.0
5 パラメトキシケイ皮酸―2−エチルヘキシル 5.0
6 1,1,3,5,5−ペンタフェニルー
1,3,5−トリメチルトリシロキサン 4.0
7 トリイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
8 ヘキサ( ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル
3.0
9 シリカ
3.0
10 群青 0.2
11 黄色酸化鉄
0.2
12 酸化亜鉛 1.0
13 モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.0
14 カルボキシルビニルポリマー 0.1
15 1,3−ブチレングリコール 10.0
16 防腐剤 0.2
17 精製水 残量
18 製造例2の腐植土抽出物 0.1
19 トリエタノールアミン 0.2
【0040】
(製造方法)
A : 成分(1)〜(8)を加熱混合する。
B : Aに(9)〜(13)を加えて均一に混合する。
C : (14)〜(18) に(19)(を加えて中和して、Bに添加して乳化する。
【0041】
[例4:クリームファンデーション(W/O型)]
(成分) (質量%)
1 セリサイト 5.0
2 二酸化チタン 10.0
3 ベンガラ 0.3
4 黄酸化鉄 0.8
5 黒酸化鉄 0.1
6 イソオクタン酸セチル 5.0
7 メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
8 デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
9 PEG−9メチルエーテルジメチコン 4.0
10 精製水 残量
11 製造例1の腐植土抽出物 1.0
12 エタノール 10.0
13 ジプロピレングリコール 3.0
14 フェノキシエタノール 0.3
15 香料 適量

【0042】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を均一に分散する
B:成分(6)〜(9)を加熱混合し、70℃ に保つ。
C:成分(10)〜(14)を加熱混合し、70℃に保つ
D:CにAを加え均一に分散する。
E:DにBを加えて混合し、均一に乳化する。
F:冷後、Eに成分(15)を加える。
【0043】
[例5:美容液]
(成分) (質量%)
1 エタノール 20.0
2 イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.)
0.2
3 香料
0.05
4 1,3−ブチレングリコール 10.0
5 ジプロピレングリコール
5.0
6 アクリレート/ステアレス−20メタクリレート
共重合体水溶液(注2) 5.0
7 水酸化ナトリウム 0.25
8 製造例2の腐植土抽出物 1.0
9 防腐剤
適量
10 精製水
残量
(注1)アキュリン22(ローム&ハース社製):ポリマー分30%
【0044】
(製法)
A:成分(1)〜(3)を均一に混合する。
B:成分(4)〜(10)を均一に混合する。
C:BにAを加え均一に混合する。
【0045】
[例6:ローション剤]
(成分) (質量%)
1 ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノラウリン酸エステル 1.2
2 エタノール 8.0
3 パラオキシ安息香酸メチル 0.2
4 グリセリン 5.0
5 1,3−ブチレングリコール 6.5
6 製造例1の腐植土抽出物 20.0
7 アラントイン(注2) 0.2
8 精製水 残量
(注2) メルク社製
【0046】
(製造方法)
A.成分(1)〜(3)を混合溶解する。
B.成分(4)〜(8)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【0047】
調製した化粧水、水中油型下地化粧料、クリームファンデーション(W/O型)、美容液、ローション剤は、いずれも変色・変臭および沈殿物などがなく、安定であり、皮膚に適用可能であった。これらは肌のタンパクを一時的に凝集することにより、皮膚を引き締め、キメを整えると同時に、発汗、皮脂を抑制し、化粧崩れを防止するために有用である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐植土抽出物を有効成分とする収斂剤。
【請求項2】
収斂化粧料である請求項2記載の収斂剤。
【請求項3】
前記腐植土抽出物が、水及びアルコール類から選ばれる1種以上のもので抽出して得られるものある請求項2又は3記載の収斂剤。
【請求項4】
前記腐植土抽出物が、水溶液としたときにフミン質を100mg/L以上含有するものである請求項2〜4の何れか1項記載の収斂剤。
【請求項5】
前記腐植土抽出物の配合量が、固形分濃度として0.0001〜0.1質量%である請求項2〜5の何れか1項記載の収斂剤。
【請求項6】
化学的収斂により収斂効果をもたらす請求項1〜5の何れか1項記載の収斂剤


【公開番号】特開2012−171917(P2012−171917A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35490(P2011−35490)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】