説明

収納一体型便器及びその施工方法

【課題】仕上がりよく、容易に施工することができる収納一体型便器及びその施工方法を提供する。
【解決手段】収納一体型便器は、便器本体11、及びこの便器本体11の後部上面に配置して便器本体11に洗浄水を供給する洗浄タンク装置12を有する水洗式便器10と、この水洗式便器10を設置するトイレルームRの壁面Wに沿って配置しつつ、洗浄タンク装置12を収納するキャビネット20とを備えている。キャビネット20は、洗浄タンク装置12の前方に配置する前板部21A、及びこの前板部21Aの左右端部から後方に延び、かつ下端面をトイレルームRの床面Fに載置する左右側板部21Bを一体に形成したキャビネット本体21と、左右側板部21Bの後上部間を連結して壁面Wに固定する背板22とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収納一体型便器及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図6には従来の収納一体型便器が開示されている。この収納一体型便器は、便器本体、及びこの便器本体の後部上面に配置して便器本体に洗浄水を供給する洗浄タンクを有する水洗式便器と、この水洗式便器を設置するトイレルームの壁面に沿って配置しつつ、洗浄タンクを収納するキャビネットとを備えている。このキャビネットは、洗浄タンクの前方に配置する前板部、及びこの前板部の左右端部から後方に延び、かつ下端面をトイレルームの床面に載置する左右側板部を一体に形成したキャビネット本体と、キャビネット本体の上端に載置する天板とを有している。
【0003】
この収納一体型便器は、キャビネットによって洗浄タンクを隠蔽することができるため、外観上の見栄えを良くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−325383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された収納一体型便器では、キャビネット本体の左右側板部をトイレルームの壁面に固定する際、L字状の取付金具等を利用することが考えられる。このような取付金具を利用してキャビネット本体をトイレルームの壁面に固定する場合には、左右側板部の後端部の間隔が設定間隔よりも広くなったり、狭くなったりしないように位置決めを適切にしなければならない。このため、収納一体型便器の施工に手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、容易に施工することができる収納一体型便器及びその施工方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の収納一体型便器は、便器本体、及びこの便器本体の後部上面に配置して前記便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置を有する水洗式便器と、この水洗式便器を設置するトイレルームの壁面に沿って配置しつつ、前記便器洗浄装置を収納するキャビネットとを備えた収納一体型便器であって、
前記キャビネットは、
前記便器洗浄装置の前方に配置する前板部、及びこの前板部の左右端部から後方に延び、かつ下端面を前記トイレルームの床面に載置する左右側板部を一体に形成したキャビネット本体と、
前記左右側板部に対して着脱自在であり、前記左右側板部の後上部間を連結して前記壁面に固定する背板とを有していることを特徴とする。
【0008】
この収納一体型便器では、左右側板部に対して着脱自在な背板によって左右側板部の後上部間を連結するため、左右側板部の後端部を容易に設定間隔に固定することができる。このため、キャビネットをトイレルームの壁面の所定の位置に容易に固定することができる。
【0009】
また、この収納一体型便器の施工方法は、前記便器洗浄装置を収納した状態に前記キャビネット本体を仮置きした後、前記背板によって前記左右側板部の後上部間を連結し、この背板を前記壁面に固定することを特徴とする。
【0010】
この収納一体型便器の施工方法では、背板部によって左右側板部の後上部間が連結されていない状態でキャビネット本体を仮置きするため、便器洗浄装置を収納した状態にキャビネット本体を容易に仮置きすることができる。また、キャビネット本体を仮置きした後に、背板によって左右側板部の後上部間を連結し、左右側板部の後端部を容易に設定間隔に固定することができる。このため、キャビネットをトイレルームの壁面の所定の位置に容易に取り付けることができる。
【0011】
したがって、本発明の収納一体型便器は容易に施工することができる。
【0012】
前記左右側板部は前後方向及び垂直方向に延びた平板状の係止片部を有する係止部材を後上部に設けており、前記背板は前記係止片部を下方から挿入するスリットを左右両端部に設け得る。この場合、背板に設けられたスリットに左右側板部の後上部に設けられた係止部材の係止片部を挿入することによって、背板が左右側板部の後端部間を設定間隔に容易に連結することができる。
【0013】
前記係止部材は、前記左右側板部の後上部の内側面に固定される固定片部と、この固定片部から内側に延びた第1辺部と、この第1辺部の内側端部から後方に延びた前記係止片部と、この係止片部の後端部から左右方向の一方に延びた第2片部とを有し得る。この場合、係止片部が左右側板部の内側面から内側に離れているため、背板を左右側板部の内側に配置した状態でスリットに係止片部を挿入することができる。これにより、左右側板部の後端面がトイレルームの壁面に当接するようにキャビネットを固定することができる。このため、キャビネットの側面視において背板を視認することができず、見栄えを良くすることができる。
【0014】
前記キャビネット本体は、前記前板部を前後方向に貫通した軸部材と、この軸部材に連結して回動し、前記前板部の前面側に取り付けられた操作部材とを有する洗浄ハンドルを具備し、
前記便器洗浄装置は、前記軸部材に係合して回動する軸受部材を前面に設け、この軸受部材が回動すると前記便器本体に洗浄水を供給し得る。
【0015】
この場合、キャビネット本体の前板部を便器洗浄装置の前方から接近させるようにして、キャビネット本体に便器洗浄装置を収納する。このようにして、洗浄ハンドルの軸部材と便器洗浄装置の軸受部材とを容易に係合可能に配置することができる。これにより、収納一体型便器は、洗浄ハンドルを手動により操作し、便器洗浄を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の収納一体型便器を示す斜視図である。
【図2】実施例のキャビネット本体の配置工程を示す斜視図である。
【図3】実施例のキャビネットの取り付け工程を示す斜視図である。
【図4】(A)実施例の背板を壁面にビス止めする前の状態を示す一部拡大断面図である。(B)実施例の背板を壁面にビス止めした状態を示す一部拡大断面図である。
【図5】実施例のキャビネットを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】実施例の便器横パネルの取り付け工程を示す斜視図である。
【図7】(A)(B)(C)他の実施例のキャビネットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の収納一体型便器を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<実施例>
実施例の収納一体型便器は、図1〜図3に示すように、水洗式便器10とキャビネット20とを備えている。また、この収納一体型便器は、キャビネット20と、その左右両側の壁面との間に収納空間を設け、この収納空間の前面に開閉可能な扉部材31を備えている。また、この収納一体型便器は、キャビネット20の左右両側の壁面間であって、キャビネット20及び扉部材31を有する収納空間の上端に配置する天板30を備えている。また、この収納一体型便器は、後述する水洗式便器10の便器本体11と扉部材31との間に取り付ける便器横パネル32を備えている。
【0019】
水洗式便器10は、便器本体11と、便器本体11の後部上面に配置した洗浄タンク装置12とを有している。便器本体11は、便鉢部11Aと、便鉢部11Aの下流側に連通した図示しない便器排水路とを有している。洗浄タンク装置12は、タンク本体13と、タンク本体13の前面に取り付けられた軸受部材14とを有している。タンク本体13は下端部に図示しないフロート弁によって開閉する排水口を貫設している。フロート弁は軸受部材14が回動すると引き上げられる球鎖に連結されている。フロート弁が球鎖を介して引き上げられて排水口を開放すると、タンク本体13内に貯留した洗浄水が排水口から流出し、便器本体11の便鉢部11Aに供給される。このように、洗浄タンク装置12が便器本体11に洗浄水を供給する便器洗浄装置を構成している。
【0020】
軸受部材14は、正方形の平板状に形成された基盤部14Aと、基盤部14Aの前面側の四隅から前方に突出した棒状の係止片14Bと、基盤部14Aの裏面側の中心部からタンク本体13内に延びる図示しない軸部とを有している。軸受部材14は軸部を中心に回動可能である。
【0021】
便器本体11はその上面に局部洗浄機能付き便座装置40が取り付けられる。局部洗浄機能付き便座装置40は、洗浄ノズル等の局部洗浄装置を収納した便座ボックス41と、弁座ボックス41に回動自在に取り付けられた便座42及び便蓋43とを有している。
【0022】
キャビネット20は水洗式便器10を設置するトイレルームRの壁面Wに沿って配置される。このキャビネット20は、前板部21A、及び左右側板部21Bを一体に形成したキャビネット本体21と、背板22とを有している。
【0023】
前板部21Aは四角形状の平板である。左右側板部21Bは、前板部21Aの左右端部から直角方向の後方に延びている。また、左右側板部21Bは、前板部21Aの下端縁よりも下方に延びており、下端面をトイレルームRの床面Fに載置して固定される。つまり、左右側板部21Bは下端部の外側面に一片がビス止めされたL字状の取付金具Kの他片を床面Fにビス止めして固定される。前板部21Aは、左右側板部21Bの下端面をトイレルームRの床面Fに載置した状態で、上端縁が洗浄タンク装置12の上端部より僅か上方に位置し、下端縁が便器本体11の上面より僅か上方に位置する。また、前板部21Aは、横幅が洗浄タンク装置12の横幅よりも広く形成されている。
【0024】
キャビネット本体21は洗浄ハンドル23を具備している。洗浄ハンドル23は、前板部21Aを前後方向に貫通した軸部材24と、この軸部材24に連結して回動し、前板部21Aの前面側に位置する操作部材25とを有している。また、洗浄ハンドル23は、キャビネット本体21がトイレルームRの床面F及び壁面Wに固定された状態で、軸部材24が水洗式便器10の洗浄タンク装置12に取り付けられた軸受部材14に対向する位置に設けられている。軸部材24は、前板部21Aを貫通する軸部24Aと、前板部21Aの裏面側で軸部24Aの先端部に連結した十字状の被係止片24Bとから形成されている。操作部材25が操作されて軸部材24が回動すると、被係止片24Bが軸受部材14の係止片14Bに係止して軸受部材14も回動する。
【0025】
左右側板部21Bの内側面間の間隔は、洗浄タンク装置12の横幅よりも広く形成されている。左右側板部21Bは下部後方に切欠き部26が設けられている。この切欠き部26は、図5に示すように、キャビネット本体21が床面F及び壁面Wに固定された状態で、洗浄タンク装置12の給水ホースS1、及び局部洗浄機能付き便座装置40の給水ホースS2をトイレルームR内に引き出された給水管に取り付けられた止水栓Vに接続する際等に利用する。
【0026】
右側板部21B(便器本体11の先端側から見て右側)は、図2に示すように、洗浄ハンドル23の軸部材24に対応する高さに開口部27が設けられている。この開口部27は、洗浄ハンドル23の軸部材24と、タンク本体13の前面に取り付けられた軸受部材14との状態を確認したり、メンテナンスをしたりする際等に利用する。
【0027】
左右側板部21Bは、図1〜図3に示すように、上端部の外側面に取り付けられて、左右側板部21Bの上端面と面一となる上面28Aが形成された天板受部材28を有している。天板受部材28の上面28Aには天板30が載置される。
【0028】
左右側板部21Bは後上部の内側面に設けられた係止部材29を有している。係止部材29は、金属製の長方形状の平板を三か所、折り曲げて形成されている。係止部材29は、左右側板部21Bの後上部の内側面にビス止めされた固定片部29Aと、この固定片部29Aの後端部から直角方向の内側に延びた第1辺部29Bと、この第1片部29Bの内側端部から直角方向の後方に延びた係止片部29Cと、この係止片部29Cの後端部から直角方向の内側に延びた第2片部29Dとを有している。このように、係止片部29Cは左右側板部21Bの内側面から内側に離れた位置で前後方向及び垂直方向に延びた平板状に形成されている。
【0029】
背板22は、係止部材29の平板状の係止片部29Cを下方から挿入するスリット22Aを左右両端部に設けている。背板22は、スリット22Aに左右側板部21Bに設けられた係止部材29の係止片部29Cを挿入すると、左右側板部21Bの後端部間を設定間隔に連結するように、その横幅及びスリット22A間の間隔が設定されている。背板22は、スリット22Aに係止片部29Cを挿入して、左右側板部21Bの後上部間を連結した後、トイレルームRの壁面Wにビス止めされる。
【0030】
便器横パネル32は、図1及び図6に示すように、前板部21Aの下端面に当接する上端面と、前板部21Aの左右側面に連続する外側面と、トイレルームRの床面に当接する下端面と、便器本体11の側面形状に沿った内側面とを有している。便器横パネル32は内側面の下部に便器本体11の側面に当接するパッキン32Aが取り付けられている。また、便器本体11の左側(便器本体11の先端側から見て左側)に取り付けられる便器横パネル32は内側面の一部を切欠いて局部洗浄機能付き便座装置40の給水ホースS2を挿通する切欠き部32Aを有している。
【0031】
便器横パネル32は上端面に上方に突出した2つのダボピン32Bを設けている。これらダボピン32Bに対応する位置の前板部21Aの下端面には、ダボ孔21Cが設けられている。また、便器横パネル32は、裏面であって、左右側板部21Bの前端面に当接する部分に1つのダボ孔32Cが設けられている。このダボ孔32Cに対応する位置の左右側板部21Bの前端面には、前方に突出した1つのダボピン21Dが設けられている。また、便器横パネル32は、裏面にローラーキャッチ33のストライク部材33Aが取り付けられている。このストライク部材33Aに対応する位置の左右側板部21Bの内面にローラーキャッチ33のキャッチ本体33Bが取り付けられている。
【0032】
次に、このように構成された収納一体型便器をトイレルームRに施工する手順を説明する。
【0033】
[水洗式便器の取付け]
先ず、便器本体11をトイレルームRの床面Fに取り付ける。この際、床面Fには壁面Wから所定間隔離れた位置に図示しない排水管が立ち上げられている。この排水管に図示しない排水接続部材を接続する。便器本体11の便器排水路の下流端を排水接続部材に上端開口に接続しつつ、便器本体11を床面Fに取り付ける。その後、洗浄タンク装置12を便器本体11の後部上面に載置して固定する。
【0034】
[キャビネットの取付け]
次に、キャビネット20をトイレルームRの壁面W及び床面Fに取り付ける。この際、キャビネット本体21は、図2に示すように、左右側板部21Bの下端部の前端角部を支点にしてキャビネット本体21を回動させるようにして、前板部21Aを洗浄タンク装置12の前方から接近させる。キャビネット本体21の前板部21Aに取り付けられた洗浄ハンドル23の軸部材24と、タンク本体13に取り付けられた軸受部座14とが対向する位置に配置される。このようにして、洗浄ハンドル23の軸部材24と洗浄タンク装置12の軸受部材14とを容易に係合可能に配置することができる。このように、この収納一体型便器は、便器洗浄タンク装置12を周に遥した状態にキャビネット本体21を容易に仮置きすることができる。また、この収納一体型便器は、洗浄ハンドル23を手動により操作し、便器洗浄を実行することができる。
【0035】
洗浄タンク装置12を収納した状態にキャビネット本体21を仮置きした状態で、図3に示すように、背板22のスリット22Aに左右側板部21Bに設けられた係止部材29の係止片部29Cを挿入する。これにより、左右側板部21Bの後端部間は設定間隔に容易に連結することができる。この状態で、図4(A)に示すように、キャビネット20の位置決めを行い、図4(B)に示すように、背板22をトイレルームRの壁面Wにビス止めする。また、左右側板部21Bの下端部の外側面に一片をビス止めされた取付金具Kの他片を床面Fにビス止め固定する。このようにして、キャビネット20をトイレルームRの所定の位置に容易に取り付けることができる。
【0036】
したがって、実施例の収納一体型便器は容易に施工することができる。
【0037】
また、係止片部29Cが左右側板部21Bの内側面から内側に離れているため、背板22を左右側板部21Bの内側に配置した状態でスリット22Aに係止片部29Cを挿入することができる。これにより、左右側板部21Bの後端面がトイレルームRの壁面Wに当接するようにキャビネット20を固定することができる。このため、キャビネット20の側面視において背板22を視認することができず、見栄えを良くすることができる。
【0038】
その後、図5に示すように、キャビネット20と洗浄タンク装置12との間に給水ホースS1を通し、給水ホースS1の一端を洗浄タンク装置12に接続し、左側板部21Bの下部後方に設けられた切欠き部26を利用して、給水ホースS1の他端を止水栓Vに接続する。
【0039】
[局部洗浄機能付き便座装置の取付け]
次に、局部洗浄機能付き便座装置40を便器本体11の上面に取り付ける。その後、局部洗浄機能付き便座装置40の給水口に給水ホースS2の一端を接続し、左側板部21Bの下部後方に設けられた切欠き部26を利用して、給水ホースS2の他端を止水栓Vに接続する。また、図示しない電源コードを壁面Wに設けられた図示しないコンセントに接続する。
【0040】
[便器横パネルの取付け]
次に、便器横パネル32をキャビネット本体21の下部であって、便器本体11の左右両側に取り付ける。便器横パネル32は、図6に示すように、上端面に設けたダボピン32Bを前板部21Aの下端面に設けられたダボ孔21Cに挿入しつつ、便器横パネル32に設けられたストライク部材33Aがキャッチ本体33Bに保持されるように、かつ左右側板部21Bに設けられたダボピン21Dが便器横パネル32に設けられたダボ孔32Cに挿入するように、便器横パネル32をキャビネット本体21に取り付ける。キャビネット本体21に取り付けられた便器横パネル32は、その前面が前板部21Aの前面と面一に連続し、キャビネット20の外観を良好に仕上げることができる。
【0041】
[扉部材の取付け]
次に、扉部材31をキャビネット本体21の左右側板部21Bの外側面に図示しない蝶番を介して取り付ける。扉部材31は、図1に示すように、その前面が前板部21Aの前面と面一に連続し、キャビネット20の外観を良好に仕上げることができる。
【0042】
[天板の取付け]
次に、天板30をキャビネット本体21の取り付けられた天板受部材28に載置しつつ、キャビネット20の左右両側の壁面間であって、キャビネット20及び扉部材31を有する収納空間の上端に配置して取り付ける。
【0043】
このようにして、実施例の収納一体型便器はトイレルームRへの施工を完了する。
【0044】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、係止部材は金属製の長方形状の平板を三か所、折り曲げて形成したが、前後方向及び垂直方向に延びた平板状の係止片部を形成するものであれば、係止部材は他の形状であってもよい。
【0045】
例えば、図7(A)に示すように、L字状の係止部材129であってもよい。この場合、係止部材129の一片129Aの後部が左右側板部21Bの後端部より後方に突出するように係止部材129の一片129Aを左右側板部21Bの内側面に固定する。この係止部材129の一片129Aの突出した後部が係止片部となり、背板122に設けられたスリット122Aに挿入される。このようにして、キャビネット120では、左右側板部21Bの後端上部間を背板122が設定間隔に固定することができる。係止部材129の他片129Bは係止部材129Aの一片129Aの後端から直角方向の内側に延びており、背板122の背面側に配置される。背板122の横幅は左右側板部21Bの外側面間の間隔と等しく形成されている。
【0046】
また、図7(B)に示すように、L字状の係止部材129の一片129Aの後部を左右側板部21Bの後端部より後方に突出するように係止部材129の一片129Aを左右側板部21Bの外側面に固定する。この係止部材129の一片129Aの突出した後部が係止片部となり、背板222に設けられたスリット222Aに挿入される。このようにして、キャビネット220では、左右側板部21Bの後上部間を背板222が設定間隔に固定することができる。係止部材129の他片129Bは係止部材129Aの一片129Aの後端から直角方向の内側に延びており、背板222の背面側に配置される。背板222に設けられたスリット222Aは左右側板部21の外側面に沿って形成されているため、背板222の横幅は左右側板部21の外側面よりも外側にはみ出す大きさに形成されている。
【0047】
また、図7(C)に示すように、コ字状の係止部材229であってもよい。この場合、係止部材229は、左右側板部21Bの後端面に固定された固定片229Aと、この固定片229Aの内側端部から直角方向の後側に延びた係止片部229Bと、この係止片部229Bの後端部から直角方向の外側に延びた折り返し片部229Cとを有してコ字状に形成されている。係止片部229Bが背板322のスリット322Aに挿入される。このようにして、キャビネット320は、左右側板部21Bの後端上部間を背板322が設定間隔に固定することができる。折り返し片部229Bは背板322の背面側に配置される。背板322の横幅は左右側板部21Bの外側面間の間隔と等しく形成されている。
【0048】
(2)実施例では、洗浄タンク装置により便器洗浄装置が構成されていたが、給水源から供給される洗浄水を直接的に便器本体に供給する便器洗浄装置であってもよい。
【0049】
(3)実施例では、キャビネット本体が洗浄ハンドルを具備していたが、洗浄ハンドルを具備しなくてもよい。この場合、局部洗浄機能付き便座装置に設けられた人体検知センサの検知信号等を利用して、使用者の用便後に自動的にタンク本体のフロート弁をモーター等によって引き上げ、タンク本体に貯留した洗浄水を排水口を介して便器本体に供給するとよい。
【符号の説明】
【0050】
10…水洗式便器
11…便器本体
12…洗浄タンク装置(便器洗浄装置)
14…軸受部材
20…キャビネット
21…キャビネット本体
21A…前板部
21B…左右側板部
22…背板
22A…スリット
23…洗浄ハンドル
24…軸部材
25…操作部材
29…係止部材
29A…固定片部
29B…第1片部
29C…係止片部
29D…第2片部
R…トイレルーム
W…壁面
F…床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体、及びこの便器本体の後部上面に配置して前記便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置を有する水洗式便器と、この水洗式便器を設置するトイレルームの壁面に沿って配置しつつ、前記便器洗浄装置を収納するキャビネットとを備えた収納一体型便器であって、
前記キャビネットは、
前記便器洗浄装置の前方に配置する前板部、及びこの前板部の左右端部から後方に延び、かつ下端面を前記トイレルームの床面に載置する左右側板部を一体に形成したキャビネット本体と、
前記左右側板部に対して着脱自在であり、前記左右側板部の後上部間を連結して前記壁面に固定する背板とを有していることを特徴とする収納一体型便器。
【請求項2】
前記左右側板部は前後方向及び垂直方向に延びた平板状の係止片部を有する係止部材を後上部に設けており、前記背板は前記係止片部を下方から挿入するスリットを左右両端部に設けていることを特徴とする請求項1記載の収納一体型便器。
【請求項3】
前記係止部材は、前記左右側板部の後上部の内側面に固定される固定片部と、この固定片部から内側に延びた第1辺部と、この第1辺部の内側端部から後方に延びた前記係止片部と、この係止片部の後端部から左右方向の一方に延びた第2片部とを有していることを特徴とする請求項2記載の収納一体型便器。
【請求項4】
前記キャビネット本体は、前記前板部を前後方向に貫通した軸部材と、この軸部材に連結して回動し、前記前板部の前面側に取り付けられた操作部材とを有する洗浄ハンドルを具備し、
前記洗浄装置は、前記軸部材に係合して回動する軸受部材を前面に設け、この軸受部材が回動すると前記便器本体に洗浄水を供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の収納一体型便器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の収納一体型便器の施工方法であって、
前記便器洗浄装置を収納した状態に前記キャビネット本体を仮置きした後、前記背板によって前記左右側板部の後部の上部間を連結し、この背板を前記壁面に固定することを特徴とする収納一体型便器の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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