収納体除染装置
【課題】滅菌済みの物品を収納した収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供する。
【解決手段】収納体Aを吊下げる複数のフック28を間隔をおいて設けてなる上側移送手段20と、上側移送手段の下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い収納体の下方部位を下側から受承する受承部材40と、収納体が下方部位を受承部材により受承された状態で上側移送手段の更なる移動に伴いフックから外れて落下するとき、この落下する収納体を受け止めて移送する下側移送手段30とを備えている。
【解決手段】収納体Aを吊下げる複数のフック28を間隔をおいて設けてなる上側移送手段20と、上側移送手段の下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い収納体の下方部位を下側から受承する受承部材40と、収納体が下方部位を受承部材により受承された状態で上側移送手段の更なる移動に伴いフックから外れて落下するとき、この落下する収納体を受け止めて移送する下側移送手段30とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌済みの物品を収納した収納体の外装面を除染し、除染後の収納体を次工程の無菌環境に移送する収納体除染装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場での利便性から前もって注射剤を充填したシリンジ容器、或いは、点眼薬、輸液、消毒液などを充填したボトル容器が製造されている。これらの容器に医薬品を充填する作業は、無菌環境下の充填作業室(以下、無菌作業室という)で行われる。この作業に使用するシリンジ、ボトル及びこれらに使用する中栓、キャップなどの容器類は、1つ1つが小さなものであり、また、数も多く必要とされる。そこで、これらの容器類は、それぞれの製造段階でγ線、電子線、EOG(エチレンオキサイドガス)などで滅菌され所定個数をまとめて収納体に収納して無菌作業室に搬入される。
【0003】
しかし、上記収納体の外装面は、流通や運搬の際に汚染され、この外装面の汚染を除染しなければ無菌作業室に搬入することはできない。
【0004】
そこで、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送し、無菌作業室内で収納体を開放して内部の滅菌されたシリンジやボトルなどの容器類を取り出して充填作業に供する方法が一般に行われている。
【0005】
このような除染装置を連設した無菌装置が、下記特許文献1の連設無菌装置として提案されている。この連設無菌装置においては、前もって除染装置(下記特許文献1では、除染用密閉室という)で収納体(下記特許文献1では、除染対象物という)の外装面を除染し、その後、除染装置と連設した無菌作業室(下記特許文献1では、アイソレータという)に除染済みの収納体を移送し、この無菌作業室にて、包装材を除去し、内部の資材を取り出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−143726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1においては、除染装置内に所定個数の収納体を収容して同時に除染するので、収納体は、除染装置の収納口から搬出口にかけて所定間隔で軸支された移送用ローラの上に載せられて除染装置内を移動する。そして、除染装置の搬出口から無菌作業室内に移送されるが、この移送は、無菌作業室内で無菌衣を装着した作業者或いは外部から作業用グローブを介して内部操作する作業者による手作業で行われる。
【0008】
また、除染装置内での収納体の収容及び搬送においては、上記移送用ローラによる方式の他に収納体を吊下げて収容及び搬送する吊下げ方式が採用されている。この吊下げ方式は、除染装置内への収納体の収容量を多くすることができるので効率的な方法として広く採用されている。
【0009】
しかし、この吊下げ方式においては、収納体を除染装置の搬出口から無菌作業室内に移送する作業に加え、収納体を吊下げた状態から取外すという作業も追加される。従って、この吊下げ方式においても無菌作業室内で無菌衣を装着した作業者或いは外部からグローブを介して内部操作する作業者による手作業が必要となる。このため、無菌作業室内での充填作業において、作業員或いは作業工数が多くなり効率的な作業ができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染装置内への収容量を多くして一度に除染できる収納体の数量を確保することのできる吊下げ方式を採用し、この吊下げ方式において、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、収納体をフックに吊下げて移動する移送手段の下方に当該収納体の下方部位を受承する受承部材を設けることにより、収納体がフックから外れたときに、収納体の取外しが自動で安定したものになることを見出して本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明に係る収納体除染装置は、請求項1の記載によれば、滅菌済みの物品を収納してなる収納体(A)を吊下げる複数のフック(28)を間隔をおいて設けてなる上側移送手段(20)と、
上記上側移送手段の下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い上記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材(40)と、
上記収納体が上記下方部位を上記受承部材により受承された状態で上記上側移送手段の更なる移動に伴い上記フックから外れて落下するとき、この落下する上記収納体を受け止めて移送する下側移送手段(30)とを備えている。
【0013】
上記構成によれば、収納体除染装置は、収納体を吊下げる複数のフックを間隔をおいて設けてなる上側移送手段を採用することにより、一度に多くの収納体を収容することができ、これらを同時に除染することができる。また、除染済みの収納体は、上側移送手段を順次移動させることにより取外し位置に移動することができる。
【0014】
フックに吊下げられた収納体を取外す際には、まず、上側移送手段の移動に伴って、上側移送手段の下方に設けられた受承部材が収納体の下方部位に当接して当該下方部位を下側から受承する。この状態で上側移送手段が更に移動すると、収納体の上方部位はフックに吊下げられた状態で上側移送手段の移動方向に移動する。一方、収納体の下方部位は、受承部材に受承された位置から移動することができない。
【0015】
この状態で上側移送手段が更に移動して収納体がフックから外れて落下するとき、この落下する収納体は、外れたフックの位置と受承部材の位置との間の安定した位置に安定した向きで落下することができる。この収納体の落下位置には、前もって下側移送手段が配設されており、この下側移送手段は、容易に収納体を受け止め移送することができる。
【0016】
よって、本発明は、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染装置内への収容量を多くして一度に除染できる収納体の数量を確保することのできる吊下げ方式を採用し、この吊下げ方式において、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る収納体除染装置は、請求項2の記載によれば、滅菌済みの物品を収納してなる収納体(A)を搬入する搬入口(11)と当該収納体を搬出する搬出口(12)とを設けてなる除染室(10)と、
複数のフック(28)を間隔をおいて設けてなる移送手段であって上記収納体を上記複数のフックのいずれかで吊下げた状態で上記除染室内を上記搬入口から上記搬出口に向けて移送する上側移送手段(20)と、
上記上側移送手段の上記搬出口側下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い上記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材(40)と、
この受承部材により受承された上記収納体がその重心位置にて上記上側移送手段の移動に伴い上記受承部材を越えた状態で当該収納体が上記上側移送手段の更なる移動に伴い上記フックから外れて落下するとき、この落下する上記収納体を受け止めて当該収納体を上記搬出口から上記除染室の外部に移送する下側移送手段(30)とを備えている。
【0018】
上記構成によれば、収納体除染装置は、除染前の収納体を搬入する搬入口と除染後の収納体を搬出する搬出口とを設けた除染室を備え、また、上側移送手段の搬出口側下方には受承部材を備えている。このことにより、収納体の取外し後直ちに搬出口から搬出することができるので、自動で行われる搬出工程がスムーズに進行する。
【0019】
また、上側移送手段の移動に伴って受承部材で受承された収納体の重心位置が受承部材を越えた状態で収納体がフックから外れて落下するとき、この落下する収納体は、外れたフックの位置と受承部材の位置との間の受承部材を越えた安定した位置に安定した向きで落下することができる。よって、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0020】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載の収納体除染装置であって、
上記受承部材を主受承部材として、
上記上側移送手段による上記収納体の移送方向に対して上記主受承部材の手前側下方に設けてなる副受承部材(41)を備えており、
上記主受承部材が上記収納体の下方部位を受承したとき、
上記副受承部材が上記収納体に後続する他の収納体の下方部位を受承することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、収納体除染装置は、主受承部材に加え副受承部材を備えている。この副受承部材は、上側移送手段による収納体の移送方向に対して主受承部材の手前側であって、主受承部材より下方に設けられている。まず、副受承部材が主受承部材の手前側にあることにより、フックに吊下げられた収納体は、上側移送手段の移動に伴って、主受承部材により受承される前にその下方部位を副受承部材により受承される。
【0022】
また、副受承部材が主受承部材より下方に設けられることにより、フックに吊下げられた収納体は、上側移送手段の移動に伴って、副受承部材を越えてその受承から解放されることになる。この副受承部材を越えた収納体は、次に主受承部材によりその下方部位を受承される。このとき、主受承部材により受承されている収納体に後続する他の収納体が副受承部材により受承される。
【0023】
このことにより、後続する他の収納体(副受承部材により受承される収納体)の荷重が前の収納体(主受承部材により受承される収納体)に掛かることとならず、前の収納体がフックから外れて落下するとき、この落下する収納体は、フックの位置と主受承部材の位置との間の更に安定した位置に安定した向きで落下することができる。よって、請求項3に記載の発明においては、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0024】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の収納体除染装置であって、
上記上側移送手段は、上記収納体の移送方向に移動する移送部材(25、26)を備えており、
上記複数のフックは、それぞれ、上記移送部材の懸架部(27)に固定されて当該懸架部から下方に延出する基部(28c)と、下方に凸な形状となるように上記基部から下方に延出すると共に上記移送方向の後方に向けて延出するフック部(28d)とを具備し、
上記フックが上記フック部に上記収納体を吊下げた状態で上記移送部材の移動に伴い上記移送方向の前方へ傾斜したとき、当該収納体が上記フックから外れることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、収納体除染装置の上側移送手段が備える移送部材が複数のフックを懸架して収納体の移送方向に移動する。また、これらのフックは、それぞれ、移送部材の懸架部から下方に延出する基部と、下方に凸な形状となるように当該基部から下方に延出すると共に移送方向の後方に向けて延出するフック部とを具備している。このことにより、収納体は、フックのフック部に吊下げられた状態で移送方向に移送される。
【0026】
次に、収納体を吊下げたフックが移送部材の移動に伴い移送方向の前方へ傾斜したとき、当該フックは、収納体を吊下げて保持することができず、収納体がフックから外れることとなる。
【0027】
このとき、収納体の下方部位は、受承部材により受承されているので、収納体は、フックの位置と受承部材の位置との間の安定した位置に安定した向きで落下することができる。よって、請求項4に記載の発明においても、請求項1から3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0028】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る収納体除染装置の概要を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す収納体除染装置の概要を示す横断面図である。
【図3】図1に示す収納体除染装置において、移送リフトに複数の収納体が吊下げられた状態を示す斜視図である。
【図4】J字状フックに収納体が吊下げられた状態を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)(c)は、それぞれ、収納体を吊下げるフックの構造を示す図面である。
【図6】除染室後部の収納体取外し部分の状態を示す図面である。
【図7】収納体を受承する主受承バー及び副受承バーの構成を示す斜視図である。
【図8】収納体取外し部分において、収納体が副受承バーに当接した状態を示す図面である。
【図9】収納体取外し部分において、収納体が副受承バーから解放される直前の状態を示す図面である。
【図10】収納体取外し部分において、収納体がJ字状フックから取り外される直前の状態を示す図面である。
【図11】収納体取外し部分において、J字状フックから取り外された収納体がローラーコンベアに受け取られた状態を示す図面である。
【図12】図10において、Xで示すサークルの部分を拡大した拡大図である。
【図13】図11において、Yで示すサークルの部分を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る収納体除染装置の一実施形態を図面に従って説明する。図1及び図2に示すように、収納体除染装置100は、無菌作業室200に連設した除染室10を備えている。除染室10は、その一部が無菌作業室200の内部に入り込む状態で設けられ、この除染室10には、その内部に除染用ガスを供給する除染用ガス供給装置(図示しない)が除染用ガス供給配管(図示しない)によって連通している。
【0031】
ここで、収納体除染装置100による除染対象物は、図4に示すように、医薬品を充填するためのシリンジやボトルなどの容器類を予め滅菌された状態で所定個数ずつ収納した収納体Aであって、その外装面を除染する。この収納体Aは、内部の無菌状態を維持できるシールド性を有するフィルム、例えば、ポリエチレンフィルム或いは数種類のフィルムの積層体からなり、その上部は、ヒートシールなどで補強されている。この収納体Aの上部ヒートシール部分には、2つの吊下穴Bが設けられている。
【0032】
この収納体Aは、その外装面を収納体除染装置100で除染された後、無菌作業室200に搬入されてから開放され、その内部に収納されている滅菌済みの容器を取り出して充填作業に供する。
【0033】
除染室10には、搬入口11と搬出口12と補助口13とが設けられている。搬入口11は、除染室10と外部(無菌作業室200の外部)との境界に設けられ(図2参照)、この搬入口11には、外部に向けて開閉することにより除染室10と外部とを気密的に遮断する搬入ドア14が設けられている(以下、搬入ドア14側を「除染室前部」という)。この搬入ドア14は、外部から作業者が除染前の収納体Aを除染室10の内部に搬入するときに開放される(後述する)。
【0034】
搬出口12は、除染室10が無菌作業室200の内部に入り込んだ部分の一方側側面にあって除染室10と無菌作業室200との境界に設けられ(図2参照)、この搬出口12には、上下動することにより除染室10と無菌作業室200とを気密的に遮断する搬出ドア15が設けられている(以下、搬出ドア15側を「除染室後部」という)。この搬出ドア15は、除染室10の内部で除染された収納体Aを除染室10から無菌作業室200の内部に搬入するときに開放される(後述する)。
【0035】
補助口13は、除染室10が無菌作業室200の内部に入り込んだ部分の正面(搬入口11に対向する面)にあって除染室10と無菌作業室200との境界に設けられ(図2参照)、この補助口13は、後述する4列の移送リフト20にそれぞれ対応するように、上下2か所、左右2か所、計4か所設けられている。これらの補助口13には、それぞれ、除染室10と無菌作業室200とを気密的に遮断する4つの視認ガラス窓16が設けられ、無菌作業室200内の作業者が除染室10内の状態を視認することができる。なお、これら4つの視認ガラス窓16は、開閉するようにしてもよい。
【0036】
なお、除染室10と、搬入ドア14、搬出ドア15及び視認ガラス窓16との間には、いずれもパッキン(図示しない)が設けられており、また、各ドア及び窓の開閉機構は、一般の無菌室或いは除染室に使用される機構を採用する。
【0037】
また、除染室10には、その内部に4列の移送リフト20と上下2段のローラーコンベア30とが配設されている。4列の移送リフト20は、除染室前部から除染室後部に向けて(以下、この方向を「移送リフト20の移送方向」ともいう)、上下2段、左右2列、計4列に設けられ、いずれも水平方向に走行する(後述する)。上下2段のローラーコンベア30は、除染室後部から搬出口12を介して無菌作業室200の内部に向けて、視認ガラス窓16に並行する向きに上下2段に設けられ、いずれも水平方向に走行する(後述する)。
【0038】
4列の移送リフト20は、それぞれ、図3に示すように、前後左右4か所に設けられた4つのスプロケット21〜24と、これらのスプロケットに移送リフト20の移送方向に向けて掛け回された左右両側チェーンベルト25、26と、駆動モータM(図示しない)とを備えている。
【0039】
4つのスプロケット21〜24のうち、除染室前部に設けられる左右前側スプロケット21、22は、支軸29aにより同軸的に回転可能に固定され、また、除染室後部に設けられる左右後側スプロケット23、24は、支軸29bにより同軸的に回転可能に固定されている。更に、左側前後スプロケット21、23の間には、左側チェーンベルト25が掛け回され、また、右側前後スプロケット22、24の間には、右側チェーンベルト26が掛け回されている(図3参照)。
【0040】
このことにより、4つのスプロケット21〜24のうちいずれかのスプロケットが駆動モータMによる駆動の下に回転すると、左右両側チェーンベルト25、26は、左右連動して図示反時計方向に回転する(図3参照)。換言すれば、左右両側チェーンベルト25、26は、掛け回された各スプロケットの下側接線に沿って移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動し、除染室後部において、左右後側スプロケット23、24に沿って下方から上方に向け、更に後方に向けて反転し、今度は各スプロケットの上側接線に沿って移送リフト20の移送方向と逆方向(図示左方向)に向けて移動する。
【0041】
次に、左右両側チェーンベルト25、26は、除染室前部において、左右前側スプロケット21、22に沿って上方から下方に向け、更に前方に向けて反転し、再度、掛け回された各スプロケットの下側接線に沿って移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動する。このように、左右両側チェーンベルト25、26は、エンドレスに図示反時計方向に回転する(図3参照)。
【0042】
また、左右両側チェーンベルト25、26は、それぞれの間に支持具27aを介して所定間隔で掛け渡される複数の懸架バー27と、これら複数の懸架バー27に懸架される複数のJ字状フック28とを具備している(図3及び図4参照)。
【0043】
J字状フック28は、図5(a)に示すように、J字状本体28aと固定リング28bとを備えており、J字状本体28aは、直線状の基部28cと、下方に凸な形状になるように基部28cの下端部から略半円を描くように円弧状に延出したフック部28dと、このフック部28dの先端から基部28cに略並行な直線状に上方に短く延出した延出端部28eとから構成されている。
【0044】
固定リング28bは、内孔を介して左右に割れる2つの半リング28f、28gからなり、一方の半リング28fは、基部28cの上方においてフック部28dの背面側にその凸部を当接してネジ28hで固定され、他方の半リング28gは、その凹部を半リング28fの凹部に対向させて内孔を形成するように半リング28fにネジ28iで固定される。これら2つの半リング28f、28gが形成する内孔には、左右両側チェーンベルト25、26の間に掛け渡された懸架バー27が嵌入される。
【0045】
このように構成されたJ字状フック28は、図4に示すように、左右両側チェーンベルト25、26の間に支持具27aを介して掛け渡される懸架バー27に、それぞれ、2つずつ所定間隔で固定リング28bによって固定されている。
【0046】
これらのJ字状フック28は、図3及び図4に示すように、左右両側チェーンベルト25、26が各スプロケットの下側接線に沿って移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動するときには、そのフック部28dの凸部を下方に向け且つその延出端部28eを移送リフト20の移送方向の後方に向けて移動する。
【0047】
このように、左右両側チェーンベルト25、26が移送リフト20の移送方向に向けて移動するときには、1本の懸架バー27に固定された2つのJ字状フック28には、収納体Aがその上部に設けられた2つの吊下穴Bを介して吊下げられている(図4参照)。ここで、懸架バー27に支持された2つのJ字状フック28の間隔は、随時調整可能であって除染対象である収納体Aの上部に設けられた2つの吊下穴Bの間隔に合わせて、前もって調整しておく。
【0048】
次に、これらのJ字状フック28は、図3及び図4に示すように、左右両側チェーンベルト25、26が反転して各スプロケットの上側接線に沿って移送リフト20の移送方向の逆方向(図示左方向)に向けて移動するときには、そのフック部28dの凸部を上方に向け且つその延出端部28eを移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動する。
【0049】
上下2段のローラーコンベア30は、それぞれ、その進行方向と交差する方向に、円柱状の移送ローラ31を並行に複数列設するように設けられている(図6及び図7参照)。各ローラーコンベア30は、その複数の移送ローラ31のうち所定本数間隔で駆動ローラとすることにより、当該ローラーコンベア30上の収納体Aを移送する。
【0050】
また、各ローラーコンベア30は、上述のように、除染室後部から搬出口12を介して無菌作業室200の内部に向けて設けられている(図2参照)。ここで、各ローラーコンベア30は、除染室10側の最後の移送ローラ31と、無菌作業室200側の最初の移送ローラ31との間に所定の間隔を設け、上下動する搬出ドア15の気密的な開閉と、包装体Aの移送とを両立している。
【0051】
また、除染室10には、4列の移送リフト20に対して、それぞれ1本ずつの主受承バー40と副受承バー41とが配設されている(図6参照)。主受承バー40は、各移送リフト20に対し次のようにして配設されている。図6及び図7に示すように、左右両側支柱42がローラーコンベア30の除染室前部側の側面32に固定され上方に向かって延出するように設けられている。
【0052】
この左右両側支柱42の上方部には、左右両側上部ロッド43が左右両側支柱42に交差して移送リフト20の移送方向(ローラーコンベア30側)に延出するようにムッフ44aで固定されている。この状態において、主受承バー40は、左右両側上部ロッド43の各延出部の間に移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されムッフ44bで固定されている(図7参照)。
【0053】
このことにより、主受承バー40は、ムッフ44aの位置を左右両側支柱42に沿って移動することにより、上下方向にその位置を調整することができる。また、主受承バー40は、ムッフ44bの位置を左右両側上部ロッド43に沿って移動することにより、前後方向にその位置を調整することができる。このように、主受承バー40の位置とローラーコンベア30の位置を調整することにより、収納体Aが安定してローラーコンベア30上に落下することができる。
【0054】
一方、副受承バー41は、図7に示すように、左右両側支柱42の各中央部の間に移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されてムッフ44cで固定されている。このように、副受承バー41は、主受承バー40よりも移送リフト20の移送方向に向かって手前側下方に且つ主受承バー40に並行に設けられている。これらの主受承バー40及び副受承バー41の作用については後述する。
【0055】
また、副受承バー41は、主受承バー40と同様に、ムッフ44cの位置を左右両側支柱42に沿って移動することにより、上下方向にその位置を調整することができる。なお、副受承バー41においても、主受承バー40における左右両側上部ロッド43に対応するロッドを更に左右各1本設けることにより、前後方向にその位置を調整するようにしてもよい。
【0056】
ここで、上述のように構成した本実施形態に係る収納体除染装置100を用いて収納体Aの外装面を除染し、除染された収納体Aを無菌作業室200内に搬入する作業について説明する。
【0057】
図1又は図2において、無菌作業室200は、無菌環境下にありその内部では医薬品の充填作業が行われている。このとき、搬出ドア15は閉鎖され、無菌作業室200と除染室10とは、気密的に遮断されている。
【0058】
ここで、無菌作業室200の外部の作業者が除染室10の搬入ドア14を開放し、4列の移送リフト20のそれぞれに対し、チェーンベルト25、26を順次回転させながら所定数量の収納体AをJ字状フック28に吊下げて、除染室10の内部に搬入する。このとき、除染室10の内部を外部に対して高圧とすることにより、除染室10が外部から汚染されることを軽減するようにしてもよい。
【0059】
このようにして、4列の移送リフト20の全てに所定数量の収納体Aを吊下げ終えた時点でチェーンベルト25、26の回転を停止する。このとき、各移送リフト20には、除染室前部と除染室後部との間でフック部28dの凸部を下方に向けて位置するJ字状フック28のほぼ全てに収納体Aが吊下げられた状態にある。なお、収納体Aは、主受承バー40及び副受承バー41のいずれにも当接していない(図6参照)。
【0060】
この状態で搬入ドア14を閉鎖すると、除染室10は、外部及び無菌作業室200と気密的に遮断された状態になる(図1参照)。
【0061】
次に、除染用ガス供給装置から除染用ガス供給配管を介して除染用ガスを除染室10の内部に供給する。本実施形態においては、除染用ガスとして過酸化水素蒸気を使用する。除染用ガス供給後、十分な除染時間を経過した後、除染室10内から除染用ガスを排出し、続いてエアレーションを行って除染作業を完了する。なお、本発明においては、除染用ガスの種類及び除染作業方法については、通常行われるものであればどのようなものを採用してもよい。
【0062】
収納体Aの除染作業が完了すると、除染室10の内部及び除染室10内の全ての収納体Aは、無菌状態となり、除染室10と無菌作業室200を連通することができる。そこで、搬出ドア15を開放し、上下2段のローラーコンベア30を駆動する。次に、4列の移送リフト20を駆動すると移送リフト20に吊下げられた収納体Aが順次取り外され(後述する)、これらの収納体Aが駆動するローラーコンベア30上に落下する。ローラーコンベア30上に落下した収納体Aは、順次ローラーコンベア30によって移送され、搬出口12を介して無菌作業室200内に搬入される。
【0063】
無菌作業室200の内部では、無菌衣を着用した作業者がローラーコンベア30によって順次送られてくる除染済みの収納体Aを開封し、その中に収納されていた複数のシリンジやボトルなどの容器類を取り出し、充填装置のホッパーに投入する。
【0064】
ここで、J字状フック28を介して移送リフト20に吊下げられた収納体Aが自動的に取り外され、ローラーコンベア30によって受け取られる様子について、除染室後部の収納体取外し部分の概要を示す図8〜図11を用いて説明する。なお、図8〜図11及び下記説明においては、左右一対の左右前側スプロケット23、24を「スプロケット24(23)」と、左右両側チェーンベルト25、26を「チェーンベルト26(25)」と表現する。
【0065】
図8において、スプロケット24(23)に掛け回されたチェーンベルト26(25)の間に所定間隔で掛け渡された各懸架バー27に固定された各J字状フック28には、複数の収納体A(A1〜A4)が吊下げられている。このうち収納体A1は、チェーンベルト26(25)の図示右方向(移送リフト20の移送方向)への移動に伴って、その下方部位を副受承バー41に当接した状態にある。
【0066】
スプロケット24(23)の下方には、ローラーコンベア30が配設され、このローラーコンベア30は、図示手前方向に駆動している。また、上述のように、ローラーコンベア30の左側面32(除染室前部側の側面)には、左右両側支柱42に交差するようにムッフ44aで固定された左右両側上部ロッド43を介して、主受承バー40が移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されムッフ44bで固定されている。また、左右両側支柱42の中央部には、副受承バー41が移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されムッフ44cで固定されている。
【0067】
この状態で、駆動モータMの駆動の下に、スプロケット24(23)が図示反時計回りに回転すると、チェーンベルト26(25)が反時計回りに回転する。このことにより、チェーンベルト26(25)は、スプロケット24(23)の下側接線に沿って図示右方向(除染室後部側)に移動し、スプロケット24(23)に沿って上方に回転しながら移動方向を反転し、スプロケット24(23)の上側接線に沿って図示左方向(除染室前部側)に移動する。
【0068】
このように、チェーンベルト26(25)が図示右方向へ移動するときは、チェーンベルト26(25)の間に掛け渡された懸架バー27に固定されたJ字状フック28は、そのフック部28dの凸部を下方に向け且つ延出端部28eを図示左側(除染室前部側)にして移動する。一方、チェーンベルト26(25)が反転して図示左方向へ移動するときは、J字状フック28は、そのフック部28dの凸部を上方に向け且つその延出端部28eを図示右側(除染室後部側)にして移動する。
【0069】
このように、収納体A1の下方部位が副受承バー41に当接している状態(図8参照)から、チェーンベルト26(25)が図示右方向へ更に移動すると、収納体A1の上方部位は、J字状フック28に吊下げられた状態でチェーンベルト26(25)と共に図示右方向に移動する。一方、収納体A1の下方部位は、副受承バー41に受承された状態で保持され、副受承バー41より前方に移動することができない(図9参照)。
【0070】
次に、チェーンベルト26(25)が更に図示右方向へ移動すると、収納体A1の下方部位は、副受承バー41を越えて受承から解放される。しかし、この収納体A1は、次に主受承バー40にその下方部位を当接し受承される(図10参照)。このとき、収納体A1に続く収納体A2の下方部位が副受承バー41に当接して受承され、収納体A2の荷重が収納体A1に掛からないようになる。このことは、後述するように、収納体A1がJ字状フック28から外れるときに、ローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することを容易にする。
【0071】
この図10の状態において、収納体A1は、主受承バー40によってその下方部位を受承され、その重心位置Cは、チェーンベルト26(25)の移動方向に向かって主受承バー40を越えた状態にある。また、収納体A1が吊下げられたJ字状フック28は、スプロケット24(23)に沿って上方に方向転換するチェーンベルト26(25)に従ってその方向を変化させている。すなわち、J字状フック28は、そのフック部28dの凸部を徐々に前方に向けて傾斜するように変化させる(図12参照)。
【0072】
このとき、収納体A1は、上述のように、主受承バー40によってその下方部位を受承された状態にあり、この収納体A1が引っ張られる方向Eは、チェーンベルト26(25)の移動方向に向かって後部下方である。しかし、J字状フック28は、その傾斜が未だ不十分であり、J字状本体28aの延出端部28eの延長線方向Dが上方寄りに向いている。このことにより、収納体A1は、J字状フック28に吊下げられた状態を維持している(図12参照)。
【0073】
次に、図11に示すように、チェーンベルト26(25)がスプロケット24(23)に沿って更に上方に方向転換すると、収納体A1が吊下げられたJ字状フック28は、そのフック部28dの凸部を更に前方に向けて傾斜するように変化させる(図13参照)。
【0074】
このとき、収納体A1が引っ張られる方向Eは、上述と同様に、チェーンベルト26(25)の移動方向に向かって後部下方である。一方、J字状本体28aの延出端部28eの延長線方向Dが真後ろ方向或いは下方寄りに向いている。このことにより、収納体A1は、その上方部位をJ字状フック28の延出端部28eから外れて落下することになる(図13参照)。
【0075】
収納体A1の上方部位がJ字状フック28から外れるとき、収納体A1の下方部位は、未だ主受承バー40に受承され且つその重心位置Cが主受承バー40の図示右側に位置している。このことにより、上方部位がJ字状フック28から外れた収納体A1は、主受承バー40の右側のローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる(図11参照)。
【0076】
このとき、続く収納体A2の下方部位は、未だ副受承バー41に受承された状態にあり、収納体A2の荷重が収納体A1に掛からないので、収納体A1は、ローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる(図11参照)。
【0077】
このようにして、ローラーコンベア30の上に落下した収納体A1は、ローラーコンベア30によって移送され、搬出口12を介して無菌作業室200内に搬入される。また、上記と同様にして、続く収納体A2、収納体A3、収納体A4というように順次無菌作業室200内に搬入されていく。
【0078】
ここで、4列の移送リフト20と上下2段のローラーコンベア30との速度を調整して、各ローラーコンベア30上に収納体Aが重複して落下しないように制御することが好ましい。このことにより、除染室10内から無菌作業室200内への収納体Aの搬入がスムーズに連続して自動で行われる。
【0079】
上述のようにして、除染室10内の全ての収納体Aが無菌作業室200内に搬入されると、搬入ドア15を閉鎖して、無菌作業室200内を気密的に封鎖する。この気密的に封鎖された無菌作業室200においては、医薬品の充填作業が継続して行われる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る収納体除染装置100は、除染室10内に収納体Aを吊下げる複数のJ字状フック28を間隔をおいて設けてなる移送リフト20を配設する。このことにより、収納体除染装置100は、一度に多くの収納体Aを収容することができ、これらを同時に除染することができる。
【0081】
また、除染室10には、除染前の収納体Aを搬入する搬入口11と除染後の収納体を搬出する搬出口12とが設けられ、主受承バー40が移送リフト20の搬出口12側下方に設けられている。このことにより、各収納体Aが除染室10の搬出口12近くで取外され、その後直ちに搬出されるので、自動で行われる搬出作業がスムーズに進行する。
【0082】
この取外し作業においては、まず、移送リフト20の移動に伴って、J字状フック28に吊下げられた収納体Aは、その下方部位を移送リフト20の除染室後部側下方に設けられた副受承バー41に受承される。次に、移送リフト20の更なる移動に伴って、収納体Aは、副受承バー41を越えてその受承から解放される。この副受承バー41を越えた収納体Aは、次に主受承バー40に当接し、その下方部位を受承される。
【0083】
この状態で移送リフト20が更に移動すると、収納体Aの上方部位はJ字状フック28に吊下げられた状態で移送リフト20の移送方向に移動する。一方、収納体Aの下方部位は、主受承バー40に受承された位置から移動することができない。このことにより、収納体Aは、移送リフト20の移送方向に向かって後部下方に引っ張られる状態になる。
【0084】
また、この状態においては、主受承バー40に受承されている収納体A(A1)に後続する次の収納体A(A2)が副受承部材41に当接して受承される。このことにより、次の収納体A(A2)の荷重が前の収納体A(A1)に掛かることとならず、前の収納体A(A1)がJ字状フック28から外れて落下するとき、この落下する前の収納体A(A1)は、ローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる。
【0085】
一方、移送リフト20に設けられるJ字状フック28は、移送リフト20の左右両側チェーンベルト25、26の間に掛け渡された懸架バー27に各2つずつ支持されている。これらのJ字状フック28は、そのフック部28dの凸部を下方に向け且つその延出端部28eを移送リフト20の移送方向の後方に向けることにより収納体Aを吊下げた状態で移動する。
【0086】
次に、移送リフト20の移動に伴って、J字状フック28が移送方向の前方に傾斜して、そのJ字状本体28aの延出端部28eの延長線方向Dが真後ろ方向或いは下方寄りになると、J字状フック28は、収納体Aを吊下げて保持することができず、収納体Aは、延出端部28eを介してJ字状フック28から外れることとなる。
【0087】
このとき、収納体Aの下方部位は、主受承バー40により受承されており、また、主受承バー40で受承された収納体Aの重心位置Cが主受承バー40を越えた位置で収納体AがJ字状フック28から外れる。このことにより、収納体Aは、主受承バー40を越えた位置に落下し、前もって収納体Aの落下位置に配設されているローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる。
【0088】
従って、本発明においては、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染装置内への収容量を多くして一度に除染できる収納体の数量を確保することのできる吊下げ方式を採用し、この吊下げ方式において、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供することができる。
【0089】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態における収納体除染装置は、無菌衣を着用した作業者が内部で充填作業を行う無菌作業室に連設されているが、これらの無菌室に限らず、RABS、アイソレーターなどに接するようにして設けてもよい。
(2)上記実施形態においては、図5(a)に記載のJ字状フックを採用するが、これに代えて、図5(b)或いは(c)に記載のフック、又は、レ字状、V字状、L字状、U字状などのフックを採用するようにしてもよい。図5(b)のフックは、上記実施形態のJ字状フック(図5(a))と同様に略半円のフック部を有するが、その湾曲端部には直線状に延出する部分を有していない。また、図5(c)のフックは、上記実施形態のJ字状フックに比べ、フック部が略半円より長く延出して略3/4円の形状をし、この湾曲端部がそのまま延出端部を構成する。
(3)上記実施形態においては、移送リフトには、スプロケットとチェーンベルトとの組み合わせを採用するが、これに代えて他の手段、例えば、プーリーと搬送ケーブルなどを採用するようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、除染室と無菌作業室の間の補助口に視認ガラス窓を採用するが、これに加えて、補助口から除染室に向けた作業用グローブを取り付けるようにしてもよい。
(5)上記実施形態においては、水平のローラーコンベアの移送ローラの一部に駆動ローラを採用するが、これに代えて、ローラーコンベア全体を傾斜させて自然に移送するようにしてもよい。
(6)上記実施形態においては、ローラーコンベアを採用するが、これに代えて、ホッパーやスロープなど他の手段を採用するようにしてもよい。
(7)除染室から無菌作業室への除染済みの包装体の搬入は、連続して全てを一度に搬入してもよいし、必要な個数ずつ分けて搬入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
A…収納体、B…吊下穴、C…重心位置、D…延出端部の延長線方向、E…収納体が引っ張られる方向、100…収納体除染装置、200…無菌作業室、10…除染室、11…搬入口、12…搬出口、13…補助口、14…搬入ドア、15…搬出ドア、16…視認ガラス窓、20…移送リフト、21〜24…スプロケット、25、26…チェーンベルト、27…懸架バー、28…J字状フック、28a…J字状本体、28b…固定リング、28c…基部、28d…フック部、28e…延出端部、28f、28g…半リング、29a、29b…支軸、30…ローラーコンベア、31…移送ローラ、40…主受承バー、41…副受承バー、42…支柱、43…上部ロッド、44a〜44c…ムッフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌済みの物品を収納した収納体の外装面を除染し、除染後の収納体を次工程の無菌環境に移送する収納体除染装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場での利便性から前もって注射剤を充填したシリンジ容器、或いは、点眼薬、輸液、消毒液などを充填したボトル容器が製造されている。これらの容器に医薬品を充填する作業は、無菌環境下の充填作業室(以下、無菌作業室という)で行われる。この作業に使用するシリンジ、ボトル及びこれらに使用する中栓、キャップなどの容器類は、1つ1つが小さなものであり、また、数も多く必要とされる。そこで、これらの容器類は、それぞれの製造段階でγ線、電子線、EOG(エチレンオキサイドガス)などで滅菌され所定個数をまとめて収納体に収納して無菌作業室に搬入される。
【0003】
しかし、上記収納体の外装面は、流通や運搬の際に汚染され、この外装面の汚染を除染しなければ無菌作業室に搬入することはできない。
【0004】
そこで、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送し、無菌作業室内で収納体を開放して内部の滅菌されたシリンジやボトルなどの容器類を取り出して充填作業に供する方法が一般に行われている。
【0005】
このような除染装置を連設した無菌装置が、下記特許文献1の連設無菌装置として提案されている。この連設無菌装置においては、前もって除染装置(下記特許文献1では、除染用密閉室という)で収納体(下記特許文献1では、除染対象物という)の外装面を除染し、その後、除染装置と連設した無菌作業室(下記特許文献1では、アイソレータという)に除染済みの収納体を移送し、この無菌作業室にて、包装材を除去し、内部の資材を取り出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−143726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1においては、除染装置内に所定個数の収納体を収容して同時に除染するので、収納体は、除染装置の収納口から搬出口にかけて所定間隔で軸支された移送用ローラの上に載せられて除染装置内を移動する。そして、除染装置の搬出口から無菌作業室内に移送されるが、この移送は、無菌作業室内で無菌衣を装着した作業者或いは外部から作業用グローブを介して内部操作する作業者による手作業で行われる。
【0008】
また、除染装置内での収納体の収容及び搬送においては、上記移送用ローラによる方式の他に収納体を吊下げて収容及び搬送する吊下げ方式が採用されている。この吊下げ方式は、除染装置内への収納体の収容量を多くすることができるので効率的な方法として広く採用されている。
【0009】
しかし、この吊下げ方式においては、収納体を除染装置の搬出口から無菌作業室内に移送する作業に加え、収納体を吊下げた状態から取外すという作業も追加される。従って、この吊下げ方式においても無菌作業室内で無菌衣を装着した作業者或いは外部からグローブを介して内部操作する作業者による手作業が必要となる。このため、無菌作業室内での充填作業において、作業員或いは作業工数が多くなり効率的な作業ができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染装置内への収容量を多くして一度に除染できる収納体の数量を確保することのできる吊下げ方式を採用し、この吊下げ方式において、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、収納体をフックに吊下げて移動する移送手段の下方に当該収納体の下方部位を受承する受承部材を設けることにより、収納体がフックから外れたときに、収納体の取外しが自動で安定したものになることを見出して本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明に係る収納体除染装置は、請求項1の記載によれば、滅菌済みの物品を収納してなる収納体(A)を吊下げる複数のフック(28)を間隔をおいて設けてなる上側移送手段(20)と、
上記上側移送手段の下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い上記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材(40)と、
上記収納体が上記下方部位を上記受承部材により受承された状態で上記上側移送手段の更なる移動に伴い上記フックから外れて落下するとき、この落下する上記収納体を受け止めて移送する下側移送手段(30)とを備えている。
【0013】
上記構成によれば、収納体除染装置は、収納体を吊下げる複数のフックを間隔をおいて設けてなる上側移送手段を採用することにより、一度に多くの収納体を収容することができ、これらを同時に除染することができる。また、除染済みの収納体は、上側移送手段を順次移動させることにより取外し位置に移動することができる。
【0014】
フックに吊下げられた収納体を取外す際には、まず、上側移送手段の移動に伴って、上側移送手段の下方に設けられた受承部材が収納体の下方部位に当接して当該下方部位を下側から受承する。この状態で上側移送手段が更に移動すると、収納体の上方部位はフックに吊下げられた状態で上側移送手段の移動方向に移動する。一方、収納体の下方部位は、受承部材に受承された位置から移動することができない。
【0015】
この状態で上側移送手段が更に移動して収納体がフックから外れて落下するとき、この落下する収納体は、外れたフックの位置と受承部材の位置との間の安定した位置に安定した向きで落下することができる。この収納体の落下位置には、前もって下側移送手段が配設されており、この下側移送手段は、容易に収納体を受け止め移送することができる。
【0016】
よって、本発明は、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染装置内への収容量を多くして一度に除染できる収納体の数量を確保することのできる吊下げ方式を採用し、この吊下げ方式において、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る収納体除染装置は、請求項2の記載によれば、滅菌済みの物品を収納してなる収納体(A)を搬入する搬入口(11)と当該収納体を搬出する搬出口(12)とを設けてなる除染室(10)と、
複数のフック(28)を間隔をおいて設けてなる移送手段であって上記収納体を上記複数のフックのいずれかで吊下げた状態で上記除染室内を上記搬入口から上記搬出口に向けて移送する上側移送手段(20)と、
上記上側移送手段の上記搬出口側下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い上記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材(40)と、
この受承部材により受承された上記収納体がその重心位置にて上記上側移送手段の移動に伴い上記受承部材を越えた状態で当該収納体が上記上側移送手段の更なる移動に伴い上記フックから外れて落下するとき、この落下する上記収納体を受け止めて当該収納体を上記搬出口から上記除染室の外部に移送する下側移送手段(30)とを備えている。
【0018】
上記構成によれば、収納体除染装置は、除染前の収納体を搬入する搬入口と除染後の収納体を搬出する搬出口とを設けた除染室を備え、また、上側移送手段の搬出口側下方には受承部材を備えている。このことにより、収納体の取外し後直ちに搬出口から搬出することができるので、自動で行われる搬出工程がスムーズに進行する。
【0019】
また、上側移送手段の移動に伴って受承部材で受承された収納体の重心位置が受承部材を越えた状態で収納体がフックから外れて落下するとき、この落下する収納体は、外れたフックの位置と受承部材の位置との間の受承部材を越えた安定した位置に安定した向きで落下することができる。よって、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0020】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載の収納体除染装置であって、
上記受承部材を主受承部材として、
上記上側移送手段による上記収納体の移送方向に対して上記主受承部材の手前側下方に設けてなる副受承部材(41)を備えており、
上記主受承部材が上記収納体の下方部位を受承したとき、
上記副受承部材が上記収納体に後続する他の収納体の下方部位を受承することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、収納体除染装置は、主受承部材に加え副受承部材を備えている。この副受承部材は、上側移送手段による収納体の移送方向に対して主受承部材の手前側であって、主受承部材より下方に設けられている。まず、副受承部材が主受承部材の手前側にあることにより、フックに吊下げられた収納体は、上側移送手段の移動に伴って、主受承部材により受承される前にその下方部位を副受承部材により受承される。
【0022】
また、副受承部材が主受承部材より下方に設けられることにより、フックに吊下げられた収納体は、上側移送手段の移動に伴って、副受承部材を越えてその受承から解放されることになる。この副受承部材を越えた収納体は、次に主受承部材によりその下方部位を受承される。このとき、主受承部材により受承されている収納体に後続する他の収納体が副受承部材により受承される。
【0023】
このことにより、後続する他の収納体(副受承部材により受承される収納体)の荷重が前の収納体(主受承部材により受承される収納体)に掛かることとならず、前の収納体がフックから外れて落下するとき、この落下する収納体は、フックの位置と主受承部材の位置との間の更に安定した位置に安定した向きで落下することができる。よって、請求項3に記載の発明においては、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0024】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の収納体除染装置であって、
上記上側移送手段は、上記収納体の移送方向に移動する移送部材(25、26)を備えており、
上記複数のフックは、それぞれ、上記移送部材の懸架部(27)に固定されて当該懸架部から下方に延出する基部(28c)と、下方に凸な形状となるように上記基部から下方に延出すると共に上記移送方向の後方に向けて延出するフック部(28d)とを具備し、
上記フックが上記フック部に上記収納体を吊下げた状態で上記移送部材の移動に伴い上記移送方向の前方へ傾斜したとき、当該収納体が上記フックから外れることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、収納体除染装置の上側移送手段が備える移送部材が複数のフックを懸架して収納体の移送方向に移動する。また、これらのフックは、それぞれ、移送部材の懸架部から下方に延出する基部と、下方に凸な形状となるように当該基部から下方に延出すると共に移送方向の後方に向けて延出するフック部とを具備している。このことにより、収納体は、フックのフック部に吊下げられた状態で移送方向に移送される。
【0026】
次に、収納体を吊下げたフックが移送部材の移動に伴い移送方向の前方へ傾斜したとき、当該フックは、収納体を吊下げて保持することができず、収納体がフックから外れることとなる。
【0027】
このとき、収納体の下方部位は、受承部材により受承されているので、収納体は、フックの位置と受承部材の位置との間の安定した位置に安定した向きで落下することができる。よって、請求項4に記載の発明においても、請求項1から3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0028】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る収納体除染装置の概要を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す収納体除染装置の概要を示す横断面図である。
【図3】図1に示す収納体除染装置において、移送リフトに複数の収納体が吊下げられた状態を示す斜視図である。
【図4】J字状フックに収納体が吊下げられた状態を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)(c)は、それぞれ、収納体を吊下げるフックの構造を示す図面である。
【図6】除染室後部の収納体取外し部分の状態を示す図面である。
【図7】収納体を受承する主受承バー及び副受承バーの構成を示す斜視図である。
【図8】収納体取外し部分において、収納体が副受承バーに当接した状態を示す図面である。
【図9】収納体取外し部分において、収納体が副受承バーから解放される直前の状態を示す図面である。
【図10】収納体取外し部分において、収納体がJ字状フックから取り外される直前の状態を示す図面である。
【図11】収納体取外し部分において、J字状フックから取り外された収納体がローラーコンベアに受け取られた状態を示す図面である。
【図12】図10において、Xで示すサークルの部分を拡大した拡大図である。
【図13】図11において、Yで示すサークルの部分を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る収納体除染装置の一実施形態を図面に従って説明する。図1及び図2に示すように、収納体除染装置100は、無菌作業室200に連設した除染室10を備えている。除染室10は、その一部が無菌作業室200の内部に入り込む状態で設けられ、この除染室10には、その内部に除染用ガスを供給する除染用ガス供給装置(図示しない)が除染用ガス供給配管(図示しない)によって連通している。
【0031】
ここで、収納体除染装置100による除染対象物は、図4に示すように、医薬品を充填するためのシリンジやボトルなどの容器類を予め滅菌された状態で所定個数ずつ収納した収納体Aであって、その外装面を除染する。この収納体Aは、内部の無菌状態を維持できるシールド性を有するフィルム、例えば、ポリエチレンフィルム或いは数種類のフィルムの積層体からなり、その上部は、ヒートシールなどで補強されている。この収納体Aの上部ヒートシール部分には、2つの吊下穴Bが設けられている。
【0032】
この収納体Aは、その外装面を収納体除染装置100で除染された後、無菌作業室200に搬入されてから開放され、その内部に収納されている滅菌済みの容器を取り出して充填作業に供する。
【0033】
除染室10には、搬入口11と搬出口12と補助口13とが設けられている。搬入口11は、除染室10と外部(無菌作業室200の外部)との境界に設けられ(図2参照)、この搬入口11には、外部に向けて開閉することにより除染室10と外部とを気密的に遮断する搬入ドア14が設けられている(以下、搬入ドア14側を「除染室前部」という)。この搬入ドア14は、外部から作業者が除染前の収納体Aを除染室10の内部に搬入するときに開放される(後述する)。
【0034】
搬出口12は、除染室10が無菌作業室200の内部に入り込んだ部分の一方側側面にあって除染室10と無菌作業室200との境界に設けられ(図2参照)、この搬出口12には、上下動することにより除染室10と無菌作業室200とを気密的に遮断する搬出ドア15が設けられている(以下、搬出ドア15側を「除染室後部」という)。この搬出ドア15は、除染室10の内部で除染された収納体Aを除染室10から無菌作業室200の内部に搬入するときに開放される(後述する)。
【0035】
補助口13は、除染室10が無菌作業室200の内部に入り込んだ部分の正面(搬入口11に対向する面)にあって除染室10と無菌作業室200との境界に設けられ(図2参照)、この補助口13は、後述する4列の移送リフト20にそれぞれ対応するように、上下2か所、左右2か所、計4か所設けられている。これらの補助口13には、それぞれ、除染室10と無菌作業室200とを気密的に遮断する4つの視認ガラス窓16が設けられ、無菌作業室200内の作業者が除染室10内の状態を視認することができる。なお、これら4つの視認ガラス窓16は、開閉するようにしてもよい。
【0036】
なお、除染室10と、搬入ドア14、搬出ドア15及び視認ガラス窓16との間には、いずれもパッキン(図示しない)が設けられており、また、各ドア及び窓の開閉機構は、一般の無菌室或いは除染室に使用される機構を採用する。
【0037】
また、除染室10には、その内部に4列の移送リフト20と上下2段のローラーコンベア30とが配設されている。4列の移送リフト20は、除染室前部から除染室後部に向けて(以下、この方向を「移送リフト20の移送方向」ともいう)、上下2段、左右2列、計4列に設けられ、いずれも水平方向に走行する(後述する)。上下2段のローラーコンベア30は、除染室後部から搬出口12を介して無菌作業室200の内部に向けて、視認ガラス窓16に並行する向きに上下2段に設けられ、いずれも水平方向に走行する(後述する)。
【0038】
4列の移送リフト20は、それぞれ、図3に示すように、前後左右4か所に設けられた4つのスプロケット21〜24と、これらのスプロケットに移送リフト20の移送方向に向けて掛け回された左右両側チェーンベルト25、26と、駆動モータM(図示しない)とを備えている。
【0039】
4つのスプロケット21〜24のうち、除染室前部に設けられる左右前側スプロケット21、22は、支軸29aにより同軸的に回転可能に固定され、また、除染室後部に設けられる左右後側スプロケット23、24は、支軸29bにより同軸的に回転可能に固定されている。更に、左側前後スプロケット21、23の間には、左側チェーンベルト25が掛け回され、また、右側前後スプロケット22、24の間には、右側チェーンベルト26が掛け回されている(図3参照)。
【0040】
このことにより、4つのスプロケット21〜24のうちいずれかのスプロケットが駆動モータMによる駆動の下に回転すると、左右両側チェーンベルト25、26は、左右連動して図示反時計方向に回転する(図3参照)。換言すれば、左右両側チェーンベルト25、26は、掛け回された各スプロケットの下側接線に沿って移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動し、除染室後部において、左右後側スプロケット23、24に沿って下方から上方に向け、更に後方に向けて反転し、今度は各スプロケットの上側接線に沿って移送リフト20の移送方向と逆方向(図示左方向)に向けて移動する。
【0041】
次に、左右両側チェーンベルト25、26は、除染室前部において、左右前側スプロケット21、22に沿って上方から下方に向け、更に前方に向けて反転し、再度、掛け回された各スプロケットの下側接線に沿って移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動する。このように、左右両側チェーンベルト25、26は、エンドレスに図示反時計方向に回転する(図3参照)。
【0042】
また、左右両側チェーンベルト25、26は、それぞれの間に支持具27aを介して所定間隔で掛け渡される複数の懸架バー27と、これら複数の懸架バー27に懸架される複数のJ字状フック28とを具備している(図3及び図4参照)。
【0043】
J字状フック28は、図5(a)に示すように、J字状本体28aと固定リング28bとを備えており、J字状本体28aは、直線状の基部28cと、下方に凸な形状になるように基部28cの下端部から略半円を描くように円弧状に延出したフック部28dと、このフック部28dの先端から基部28cに略並行な直線状に上方に短く延出した延出端部28eとから構成されている。
【0044】
固定リング28bは、内孔を介して左右に割れる2つの半リング28f、28gからなり、一方の半リング28fは、基部28cの上方においてフック部28dの背面側にその凸部を当接してネジ28hで固定され、他方の半リング28gは、その凹部を半リング28fの凹部に対向させて内孔を形成するように半リング28fにネジ28iで固定される。これら2つの半リング28f、28gが形成する内孔には、左右両側チェーンベルト25、26の間に掛け渡された懸架バー27が嵌入される。
【0045】
このように構成されたJ字状フック28は、図4に示すように、左右両側チェーンベルト25、26の間に支持具27aを介して掛け渡される懸架バー27に、それぞれ、2つずつ所定間隔で固定リング28bによって固定されている。
【0046】
これらのJ字状フック28は、図3及び図4に示すように、左右両側チェーンベルト25、26が各スプロケットの下側接線に沿って移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動するときには、そのフック部28dの凸部を下方に向け且つその延出端部28eを移送リフト20の移送方向の後方に向けて移動する。
【0047】
このように、左右両側チェーンベルト25、26が移送リフト20の移送方向に向けて移動するときには、1本の懸架バー27に固定された2つのJ字状フック28には、収納体Aがその上部に設けられた2つの吊下穴Bを介して吊下げられている(図4参照)。ここで、懸架バー27に支持された2つのJ字状フック28の間隔は、随時調整可能であって除染対象である収納体Aの上部に設けられた2つの吊下穴Bの間隔に合わせて、前もって調整しておく。
【0048】
次に、これらのJ字状フック28は、図3及び図4に示すように、左右両側チェーンベルト25、26が反転して各スプロケットの上側接線に沿って移送リフト20の移送方向の逆方向(図示左方向)に向けて移動するときには、そのフック部28dの凸部を上方に向け且つその延出端部28eを移送リフト20の移送方向(図示右方向)に向けて移動する。
【0049】
上下2段のローラーコンベア30は、それぞれ、その進行方向と交差する方向に、円柱状の移送ローラ31を並行に複数列設するように設けられている(図6及び図7参照)。各ローラーコンベア30は、その複数の移送ローラ31のうち所定本数間隔で駆動ローラとすることにより、当該ローラーコンベア30上の収納体Aを移送する。
【0050】
また、各ローラーコンベア30は、上述のように、除染室後部から搬出口12を介して無菌作業室200の内部に向けて設けられている(図2参照)。ここで、各ローラーコンベア30は、除染室10側の最後の移送ローラ31と、無菌作業室200側の最初の移送ローラ31との間に所定の間隔を設け、上下動する搬出ドア15の気密的な開閉と、包装体Aの移送とを両立している。
【0051】
また、除染室10には、4列の移送リフト20に対して、それぞれ1本ずつの主受承バー40と副受承バー41とが配設されている(図6参照)。主受承バー40は、各移送リフト20に対し次のようにして配設されている。図6及び図7に示すように、左右両側支柱42がローラーコンベア30の除染室前部側の側面32に固定され上方に向かって延出するように設けられている。
【0052】
この左右両側支柱42の上方部には、左右両側上部ロッド43が左右両側支柱42に交差して移送リフト20の移送方向(ローラーコンベア30側)に延出するようにムッフ44aで固定されている。この状態において、主受承バー40は、左右両側上部ロッド43の各延出部の間に移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されムッフ44bで固定されている(図7参照)。
【0053】
このことにより、主受承バー40は、ムッフ44aの位置を左右両側支柱42に沿って移動することにより、上下方向にその位置を調整することができる。また、主受承バー40は、ムッフ44bの位置を左右両側上部ロッド43に沿って移動することにより、前後方向にその位置を調整することができる。このように、主受承バー40の位置とローラーコンベア30の位置を調整することにより、収納体Aが安定してローラーコンベア30上に落下することができる。
【0054】
一方、副受承バー41は、図7に示すように、左右両側支柱42の各中央部の間に移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されてムッフ44cで固定されている。このように、副受承バー41は、主受承バー40よりも移送リフト20の移送方向に向かって手前側下方に且つ主受承バー40に並行に設けられている。これらの主受承バー40及び副受承バー41の作用については後述する。
【0055】
また、副受承バー41は、主受承バー40と同様に、ムッフ44cの位置を左右両側支柱42に沿って移動することにより、上下方向にその位置を調整することができる。なお、副受承バー41においても、主受承バー40における左右両側上部ロッド43に対応するロッドを更に左右各1本設けることにより、前後方向にその位置を調整するようにしてもよい。
【0056】
ここで、上述のように構成した本実施形態に係る収納体除染装置100を用いて収納体Aの外装面を除染し、除染された収納体Aを無菌作業室200内に搬入する作業について説明する。
【0057】
図1又は図2において、無菌作業室200は、無菌環境下にありその内部では医薬品の充填作業が行われている。このとき、搬出ドア15は閉鎖され、無菌作業室200と除染室10とは、気密的に遮断されている。
【0058】
ここで、無菌作業室200の外部の作業者が除染室10の搬入ドア14を開放し、4列の移送リフト20のそれぞれに対し、チェーンベルト25、26を順次回転させながら所定数量の収納体AをJ字状フック28に吊下げて、除染室10の内部に搬入する。このとき、除染室10の内部を外部に対して高圧とすることにより、除染室10が外部から汚染されることを軽減するようにしてもよい。
【0059】
このようにして、4列の移送リフト20の全てに所定数量の収納体Aを吊下げ終えた時点でチェーンベルト25、26の回転を停止する。このとき、各移送リフト20には、除染室前部と除染室後部との間でフック部28dの凸部を下方に向けて位置するJ字状フック28のほぼ全てに収納体Aが吊下げられた状態にある。なお、収納体Aは、主受承バー40及び副受承バー41のいずれにも当接していない(図6参照)。
【0060】
この状態で搬入ドア14を閉鎖すると、除染室10は、外部及び無菌作業室200と気密的に遮断された状態になる(図1参照)。
【0061】
次に、除染用ガス供給装置から除染用ガス供給配管を介して除染用ガスを除染室10の内部に供給する。本実施形態においては、除染用ガスとして過酸化水素蒸気を使用する。除染用ガス供給後、十分な除染時間を経過した後、除染室10内から除染用ガスを排出し、続いてエアレーションを行って除染作業を完了する。なお、本発明においては、除染用ガスの種類及び除染作業方法については、通常行われるものであればどのようなものを採用してもよい。
【0062】
収納体Aの除染作業が完了すると、除染室10の内部及び除染室10内の全ての収納体Aは、無菌状態となり、除染室10と無菌作業室200を連通することができる。そこで、搬出ドア15を開放し、上下2段のローラーコンベア30を駆動する。次に、4列の移送リフト20を駆動すると移送リフト20に吊下げられた収納体Aが順次取り外され(後述する)、これらの収納体Aが駆動するローラーコンベア30上に落下する。ローラーコンベア30上に落下した収納体Aは、順次ローラーコンベア30によって移送され、搬出口12を介して無菌作業室200内に搬入される。
【0063】
無菌作業室200の内部では、無菌衣を着用した作業者がローラーコンベア30によって順次送られてくる除染済みの収納体Aを開封し、その中に収納されていた複数のシリンジやボトルなどの容器類を取り出し、充填装置のホッパーに投入する。
【0064】
ここで、J字状フック28を介して移送リフト20に吊下げられた収納体Aが自動的に取り外され、ローラーコンベア30によって受け取られる様子について、除染室後部の収納体取外し部分の概要を示す図8〜図11を用いて説明する。なお、図8〜図11及び下記説明においては、左右一対の左右前側スプロケット23、24を「スプロケット24(23)」と、左右両側チェーンベルト25、26を「チェーンベルト26(25)」と表現する。
【0065】
図8において、スプロケット24(23)に掛け回されたチェーンベルト26(25)の間に所定間隔で掛け渡された各懸架バー27に固定された各J字状フック28には、複数の収納体A(A1〜A4)が吊下げられている。このうち収納体A1は、チェーンベルト26(25)の図示右方向(移送リフト20の移送方向)への移動に伴って、その下方部位を副受承バー41に当接した状態にある。
【0066】
スプロケット24(23)の下方には、ローラーコンベア30が配設され、このローラーコンベア30は、図示手前方向に駆動している。また、上述のように、ローラーコンベア30の左側面32(除染室前部側の側面)には、左右両側支柱42に交差するようにムッフ44aで固定された左右両側上部ロッド43を介して、主受承バー40が移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されムッフ44bで固定されている。また、左右両側支柱42の中央部には、副受承バー41が移送リフト20の移送方向に交差し且つ水平方向に掛け渡されムッフ44cで固定されている。
【0067】
この状態で、駆動モータMの駆動の下に、スプロケット24(23)が図示反時計回りに回転すると、チェーンベルト26(25)が反時計回りに回転する。このことにより、チェーンベルト26(25)は、スプロケット24(23)の下側接線に沿って図示右方向(除染室後部側)に移動し、スプロケット24(23)に沿って上方に回転しながら移動方向を反転し、スプロケット24(23)の上側接線に沿って図示左方向(除染室前部側)に移動する。
【0068】
このように、チェーンベルト26(25)が図示右方向へ移動するときは、チェーンベルト26(25)の間に掛け渡された懸架バー27に固定されたJ字状フック28は、そのフック部28dの凸部を下方に向け且つ延出端部28eを図示左側(除染室前部側)にして移動する。一方、チェーンベルト26(25)が反転して図示左方向へ移動するときは、J字状フック28は、そのフック部28dの凸部を上方に向け且つその延出端部28eを図示右側(除染室後部側)にして移動する。
【0069】
このように、収納体A1の下方部位が副受承バー41に当接している状態(図8参照)から、チェーンベルト26(25)が図示右方向へ更に移動すると、収納体A1の上方部位は、J字状フック28に吊下げられた状態でチェーンベルト26(25)と共に図示右方向に移動する。一方、収納体A1の下方部位は、副受承バー41に受承された状態で保持され、副受承バー41より前方に移動することができない(図9参照)。
【0070】
次に、チェーンベルト26(25)が更に図示右方向へ移動すると、収納体A1の下方部位は、副受承バー41を越えて受承から解放される。しかし、この収納体A1は、次に主受承バー40にその下方部位を当接し受承される(図10参照)。このとき、収納体A1に続く収納体A2の下方部位が副受承バー41に当接して受承され、収納体A2の荷重が収納体A1に掛からないようになる。このことは、後述するように、収納体A1がJ字状フック28から外れるときに、ローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することを容易にする。
【0071】
この図10の状態において、収納体A1は、主受承バー40によってその下方部位を受承され、その重心位置Cは、チェーンベルト26(25)の移動方向に向かって主受承バー40を越えた状態にある。また、収納体A1が吊下げられたJ字状フック28は、スプロケット24(23)に沿って上方に方向転換するチェーンベルト26(25)に従ってその方向を変化させている。すなわち、J字状フック28は、そのフック部28dの凸部を徐々に前方に向けて傾斜するように変化させる(図12参照)。
【0072】
このとき、収納体A1は、上述のように、主受承バー40によってその下方部位を受承された状態にあり、この収納体A1が引っ張られる方向Eは、チェーンベルト26(25)の移動方向に向かって後部下方である。しかし、J字状フック28は、その傾斜が未だ不十分であり、J字状本体28aの延出端部28eの延長線方向Dが上方寄りに向いている。このことにより、収納体A1は、J字状フック28に吊下げられた状態を維持している(図12参照)。
【0073】
次に、図11に示すように、チェーンベルト26(25)がスプロケット24(23)に沿って更に上方に方向転換すると、収納体A1が吊下げられたJ字状フック28は、そのフック部28dの凸部を更に前方に向けて傾斜するように変化させる(図13参照)。
【0074】
このとき、収納体A1が引っ張られる方向Eは、上述と同様に、チェーンベルト26(25)の移動方向に向かって後部下方である。一方、J字状本体28aの延出端部28eの延長線方向Dが真後ろ方向或いは下方寄りに向いている。このことにより、収納体A1は、その上方部位をJ字状フック28の延出端部28eから外れて落下することになる(図13参照)。
【0075】
収納体A1の上方部位がJ字状フック28から外れるとき、収納体A1の下方部位は、未だ主受承バー40に受承され且つその重心位置Cが主受承バー40の図示右側に位置している。このことにより、上方部位がJ字状フック28から外れた収納体A1は、主受承バー40の右側のローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる(図11参照)。
【0076】
このとき、続く収納体A2の下方部位は、未だ副受承バー41に受承された状態にあり、収納体A2の荷重が収納体A1に掛からないので、収納体A1は、ローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる(図11参照)。
【0077】
このようにして、ローラーコンベア30の上に落下した収納体A1は、ローラーコンベア30によって移送され、搬出口12を介して無菌作業室200内に搬入される。また、上記と同様にして、続く収納体A2、収納体A3、収納体A4というように順次無菌作業室200内に搬入されていく。
【0078】
ここで、4列の移送リフト20と上下2段のローラーコンベア30との速度を調整して、各ローラーコンベア30上に収納体Aが重複して落下しないように制御することが好ましい。このことにより、除染室10内から無菌作業室200内への収納体Aの搬入がスムーズに連続して自動で行われる。
【0079】
上述のようにして、除染室10内の全ての収納体Aが無菌作業室200内に搬入されると、搬入ドア15を閉鎖して、無菌作業室200内を気密的に封鎖する。この気密的に封鎖された無菌作業室200においては、医薬品の充填作業が継続して行われる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る収納体除染装置100は、除染室10内に収納体Aを吊下げる複数のJ字状フック28を間隔をおいて設けてなる移送リフト20を配設する。このことにより、収納体除染装置100は、一度に多くの収納体Aを収容することができ、これらを同時に除染することができる。
【0081】
また、除染室10には、除染前の収納体Aを搬入する搬入口11と除染後の収納体を搬出する搬出口12とが設けられ、主受承バー40が移送リフト20の搬出口12側下方に設けられている。このことにより、各収納体Aが除染室10の搬出口12近くで取外され、その後直ちに搬出されるので、自動で行われる搬出作業がスムーズに進行する。
【0082】
この取外し作業においては、まず、移送リフト20の移動に伴って、J字状フック28に吊下げられた収納体Aは、その下方部位を移送リフト20の除染室後部側下方に設けられた副受承バー41に受承される。次に、移送リフト20の更なる移動に伴って、収納体Aは、副受承バー41を越えてその受承から解放される。この副受承バー41を越えた収納体Aは、次に主受承バー40に当接し、その下方部位を受承される。
【0083】
この状態で移送リフト20が更に移動すると、収納体Aの上方部位はJ字状フック28に吊下げられた状態で移送リフト20の移送方向に移動する。一方、収納体Aの下方部位は、主受承バー40に受承された位置から移動することができない。このことにより、収納体Aは、移送リフト20の移送方向に向かって後部下方に引っ張られる状態になる。
【0084】
また、この状態においては、主受承バー40に受承されている収納体A(A1)に後続する次の収納体A(A2)が副受承部材41に当接して受承される。このことにより、次の収納体A(A2)の荷重が前の収納体A(A1)に掛かることとならず、前の収納体A(A1)がJ字状フック28から外れて落下するとき、この落下する前の収納体A(A1)は、ローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる。
【0085】
一方、移送リフト20に設けられるJ字状フック28は、移送リフト20の左右両側チェーンベルト25、26の間に掛け渡された懸架バー27に各2つずつ支持されている。これらのJ字状フック28は、そのフック部28dの凸部を下方に向け且つその延出端部28eを移送リフト20の移送方向の後方に向けることにより収納体Aを吊下げた状態で移動する。
【0086】
次に、移送リフト20の移動に伴って、J字状フック28が移送方向の前方に傾斜して、そのJ字状本体28aの延出端部28eの延長線方向Dが真後ろ方向或いは下方寄りになると、J字状フック28は、収納体Aを吊下げて保持することができず、収納体Aは、延出端部28eを介してJ字状フック28から外れることとなる。
【0087】
このとき、収納体Aの下方部位は、主受承バー40により受承されており、また、主受承バー40で受承された収納体Aの重心位置Cが主受承バー40を越えた位置で収納体AがJ字状フック28から外れる。このことにより、収納体Aは、主受承バー40を越えた位置に落下し、前もって収納体Aの落下位置に配設されているローラーコンベア30上の安定した位置に安定した向きで落下することができる。
【0088】
従って、本発明においては、無菌作業室に連設された除染装置により収納体の外装面を除染してから無菌作業室に移送するに際して、除染装置内への収容量を多くして一度に除染できる収納体の数量を確保することのできる吊下げ方式を採用し、この吊下げ方式において、除染済みの収納体を取り外して無菌作業室に移送する工程を手作業によることなく自動化して効率的な作業が行えるようにした収納体除染装置を提供することができる。
【0089】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態における収納体除染装置は、無菌衣を着用した作業者が内部で充填作業を行う無菌作業室に連設されているが、これらの無菌室に限らず、RABS、アイソレーターなどに接するようにして設けてもよい。
(2)上記実施形態においては、図5(a)に記載のJ字状フックを採用するが、これに代えて、図5(b)或いは(c)に記載のフック、又は、レ字状、V字状、L字状、U字状などのフックを採用するようにしてもよい。図5(b)のフックは、上記実施形態のJ字状フック(図5(a))と同様に略半円のフック部を有するが、その湾曲端部には直線状に延出する部分を有していない。また、図5(c)のフックは、上記実施形態のJ字状フックに比べ、フック部が略半円より長く延出して略3/4円の形状をし、この湾曲端部がそのまま延出端部を構成する。
(3)上記実施形態においては、移送リフトには、スプロケットとチェーンベルトとの組み合わせを採用するが、これに代えて他の手段、例えば、プーリーと搬送ケーブルなどを採用するようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、除染室と無菌作業室の間の補助口に視認ガラス窓を採用するが、これに加えて、補助口から除染室に向けた作業用グローブを取り付けるようにしてもよい。
(5)上記実施形態においては、水平のローラーコンベアの移送ローラの一部に駆動ローラを採用するが、これに代えて、ローラーコンベア全体を傾斜させて自然に移送するようにしてもよい。
(6)上記実施形態においては、ローラーコンベアを採用するが、これに代えて、ホッパーやスロープなど他の手段を採用するようにしてもよい。
(7)除染室から無菌作業室への除染済みの包装体の搬入は、連続して全てを一度に搬入してもよいし、必要な個数ずつ分けて搬入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
A…収納体、B…吊下穴、C…重心位置、D…延出端部の延長線方向、E…収納体が引っ張られる方向、100…収納体除染装置、200…無菌作業室、10…除染室、11…搬入口、12…搬出口、13…補助口、14…搬入ドア、15…搬出ドア、16…視認ガラス窓、20…移送リフト、21〜24…スプロケット、25、26…チェーンベルト、27…懸架バー、28…J字状フック、28a…J字状本体、28b…固定リング、28c…基部、28d…フック部、28e…延出端部、28f、28g…半リング、29a、29b…支軸、30…ローラーコンベア、31…移送ローラ、40…主受承バー、41…副受承バー、42…支柱、43…上部ロッド、44a〜44c…ムッフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌済みの物品を収納してなる収納体を吊下げる複数のフックを間隔をおいて設けてなる上側移送手段と、
前記上側移送手段の下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い前記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材と、
前記収納体が前記下方部位を前記受承部材により受承された状態で前記上側移送手段の更なる移動に伴い前記フックから外れて落下するとき、この落下する前記収納体を受け止めて移送する下側移送手段とを備えてなる収納体除染装置。
【請求項2】
滅菌済みの物品を収納してなる収納体を搬入する搬入口と当該収納体を搬出する搬出口とを設けてなる除染室と、
複数のフックを間隔をおいて設けてなる移送手段であって前記収納体を前記複数のフックのいずれかで吊下げた状態で前記除染室内を前記搬入口から前記搬出口に向けて移送する上側移送手段と、
前記上側移送手段の前記搬出口側下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い前記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材と、
この受承部材により受承された前記収納体がその重心位置にて前記上側移送手段の移動に伴い前記受承部材を越えた状態で当該収納体が前記上側移送手段の更なる移動に伴い前記フックから外れて落下するとき、この落下する前記収納体を受け止めて当該収納体を前記搬出口から前記除染室の外部に移送する下側移送手段とを備えてなる収納体除染装置。
【請求項3】
前記受承部材を主受承部材として、
前記上側移送手段による前記収納体の移送方向に対して前記主受承部材の手前側下方に設けてなる副受承部材を備えており、
前記主受承部材が前記収納体の下方部位を受承したとき、
前記副受承部材が前記収納体に後続する他の収納体の下方部位を受承することを特徴とする請求項1又は2に記載の収納体除染装置。
【請求項4】
前記上側移送手段は、前記収納体の移送方向に移動する移送部材を備えており、
前記複数のフックは、それぞれ、前記移送部材の懸架部に固定されて当該懸架部から下方に延出する基部と、下方に凸な形状となるように前記基部から下方に延出すると共に前記移送方向の後方に向けて延出するフック部とを具備し、
前記フックが前記フック部に前記収納体を吊下げた状態で前記移送部材の移動に伴い前記移送方向の前方へ傾斜したとき、当該収納体が前記フックから外れることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の収納体除染装置。
【請求項1】
滅菌済みの物品を収納してなる収納体を吊下げる複数のフックを間隔をおいて設けてなる上側移送手段と、
前記上側移送手段の下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い前記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材と、
前記収納体が前記下方部位を前記受承部材により受承された状態で前記上側移送手段の更なる移動に伴い前記フックから外れて落下するとき、この落下する前記収納体を受け止めて移送する下側移送手段とを備えてなる収納体除染装置。
【請求項2】
滅菌済みの物品を収納してなる収納体を搬入する搬入口と当該収納体を搬出する搬出口とを設けてなる除染室と、
複数のフックを間隔をおいて設けてなる移送手段であって前記収納体を前記複数のフックのいずれかで吊下げた状態で前記除染室内を前記搬入口から前記搬出口に向けて移送する上側移送手段と、
前記上側移送手段の前記搬出口側下方に設けられて当該上側移送手段の移動に伴い前記収納体の下方部位を下側から受承する受承部材と、
この受承部材により受承された前記収納体がその重心位置にて前記上側移送手段の移動に伴い前記受承部材を越えた状態で当該収納体が前記上側移送手段の更なる移動に伴い前記フックから外れて落下するとき、この落下する前記収納体を受け止めて当該収納体を前記搬出口から前記除染室の外部に移送する下側移送手段とを備えてなる収納体除染装置。
【請求項3】
前記受承部材を主受承部材として、
前記上側移送手段による前記収納体の移送方向に対して前記主受承部材の手前側下方に設けてなる副受承部材を備えており、
前記主受承部材が前記収納体の下方部位を受承したとき、
前記副受承部材が前記収納体に後続する他の収納体の下方部位を受承することを特徴とする請求項1又は2に記載の収納体除染装置。
【請求項4】
前記上側移送手段は、前記収納体の移送方向に移動する移送部材を備えており、
前記複数のフックは、それぞれ、前記移送部材の懸架部に固定されて当該懸架部から下方に延出する基部と、下方に凸な形状となるように前記基部から下方に延出すると共に前記移送方向の後方に向けて延出するフック部とを具備し、
前記フックが前記フック部に前記収納体を吊下げた状態で前記移送部材の移動に伴い前記移送方向の前方へ傾斜したとき、当該収納体が前記フックから外れることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の収納体除染装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−235974(P2011−235974A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106221(P2010−106221)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(599053643)株式会社エアレックス (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(599053643)株式会社エアレックス (29)
【Fターム(参考)】
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