説明

収納体

【課題】仕切板によって区画される収納空間に引き出しが隙間無く収納される場合に、近接して位置する仕切板の存在に拘らず、外部の光を引き出しの内部まで届かせて内部の視認性を確保する手段を提供する。
【解決手段】本発明に係るワゴン10は、上下方向仕切板122によって上下方向に複数の収納空間17〜20に区画された本体部11と、収納空間17〜20の上下幅HK1またはHK2と等しい高さ寸法を有し収納空間17〜20の内部に出し入れ可能に設けられた引き出し13とを有し、上下方向仕切板122は、その正面側の縁部に、収納空間17〜20の奥側へ後退してなる後退部16が設けられ、引き出し13は、その底面を構成する底面板及び正面を構成する正面板の少なくとも後退部16に対応する部分が、透明な部材により形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切板によって複数の収納空間に区画された本体部と、本体部の収納空間に出し入れ可能に設けられた引き出しとを有する収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
書類や文具や薬等を収納するための収納体としては、仕切板によって複数の収納空間に区画されるとともに、その収納空間に引き出しを出し入れ可能に設けたものが普及している。そして、引き出しが複数ある場合に、引き出しを引き出さなくても内部に収納されたものの種別を外部から識別できるように、引き出しを透明な素材で形成することが従来知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−53989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の収納体によれば、仕切板によって区画される収納空間に引き出しが隙間無く収納される場合に、引き出しを透明な部材で形成しても外部の光が引き出しの内部へ十分に届かず、内部の視認性が低下するという問題がある。
【0005】
より詳細に説明すると、収納体が仕切板によって例えば上下方向に区画された複数段の収納空間を有し、引き出しの高さ寸法が収納空間の上下幅と略等しい場合、ある段の仕切板の上に載置された引き出しは、その上方に隙間無く上段の仕切板が位置した状態となる。この場合、透明な素材を透過した外部からの光が引き出しの内部に若干届くものの、引き出しの上方に隙間無く位置する仕切板によって遮られることにより、引き出しの上方からの光は引き出しの内部には届きにくい。これにより、外部からの光が引き出しの内部に十分に届かず、内部に収納されたものの識別が難しくなる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、仕切板によって区画される収納空間に引き出しが隙間無く収納される場合に、近接して位置する仕切板の存在に拘らず、外部の光を引き出しの内部まで届かせて内部の視認性を確保する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る収納体は、仕切板によって上下方向に複数の収納空間に区画された本体部と、前記収納空間の上下幅と等しい高さ寸法を有し前記収納空間の内部に出し入れ可能に設けられた引き出しと、を有する収納体であって、前記仕切板は、その正面側の縁部に、前記収納空間の奥側へ後退してなる後退部が設けられ、前記引き出しは、その底面を構成する底面板及び正面を構成する正面板の少なくとも前記後退部に対応する部分が、透明な部材により形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、収納体の外部からの光は、まず透明な正面板を透過し、次に透明な底面板を透過し、最後に仕切板の後退部を通過することにより、下方に位置する収納体の内部に到達する。これにより、収納空間に収納された引き出しは、収納空間の上下幅と等しい高さ寸法を有するために、その上方に仕切板が隙間無く存在するにも拘らず、外部から見た場合における内部の視認性が十分に確保される。
【0009】
また、本発明に係る収納体は、前記後退部は、前記仕切板の正面側の縁部における幅方向中央部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、後退部を挟んで左右両側では、引き出しの正面側における幅方向両端部が、仕切板によって下方から支持される。これにより、引き出しを仕切板によって下方から安定して支持することができる。
【0011】
また、本発明に係る収納体は、仕切板によって横方向に複数の収納空間に区画された本体部と、前記収納空間の横幅と等しい幅寸法を有し前記収納空間の内部に出し入れ可能に設けられた引き出しと、を有する収納体であって、前記仕切板は、その正面側の縁部に、前記収納空間の奥側へ後退してなる後退部が設けられ、前記引き出しは、その正面を構成する正面板及び側面を構成する側面板の少なくとも前記後退部に対応する部分が、透明な部材により形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、収納体の外部からの光は、まずある引き出しを構成する透明な正面板を透過し、次に当該引き出しを構成する透明な側板を透過し、更に仕切板の後退部を通過し、最後に隣接する引き出しを構成する側板を透過することにより、当該隣接する引き出しの内部に到達する。これにより、収納空間に収納された引き出しは、その側方に仕切板が隙間無く存在するにも拘らず、外部から見た場合における内部の視認性が十分に確保される。
【0013】
また、本発明に係る収納体は、前記引き出しは、その全体が透明な部材により形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、収納体の全体を透明な部材によって一体的に成形することができるので、製造工程の簡略化及びコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る収納体によれば、仕切板によって区画される収納空間に引き出しが隙間無く収納される場合に、近接して位置する仕切板の存在に拘らず、外部の光を引き出しの内部まで届かせて内部の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るワゴンの外観を示す概略斜視図であって、(a)は正面側から見た概略斜視図、(b)は背面側から見た概略斜視図である。
【図2】上下方向仕切板を示す概略平面図である。
【図3】薄型引き出しの外観を示す概略斜視図である。
【図4】図3におけるA−A線断面を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るワゴンの作用効果を説明する図であって、第二収納空間と第三収納空間に薄型引き出しがそれぞれ収納された状態を示している。
【図6】第一実施形態に係るワゴンの第一の変形例であるトレーワゴンを示す概略斜視図である。
【図7】第一実施形態に係るワゴンの第二の変形例であるマルチワゴンを示す概略斜視図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係るワゴンの薄型引き出しを示す概略斜視図。
【図9】図8におけるB−B線断面を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態に係るワゴンの外観を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第一実施形態に係るワゴン(収納体)の構成について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るワゴン10の外観を示す概略斜視図であって、(a)は正面側から見た概略斜視図、(b)は背面側から見た概略斜視図である。尚、本発明に係るワゴン10は、例えば不図示の机を構成する天板の下方空間に配置して使用される。
【0018】
ワゴン10は、図1に示すように、正面側が開口された箱型の本体部11と、この本体部11の内部を仕切る複数の仕切板12と、本体部11の内部に収納された複数の引き出し13と、本体部11の底部に設けられたキャスタ14と、を備えるものである。
【0019】
本体部11は、図1(a)及び(b)に示すように、略矩形の底板111と、その長手方向両端部から略垂直に起立して向かい合う一対の側板112と、底板111に略平行して設けられて一対の側板112の上端部を接続する天板113と、背面側を覆うように設けられた背板114と、を有している。ここで本実施形態では、本体部11を構成する各部材を、木製の板部材によってそれぞれ形成している。そして、一対の側板112は、正面側から見て左側に位置する第一側板112Aと、右側に位置する第二側板112Bとによって構成される。
【0020】
尚、本体部11を構成する底板111、一対の側板112、天板113、及び背板114の材質や形状や大きさや等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。
【0021】
仕切板12は、本体部11の内部を区画する役割を果たすものである。この仕切板12は、図1(a)に示すように、本体部11の内部を横方向に区画する1枚の横方向仕切板121と、本体部11の内部を上下方向に区画する3枚の上下方向仕切板122と、を有している。
【0022】
横方向仕切板121は、本体部11の内部を横方向に区画する役割を果たすものである。この横方向仕切板121は、図1(a)に示すように、略矩形形状を有する木製の平板であって、幅寸法すなわち図1(a)における上下方向の寸法が、天板113と底板111の離間距離と略等しく形成されている。また、図に詳細は示さないが、横方向仕切板121の長さ寸法すなわち図1(a)における奥行き方向の寸法が、側板112の奥行き方向寸法と略等しく形成されている。
【0023】
このように構成される横方向仕切板121は、図1(a)に示すように、本体部11の内部に、より詳細には本体部11の幅方向中央より第二側板112Bの側へ若干近接した位置に配置され、その幅方向一端部が天板113に固定されるとともに、その幅方向他端部が底板111に固定されている。これにより、横方向仕切板121は、天板113及び底板111に対して略直交するとともに、第一側板112A及び第二側板112Bに対して略平行な状態となっている。そして、この横方向仕切板121によって本体部11の内部には、横方向仕切板121、天板113、第二側板112B、底板111、及び背板114によって包囲される第一収納空間15が形成されている。
【0024】
尚、横方向仕切板121の材質、形状、大きさ、枚数等は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。また、本体部11の内部における横方向仕切板121の設置位置は、後述する引き出し13の幅寸法等に応じて任意に調整が可能である。
【0025】
上下方向仕切板122は、本体部11の内部を上下方向に区画する役割を果たすものである。ここで、図2は、上下方向仕切板122を示す概略平面図である。上下方向仕切板122は、略矩形形状を有する木製の平板であって、その幅寸法すなわち図1(a)における水平方向寸法が、第一側板112Aと横方向仕切板121との離間距離と略等しく形成されている。また、上下方向仕切板122の長さ寸法すなわち図1(a)における奥行き方向寸法は、側板112の奥行き方向寸法と略等しく形成されている。
【0026】
また、図2に示すように、上下方向仕切板122には、その長手方向一端側の縁部を部分的に切り欠くことにより後退部16が形成されている。この後退部16は、平面視で略台形形状を有し、上下方向仕切板122の幅方向中央部に設けられている。尚、本発明において「後退部16」とは、本実施形態のように上下方向仕切板122の縁部を部分的に切り欠いて形成するものだけでなく、縁部を幅方向の全長に渡って切除して形成するものも含む概念である。
【0027】
このように構成される上下方向仕切板122は、図1(a)に示すように、本体部11の内部に、より詳細には第一側板112Aと横方向仕切板121との間に上下方向に所定間隔で3箇所に配置され、その幅方向一端部が第一側板112Aにそれぞれ固定されるとともに、その幅方向他端部が横方向仕切板121にそれぞれ固定されている。これにより、上下方向仕切板122それぞれは、第一側板112A及び横方向仕切板121に対して略直交するとともに、天板113及び底板111に対して略平行な状態となっている。そして、このように上下方向仕切板122を本体部11に装着した状態において、上下方向仕切板122に形成された後退部16は、本体部11の正面側の縁部より奥側へ後退した状態となっている。
【0028】
そして、これら3枚の上下方向仕切板122により、本体部11の内部であって第一側板112Aと横方向仕切板121の間には、上下方向に4段の第二収納空間17、第三収納空間18、第四収納空間19、及び第五収納空間20がそれぞれ形成されている。より詳細には、3枚の上下方向仕切板122のうち最上段の上下方向仕切板122、第一側板112A、天板113、横方向仕切板121、及び背板114によって包囲されることにより、第二収納空間17が形成されている。また、3枚の上下方向仕切板122のうち上から2段目の上下方向仕切板122、第一側板112A、最上段の上下方向仕切板122、横方向仕切板121、及び背板114によって包囲されることにより、第三収納空間18が形成されている。更に、3枚の上下方向仕切板122のうち最下段の上下方向仕切板122、第一側板112A、上から2段目の上下方向仕切板122、横方向仕切板121、及び背板114によって包囲されることにより、第四収納空間19が形成されている。また、3枚の上下方向仕切板122のうち最下段の上下方向仕切板122、横方向仕切板121、底板111、第一側板112A、及び背板114によって包囲されることにより、第五収納空間20が形成されている。
【0029】
ここで、図1(a)に示すように、第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19は、いずれも等しい横幅及び等しい上下幅HK1をそれぞれ有している。一方、最も下方に位置する第五収納空間20は、上方の第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19と等しい大きさの横幅を有するが、第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19の上下幅HK1より広い上下幅HK2を有している。
【0030】
尚、上下方向仕切板122の材質、形状、大きさ、枚数等は本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。更に、上下方向仕切板122に形成する後退部16の平面視形状、大きさ、枚数等は、本実施形態に限られず適宜設計変更が可能である。また、本体部11の内部における上下方向仕切板122の設置位置は、後述する引き出し13の高さ方向寸法等に応じて任意に調整が可能である。
【0031】
引き出し13は、埃等の付着を防止しつつ書類等を収納する役割を果たすものである。この引き出し13は、図1(a)に示すように、第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19にそれぞれ収納される薄型引き出し21と、第五収納空間20に収納される厚型引き出し22と、によって構成されている。
【0032】
図3は、薄型引き出し21の外観を示す概略斜視図である。また、図4は、図3におけるA−A線断面を示す概略断面図である。薄型引き出し21は、その全体が透明なプラスチックからなる上部が開口した筐体であって、図3及び図4に示すように、底部を構成する底面板211と、この底面板211の長手方向両端部から略垂直に起立して向かい合う一対の正面板212及び背面板213と、底面板211の幅方向両端部から略垂直に起立して向かい合う一対の第一側面板214及び第二側面板215と、を有している。
【0033】
そして、図3に示すように、底面板211の幅方向両端部には、周囲より一段高く突出した段差部211aがそれぞれ形成されている。また、図3及び図4に示すように、正面板212の先端部には、外側へ屈曲した取手部212aが形成されている。
【0034】
ここで、薄型引き出し21の幅寸法は、図1(a)に示す第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19の横幅と略等しいかそれより若干小さく設定されている。また、図3に示すように、薄型引き出し21の高さ寸法Hh1は、図1(a)に示す第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19の上下幅HK1と略等しいかそれより若干小さく設定されている。更に、薄型引き出し21の長さ寸法は、第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19の奥行きと略等しいかそれより若干小さく設定されている。これにより薄型引き出し21は、第二収納空間17、第三収納空間18、及び第四収納空間19の内部に収納可能となっている。
【0035】
一方、厚型引き出し22も、薄型引き出し21と同様にその全体が透明なプラスチックからなる上部が開口した筐体であって、薄型引き出し21と比較してその高さだけが異なっている。すなわち、図に詳細は示さないが、厚型引き出し22の高さは、薄型引き出し21の高さ寸法Hh1より高く、第五収納空間20の上下幅HK2と略等しいかそれより若干小さく設定されている。これにより厚型引き出し22は、第五収納空間20の内部に収納可能となっている。厚型引き出し22のそれ以外の構成は、薄型引き出し21と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
尚、薄型引き出し21及び厚型引き出し22の材質は、光を透過可能な材質であればプラスチックに限定されず任意に変更が可能であって、例えばガラスで構成することも可能である。また、正面板212に設けた取手部212aは、使用者による薄型引き出し21の出し入れ操作を容易にすることを目的とした任意の構成であって、正面板212を取手部212aの無い構成とすることも可能である。また、薄型引き出し21及び厚型引き出し22の形状や大きさは、第二収納空間17、第三収納空間18、第四収納空間19、及び第五収納空間20に収納可能な範囲で適宜設計変更が可能である。
【0037】
キャスタ14は、ワゴン10を任意の方向へ移動可能にする役割を果たすものである。このキャスタ14は、図1に示すように、本体部11の底板111の四隅にそれぞれ取り付けられた支持部材141と、この支持部材141によって回転可能に支持された車輪142と、を有している。尚、このキャスタ14としては、従来公知のものを適宜採用することができる。また、キャスタ14は本発明に必須の構成ではなく、キャスタ14を持たない移動不能なワゴン10として構成してもよい。
【0038】
次に、本発明の第一実施形態に係るワゴン10の作用効果について説明する。図5は、本発明の第一実施形態に係るワゴン10の作用効果を説明する図であって、第二収納空間17と第三収納空間18に薄型引き出し21がそれぞれ収納された状態を示している。
【0039】
図5に示すように、第三収納空間18に収納された薄型引き出し21は、前述のようにその高さ寸法Hh1が第三収納空間18の上下幅HK1と略等しく設定されている。従って、この第三収納空間18に収納された薄型引き出し21の上方には、狭い隙間23を介して最上段の上下方向仕切板122が、薄型引き出し21の上部開口を覆うようにして位置している。
【0040】
しかし、図5に示すように、最上段の上下方向仕切板122には、その正面側の縁部を切り欠くことによって後退部16が形成されている。また、薄型引き出し21はその全体が透明な部材によって形成されている。従って、ワゴン10の外部からの光Lは、まず取手部212aを含む正面板212を透過し、次に底面板211を透過し、最後に最上段の上下方向仕切板122の後退部16を通過することにより、第三収納空間18に収納された薄型引き出し21の内部に到達する。これにより、第三収納空間18に収納された薄型引き出し21は、その上方に最上段の上下方向仕切板122が隙間無く存在するにも拘らず、外部からの視認性が十分に確保される。
【0041】
また、本実施形態では、上下方向仕切板122において後退部16の形成される位置が、正面側の縁部であって幅方向中央部である。従って、この後退部16を挟んで左右両側では、薄型引き出し21の正面側における幅方向両端部が、上下方向仕切板122によって下方から支持される。これにより、薄型引き出し21を上下方向仕切板122によって下方から安定して支持することができるという利点がある。
【0042】
尚、以上の説明では第二収納空間17と第三収納空間18に薄型引き出し21がそれぞれ収納される場合を例にして説明したが、第三収納空間18と第四収納空間19に薄型引き出し21がそれぞれ収納される場合や、第四収納空間19に薄型引き出し21が収納され第五収納空間20に厚型引き出し22が収納される場合も同様の作用効果が奏される。また、第三収納空間18の内部に薄型引き出し21が収納されることなく、収納すべき書類等が上から2段目の上下方向仕切板122の上に直接載置される場合にも、前述と同様にして第三収納空間18の視認性が確保される。更にこの場合、上から2段目の上下方向仕切板122に後退部16が形成されているため、使用者はこの後退部16に手を差し入れることにより、書類等の縁部を掴んで第三収納空間18から容易に取り出すことができる。
【0043】
次に、本発明の第一実施形態に係るワゴン10の変形例について説明する。図6は、第一実施形態に係るワゴン10の第一の変形例であるトレーワゴン10Aを示す概略斜視図である。このトレーワゴン10Aは、第一実施形態に係るワゴン10の上に、出し入れ可能な収納箱24が装着されたものである。尚、第一実施形態に係るワゴン10と同じ構成については、同じ符号を付している。このような構成によれば、第一実施形態のワゴン10と比較して収納箱24の分だけ収納力が増大するという利点がある。
【0044】
また、図7は、第一実施形態に係るワゴン10の第二の変形例であるマルチワゴン10Bを示す概略斜視図である。このマルチワゴン10Bは、第一実施形態に係るワゴン10の上に、平面視で略U字形状を有する荷物脱落防止ユニット25が固定されたものである。尚、第一実施形態に係るワゴン10と同じ構成については、同じ符号を付している。このような構成によれば、ワゴン10の上にランドセル等の荷物N(図7に二点鎖線で示す)を載置した時に、荷物Nが転倒してワゴン10の上から脱落することを防止することができるという利点がある。
【0045】
また、本発明に係る収納体は、本実施形態のように底部にキャスタ14が設けられて移動可能なワゴン10として構成されるだけでなく、例えば机の天板113の下に固定して設置される袖箱(不図示)として構成することも可能である。
【0046】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係るワゴン10(収納体)の構成について説明する。第二実施形態に係るワゴン10は、第一実施形態に係るワゴン10と比較すると、引き出しの構成だけが異なっている。より詳細には、第一実施形態の引き出し13はその全体が透明であるのに対し、本実施形態の引き出しはその一部だけが透明である点で異なっている。それ以外の構成は第一実施形態のワゴン10と同じであるため、同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0047】
図8及び図9は、第二実施形態に係るワゴン10の薄型引き出し31を示す図であって、図8は概略斜視図、図9は図8におけるB−B線断面を示す概略断面図である。薄型引き出し31は、第一実施形態の薄型引き出し21と同様に、底部を構成する底面板311と、この底面板311の長手方向両端部から略垂直に起立して向かい合う一対の正面板312及び背面板313と、底面板311の幅方向両端部から略垂直に起立して向かい合う一対の第一側面板314及び第二側面板315と、を有している。そして、正面板312の先端部には、外側へ屈曲した取手部312aが形成されている。
【0048】
ここで、図8及び図9に示すように、底面板311は、上下方向仕切板122に形成された後退部16に対向する部分が、透明なプラスチックからなる透明領域311aとして構成されている。この透明領域311aは、平面視で略台形形状を有し、上下方向仕切板122の幅方向中央部に設けられている。一方、底面板311は、透明領域311a以外の部分(図8にハッチングで示す部分)が、不透明なプラスチックからなる不透明領域311bとして構成されている。
【0049】
また、図8に示すように、向かい合う正面板312及び背面板313は、その全体が透明なプラスチックでそれぞれ形成されている。同様に、向かい合う第一側面板314及び第二側面板315も、その全体が透明なプラスチックでそれぞれ形成されている。
【0050】
このような構成によれば、図9に示すように、ワゴン10の外部からの光Lは、まず取手部312aを含む正面板312を透過し、次に底面板311における透明領域311aを透過し、最後に上下方向仕切板122の後退部16を通過することにより、下方に位置する薄型引き出し31(図9には不図示)の内部に到達する。これにより、下方に位置する薄型引き出し31は、その上方に上下方向仕切板122が隙間無く存在するにも拘らず、外部からの視認性が十分に確保される。
【0051】
尚、本実施形態では正面板312の全体を透明なプラスチックで形成したが、底面板311と同様に、上下方向仕切板122に形成された後退部16に対応する部分、より詳細には幅方向中央部だけを透明領域311aとして構成し、その他の部分を不透明領域311bとして構成することも可能である。また、本実施形態では背面板313、第一側面板314、及び第二側面板315を透明なプラスチックで形成したが、これらを全て不透明なプラスチックで形成してもよい。
【0052】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態に係るワゴン(収納体)の構成について説明する。図10は、第三実施形態に係るワゴン40の外観を示す概略斜視図である。本実施形態に係るワゴン40は、第一実施形態に係るワゴン10と同様に、正面が開口された箱型の本体部41と、この本体部41の内部を仕切る複数の仕切板42と、本体部41の内部に収納された複数の引き出し43と、を備えるものである。しかし、本実施形態に係るワゴン40は、仕切板42の構成及び引き出し43の構成が第一実施形態とはそれぞれ異なっている。それ以外の構成は第一実施形態のワゴン10と同じであるため、同じ符号を使用し、ここでは説明を省略する。
【0053】
本実施形態の仕切板42は、図10に示すように、本体部41の内部を横方向に区画する4枚の横方向仕切板421のみで構成されている。そして、これら横方向仕切板421には、その正面側の縁部を部分的に切り欠くことにより、後退部44が形成されている。この後退部44は、側面視で略台形形状を有し、横方向仕切板421の上下方向中央部に設けられている。そして、これら4枚の横方向仕切板421により、本体部41の内部には、横方向に5個の収納空間45がそれぞれ形成されている。
【0054】
引き出し43は、図10に示すように、その全体が透明なプラスチックからなる上部が開口した筐体である。ここで、この引き出し43の幅寸法Whは、図10に示す収納空間45の横幅Wkと略等しいかそれより若干小さく設定されている。また、引き出し43の高さ寸法は、収納空間45の上下幅と略等しいかそれより若干小さく設定されている。更に、図に詳細は示さないが、引き出し43の長さ寸法は、収納空間45の奥行きと略等しいかそれより若干小さく設定されている。これにより、引き出し43は、5個の収納空間45の内部に収納可能となっている。
【0055】
このような構成によれば、収納空間45それぞれに収納された引き出し43は、その幅寸法Whが収納空間45の横幅Wkと略等しく設定されている。従って、収納空間45に収納された引き出し43の側方には、狭い隙間46を介して隣接する横方向仕切板421が位置している。
【0056】
しかし、図10に示すように、横方向仕切板421には、その正面側の縁部を切り欠くことによって後退部44が形成されている。また、引き出し43はその全体が透明な部材によって形成されている。従って、図に詳細は示さないが、ワゴン40の外部からの光Lは、まずある引き出し43を構成する正面板431を透過し、次に当該引き出し43を構成する側面板432を透過し、更に横方向仕切板421の後退部44を通過し、最後に隣接する引き出し43を構成する側面板432を透過することにより、当該隣接する引き出し43の内部に到達する。これにより、収納空間45に収納された引き出し43は、その側方に横方向仕切板421が隙間無く存在するにも拘らず、外部からの視認性が十分に確保される。
【0057】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 ワゴン
10A トレーワゴン
10B マルチワゴン
11 本体部
111 底板
112 側板
112A 第一側板
112B 第二側板
113 天板
114 背板
12 仕切板
121 横方向仕切板
122 上下方向仕切板
13 引き出し
14 キャスタ
141 支持部材
142 車輪
15 第一収納空間
16 後退部
17 第二収納空間
18 第三収納空間
19 第四収納空間
20 第五収納空間
21 薄型引き出し
211 底面板
211a 段差部
212 正面板
212a 取手部
213 背面板
214 第一側面板
215 第二側面板
22 厚型引き出し
23 隙間
24 収納箱
25 荷物脱落防止ユニット
31 薄型引き出し
311 底面板
311a 透明領域
311b 不透明領域
312 正面板
312a 取手部
313 背面板
314 第一側面板
315 第二側面板
40 ワゴン
41 本体部
42 仕切板
421 横方向仕切板
43 引き出し
431 正面板
432 側面板
44 後退部
45 収納空間
46 隙間
Hh1 高さ寸法
HK1 上下幅
HK2 上下幅
L 光
N 荷物
Wh 幅寸法
Wk 横幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切板によって上下方向に複数の収納空間に区画された本体部と、前記収納空間の上下幅と等しい高さ寸法を有し前記収納空間の内部に出し入れ可能に設けられた引き出しと、を有する収納体であって、
前記仕切板は、その正面側の縁部に、前記収納空間の奥側へ後退してなる後退部が設けられ、
前記引き出しは、その底面を構成する底面板及び正面を構成する正面板の少なくとも前記後退部に対応する部分が、透明な部材により形成されていることを特徴とする収納体。
【請求項2】
前記後退部は、前記仕切板の正面側の縁部における幅方向中央部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の収納体。
【請求項3】
仕切板によって横方向に複数の収納空間に区画された本体部と、前記収納空間の横幅と等しい幅寸法を有し前記収納空間の内部に出し入れ可能に設けられた引き出しと、を有する収納体であって、
前記仕切板は、その正面側の縁部に、前記収納空間の奥側へ後退してなる後退部が設けられ、
前記引き出しは、その正面を構成する正面板及び側面を構成する側面板の少なくとも前記後退部に対応する部分が、透明な部材により形成されていることを特徴とする収納体。
【請求項4】
前記引き出しは、その全体が透明な部材により形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の収納体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−22138(P2013−22138A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158066(P2011−158066)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】