説明

収納具及び収納方法

【課題】平面状収納物取り出しの容易化
【解決手段】
略鉛直な第1の平面(背面板)と、前記第1の平面と略平行に向かい合う第2の平面(前面板)と、前記背面板と前記前面板と、両面の間の底板とを有し、前記前面板の高さが前記背面板、前記前面板、前記底板で囲まれた凹部に複数収納される複数の収納物の高さより低く、前記背面板と、前記底板とのなす角度が、非直角であることを特徴とする収納具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収納具及び収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンフレット等複数組重ねて収納する書架は、内容に興味をもった利用者が、自由に所定の枚数取り出せる構造となっている。また、このような書架は単に収納を目的とするだけでなく、パンフレットを目立たせることにより、宣伝の役割も担っている。このような書架式収納においては、図7に示すように、同じサイズのパンフレット40が多数枚収納されている場合、重なり合っている為、取り出し時に複数枚一度に取ってしまう場合が多く、取り出しにくかった。また、収納されたパンフレット40が少数枚数になった時、パンフレット40の前への倒れこみが発生し、パンフレット40の文字や図等が見えなくなり、宣伝効果が発揮できない、という問題があった。この問題の一因は、収納具5は底板51に勾配がなく水平だったため、少数枚からなるパンフレットセット4を挿入した際に収納具5の前面板52に倒れこむという現象である。
【0003】
特許文献1では、倒れ込みを防ぐため、収納物の下方部の少なくとも一部を前方に押圧している。
【0004】
特許文献2では、水平面に載置すると堆積量の増加に伴って幅方向が傾斜した状態になる連続帳票を収納する収納箱において、最上位の水平面に対する傾斜角の略1/2の角度で逆方向に傾いた傾斜面を有するスペーサを用いて、収納物の傾斜を緩和している。
【0005】
特許文献3では、ローラにより広告シートを常時圧着させ、ローラの回転により上方に突出させ広告用シートを取り易くする構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−306407
【特許文献2】特開2006−282324
【特許文献3】実登第3044593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、収納物に損傷を与えることなく、一枚ずつの取り出しが容易な収納具を得ることである。
【0008】
特許文献1の方法は、収納物にひずみを加えるので、収納物が傷みやすい。また、この方法は、収納物を複数枚引き出してしまうことを防止できない。
【0009】
特許文献2の方法では水平に載置することを前提としているため、書架方式と異なって宣伝効果が発揮できない。また、この方法でも、収納物は水平状態で完全に重なりあっているので、複数引き出してしまうことも防止できない。
【0010】
実用新案文献1ではローラにより、広告シートが傷つきやすく、一枚ずつ取り出すには、ローラの圧着力に微調整が必要となる。
本発明は上記課題を解決する収納具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば略鉛直な第1の平面(背面板)と、前記第1の平面と略平行に向かい合う第2の平面(前面板)と、前記背面板と前記前面板と、両面の間の底板とを有し、前記前面板の高さが前記背面板、前記前面板、前記底板で囲まれた凹部に複数収納される複数の収納物の高さより低く、前記背面板と、前記底板とのなす角度が、非直角であることを特徴とする収納具が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は、収納物に損傷を与えることなく、一枚ずつの取り出しが容易な収納具を得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の第1〜4の実施形態の収納具を自販機にとりつけた状態を示す全体図である。
【図2】図2は本発明の第1及び4の実施形態の収納具の断面図、正面図、上面図、斜視図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態の収納具の、A−A‘(図1)断面図である。
【図4】図4は本発明の第2の実施形態の収納具の、A−A‘(図1)断面図である。
【図5】図5は本発明の第2の実施形態の、収納具にパンフレットを入れた後のパンフレットの位置の時間変化である。
【図6】図6は本発明の第3の実施形態の収納具の、A−A‘(図1)断面図である。
【図7】図7は一般的な収納具のA−A‘断面である。
【図8】図8は本発明の第1の実施形態のパンフレット段差と底板傾斜角との関係である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図7は、一般的な収納具5を示している。パンフレットセット4は上端がそろった状態で収納されるので、一枚だけ取り出そうとしても、重なり合って複数枚取り出してしまうことが起こり得る。また、枚数が少なくなると、パンフレットセット4が前面板52に倒れ、パンフレット40の表示が見えにくくなる。以下は、これを改善して、パンフレット40を取り出しやすくする本発明の実施の形態の説明である。
【0015】
なお、図1は、本発明の収納具3を自販機1に取り付けた状態を示している。収納具3は自販機1のブース2に取り付けられる。以降で示すA−A‘断面図とは、直線A−A‘において、紙面垂直方向に切った収納具3の断面図である。
【0016】
(第1の実施の形態)
図2は本実施の形態の収納具3の全体を示す。(a)は収納具3のA−A‘の断面図および正面図である。この実施形態の収納具3であって、側板をもたない場合、側面図とA−A’の断面図とは、A−A‘の位置に関わらず、等しい。(b)は収納具3の上面図を示している。(c)は収納具3の斜視図である。図2(a)の断面図が示すように、底板31は例えば背面板34から前面板32に向かって下降するように、背面板34と角度θ(θ>90度)で傾斜している。なお、収納具3は図示しない側板を有しても良い。
【0017】
図3(a)は、収納物を入れた場合の、収納具3のA−A‘断面図である。この収納具3は、複数のパンフレット40を縦に重ねたパンフレットセット4を、収納凹部30に、縦に収納する。前面板32の高さは凹部30に収納されたパンフレット40の高さより低く、パンフレット40を所望する人は、収納具3の前面板32の上部からパンフレット40を必要枚数取り出すことができる。収納凹部30にパンフレットセット4を挿入すると、複数のパンフレット40の下端が、それぞれ勾配を持った底板31に接触する。この過程で複数のパンフレット40同士の接触している面はずれるので、パンフレット40同士の間に空気が入り、パンフレット40は互いに離れやすくなる。また、この結果、パンフレットセット4は、その上端が、勾配に沿って高さ方向にずれた状態で、配列するので、この形態によってもパンフレット40同士は離れやすくなる。そのため、パンフレット40を一枚だけ必要とする場合も、重なり合って2枚以上が取り出されてしまう無駄が生じにくい。また、本実施形態は、所定枚数を正確に数えて取り出すことも可能とする。本実施形態ではパンフレット40に損傷を与えるような器具は何ら用いていないので、パンフレット40の状態は収納前の状態と変わらない。
【0018】
底板31の傾斜の向きは背面板34から前面板32に向かって下降する向きに限定されるものではない。図3(b)のように、傾斜の向きは、前面板32から背面板34に向かって下降する向きとしても構わない。言い換えると、底板31と背面板34のなす角度は非直角であれば、90度より大きくとも、90度より小さくとも構わない。
【0019】
但し、一枚だけ容易に取り出せるという効果を十分に発揮するには、隣り合うパンフレット40同士の高さの差は最低パンフレット40の厚さ程度であることが、望ましい場合が多い。(パンフレット40の厚さが比較的厚い場合は、この限りではないことについては後述する。)パンフレット40が直方体であると近似すると、図8に示すように、隣り合ったパンフレット40の段差とパンフレット40の厚みとが等しい場合(図8でf=dのとき)、θ―90は45度となる。したがって90度より大きい場合の角度θは135度程度であることが好ましい。この角度は、厚みに応じた適切な段差をパンフレット40間にもたらすので、パンフレット40の取り出しは容易となる。なお、各パンフレット40の表面上部の一定領域を前面から見える状態としたい等の事情がある場合、角度θはさらに大きな値でも良い。
【0020】
パンフレット40が比較的厚く、隣り合うパンフレット40同士の位置の高さの差が必ずしもパンフレット40の厚さ以上には必要ない、という場合は、角度θはこの値より小さい値でもよい。例えば、パンフレット40の厚さが1cm、段差が0.5cmの場合、角度θは135度より小さい、117度程度となる。
【0021】
90度より大きい場合の、角度θの上限値は、パンフレット40が安定収納される、段差がパンフレット40の厚さの2倍となる160度程度が望ましい。
【0022】
θが90度より小さい場合も、θの範囲は上記と同様に算出される。なお、上記は本実施形態の一例に過ぎず、利用者は、自動販売機の形状等に合わせて、適宜θを選ぶことができる。
【0023】
収納具3を構成する材料のうち前面板32を構成する材料は、塩化ビニール、アクリル、ガラス、等の透明材料であることが望ましい。ただし、広告主にとって必要な、文字、図柄だけの露出を行う場合は、非透明材料に窓をあける構造でも構わない。前面板32以外を構成する材料は、特に限定されない。プラスチック、木材、金属、セラミック、紙、布等のいずれをも、この実施形態では利用することができる。
【0024】
本実施形態の効果は、パンフレット等の平面状収納物を重ねて収納する収納具において、収納物に損傷を与えることなく、一枚ずつの収納物の取り出しを容易にすることであ。
(第2の実施形態)
図4は、パンフレット40を顧客に目立たせて、宣伝効果を発揮するために、収納具3の前面板32に凸部33を取り付けた状態を示している。図5は、パンフレットセット4を収納凹部30に入れてから、底板31の上を移動して止まるまでの、パンフレットセット40の位置の変化を示している。パンフレットセット4を収納凹部30に入れると(a)、パンフレットセット4は底板31の勾配に沿って下端が移動する(b)。パンフレットセット4の最後尾のパンフレット40は上端側が背面板34に寄りかかる状態となるので、背面板34に向かって傾いた状態(c)となる。パンフレット40が前面板32に向かって倒れることは、凸部33によって防止されるので、最後の一枚に至るまで、顧客はパンフレット40の表示内容をよく見ることができる。本実施形態の凸部33は、パンフレット40にほとんど損傷を与えるものではないので、パンフレット40の状態は収納前の状態とほとんど変わらない。
【0025】
凸部33の前面板32への取り付け方法は、宣伝効果を阻害しない方法であれば、接着材による接着、ねじ止め、嵌め合い等、どのような方法をとっても構わない。
【0026】
収納具3を構成する材料は、第1の実施形態と同様に選択することができる。凸部33の材料は塩化ビニール、アクリル、ガラス、等の透明材料であることが望ましいが、広告効果を阻害しない大きさであれば、特に材料を選ぶ必要はない。
【0027】
本実施形態の効果は、パンフレット等の平面状収納物を重ねて収納する収納具において、収納物に損傷を与えることなく、一枚ずつの収納物の取り出しを容易にすることと、パンフレット40の広告効果を上げることである。また、本実施形態の効果は、パンフレット40が前面板32に向かって倒れ込む現象を防止することである。
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態を示している。この実施形態は第1の実施形態において、背面板34に、パンフレットセット4を面で抑える押し出し機構6を取り付けたものである。押し出し機構6は、パンフレットセット4が少数になった場合に、パンフレットセット4が背面板34に向かって丸まって倒れ込み、パンフレット40が取り出しにくくなることを防止する。
【0028】
押し出し機構6は、バネ7と接触板8とで構成されている。金属性のバネ7は、プラスチックの接触板8を備えており、金属性のバネ7が直接パンフレット40に接触することはない。バネ7は、パンフレットセット4の厚みによって収納凹部30の奥行き方向に伸縮する。バネ7の自然長は奥行き方向の深さ以上であり、パンフレットセット4が最後の一枚(または一冊)になっても、パンフレット40が後ろ側に丸まることはない。
【0029】
第3の実施形態における前面板32の高さは、押し出し機構6によるパンフレット40の前面板32の縁での倒れ込みを防止するため、少なくともバネ7の上端の高さより高い。この高さは、パンフレット40の取り出しに支障がない程度である。高さの増加によってパンフレット40が見えにくくなることは、前面板32に必要に応じて透明素材を用いることで防ぐことができる。
【0030】
バネ7の自然長は収納凹部30の奥行き方向の深さ以上であるので、パンフレットセット4が最後の一枚(または一冊)になっても、パンフレット40の表面は平面を保つことができる。また、押し出し機構6は平面でパンフレット40を押しているので、ローラでパンフレットを押し上げる場合等にくらべて、パンフレット40が受ける損傷は極めて小さい。なお、押し出し機構6は、バネ以外の弾性体でも、構成することができる。ゴム、蛇腹等が、押し出し機構6として、利用可能である。また、接触板8の素材は、パンフレットセット4を傷つけないものであれば、ゴム、布など、プラスチック以外の素材を用いても構わない。
【0031】
本実施形態の効果は、パンフレット等の平面状収納物を重ねて収納する収納具において、収納物に損傷を与えることなく、収納物の取り出しを容易にすることと、背面板34に向かって倒れ込む現象を防止することである。
【0032】
以上の実施形態は、側面のない収納具3について説明したが、側面は必要に応じてつけることもできる。また、以上の実施形態は、収納具3を自販機1などの構造物に固定することを前提としているが、収納具3は必ずしも構造物に固定する必要はない。収納具3の
下部に脚部をとりつけることによって、収納具3は構造物に支持させることなく単体で設置されることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 自販機
2 ブース
3 収納具
4 パンフレットセット
5 収納具
6 押し出し機構
7 バネ
8 接触板
30 収納凹部
31 底板
32 前面板
33 凸部
34 背面板
40 パンフレット
51 底板
52 前面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直な第1の平面(背面板)と、前記第1の平面と略平行に向かい合う第2の平面(前面板)と、前記背面板と前記前面板と、両面の間の底板とを有し、前記前面板の高さが前記背面板、前記前面板、前記底板で囲まれた凹部に複数収納される複数の収納物の高さより低く、前記背面板と、前記底板とのなす角度が、非直角であることを特徴とする収納具。
【請求項2】
前記前面板の前記凹部側に、前記底板の前記背面板方向の幅より低い高さの凸部を有することを特徴とする請求項1の収納具。
【請求項3】
前記背面板に、前記収納物を前面板方向に押圧する、弾性体を、前記弾性体の上限が前記前面板の高さ以下となるように、備えることを特徴とする請求項1に記載の収納具。
【請求項4】
前記前面板は、少なくとも可視光に対して透明な材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの収納具。
【請求項5】
前記角度は115度から160度の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4の収納具。
【請求項6】
複数のシートまたは冊子状の収納物を縦方向に重ねて、請求項1乃至5いずれかの収納部の前記凹部に格納する収納方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−45771(P2012−45771A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188471(P2010−188471)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】