説明

収納家具

【課題】目印となり、かつ、指がすべるのを防止することにより扉等を開くために必要な場所に力を加えることが可能な凹部を有する収納家具を提供することを目的とする。
【解決手段】収納家具本体1とその開口1aを開閉する扉2を備え、閉状態の前記扉2を押すとこの扉2の閉状態が解除される収納家具100において、前記扉2の前面に指の先端を挿入することにより指かかりとなる凹部5が、前記扉2の一部を凹ませて設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納家具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン、居室等における収納家具の扉を押すと、この扉の閉状態を解除する駆動装置を有する収納家具が知られている。この収納家具に、扉等を開くために、例えば、サーボドライブ(ブルム社製)が組み込まれている。(例えば、特許文献1参照)。ところで、駆動装置を有する収納家具の扉には、取っ手がないため、扉の前面がフラットにすることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−526507号公報
【特許文献2】特開2009−62809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、その一方で、取っ手等の目印がないため、扉の押す位置を特定することができなかったり、扉を押す際に指がすべったりして、扉を開くための必要な場所に力を加えることができなかったりする場合があった。
【0005】
そのため、目印となり、かつ、指がすべるのを防止することにより扉等を開くための必要な場所に力を加えることが可能な収納家具を提供することが望まれる。
【0006】
本発明は、目印となり、かつ、指がすべるのを防止することにより扉等を開くための必要な場所に力を加えることが可能な収納家具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一つを解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、
収納家具本体1とその開口1aを開閉する扉2を備え、閉状態の前記扉2を押すとこの扉2の閉状態が解除される収納家具100において、
前記扉2の前面に指の先端を挿入することにより指かかりとなる凹部5が、前記扉2の一部を凹ませて設けられている
ことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記扉2の前面に指の先端を挿入することにより指かかりとなる凹部5が、前記扉2の一部を凹ませて設けられていることにより、目印となり、かつ、指がすべるのを防止することができるため、扉等を開くための必要な場所に力を加えることが可能な凹部を有する収納家具100を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば、図3(b)に示すように、
請求項1に記載の収納家具100において、
凹部5の断面が楕円の短軸を深さ方向とした半楕円形である
ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、凹部5の断面が楕円の短軸を深さ方向とした半楕円形であることにより、指の先端の形状に近くなり、指に適合し易くなるため、滑りにくくできる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、
請求項1または2に記載の収納家具100において、
斜め上下方向に所定間隔で前記凹部5が2つ設けられている
ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、斜め上下方向に所定間隔で前記凹部5が2つ設けられていることにより、凹部5に、人差し指、中指、薬指のうちの2つの指が挿入されるため、より滑りにくくできる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば、図1に示すように、
請求項3に記載の収納家具100において、
水平方向に所定間隔で前記2つの凹部5がそれを1組として複数組設けられている
ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、水平方向に所定間隔で前記2つの凹部5が複数設けられていることにより、水平方向において複数の場所で目印となり、かつ、指がすべるのを防止することができるため、使用者は任意に選択した場所に扉等を開くために必要な力を加えることが可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば、図1〜図5に示すように、
請求項3または4に記載の収納家具100において、
前記凹部5が正面視円形であり、前記凹部5の直径が10〜15mm、前記凹部5の深さが1〜2mmである
ことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記凹部が正面視円形であり、前記凹部5の直径が10〜15mm、前記凹部5の深さが1〜2mmであることにより、指の先端に対して小さすぎず大きすぎない直径であり、かつ、指かかりするのに十分な深さため、適切に扉等を押すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、目印となり、かつ、指がすべるのを防止することにより扉等を開くために必要な場所に力を加えることが可能な凹部を有する収納家具を提供ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る収納家具の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は図1(a)のI−I断面図、(c)は図1(b)のII−II断面図、(d)は側面図である。
【図2】同、(a)は図1(a)のIII−III断面図、(b)〜(d)は扉2を押したときの駆動装置の動作例を示す図である。
【図3】同、(a)は扉の正面図、(b)は図3(a)のI−I断面図、(c)は図3(a)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について、住宅のキッチンを例にして説明する。
【0020】
<実施の形態>
図1に示すように、キッチンの上部の壁10には、本発明の係る収納家具100,101が左右に離間して取り付けられ、収納家具100の左側に隣接して冷蔵庫20が床上に設置されている。
収納家具100は前面が開口した箱状の収納家具本体1Aと、その二つの開口1a,1aをそれぞれ開閉する扉2,2を備えている。また、収納家具101は、前面が開口した収納家具本体1Bとその一つの開口1aを開閉する扉2を備えている。
そして、収納家具100,101は、それぞれ閉状態の前記扉2を押すとこの扉の閉状態が解除されるようになっている。
ここで、扉とは、収納家具において、収納物を出し入れするために開閉される板状のものをいう。
前記扉2の前面の下部には、指の先端を挿入することにより指かかりとなる凹部5が、前記扉2の一部を凹ませて設けられている。前記凹部5は正面視円形であり、この凹部5の直径は10〜15mm、前記凹部5の深さが1〜2mmであることが望ましい。直径が10mmより小さいと指がいれづらくなり、直径が15mmより大きいと指かかりしにくくなる。また、深さが1mmより浅いと指かかりしにくく、深さが2mmより大きいと凹部5にほこりがたまりやすくなる。
【0021】
前記収納家具100の収納家具本体1Aは、背面板1bと、この背面板1bの両端部に背面板1bに垂直に取付けられた2枚の側面板1cと、背面板1c間に背面板1cと平行に設けられた中板1dと、背面板1b、側面板1c、中板1dの下部に取付けられた底板1eと、背面板1b、側面板1c、中板1dの上部に取付けられた天板1fとから構成されている。扉2,2は収納家具本体1の開口1a,1aより若干大きい長方形板状のものであり、閉じた状態で開口1a,1aの前に配置されている。また、閉じた状態で扉2,2の対向する端部どうしは当接または近接されたうえで前記中板1dの前面に当接されている。また、閉じた状態で扉2の他方の端部は側面板1cの前面に当接されている。
前記収納家具101の収納家具本体1Bは、背面板1bと、この背面板1bの両端部に背面板1bに垂直に取付けられた2枚の側面板1cと、背面板1b、側面板1cの下部に取付けられた底板1eと、背面板1b、側面板1cの上部に取付けられた天板1fとから構成されている。扉2は前記収納家具本体1Aの扉2と同じ形状、大きさものものであり、閉じた状態で開口1aの前に配置されている。また、閉じた状態で扉2の両端部はそれぞれ側面板1c,1cの前面に当接されている。
また、前記収納家具100と収納家具101とは、収納家具101の左右の幅とほぼ等しい幅だけ離間しており、この離間した部分に循環型フード30が挿入されている。この循環型フード30は図示しないコンロの上方に配置されており、当該循環型フード30の前面板が隣り合う収納家具本体1A,1Bに当接されている。
前記収納家具100と収納家具101とが離間している部分の前面には、前記扉2と同じ形状、大きさの扉2aが閉じた状態で配置されており、この状態において、扉2aの両端部は収納家具100の側面板1cと収納家具101の側面板1cの前面に当接されている。この扉2aによって前記循環型フード30は隠されている。また、扉2aの前面には、扉2と同様にして凹部5が設けられている。
前記扉2は、以下のようにして収納家具本体1A,1Bに取り付けられている。すなわち、図2に示すように、収納家具本体1A,1Bの開口1aの内部において、収納家具本体1A,1Bの両側面に駆動装置4aが取り付けられ、駆動装置4aのアーム4a1の先端に扉2が取り付けられている。また、扉2aは収納家具本体1A,1Bの対向する外側面に駆動装置4aが取り付けられ、駆動装置4aのアーム4a1の先端に扉2aが取り付けられている。
そして、指先の先端によりこの扉2,2aの前面の凹部5が壁10方向に押されると、駆動装置4aは、その動きを内蔵センサが検知し内蔵モータを駆動して、駆動装置4aのアーム4a1をギヤ等の伝達手段により上方に旋回駆動して扉2,2aを上方に旋回移動させ、開口1aや前記循環型フード30の前側が露出されるようになっている。
【0022】
前記扉2,2aの前面に設けられた凹部5は、図3(b)に示されるように、その断面が楕円の短軸を深さ方向とした半楕円形である。ここで、半楕円形は正確な半楕円形でなくてもよい。扉2,2aに浅い凹部5を設けることにより、指の先端がこの凹部5に挿入されるように構成している。そのため、凹部5の平面視の直径に比べて短軸方向の深さが浅い形状であればよい。
【0023】
また、図1に示されるように、斜め上下方向に所定間隔で前記凹部5が2つ設けられている。2つの凹部5は、正面視円形であり、これらの中心を通る垂線の間隔が22mm度であり、これらの中心を通る水平線の間隔が17.5mm程度であることが望ましい。ここで、これらの2つの凹部5が、右利き用の凹部5としては下の凹部5に対して上の凹部5が斜め右上に設けられ、左利き用の凹部5としては下の凹部5に対して上の凹部5が斜め左上に設けられていることが望ましい。通常、右手の人差し指、中指、薬指のうち一番長いのは、中指である。ここで、右利きの人が、キッチンの上部に設けられた扉2を押す場合、右手を上方に伸ばして、人差し指、中指で凹部5を押すことが想定される。これとは逆に、左利きの人が、キッチンの上部に設けられた扉2を押す場合、左手を上方に伸ばして、人差し指、中指で凹部5を押すことが想定される。そのため、左利き用の凹部5としては下の凹部5に対して上の凹部5が斜め左上に設けられていることが望ましい。
【0024】
また、扉2,2aの前面には、水平方向に所定間隔で前記2つの凹部5がそれを1組として複数組設けられている。これにより、扉2,2aにおいて、水平方向において複数の場所で、扉2,2aを押すための目印となり、かつ、扉2,2aを押す際に指がすべるのを防止することができる。
【0025】
本実施の形態によれば、前記扉2,2aの前面に指の先端を挿入することにより指かかりとなる凹部5が、前記扉2の一部を凹ませて設けられていることにより、目印となり、かつ、指がすべるのを防止することができるため、扉等を開くための必要な場所に力を加えることが可能な凹部5を有する収納家具100を提供することができる。
【0026】
また、凹部5の断面が楕円の短軸を深さ方向とした半楕円形であることにより、指の先端の形状に近くなり、指に適合し易くなるため、滑りにくくできる。
【0027】
また、斜め上下方向に所定間隔で前記凹部5が2つ設けられていることにより、凹部5に、人差し指、中指、薬指のうちの2つの指が挿入されるため、より滑りにくくできる。
【0028】
また、水平方向に所定間隔で前記2つの凹部5が複数設けられていることにより、水平方向において複数の場所で目印となり、かつ、指がすべるのを防止することができるため、使用者は任意に選択した場所に扉等を開くために必要な力を加えることが可能になる。
【0029】
また、前記2つの凹部5が、右利き用の凹部5としては下の凹部5に対して上の凹部5が斜め右上に設けられ、左利き用の凹部5としては下の凹部5に対して上の凹部5が斜め左上に設けられていることにより、利き手の人差し指、中指、薬指のうちの2つの指が挿入されるため、より滑りにくくできる。
【0030】
また、前記凹部が正面視円形であり、前記凹部5の直径が10〜15mm、前記凹部5の深さが1〜2mmであることにより、指の先端に対して小さすぎず大きすぎない直径であり、かつ、指かかりするのに十分な深さため、適切に扉等を押すことができる。
【0031】
(変形例)
上記実施の形態においては、扉2が上方に旋回移動する例について説明したが、これに限られない。左側または右側に開く扉に凹部を設けてもよい。この場合、扉の左側の端部を中心に回転移動する場合は、扉の右側に凹部が設けられ、扉の右側の端部を中心に回転移動する場合は、扉の左側に凹部が設けられる。2つの凹部5がそれを1組として複数組が扉の縦方向に設けられる。また、2つの凹部5が右利き用または左利き用に設けられることについて説明したが、これに限られない。例えば、右利き用または左利き用に3以上の凹部5を設けてもよい。例えば、右利き用に3つの凹部を設けた場合、キッチンの上部に設けられた扉には、人差し指用の凹部と、この凹部の斜め右上方に中指用の凹部と、中指用の凹部の斜め右下方に薬指用の凹部とを設けてもよい。左利き用に3つの凹部を設けた場合、キッチンの上部に設けられた扉には、人差し指用の凹部と、この凹部の斜め左上方に中指用の凹部と、中指用の凹部の斜め左下方に薬指用の凹部とを設けてもよい。また、右利き用および左利き用に凹部を設けてもよい。例えば、右利き用および左利き用に3つの凹部を設けた場合、キッチンの上部に設けられた扉には、右手および左手の人差し指用の凹部と、この凹部の斜め右上方に右手の中指用の凹部と、右手および左手の人差し指用の凹部の斜め左上方に左手の中指用の凹部とを設けてもよい。また、上記実施の形態においては、扉の下部に凹部を水平方向へ千鳥足状に設ける例について説明したが、これに限られない。例えば、扉の全面に凹部を設けてもよい。前面に色々なパターンで凹部を設けることで、意匠として変化のある色々なパターンを有する扉を提供することができる。さらにまた、上述した左右上下方向に開閉される扉の他、押してロックされ、押して開放される機構を備えていれば、引き出しの前板を扉として実施することもできる。上記実施の形態においては、キッチンの収納家具を例に説明したが、これに限られない。建物、住宅の屋内および屋外に設置される収納家具についても本発明は適用可能である。なお、変形例においては、上記実施の形態と同じ部材についての説明を省略する。
【符号の説明】
【0032】
1 収納家具本体
1a 開口
2、2a 扉
4a、4b 駆動装置
5 凹部
100 収納家具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納家具本体とその開口を開閉する扉を備え、閉状態の前記扉を押すとこの扉の閉状態が解除される収納家具において、
前記扉の前面に指の先端を挿入することにより指かかりとなる凹部が、前記扉の一部を凹ませて設けられている
ことを特徴とする収納家具。
【請求項2】
請求項1に記載の収納家具において、
凹部の断面が楕円の短軸を深さ方向とした半楕円形である
ことを特徴とする収納家具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の収納家具において、
斜め上下方向に所定間隔で前記凹部が2つ設けられている
ことを特徴とする収納家具。
【請求項4】
請求項3に記載の収納家具において、
水平方向に所定間隔で前記2つの凹部がそれを1組として複数組設けられている
ことを特徴とする収納家具。
【請求項5】
請求項3または4に記載の収納家具において、
前記凹部5が正面視円形であり、前記凹部5の直径が10〜15mm、前記凹部5の深さが1〜2mmである
ことを特徴とする収納家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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