説明

収納容器、および収納容器保持方法

【課題】収納容器の反りを解消し、収納容器に収納したまま検査などができる収納容器および収納容器保持方法を提供する。
【解決手段】収納容器100は、収納部10と、形状変形手段20と、を備える収納容器であって、形状変形手段20は、収納部10を形成する樹脂12に設けられた磁性体21を有し、磁性体21に作用する磁力によって収納容器100の形状が変形する。収納容器100によれば、磁性体21に磁力を作用させることによって収納容器100に力を加えることができる。この力を利用することで、収納容器100が変形している場合には、変形部分が矯正される方向に磁力を作用させることにより、収納容器100に接触することなく力を加えて保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの収納容器、および該収納容器の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、IC(Integrated Circuit)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などのデバイスは、製造段階で小片に加工された後、基板や製品に実装されるまでの間、トレイなどの容器に収納される場合が多い。それらの収納容器は、工程間や工場間のデバイスの搬送や保管を目的として大量に使用されるため、安価で軽量、省スペースなものが望まれる。そのため、一般的に、収納容器には低コストの射出成形による薄型の樹脂トレイを用いることが多い。
【0003】
一方、デバイスを小片に加工した後の外観検査や形状検査は、画像処理技術を用いた自動検査装置などを用いて行う場合が多く、画像認識のためにデバイスを高精度に位置決めする必要があった。特に高倍率の画像で微細な検査を行う場合には、高さ方向の位置決め(デバイスとカメラとの距離調整)を高精度に行う必要があった。このため、デバイスを、反りなどの変形が避けられない樹脂トレイから、変形が少ない検査専用の収納容器や、平面が確保された検査ステージに移し変える必要があった。しかし、移し変え作業によるコストアップや、移し変え作業に伴うデバイスの品質低下(例えば割れ、欠け、キズなどの発生)が危惧されたため、収納容器に入れたまま検査のできることが望まれていた。
【0004】
これに対し、特許文献1には、トレイの反りを矯正支持する方法が提案されている。この方法は、セットプレート上に置いた収納トレイの周縁部をトレイアジャストで押圧することで、トレイの反りを矯正支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−335727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、トレイの周縁部を直接トレイアジャストで押圧する構造のため、トレイとトレイアジャストとの接触部分から発塵しやすく、発生した塵がデバイスの表面に付着してデバイスの品質を低下させてしまうという課題があった。また、トレイアジャストは、トレイの周縁部分のみを抑える構造のため、トレイ中央部に発生する凸状の反り(例、図6)を矯正するのが困難であるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる収納容器は、収納部と、形状変形手段と、を備える収納容器であって、形状変形手段は、収納部を形成する部材に設けられた磁性体を有し、磁性体に作用する磁力によって、収納容器の形状が変形することを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、収納容器は、磁性体により形成された形状変形手段を備えており、磁性体に磁力を作用させることによって収納容器に力を加えることができる。この力を利用することで、例えば、収納容器が変形している場合には、変形部分が矯正される方向に磁力を作用させることにより、収納容器に接触することなく力を加えて所望の形状に変形させることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる収納容器において、収納容器は、収納部として、収納容器の一方の面に複数の収納用ポケットを持つ平板状のトレイであり、磁性体は、収納容器の一方の面とは反対側の面に備えられていることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、磁性体が平板状トレイの裏面に備えられており、磁性体に磁力を作用させることによって平板形状に保持することができる。具体的には、例えば、トレイが凸状に反っている場合には、トレイを平面上に置き、トレイの裏面に備えられた磁性体に鉛直方向の磁力を作用させることで、凸状の反りが矯正され、より平面に近い形状にすることができる。
従って、反りなどが発生しやすい収納容器であっても、平面形状に保持することができるため、デバイスを収納容器に収納したまま外観検査装置などに供することが可能となる。また、トレイに対して非接触で力を加えることができるため、トレイから発塵することが少なく、品質に与える影響も低減することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる収納容器において、収納部は、樹脂によって形成され、磁性体は、樹脂に埋設されていることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、磁性体は、収納部を形成する樹脂に埋設されているため、磁性体が、収納容器から剥離して離脱してしまうことが防げる。
【0014】
[適用例4]本適用例にかかる収納容器保持方法は、収納容器に、磁性体によって構成された形状変形手段を備え、磁性体に磁力を作用させることによって収納容器の形状が変形することを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、磁性体により構成された形状変形手段を収納容器に備え、磁性体に磁力を作用させることによって収納容器に力を加えることができる。この力を利用することで、例えば、収納容器が変形している場合には、変形部分が矯正される方向に磁力を作用させることにより、収納容器に接触することなく力を加えて所望の形状に変形させることができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる収納容器保持方法において、収納容器を、磁化された強磁性体に近接させることで磁力を作用させることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、収納容器を磁化された強磁性体に近接させるだけで、形状変形手段を構成する磁性体に磁力が作用し、収納容器に接触することなく所望の形状に変形させることができる。例えば、トレイが凸状に反っている場合には、トレイを磁化された強磁性の平板上に置く、あるいは平板上に置き、平板の裏面から磁石を近接だけで、磁性体に鉛直方向の力が作用し、凸状の反りが矯正され、より平面に近い形状にすることができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかる収納容器保持方法において、磁性体は強磁性であって、磁性体を磁化し、収納容器を他の磁性体に近接させることで磁力を作用させることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、収納容器を磁性体に近接させるだけで、形状変形手段を構成する磁性体に磁力が作用し、収納容器に接触することなく所望の形状に変形させることができる。例えば、トレイが凸状に反っている場合には、トレイを磁性体平板上に置くだけで、反っている部分に鉛直方向の力が作用し、凸状の反りが矯正され、より平面に近い形状にすることができる。
【0020】
[適用例7]上記適用例にかかる収納容器保持方法において、収納容器を、電磁石に近接させ、電磁石が生成する磁界強度を変化させることで磁性体に作用する磁力を変化させることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、収納容器を電磁石に近接させ、電磁石が生成する磁界強度を変化させることで、形状変形手段を構成する磁性体に作用する磁力を変化させることができる。従って、収納容器の変形の度合いや形状矯正の度合いに応じて、変形力を調整することができ、より効果的に所望の形状に変形させることができる。また、外観検査装置などで利用する場合には、検査中は電磁石をONとしてデバイスの高さ精度を確保し、検査終了後には電磁石をOFFとして収納容器を排出し易くするなどの使い方ができる。排出を容易とすることで、収納容器からデバイスが飛び出すことなどが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a);実施形態1に係る収納容器を示す平面図(b);同側断面図。
【図2】凸状に反ったトレイを矯正する例を示す概略図。
【図3】(a);実施形態2に係る収納容器を示す平面図、(b);実施形態2に係る反り矯正ステージを示す概略図。
【図4】(a);収納容器の変形例を示す平面図、(b);同側断面図。
【図5】(a)、(b);収納容器の変形例を示す側断面図。
【図6】トレイの中央部の反りを説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、説明を分かりやすくするため、実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
【0024】
(実施形態1)
図1(a)は、実施形態1に係る収納容器100を示す平面図、(b)は側断面図である。
収納容器100は、トレイ状の収納容器であり、一方の面に形成された収納部10と、一方の面とは反対側の面に構成された形状変形手段20とを備えている。以下、収納部10が形成されている面のある方向を上方向(上面)、形状変形手段20が備えられている面のある方向を下方向(下面、裏面)として説明する。
【0025】
収納部10は、収納容器100の上面部にマトリクス状に配列されたポケット11から構成されている。ポケット11は、デバイスを収納するくぼみであり、デバイスの形状に合わせて樹脂12により形成されている。
【0026】
形状変形手段20は、収納部10の裏面に密着する磁性体21から構成される。
磁性体21は、収納容器100に対して一回り小さな外形寸法(平面の面積比約95%)の長方形の板状体で、その断面形状は、逆台形々状をしている。逆台形々状とすることで、樹脂12に嵌合し、樹脂12との密着性の低下を防止し、磁性体21が収納容器100から脱落することを防止している。
【0027】
磁性体21には、好適例として炭素鋼を用いているが、これに限定するものではなく、樹脂12との必要な密着性が確保できる磁性体であれば良い。例えば、酸化鉄、珪化鉄、酸化クロム、コバルト、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、アルニコ、フェライトなどであっても良い。
【0028】
上記の構成を換言すると、収納容器100は、樹脂12により形成され、上面にはポケット11を凹設し、下面には、磁性体21を具設している。
収納容器100は、射出成形により作ることができる。具体的には、予め金型内の所定位置に磁性体21を挿入しておき、そこに樹脂12を注入して成形する方法(インサート成形)により成形することができる。
【0029】
なお、収納容器100の大きさや形状、ポケット11の形状や個数などは、図1(a)、(b)に示す仕様に限定するものではなく、収容するデバイスの形状や大きさ、収容する個数、関係する装置の仕様、搬送手段や保管の方法などにより、適宜設定することが望ましい。
【0030】
次に、形状変形手段20の作用、および収納容器保持方法について説明する。
図2は、中央部が上方向に凸状に反ったトレイ(収納容器100)を矯正する一例としての反り矯正ステージ200を側面から見た概略図である。図2において、収納容器100は、反り矯正ステージ200に乗せられている。
【0031】
反り矯正ステージ200は、ステージ30、筐体31、磁性平板40、上下駆動手段50などにより構成されている。
ステージ30は、筐体31により略水平に支えられた長方形の金属平板で、周囲4辺には、収納容器100の水平方向の位置決めをするリブ30eを備えている。ステージ30には、好適例として鉄を用いている。なお、これに限定するものではないが、軟磁性材料であることが好ましい。
【0032】
ステージ30の下部には、磁性平板40が、上下駆動手段50によって略水平に支えられている。磁性平板40は、鉛直方向に磁化された強磁性体(永久磁石)であり、好適例としてサマリウムコバルトを用いている。なお、これに限定するものではなく、必要な磁力の得られる硬磁性材料であれば良い。
上下駆動手段50は、筐体31の内部に固定支持されており、上部に支える磁性平板40を上下に移動させる機能を有する。上下に移動する磁性平板40は、最上位点において、ステージ30の下面に接する。
【0033】
以上の構成により、まず、磁性平板40がステージ30から下方向に離れた状態において、デバイスを収納した収納容器100をステージ30の上部に置く。この時点では、形状変形手段20(収納容器100が備える磁性体21)に作用する磁力は低く、収納容器100の反りは矯正されない。
【0034】
次に、上下駆動手段50により磁性平板40を上昇させる。磁性平板40がステージ30に近接するほど、つまり磁性体21に近づくほど、磁性体21に作用する磁力が高まる。磁性平板40がステージ30に接すると、磁性体21に作用する磁力は最大となり、その磁力により、収納容器100は、ステージ30に張り付く方向に引かれる。反り応力Fsに対して磁力Fmが大きい場合に、収納容器100は、水平面を有するステージ30に密着して反りが矯正される。収納容器100の反りが矯正されると、ポケット11の高さ位置は、所望の高さとなり、収納されるデバイスに対して必要な精度の検査などが実施できることになる。
【0035】
次に、例えば、収納されたデバイスの検査が終了し、収納容器100をステージ30から取り上げる場合は、上下駆動手段50により磁性平板40をステージ30から引き離す。磁性平板40がステージ30から離れるほど磁性体21に作用する磁力が弱まるため、収納容器100は容易に取り上げることができるようになる。磁性体21に強力な磁力が作用したまま、収納容器100を取り上げようとすると、磁力の急激な変化により収納容器100が跳ねるなどしてデバイスがポケット11から飛び出しかねない。従って、反り矯正ステージ200を検査装置などに備える場合には、収納容器100を搬送する装置の動きと連動させて上下駆動手段50の動きを適切に制御することが好ましい。
【0036】
以上述べたように、本実施形態による収納容器100、および反り矯正ステージ200による収納容器保持方法によれば、以下の効果を得ることができる。
収納容器100は、磁性体21により形成された形状変形手段20を備えており、磁性体21に磁力を作用させることによって収納容器100に力を加えることができる。この力を利用することで、例えば、収納容器100が変形している場合には、変形部分が矯正される方向に磁力を作用させることにより、収納容器100に接触することなく力を加えて所望の形状に変形させることができる。
従って、反りなどが発生しやすい収納容器であっても、鉛直方向の磁力を作用させることにより、平面形状に保持することができるため、デバイスを収納容器に収納したまま外観検査装置などに供することが可能となる。また、収納容器に対して非接触で力を加えることができるため、収納容器から発塵することが少なく、品質に与える影響も低減することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、収納容器100に備える磁性体21に対して、反り矯正ステージ200に備える永久磁石(磁性平板40)により磁力を作用させるとして説明したが、磁性体21に永久磁石を用い、収納容器100をステージ30に乗せる方法を取っても良い。この場合、磁性体21の磁力によりステージ30に密着することで、収納容器100の反りなどが矯正される。そのため、磁性平板40および上下駆動手段50に代わり、収納容器100をステージ30に近接させ、乗せる、あるいは収納容器100をステージ30から遠ざけ、排出するなどの制御をする手段により、磁性体21の作用する磁力をコントロールすることが好ましい。
【0038】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る収納容器について説明する。なお、説明にあたり、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
実施形態1では、図1(a)のように、磁性体21が収納容器100に対して一回り小さな長方形の板状体であるとして説明したが、1枚の板状体に限定するものではない。本実施形態に係る収納容器は、形状変形手段20を構成する磁性体が、収納容器裏面の複数の箇所に分散していることを特徴としている。また、本実施形態に係る収納容器の保持は、分散した前記磁性体に対応した部位に配置された電磁石により行うことを特徴としている。
【0039】
図3(a)は、実施形態2に係る収納容器100aを下面から見た平面図である。
収納容器100aは、収納容器100と同様のトレイ状の収納容器であり、一方の面に形成された収納部10と、形状変形手段20aとを備えている。
形状変形手段20aは、収納容器100aの裏面の4つのコーナー部、および略中心部に配置される円板状の磁性体21aにより構成される。磁性体21aの大きさは、その直径を収納容器100aの短辺長さの約6分の1としているが、これに限定するものではなく、必要とする磁力に応じて、適宜設定することが望ましい。また、磁性体21aの断面形状は、収納容器100aからの脱落防止のため、磁性体21と同様に逆台形々状であっても良い。
【0040】
図3(b)は、実施形態2に係る反り矯正ステージ200aを示す概略図である。
図3(b)において、収納容器100aは、反り矯正ステージ200aに乗せられている。反り矯正ステージ200aは、ステージ30、筐体31a、電磁石60などにより構成されている。
電磁石60は、ステージ30の下部の4つのコーナー部、および略中心部の5箇所に配置され、筐体31aにより固定されている。つまり、電磁石60は、磁性体21aの位置に対応する5箇所に設置されている。電磁石60は、略水平に巻かれたソレノイド(図示せず)により、それぞれ鉛直方向の磁界を生成し、磁性体21aに磁力を作用させる。
【0041】
本実施形態による収納容器100a、および反り矯正ステージ200aによる収納容器保持方法によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることが出来る。
収納容器100aをステージ30に乗せ、電磁石60が生成する磁界強度を変化させることで、形状変形手段20aを構成する磁性体21aに作用する磁力を変化させることができる。従って、収納容器100aの変形の度合いや形状矯正の度合いに応じて、変形力を調整することができ、より効果的に所望の形状に変形させることができる。また、外観検査装置などで利用する場合には、検査中は電磁石60をONとしてデバイスの高さ精度を確保し、検査終了後には電磁石60をOFFとして収納容器100aを排出しやすくするなどの使い方ができる。排出を容易とすることで、収納容器100aからデバイスが飛び出すことなどが防止できる。
【0042】
なお、磁性体21aおよび対応する電磁石60の数および水平方向の設置位置は、上記の5箇所に限定するものではなく、収納容器の形状や大きさ、変形の状況や矯正の度合いなどにより適宜設定することが好ましい。磁性体21aおよび電磁石60を形状の矯正や保持に必要充分な位置に限って設置することで、上記の効果をより効率的に実現することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。なお、上述した実施形態と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0044】
(変形例1)
図4(a)は、変形例1に係る収納容器100bを下面から見た平面図、(b)は側断面図である。
収納容器100bは、収納容器100と同様のトレイ状の収納容器であり、収納部10と、形状変形手段20bとを備えている。
形状変形手段20bは、収納部10の裏面に密着する磁性体21bから構成される。
磁性体21bは、磁性体21と同様の長方形の板状体であるが、磁性体21と異なり、各々のポケット11の位置に対応して貫通孔22が開いている。また、この貫通孔22を埋める樹脂部分には、ポケット11の底部から収納容器100bの下面に貫通する貫通孔23が開いている。
【0045】
一般的に、デバイスの収納部分に設けられた貫通孔23のような窓は、収納したデバイスの下面観察や、透過光による検査、デバイスの有無の検出などに使われる。また、収納容器の軽量化や樹脂の収縮に伴う反りの対策などの目的にも使用される。
一方、一般的な装置においては、トレイの保持や搬送のために真空(減圧)吸着の手段を用いること多いが、このような貫通孔を持ったトレイの場合には、貫通孔で空気が漏れてしまうために真空吸着をすることが出来ない。そのために、吸着部分の孔を埋め、吸着パッドでの吸着ができるようにすることが多い。
【0046】
しかし、本変形例による収納容器100bによると、具設された磁性体21bを磁力により持着することが可能なため、このような孔埋めの処置をする必要がない。つまり、真空吸着により反りなどを矯正して保持する手段を有する装置では、収納容器の吸着部には孔を空けることができないという制約があったが、本変形例による収納容器100bによれば、このような制約はなく、収納ポケット位置毎に貫通孔を設けることが出来る。
【0047】
(変形例2)
図5(a)は、変形例2に係る収納容器100cを示す側断面図である。
実施形態1では、図1(b)のように、磁性体21の断面形状を逆台形々状とし、樹脂12との密着性の低下を防止し、磁性体21が収納容器100から脱落することを防止するとして説明したが、脱落を防止する方法は、これに限定するものではない。収納容器100cは、磁性体を収納容器の裏面に備えるのではなく、樹脂層に埋設することを特徴としている。
【0048】
収納容器100cは、形状変形手段20cとして磁性体21cを備えている。磁性体21cは、磁性体21のように収納容器100の下面に位置するのではなく、樹脂12により形成される層の内部に埋設されている。収納容器100cは、射出成形により成形する際に、磁性体21cを金型内にフローティング状態に保持して樹脂12を注入することにより形成される。
【0049】
このように、磁性体21cを樹脂12の内部に埋設することにより、磁性体21cが収納容器100cを形成する樹脂12から剥離して脱落してしまうことが防げる。
【0050】
なお、磁性体を樹脂層に埋設する方法としては、上記による方法だけではなく、例えば、磁性体を微細な粒状にして樹脂に混ぜ、樹脂と共に金型内に注入し射出成形する方法などでも良い。
【0051】
(変形例3)
図5(b)は、変形例3に係る収納容器100dを示す側断面図である。
磁性体21と樹脂12との密着性を高める方法としては、図5(b)に示す磁性体21dのように、磁性体21dに無数の孔22dを開け、樹脂を回り込ませることで、密着性を高める方法であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
10…収納部、11…ポケット、12…樹脂、20…形状変形手段、21…磁性体、30…ステージ、31…筐体、40…磁性平板、50…上下駆動手段、60…電磁石、100…収納容器、200…反り矯正ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部と、形状変形手段と、を備える収納容器であって、
前記形状変形手段は、前記収納部を形成する部材に設けられた磁性体を有し、
前記磁性体に作用する磁力によって、前記収納容器の形状が変形することを特徴とする収納容器。
【請求項2】
前記収納容器は、前記収納部として、前記収納容器の一方の面に複数の収納用ポケットを持つ平板状のトレイであり、前記磁性体は、前記収納容器の前記一方の面とは反対側の面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の収納容器。
【請求項3】
前記収納部は、樹脂によって形成され、
前記磁性体は、前記樹脂に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の収納容器。
【請求項4】
収納容器に、磁性体によって構成された形状変形手段を備え、
前記磁性体に磁力を作用させることによって前記収納容器の形状が変形することを特徴とする収納容器保持方法。
【請求項5】
前記収納容器を、磁化された強磁性体に近接させることで前記磁力を作用させることを特徴とする請求項4に記載の収納容器保持方法。
【請求項6】
前記磁性体は強磁性であって、
前記磁性体を磁化し、前記収納容器を他の磁性体に近接させることで前記磁力を作用させることを特徴とする請求項4に記載の収納容器保持方法。
【請求項7】
前記収納容器を、電磁石に近接させ、
前記電磁石が生成する磁界強度を変化させることで前記磁性体に作用する前記磁力を変化させることを特徴とする請求項4に記載の収納容器保持方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−224379(P2012−224379A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94782(P2011−94782)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】