説明

収納庫

【課題】床近傍に配置される収納庫の前面において、清掃性が高く、傷が目立ちにくく、かつ低コストで製造することが可能な収納庫を提供する。
【解決手段】本発明にかかる収納庫(ベースキャビネット130)の構成は、床近傍に配置されるスライド式の引出(足下収納庫136)を収容する本体部200は、その両側面の前縁202a・202bの下端から下縁204a・204bに至るまで後方に向かって傾斜する傾斜部206a・206bを有し、引出の前板302は、側面視において本体部の前縁に沿う正面部302aと、正面部に連続して後方に向かう屈曲部302bと、屈曲部に連続し且つ傾斜部に沿う蹴込み部302cとを有し、前板の表面は、屈曲部よりも上方の正面部には梨地加工が施され、屈曲部よりも下方の蹴込み部には引出の幅方向に平目のローレット加工が施されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被収納物を収納可能なスライド式の引出を備える収納庫に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンには、調理器具や調理材料、食器などを収納しておくために、多くの収納スペースが設けられている。このため天板(システムキッチンにおいてはワークトップ)の下には、引出や開き戸を備える収納庫が設けられるのが通常である。特に近年では、収納庫の最下段の引出(以下、足下収納庫と称する。)の下端を床面の直上まで延長し、かかる引出ひいては収納庫全体の収納スペースの拡大を図っている(例えば特許文献1)。
【0003】
また一般的に、収納庫と床面との間には、収納庫後方に奥まった空間である蹴込みが設けられる。従来では、収納庫において引出を収容する本体部を、それよりも奥行きが浅く作られた台輪の上に載置することにより蹴込みを設けていた。これに対し、特許文献1のような足下収納庫を有する収納庫では、その本体部を構成する側板の下部を四角く切り欠き、且つかかる足下収納庫の前面において床面に近い箇所を側板の切欠に対応するように収納庫後方に凹ませることにより蹴込みを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−282070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キッチンは、調理時に水や油がはねること等により、天板(ワークトップ)だけでなく、その前面、すなわち収納庫の前板にも汚れが付着することが多い。この汚れの問題は、天板から離れた下方にある足下収納庫についても同様である。このため、足下収納庫の前板には高い清掃性が求められる。
【0006】
また他の課題として、キッチンでは、清掃時に掃除機等が当たることにより、足下収納庫の前板に傷が入ることがある。このため、蹴込みに足下収納庫を設ける場合、足下収納庫は傷に耐える構成にする必要がある。
【0007】
高い清掃性を得るために例えば表面エネルギーの低いコーティングや親水性塗装を施したり、傷つきにくくなるように硬度の高いコーティングやラミネートをすることも考えられる。しかしながらシステムキッチンは主に家庭で用いられるものであるから、潜在的に低価格で提供する要請がある。すると製造側には、品質や機能を向上させつつ低コスト化を図ることが命題として課せられている。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、傾斜部によって蹴込みを形成する場合であっても、床近傍に配置される収納庫の前面において、清掃性が高く、傷が目立ちにくく、かつ低コストで製造することが可能な収納庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる収納庫の代表的な構成は、床近傍に配置されて被収納物を収納可能なスライド式の引出を少なくとも備える収納庫であって、引出を収容する本体部は、その両側面において両側面の前縁の下端から下縁に至るまで後方に向かって傾斜する傾斜部を有し、引出の前面に配置される前板は、側面視において本体部の前縁に沿う正面部と、正面部に連続して後方に向かう屈曲部と、屈曲部に連続し且つ傾斜部に沿う蹴込み部とを有し、前板の表面は、屈曲部よりも上方の正面部には梨地加工が施されていて、屈曲部よりも下方の蹴込み部には引出の幅方向に平目のローレット加工が施されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、床近傍の引出の前板において、収納庫の前面となる正面部に梨地加工が施されているため、その領域はほぼ平滑であり付着した汚れを容易に拭き取ることが可能である。また梨地加工であることにより、鏡面のように平滑な表面と比べれば汚れが目立ちにくい。したがって、高い清掃性を得ることができる。一方、屈曲部よりも下方の蹴込み部には、ローレット加工が施されているため、その領域は凹凸を有することとなる。したがって、その領域に掃除機やつま先などが衝突しても凸部の先端に傷が付くだけであり、使用者から観察されるのは凸部の側面であるため、傷を目立たなくすることが可能となる。
【0011】
上記の屈曲部は、正面部と同じ梨地加工が施されているとよい。引出の前板において屈曲部のアール(曲率半径)が大きい場合、すなわち屈曲部が角張っておらず、湾曲している領域である場合には、屈曲部の正面にも観察可能な面積が大きくなる。ここで、キッチンにおいて床近傍の引出は使用者が上方から急角度で見下ろすことになるため、屈曲部までは観察されるが、蹴込み部は観察されにくい。そこで、ローレット加工は蹴込み部のみとし、屈曲部には正面部と同様の梨地加工をすることにより、ローレット加工が目立つことなく、美観の向上を図ることができる。
【0012】
上記の前板の上縁にはフランジ状の把手部が設けられていて、前板は、アルミニウム系金属の押出成形材であって、正面部、屈曲部、蹴込み部および把手部が一体成型されているとよい。
【0013】
上記のように前板の各部を一体成型することにより、その製造が容易であり、且つ部品点数を削減すると同時に組立作業が不要となる。また押出成形材とすることにより、切断位置の変更によって横幅の寸法が異なる複数の収納庫に対応可能となる。したがって、かかる複数の収納庫の前板を同一の金型で製造可能となるため、金型コストひいては部品コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、傾斜部によって蹴込みを形成する場合であっても、床近傍に配置される収納庫の前面において、清掃性が高く、傷が目立ちにくく、かつ低コストで製造することが可能な収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。
【図2】本実施形態にかかる収納庫であるベースキャビネットの本体部の斜視図である。
【図3】図2の本体部の分解斜視図および正面図である。
【図4】本実施形態にかかる足下収納庫の詳細を示す図である。
【図5】足下収納庫の前板の3面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
(キッチン)
図1は本実施形態にかかる収納庫を備えるキッチンを示す図である。キッチン100は一枚の天板110(ワークトップ)の下に複数の収納庫(キャビネット)を備えた、いわゆるシステムキッチンである。天板110は合成樹脂(人工大理石)やステンレスなどからなり、キッチン100の全体の上面を覆っている。また天板110には、組み込み式に取り付けられたコンロ112、平坦なテーブル面であり主に調理を行うのに利用される調理スペース114、天板110に一体形成されたシンク116が設けられる。
【0018】
天板110の下は、コンロ112本体が設置されているコンロキャビネット120と、調理スペース114に対応したベースキャビネット130と、シンク116が設置されているシンクキャビネット140といった各収納庫で構成される。各収納庫は収納スペースとして機能し、収納庫内の空きスペースには、コンロ112への配線や、シンク116および水栓への給排水管なども収容されている。このように、天板110の下では、天板110の上のシンク116やコンロ112といった各構成に対応した収納庫がその高さおよび奥行きを等しくして複数設けられている。
【0019】
各収納庫は、被収納物を収納するために、様々な大きさのスライド式の引出を設けている。コンロキャビネット120は、上部にコンロ112のグリル112aおよび操作パネル112bを備え、その脇には調味料などの小物を収納するための小さな引出であるスパイスボックス122が配設されている。コンロキャビネット120の中央部(グリル112aの下)には幅の広い大きな引出124が配設され、鍋やボウルなどの比較的大きな調理器具を収納することが可能になっている。またコンロキャビネット120の下部の床近傍(最下段)には、スライド式の引出(足元収納)である足下収納庫126が配設されている。同様に、ベースキャビネット130には複数の引出132、134、および足下収納庫136が配設され、シンクキャビネット140には引出144、および足下収納庫146が配設されている。
【0020】
(収納庫)
次に、本実施形態の特徴である収納庫について説明する。なお、以下の説明では、上述したコンロキャビネット120、ベースキャビネット130、シンクキャビネット140のうち、ベースキャビネット130を例示するが、本発明はコンロキャビネット120およびシンクキャビネット140にも適用可能である。
【0021】
図2は、本実施形態にかかる収納庫であるベースキャビネット130の本体部の斜視図であり、理解を容易にするために、図1の本体部から引出132および134、ならびに足下収納庫136を取り外した状態を示している。図3は、図2の本体部の分解斜視図および正面図であり、図3(a)は図2の本体部の分解斜視図であり、図3(b)は図2の本体部の正面図である。
【0022】
ベースキャビネット130は、引出132および134、足下収納庫136(図1参照)、ならびにそれらを収容する本体部200を備える(図2参照)。図3(a)に示すように、本体部200の右側面200aおよび左側面200b(以下、これらを総じて両側面と称する。)、背面200cは、ステンレス製の板状部材をコの字状に折り曲げることにより一体に形成される。このように本体部200をステンレス製(金属製)とすることにより、高級感や耐久性が得られ、両側面および背面200cを1枚板で構成することにより、部材数の削減、ひいてはそれらの組立工数の削減が可能となる。
【0023】
本体部200の両側面の前縁202aおよび202bの上部には、かかる両側面および背面200cとは別部材からなるステンレス製の前板が前面200dとして取り付けられる。また両側面および背面200cの下縁204aおよび204bにはステンレス製の底板が底面200eとして取り付けられる。これにより、本体部200が図2に示す状態となる。
【0024】
なお、本実施形態においては、コの字状に折り曲げたステンレス製の1枚板により両側面および背面200cを構成したが、かかる構成は一例であり、少なくとも両側面がステンレス製の板状部材によって形成されていればよい。また背面200c、前面200dおよび底面200eにもステンレス製の板状部材を用いることとしたが、これに限定するものではない。しかし、かかる構成によれば、素材の統一感が得られるため高い意匠性が得られたり、ベースキャビネット130を廃棄する際の分別作業が容易になったりするという利点を得ることができる。
【0025】
図3(b)に示すように、本体部200の両側面の内側には、高さ方向においてレール210a〜210fが左右一対に取り付けられている。これにより、引出132および134や足下収納庫136(図1参照)の側面に設けられたプーリ(不図示)をレール210a〜210fに挿入して、引出132および134や足下収納庫136をスライド可能となる。
【0026】
また図2および図3(b)に示すように、本体部200の両側面の外側には、レール210a〜210fに対応する位置に、高さ方向においてネジ受けプレート220a〜220fが左右一対に取り付けられている。これにより、両側面を構成する板状部材の厚みを低減した場合であっても、十分な強度をもってレール210a〜210fをかかる両側面に取り付けることが可能となる。
【0027】
更に本実施形態では、図3に示すように、本体部200の右側面200aには、その前縁202aの下端から下縁204aに至るまで後方に向かって傾斜する傾斜部206aが形成されている。同様に、本体部200の左側面200bには、その前縁202bの下端から下縁204bに至るまで後方に向かって傾斜する傾斜部206bが形成されている。かかる構成により、本体部200の両側面と一体に蹴込み102(図1参照)を設けることができるため、従来のように台輪(台座)によって蹴込みを設ける構成と比して部品数や組付け工数の削減を図ることができる。また傾斜部206aおよび206bによって蹴込み102を形成すれば、従来のように四角い切欠によって蹴込みを形成する場合と比して荷重が集中する箇所が生じづらいため、撓みの発生ひいては板状部材(金属板)の変形を抑制することができる。
【0028】
なお、上述した傾斜部206aおよび206bには、そこを補強するための補強部材230(図2参照)を配置することが好ましい。これにより、右側面200aの前縁202aおよび左側面200bの前縁202bからの荷重(ベースキャビネット130の本体部200の上部の荷重)が補強部材230を介して下縁204aおよび204bに伝わり、傾斜部206aおよび206bへの荷重が軽減される。このため、撓みによる傾斜部206aおよび206bの変形を抑制可能となり、その強度を十分に確保することができる。したがって、傾斜部206aおよび206bによって蹴込み102を本体部200と一体に形成した場合であっても、本体部200の両側面となる板状部材の板厚を低減することが可能となる。
【0029】
上述したように本体部200に傾斜部206aおよび206bを設けると、ベースキャビネット130の最下段の引出、すなわち床近傍に設けられる引出である足下収納庫136は、以下に説明するように、本体部200の傾斜部206aおよび206bに追従する形状となる。なお、以下の説明では、上述した足下収納庫126、136および146のうち、足下収納庫136を例示するが、足下収納庫126および146にも適用可能である。
【0030】
(足下収納庫136)
図4は、本実施形態にかかる足下収納庫136の詳細を示す図であり、図4(a)は足下収納庫の正面斜視図136であり、図4(b)は図4(a)の背面斜視図であり、図4(c)は図4(a)のA−A断面図である。図5は足下収納庫の前板302の3面図である。なお、図4(c)では足下収納庫136の左側を例示して説明するが、右側についても左右対称に同様の構成であることは言うまでもない。
【0031】
図4(a)および(b)に示すように、足下収納庫136は、その前面を構成する前板302、側面を構成する2枚の側板304aおよび304b、底面を構成する底板306、および背面を構成する背板308を備える。本実施形態において、前板302は接続部材310aおよび310bによって側板304aおよび304bと接続される。接続部材310aおよび310bは、前板302の端面(不図示)を覆うと共に側板304aおよび304bの前端が接続され、これにより、前板302と側板304aおよび304bとが接続される。なお、かかる構成に限定するものではなく、接続部材310aおよび310bを設けずに前板302と側板304aおよび304bとを直接接続する構成としてもよい。
【0032】
図4および図5に示すように、前板302は、その側面視において上方から順に、本体部200(図3(a)参照)の前縁202aに沿う正面部302a、正面部302aに連続して後方に向かう屈曲部302b、および屈曲部302bに連続し且つ傾斜部206aに沿う蹴込み部302cを有する。このように、足下収納庫136が、本体部200の右側面200aおよび左側面200bの前縁202aおよび202bならびに傾斜部206aおよび206bに沿う形状を有することにより、ベースキャビネット130の前方に蹴込み102が形成され、キッチン100での作業時における使用者の足とベースキャビネット130(足下収納庫136)との干渉を避けることができる。
【0033】
本実施形態において、上述した前板302の上縁には、その正面部302aに連続するフランジ状の把手部302d(図4(c)参照)が設けられている。この把手部302dと、前板302の正面部302a、屈曲部302bおよび蹴込み部302cとは一体成型されているとよい。これにより、製造が容易になり、且つ部品点数を削減すると同時に組立作業が不要になるという利点が得られる。また前板302はアルミニウム系金属の押出成形材であるとよい。これにより、切断位置の変更によって横幅の寸法が異なるコンロキャビネット120の足下収納庫126やシンクキャビネット140の足下収納庫146(複数の収納庫)の前板を同一の金型で製造可能となる。したがって、金型コストひいては部品コストを削減することができる。
【0034】
なお、足下収納庫136の内部には、蹴込み部302cの後端近傍で上方に向かって立設する仕切板320(図4(b)および(c)参照)を設けるとよい。これにより、足下収納庫136において、蹴込み部302cの上方の空間136aと、それ以外の空間136b(蹴込み部302cよりも後方の空間)とが仕切板320によって仕切られるため、蹴込み部302cの上方の空間136aをポケットとして利用し、被収納物(不図示)を収納することができる。したがって、前板302において、本体部200の傾斜部206aおよび206bに沿う蹴込み部302cが斜面になっている(平坦な底面となっていない)場合であっても、蹴込み部302cの上方の空間136aを有効活用することが可能となる。
【0035】
上記説明したように、本体部200に傾斜部206aおよび206bを設け、かかる傾斜部206aおよび206bに沿う蹴込み部302cを足下収納庫136に設けることにより、ベースキャビネット130と一体に蹴込み102を形成しつつ、従来のように四角い切欠によって蹴込みを構成した場合と比して、本体部200の両側面の変形を抑制することができる。
【0036】
しかしながら、本実施形態のようにベースキャビネット130と一体に蹴込み102を形成すると、清掃時に掃除機等が足下収納庫136にぶつかり、前板302において蹴込み102に対応する領域である蹴込み部302c(蹴込み102の側面)の表面に傷が入ることがある。故に、ベースキャビネット130と一体に蹴込み102を構成する場合、蹴込み部302cに入った傷を目立たなくなるようにする必要があった。一方、キッチン100では、調理時に水や油がはねること等により、天板110のみならずベースキャビネット130(収納庫)の前板302(特にその正面部302a)にも汚れが付着することが多いため、前板302の正面部302aには高い清掃性が求められる。
【0037】
そこで、本実施形態の特徴として、足下収納庫136の前板302に、屈曲部302bを境界として、正面部302aおよび蹴込み部302cの各々の表面に機能的な加工が施す。
【0038】
(前板302)
詳細には、前板302の表面のうち、屈曲部302bよりも上方の正面部302aには梨地加工が施される。梨地加工とは、ブラスト処理等によって被処理体の表面を粗化し、かかる表面を、ほぼ平滑でありつつも、梨の表面のようにざらつきを有する質感にする加工である。ベースキャビネット130(収納庫)の前面となる正面部302aの表面にこのような梨地加工を施すことにより、鏡面加工を施した場合よりも汚れが付着しにくく、且つ付着した汚れを容易に拭き取ることが可能であるため、高い清掃性が得られる。
【0039】
一方、前板302の表面のうち、屈曲部302bよりも下方の蹴込み部302cには、足下収納庫136(引出)の幅方向に平目のローレット加工が施される。ローレット加工とは、表面に浅い線状の凹凸(溝や条)を平行に形成する加工である。一般にローレット加工としては、平行線を交差させた形状も含まれるが、本実施形態では交差させていない形状としている。ベースキャビネット130(収納庫)の蹴込み102となる蹴込み部302cの表面にこのようなローレット加工を施すことにより、平坦な領域が減るために掃除機などが衝突しても凸部の先端に傷が付くだけであり、使用者から観察されるのは凸部の側面であるため、傷を目立たなくすることが可能となる。
【0040】
なお、前板302の表面に統一感(連続感)をもたせるためには、かかる表面(正面部302aおよび蹴込み部302c)の加工を統一することが好ましいとも考えられる。しかしながら、前板302の表面すべてに梨地加工を施した場合、正面部302aにおいては上述した利点が得られるものの、蹴込み部302cにおいては傷が目立ち易くなり美観を損なうおそれがある。一方、前板302の表面すべてにローレット加工を施した場合、蹴込み部302cにおいては上述した利点が得られるものの、正面部302aにおいては溝部分に入りこんだ汚れが除去しづらいため清掃性が低下する。したがって、前板302の表面すべてに梨地加工またはローレット加工を施した場合、正面部302aまたは蹴込み部302cのいずれか一方においては求められる性能は満たされるものの、他方において求められる性能を満たすことはできない。
【0041】
故に、上記説明したように本実施形態の収納庫(ベースキャビネット130)のように、前板302の表面において、正面部302aには梨地加工を、蹴込み部302cにはローレット加工を施す。これにより、蹴込み部302cによってベースキャビネット130(足下収納庫136)と一体に蹴込み102を形成する場合であっても、正面部302aに求められる高い清掃性と、蹴込み部302cに設けられる傷付き防止との両立を達成することが可能となる。
【0042】
なお、上述した実施形態においては、屈曲部302bを境界として正面部302aおよび蹴込み部302cに加工を施したが、足下収納庫136(引出)の前板において図4に示すように屈曲部302bのアール(曲率半径)が大きい場合には、屈曲部302bにも正面部302aと同じ梨地加工を施すことが好ましい。このような場合、すなわち屈曲部302bが湾曲している領域である場合、屈曲部302bの正面にも観察可能な面積が大きくなる。これに対し、キッチンに立って作業をしている使用者は、床近傍の引出である足下収納庫136を上方から急角度で見下ろすことになるため、屈曲部302bより奥まった蹴込み部302cは観察されにくい。
【0043】
したがって、屈曲部302bのアールが大きい場合、換言すれば正面部302aだけでなく屈曲部302bも使用者に観察可能である場合には、蹴込み部302cのみにローレット加工を施し、屈曲部302bには正面部302aと同様の梨地加工をすることにより、ローレット加工が必要以上に目立つことがなく、美観の向上を図ることが可能となる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、被収納物を収納可能なスライド式の引出を備える収納庫に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
100…キッチン、102…蹴込み、110…天板、112…コンロ、112a…グリル、112b…操作パネル、114…調理スペース、116…シンク、120…コンロキャビネット、122…スパイスボックス、124…引出、126…足下収納庫、130…ベースキャビネット、132…引出、134…引出、136…足下収納庫、136a…空間、136b…空間、140…シンクキャビネット、144…引出、146…足下収納庫、200…本体部、200a…右側面、200b…左側面、200c…背面、200d…前面、200e…底面、202a…前縁、202b…前縁、204a…下縁、204b…下縁、206a…傾斜部、206b…傾斜部、210a…レール、220a…ネジ受けプレート、230…補強部材、302…前板、302a…正面部、302b…屈曲部、302c…蹴込み部、302d…把手部、304a、304b…側板、306…底板、308…背板、310a、310b…接続部材、320…仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床近傍に配置されて被収納物を収納可能なスライド式の引出を少なくとも備える収納庫であって、
前記引出を収容する本体部は、その両側面において該両側面の前縁の下端から下縁に至るまで後方に向かって傾斜する傾斜部を有し、
前記引出の前面に配置される前板は、側面視において前記本体部の前縁に沿う正面部と、該正面部に連続して後方に向かう屈曲部と、該屈曲部に連続し且つ前記傾斜部に沿う蹴込み部とを有し、
前記前板の表面は、前記屈曲部よりも上方の正面部には梨地加工が施されていて、該屈曲部よりも下方の蹴込み部には前記引出の幅方向に平目のローレット加工が施されていることを特徴とする収納庫。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記正面部と同じ梨地加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の収納庫。
【請求項3】
前記前板の上縁にはフランジ状の把手部が設けられていて、
前記前板は、アルミニウム系金属の押出成形材であって、前記正面部、前記屈曲部、前記蹴込み部および前記把手部が一体成型されていることを特徴とする請求項1または2に記載の収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157399(P2012−157399A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17285(P2011−17285)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】