説明

収納棚及び収納棚の製造方法

【課題】ドア板の開閉と棚本体の収納空間に対するドア板の押し込み格納及び引出とを行なうための機構を、使用者が棚本体に容易に追加することができる収納棚及び収納棚の製造方法を提供する。
【解決手段】ドア板3の掛止部31,31が掛止される掛止用部材4,4、ドア板3を載置するための載置用部材5,5,…、載置用部材5,5との間でドア板3を挟持するための挟持用部材6,6を、収納棚1となすべき棚本体2の2枚の側板23,23に突設し、掛止用部材4,4に掛止部31,31を掛止することによってドア板3を取り付け、最後に支持用部材7,7を突設する。そして、掛止部31,31が掛止用部材4,4に掛止されているドア板3が、掛止用部材4,4を中心軸として揺動することによって、収納空間Sの前部開口20が開閉され、前部開口20を開放した場合に、ドア板3が収納空間Sの上部に押し込み格納されて載置用部材5,5に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納するための棚本体と、この棚本体の前部開口を開閉するドア板とを備える収納棚及び収納棚の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収納棚は、例えば書籍を収納するための棚本体と、この棚本体の収納空間の前部開口を開閉するドア板とを備える。このドア板の表面の下部には載置部が設けられており、収納棚の使用者は、この載置部に、表紙を手前側に向けて書籍を載置することによって、書籍を陳列する。
このような収納棚のドア板は、ドア板上部の横方向を中心軸に手前側−奥側に揺動することによって前部開口を開閉し、更に、前部開口を開放した場合、収納空間の上部に押し込み格納され、前部開口を閉鎖する場合に、収納空間から引き出される。
【0003】
従来の収納棚においては、ドア板の押し込み格納及び引出のために、ドア板の両側部にローラが設けられ、収納棚の両側板の内面側に、ドア板のローラが摺動すべき2本のレールが、側板に沿って設けられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−161464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなドア板を備えない棚本体に、使用者がローラ付きのドア板及びレールを追加することによって、従来の収納棚を製造することがある。
しかしながら、側板に沿って設けられるレールは比較的大型の部材であり、取り付けが容易ではない。
更に、棚本体に追加する部材としてのドア板にローラが取り付けられている場合、ローラ付きのドア板の運搬中にローラが外部の物体に衝突して破損することが考えられる。
更にまた、ドア板のローラを受けるレールには、埃、塵等が溜まり易く、清掃の手間暇が掛かる。
【0005】
また、収納棚の製造コストを低減するために、ドア板の押し込み格納及び引出のための更に簡易な機構が要求されている。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ドア板の掛止部が、棚本体の両側面に突設されている掛止用部材に掛止され、ドア板が、掛止用部材を中心軸として揺動することによって棚本体の前部開口を開閉し、前部開口を開放した場合、棚本体の両側面に設けられている載置用部材にドア板が載置される構成とすることにより、棚本体の収納空間に対するドア板の押し込み格納及び引出のための機構が簡易であり、この機構に埃、塵等が溜まり難い収納棚を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、載置用部材の先端が、掛止部の掛止用部材に対する掛止位置よりも側板側であることにより、ドア板の掛止部が載置用部材に当接することを抑制することができる収納棚を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、棚本体の両側面に設けられている載置用部材に載置されているドア板を、載置用部材と挟持用部材とで挟持する構成とすることにより、棚本体の収納空間に押し込み格納されているドア板が不要に滑り出ることを抑制することができる収納棚を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ドア板が、ドア板の一面の上部に設けられている掛止部を掛止用部材に掛止されて揺動し、ドア板の一面の下部が、棚本体の前部開口の近傍に突設されている支持用部材に当接して支持される構成とすることにより、ドア板が棚本体の収納空間の奥側へ不要に入り込むことを抑制することができる収納棚を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ローラを用いてなる掛止用部材及び/又は載置用部材を備えることにより、ドア板の開閉動作及び/又は棚本体の収納空間に対する押し込み格納動作及び引出動作を滑らかにすることができる収納棚を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ドア板の他面下部に設けられている取っ手が、物品を載置する載置部を有することにより、部材の個数を増やすことなく、ドア板に物品を陳列することができる収納棚を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、棚本体の側板に設けられている部材取付穴に掛止用部材及び載置用部材を夫々突設し、突設された掛止用部材にドア板の掛止部を掛止することにより、棚本体の収納空間に対するドア板の押し込み格納及び引出のための機構を、使用者が棚本体に容易に追加することができ、しかも、追加すべき部材の破損を抑制することができる収納棚の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、掛止用部材、載置用部材及び挟持用部材を夫々突設し、突設された掛止用部材にドア板の掛止部を掛止してから、支持用部材を突設することにより、ドア板の取り付けが容易な収納棚の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係る収納棚は、天板、底板、及び2枚の側板を有し、物品を収納するための棚本体と、一面の上部に2個の掛止部が横方向に並置してあり、前記天板、底板、及び2枚の側板に囲繞されている収納空間の前部開口を開閉し、該前部開口を開放した場合に、前記収納空間の上部に押し込み格納されるドア板とを備える収納棚であって、前記2枚の側板の内面側の上部かつ前記前部開口の近傍に、互いに対向する位置に突設されている杆状であって、前記掛止部が掛脱可能に掛止される2本の掛止用部材と、前記側板の内面側の上部かつ前記掛止用部材の突設位置よりも奥側に突設されている杆状であって、前記前部開口を開放した場合に、前記収納空間の上部に押し込み格納された前記ドア板が載置される載置用部材とを備え、前記掛止部が前記掛止用部材に掛止されている前記ドア板が、前記掛止用部材を中心軸として揺動することによって前記前部開口を開閉するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る収納棚は、前記載置用部材の前記側板からの突出長さが、前記掛止部の前記掛止用部材に対する掛止位置の前記側板からの離隔距離よりも短いことを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る収納棚は、前記天板又は前記側板の内面側の前記載置用部材の突設位置よりも上側に突設されている杆状であって、前記前部開口を開放した場合に、前記ドア板が載置される載置用部材との間で前記ドア板を挟持する挟持用部材を備えることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る収納棚は、前記底板又は前記側板の内面側の下部、かつ前記掛止用部材の突設位置よりも手前側に突設されている杆状であって、前記前部開口を閉鎖した場合に、前記ドア板の前記一面の下部に当接して支持する支持用部材を備えることを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る収納棚は、前記掛止用部材及び/又は前記載置用部材は、ローラを用いてなることを特徴とする。
【0019】
第6発明に係る収納棚は、前記ドア板の他面の下部に、物品を載置する載置部を有する取っ手が設けられていることを特徴とする。
【0020】
第7発明に係る収納棚の製造方法は、物品を収納するための棚本体が、天板と、底板と、部材を取り付けるための部材取付穴が内面側の所定位置に形成してある2枚の側板とを有する収納棚の製造方法であって、一面の上部に2個の掛止部が横方向に並置してあるドア板と、杆状であって、前記掛止部を掛脱可能に掛止するための2個の掛止用部材と、杆状であって、前記ドア板を載置するための載置用部材とを準備し、前記掛止用部材を、前記2枚の側板の内面側の上部かつ前記前部開口の近傍に、互いに対向する位置に形成されている部材取付穴に突設し、また、前記載置用部材を、前記側板の内面側の上部かつ前記掛止用部材の突設位置よりも奥側に形成されている部材取付穴に突設し、前記2枚の側板に突設されている前記掛止用部材に、前記掛止部を掛止することによって前記ドア板を取り付け、前記掛止部が前記掛止用部材に掛止されている前記ドア板が、前記掛止用部材を中心軸として揺動することによって、前記天板、底板、及び2枚の側板に囲繞された収納空間の前部開口が開閉され、該前部開口を開放した場合に、前記ドア板が前記収納空間の上部に押し込み格納されて前記載置用部材に載置されるようにすることを特徴とする。
【0021】
第8発明に係る収納棚の製造方法は、杆状であって、前記前部開口を開放した場合に、前記ドア板が載置される載置用部材との間で前記ドア板を挟持するための挟持用部材と、杆状であって、前記前部開口を閉鎖した場合に、前記ドア板の前記一面の下部に当接して支持するための支持用部材とを準備し、前記ドア板を取り付ける前に、前記挟持用部材を、前記天板又は前記側板の内面側の前記載置用部材の突設位置よりも上側に突設し、前記ドア板を取り付けた後で、前記支持用部材を、前記底板又は前記側板の内面側の下部、かつ前記掛止用部材の突設位置よりも手前側に突設することを特徴とする。
【0022】
第1発明にあっては、棚本体の収納空間の上部に対するドア板の押し込み格納及び引出のための機構が、一面(ドア板の裏面)の上部に2個の掛止部(例えば逆J字状のフック)が横方向に並置してあるドア板と、杆状の2本の掛止用部材と、杆状の載置用部材とを用いて形成されている。
ここで、杆状とは、中空又は中実の円柱状、角柱状等であり、軸長が直径よりも長くても短くても良い。
【0023】
物品を収納するための棚本体は、天板、底板、及び、対向する2枚の側板を有し、ドア板は、天板、底板、及び2枚の側板に囲繞されている収納空間の前部開口を開閉する。
このために、各掛止用部材は側板の内面側の上部かつ前部開口の近傍に、互いに対向する位置に突設され、これらの掛止用部材にドア板の掛止部が掛脱可能に掛止される。そして、2枚の側板の2個の掛止用部材に2個の掛止部が掛止されているドア板が、掛止部が掛止用部材の周面に対し摺動することによって、2個の掛止用部材を中心軸として揺動する。このことによって、ドア板は、収納空間の前部開口を開閉する。
【0024】
また、ドア板は、収納空間の前部開口を開放した場合に、収納空間に押し込み格納される。
このために、載置用部材は側板の内面側の上部かつ掛止用部材の前後方向の突設位置よりも奥側に突設される。
【0025】
収納空間の前部開口を開放したドア板は、収納空間の上部に押し込まれる。このとき、掛止部が掛止用部材から離脱する。更に、掛止部が設けられているドア板の一面が、掛止用部材及び/又は載置用部材の周面に対し摺動することによって、収納空間の上部に押し込み格納されたドア板が、掛止用部材よりも奥側に配されている載置用部材に載置される。ここで、掛止用部材にもドア板が載置されてもよい。
載置用部材に安定して載置されたドア板は、使用者がドア板を支持していなくても、収納空間の前部開口を勝手に閉鎖することがない。
【0026】
載置用部材に載置されているドア板が引き出された場合、掛止部が設けられているドア板の一面が、載置用部材及び/又は掛止用部材の周面に対して摺動し、掛止部が再び掛止用部材に掛止され、収納空間の前部開口が閉鎖される。
【0027】
以上のようなドア板の押し込み格納及び引出のための機構は、この機構を構成する掛止部付きのドア板、杆状である掛止用部材と載置用部材とが夫々単純な形状であり、掛止用部材と載置用部材とが棚本体の側板に突設され、突設された掛止用部材にドア板の掛止部が掛止してドア板を掛止用部材に吊り下げる簡易な構成である。
【0028】
また、掛止用部材及び載置用部材夫々は杆状であるため、埃、塵等が溜まり難い。
【0029】
第2発明にあっては、各側板に突設されている載置用部材の側板からの突出長さが、ドア板の掛止部の掛止用部材に対する掛止位置の側板からの離隔距離よりも短い。換言すれば、各載置用部材の先端の横方向の位置が、ドア板の掛止部の掛止用部材に対する横方向の掛止位置よりも側板の近傍に配されている。
このため、収納空間の前部開口を開放したドア板が収納空間の上部に押し込み格納される場合でも、逆に、押し込み格納されているドア板が引き出される場合でも、ドア板の2個の掛止部は、対向配置されている2個の掛止用部材の間を通過する。即ち、掛止部が載置用部材に当接することが抑制される。
【0030】
第3発明にあっては、収納空間の前部開口を開放して載置用部材に載置されているドア板を、載置用部材と挟持用部材とで挟持する。このため、載置用部材に載置されているドア板が、収納空間から不要に滑り出て落下することが抑制される。
【0031】
このような挟持部材は杆状であって、棚本体の天板に突設されているか、又は側板の内面側の載置用部材の上下方向の突設位置よりも上側に突設されている。
挟持用部材が天板に突設されている場合、ドア板は挟持用部材の先端と載置用部材の周面との間に挟持される。一方、挟持用部材が側板に突設されている場合、ドア板は挟持用部材の周面と載置用部材の周面との間に挟持される。
【0032】
以上のようなドア板の押し込み格納及び引出のための機構は、この機構を構成する挟持用部材が単純な形状であり、収納空間の前部開口を開放しているドア板を、載置用部材と挟持用部材とで挟持する簡易な構成である。また、挟持用部材は杆状であるため、埃、塵等が溜まり難い。
ここで、側板に設けられている挟持部材の方が、天板に設けられている挟持部材よりも棚本体から脱落し難いため、側板に設ける方が好ましい。
【0033】
第4発明にあっては、収納空間の前部開口を閉鎖して掛止用部材に吊り下げられているドア板の下部を、棚本体の底板又は側板の内面側の下部に突設されている支持用部材で支持する。
支持用部材の前後方向の突設位置は、掛止用部材の前後方向の突設位置よりも奥側であるため、掛止部が掛止用部材に掛止されているドア板が、収納空間の支持部材の突設位置よりも奥側へ入り込むことが抑制される。
【0034】
また、この場合、ドア板は後傾状に支持されるため、収納空間の前部開口を閉鎖しているドア板の美観が向上し、また、ドア板に物品の載置部が設けられている場合は、物品が脱落し難く、しかも、使用者が、載置部に陳列されている物品を見やすいため利便性が向上される。
【0035】
以上のようなドア板の押し込み格納及び引出のための機構は、この機構を構成する支持用部材が単純な形状であり、収納空間の前部開口を閉鎖しているドア板を、支持用部材で支持する簡易な構成である。また、支持用部材は杆状であるため、埃、塵等が溜まり難い。
ここで、側板に設けられている支持部材の方が、底板に設けられている支持部材よりも、収納空間に対する物品の収納を阻害し難いため、側板に設ける方が好ましい。
【0036】
第5発明にあっては、ドア板の掛止部、及び掛止部が設けられている一面が、掛止用部材の周面に対して摺動するため、掛止用部材がローラを用いてなる場合、ローラの周面に対して、ドア板の掛止部、及び掛止部が設けられている一面が摺動し、ローラが回動する。このため、ドア板と掛止用部材との摩擦力が小さくなる。
同様に、ドア板の掛止部が設けられている一面が、載置用部材の周面に対して摺動するため、載置用部材がローラを用いてなる場合、ローラの周面に対して、ドア板の掛止部が設けられている一面が摺動し、ローラが回動する。このため、ドア板と掛止用部材との摩擦力が小さくなる。
【0037】
以上の結果、ドア板の開閉動作と棚本体の収納空間の上部に対する押し込み格納動作及び引出動作とが滑らかになり、しかも、摺動する部材同士が摩擦によって損傷することが抑制される。
【0038】
第6発明にあっては、ドア板の他面(ドア板の表面)の下部に取っ手が設けられているため、使用者は、取っ手を把持してドア板を収納空間の上部に容易に押し込み、又は収納空間の上部から容易に引き出す。
この取っ手は載置部を有するため、載置部に物品を載置することによって、ドア板に物品が陳列される。
このように、ドア板の取っ手と物品を陳列するための載置部とが兼用されているため、取っ手と載置部とを個別に設けることによって部材の個数が増えることがない。
【0039】
ところで、ドア板の開閉、及び押し込み格納及び引出に際し、ドア板の他面が下側を向くことはないため、載置部に物品を載置したままドア板の開閉、及び押し込み格納及び引出を行なうことも可能である。
【0040】
第7発明にあっては、棚本体の収納空間に対するドア板の押し込み格納及び引出のための機構が、2個の掛止部が並置してあるドア板と、2本の掛止用部材と、載置用部材とを、棚本体に追加することによって形成される。
【0041】
掛止用部材及び載置用部材は夫々杆状であるため、例えばローラ付きのドア板が摺動するレールの形状よりも単純な形状である。しかも、対面する2枚の側板に突設される部材であるため、収納空間の収納容量を減少させないようにする必要上、側板に沿って設けられるレールに比べて小型である。
また、2本の掛止部(例えばフック)及び掛止部付きのドア板は、ローラ及びローラ付きのドア板よりも単純な形状であり、特に、フックのような掛止部は、ローラよりも単純な構成である。このため、ドア板の運搬中にローラ、掛止部等が外部の物体に衝突して破損する(例えばローラの回転軸が歪む)ことが抑制される。
【0042】
さて、棚本体の側板には、部材を取り付けるための部材取付穴が内面側の所定位置に形成してある。この部材取付穴は、例えば掛止用部材及び載置用部材が内嵌するための嵌合穴、掛止用部材及び載置用部材を側板にネジ留めするためのネジ穴等である。
このため、例えば収納棚の使用者は、2枚の側板の内面側の上部かつ収納空間の前部開口の近傍に、互いに対向する位置に形成されている部材取付穴に、2個の掛止用部材を突設し、側板の内面側の上部かつ掛止用部材の突設位置よりも奥側に形成されている部材取付穴に載置用部材を突設すればよい。
【0043】
このように、掛止用部材及び載置用部材夫々の突設位置に部材取付穴が形成されているため、掛止用部材及び載置用部材夫々の突設が容易であり、更に、掛止用部材及び載置用部材夫々の突設位置を使用者が位置決めする必要がない。
しかも、部材取付穴は、収納空間側に突出しないため、収納空間の収納容量を減少させることがない。このため、ドア板の押し込み格納及び引出のための機構を棚本体に追加しない場合でも、部材取付穴が収納空間に対する物品の収納を阻害することがない。
【0044】
最後に、使用者は、2枚の側板に突設されている2個の掛止用部材に、ドア板の2個の掛止部を掛止する。このことによってドア板が棚本体に取り付けられる。
以上のようにして、使用者は、第1発明の収納棚を容易に製造する。
【0045】
第8発明にあっては、棚本体の内側の所定位置に、掛止用部材、載置用部材及び挟持用部材を夫々突設し、次いで、突設された掛止用部材にドア板の掛止部を掛止してから、最後に、支持用部材を突設する。
仮に、掛止用部材にドア板の掛止部を掛止してから載置用部材及び挟持用部材を夫々突設する場合、ドア板が突設作業を阻害するため作業性が悪い。
また、支持用部材を突設してから掛止用部材にドア板の掛止部を掛止する場合、支持用部材がドア板の掛止作業を阻害するため作業性が悪い。
【発明の効果】
【0046】
第1発明の収納棚による場合、棚本体の収納空間の上部に対するドア板の押し込み格納及び引出のための簡易な機構を設けることができる。このため、収納棚の製造コストを低減することができ、また、容易に保守点検を行なうことができる。
更に、掛止用部材及び載置用部材夫々に埃、塵等が溜まり難いため、収納棚を清潔に保つことができ、また、簡単に清掃することができる。
【0047】
第2発明の収納棚による場合、ドア板を収納空間の上部に押し込み格納するときでも、収納空間からドア板を引き出すときでも、ドア板の2個の掛止部が載置用部材に当接することを抑制することができる。
【0048】
第3発明の収納棚による場合、載置用部材に載置されているドア板を載置用部材と挟持用部材とで挟持して、ドア板が、収納空間から不要に滑り出て落下することを抑制することができる。
【0049】
第4発明の収納棚による場合、収納空間の前部開口を閉鎖しているドア板を支持用部材で後傾状に支持することができるため、美観及び利便性を向上させることができ、しかも、ドア板が棚本体の収納空間の奥側へ不要に入り込むことを抑制することができる。
【0050】
第5発明の収納棚による場合、ローラを用いてなる掛止用部材及び/又は載置用部材の周面に、ドア板の掛止部、及び掛止部が設けられている一面が摺動し、ローラが回動するため、ドア板の開閉動作及び/又は棚本体の収納空間に対する押し込み格納動作及び引出動作を滑らかにすることができる。更に、摺動する部材同士の損傷を抑制することができる。
【0051】
第6発明の収納棚による場合、ドア板の他面下部に設けられている取っ手と物品を陳列するための載置部とが兼用されるため、部材の個数を増やすことなく、ドア板に物品を陳列することができる。
【0052】
第7発明の収納棚の製造方法による場合、棚本体に、棚本体の収納空間の上部に対するドア板の押し込み格納及び引出のための機構を容易に追加することができるため、使用者の利便性を向上させることができる。つまり、使用者の使用態様に応じて、棚本体を単体で使用するか、棚本体の収納空間の前部開口を開閉するドア板を追加するかを選択することができる。
このような機構に用いられる部材は比較的小型の部材であり、取り付けが容易である。また、ドア板の運搬中にローラ、掛止部等が外部の物体に衝突して破損することを抑制することができる。
【0053】
第8発明の収納棚の製造方法による場合、掛止用部材、載置用部材及び挟持用部材を夫々突設し、突設された掛止用部材にドア板の掛止部を掛止してから、支持用部材を突設するため、ドア板の取り付けが容易であり、載置用部材及び挟持用部材の突設作業、及びドア板の掛止作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0055】
図1は、本発明に係る収納棚1が備えるドア板3が収納空間Sの前部開口20を閉鎖している状態を示す側断面図である。また、図2は、ドア板3が収納空間Sの上部に押し込み格納されている状態を示す側断面図であり、図3は、図2におけるIII −III 線の断面図である。
収納棚1は、物品を収納するための棚本体2を備える。棚本体2は横転矩形筒状であり、夫々矩形平板状の木質板材を用いてなる天板21、底板22、及び左右両側の2枚の側板23,23を備える。側板23,23は夫々略鉛直に、互いに略平行に対面して配され、この側板23,23の間に、天板21と底板22とが夫々略水平に、互いに略平行に対面して配されている。
【0056】
収納空間Sは、天板21、底板22、及び2枚の側板23,23に囲繞されている空間であり、この空間の前部に、収納空間Sの前部開口20を開閉するドア板3が配されている。
ドア板3は、図1に示すように収納空間Sの前部開口20を閉鎖し、収納空間Sの前部開口20を開放した場合は、図2及び図3に示すように、収納空間Sの上部に押し込み格納される。収納空間Sの上部に押し込み格納されたドア板3は、収納空間Sから引き出されて、再び図1に示すように前部開口20を閉鎖する。
【0057】
次に、ドア板3の開閉と、収納空間Sの上部に対するドア板3の押し込み格納及び引出とを行なうための機構(以下、開閉機構という)について説明する。
開閉機構は、ドア板3、2個の掛止用部材4,4、4個の載置用部材5,5,…、2個の挟持用部材6,6、及び2個の支持用部材7,7を備える。
【0058】
図4は、掛止用部材4として用いられるローラ81と、載置用部材5、挟持用部材6、又は支持用部材7として用いられるローラ82とを示す斜視図である。
ローラ81(又はローラ82)は、円柱状のローラ本体811(又はローラ本体821)と、ローラ本体811(又はローラ本体821)の回転軸方向に配されてローラ本体811(又はローラ本体821)を回転可能に支持する円柱状のローラ支持部812(又はローラ支持部822)とで構成されている。
【0059】
ローラ支持部812及びローラ支持部822夫々の周面には雄ネジ状の突出部が形成されており、ローラ支持部812は後述する部材取付穴24内部に、ローラ支持部822は後述する部材取付穴25,26,27内部に、夫々無理嵌めされる。
ローラ本体811及びローラ本体821夫々の寸法は略等しいが、ローラ支持部812の軸長はローラ支持部822の軸長よりも長く、ローラ支持部812の軸長とローラ支持部822の軸長との差は、ローラ本体811(又はローラ本体821)の軸長より長い。
【0060】
このようなローラ81は、後述するように、側板23内面の部材取付穴24に取り付けられることによって掛止用部材4として機能し、ローラ82は、側板23内面の部材取付穴25(又は部材取付穴26、或いは部材取付穴27)に取り付けられることによって載置用部材5(又は挟持用部材6、或いは支持用部材7)として機能する。
【0061】
図1〜図3に示すように、掛止用部材4,4は、2枚の側板23,23の内面側の上部、かつ収納空間Sの前部開口20の近傍に、互いに対向する位置に突設されている。
また、載置用部材5,5,…は、側板23,23の内面側の上部、かつ掛止用部材4,4の突設位置よりも奥側に、2個ずつ互いに対向する位置に突設されている。更に詳細には、図1及び図2に示すように、一方(又は他方)の側板23に関し、掛止用部材4、及び載置用部材5,5は、この順に手前側から奥側へ、上下方向の略同じ位置に、離隔配置されている。
【0062】
以上のような掛止用部材4,4、及び載置用部材5,5,…は、図1〜図3に示すように、前後方向に3点、左右方向に2点、計6点で、略水平に配されたドア板3を下側から安定して支持することが可能な位置に配されている。
【0063】
更に、挟持用部材6,6は、2枚の側板23,23の内面側の載置用部材5,5,…の突設位置よりも上側に突設されている。更に詳細には、図1及び図2に示すように、一方(又は他方)の側板23に関し、挟持用部材6と、前後方向に並置されている掛止用部材4、及び載置用部材5,5の内の中央の載置用部材5とは、この順に上側から下側へ、前後方向の略同じ位置に、離隔配置されている。この載置用部材5と挟持用部材6との離隔距離は、ドア板3の基板30の厚みより僅かに長い。
【0064】
更にまた、支持用部材7,7は、図1〜図3に示すように、側板23,23の内面側の下部、かつ掛止用部材4,4の突設位置よりも手前側に突設されている。
【0065】
図3に示すように、一方(又は他方)の側板23に関し、載置用部材5、挟持用部材6、及び支持用部材7の側板23からの突設高さは略等しい。
しかしながら、掛止用部材4の側板23からの突設高さは、載置用部材5、挟持用部材6、及び支持用部材7の側板23からの突設高さよりも高い。ここで、掛止用部材4の突設高さと載置用部材5の突設高さとの差は、ローラ本体811(又はローラ本体821)の軸長よりも長い。
【0066】
図5は、ドア板3の裏面を示す正面図である。
図1〜図3及び図5に示すように、ドア板3は、木質板材を用いてなる矩形平板状の基板30を備える。基板30の横幅は、収納空間Sの横幅(即ち2枚の側板23,23の間の離隔距離)よりも僅かに短い。また、基板30の縦長さは、収納空間Sの縦長さ(即ち天板21と底板22との間の離隔距離)よりも僅かに短い。
【0067】
更に、この基板30の一面(収納空間Sに対向する面、即ち裏面)の上部に2個の掛止部31,31が横方向に並置してある。
各掛止部31は金属板を用いてなり、側面視J字状に形成されたフック本体31aと、フック本体31aのJ字の先端側に一体に設けられ、掛止部31を基板30に固定するための平板状の固定部31bとを備える。
このような掛止部31は、固定部31bを上側、フック本体31aを下側にして、固定部31bが基板30の裏面にネジ留めされている。
【0068】
2個の掛止部31,31は、2本の掛止用部材4,4に(更に詳細には掛止用部材4,4のローラ本体811,811に)掛脱可能に掛止される。このため、左側(又は右側)の掛止部31の基板30左端(又は右端)からの離隔距離は、掛止用部材4の側板23からの突設高さと略等しい長さである(図3参照)。つまり、左側(又は右側)の各載置用部材5の側板23からの突出長さが、左側(又は右側)の掛止部31の掛止用部材4に対する掛止位置(掛止用部材4のローラ本体811の横方向の位置)の側板23からの離隔距離よりも短い。
【0069】
また、ドア板3は、図1、図2及び図5に示すように、他面(使用者に対向する面。即ち表面)の下部に、物品を載置する載置部3aを有する取っ手32が設けられている。
【0070】
取っ手32は、長手方向の長さ(正面視の横長さ)がドア板3の基板30の横幅と略等しい側面視L字状の金属板であり、L字の一側である平板状の固定部32aと、L字の他側である立ち上がり部32bとを備える。固定部32aは、L字の先端部がドア板3の基板30の下端面にネジ留めされており、L字の屈曲部が基板30の下端面から手前側に突出している。立ち上がり部32bは、固定部32aの屈曲部から略直角に立ち上がっている。この取っ手32の内面側が、基板30の表面との間で物品を載置する載置部3aとして機能する。
【0071】
以上のようなドア板3は、掛止部31,31が掛止用部材4,4に掛止されることによって、図1に示すように、掛止用部材4,4から吊り下げられる。また、ドア板3は、掛止用部材4,4を中心軸として揺動することによって、収納空間Sの前部開口20を開閉する。
そして、図1に示すように、ドア板3が前部開口20を閉鎖した場合に、支持用部材7,7がドア板3の裏面の下部に当接して、ドア板3を後傾状に支持する。
【0072】
また、図2及び図3に示すように、ドア板3が前部開口20を開放した場合に、載置用部材5,5,…に、収納空間Sの上部に押し込み格納されたドア板3が載置され、挟持用部材6,6とドア板3が載置されている載置用部材5,5,…との間でドア板3が挟持される。
【0073】
次に、開閉機構に係るドア板3の開閉と、収納空間Sの上部に対するドア板3の押し込み格納及び引出とを説明する。
図6は、ドア板3が収納空間Sの前部開口20を開放する途中の状態を示す側断面図であり、図7は、ドア板3が収納空間Sの上部に押し込み格納される途中の状態を示す側断面図である。
【0074】
使用者は、図1に示すように収納空間Sの前部開口20を閉鎖しているドア板3の取っ手32を握持して、図6に示すように、取っ手32を手前側に引っ張る。掛止部31,31が掛止用部材4,4に掛止されているドア板3は、掛止用部材4,4を中心軸として手間側(図6中矢符方向)に揺動し、収納空間Sの前部開口20を開放する。
【0075】
使用者は、図7に示すように、取っ手32を上側に引っ張ってドア板3を略水平に配し、更に、取っ手32を奥側(図7中矢符方向)に押すことによって、ドア板3を収納空間Sの上部に押し込む。このとき、使用者は、掛止用部材4,4に対してドア板3の裏面を摺動させながら、ドア板3の上端部(奥側端部)を載置用部材5,5と挟持用部材6,6との間に押し込む。
また、このとき、掛脱可能に掛止用部材4,4に掛止されている掛止部31,31は、掛止用部材4,4から離脱する。
【0076】
すると、ドア板3の裏面が、掛止用部材4,4と載置用部材5,5,…とに対して摺動し、ドア板3の表面が、挟持用部材6,6に対して摺動する。
掛止用部材4,4と載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6とは、ローラ81,81とローラ82,82,…とを用いてなり、ローラ81,81とローラ82,82,…のローラ本体811,811とローラ本体821,821,…とが奥側へ回動するため、これらに対するドア板3の摺動は滑らかである。
【0077】
そして、使用者は、図2に示すように、ドア板3の上端部(奥側端部)が収納空間Sの最奥部に到達するまでドア板3を押し込むことによって、ドア板3を収納空間Sの上部に格納する。
【0078】
ここで、図3に示すように、ドア板3の掛止部31,31の横方向の位置は、載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6夫々の先端の横方向の位置よりも、収納空間Sの横方向中央部寄りに位置しているため、掛止部31,31が載置用部材5,5,…又は挟持用部材6,6に当接してドア板3の押し込み格納を阻害することが抑制されている。
【0079】
また、図2及び図7に示す状態のドア板3は、左右の側板23,23に配されている下側の載置用部材5,5と上側の挟持用部材6,6との間に挟持されているため、例えば使用者が誤まって取っ手32から手を放した場合でも、ドア板3の上(奥側)端部が浮き上がり、下(手前側)端部が下がって、ドア板3の自重によってドア板3が落下することが抑制される。
【0080】
以上のようにして、使用者は、ドア板3の開放と、収納空間Sの上部に対するドア板3の押し込み格納とを行なう。
【0081】
逆に、使用者は、図2に示すように収納空間Sの上部に押し込み格納されているドア板3の取っ手32を握持して、図7に示すように、取っ手32を手前側に引っ張る。ドア板3は掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6に対して摺動しながら手前へ引き出され、図6に示すように、ドア板3の掛止部31,31が再び掛止用部材4,4に自動的に掛止されて、最後に、図1に示すように、ドア板3が支持用部材7,7…に後傾状に支持されつつ掛止用部材4,4から吊り下げられて収納空間Sの前部開口20を閉鎖する。
以上のようにして、使用者は、ドア板3の閉鎖と、収納空間Sの上部からのドア板3の引出とを行なう。
【0082】
図8は、本発明に係る収納棚1の全体的な外観を示す斜視図である。
収納棚1は、収納空間Sを上下に4段並設してある。このために、最上段の収納空間Sを形成している天板21、及び最下段の収納空間Sを形成している底板22以外は、1枚の板部材が下段の収納空間Sの天板21と上段の収納空間Sの底板22とを兼ねている。
【0083】
このような収納棚1は、4段の収納空間S,S,…に書籍を収納し、各収納空間Sに対応するドア板3に書籍を陳列する書架として用いられる。各ドア板3は、支持用部材7,7の支持によって後傾状に支持されているため、陳列された書籍が取っ手32の載置部3aから脱落し難く、しかも、使用者が、陳列されている書籍を見やすい。
ここで、各ドア板3には、陳列された書籍が載置部3aから更に脱落し難くなるように、脱落防止用の柵11が設けられる。ただし、この柵11の図示は、図8以外では省略している。
【0084】
ところで、ドア板3の開閉、及び押し込み格納及び引出に際し、ドア板3の表面が下側を向くことはなく、また、ドア板3は略水平に掛止用部材4,4及び載置用部材5,5,…に載置されるため、載置部3aに書籍を載置したままドア板3の開閉、及び押し込み格納及び引出を行なっても、書籍は脱落し難い。
【0085】
以上のような収納棚1は、開閉機構が単純な部材を用いてなる簡易な構成であるため、安価である。しかも、単純な部材、簡易な構成である収納棚1は、運用も保守管理も容易である。
また、掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…、及び挟持用部材6,6夫々がローラ81又はローラ82を用いてなり、しかも、掛止部31,31が載置用部材5,5,…に当接することが抑制されているため、ドア板3の開閉、押し込み格納及び引出が容易かつ滑らかであって、ドア板3、掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…、及び/又は挟持用部材6,6の摩擦による損傷を抑制している。
【0086】
更に、載置用部材5,5と挟持用部材6,6との間でドア板3を挟持するため、押し込み格納すべきドア板3、又は引出途中のドア板3が手前に落ちることが抑制される。
更にまた、ドア板に設けられたローラを案内するレールのような部材が備えられていないため、埃、塵等が溜まり難い。
【0087】
また、ドア板3は載置用部材5,5,…のみならず、掛止用部材4,4にも載置される(図2参照)。つまり、掛止用部材4,4は載置用部材としての機能も兼ね備えている。このため、ドア板3を安定して支持する載置用部材5,5,…の個数を更に増加させる必要がなく、部材の個数が減少する。
更に、押し込み格納時にドア板3を押し込みすぎた場合でも、挟持用部材6,6に取っ手32が当接するため、ドア板3が棚本体2の奥側の開口から滑り出て向こう側へ落下することが抑制される。
【0088】
また、各ローラ81,82は小型の部材であるため、収納空間Sの収納容量を減少させることが抑制されている。
【0089】
最後に、開閉機構を備えない棚本体2に、使用者が開閉機構を追加することによって収納棚1を製造する手順について説明する。
図9は、収納棚1となすべき棚本体2を示す側断面図である。
図10は、棚本体2に対する掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…、及び挟持用部材6,6の取り付けを説明する側断面図であり、図11は、同じく正面図である。
図12は、棚本体2に対するドア板3の取り付けを説明する側断面図である。
【0090】
使用者は、収納棚1となすべき棚本体2(図9参照)を準備し、また、ローラ81,81を2本、及びローラ82,82,…を8本(各図4参照)、並びにドア板3(図5参照)を準備する。
【0091】
図9に示すように、収納棚1となすべき棚本体2には、部材取付穴24,24,25,25,25,25,26,26,27,27が形成してある。これらは、2枚の側板23,23の内面側の所定位置に予め形成してあり、使用者が手作業で形成する必要はない。ここで、所定位置とは、具体的には部材取付穴24,24に関しては掛止用部材4,4を突設すべき位置であり、同様に、部材取付穴25,25,…(又は部材取付穴26,26、或いは部材取付穴27,27)に関しては載置用部材5,5,…(又は挟持用部材6,6、或いは支持用部材7,7)を突設すべき位置である。
【0092】
ここで、各部材取付穴25,26,27は、ローラ82のローラ支持部822に対応する内径と深さとを有する。
一方、各部材取付穴24は、ローラ81のローラ支持部812に対応する内径と、ローラ82のローラ支持部822に対応する深さとを有する。
このような各部材取付穴24,25,26,27は、収納空間Sの収納容量を減少させるものではないため、使用者が棚本体2を単体で使用しても問題はない。
【0093】
ドア板3は、図5に示すように、基板30に掛止部31,31及び取っ手32が予め取り付けられていてもよく、基板30、掛止部31,31及び取っ手32が個々の部材として準備され、これらの部材を使用者が手作業で組み立ててドア板3となしてもよい。
このような棚本体2は、例えば、開閉機構を備えない書架として販売され、また、2本のローラ81,81、8本のローラ82,82,…、及びドア板3(又はドア板3の代わりにドア板3を組み立てるための部材)は、棚本体2に開閉機構を設けるための部材のセットとして販売される。
【0094】
棚本体2、ローラ81,81、ローラ82,82,…、及びドア板3を準備した使用者は、まず、図10及び図11に示すように、側板23,23両方の部材取付穴25,25,25,25,26,26夫々に、ローラ82を1本ずつ取り付けることによって、4本の載置用部材5,5,…及び2本の挟持用部材6,6を側板23,23に突設する。
次いで、使用者は、側板23,23両方の部材取付穴24,24夫々に、ローラ81を1本ずつ取り付けることによって、2本の掛止用部材4,4を側板23,23に突設する。
【0095】
このとき、使用者は、部材取付穴24,24,25,25,25,25,26,26に、対応するローラ81又はローラ82を無理嵌めするだけで、掛止用部材4,4を、2枚の側板23,23の内面側の上部かつ収納空間Sの前部開口20の近傍に、互いに対向する位置に容易に突設し、また、載置用部材5,5,…を、側板23,23の内面側の上部かつ掛止用部材4,4の突設位置よりも奥側に容易に突設し、更に、挟持用部材6,6を、側板23,23の内面側の載置用部材5,5,…の突設位置よりも上側に突設する。この場合、各部材の突設位置を使用者が位置決めする必要がない。
【0096】
しかも、部材取付穴24,24,25,25,25,25,26,26,27,27の深さが略同一であるため、使用者は、図11に示すように、掛止用部材4,4の側板23,23からの突出長さを、載置用部材5,5,…の側板23,23からの突出長さよりも所要の長さ(ドア板3の押し込み収納又は引出の際に、掛止部31,31が載置用部材5,5,…に当接しないだけの長さ)だけ容易に長く設ける。
【0097】
掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6の突設完了後、使用者は、2枚の側板23,23に突設されている掛止用部材4,4に、掛止部31,31を掛止することによってドア板3を取り付ける。
この場合、使用者は、図12に示すように、ドア板3の表面を手前側に向けて、ドア板3の下端部(取っ手32設置側端部)からドア板3を前部開口20を通して収納空間Sへ挿入し、ドア板3の裏面の掛止部31,31を掛止用部材4,4に掛止する。
【0098】
その後、使用者は、掛止部31,31が掛止用部材4,4に掛止されている状態のドア板3を、掛止用部材4,4を中心軸として手前側へ揺動させる。このとき、部材取付穴27,27には何も突設されていないため、ドア板3が他の物体に当接することとはない。
【0099】
最後に、使用者は、側板23,23両方の部材取付穴27,27夫々に、ローラ82を1本ずつ取り付けることによって、図6に示すように、2本の支持用部材7,7を側板23,23に突設する。
このとき、使用者は、部材取付穴27,27にローラ82を無理嵌めするだけで、支持用部材7,7を、2枚の側板23,23の内面側の下部、かつ掛止用部材4,4の突設位置よりも手前側に突設するため、支持用部材7,7の突設位置を使用者が位置決めする必要がない。
【0100】
以上のようにして、使用者は、開閉機構を備えない棚本体2に開閉機構を設けて収納棚1を製造する。
【0101】
なお、掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6の突設のみならず、支持用部材7,7も突設させてからドア板3を取り付けることも不可能ではないが、ドア板3の周縁部が棚本体2、載置用部材5,5,…、挟持用部材6,6又は支持用部材7,7に引っ掛かるため、取り付けは困難である。
また、ドア板3を取り付けてから載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6を取り付けることも不可能ではないが、使用者がドア板3を持ち上げて支えた状態で載置用部材5,5,…及び挟持用部材6,6を取り付ける必要があるため、作業性が悪い。
【0102】
以上のような収納棚1の製造方法は、開閉機構を備えない棚本体2に、使用者によって、単純な部材を用いてなる簡易な形状の開閉機構が容易に後付けされる。このため、使用者は、棚本体2単体で使用するか、収納棚1を製造して使用するかを、自身の使用態様に応じて選択することが可能となる。即ち、使用者の利便性が向上されている。
【0103】
また、掛止用部材4,4は同一種類のローラ81,81を用いてなり、載置用部材5,5,…、挟持用部材6,6、及び支持用部材7,7は同一種類のローラ82,82,…を用いてなるため、部材の種類が少なく、コストダウンが可能である。
更に、ドア板3に、他の物体との当接によって破損し易いローラが取り付けられていないため、ドア板3の取り回しが容易であり、作業性がよい。
仮に、基板30、掛止部31,31、及び取っ手32を用いて使用者がドア板3を製造する構成であっても、単純な部材を用いてなる簡易な形状のドア板3の組み立ては容易である。
【0104】
なお、掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…、挟持用部材6,6、及び/又は支持用部材7,7は、ローラ81又はローラ82を用いる場合に限らず、例えば、周面が滑らかな金属製又は合成樹脂製の円柱、円筒、角柱等でもよい。
【0105】
また、挟持用部材6,6及び/又は支持用部材7,7を備えない構成でもよい。例えば、使用者が、開けたドア板3を常に手で支えて落下を抑制するか、ドア板3をバランスよく掛止用部材4,4及び載置用部材5,5,…に載置して落下を抑制する使用態様である場合は、挟持用部材6,6は不要である。
【0106】
更に、棚本体2は、左右両側の側板23,23のみならず、奥側にも側板を備えていてもよい。この場合、押し込み格納時にドア板3を押し込みすぎた場合でも、ドア板3が棚本体2の奥側の開口から滑り出て向こう側へ落下することが防止される。また、この場合、掛止用部材4,4及び載置用部材5,5,…の前後方向の並びを傾斜させて、掛止用部材4,4及び載置用部材5,5,…に載置されたドア板3が後傾状に傾斜し、手前側へ落下し難くなるように構成してもよい。
【0107】
更にまた、仮に、掛止用部材4,4、載置用部材5,5,…、挟持用部材6,6、及び/又は支持用部材7,7が、1本の杆状の部材であり、この部材を両側板に架け渡す構成である場合、部材が大型化し、部材の取り付けが困難であり、しかも、収納空間Sの収納容量を減少させ、収納空間Sに対する物品の収納を阻害することがある。更に、載置用部材5,5,…が両側板に架け渡されている場合、載置用部材5,5,…に掛止部31,31が当接して、ドア板3の押し込み格納及び引出を阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る収納棚が備えるドア板が収納空間の前部開口を閉鎖している状態を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る収納棚が備えるドア板が収納空間の上部に押し込み格納されている状態を示す側断面図である。
【図3】図2におけるIII −III 線の断面図である。
【図4】本発明に係る収納棚が備えるローラを示す斜視図である。
【図5】本発明に係る収納棚が備えるドア板の裏面を示す正面図である。
【図6】本発明に係る収納棚が備えるドア板が収納空間の前部開口を開放する途中の状態を示す側断面図である。
【図7】本発明に係る収納棚が備えるドア板が収納空間の上部に押し込み格納される途中の状態を示す側断面図である。
【図8】本発明に係る収納棚を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る収納棚となすべき棚本体を示す側断面図である。
【図10】本発明に係る収納棚となすべき棚本体に対する掛止用部材、載置用部材、及び挟持用部材の取り付けを説明する側断面図である。
【図11】本発明に係る収納棚となすべき棚本体に対する掛止用部材、載置用部材、及び挟持用部材の取り付けを説明する正面図である。
【図12】本発明に係る収納棚となすべき棚本体に対するドア板の取り付けを説明する側断面図である。
【符号の説明】
【0109】
1 収納棚
2 棚本体
20 前部開口
21 天板
22 底板
23 側板
24,25,26,27 部材取付穴
3 ドア板
31 掛止部
32 取っ手
3a 載置部
4 掛止用部材
5 載置用部材
6 挟持用部材
7 支持用部材
81,82 ローラ
S 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板、底板、及び2枚の側板を有し、物品を収納するための棚本体と、
一面の上部に2個の掛止部が横方向に並置してあり、前記天板、底板、及び2枚の側板に囲繞されている収納空間の前部開口を開閉し、該前部開口を開放した場合に、前記収納空間の上部に押し込み格納されるドア板と
を備える収納棚であって、
前記2枚の側板の内面側の上部かつ前記前部開口の近傍に、互いに対向する位置に突設されている杆状であって、前記掛止部が掛脱可能に掛止される2本の掛止用部材と、
前記側板の内面側の上部かつ前記掛止用部材の突設位置よりも奥側に突設されている杆状であって、前記前部開口を開放した場合に、前記収納空間の上部に押し込み格納された前記ドア板が載置される載置用部材と
を備え、
前記掛止部が前記掛止用部材に掛止されている前記ドア板が、前記掛止用部材を中心軸として揺動することによって前記前部開口を開閉するようにしてあることを特徴とする収納棚。
【請求項2】
前記載置用部材の前記側板からの突出長さが、前記掛止部の前記掛止用部材に対する掛止位置の前記側板からの離隔距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の収納棚。
【請求項3】
前記天板又は前記側板の内面側の前記載置用部材の突設位置よりも上側に突設されている杆状であって、前記前部開口を開放した場合に、前記ドア板が載置される載置用部材との間で前記ドア板を挟持する挟持用部材
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納棚。
【請求項4】
前記底板又は前記側板の内面側の下部、かつ前記掛止用部材の突設位置よりも手前側に突設されている杆状であって、前記前部開口を閉鎖した場合に、前記ドア板の前記一面の下部に当接して支持する支持用部材
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の収納棚。
【請求項5】
前記掛止用部材及び/又は前記載置用部材は、ローラを用いてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の収納棚。
【請求項6】
前記ドア板の他面の下部に、物品を載置する載置部を有する取っ手が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の収納棚。
【請求項7】
物品を収納するための棚本体が、天板と、底板と、部材を取り付けるための部材取付穴が内面側の所定位置に形成してある2枚の側板とを有する収納棚の製造方法であって、
一面の上部に2個の掛止部が横方向に並置してあるドア板と、
杆状であって、前記掛止部を掛脱可能に掛止するための2個の掛止用部材と、
杆状であって、前記ドア板を載置するための載置用部材と
を準備し、
前記掛止用部材を、前記2枚の側板の内面側の上部かつ前記前部開口の近傍に、互いに対向する位置に形成されている部材取付穴に突設し、また、前記載置用部材を、前記側板の内面側の上部かつ前記掛止用部材の突設位置よりも奥側に形成されている部材取付穴に突設し、
前記2枚の側板に突設されている前記掛止用部材に、前記掛止部を掛止することによって前記ドア板を取り付け、
前記掛止部が前記掛止用部材に掛止されている前記ドア板が、前記掛止用部材を中心軸として揺動することによって、前記天板、底板、及び2枚の側板に囲繞された収納空間の前部開口が開閉され、該前部開口を開放した場合に、前記ドア板が前記収納空間の上部に押し込み格納されて前記載置用部材に載置されるようにすることを特徴とする収納棚の製造方法。
【請求項8】
杆状であって、前記前部開口を開放した場合に、前記ドア板が載置される載置用部材との間で前記ドア板を挟持するための挟持用部材と、
杆状であって、前記前部開口を閉鎖した場合に、前記ドア板の前記一面の下部に当接して支持するための支持用部材と
を準備し、
前記ドア板を取り付ける前に、
前記挟持用部材を、前記天板又は前記側板の内面側の前記載置用部材の突設位置よりも上側に突設し、
前記ドア板を取り付けた後で、
前記支持用部材を、前記底板又は前記側板の内面側の下部、かつ前記掛止用部材の突設位置よりも手前側に突設することを特徴とする請求項7に記載の収納棚の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−73347(P2008−73347A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257789(P2006−257789)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)