説明

収納構造

【課題】下方空間を広く有効に利用することができることは勿論、人が角部にぶつかり怪我をしてしまう危険性を低減することができ、相当の補強も不要とできる収納構造を提供する。
【解決手段】収納構造としての吊押入2は、建物の部屋1の背面の壁11に沿うと共に、部屋1の床15との間に部屋1に開放された下方空間3を有して箱状の収納本体としての吊押入本体2Aが設けられ、吊押入本体2Aは、一方の側面を形成する側面部21を備え、側面部21から連続して下方へ延在する張出部23が設けられており、張出部23は、側面部21の正面側下端から部屋1の背面の壁11に向かって下方へ傾斜する縁を有するとともに、その外側面が側面部21の外側面と略面一とされた構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋に設置される収納構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、部屋内の狭いスペースをより有効に利用することができるように、このような狭いスペースから成る部屋などに、収納構造として、吊押入を設置することがなされている(特許文献1等を参照)。
【0003】
こうした従来の吊押入では、その下方も有効に利用できるように、下方空間が設けられている。
【0004】
しかしながら、この下方空間は、吊押入の角部を支持する床柱が邪魔となるため、物を収納するスペースとしては利用できるものの、例えば、布団を敷いて、足先が位置する箇所などに利用したり、絨毯などの敷物を敷いたりするのは困難であった。
【0005】
一方で、最近では、図4に例示したように、床柱をなくした吊押入aなども実施されている。
【0006】
こうした吊押入aでは、床柱がないので、布団を敷いて、足先が位置する箇所などに利用したり、絨毯などの敷物を敷いたりするなど下方空間をより広く有効に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−155544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、こうした従来の吊押入aでは、床柱をなくしたことで、直角な角部bが突出し、疲れた人や子供などが誤ってこの直角な角部bにぶつかり怪我をしてしまう危険性があった。
【0009】
また、吊押入aを下方から支持できないので、天井等に相当の補強が必要となり、費用がかかる。
【0010】
そこで、本発明は、下方空間を広く有効に利用することができることは勿論、人が角部にぶつかり怪我をしてしまう危険性を低減することができ、相当の補強も不要とできる収納構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の収納構造は、建物の部屋の壁に沿うと共に、前記部屋の床との間に該部屋に開放された下方空間を有して箱状の収納本体が設けられ、該収納本体は、少なくとも一方の側面を形成する側面部を備え、該側面部から連続して下方へ延在する張出部が設けられており、該張出部は、前記側面部の正面側下端から前記部屋の前記壁に向かって下方へ傾斜する縁を有するとともに、その外側面が前記側面部の外側面と略面一とされていることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記側面部と前記張出部とが連続して同一の仕上げとされているとよい。
【0013】
また、前記張出部の下部は、縁が略垂直となっており、所定の奥行幅を有して前記床に支持されているとよい。
【0014】
さらに、前記張出部の下部の縁が略垂直の部分の高さは、15cm以上であるとよい。
【0015】
また、前記張出部の下部の奥行幅は、40cm以上であり、この奥行幅以下の奥行を有する収納部が、前記側面部及び前記張出部と隣り合うように設けられているとよい。
【0016】
さらに、前記収納本体の下面部が、前記側面部及び該側面部の前記部屋の反対側の壁に支持されているとよい。
【0017】
さらに、前記側面部が前記部屋の天井に支持されているとよい。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明の収納構造は、建物の部屋の壁に沿うと共に、部屋の床との間に部屋に開放された下方空間を有して箱状の収納本体が設けられ、収納本体は、少なくとも一方の側面を形成する側面部を備え、側面部から連続して下方へ延在する張出部が設けられている。
【0019】
そして、張出部は、側面部の正面側下端から部屋の壁に向かって下方へ傾斜する縁を有するとともに、その外側面が側面部の外側面と略面一とされた構成とされている。
【0020】
こうした構成なので、側面部の下側にある張出部は、側面部の正面側下端から部屋の壁に向かって下方へ傾斜する縁を有する形状をしているため、下方空間を広く有効に利用することができる。
【0021】
そのうえ、側面部の角部が、張出部の存在により鈍角となるため、人がこの角部にぶつかり怪我をしてしまう危険性を低減することができる。
【0022】
また、収納本体は張出部によって下方から支持されるので、天井等の補強を不要又は簡易にできる。
【0023】
ここで、側面部と張出部とが連続して同一仕上げとされている場合は、側面部と張出部との間に継ぎ目が無いので、意匠的な美観を得ることができる。
【0024】
また、張出部の下部は、縁が略垂直となっており、所定の奥行幅を有して床に支持されている場合は、部屋のその他の壁と床との境目と同様に、張出部と床との境目に幅木を設けることができる。
【0025】
さらに、張出部の下部の縁が略垂直の部分の高さは、15cm以上である場合は、張出部の傾斜した縁の下方に、絨毯などの敷物を敷くことができるのは勿論、やや厚めの布団を敷くこともできる。
【0026】
また、張出部の下部の奥行幅は、40cm以上であり、この奥行幅以下の奥行を有する収納部が、側面部及び張出部と隣り合うように設けられている場合は、例えば、この隣り合う収納部は、洋服入れなどに用いるのに適しており、側面部及び張出部と隣り合うスペースを有効に利用することができる。
【0027】
さらに、収納本体の下面部が、側面部及び側面部の部屋の反対側の壁に支持されている場合は、下面部が、側面部の反対側の壁にも支持されるので、容易に必要な支持強度を有するようにすることができる。
【0028】
また、側面部が部屋の天井に支持されている場合は、側面部が、天井にも支持されるので、より容易に必要な支持強度を有するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の収納構造としての吊押入を備えた部屋の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施例の収納構造としての吊押入の側面部及び張出部の部分を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】実施例の収納構造としての吊押入を備えた部屋の使用状態の一例を示す説明図である。
【図4】従来の収納構造としての吊押入の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0031】
先ず、実施例の構成について説明する。
【0032】
図1は、実施例の収納構造としての吊押入2を備えた部屋1の概略構成を示している。
【0033】
この実施例の収納構造としての吊押入2は、図1に示したように、向かって左側の一方の側面を形成する側面部21と、下面部22と、張出部23とから主に構成されている。側面部21と張出部23は、連続して壁紙が貼られ同一の仕上げとなっている。
【0034】
ここで、側面部21は、部屋1の背面の壁11と天井12とに支持されている。
【0035】
また、下面部22は、背面の壁11と側面部21と側面部21が面する壁13とは反対側の壁14に支持されており、床15との間に高さ60cm奥行幅が80cmの部屋1に開放された下方空間3を形成している。
【0036】
さらに、張出部23は、外側面が略面一となるように側面部21と連続して同一の仕上げとされており、側面部21の正面側下端から背面の壁11に向かって下方へ45度の角度で傾斜する縁を有する傾斜部23aと、下部の縁が略垂直となっている垂直部23bとから成り、背面の壁11と床15とに支持されている。
【0037】
これにより、側面部21の正面側下端と張出部23の傾斜部23aの正面側上端とで形成される角部2aが135度の鈍角となる。
【0038】
そして、正面側に正面枠部24が設けられるとともに、この正面枠部24の内側に開き戸25,25が設けられている。
【0039】
すなわち、側面部21と下面部22と壁14と天井12と正面枠部24とで、吊押入2の上部構造体である収納本体としての箱状の吊押入本体2Aが形成されている。
【0040】
なお、開き戸25,25の周囲には、見切り枠材25aが設けられている。
【0041】
また、側面部21及び正面枠部24と天井12との境目には、側面部21に面する壁13やその反対側の壁14と天井12との境目と同様に、廻り縁4が設けられている。
【0042】
さらに、張出部23と床15との境目には、背面の壁11や側面部21に面する壁13やその反対側の壁14と床15との境目と同様に、幅木5が設けられている。
【0043】
また、図2に拡大して示した張出部23の下部の垂直部23bは、奥行幅Lが40cmとされ、高さHが15cmとされている。
【0044】
さらに、図1に示したように、吊押入2に隣り合うように、収納部としての押入20が設けられている。
【0045】
この押入20は、側面部21及び張出部23と側面部21と面する壁13と天井12と床15とに囲まれる部分に正面枠部26が設けられ、この正面枠部26の内側に開き戸27,27が設けられることにより形成されている。
【0046】
この押入20は、図2に二点鎖線でその正面位置を示したように、40cmの奥行幅を有する。
【0047】
なお、開き戸27,27の周囲には、見切り枠材27aが設けられている。
【0048】
次に、実施例の作用効果について説明する。
【0049】
このような実施例の収納構造としての吊押入2は、建物の部屋1の背面の壁11に沿うと共に、部屋1の床15との間に部屋1に開放された下方空間3を有して箱状の収納本体としての吊押入本体2Aが設けられ、吊押入本体2Aは、一方の側面を形成する側面部21を備え、側面部21から連続して下方へ延在する張出部23が設けられている。
【0050】
そして、張出部23は、側面部21の正面側下端から部屋1の背面の壁11に向かって下方へ傾斜する縁を有するとともに、その外側面が側面部21の外側面と略面一とされた構成とされている。
【0051】
こうした構成なので、側面部21の下側にある張出部23は、側面部21の正面側下端から背面の壁11に向かって下方へ傾斜する縁を有する形状をしているため、下方空間3を広く有効に利用することができ、特に、狭い部屋にとっては貴重なスペースとなる。
【0052】
そのうえ、側面部21の角部2aが、張出部23の存在により鈍角となるため、人がこの角部2aにぶつかり怪我をしてしまう危険性を低減することができる。
【0053】
また、収納本体としての吊押入本体2Aは張出部23によって下方から支持されるので、天井12や背面の壁11等の補強を不要又は簡易にできる。
【0054】
ここで、側面部21と張出部23とは連続して同一の仕上げとされている。
【0055】
このため、側面部21と張出部23との間に継ぎ目が無いので、意匠的な美観を得ることができる。
【0056】
また、収納本体としての吊押入本体2Aの下面部22が、側面部21及び側面部21が面する壁13とは反対側の壁14に支持されている。
【0057】
このため、下面部22が、背面の壁11や側面部21だけでなく、側面部21が面する壁13とは反対側の壁14にも支持されるので、容易に必要な支持強度を有するようにすることができる。
【0058】
さらに、側面部21が部屋1の天井12に支持されている。
【0059】
このため、側面部21が、背面の壁11だけでなく、天井12にも支持されるので、より容易に必要な支持強度を有するようにすることができる。
【0060】
また、張出部23が部屋1の床15に支持されている。
【0061】
このため、さらにより容易に必要な支持強度を有するようにすることができる。
【0062】
さらに、張出部23の下部は、縁が略垂直の垂直部23bとなっており、奥行幅Lを有する。
【0063】
このため、部屋1のその他の壁11,13,14と床15との境目と同様に、張出部23と床15との境目に幅木5を設けることができる。
【0064】
また、張出部23の下部の縁が略垂直の垂直部23bの高さHは、15cmである。
【0065】
このため、例えば、張出部23の傾斜部23aの下方に、絨毯などの敷物を敷くことができる。
【0066】
或いは、図3に示したように、この狭い部屋1で人が寝るために、やや厚めの布団を敷いても、十分対応することができる。
【0067】
さらに、張出部23の下部の垂直部23bの奥行幅Lは、40cmであり、この奥行幅Lと同じ奥行を有する収納部としての押入20が、側面部21及び張出部23と隣り合うように設けられている。
【0068】
このため、例えば、この隣り合う押入20は、洋服入れなどに用いるのに適しており、側面部21及び張出部23と隣り合うスペースを有効に利用することができる。
【0069】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0070】
例えば、上記した実施例では、一方の側面を側面部21で形成し、他方の側面は壁14で形成して実施したが、これに限定されず、両側の側面を側面部21で形成するようにして実施してもよい。
【0071】
さらに、上記した実施例では、張出部23は背面の壁11と床15とで支持されるようにして実施したが、これに限定されず、張出部23を背面の壁11だけで支持するようにして実施してもよい。
【0072】
また、上記した実施例では、張出部23の傾斜部23aの下向きに傾斜する縁の角度を45度として実施したが、これに限定されず、角部2aが鈍角となるように実施すればよい。
【0073】
さらに、上記した実施例では、収納構造としての吊押入2の奥行幅を80cmとして実施したが、これに限定されず、収納構造として機能する奥行幅であればよい。
【0074】
また、上記した実施例では、張出部23の垂直部23bの高さHを15cmとして実施したが、これに限定されず、この高さHを15cm以上とすれば、絨毯などの敷物を敷いたり、布団を敷いたりするのに十分である。
【0075】
さらに、上記した実施例では、張出部23の垂直部23bの奥行幅Lを40cmとして実施したが、これに限定されず、この奥行幅Lを40cm以上とすれば、洋服入れなどに用いることができる隣り合う押入20を設けるのに十分である。
【0076】
また、上記した実施例では、収納本体としての吊押入本体2Aの前面に正面枠部24及び開き戸25,25を設けて実施したが、これに限定されず、開き戸25,25の代わりに引き戸を設けて実施してもよいし、正面枠部24及び開き戸25,25を設けずに棚状にして実施してもよい。
【0077】
さらに、上記した実施例では、収納部としての押入20にも正面枠部26及び開き戸27,27を設けて実施したが、これに限定されず、開き戸27,27の代わりに引き戸を設けて実施してもよいし、正面枠部26及び開き戸27,27を設けずに棚状にして実施してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 部屋
11 壁
12 天井
13 壁
14 壁
15 床
2 吊押入(収納構造)
2A 吊押入本体(収納本体)
20 押入(収納部)
2a 角部
21 側面部
22 下面部
23 張出部
23a 傾斜部
23b 垂直部
24 正面枠部
25 開き戸
25a 見切り枠材
26 正面枠部
27 開き戸
27a 見切り枠材
3 下方空間
4 廻り縁
5 幅木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の部屋の壁に沿うと共に、前記部屋の床との間に該部屋に開放された下方空間を有して箱状の収納本体が設けられ、
該収納本体は、少なくとも一方の側面を形成する側面部を備え、
該側面部から連続して下方へ延在する張出部が設けられており、
該張出部は、前記側面部の正面側下端から前記部屋の前記壁に向かって下方へ傾斜する縁を有するとともに、その外側面が前記側面部の外側面と略面一とされていることを特徴とする収納構造。
【請求項2】
前記側面部と前記張出部とが連続して同一の仕上げとされていることを特徴とする請求項1に記載の収納構造。
【請求項3】
前記張出部の下部は、縁が略垂直となっており、所定の奥行幅を有して前記床に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納構造。
【請求項4】
前記張出部の下部の縁が略垂直の部分の高さは、15cm以上であることを特徴とする請求項3に記載の収納構造。
【請求項5】
前記張出部の下部の奥行幅は、40cm以上であり、この奥行幅以下の奥行を有する収納部が、前記側面部及び前記張出部と隣り合うように設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の収納構造。
【請求項6】
前記収納本体の下面部が、前記側面部及び該側面部の前記部屋の反対側の壁に支持されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の収納構造。
【請求項7】
前記側面部が前記部屋の天井に支持されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72212(P2013−72212A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211777(P2011−211777)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)