説明

収納箱

【課題】蓋体の開閉機構が簡単であり、かつ、振動などによって故障しないような使い勝手のよい収納箱を提供する。
【解決手段】箱本体2の箱側取付部材4と蓋体3の蓋側取付部材5との間にはガスダンパ6が取り付けられている。通常は、蓋体3はロック機構によって閉じられているが、押し釦を押すとロック機構7が解除されて蓋体は開放可能な状態になる。このとき、ガスダンパ6の内部に封入されたガスの圧力によってピストンロッド6aが摺動し、ソフトな反発力によってピストンロッド6aを伸張させながら蓋体3は自動的に開放される。そして、ガスダンパ6内のピストンの終端位置でピストンロッド6aが停止するので、蓋体3の開放は自動的に停止する。すなわち、ガスダンパ6によって蓋体3を開放するためのバネ機能とストッパ機能とを備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具等を収納する収納箱に関するものであり、特に、建設機械等に設置されていて蓋体が開閉自在に構成された収納箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの建設機械には、上部旋回体の一側部にキャブが配置され、他側部にステップを兼ねた収納箱や燃料タンクなどが配置され、作業者がこの収納箱を足場にして燃料タンクの上に登り、さらに、エンジンルームの上に移動できるようになっている。前記収納箱は工具等を出し入れするために開閉自在な蓋体が設けられているが、この蓋体は、作業者の足場となるために堅牢であると共に開閉操作の使い勝手がよいように構成されている。例えば、油圧ショベルなどに設置された箱装置において、蓋体と箱本体との間にラッチ機構とバネ機構とを設けることによって、蓋体を開閉するときの作業性を向上させた箱装置の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−59953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されている発明においては、収納箱となる箱装置の蓋体を開閉するときの作業性は向上しているが、ラッチ機構とバネ機構が複雑な構成になっているために箱装置が高価なものとなってしまう。さらに、振動の多い油圧ショベルなどの建設機械にこのような箱装置を設置した場合、ラッチ機構やバネ機構が複雑であるために、振動などによって開閉機構が故障したりするおそれがある。あるいは、開閉操作時に蓋体が充分に開かなかったりして、必ずしも箱装置の使い勝手がよい状態を維持できない場合もある。
【0004】
そこで、蓋体の開閉機構が簡単であり、かつ、振動などによって故障しないような使い勝手のよい収納箱を提供するという技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、箱本体と蓋体とを備え、前記蓋体が開閉自在に構成された収納箱であって、前記箱本体と前記蓋体との間に、封入されたガスの圧力によって前記蓋体を開放させるガスダンパを備える収納箱を提供するものである。
【0006】
この構成によれば、ガスダンパのシリンダ内に封入されたガスの圧力によってピストンが動作し、そのピストンに連動するピストンロッドの伸張動作によって蓋体を押し開く。このとき、ガスダンパはシリンダ内のガスの圧力によりソフトな反発力にてスムーズに蓋体を開放させる。すなわち、機械的なバネ機構を設けなくても、ガスダンパを備えたことにより、バネ機能が具備される。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記前記蓋体は、上記ガスダンパにおけるピストンロッドの摺動終端位置で開放角度が規制される収納箱を提供するものである。
【0008】
この構成によれば、シリンダ内を移動するピストンの終端位置でピストンロッドの摺動が止まるので、自動的に蓋体の開放動作が停止する。すなわち、機械的なストッパ機構を設けなくても、ガスダンパを備えたことにより、ストッパ機能が具備される。また、ガス
ダンパの取付端子を蓋体のどの位置に固定するかにより、蓋体の開放角度が変更される。
【0009】
請求項3記載の発明は、上記箱本体は、上記蓋体が閉じられたときに該蓋体をロック状態にし、且つ、所望の操作によって前記ロック状態が解除されるロック機構を備える収納箱を提供するものである。
【0010】
この構成によれば、箱本体にロック機構が設けられていて、蓋体を閉じると自動的に閉じられた状態で蓋体がロックされる。そして、例えば、押し釦を押すなどの操作によりロック機構を解除すれば、ガスダンパの反発力によって自動的に蓋体が開放され、規制された開放角度で停止する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ガスダンパの反発力によって蓋体が自動的に開放されるので、蓋体を開けるときの操作性が一段と向上する。しかも、収納箱にはバネ機構のような機械的要素がないので、建設機械などのような振動の大きい装置に収納箱を設置しても安定して蓋体の開閉動作を行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、収納箱にストッパ機構を設けなくてもガスダンパがストッパ機能を具備しているので、ストッパ機構のための機械的要素が不要となるために部品点数を削減することができる。これにより、収納箱を軽量化することができると共に収納スペースを有効に使うことができ、コストダウンが図られると共に蓋体開閉時の故障率を低下させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、ロック機構によって蓋体を閉じた状態では収納箱は安定した足場として利用することができる。また、押し釦を押すなどの操作でロック機構を解除すれば、ガスダンパの反発力によって自動的に蓋体が開放されるので、蓋体の開閉時における操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る収納箱について、好適な実施例として油圧ショベルに設置された収納箱を一例に挙げて説明する。本発明は、蓋体の開閉機構が簡単であり、且つ、振動などによって故障しないような使い勝手のよい収納箱を提供するという目的を下記のようにして実現した。すなわち、本発明は、蓋体を開閉するバネ機構をガスダンパにすることによって蓋体の開閉時における操作性を向上させた。さらに、ガスダンパのみによってバネ機能とストッパ機能の両方の機能を具備することができるので、機械的なラッチ機構やバネ機構などが不要となり、部品点数を削減することができる。このため、収納箱全体の機構が簡単になるので、箱装置が安価になると共に故障率が低下して使い勝手も向上する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の収納箱であって蓋体を閉じた状態を示す側面図、図2は蓋体を開いた状態を示す側面図、図3は蓋体を開いた状態を示す斜視図である。
【0016】
図2及び図3に示すように、収納箱1は、工具等を収納するためのスペースを有する箱本体2と箱本体2の蓋となる蓋体3とによって収納部分が構成されている。また、箱本体2と蓋体3とは蝶番9等によって連結されていて蓋体3が自在に開閉できるようになっている。さらに、箱本体2と蓋体3との間には、箱側取付部材4と蓋側取付部材5とによってガスダンパ6が取り付けられていて、ガスダンパ6による反発力によって蓋体3が開放できるようになっている。後述するように、ガスダンパ6の内部に封入されている窒素ガスの圧力によってピストンが移動し、ピストンロッド6aが摺動してガスダンパ6が伸張動作することにより、蓋体3を開放方向へ押し上げるように構成されている。
【0017】
また、蓋体3の裏面にはロック爪7aが設けられている。一方、箱本体2側にはフック7bが回動可能に設けられ、前記ロック爪7aとフック7bとによりロック機構7が構成される。蓋体3を押し下げて閉止したときに、前記ロック爪7aがフック7bを押し開くように回動させ、続いて、該フック7bがばね等により押し戻されてロック爪7aに係止することにより、前記ロック機構7がロック状態となり、図1に示すように、箱本体2に蓋体3が閉止された状態でロックされる。
【0018】
図1に示すように、前記箱本体2側には前記ロック機構7を解除するための押し釦8が設けられており、図示した状態では、ロック機構7の作動によって蓋体3が箱本体2に土知られた状態でロックされている。そして、前記押し釦8を押すことにより前記フック7bが押し開かれ、該フック7bとロック爪7aとの係止が外れてロック機構7のロックが解除され、ガスダンパ6の反発力により蓋体3が開くように構成されている。
【0019】
図4は、本発明の収納箱に用いられるガスダンパ6の構成図である。同図に従って、ガスダンパ6についてさらに詳しく説明する。このガスダンパ6は、シリンダ6bの内部にピストンロッド6aと一体で軸方向に摺動するピストン6cが設けられていて、このピストン6cによってシリンダ6bの内部はA室とB室の二つの部屋に分けられ、A室及びB室にはそれぞれ窒素ガスの圧縮ガスが充填されている。また、A室とB室の二つの部屋はピストン6cに設けられた穴6fによって連通されている。さらに、シリンダ6b内には適量の油が充填され、ピストンロッド6aの伸び縮みする速度を油圧によって制御している。尚、ピストンロッド6aがシリンダ6bから外部へ挿通する部分は、詳細は図示されていないが、ガス漏れ及び油漏れを防止するためにシーリングされている。
【0020】
また、ピストンロッド6aの先端部には箱側取付端子6dが形成され、図1における収納箱1の蓋側取付部材5にボルトなどで固定できるようになっている。さらに、ピストンロッド6aが挿通しない側のシリンダ6bの先端部には蓋側取付端子6eが形成され、図1における蓋体3の蓋側取付部材5にボルトなどで固定できるようになっている。これによって、ガスダンパ6は、蓋体3が閉まっているときは図1に示すような取り付け構成となり、蓋体3の開放時には、図2及び図3に示すようにピストンロッド6aが蓋体3を開放方向へ持ち上げるように動作する。
【0021】
図4に示すようなガスダンパ6は、広範囲なバネ特性が得られると共に大きなストロークが得られる。また、ガスダンパ6は、小型で大きな荷重が得られると共に極めてなめらかなバネ作用が得られる。例えば、ガスダンパによるバネ反力は、ストロークが最大長のときは75〜450kgf、ストロークが最小長のときは100〜660kgfであり、また、ストローク長は凡そ50〜250mmである。
【0022】
図5は、前記ガスダンパ6を選定するための概念図である。図5にしたがって、ガスダンパ6の選定方法について説明する。同図において、Fはガスダンパの伸長時における必要反発力、Wは蓋体の重さ、Gは蝶番から蓋体の重心までの水平距離、Bは蝶番からガスダンパの支点までの距離、nはガスダンパの本数である。上記のように定義すると、ガスダンパの伸長時における必要反発力Fは次の(1)式で表わされる。
F=(W×G)/(B×n) ……(1)式
【0023】
次に、図1〜図4に従って、収納箱1の蓋体3を開閉する動作について説明する。図1に示すように蓋体3が閉まっている状態のとき、押し釦8を押すとロック機構7が解除されるので、ガスダンパ6はシリンダ6b内のガス圧力により、ピストン6cを介してピストンロッド6aが図4中の左方向へスライドし、該ガスダンパ6が伸張駆動される。図2及び図3に示すように、蓋体3はガスダンパ6の伸張動作により上方に押し上げられ、蓋
体3は前記蝶番9を回動中心としてピストンロッド6aが伸びきった位置まで開放する。このとき、シリンダ6b内のガスの圧力により、ガスダンパ6はソフトな反発力にてスムーズに蓋体を開放させる。また、ガスダンパの取付端子を蓋体のどの位置に固定するかにより、蓋体の開放角度を変更することができる。このように、当該収納箱1は、ガスダンパ6を装着していることにより、蓋体3を開放させるバネ機能を具備すると共に蓋体の開放角度を決めるストッパ機能も具備している。
【0024】
これに対して、図2及び図3に示した蓋体3が開放された状態から、蓋体3を下方へ押し下げることにより、前記ガスダンパ6のピストンロッド6aがシリンダ6b内へ押し込まれ、シリンダ6b内のガス圧力に抗してピストン6cが図4中の右方向へスライドし、該ガスダンパ6が収縮駆動される。したがって、蓋体3を下方へ押し下げ続けることにより、蓋体3が前記蝶番9を回動中心として閉鎖され、ロック爪7aがフック7bに係止してロック機構7が作動し、図1に示すように、蓋体3は閉止状態にロックされる。
【0025】
図6は、本発明の収納箱を油圧ショベルに設置した場合の外観図である。油圧ショベル10は、下部走行体11の上に旋回機構12を介して上部旋回体13が旋回自在に載置されている。また、上部旋回体13にはその前方の側部にキャブ14が設けられ、且つ、前方中央部にブーム15が俯仰可能に取り付けられている。さらに、ブーム15の先端にアーム16が上下回動自在に取り付けられ、該アーム16の先端にバケット17が取り付けられている。そして、上部旋回体13の右側前部に本発明の収納箱1が設置されている。
【0026】
同図には、収納箱1の各部品は表示されていないが、前述したように、該収納箱1の前部に押し釦8が設けられており、作業者がこの押し釦8を押すとロック機構7が解除され、ガスダンパ6の伸張動作よって蓋体3が上方に押し上げられて、収納箱1の蓋体3が自動的に開放される。この状態で、収納箱1の内部に工具などを収納することができる。そして、蓋体3を押し下げればガスダンパ6が収縮駆動されて蓋体3が閉止し、ロック機構7が作動して蓋体3が閉止状態にロックされる。したがって、作業者がこの収納箱1を足場にして上部旋回体13の上面部へ登ることが可能となる。
【0027】
尚、上記実施例は本発明を説明するための一例であって、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、かつ、本発明は上記改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の収納箱であって蓋体を閉じた状態を示す側面図。
【図2】図1に示す収納箱の蓋体を開いた状態を示す側面図。
【図3】図2に示す収納箱の斜視図。
【図4】本発明の収納箱に用いられるガスダンパの構成図。
【図5】図4に示すガスダンパを選定するための概念図。
【図6】本発明の収納箱を油圧ショベルに設置した場合の外観図。
【符号の説明】
【0029】
1 収納箱
2 箱本体
3 蓋体
4 箱側取付部材
5 蓋側取付部材
6 ガスダンパ
7 ロック機構
8 押し釦
9 蝶番
10 油圧ショベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体と蓋体とを備え、前記蓋体が開閉自在に構成された収納箱であって、
前記箱本体と前記蓋体との間に、封入されたガスの圧力によって前記蓋体を開放させるガスダンパを備えることを特徴とする収納箱。
【請求項2】
上記蓋体は、上記ガスダンパにおけるピストンロッドの摺動終端位置で開放角度が規制されることを特徴とする請求項1記載の収納箱。
【請求項3】
上記箱本体は、上記蓋体が閉じられたときに該蓋体をロック状態にし、且つ、所望の操作によって前記ロック状態が解除されるロック機構を備えることを特徴とする請求項1または2記載の収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−1597(P2006−1597A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180070(P2004−180070)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】