説明

収納袋

【課題】水に強いだけでなく、全量をポリエチレンとしてリサイクルすることができ、しかも、積層気泡シートを用いて形成されるものでありながら、手で引き裂いて容易に開封できるようにする。
【解決手段】積層気泡シート2を用いて形成される収納袋1であって、当該収納袋1の全ての層が、ポリエチレンフィルムを用いて形成されるとともに、製袋後の最表層が、押し出し成形された高密度ポリエチレンフィルム3を用いて形成され、さらに、高密度ポリエチレンフィルム3の成形時の押し出し方向が、開封時の引き裂き方向に沿う構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層気泡シートを用いて形成される収納袋に関する。
【背景技術】
【0002】
積層気泡シートを用いて形成される収納袋が知られている。積層気泡シートには、中空状に膨出する多数のキャップが形成されたキャップフィルムと、キャップフィルムのキャップ開口側に積層されるバックフィルムとを備えた二層気泡シートや、さらにキャップフィルムのキャップ膨出側にライナーフィルムを積層した三層気泡シートがあり、これらの積層気泡シートは、いずれも良好なクッション性(耐衝撃性)を有するので、積層気泡シートを用いて形成される収納袋にあっては、収容された物品を落下などの衝撃から保護し、物品の破損を防ぐことができる。そのため、封筒形状のものが市販され、FD、MD、CD、DVD、メモリカードなどの郵送に広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−79972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の収納袋(緩衝封筒)は、表層が紙で形成されているので、水に弱いだけでなく、リサイクルができないという問題がある。つまり、積層気泡シートは、通常、ポリエチレンなどのプラスチックフィルムで形成されており、リサイクルが可能であるが、特許文献1の収納袋にあっては、表層の紙を剥がすことが困難であるため、焼却処分しているのが実情である。
ちなみに、特許文献1の収納袋においては、焼却処分時におけるダイオキシンの発生を防ぐために、積層気泡シートにダイオキシン抑制剤を添加している。
【0005】
また、特許文献1の収納袋は、開封性に劣るという問題がある。つまり、紙製の封筒であれば、手で所定の方向に引き裂くことにより容易に開封可能であるが、積層気泡シートを用いて形成される収納袋にあっては、手で容易に引き裂くことができないため、開封に際してハサミなどの刃物が必要であった。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、水に強いだけでなく、全量をポリエチレンとしてリサイクルすることができ、しかも、積層気泡シートを用いて形成されるものでありながら、手で引き裂いて容易に開封することができる収納袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の収納袋は、積層気泡シートを用いて形成される収納袋であって、当該収納袋の全ての層が、ポリエチレンフィルムを用いて形成されるとともに、製袋後の最表層が、押し出し成形された高密度ポリエチレンフィルムを用いて形成され、さらに、前記高密度ポリエチレンフィルムの成形時の押し出し方向が、開封時の引き裂き方向に沿う構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、水に強いだけでなく、全量をポリエチレンとしてリサイクルすることができ、しかも、積層気泡シートを用いて形成されるものでありながら、手で引き裂いて容易に開封することができる収納袋の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る収納袋の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】積層気泡シートの例を示す説明図である。
【図3】積層気泡シートの積層構造を説明する概略断面図である。
【図4】積層気泡シートの製造装置の一例を示す説明図である。
【図5】収納袋の製袋工程の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る収納袋の概略を示す説明図であり、図1(b)は、図1(a)に示す収納袋の開封状態を示している。
【0011】
本実施形態の収納袋1は、積層気泡シート2を用いて形成される。例えば、積層気泡シート2を二つ折りにし、その両側部をヒートシールすることにより、封筒形状の収納袋1を製袋することができる。
【0012】
収納袋1は、全ての層が、ポリエチレンフィルムを用いて形成される。ポリエチレンフィルムの材料となるポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、エチレン−酢酸ビニル重合体などが例示できる。また、これらの材料を任意に混合して用いてもよい。
【0013】
このように、収納袋1の全ての層をポリエチレンフィルムを用いて形成すると、表層を紙で形成した緩衝封筒などとの比較において、水に強いものとできる。また、使用後は、焼却処分することなく、全量をポリエチレンとしてリサイクルすることができる。
【0014】
図2は積層気泡シートの例を示す説明図であり、図2(a)は、二層気泡シートの構造を示す斜視図、図2(b)は、三層気泡シートの構造を示す斜視図である。本発明の収納袋1には、二層気泡シート2A、三層気泡シート2Bのいずれも用いることができる。二層気泡シート2Aは、中空状に膨出する多数のキャップ21が形成されたキャップフィルム22と、キャップフィルム22のキャップ開口側に積層されるバックフィルム23とを備える二層構造の積層気泡シート2であり、三層気泡シート2Bは、さらに、キャップフィルム22のキャップ膨出側にライナーフィルム24と積層した三層構造の積層気泡シート2である。
【0015】
製袋後における収納袋1の最表層は、押し出し成形された高密度ポリエチレンフィルム3を用いて形成される。例えば、図3(a)に示すように、二層気泡シート2Aのバックフィルム23を高密度ポリエチレンフィルム3としてもよいし、図3(b)に示すように、二層気泡シート2Aのバックフィルム23に高密度ポリエチレンフィルム3を積層してもよいし、図3(c)に示すように、三層気泡シート2Bのバックフィルム23を高密度ポリエチレンフィルム3としてもよいし、図3(d)に示すように、三層気泡シート2Bのライナーフィルム24を高密度ポリエチレンフィルム3としてもよいし、図3(e)に示すように、三層気泡シート2Bのバックフィルム23に高密度ポリエチレンフィルム3を積層してもよいし、図3(f)に示すように、三層気泡シート2Bのライナーフィルム24に高密度ポリエチレンフィルム3を積層してもよい。
【0016】
上記のような積層気泡シート2で収納袋1を形成する際には、高密度ポリエチレンフィルム3が最表層となり、かつ、高密度ポリエチレンフィルム3の成形時の押し出し方向が、開封時の引き裂き方向に沿うように積層気泡シート2の向きを設定する。つまり、フラットダイから押し出し成形される高密度ポリエチレンフィルム3は、押し出し方向に沿って分子が配向しやすく、幅方向に比べて容易に引き裂くことができる。したがって、高密度ポリエチレンフィルム3の成形時の押し出し方向を、開封時の引き裂き方向に沿わせると、収納袋1を手で引き裂いて容易に開封することが可能になる。その理由は、高密度ポリエチレンフィルム3によって引き裂き方向が正確にガイドされ、高密度ポリエチレンフィルム3と一体に積層された積層気泡シート2に引き裂き力が集中的に作用するからである。
なお、図1(a)中、高密度ポリエチレンフィルム3の押し出し方向(分子の配向方向)を二点鎖線で示す。
【0017】
収納袋1の引き裂き開始位置には、ギザギザカット部4を形成することが好ましい。例えば、図1に示すように、収納袋1の左右両側に形成されるヒートシール部分の全域をギザギザ形状とする。このようにすると、ギザギザカット部4を引き裂きの起点とし、収納袋1を容易に引き裂くことができる。また、収納袋1の左右両側にギザギザカット部4を形成した場合には、左右いずれからでも引き裂きが可能になり、さらに、高さ方向全域にギザギザカット部4を形成した場合には、任意の高さ位置で収納袋1を引き裂くことが可能になる。
【0018】
つぎに、本発明の実施形態に係る収納袋の製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。
【0019】
図4は、積層気泡シートの製造装置の一例を示す説明図であり、本発明の収納袋1に用いる積層気泡シート2は、この図に示すような製造装置5を用いて製造することができる。ここで、製造装置5で製造する積層気泡シート2は、図3(e)に示す積層構造を有するものであり、各層の材料の一例を挙げると、例えば、下記のものを用いることができるが、これに限定されない。
ライナーフィルム24:LDPE及び/又はLLDPE
キャップフィルム22:約30%のHDPE、残りはLDPE及び/又はLLDPE
バックフィルム23:約30%のHDPE、残りはLDPE及び/又はLLDPE
高密度ポリエチレンフィルム3:約100%のHDPE
【0020】
製造装置5は、四つのフラットダイ51〜54と、成形ロール55と、三つの押圧ロール56〜58を備えている。四つのフラットダイ51〜54は、それぞれ前述した樹脂材料を所定の厚みで押し出すことによって、フラット状のキャップフィルム22、バックフィルム23、ライナーフィルム24及び高密度ポリエチレンフィルム3が連続的に供給される。
【0021】
キャップフィルム用のフラットダイ51から供給されたフラット状のキャップフィルム22は、成形ロール55に供給される。成形ロール55には、外周面に多数の吸引孔551が設けられている。各吸引孔551は、図示しない真空ポンプにつながっており、吸引孔551を真空吸引することにより、キャップフィルム22に中空状に膨出する多数のキャップ21が形成される。
【0022】
キャップ21が形成されたキャップフィルム22は、成形ロール55と押圧ロール56との間で、バックフィルム用のフラットダイ52から供給されるバックフィルム23と、高密度ポリエチレンフィルム用のフラットダイ53から供給される高密度ポリエチレンフィルム3と積層され、熱融着により一体化される。その後、押圧ロール57と押圧ロール58との間で、ライナーフィルム用のフラットダイ54から供給されるライナーフィルム24が、キャップフィルム22のキャップ膨出側に積層され、熱融着により一体化される。これにより、収納袋1の製袋に用いる原反状態の積層気泡シート2が得られる。
【0023】
図5は、収納袋の製袋工程の一例を示す説明図であり、収納袋1は、原反状態の積層気泡シート2を二つ折りにし、収納袋1の両側部となる部分をシールバー6を用いてヒートシールした後、ヒートシール部分を切断することにより製袋することができる。ここで、原反状態の積層気泡シート2を二つ折りにする際には、高密度ポリエチレンフィルム3の押し出し方向、つまり、原反の繰り出し方向が開封時の引き裂き方向(収納袋1の幅方向)となるように、原反の幅方向に積層気泡シート2を二つ折りにする。これにより、手で引き裂いて容易に開封できる収納袋1が得られる。
【0024】
また、ヒートシール部分を切断する際には、ギザギザカット部4を形成する。ギザギザカット部4の形成は、ヒートシールの工程後、別の工程で行うようにしてもよいが、ヒートシールと同時に行うこともできる。例えば、シールバー6にギザギザ状の切断刃(図示せず)を組み込むことにより、ヒートシールと同時にギザギザカット部4を形成することが可能になる。
【0025】
以上のように構成された本実施形態の収納袋1によれば、積層気泡シート2を用いて形成される収納袋1であって、当該収納袋1の全ての層が、ポリエチレンフィルムを用いて形成されるとともに、製袋後の最表層が、押し出し成形された高密度ポリエチレンフィルム3を用いて形成され、さらに、高密度ポリエチレンフィルム3の成形時の押し出し方向が、開封時の引き裂き方向に沿う構成としてあるので、水に強いだけでなく、全量をポリエチレンとしてリサイクルすることができ、しかも、積層気泡シート2を用いて形成されるものでありながら、手で引き裂いて容易に開封することができる。
【0026】
また、収納袋1の引き裂き開始位置に、ギザギザカット部4を備えるので、ギザギザカット部4を引き裂きの起点とし、収納袋1を容易に引き裂くことができる。また、収納袋1の左右両側にギザギザカット部4を形成した場合には、左右いずれからでも引き裂きが可能になり、さらに、高さ方向全域にギザギザカット部4を形成した場合には、任意の高さ位置で収納袋1を引き裂くことが可能になる。
【0027】
また、積層気泡シート2が、中空状に膨出する多数のキャップ21が形成されたキャップフィルム22と、キャップフィルム22のキャップ開口側に積層されるバックフィルム23とを備える二層気泡シート2Aであり、バックフィルム23が、高密度ポリエチレンフィルム3を用いて形成される構成とした場合は、二層気泡シート2Aの特性を保ちつつ、最小限の積層構成で本発明の収納袋1を形成することができる。
【0028】
また、積層気泡シート2が、二層気泡シート2Aであり、バックフィルム23の外面側に、高密度ポリエチレンフィルム3が積層される構成とした場合であっても、二層気泡シート2Aの特性を保ちつつ、本発明の収納袋1を形成することができる。
【0029】
また、積層気泡シート2が、中空状に膨出する多数のキャップ21が形成されたキャップフィルム22と、キャップフィルム22のキャップ開口側に積層されるバックフィルム23と、キャップフィルム22のキャップ膨出側に積層されるライナーフィルム24とを備える三層気泡シート2Bであり、バックフィルム23及び/又はライナーフィルム24が、高密度ポリエチレンフィルム3を用いて形成される構成とした場合は、三層気泡シート2Bの特性を保ちつつ、最小限の積層構成で本発明の収納袋1を形成することができる。
【0030】
また、積層気泡シート2が、三層気泡シート2Bであり、バックフィルム23及び/又はライナーフィルム24の外面側に、高密度ポリエチレンフィルム3が積層される構成とした場合であっても、三層気泡シート2Bの特性を保ちつつ、本発明の収納袋1を形成することができる。
【0031】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、積層気泡シートを用いて形成される収納袋に適用される。特に、緩衝封筒に好適であるが、緩衝封筒以外の収納袋にも広く用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 収納袋
2 積層気泡シート
2A 二層気泡シート
2B 三層気泡シート
3 高密度ポリエチレンフィルム
4 ギザギザカット部
21 キャップ
22 キャップフィルム
23 バックフィルム
24 ライナーフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層気泡シートを用いて形成される収納袋であって、
当該収納袋の全ての層が、ポリエチレンフィルムを用いて形成されるとともに、製袋後の最表層が、押し出し成形された高密度ポリエチレンフィルムを用いて形成され、さらに、前記高密度ポリエチレンフィルムの成形時の押し出し方向が、開封時の引き裂き方向に沿うことを特徴とする収納袋。
【請求項2】
前記収納袋の引き裂き開始位置に、ギザギザカット部を備える請求項1に記載の収納袋。
【請求項3】
前記積層気泡シートが、
中空状に膨出する多数のキャップが形成されたキャップフィルムと、
前記キャップフィルムのキャップ開口側に積層されるバックフィルムと、を備える二層気泡シートであり、
前記バックフィルムが、前記高密度ポリエチレンフィルムを用いて形成される請求項1又は2のいずれか一項に記載の収納袋。
【請求項4】
前記積層気泡シートが、
中空状に膨出する多数のキャップが形成されたキャップフィルムと、
前記キャップフィルムのキャップ開口側に積層されるバックフィルムと、を備える二層気泡シートであり、
前記バックフィルムの外面側に、前記高密度ポリエチレンフィルムが積層される請求項1又は2のいずれか一項に記載の収納袋。
【請求項5】
前記積層気泡シートが、
中空状に膨出する多数のキャップが形成されたキャップフィルムと、
前記キャップフィルムのキャップ開口側に積層されるバックフィルムと、
前記キャップフィルムのキャップ膨出側に積層されるライナーフィルムと、を備える三層気泡シートであり、
前記バックフィルム及び/又は前記ライナーフィルムが、前記高密度ポリエチレンフィルムを用いて形成される請求項1又は2のいずれか一項に記載の収納袋。
【請求項6】
前記積層気泡シートが、
中空状に膨出する多数のキャップが形成されたキャップフィルムと、
前記キャップフィルムのキャップ開口側に積層されるバックフィルムと、
前記キャップフィルムのキャップ膨出側に積層されるライナーフィルムと、を備える三層気泡シートであり、
前記バックフィルム及び/又は前記ライナーフィルムの外面側に、前記高密度ポリエチレンフィルムが積層される請求項1又は2のいずれか一項に記載の収納袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−241448(P2010−241448A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90411(P2009−90411)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】