説明

収納部付き帽子

【課題】薄い物品の収納および取り出しが容易であり、しかも、外観的にも帽子本体の美観を損なわない収納部付き帽子を提供する。
【解決手段】本発明の収納部付き帽子は、帽子本体のクラウン下縁外周面に上端開口の収納部を設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帽子のつばの上方に多種類のコイン、紙幣または切符等を収納可能とした収納部付き帽子を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の収納を可能とした構造を有する帽子は多種存在する。例えば、特表平10−501312には、帽子本体の後頭部対応部分に収納袋を形成して、チャックにより開閉自在としている。その他にも、帽子本体のクラウン側面部分や頂部等に、袋体を形成したもの等、各種形状が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平10−501312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、帽子本体に物品を収納する際に、多種の物品を収納することのできる構造にすれば、勢い大がかりな構造としなければならず、帽子本体の着帽感触が損なわれたり、帽子機能に重量負荷がかかって使用しにくくなる等の欠点を有する。
【0005】
この発明は、帽子本体の収納部に収納する物品を薄い物品に限定して、収納しやすく、かつ取り出しやすく、しかも、外観的にも帽子本体の美観を損なわないようにした収納部付き帽子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の収納部付き帽子は、帽子本体のクラウン下縁外周面に上端開口の収納部を設けることとした。
【0007】
(2)また、本発明の収納部付き帽子は、前記上端開口の収納部の内部上端縁には、下端を自由端とした返し片を設けることとした。
【0008】
(3)また、本発明の収納部付き帽子は、前記上端開口の収納部をカバーリングするための環状帯体を前記帽子本体のクラウン下縁外周面に被覆自在に装着することとした。
【0009】
(4)また、本発明の収納部付き帽子は、前記上端開口の収納部は、上端開口の帯状の袋体に形成し、所定の幅員をもって複数の仕切壁を形成して収納部単体を隣接して設け、しかも前記収納部単体は、大きさを異なる形状とすることにより、収納物品の識別を指の触感で感知可能とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、帽子本体のクラウン下縁外周面に上端開口の収納部を設けたことにより、着帽したままで手を頭部に当てながら、クラウン下縁外周面の収納部から、簡単な操作手順で物品の出し入れが行える効果がある。また、帽子の外観を損なうこともなく、更には着帽時の違和感を無くする効果もある。
【0011】
請求項2の発明によれば、上端開口の収納部の内部上端縁には、下端を自由端とした返し片を設けたことにより、収納部単体中に収納したコイン等の物品が、帽子本体の着脱操作時や反転使用時に容易に排出されないようにする効果がある。
【0012】
請求項3の発明によれば、上端開口の収納部をカバーリングするための環状帯体を帽子本体のクラウン下縁外周面に被覆自在に装着したことにより、帽子本体の外観がスマートになり、更には、コイン等が落下することを防ぐことができるという効果がある。また、環状帯体による締め付け効果により、帽子の頭部の寸法との不調和を是正できるという効果がある。
【0013】
請求項4の発明によれば、上端開口の収納部は、上端開口の帯状の袋体に形成することにより、帽子のクラウン下縁外周面で頭部が緊締され、強風に当たっても着帽姿勢を損なうことが無いという効果がある。また、所定の幅員をもって複数の仕切壁を形成して収納部単体を隣接して設け、しかも収納部単体は、大きさを異なる形状とすることにより、収納物品の識別が指の触感で感知可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る収納部付き帽子の外観を示した図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明に係る環状帯体を備えた収納部付き帽子の外観を示した図である。
【図4】図3におけるB−B断面図である。
【図5】本発明に係る収納部付き帽子の収納帯体の構造を示した図である。
【図6】本発明に係る収納部付き帽子の他の実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る収納部付き帽子の外観を示した図である。符号1は帽子本体を示す。帽子本体1は、均等に頭部を被覆するクラウン2と、その下端開口縁に設けた環状のつば部3とより構成されている。
【0017】
本発明の実施例は、かかる帽子本体1のクラウン下縁外周面2aに収納帯体10を装着することにより、上端開口の収納部11を形成するものである。収納帯体10は、上端開口の帯状の袋体に形成し、その間に所定の大きさの複数の収納部単体11aを形成すべく、複数の仕切壁12を形成している。
【0018】
また、図2に示すように、収納帯体10の下端縁は収納帯体折返し縁10aとし、帽子本体1のクラウン下端縁2bの内側面に当接した帯状の汗取り帯5と、収納帯体折返し縁10aとの間にクラウン下端縁2bを介設して収納帯体縫合部10bで縫合することにより、収納帯体10と汗取り帯5とをクラウン2に装着している。
【0019】
このように、クラウン下端縁2bを汗取り帯5と収納帯体折返し縁10aとでサンドイッチ状態に縫合することにより、収納帯体縫合部10bが帽子本体1の内側表面に表れず、外観を損ねることが無い。
【0020】
なお、仕切壁12は、収納帯体10をクラウン下縁外周面2aに縫合することにより形成する縫合部(ミシン目)により構成しても良い。このような縫合部で仕切壁12を構成することにより、より強固に収納帯体10をクラウン2に対して固定することも可能となる。
【0021】
このような仕切壁12による縫合部についてもクラウン2の内側から汗取り帯5で被覆するよう構成することにより、外観を損なわずに済む。
【0022】
収納帯体10は、ゴムや柔らかい生地等の伸縮自在な素材により形成されている。従って、物品(例えば、コイン100)の収納時には当該物品が飛び出さないように閉じた状態を保つことが可能であり、物品の出し入れの際には、指で容易に開くことが可能である。
【0023】
収納帯体10の上端には返し片4の上端を縫合し、収納部11の内部上端縁11bに、当該返し片4を下方自由端として形成する。なお、当該下方自由端として形成した返し片4の先端部は、収納物品(コイン、紙幣や切符等)の上端部よりもやや上方に位置させることにより、当該納物品の取り出し容易性と、収納部11からの飛び出し防止性とのバランスを取っている。
【0024】
すなわち、返し片4は、収納部単体11a中に収納したコイン等の物品が、帽子本体1の着脱操作時や反転使用時に収納部単体11aから容易に排出しないようにしている。
【0025】
以上のように、帽子本体1のクラウン下縁外周面2aに上端開口の収納部11を設けたことにより、着帽したままで手を頭部に当てながら、簡単な操作手順でクラウン下縁外周面2aの収納部11から物品の出し入れを行うことができる。また、帽子の外観を損なうこともなく、更には着帽時の違和感を感じることも無い。
【0026】
なお、収納帯体10において収納部単体11aが存在しない部分がある場合は、当該部分に飾り50を設けて外観の美観を向上させても良い。
【0027】
図3は、本発明に係る環状帯体を備えた収納部付き帽子の外観を示した図である。
【0028】
上記実施例で説明した収納部単体11aを隣接して形成した収納帯体10に、外表面をカバーリングするための環状帯体6を被覆自在に設けている。なお、収納部11については、図3に示すように、各収納部単体11a間に一定の間隔を置いて、それぞれ独立の収納部単体11aとして構成しても良い。
【0029】
環状帯体6はゴムや柔らかい生地等の伸縮自在な素材により形成されている。そして、当該環状帯体6は、図4に示すように、クラウン下端縁2bと収納帯体折返し縁10aとの間に介設して、クラウン下端縁2bの内側面に当接した帯状の汗取り帯5とともに縫合することにより、収納帯体10、環状帯体6および汗取り帯5をクラウン2に装着している。
【0030】
当該縫合部におけるクラウン2の内側を汗取り帯5で被覆するとともに、汗取り帯折返し部5aで内側から縫合することにより、収納帯体縫合部10bが帽子本体1の内側表面に表れず、外観を損なうことが無い。
【0031】
さらに、仕切壁12は収納帯体10をクラウン下縁外周面2aに縫合することにより形成する縫合部(ミシン目)により構成しても良く、このような縫合部で仕切壁12を構成することにより、より強固に収納帯体10および環状帯体6をクラウン2に対して固定することが可能となる。
【0032】
このような仕切壁12による縫合部についてもクラウン2の内側から汗取り帯5で被覆するよう構成することにより、外観を損なわずに済む。
【0033】
また、図4に示すように、環状帯体6の上端縁側は収納帯体10の上端縁上方にまで伸延し、収納物品(例えば、コイン100や紙幣110)の収納時には、環状帯体6の上端縁側を下方に垂らすことにより、収納帯体10全体を外側から完全に被覆することを可能としている。
【0034】
このような構成とすることにより、収納帯体10の上端開口端を環状帯体6により閉塞して、コイン等の収納物品が帽子の反転使用時にこぼれ落ちないようにすることができ、外観的にも、収納物品により生じる収納部の凹凸を目立たなくすることができる。
【0035】
環状帯体6には一定の弾性機能を保持させておくことにより、図3(b)に示すように、下部をめくって、収納部単体11aの上端開口部からコイン等の収納物品を目視することなく手の感触のみで取り出すことができる。
【0036】
以上のように、上端開口の収納部11をカバーリングするための環状帯体6を帽子本体1のクラウン下縁外周面2aに被覆自在に装着したことにより、帽子本体1の外観がスマートになり、更には、コイン等が落下することを防ぐことができる。また、環状帯体6による締め付け効果により、帽子の頭部の寸法との不調和を是正できる。
【0037】
図5は本発明に係る収納部付き帽子の収納帯体の構造を示した図であり、図5(b)は収納帯体10の展開図を示したものである。
【0038】
本実施例においては、収納部単体11aを隣接して形成した収納帯体10は、図5(b)に示すように上端開口縁を山形に形成して、仕切壁12の間の収納部単体11aの収納容量(収納深さ)を収納帯体10の中央部から左右の末端側に向けて漸次変化させる。
【0039】
収納帯体10をこのような構成とし、例えば、収納深さが最も深い収納部単体11aを帽子本体1の前面に位置させ、コイン、折り畳んだ紙幣、切符等の収納物品のそれぞれの直径や幅の大きさを各収納部単体11aの収納深さに対応させて順番に収納しておくことにより、着帽したままコイン等を収納部から取り出す際、収納帯体10の上端開口縁に手で接触するだけで、山形の上端開口縁の傾斜状態に応じて収納部単体11aの大きさ(高さ)を手で感知することができ、収納袋に収納したコイン等の種類を察知することが可能となる。すなわち、収納帯体10の山形の上端開口縁に対する手の触感によって、収納コイン等の種類を感知して、所定のコイン等のつまみ出しを目視することなく行える。
【0040】
より具体的には、例えば、次のような収納方法が考えられる。まず、山形に形成した収納帯体10に6つの仕切壁12を設けることにより、最も深い収納深さを有する収納部単体11aを収納帯体10の中央に1つ形成するとともに、当該中央の収納部単体11aの左側および右側に、収納帯体10の末端側に向けて漸次収納深さを浅くした収納部単体11aをそれぞれ3つずつ形成し、4段階の収納深さを有する7つの収納部単体11aを設ける。
【0041】
そして、収納深さが最も深い中央の収納部単体11aに、四つ折りにした紙幣を収納する。2番目に深い収納深さを有する2つの収納部単体11aに、1,2番目に大きな直径を有する硬貨(500円硬貨および10円硬貨)を収納する。500円硬貨を収納した収納部単体11aの隣に位置する3番目に深い収納深さを有する収納部単体11aに、3番目に大きな直径を有する硬貨(100円硬貨)を収納する。10円硬貨を収納した収納部単体11aの隣に位置するもう1つの3番目に深い収納深さを有する収納部単体11aに、4番目に大きな直径を有する硬貨(5円硬貨)を収納する。100円硬貨を収納した収納部単体11aの隣に位置する最も浅い収納深さを有する収納部単体11aに、5番目に大きな直径を有する硬貨(50円硬貨)を収納する。そして、5円硬貨を収納した収納部単体11aの隣に位置するもう一つの最も浅い収納深さを有する収納部単体11aに、最も小さい直径を有する硬貨(1円硬貨)を収納する。
【0042】
このように、収納部単体11aの収納容量(収納深さ)を変化させて大きさを異なる形状とし、それぞれの収納容量に合わせて収納物品の収納場所を適宜設定しておくことにより、収納物品の識別を指の触感で感知可能とすることができる。
【0043】
図6は、本発明による収納部付き帽子の他の実施例を示した図である。
【0044】
本実施例では、収納容量を変化させて大きさの異なる形状とした複数の収納ポケット20を帽子本体1のクラウン下縁外周面2aに設けている。
【0045】
このような構成とすることにより、収納物品の識別を指の触感で感知することが可能となる。
【0046】
なお、上述した実施例の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施例に限定されることはない。このため、上述した実施例以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0047】
例えば、本実施例では環状のつば部3を有する帽子として説明を行ったが、必ずしも帽子本体1の周縁部全体につば部3を設ける必要は無く、帽子本体1のクラウン下縁外周面2aに収納部11を安定して固定可能な構造であれば良い。
【0048】
また、各種硬貨の収納方法についても上述の実施例に限定されることなく、使用状況に応じて、適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 帽子本体
2 クラウン
2a クラウン下縁外周面
4 返し片
6 環状帯体
11 収納部
11a 収納部単体
11b 内部上端縁
12 仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽子本体のクラウン下縁外周面に上端開口の収納部を設けたことを特徴とする収納部付き帽子。
【請求項2】
前記上端開口の収納部の内部上端縁には、下端を自由端とした返し片を設けたことを特徴とする請求項1に記載の収納部付き帽子。
【請求項3】
前記上端開口の収納部をカバーリングするための環状帯体を前記帽子本体のクラウン下縁外周面に被覆自在に装着したことを特徴とする請求項1または2に記載の収納部付き帽子。
【請求項4】
前記上端開口の収納部は、上端開口の帯状の袋体に形成し、所定の幅員をもって複数の仕切壁を形成して収納部単体を隣接して設け、しかも前記収納部単体は、大きさを異なる形状とすることにより、収納物品の識別を指の触感で感知可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の収納部付き帽子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28874(P2013−28874A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165448(P2011−165448)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511112951)株式会社パワードクター (1)
【出願人】(511183744)