説明

収縮フィルム用スチレン/ブタジエンブロックコポリマー混合物

a)5〜50重量%の、一種以上のコポリマーブロック(B/S)AからなるブロックコポリマーAであって、各ブロックが65〜95重量%の芳香族ビニルモノマー類と35〜5重量%のジエン類を含み、そのガラス転移温度TgAが40〜90℃の範囲であるブロックコポリマーA、b)芳香族ビニルモノマー類からなる少なくとも一種の硬質ブロックSと一種以上のコポリマーブロック(B/S)Bを有する95〜50重量%のブロックコポリマーBであって、各コポリマーブロックが20〜60重量%の芳香族ビニルモノマー類と80〜40重量%のジエン類を含み、またそのガラス転移温度TgBが−70〜0℃の範囲にあるブロックコポリマーB、c)0〜45重量%のポリスチレン又はAとB以外のブロックコポリマーC、及びd)0〜6重量%の可塑剤、からなる混合物、及びその収縮フィルム製造のための利用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)5〜50重量%の、一種以上のコポリマーブロック(B/S)AからなるブロックコポリマーAであって、各ブロックが65〜95重量%の芳香族ビニルモノマー類と35〜5重量%のジエン類を含み、そのガラス転移温度TgAが40〜90℃の範囲であるブロックコポリマーA、b)95から50重量%の、芳香族ビニルモノマー類からなる少なくとも一種の硬質ブロックSと一種以上のコポリマーブロック(B/S)BからなるブロックコポリマーBであって、各コポリマーブロックブロックが20〜60重量%の芳香族ビニルモノマー類と80〜40重量%のジエン類を含み、またそのガラス転移温度TgBが−70〜0℃の範囲にあるブロックコポリマーB、c)0〜45重量%のポリスチレン又はAとB以外のブロックコポリマーC、及びd)0〜6重量%の可塑剤からなることを特徴とする混合物、及び収縮フィルム製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン−ブタジエンブロックコポリマーの熱収縮フィルムとしての利用は、すでにEP−A058952又はEP−A436225の実施例に開示されている。フィルムを60〜100℃に加熱しながら500%以上延伸し、室温に冷却して、その延伸した状態を固定する。鞘状に加工した後、印刷したり、実施例に記載のように、ボトルの上にかぶせ、約70〜90℃の加熱トンネル中で再収縮させて、そのフィルムをボトルに固着させる。
【0003】
収縮フィルムは、加熱条件のおかれると収縮して元の寸法に戻るが、高い保存安定性(すなわち約20〜30℃の温度で収縮を示さないこと)を持つように設計されている。また、高い透明性を持つうえに高い剛性や強度を有するように設計されている。
【0004】
EP−A852240には、高温条件で配向すると30℃での自然収縮が小さくなるというスチレン−ブタジエンブロックコポリマーが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、保存安定性の高い高収縮性で高剛性/強度の熱収縮フィルムを与えるスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを提供することである。他の目的は、このフィルムが延伸及び収縮後でも高い透明性を保持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この結果、上記のブロックポリマーからなる混合物が見出された。
【0007】
この混合物は、好ましくは20〜40重量%のブロックコポリマーA、80〜60重量%のブロックコポリマーBと、0〜20重量%のポリスチレン又はAやB以外のブロックコポリマーCを含む。ブロックコポリマーAとB及び必要に応じて添加されるC以外に、この混合物は、比較的少量の他の熱可塑性ポリマー及び1〜6重量%の従来より使用されている可塑剤等の助剤を含んでいてもよい。使用する可塑剤は、0〜6重量%、好ましくは2〜4重量%の均一に混合可能なオイル又はオイル混合物であり、例えば、ホワイトオイル、アジピン酸ジオクチル、又はこれらの混合物である。混合物中のホワイトオイルの含有率が混合物当たり25〜35重量%の場合に、特に好ましい収縮値が得られる。
【0008】
ブロックコポリマーA
この混合物は、5〜50重量%の一種以上の、コポリマーブロック(B/S)AからなるブロックコポリマーAを含み、各ブロックは65〜95重量%の芳香族ビニルモノマー類と35〜5重量%のジエン類を含み、そのガラス転移温度TgAは40〜90℃の範囲にある。
【0009】
このコポリマーブロック(B/S)Aのガラス転移温度は、好ましくは50〜70℃の範囲である。ガラス転移温度は、コモノマー組成により変動し、示差走査分析(DSC)あるいは示差熱分析(DTA)により求めるか、フォックス式より計算する。このコポリマーブロック(B/S)Aは、好ましくは80〜90重量%のスチレンと10〜20重量%のブタジエンを含む。
【0010】
芳香族ビニルモノマー類とジエン類がランダムに分布したコポリマーブロック(B/S)Aを一種以上含むブロックコポリマーAが好ましい。例えば、これらのブロックは、テトラハイドロフランやカリウム塩などのランダム化剤の存在下で、アルキルリチウム化合物を用いてアニオン重合することにより得られる。このカリウム塩は、アニオン重合開始剤:カリウム塩の比で、25:1〜60:1の範囲で使用することが好ましい。こうすることで、生成するブタジエンユニット中の1,2結合の比率が自動的に小さくなる。
【0011】
ブタジエンユニット中の1,2結合の比率は、1,2、1,4−シス、及び1,4−トランス結合の合計当たり8〜15%の範囲であることが好ましい。
【0012】
ブロックコポリマーAは、単一のコポリマーブロック(B/S)Aからなるか、
例えばS−(B/S)A又はS−(B/S)A−Sのような直線構造(ただしいずれの場合も、Sは芳香族ビニルモノマーからなる硬質ブロックである)をとることが特に好ましい。同様に好ましいのは、n個の星状分枝を持つ星型ポリマー[(B/S)Anであり、これらのポリマーは、n官能性カップリング剤を用いたカップリング又はn官能性開始剤を用いた反応により得られる。好ましいカップリング剤の例として、エポキシ化アマニ油や大豆油などのエポキシ化植物油が挙げられる。この場合、得られる製品は3〜5分枝の星状物である。星状ブロックコポリマー[S−(B/S)Anもまた好ましい。
【0013】
しかし、ランダムポリマー(B/S)Aは、フリーラジカル重合で製造してもよい。
【0014】
コポリマーブロック(B/S)Aの重量平均分子量Mwは、一般的に50000〜400000g/molの範囲、好ましくは60000〜200000g/molの範囲、特に好ましくは100000〜160000g/molの範囲である。S−(B/S)AまたはS−(B/S)A−Sなどの構造では、各ブロックSの重量平均分子量Mwは、好ましくは15000〜45000g/molの範囲にある。上記のブロックSは、好ましくはスチレンユニットからなる。アニオン的に合成したポリマーの分子量は、モノマーの量と開始剤の量の比で調整される。しかし、モノマーの供給後に繰り返し開始剤を添加可能であり、その結果として、二項性又は多項性の分布が得られる。フリーラジカルルートで得られたポリマーでは、重合温度及び/又は重合度調整剤の添加で、Mwが調整される。
【0015】
ブロックコポリマーB
本発明の混合物は、芳香族ビニルモノマー類からなる少なくとも一種の硬質ブロックSと一種以上のコポリマーブロック(B/S)Bを有する95〜50重量%のブロックコポリマーBを含み、その各ポリマーブロックは、20〜60重量%の芳香族ビニルモノマーと80〜40重量%のジエン類を含み、またそのガラス転移温度TgBが−70〜0℃の範囲、好ましくは−65〜−20℃の範囲にある。
【0016】
特に好ましいブロックコポリマーBは、全ブロックコポリマー当たり60〜90重量%の芳香族ビニルモノマーと10〜40重量%のジエンを含む剛直なブロックコポリマーであり、芳香族ビニルモノマー、特にスチレンからなる硬質ブロックSとブタジエンやイソプレンなどのジエン類からなる軟ブロックBあるいはB/Sとからなる。70〜80重量%のスチレンと20〜30重量%のジエンからなるブロックコポリマーが特に好ましい。
【0017】
ブロックコポリマーBのコポリマーブロック(B/S)B中では、芳香族ビニルモノマー類とジエン類がランダム分布していることが好ましい。
【0018】
好ましいブロックコポリマーBは、少なくとも二つの分子量の異なる、芳香族ビニルモノマーからなる端末硬質ブロックS1とS2をもつ星形構造を有し、全硬質ブロックSの量が、全ブロックコポリマーBに対して少なくとも40重量%となる。(B/S)b−S2あるいはS1−(B/S)b−S2などの直線構造も可能である。端末ブロックSiの数平均分子量Mnは、好ましくは5000〜30000g/molの範囲であり、S2の数平均分子量Mnは、好ましくは35000〜150000g/molの範囲である。
【0019】
好ましいのは、端末スチレンブロックを持つ多項性のスチレン−ブタジエンブロックコポリマー、例えばDE−A2550227又はEP−A0654488に記載のブロックコポリマーである。
【0020】
特に好ましいのは、芳香族ビニルモノマーからなる少なくとも二つの硬質ブロックS1とS2とこれらの間に少なくとも一種の芳香族ビニルモノマー類とジエン類からなるランダム軟ブロック(B/S)Bを有するブロックコポリマーBである。なお、WO00/58380に記載のように、その硬質ブロックの比率は、全ブロックコポリマー当たり約40重量%であり、軟ブロックB/S中の1,2−ビニル含量は20%未満である。
【0021】
本発明の混合物は、透明性に優れ、特に収縮フィルムの生産に適している。また、保管中も安定で40℃〜50℃ではほとんど収縮しない。90〜100℃の範囲では収縮幅が大きく、したがって、プロセスの条件にあわせやすく、また丸く膨らんだ形状のものを封入することも可能となる。
【0022】
実施例
ブロックコポリマーA
B/S構造を有する直線状スチレン−ブタジエンブロックコポリマーA2〜A10の調整に当たり、それぞれ1.6mのシクロヘキサンを初期溶剤として使用し、sec−ブチルリチウム(BuLi)で終点まで滴定し、さらに表1に記載の量で開始剤のsec−ブチルリチウムとランダム化剤のカリウムtert−アミルアルコラート(PTA)とを用いて処理し、この混合物を40℃に冷却した。重合は、二回に分けて実施した。いずれの場合も、表1記載のスチレンとブタジエンの半量を同時に添加し、冷却しながら温度の上限を75℃に維持した。リビングポリマー分子鎖の成長をイソプロパノールを添加して終了させ、混合物をCO2/水で酸性とした後、安定化剤溶液を添加した。シクロヘキサンは真空乾燥器中で気化除去させた。
【0023】
S−(B/S)−S構造を持つ直線状スチレン−ブタジエンブロックコポリマーA1の調整に当たり、モノマーを三回に分けて添加し、400gのスチレンを、それぞれ中間(S/B)ブロック重合のための中間スチレン−ブタジエン添加の前後に添加し、完全に重合させて、端末スチレンブロックコポリマーを得た。この手順を繰り返して、表1記載のデータに対応するブロックコポリマーA2〜A10を得た。
【0024】
ブロックコポリマーA1〜A10の出発材料、構造、分子量を、表1に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
ブロックコポリマーB
ランダムコポリマーブロックB/Sを有する星形のブロックコポリマーB1(26重量%のブタジエン、74重量%のスチレン)を、WO00/58380の実施例15に準じて、スチレンとブタジエンの逐次アニオン重合と、それに続くエポキシ化あまに油でのカップリングにより調整した。
【0027】
シクロヘキサン中の固形物含量が約30重量%で、50〜80℃の範囲の温度で、表2のデータのように第1段と第2段とで二度開始剤(sec−ブチルリチウムBuLi)を供給する逐次アニオン重合を実施して、ブロックコポリマー混合物B2を調整した。重合終了後、イソプロパノールを終了用に、CO2/水を酸性化に用いた。ランダムS/Bコポリマーブロックを得るため、カリウムtert−アミルアルコラート(PTA)の存在下で、リチウム/カリウムのモル比が38/1で重合を行った。このブロックコポリマーを、16mmのベント式押出機中で溶媒から分離した。
【0028】
得られたブロックコポリマー混合物は、S1−(B/S)a−(B/S)b−S2構造(I)を持つ数平均分子量が約150000g/molのランダムコポリマーブロックと(B/S)a−(B/S)b−S3構造(II)を持つ数平均分子量が約75000g/molのランダムコポリマーブロックと有するブロックコポリマーを含有し、その(I)/(II)モル比は、開始剤比I1/I2に相当する。
【0029】
【表2】

【0030】
C成分
Mwが270000でMnが103000のBASF社の標準ポリスチレンPS158Kを、C成分として使用した。
【0031】
D成分
40℃で粘度が70センチストークスの薬用ホワイトオイルをD1成分として使用し、アジピン酸ジオクチル(プラスモールDOA、BASF社)をD2成分として使用した。
【0032】
混合物M1〜M22
各ブロックコポリマー混合物を、表5中に記載の重量部のブロックコポリマーA1〜A10、B1及びB2(M12用)、C成分(ポリスチレンPS158K)とD成分(ホワイトオイル、及び混合物M9〜M11の場合さらにアジピン酸ジオクチル)を押出機にて溶融して調整し、それをプレスして、フィルムを得た。
【0033】
比較試験c1〜c6
混合物のそれぞれを、表5中に記載の重量部のブロックコポリマーB1と、それぞれB2(c5用)と、さらにC成分とD成分とを押出機にて溶融して調整し、それをプレスしてフィルムを得た。これらはブロックコポリマーAを含んでいない。
【0034】
弾性率、引張応力や引張歪などの機械的特性は、ISO527に準じて測定し、その結果を表3にまとめた。
【0035】
フィルムを長さ8cm、幅1cmの短冊型に切り、引張試験機にて80℃で、前試験で求めた破断引張歪の近くまで延伸し、そのまま延伸状態で23℃まで冷却した。表4に示すように、収縮量は水槽中で90℃で10秒間処理した後求めた。表6に示すように、完全な収縮曲線も測定した。このために、フィルムを均一に4.5倍延伸し(c5の場合は3.5倍)、収縮量Sを10℃間隔で測定した。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5〜50重量%の、
それぞれ65〜95重量%の芳香族ビニルモノマー類と35〜5重量%のジエン類を含む一種以上のコポリマーブロック(B/S)Aを含み、且つガラス転移温度TgAが40〜90℃の範囲であるブロックコポリマーA、
b)95〜50重量%の、
芳香族ビニルモノマー類からなる少なくとも一種の硬質ブロックSと、それぞれ20〜60重量%の芳香族ビニルモノマー類及び80〜40重量%のジエン類を含む一種以上のコポリマーブロック(B/S)Bとを含み、且つガラス転移温度TgBが−70〜0℃の範囲にあるブロックコポリマーB、
c)0〜45重量%のポリスチレン又はAとB以外のブロックコポリマーC、及び
d)0〜6重量%の可塑剤
を含むことを特徴とする混合物
【請求項2】
a)20〜40重量%の前記ブロックコポリマーA、
b)80〜60重量%の前記ブロックコポリマーB、及び
c)0〜20重量%のポリスチレン又はAとB以外のブロックコポリマーCからなる
請求項1に記載の混合物
【請求項3】
前記ブロックコポリマーAのコポリマーブロック(B/S)Aの数平均分子量Mnが50000〜150000g/molの範囲にある請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーAのコポリマーブロック(B/S)Aのガラス転移温度が50〜70℃の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の混合物。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーAが一種のコポリマーブロック(B/S)Aを含む請求項1〜4のいずれかに記載の混合物。
【請求項6】
前記ブロックコポリマーAが、S−(B/S)a−Sの構造(ただし、Sは芳香族ビニルモノマーからなる硬質ブロックを示す)を有する請求項1〜4のいずれかに記載の混合物。
【請求項7】
前記ブロックコポリマーAとBにおけるコポリマーブロックの(B/S)A及び(B/S)Bが、ランダムに分布する芳香族ビニルモノマー類とジエン類を有する請求項1〜6のいずれかに記載の混合物。
【請求項8】
前記ブロックコポリマーBが、芳香族ビニルモノマーからなる端末硬質ブロックS1とS2を有し且つ分子量の異なる少なくとも2種の星形の構造を持ち、全硬質ブロックSの全星形ブロックコポリマーBに対する割合が40重量%である請求項1〜7のいずれかに記載の混合物。
【請求項9】
前記星形ブロックコポリマーBが、数平均分子量Mnが5000〜30000g/molの範囲の端末ブロックS1と数平均分子量Mnが35000〜150000g/molの範囲の端末ブロックS2とを有する請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の混合物を収縮フィルム製造のために用いる方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の混合物より製造された収縮フィルム。

【公表番号】特表2008−527123(P2008−527123A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550717(P2007−550717)
【出願日】平成17年12月31日(2005.12.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014166
【国際公開番号】WO2006/074819
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】