説明

収縮低減性ポーラスコンクリート及びその製造方法

【課題】乾燥収縮低減性に優れ、かつ高い曲げ強度を有するポーラスコンクリート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】収縮低減性ポーラスコンクリートは、セメント、粗骨材、粉末状混和剤及び水からなり、該粉末状混和剤はBET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を担持させてなる粉末状混和剤であり、該粉末状混和剤は該セメント100質量部に対して1.0〜5.0質量部の割合で含まれるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮低減性ポーラスコンクリート及びその製造方法に関し、特に建築外溝、駐車場、歩道、広場、公園、道路、河川の護岸及び緑化基盤等に用いることができ、高い曲げ強度を有する収縮低減性ポーラスコンクリート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポーラスコンクリートは、雨水の水はけが良く、吸音性に優れ、草木の植裁が可能であることから、建築外構、道路舗装、河川の護岸、緑化基盤等、様々な用途に用いられている一方、ポーラスコンクリートは、内部に空隙を有することから、通常のコンクリートに比べ曲げ強度が小さく、これまで交通量の多い道路舗装に適用することは困難であったが、近年、この強度面の問題を解決するため鋭意検討が進められた結果、優れた透水性と曲げ強度を有し交通量の多い道路舗装にも適用可能なポーラスコンクリートが開発・開示されてきている。
【0003】
例えば、特開平9−273105号公報(特許文献1)には、粗骨材と共に用いられるペーストまたはモルタルの配合量、構成成分等を特定してなる現場打ち透水性コンクリート舗装であって、該ペーストまたはモルタルが、セメントまたはセメントを含む粉体混合物と、該セメントまたはセメントを含む粉体混合物に対する重量比が0〜140%の細骨材と、該セメントまたはセメントを含む粉体混合物に対する重量比が0.5〜2.0%の高性能減水剤と、該セメントまたはセメントを含む粉体混合物に対する重量比が0.5〜5.0%の収縮低減剤と、収縮低減剤と水との合計量が該セメントまたはセメントを含む粉体混合物に対して重量比で16〜28%となる水とからなることを特徴とする現場打ち透水性コンクリート舗装が開示されている。
【0004】
また、特開2001−213673号公報(特許文献2)には、粗骨材と該粗骨材に対する容積比を特定したペースト又はモルタルとからなる組成物の混練物を型枠に投入して成形し、養生してなる早強型透水性コンクリート製品であって、上記ペースト又はモルタルとからなる組成物中にポリオキシアルキレン化合物と無水マレイン酸を必須とする共重合体を使用する早強型透水性コンクリート製品及びその車道用舗装法が開示されている。
【0005】
また、特開2004−107101号公報(特許文献3)には、セメント、粗骨材、混和材料及び水を混練することにより製造するポーラスコンクリートであって、上記混和材料として(メタ)アクリル酸系ポリマー(a)及びマレイン酸系ポリマー(b)を、(a)と(b)の合計100において(a)/(b)=20〜50/50〜80(質量比)の割合で含有する粉体を用いているポーラスコンクリートが開示されている。
【0006】
しかし、ポーラスコンクリートは、比表面積が大きく、セメントペーストもしくはセメントモルタルが少ないため、乾燥しやすいコンクリートであるので、時間の経過とともに収縮が発生してしまい、上記ポーラスコンクリート等も、その特徴的な構造から水分の逸散が大きく、また、セメントと水の水和反応などにより時間の経過と共に収縮が発生し、施工安定性が十分なものとはいえない。
【0007】
特に、コンクリート舗装版は、他のコンクリート構造物に比べて暴露面積が大きいため、降雨や日照等天候の影響を受けやすく、また、コンクリート舗装版は版厚に対して版長が大きいため、版の表面と底面の温度や湿度差に起因する版全体の反り変形を無視することはできない。
このため、舗装コンクリートには、曲げ強度が大きく、乾燥収縮が小さく、水和発熱が小さい等の物性が要求される。
【0008】
しかし、従来のポーラスコンクリート舗装現場では、温度や乾湿等の影響と考えられる横断方向のひび割れ(目地間の中央)、集水枡等の構造物の周りからひび割れが発生しているのが現状である。
これらは、目地間隔を短くすることや枡等構造物の周りに目地を設けることによってひび割れの抑制を図ることは可能性であるが対策としては十分なものではない。
【0009】
従って、特別な対策を必要とせず、材料自体が収縮低減性に優れるとともに高強度を有するポーラスコンクリートの実現が期待されている。
【特許文献1】特開平9−273105号公報
【特許文献2】特開2001−213673号公報
【特許文献3】特開2004−107101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決し、乾燥収縮低減性に優れ、かつ高い曲げ強度を有する、収縮低減性ポーラスコンクリートを提供することである。
また、本発明の目的は、上記本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートを効率よく製造することができる収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ポーラスコンクリートに特定の粉末状混和剤を特定量で配合することにより、上記課題を達成できるポーラスコンクリートが得られることを見出し、本発明に到達した。
具体的には、本発明の請求項1記載の収縮低減性ポーラスコンクリートは、セメント、粗骨材、粉末状混和剤及び水を含み、該粉末状混和剤はBET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を担持させてなる粉末状混和剤であり、該粉末状混和剤は該セメント100質量部に対して1.0〜5.0質量部の割合で含まれることを特徴とするものである。
【0012】
好適には、請求項2記載の収縮低減性ポーラスコンクリートは、前記請求項1記載の収縮低減性ポーラスコンクリートにおいて、上記粉末状混和剤が、記ケイ酸カルシウム水和物粉末100質量部に対して、収縮低減剤を0.01〜300質量部担持してなることを特徴とするものである。
【0013】
更に、好適には、請求項3記載の収縮低減性ポーラスコンクリートは、前記請求項1または2記載の収縮低減性ポーラスコンクリートにおいて、更に、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム及び石膏からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉体を含むことを特徴とするものである。
また更に好適には、請求項4記載の収縮低減性ポーラスコンクリートは、前記請求項1〜3いずれかに記載の収縮低減性ポーラスコンクリートにおいて、更に細骨材を含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項5記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法は、セメント100質量部に対して、粗骨材400〜550質量部及び、BET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を担持させてなる粉末状混和剤を1.0〜5.0質量部均一混合した後、水を水セメント比が20〜40質量%となるように添加して混練することを特徴とするものである。
なお、本明細書において、BET比表面積は、窒素ガスの吸着量に基づいて求めたBET法による比表面積を意味するものである。
【0015】
望ましくは、請求項6記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法は、請求項5記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法において、上記粉末状混和剤が、記ケイ酸カルシウム水和物粉末100質量部に対して、収縮低減剤を0.01〜300質量部担持してなるものである。
【0016】
更に望ましくは、請求項7記載の収縮低減性ポーラスコンクリートは、請求項5または6記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法において、更に、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム及び石膏からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉体を50質量部以下で、該粉末状混和剤とともに混合することを特徴とするものである。
更に、望ましくは、請求項8記載の収縮低減性ポーラスコンクリートは、請求項5〜8いずれかの項記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法において、更に細骨材を100質量部以下の割合で含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートは、従来のポーラスコンクリートと比較して、優れた収縮低減性を有するともに、高い曲げ強度を備えることが可能となる。
ここで曲げ強度とは「舗装設計施工指針(社団法人 日本道路協会)」で規定されている設定基準曲げ強度4.4MPa以上を満足することができるものを高強度とする。
本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法は、前記本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートを効率よく製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を以下の最良の形態例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のポーラスコンクリートは、セメント、粗骨材、粉末状混和剤及び水を含み、該粉末状混和剤はBET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低願剤を担持させてなる粉末状混和剤であり、該粉末状混和剤は該セメント100質量部に対して1.0〜5.0質量部の割合で含まれる。
このように、特定の粉末状混和剤を特定の割合で用いることで、収縮低減性に優れるとともに、上記規定の高強度を保持することができるものとなる。
【0019】
本発明のポーラスコンクリートに含まれるセメントとしては、セメントの種類は特に限定されず、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、シリカセメント及びフライアッシュセメントの各種混合セメントや、白色ポルトランドセメント及びアルミナセメント、超速硬セメント等、市場で入手できる種々のセメントを例示することができ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
また、本発明で使用するセメントには、長期強度の向上等のため、ポゾラン活性を有する材料である高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、石灰石粉末、石英粉末、二水石膏、半水石膏、I型及びII型及びIII型無水石膏等の混和材を、単独でもしくは併用して、適量配合することも可能である。
【0020】
また、本発明のポーラスコンクリートには、粗骨材が含有され、更に好ましくは細骨材も含有されるが、これらの粗骨材や細骨材の種類は、特に限定されるものではない。
粗骨材としては、例えば、粒径2.5〜40mmの砂利、砕石等の公知の粗骨材、これらの混合物や軽量骨材等が挙げられる。
また、細骨材としては、山砂、川砂、陸砂、砕砂、海砂、珪砂3〜7号等の比較的粒径の細かい細骨材、または珪石粉、石灰石粉等の微粉末等の公知の細骨材やこれらの混合物を使用できる。
その配合割合は、上記セメント100質量部に対して、粗骨材を400〜500質量部、好ましくは450〜500質量部、そして好適に含有される細骨材を0〜100質量部、好ましくは35〜65質量部で配合する。
かかる範囲で配合することで、粗骨材の周囲がセメントで、好ましくはセメントと細骨材で被覆されることとなり、骨材とセメント等の結合材との付着が良好となる。
従って、接点でセメントペーストまたはセメントモルタルが不足する現象がなくなるため、良好な品質を確保することができる。
【0021】
本発明のポーラスコンクリートに含まれる粉末状混和剤としては、BET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末を担体とし、当該ケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を担持したものを、上記セメント100質量部に対して1.0〜5.0質量部の割合で含む。
【0022】
ここで、上記粉末状混和剤の担体であるケイ酸カルシウム水和物粉末としては、BET比表面積30m/g以上のものを用いることが必要であり、好ましくは収縮低減剤の担持容量が大きなBET比表面積60m/g以上のものを用いる。
このような範囲のBET比表面積を有するケイ酸カルシウム水和物粉末を担体として用いることで、珪酸カルシウム水和物粉末の単位あたりの収縮低減剤の担持量を多くすることができるという利点を有する。
【0023】
ケイ酸カルシウム水和物粉末としては、公知の合成ケイ酸カルシウム水和物及び天然ケイ酸カルシウム水和物から選ばれる少なくとも1種の粉末を用いることができ、合成ケイ酸カルシウム水和物としては、例えば、石灰原料と珪酸原料とから水熱反応により得られるゾノトライト、トバモライト、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、ローゼンハナイト、トラスコタイト、リエライト、カルシオコンドロダイト、アフィライト、準結晶質珪酸カルシウム水和物(CSH)等が挙げられる。
また、ケイ酸カルシウム水和物粉末は、ケイ酸カルシウム水和物の1次粒子(単結晶)であってもよいし、1次粒子が三次元的に絡み合った凝集物(2次粒子)であってもよい。
【0024】
また、上記収縮低減剤としては、有効成分として、例えば、アルキレンオキシド重合物、グリコールエーテル系化合物、メタノール、エタノール等の低級アルコールアルキレンオキシド付加物等の少なくとも一種を含むものが挙げられる。
【0025】
該収縮低減剤は、水溶液の状態で市販されている収縮低減剤であればそのまま使用するか、或いは適量の水と混合することにより使用することができ、また、粉末の状態で市販されている収縮低減剤を水に溶解して用いることもできる。
【0026】
収縮低減剤水溶液に含まれる収縮低減剤自体の量(有効成分量)は特に限定されず、必要に応じて適宜設定でき、通常、該当する収縮低減剤の飽和水溶液に含まれる有効成分量の0.1〜100質量%程度、好ましくは1〜100質量%程度、より好ましくは10〜100質量%程度とすればよい。
なお、必要に応じて、2種以上の有効成分を含む収縮低減剤水溶液を用いてもよい。
【0027】
上記粉末状混和剤において、BET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に対する収縮低減剤の担持量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、好適には、ケイ酸カルシウム水和物粉末100質量部に対し、収縮低減剤が、有効成分量として、0.01〜300質量部、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは70〜100質量部担持されていることが、粉末状混和剤の取扱い易さと乾燥収縮低減効果の点から望ましい。
【0028】
さらに、該粉末状混和剤の粉末の粒子径は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、通常、ケイ酸カルシウム水和物の1次粒子程度とすることが好ましく、具体的には平均粒径が、通常1〜200μm程度、好ましくは2〜100μm程度、より好ましくは2〜50μm程度である。
なお、前記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(製品番号;マイクロトラックSRA7995‐10、日機装株式会社製)により測定した値である。
【0029】
上記粉末状混和剤は、吸湿に対して優れた抵抗性を有しており、保存時の安定性が高く、取扱いが容易であり、且つ混和剤としての性能にも優れているものであり、当該粉末状混和剤を用いることによって、種々の混和剤を含むプレミックス製品を調製することができこととなる。
【0030】
また、本発明に用いる粉末状混和剤は、水等の液相と混合した場合には、担持有効成分を素早く溶出し、混和剤としての効果を発揮でき、特に、pH10〜13程度のアルカリ性雰囲気の液相において、有効成分の溶出性に優れているので、コンクリートの製造において、コンクリート組成物の液相中に担持有効成分を充分に溶出することができる。
そして、有効成分を溶出した後に残るケイ酸カルシウム水和物は、セメント組成物の水和生成物の一種であるので、コンクリート硬化体中において不純物とならない利点も有する。
【0031】
上記粉末状混和剤の製造方法は、担体であるBET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤が担持されてなる粉末状混和剤が得られる製造方法であればよく、例えば、BET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を含浸させ、乾燥させた後、得られる固形物を解砕する方法が好適である。
【0032】
ケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤水溶液を含浸させる方法は特に限定されず、通常は、収縮低減剤水溶液にケイ酸カルシウム水和物粉末を浸漬する方法、ケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤水溶液を噴霧する方法等によって含浸することができる。
その他、ケイ酸カルシウム水和物のスラリーに収縮低減剤を添加して混合する方法、ケイ酸カルシウム水和物製造時に、ケイ酸カルシウム水和物の原料に収縮低減剤を混合する方法等によっても含浸させることができる。
【0033】
このように収縮低減剤を含浸させた後、ケイ酸カルシウム水和物を乾燥させるが、乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥及び加熱乾燥のいずれでもよい。
加熱乾燥する場合は、通常40〜150℃程度、好ましくは70〜120℃程度で1〜48時間程度、好ましくは2〜24時間程度行えばよい。
乾燥させた後、得られた固形物を解砕することで、本発明に用いる上記粉末状混和剤が得られる。
この解砕方法としては特に限定されず、公知のピンミル、ケージミル、ディスクミル等の解砕機を用いて、好ましくは、前記した所定の粉末の大きさとなるように解砕すればよい。
【0034】
このようにして得られた粉末状混和剤は、本発明の収縮低減性ポーラスコンクリート中、上記セメント100質量部に対して1.0〜5.0質量部、好ましくは2.0〜4.0質量部の割合で混合される。
かかる配合割合で含有されることにより、収縮低減性に優れるとともに高い曲げ強度を有するポーラスコンクリートが製造できる。
【0035】
更に、本発明のポーラスコンクリーには、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム、石膏、粘土鉱物及び石粉類からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉体を含むことも可能である。
これらの無機粉体を用いる場合、セメント100質量部に対して無機粉体の割合は50質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは、30質量部以下とすることが強度及びコストの点から好ましい。
これらの無機粉体は、例えば、セメント、細骨材等と混合してプレミックス製品を調製することで、多様なプレミックス製品が得られ、コンクリートの製造効率の向上に一層寄与することができる。
【0036】
更に、本発明のポーラスコンクリートには、各種添加剤を必要に応じて、配合することができる。
各種添加剤としては、コンクリート組成物を調製する際に添加される公知の添加剤であれば、用途に応じて添加することができ、例えば、凝結遅延剤、硬化促進剤、消泡剤、防錆剤、防凍剤、着色剤などの混和材や、耐久性を向上させるための炭素繊維や鋼繊維などの補強材を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0037】
本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートは、原材料である上記セメント、粗骨材、粉末状混和剤及び水、必要に応じて上記公知の無機粉体等の添加剤、細骨材を所定量混合して製造することができるものである。
この混合の条件、混合機の種類などに限定はなく、それぞれの材料を施工時に混合して用いてもよいし、予め、その一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存の任意の装置が使用可能であり、例えば、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、ナイタミキサ、傾動ミキサ等のセメント用ミキサ、ハンドミキサ、ポットミルなどの慣用の混合機を用いることができる。
混練方法は特に限定はなく、例えば材料を一括してミキサに投入して混練する方法、水以外の材料をミキサに投入して空練りした後に水を投入して混練する方法等が挙げられる。
【0038】
また、使用する混練水の量は、使用する材料の種類や配合により変化させることができるため、一義的に決定されるものではないが、通常、水/セメント比で20〜40質量%、好ましくは、25〜35質量%であることが、優れた作業性と強度発現性の点から望ましい。
なお、本発明における水/セメント比を算出する際の水には、別途添加する水のほかに、添加剤等に水が含まれる場合には、これらに含まれる水も含むものである。
【0039】
本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートは、JIS A 1129に準拠した長さ変化試験方法で測定した長さ変化率が、材齢91日で−400×10−6以内であり、収縮低減性に優れるとともに、かつ「舗装設計施工指針(社団法人 日本道路協会)」で規定されている設定基準曲げ強度4.4MPa以上の値を有し、高強度を備えることが可能となる。
【実施例】
【0040】
本発明を次の実施例及び比較例により更に詳細に説明する。
使用材料
実施例及び比較例において、以下の材料を用いた。
(1)セメント:早強ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)
(2)細骨材:川砂(千葉県利根川産)
(3)粗骨材:道路用6号砕石(茨城県岩瀬産)
(4)混和剤A :収縮低減剤(商標名「レオソルブ703B」ライオン株式会社製)を、BET比表面積100m/gのケイ酸カルシウム水和物粉末に担時した粉体(但し、下記の調製方法により調製したもの)
(5)混和剤B:収縮低減剤(商標名「レオソルブ703B」ライオン株式会社製)
(6)水:上水道水
【0041】
但し、上記(4)混和剤Aは以下のようにして調製したものを用いた。
収縮低減剤(商標名「レオソルブ」ライオン株式会社製)を有効成分として30質量%含む水溶液80g(有効成分量24g)を、BET比表面積100m2/gのケイ酸カルシウム水和物粉末10gに含浸させた後、100℃で10時間乾燥して固形分34gを得た。
次いで、当該固形分を解砕し、上記粉末状混和剤を製造した。
なお、上記BET比表面積は、自動比表面積測定装置(装置製品番号;BELSORP‐miniII、日本ベル株式会社製)で測定した値である。
また、該粉末状混和剤の平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布計(装置製品番号;マイクロトラックSRA7995‐10、日機装株式会社製)で測定したところ、35μmであった。
【0042】
実施例1〜3・比較例2〜3
上記各材料を以下の表1に示す配合割合で用いて、各ポーラスコンクリートを調製した。
具体的には、二軸強制練りミキサ(製品番号;170069、大平洋機工株式会社製、容量55L)に、水以外の上記各材料を投入して、30秒間の空練りを行った後、水を投入して90秒間混練りを行って、均一なコンクリートを調製した。
【0043】
比較例1
上記各材料を以下の表1に示す配合割合で用いて、ポーラスコンクリートを調製した。
具体的には、二軸強制練りミキサ(製品番号;170069、大平洋機工株式会社製、容量55L)に、水及び混和剤B以外の上記各材料を投入して、30秒間の空練りを行った後、水と混和材Bを投入して90秒間混練りを行って、均一なコンクリートを調製した。
【0044】
なお、上記実施例1〜3及び比較例における配合割合は、空隙率を17.5%と設定(設定空隙率)して、各材料を配合した配合割合を示すものである。
また、設定空隙率は、計算上の空隙率を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
試験例1〜3
上記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた各コンクリートを以下の試験に供し、評価した。
その結果を表2に示す。
【0047】
(試験例1:曲げ強度)
各コンクリートの材齢7日後の曲げ強度を、JIS A 1106に準拠した曲げ強度試験方法で行った。
【0048】
(試験例2:長さ変化率)
各コンクリートの材齢7日後、28日後、91日後の長さ変化率を、JIS A 1129に準拠した長さ変化試験方法で行った。
【0049】
【表2】

【0050】
上記表2の結果から、本発明の実施例1〜3の収縮低減性ポーラスコンクリートは、経時的な長さ変化が小さく収縮低減性に優れるとともに、曲げ強度が、舗装設計施工指針(平成13年12月・社団法人 日本道路協会)に記載された舗装用コンクリートの設計基準曲げ強度4.4MPa以上を満足するものであることがわかる。
【0051】
一方、本発明外の比較例1及び3のコンクリートは、上記コンクリート設計基準曲げ強度4.4MPa以上を満足することができず、また、比較例2のコンクリートは、長さ変化率が大きく、収縮低減性に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の収縮低減性ポーラスコンクリートは、建築外溝、道路舗装、河川の護岸、緑化基盤等、種々の用途に適用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、粗骨材、粉末状混和剤及び水を含み、該粉末状混和剤は、BET比表面積30m2/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を担持させてなる粉末状混和剤であり、かつ、該セメント100質量部に対して1.0〜5.0質量部の割合で含まれることを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリート。
【請求項2】
請求項1記載の収縮低減性ポーラスコンクリートにおいて、上記粉末状混和剤は、該ケイ酸カルシウム水和物粉末100質量部に対して、該収縮低減剤を0.01〜300質量部担持してなることを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリート。
【請求項3】
請求項1または2記載の収縮低減性ポーラスコンクリートにおいて、更に、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム及び石膏からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粉体を含むことを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリート。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの項記載の収縮低減性ポーラスコンクリートにおいて、更に細骨材を含むことを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリート。
【請求項5】
セメント100質量部に対して、粗骨材400〜500質量部及び、BET比表面積30m/g以上のケイ酸カルシウム水和物粉末に収縮低減剤を担持させてなる粉末状混和剤を1.0〜5.0質量部均一混合した後、水を水セメント比が20〜40質量%となるように添加して混練することを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法において、上記粉末状混和剤は、上記ケイ酸カルシウム水和物粉末100質量部に対して、低減収縮剤を0.01〜300質量部担持してなることを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法において、更に、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム及び石膏からなる群より選ばれる少なくとも1種を50質量部以下の割合で、該粉末状混和剤とともに混合することを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7いずれかの項記載の収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法において、更に、細骨材を100質量部以下の割合で含むことを特徴とする、収縮低減性ポーラスコンクリートの製造方法。














【公開番号】特開2008−222518(P2008−222518A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65664(P2007−65664)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】