説明

収量予測装置およびコンピュータプログラム

【課題】 生育が水温に依存するという有用生物(たとえば藻類)の生産予測の技術を提供する。
【解決手段】 藻類を培養する候補地の過去の気温データを蓄積する候補地データベースと、 藻類を培養する候補地における実測気温データを含む候補地気温等データを入力する候補地データ入力手段と、 その候補地気温等データおよび候補地データベースに蓄積されたデータを用いて候補地の予測水温を算出する候補地水温演算手段と、 藻類における種類毎の収量および水温の関係をデータベース化して蓄積する藻類育成データベースと、 その藻類育成データベースおよび前記の予測水温を用いて予想収量を演算する収量演算手段と、 演算した予想収量を出力する出力手段と、を備えた収量予測装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用生物、たとえば藻類を生産する際の収量を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な藻類を培養して活用する技術は古くからあるが、近年では燃料へ変換するという技術が確立してきた。
藻類を含有した健康食品などの場合には、付加価値を高める製品製造が可能であり、それゆえ高コストな培養が許容できる。
しかし、藻類燃料化を商業として成立させるには、大幅な効率化が必要である。 競合する石油資源などの既存燃料の価格が比較対象となるため、藻類の培養は数キロ平方メートルの培養池といった大規模生産によらなければ経済的に成り立たず、かつエネルギ収支も向上させることができない。
したがって、藻類を燃料化するプラント運営には、低コスト・低エネルギとなる設計および運転が求められている。
【0003】
田畑での食用植物培養における生産性は、栽培地ごとに大きな差はない。例えば寒冷地で一毛作、温暖地で二毛作といった程度である。
しかし、藻類の生育は、数日から一週間程度にて一回の収穫が可能であるため、年間数十回の収穫を行うこととなる。 また、藻類の種類に応じて最適水温は異なるものの、水温に大きく依存することが判明している。
したがって、水温条件が、生産収量と生産した燃料価格に大きな影響を与えることとなる。
【0004】
さて、培養に用いる水の水温は、生産拠点との相関関係が高い。水温を調整しなければならないとなると、そのためのエネルギが必要となってしまい、生産コストが上昇してしまう。
よって、最適な水温が得られない生産拠点を選択してしまうと、生産効率が低下し、経済的に成り立たなくなってしまうおそれがある。 当該生産拠点にて得られる水温に適した藻類の選択によって、ある程度の調整は可能であるが、その調整にも限界があるためである。
【0005】
さて、本願に関連する先行技術としては、市場の農産物価格に応じて栽培する作物を決定する技術が、古くから開示されており、たとえば、特許文献1には、農業経営支援システムが開示されている。
また、特許文献2には、気象に応じて行うべき農作業をデータベースから選択して提示する技術が開示されている。
また、特許文献3には、微生物や植物を人工培養する際に培養環境を最適制御するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−189773号公報
【特許文献2】特開平11−346578号公報
【特許文献3】特開2010−22331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生産性の低い培養地点では、培養池面積や付随するコストが膨らんでしまう。したがって、コスト対効果を可能な限り正確に予測しなければならない。
すなわち、有用生物の生産性に関する予測、更には立地・建設予算などの燃料生産事業計画を策定には、最適な水温が得られそうな有用生物の生産地を想定しての生産シミュレーションが必要である。
しかし、前述した特許文献1〜3に開示された技術またはそれらを応用する技術では、有用生物に関する生産シミュレーションは行えない。
【0008】
さて、有用生物のほとんどは、培養における水温に適正範囲が存在する。その一方、気温データは世界各地で測定されているが、海や湖を除き、その土地における水温を測定してデータを蓄積している例は極めて少ない。
そこで、本発明が解決すべき課題は、水温に生育が依存するという有用生物の特徴に合わせた、生産を予測する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第一の発明)
第一の発明は、有用生物を培養する候補地における藻類培養によるエネルギ収量を予測するための装置に係る。
すなわち、 有用生物を培養する候補地の過去の気温データを蓄積する候補地データベースと、 有用生物を培養する候補地における実測気温データを含む候補地気温等データを入力する候補地データ入力手段と、 その候補地気温等データおよび候補地データベースに蓄積されたデータを用いて候補地の予測水温を算出する候補地水温演算手段と、 有用生物における種類毎の収量および水温の関係をデータベース化して蓄積する生物育成データベースと、 その生物育成データベースおよび前記の予測水温を用いて有用生物の予想収量を演算する収量演算手段と、 その収量演算手段が演算した予想収量を出力する出力手段と、を備えた収量予測装置である。
【0010】
(用語説明)
「有用生物」とは、培養に適した生物であって、エネルギ資源となる藻類などの生物、食品や食物となる生物、などである。いわゆる微生物も含まれる。
「候補地」とは、藻類の培養を行う予定地としての地名である。 気温の測定が年間を通して行われていることが望ましい。
「候補地の過去の気温データ」とは、たとえば、過去数年の記録から算出された月別の平均気温、前年度の記録から算出された月別の平均気温、などである。
「候補地データベース」とは、予めハードディスクなどの記録媒体に記録されたデータベースのほか、所定のデータをダウンロードして一時的にランダムアクセスメモリに記憶されているデータ群をも含む。
【0011】
(作用)
候補地データベースには、有用生物を培養する候補地の過去の気温データを蓄積し、生物育成データベースには、有用生物における種類毎の収量および水温の関係をデータベース化して蓄積する。
候補地データ入力手段が、有用生物を培養する候補地における実測気温データを含む候補地気温等データを入力する。 そして、入力されたその候補地気温等データおよび候補地データベースに蓄積されたデータを用いて、候補地水温演算手段が候補地の予測水温を算出する。
前記の生物育成データベースおよび前記の予測水温を用いて、収量演算手段が予想収量を演算する。 演算した予想収量は、出力手段が出力する。
入力した候補地についての予想収量は、培養地の選定の参考データとして有用である。
【0012】
(第一の発明のバリエーション)
第一の発明は、 太陽光発電装置と、 その太陽光発電装置によって発電される発電量を記録する発電量データベースとを備え、 前記の収量演算手段は、前記の発電量のデータをも用いて有用生物の予想収量を演算することとしてもよい。
【0013】
太陽光発電装置による発電量は、日照時間と相関関係がある。日照時間は、水温とともに有用性物の培養における収量に影響のあるデータであるので、発電量に関するデータ取得をすることによって、予想収量に関する精度の向上が期待できる。
【0014】
(第二の発明)
第二の発明は、 藻類を培養する候補地における藻類培養によるエネルギ収量を予測するためのコンピュータプログラムに係る。
そのプログラムは、 有用生物を培養する候補地の過去の気温データを候補地データベースに蓄積する候補地データ記憶手順と、 有用生物における種類毎の収量および水温の関係をデータベース化して生物育成データベースに蓄積する藻類育成データ記憶手順と、 有用生物を培養する候補地における実測気温データを含む候補地気温等データを入力する候補地データ入力手順と、 その候補地気温等データおよび候補地データベースに蓄積されたデータを用いて候補地の予測水温を算出する候補地水温演算手順と、 前記の生物育成データベースおよび前記の予測水温を用いて予想収量を演算する収量演算手順と、 その収量演算手順にて演算した予想収量を出力する出力手順と、 をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0015】
(第二の発明のバリエーション)
第二の発明は、以下のようにすることもできる。
すなわち、太陽光発電装置によって発電される発電量を発電量データベースに記録する発電量データ蓄積手順を備えることとし、 前記の収量演算手順では、発電量データベースに記録された発電量をも用いて有用生物の予想収量を演算することとする。
【0016】
第二の発明は、ハードディスクやDVD−Rなどの記録媒体に保持させて提供することもできる。
また、通信回線を介してパーソナルコンピュータのハードディスクなどへ送信して提供することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、水温に生育が依存するという有用生物の特徴に合わせた、生産を予測する技術を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】実施形態の主要なアルゴリズムを示すフローチャート1である。
【図3】実施形態において用いるデータベースの一部を示す表の例示である。
【図4】実施形態において用いるデータベースの一部を示す表の例示である。
【図5】実施形態におけるインタフェイス1を示す画面表示例である。
【図6】インタフェイス1を用いた場合のアルゴリズムを示すフローチャート2である。
【図7】図6に示すフローチャートを用いたアウトプットまでを示すフローチャート3である。
【図8】実施形態におけるインタフェイス2を示す画面表示例である。
【図9】出力される表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳しく説明する。ただし、本発明は、実施形態の態様に限られるものではない。
本実施形態は、気温から水温を予測し算出する手段と、各培養候補地の予測水温から藻類の予測生産量と予測コストを算出する演算装置であり、キーボードやマウスからなる入力装置、CPU、記憶装置(ハードディスクドライブ、ランダムアクセスメモリ等)、出力ディスプレイ等から構成される計算機である。
【0020】
(図1)
図1は、本実施形態をブロック図としたものである。
ハードディスクドライブには、候補地データベースと藻類育成データベースとが、予め記録されている。
候補地データベースとは、藻類を育成する候補地の緯度、過去の月別平均気温などが候補地毎に記録されたものである。
【0021】
藻類育成データベースとは、藻類毎に最適育成条件が記憶されたものである。複数の藻類を組み合わせた場合についても記録されている。 これは、培養実験を実行した結果に基づくデータであり、図3において一部を例示している。
【0022】
候補地気温等データ入力手段とは、データ受信手段やキーボードなどの入力手段を用いて、候補地の地名を含むデータを入力する手段である。
データ受信手段は、所定のデータ提供サービスから所定のデータをダイレクトに受信する場合の他、インターネット上に公開されているデータベースからダウンロードする、という方法で入力する場合もある。 たとえば、天気予報データベースにおける直近の実測気温、実測水温などである。
【0023】
候補地水温演算手段とは、候補地気温等データ入力手段において入力された候補地において、藻類を培養する場合の水温を推定して演算する手段である。 具体的には、以下のような演算式による。
候補地の推定水温(n) = a × 気温(n) + b × 緯度 + 定数項・・・(式1)
上記の式において、「n」は月番号を示すための変数である。
【0024】
候補地水温演算手段にて候補地の推定水温が算出できたら、藻類育成データベースのデータを用いて、収量演算手段にて単位面積あたりの予測収量を演算する。 予測収量とともに、予測コスト(単位エネルギを生産するのに必要なコスト)を演算することとしても良い。
【0025】
(図2)
図2に基づいて、図1に示した各構成がどのような手順にて藻類の予測生産量と予測コストを算出するかを説明する。
まず、図4(a)に示すような実測された過去5年ほどの平均気温および平均水温と、図4(b)に示すような測定地の緯度データとを読み出し、上記の式1にて回帰分析し、係数aおよびbを算出する。
【0026】
データ入力手段にて入力された候補地の地名に該当する候補地の緯度、過去の平均気温などを候補地データベースから読み出す。
前記の式1および前ステップにて読み出した予測対象候補地の実測平均気温と緯度から、所定の月の予測水温値を算定し、図4(c)に示す「予測水温」の欄へ算定値を記録する。 このステップを月別に繰り返し、更に、候補地名ごとに繰り返して予測水温を算出し、記録する。
【0027】
式1においては、気温と緯度を回帰分析の説明変数としたが、これに加えて標高、日射量、湿度などを設定してもよい。また、回帰分析に限らず、ベイス統計モデル等の予測手法を用いてもよい。
また、過去の実測の気象時系列データ等をハードディスクに予め記録し、将来の気象データを図示しない手段が推定して算出し、実測値の代わりに利用してもよい。
更に、候補地の実測気象データが入手できない場合には、近傍地点の気象データを距離にて加重平均する、といった手法で候補地の気象データを推定して算出してもよい。
【0028】
(図3・培養実験とその記録)
藻類における所定の株を選択して培養実験を実行する。その際に選択した株、培養時の平均水温、培地条件、二酸化炭素の添加量、熱量係数[kWh/kg]、面積あたり生産量である生産性[kg/平方メートル/日]等について、図3に示すようなデータベースへ記録する。 ここで、組合せ番号は、ひとつの実験結果の培養条件のセット番号を示す。
実験結果は、当該気温等の培養条件で最も生産性が高い藻選択の結果を記録することが望ましい。 続いて、面積あたり生産量である生産性[kg/平方メートル/日]を算出し、データベースへ記録する。なお、生産性算出に必要なデータは、算出係数などとして事前に入力し、ハードディスク内に記録しておく。
【0029】
なお、培養実験に際して、日射量も測定しておいてハードディスク内に記録し、候補地日射量のデータを候補地データベースに追加して記録し、生産性を補正してもよい。 例えば、

生産性 = c × 水温 + d × 日射量 + 定数項
として、前記の培養データから回帰分析等によってc、dといった係数を算出する。
そして、そのうえで、生産性の値を候補地予測水温と候補地日射量とから算出し、より正確な推定値の演算に利用することとしてもよい。
【0030】
(図4)
図4(a)には、候補地名(測定地名)と、月別の実測平均気温と、月別の実測平均水温とを表に示している。実測平均気温とは、過去数年の記録を用いる。 この表のデータについては、データベースに記録する。
図4(b)には、候補地名(地域名)とその緯度とを表にしている。 水温の実測値がない場合に、予測水温を算出するためのデータとして用いる。
【0031】
図4(c)には、候補地名と月別の実測平均気温とを表に示している。 水温の実測値がなかった場合については、実測平均気温を用いて、予測水温を算出し、データベースに記録する。
【0032】
(図5)
図5には、ディスプレイに出力される画面において、選択または入力すべきデータを入力した例、および年間生産量とエネルギコストとを演算して出力した例を示している。
選択または入力すべきデータとは、候補地の選択、培養池条件の選択、二酸化炭素の添加量の選択、および培養池の面積の入力である。
【0033】
前記の選択または入力すべきデータを入力した後、計算開始のボタンをクリックすると、画面の下側に年間生産量とエネルギコストとを演算して出力する。 エネルギコストの単位が「円/キロワット」となっているのは、培養池の面積が様々であるため、効率を比較する単位としたのである。
【0034】
(図6)
図6には、前述したデータの選択または入力と、年間生産量およびエネルギコストの演算の手順を示している。
データの選択または入力が終了すると、コンピュータは、それに基づいて選択された候補地選択の、X月の予測水温データを、ハードディスクの候補地データベースに予め記録されている候補地データから読み出す。 そして、藻類育成データベースの培養データから、条件選択かつ候補地のX月水温に最も近い組合せ番号を選択する。 当該の組合せ番号の生産性を読み出し、培養池面積と日数を乗じ、X月の生産量等を演算する。
【0035】
すなわち、
月間生産量A(n) = 培養池面積 × 生産性[kg/平方メートル/日] × 当該月の日数
として算出する。 そして、それを用いて、
年間生産量B(n) = Σn=1,12(月間生産量A(n))
となる。
【0036】
(図7)
図7には、複数の候補地における年間生産量の比較を出力するための手順を示している。
候補地データが入力されると、候補地データベースから候補地のデータを読み出し、その年間生産量を図6に示した手順にて演算し、いったん記憶する。
候補地データベースに記録されている全ての候補地について、上記の年間生産量を演算する。そして、候補地ごとに画面出力する。
【0037】
さらに、当該の生産量から算出される年間エネルギ生産量および培養条件等に従い、燃料生産における設備費用と運用費用を算定し、各月のエネルギコスト(費用[円]/エネルギ生産量[kWh])を算定する。そして加重平均し、年間のエネルギコストを算出する。
【0038】
生産コストの一部である設備費用については、たとえば培養池の建設費は、培養池面積に比例するモデルを考える。
また、運用コストの一部である二酸化炭素添加用のポンプの運転費用は、培養池面積および二酸化炭素の添加量に比例する。したがって、それぞれを算定し、年間原価償却費用や年間金利等を算定し積算してよい。
【0039】
具体的には、たとえば以下の通りである。
建設費 = 培養池面積×定数B(定数Bは、面積あたりの建設費を表す係数)
年間原価償却費用C = 建設費 × 原価償却率
と算定する。
【0040】
また、他の運転費用については、培養において必要とする栄養源購入費用は培地条件と培養池面積に比例し、 遠心分離といった藻類回収費用は生産量等に比例し、 温風乾燥といった藻類燃料化費用は生産量等に比例する。
それらを勘案して算定し、積算すればよい。
【0041】
藻類の培養が終了した後の回収費用については、たとえば、
月間藻類回収費用D(n) = 月間生産量A(n) × 定数E(定数Eは重量あたりの回収費を表す係数)
と算定する。
【0042】
前記にて算出した年間原価償却費用と合わせ、
月間費用F(n) = 年間原価償却費用C/12 + 月間藻類回収費用D(n)
によって、月間費用F(n)を算出する。
【0043】
この月間費用F(n)を、加重し
年間費用加重 = Σn=1,12(月間費用F(n)×月間生産量A(n))
として算出してもよい。
【0044】
年間のエネルギ生産量は、たとえば、
年間のエネルギ生産量F = Σn=1,12(月間生産量An×熱量係数Gn)
(ただし、熱量定数Gは、記録データから読み出した重量あたりの熱量を表す係数)
と算定してもよい。
【0045】
また、年間費用については、以下のように加重平均を算出しておく。
年間費用加重平均 = 年間費用加重/年間生産量
その上で、
エネルギコスト = 年間費用加重平均/年間のエネルギ生産量F
とすることによって、エネルギコスト[円/kWh]を算定してもよい。
【0046】
エネルギコストについては、生産したエネルギ(燃料)の消費地までが遠い場合には、燃料の運搬コストが無視できなくなる。
その場合、候補地データに消費地までの距離を入力してハードディスクに記録しておき、生産した燃料を消費地まで運搬するための運用費を距離データと生産量から算定して積算するとよい。
【0047】
燃料の運搬に限らず、培養から燃料化までが無人化できるわけではないので、人件費も必要コストとなる。 したがって、各地の人件費データも記録しておき、人件費を積算してもよい。
また、設備費用・運用費用想定については、ここまでに記載した事項に限らず、補正や追加の算定式を用いることで、より正確な見積もりとなる。
【0048】
(図8)
前述した候補地データベースに対して、世界各地の候補地データを予め記録しておいた場合には、図8に示すインタフェイス2からの利用者の操作に伴って、候補地ごとの生産量等を一括して演算させることができる。
【0049】
(図9)
図9(a)は、候補地名毎に、一年間の生産量の予測値(トン/年)および1キロワットあたりの予測生産コスト(円/kw)を一覧表示したものである。
また、図9(b)は、上記の予測コストを、世界地図上で示したものである。すなわち、地図に近い部位に、円の面積で一年間の生産性の予測(トン/年)を示し、その円内の数値で示しているのが、予測生産コスト(円/kw)である。
なお、図示は省略するが、上記の円にカーソルを当てると、地域名および予測生産量がテキスト表示されるようになっている。
【0050】
図示は省略するが、太陽光発電装置と、 その太陽光発電装置によって発電される発電量を記録する発電量データベースとを備え、収量演算手段においては、前記の発電量のデータをも用いて有用生物の予想収量を演算することとしてもよい。
太陽光発電装置は電気エネルギを得るだけでなく、藻類の培養における収量と関係が深い日照時間に関連の深いデータを得ることができる。日照時間は、水温とともに有用性物の培養における収量に影響のあるデータであるので、発電量に関するデータ取得をすることによって、予想収量に関する精度の向上が期待できる。
【0051】
本発明の活用分野は、藻類の生産に限らない。 浮草、水耕栽培植物といった類似するバイオ燃料向けの生産におけるシミュレーションとして応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、有用生物(たとえば藻類)を用いたバイオ燃料の製造業、バイオ燃料製造業のためのプラント設計建設業、プラントに用いる計測器の製造業、プラントにおいて計測サービスや計測に伴うメンテナンス業、計測データを処理するデータサービス業、データの送受信を司る情報通信業などにおいて利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用生物を培養する候補地における有用生物培養によるエネルギ収量を予測するための装置であって、
有用生物を培養する候補地の過去の気温データを蓄積する候補地データベースと、
有用生物を培養する候補地における実測気温データを含む候補地気温等データを入力する候補地データ入力手段と、
その候補地気温等データおよび候補地データベースに蓄積されたデータを用いて候補地の予測水温を算出する候補地水温演算手段と、
有用生物における種類毎の収量および水温の関係をデータベース化して蓄積する生物育成データベースと、
その生物育成データベースおよび前記の予測水温を用いて有用生物の予想収量を演算する収量演算手段と、
その収量演算手段が演算した予想収量を出力する出力手段と、を備えた収量予測装置。
【請求項2】
太陽光発電装置と、 その太陽光発電装置によって発電される発電量を記録する発電量データベースとを備え、
前記の収量演算手段は、前記の発電量のデータをも用いて有用生物の予想収量を演算することとした請求項1に記載の収量予測装置。
【請求項3】
有用生物を培養する候補地における有用生物培養によるエネルギ収量を予測するためのコンピュータプログラムであって、
そのプログラムは、有用生物を培養する候補地の過去の気温データを候補地データベースに蓄積する候補地データ記憶手順と、
有用生物における種類毎の収量および水温の関係をデータベース化して生物育成データベースに蓄積する藻類育成データ記憶手順と、
有用生物を培養する候補地における実測気温データを含む候補地気温等データを入力する候補地データ入力手順と、
その候補地気温等データおよび候補地データベースに蓄積されたデータを用いて候補地の予測水温を算出する候補地水温演算手順と、
前記の生物育成データベースおよび前記の予測水温を用いて予想収量を演算する収量演算手順と、
その収量演算手順にて演算した予想収量を出力する出力手順と、 をコンピュータに実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項4】
太陽光発電装置によって発電される発電量を発電量データベースに記録する発電量データ蓄積手順を備え、
前記の収量演算手順では、発電量データベースに記録された発電量をも用いて有用生物の予想収量を演算することとした請求項3に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−203875(P2012−203875A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71002(P2011−71002)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】