説明

収音装置および携帯電話機

【課題】構成部品の数の増加を抑えつつ、ユーザの話声を明瞭に収音できるようにする。
【解決手段】携帯電話機は、自装置に内蔵されるマイクロホン19を、通話状態のときにはユーザの話声を収音する“マイクロホン”として用い、ユーザによる携帯電話機の位置や姿勢の調整を助ける制御を行うときには、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離を特定するための“超音波センサ”としても用いる。これにより、センサ等の構成部品を別途設けることなく、携帯電話機は、ユーザの話声を収音するマイクロホン19を用いて、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離を特定し、ユーザの話声が明瞭に収音されるように、ユーザに対して携帯電話機の位置や姿勢の修正を促すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収音する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機を利用するユーザは、電話機本体を耳に当てながらその姿勢やその位置を調整するが、それを助けるための技術として特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、受話器とユーザの口との距離を検出し、その距離が大きく、ユーザの話声の収音音声が不明瞭になる場合に、受話器の位置や姿勢の修正を促すことが開示されている。
【特許文献1】特開2003−188957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
携帯電話機に距離を検出するセンサ等の構成を備えると、装置全体の構成部品の数は必然的に増えてしまい、特に小型化・軽量化が重視されている携帯電話機において好ましくない。
そこで、本発明は、構成部品の数の増加を抑えつつ、ユーザの話声を明瞭に収音できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するため、本発明の第1の構成の収音装置は、ダイアフラムと、前記ダイアフラムと対向するように設けられたバックプレートと、前記ダイアフラムの振動により変化する前記ダイアフラムと前記バックプレートとの間の静電容量に応じた音声信号を生成する生成手段とを有するマイクロホンと、前記マイクロホンのダイアフラムに音声信号を供給して、所定の参照音を放音させる放音制御手段と、前記放音制御手段によって供給された音声信号に応じて前記マイクロホンのダイアフラムが振動して前記参照音が放音されてから、その参照音の反射音により当該ダイアフラムが振動して当該反射音が収音されるまでの期間を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された期間又は当該期間によって特定されるユーザ及び前記ダイアフラム間の距離が、決められた範囲内であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果を前記ユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴とする。
【0005】
本発明の第2の構成の収音装置は、第1の構成の収音装置において、前記報知手段は、前記測定された期間又は当該期間によって特定されるユーザ及び前記ダイアフラム間の距離が前記範囲内であると前記判断手段によって判断された場合に、前記マイクロホンの生成手段によって生成された音声信号の周波数が可聴域に属し、且つ、当該音声信号の振幅が閾値以上のときには、ユーザ及び前記ダイアフラム間の距離が適切である旨を報知することを特徴とする。
【0006】
本発明の第3の構成の収音装置は、第1又は2の構成の収音装置において、複数の前記マイクロホンをそれぞれ異なる位置に備え、前記測定手段は、複数の前記マイクロホンの各々について前記期間を測定し、前記判断手段は、前記測定手段により測定された各々の期間、又はそれらの期間によって特定されるユーザ及び各々の前記マイクロホン間の距離が決められた範囲内であるか否かに基づいて前記判断を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の携帯電話機は、第1〜3のいずれか1の構成の収音装置と、無線による送受信を行う通信手段と、放音手段と、前記通信手段により受信した音声データに応じた音を前記放音手段に放音させるとともに、前記マイクロホンにより生成された音声信号を音声データに変換し、当該音声データを、前記通信手段から送信させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成部品の数の増加を抑えつつ、ユーザの話声を明瞭に収音できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下で述べる「携帯電話機」は、法令上の携帯電話機に限らず、これと同等の機能を有するPHS(Personal Handyphone System;登録商標)等の電話機も含み、ユーザが携帯可能で、無線通信を利用して送受信を行う電話機全体を指すものとする。
(1)構成
図1は、携帯電話機10の外観を示した図である。
携帯電話機10は、複数のボタンからなる操作部13や、各種情報を表示する表示部14を本体前面に有し、無線で他の通信機器との間でデータを遣り取りするためのアンテナ16を有する。また、表示部14の上方側には受音領域30が設けられている。ユーザは、通話相手の話声等の音声を聴くときには、受音領域30に自身の耳100を当てる。携帯電話機10の受音領域30の位置には、後述するスピーカ18が内蔵されており、ユーザは、スピーカ18から外部空間に放音された音声を聞き取る。操作部13の下方には送音領域40が設けられている。送音領域40の位置にはマイクロホン19が内蔵されており、ユーザの話声等の音声は、孔HMを介して携帯電話機10内に伝搬し、マイクロホン19により収音される。このようにしてマイクロホン19により収音された音声は、相手方の電話機等に送られる。なお、携帯電話機10を把持して、ユーザが受音領域30に耳を当てるときには、送音領域40はユーザの口元付近に位置する。
【0010】
図2は、携帯電話機10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、携帯電話機10は、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15と、アンテナ16と、音声処理部17と、スピーカ18と、マイクロホン19とを備えている。
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えており、携帯電話機10の各部を制御する。ROMには、CPUが各種制御を実行するための制御プログラムが記憶されており、CPUは、ROMや記憶部12に記憶された制御プログラムに基づいて、RAMをワークエリアとして各種制御を行う。
【0011】
記憶部12は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)又はフラッシュメモリであり、制御部11によって実行される処理の手順が記述されたプログラム等の各種情報が記憶されている。操作部13は、例えば「0」から「9」までのテンキーや、電話番号等の発信を指示する発信ボタン等の各種ボタンを備えており、ユーザによる操作に応じた操作信号を制御部11に供給する。制御部11は、この操作信号に基づき、ユーザの操作によって指示された内容を判断して、その判断結果に応じた制御を行う。表示部14は、例えば液晶ディスプレイや液晶駆動回路を備えており、制御部11の制御に応じて各種情報を表示する。
【0012】
通信部15は、無線による送受信を行う。携帯電話機10と他の電話機等とが通話可能な状態(通話状態)にあるときには、通信部15は、図示せぬ携帯電話網の基地局から送信されてくる無線信号をアンテナ16によって受信すると、これを復調し、復調して得られるデジタル形式の音声データを音声処理部17に出力する。また、通信部15は、音声処理部17からデジタル形式の音声データを取得すると、これに変調及び周波数変換等を施して、アンテナ16を介して無線信号を送信させる。なお、以下では、デジタル形式の音声データのことを、単に「音声データ」ということがあり、アナログ形式の音声信号を、単に「音声信号」ということがある。
【0013】
音声処理部17は、例えばDSP(Digital Signal Processor)や発振回路を備え、各種音声処理を行う。例えば、音声処理部17は、通信部15から供給される音声データに対し、D/A(デジタル/アナログ)変換及び増幅を施し、アナログ形式の音声信号をスピーカ18に供給する。また、音声処理部17は、マイクロホン19から供給される音声信号に対し、増幅及びA/D(アナログ/デジタル)変換を施してデジタル形式の音声データに変換し、変換した音声データを通信部15に出力する。発振回路は、高調波発振器や増幅回路等からなり、音声処理部17は発振回路により所定の周波数の発振を行う。
【0014】
スピーカ18は、音声処理部17から供給された音声信号に応じて受話音等の音声を放音する放音手段である。マイクロホン19は、例えばシリコンマイクであり、ユーザの話声等の音声を収音し、収音した音声を表す音声信号を音声処理部17に出力する。このマイクロホン19は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造された超小型・軽量のマイクロホンである。
【0015】
ここで、マイクロホン19の構成について説明する。図3は、マイクロホン19の構成を示す分解斜視図であり、図4は、図3に示す切断線IV−IVで収音素子192を切断したときの断面を表した図である。
筐体191は、セラミックで箱型に成形されており、収音素子192及び信号処理回路193を収容する。収音素子192は、ダイアフラム1921、バックプレート1922、及び支持体1923を備えたコンデンサマイクロホンであり、いわゆるシリコンマイクである。ダイアフラム1921は、多結晶シリコン等の半導体膜であり、音を受けて振動する。ダイアフラム1921は、例えば円形であるが、円の一部を切除した形状等であってもよい。バックプレート1922は、支持体1923によって支持され、ダイアフラム1921に対して所定の間隔をもって対向するように固定して設けられている。バックプレート1922は、ダイアフラム1921と同様の半導体であり、ダイアフラム1921とは絶縁されている。バックプレート1922においても、その形状は例えば円形であるが、円の一部を切除した形状等であってもよい。ダイアフラム1921が音圧に応じた量だけ変位することにより、収音素子192の静電容量が変化する。すなわち、収音素子192は音圧を静電容量に変換する。信号処理回路193は、例えばアナログLSI(Large Scale integrated circuit)であり、収音素子192の静電容量の変化を電気信号に変換し、この電気信号を音声信号として音声処理部17に出力する。すなわち、信号処理回路193は、ダイアフラム1921の振動により変化する、ダイアフラム1921とバックプレート1922との間の静電容量に応じた音声信号を生成する生成手段の一例である。上面部材194は、その表面が略正方形の金属からなる平面状の部材であり、筐体191の開口部を塞ぐようにして設けられている。上面部材194の一部に孔Pが設けられており、この孔Pを介して筐体191内部に伝搬する音を、マイクロホン19は収音する。
【0016】
以上の構成を有するマイクロホン19は、超音波を放音可能なスピーカとしても機能し、制御部11から供給される音声信号に応じてその放音を行う。具体的には、制御部11が音声処理部17により発振を行い、マイクロホン19のダイアフラム1921に超音波を放音させるための電気信号(以下、「超音波信号」という)を供給すると、ダイアフラム1921が超音波振動子となって振動し、その超音波信号に応じた超音波を放音する。
【0017】
図5は、制御部11及び音声処理部17の機能を示したブロック図である。同図に示す各機能は、制御部11及び音声処理部17のハードウェア又はソフトウェアによって実現される。
発振部175は、超音波信号をマイクロホン19に供給することにより、所定の参照音を放音させる放音制御を行う。発振部175は、発振回路によって所定の周波数fo(ここでは、40kHzとする)で発振・増幅して超音波信号を生成し、生成した超音波信号をマイクロホン19のダイアフラム1921に供給する。ダイアフラム1921は、供給された超音波信号に応じて振動し、超音波である参照音を放音する。
【0018】
収音音声取得部171は、マイクロホン19によって収音された音声を表す音声信号SAを取得し、取得した音声信号SAを測定部172に供給する。マイクロホン19による収音は、マイクロホン19(ダイアフラム1921)によって参照音が放音されないときに行われる。すなわち、発振部175によって上記放音制御が行われていない期間にマイクロホン19により収音が行われ、収音音声取得部171は、その収音音声を表す音声信号SAを取得する。
【0019】
測定部172は、発振部175によって供給された音声信号に応じてマイクロホン19のダイアフラム1921が振動して参照音が放音されてから、その参照音の反射音によりダイアフラム1921が振動してその反射音が収音されるまでの期間を測定し、その測定結果を判断部173に供給する。携帯電話機10の受音領域30がユーザの耳に当てられているときに放音された参照音の反射音の音声信号SAを、収音音声取得部171が取得する場合、マイクロホン19のダイアフラム1921から放音された参照音は、送音領域40の付近にあるユーザの口元を反射し、その反射音がマイクロホン19により収音される。すなわち、測定部172は、ダイアフラム1921及びユーザ間における超音波の往復の伝搬時間を測定することになる。
【0020】
判断部173は、測定部172から供給される測定結果に基づいてダイアフラム1921(すなわち、送音領域40)及びユーザ間の距離Lを特定し、その距離Lが決められた範囲内に含まれるか否かを判断して、その判断結果を報知部174及び発振部175に供給する。ダイアフラム1921及びユーザ間の距離Lについては、判断部173は、超音波センサと同じ原理に基づき求めることができる。具体的には、参照音および反射音は超音波であり、その伝搬速度も既知であるから、伝搬速度と測定部172によって測定された期間とに基づいて距離Lを求めることができる。なお、伝搬時間のみを用いるのではなく、参照音および反射音の音波の位相差を参照するようにしてもよい。
判断部173は、特定した距離Lが距離L1以上、且つ距離L2以下であれば(L1≦L≦L2であれば)、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離が決められた範囲内であると判断する。一方、判断部173は、特定した距離がL1を下回るか(L<L1)、又はL2を上回っていれば(L>L2)、距離Lが上記範囲内でないと判断する。
【0021】
報知部174は、判断部173による判断結果をユーザに報知する。報知部174は、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lが決められた範囲内であると判断部173によって判断された場合には、スピーカ18によってアラーム音を放音させ、距離Lが適切である旨の判断結果をユーザに報知する。報知部174は、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lが決められた範囲内でないと判断部173によって判断された場合には、アラーム音の放音を行わないことにより、距離Lが適切である旨の判断結果をユーザに報知する。
【0022】
発振部175は、判断部173から供給された判断結果に基づいて放音制御を行う。発振部175は、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lが決められた範囲内でないと判断部173によって判断された場合には、継続してダイアフラム1921に参照音を放音させる。一方、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lが決められた範囲内であると判断部173によって判断された場合には、発振部175は、マイクロホン19のダイアフラム1921による参照音の放音を停止させる。
【0023】
(2)動作
以上の構成及び機能を有する携帯電話機10の制御部11が、ユーザが携帯電話機10の位置や姿勢の調整するときに実行する動作について、図6に示すフローチャートに従って説明する。ここでは、携帯電話機10が通話状態にあるときに、この動作を行う場合について説明する。
【0024】
通話を開始するときに、ユーザは操作部13を操作して通話を希望する相手の電話番号を入力する。そして、ユーザは発信ボタンを押下すると、通話に備えるために携帯電話機10の受音領域30に自身の耳に当てて、携帯電話機10本体の位置や姿勢を調整する。
携帯電話機10が通話状態になると、制御部11は、ユーザが通話相手と通話するための制御(以下、「通話制御」という。)を行う(ステップS1)。具体的には、制御部11は、通信部15により受信した音声データに応じた音声をスピーカ18に放音させるよう音声処理部17を制御し、マイクロホン19により収音した音声に応じた音声データを通信部15から送信させる。このような通話制御を実行している期間において、制御部11はマイクロホン19によりユーザの話声等の音声を収音させている。この期間のことを以下では、「収音期間」と称する。この収音期間の長さは、予め設定された期間がROMに記憶され、制御部11はこの期間だけ収音期間を継続する。
制御部11は、所定の収音期間が経過するまでは、マイクロホン19により収音した音声に基づき通話制御を行い(ステップS2;NO)、収音期間が完了したと判断すると(ステップS2;YES)、ステップS3に進む。
【0025】
収音期間が経過すると、制御部11は、音声処理部17により周波数foの発振を行って、マイクロホン19のダイアフラム1921に超音波信号を供給し、所定期間だけ超音波である参照音を放音させる(ステップS3)。これにより、マイクロホン19はスピーカとして機能するようになり、ダイアフラム1921からは超音波である周波数foの参照音が放音される。
【0026】
制御部11は、発振を終了させると、マイクロホン19によってその参照音の反射音を収音し、音声処理部17によってその反射音を表す音声信号を取得する(ステップS4)。次いで、制御部11は、マイクロホン19のダイアフラム1921により参照音が放音されてから、その参照音の反射音によりダイアフラム1921が振動してその反射音が収音されるまでの期間を測定する。そして、制御部11は、測定した期間と、ユーザ及びダイアフラム1921間の超音波(参照音及び反射音)の伝搬時間に基づき距離Lを特定する(ステップS5)。
【0027】
そして、制御部11は、距離Lが決められた範囲内であるか否かを判断する(ステップS6)。ユーザ及びダイアフラム1921間の距離が適切な場合とは、L1≦L≦L2の関係を満たし、ユーザの話声が明瞭にマイクロホン19によって収音される場合をいう。例えば、距離LがL2を超えるくらいに大きいと、ユーザの口とマイクロホン19とが離れすぎており、収音音声の音量(振幅)が小さくなりやすく、ユーザの話声が明瞭に収音されにくい。一方で、距離LがL1を下回るくらいに小さいと、ユーザの口に対する送音領域40(マイクロホン19)が適切な位置からずれており、マイクロホン19によって放音された参照音が、例えばユーザの頬や顎等の部位によって遮断されて、制御部11が、ユーザの口以外の部位との距離を特定した可能性が高いと考えられる。この場合、携帯電話機10の位置や姿勢の調整が最適になされておらず、ユーザの話声も明瞭に収音されにくいといえる。このような知見に基づいて、距離Lについて、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離が適切であるか否かの条件が予め決められており、製造段階でROMに記憶されている。
【0028】
制御部11は、ステップS6で「YES」と判断すると、スピーカ18によってアラーム音を放音させて、距離Lが適切である旨を示す判断結果をユーザに報知する(ステップS7)。このアラーム音を聞いて、ユーザは距離Lが適切であると認識し、携帯電話機10の位置や姿勢をそのまま維持して通話を行う。これにより、ユーザの話声は、明瞭にマイクロホン19によって収音され、通話相手にとってもこの音声を聞き取りやすくすることができる。
以上のようにして、ユーザによる携帯電話機10の位置や姿勢の調整は完了したから、以降において、制御部11は、通話状態を継続する限りはステップS1と同じ通話制御を行う。すなわち、制御部11は収音期間を継続し、マイクロホン19によってユーザの話声等の音声を収音させる。
【0029】
制御部11は、ステップS6で「NO」と判断すると、距離Lが適切でない旨を、スピーカ18によりアラーム音を放音しないことによって報知する(ステップS8)。そして、制御部11は、ステップS1に戻る。ステップS1に戻ると、制御部11は、収音期間を開始して通話制御を行い、ユーザは再び通話相手と通話することができる。制御部11は、収音期間が経過するまでは通話制御を行う。そして、収音期間が経過すると(ステップS2;YES)、上記と同様にして、制御部11は上記処理ステップS3〜S8を実行する。このように、制御部11は、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lが上記範囲内(L1≦L≦L2)に属するまで、ユーザによる携帯電話機10の位置や姿勢の調整を助けるために、処理ステップS1〜S8の制御を繰り返し行う。ユーザはアラーム音が聞こえないうちは、両者の距離Lが好ましくないと認識して、携帯電話機10の位置や姿勢を調整する。
【0030】
ところで、ステップS1→ステップS2:NO→ステップS1・・・が繰り返される期間を「収音期間」と称し、この収音期間では、マイクロホン19は“収音”を行っていた。これに対し、ステップS3〜S9では、制御部11は、マイクロホン19を“超音波センサ”として用いて距離Lを特定し、両者の距離Lが適切であるか否かに応じた制御を行っていた。制御部11がこの処理ステップS3〜S8を実行する期間のことを、以下では「距離特定期間」と称する。
【0031】
図7は、「収音期間」及び「距離特定期間」の遷移の様子を説明する図である。同図において、横軸は時刻を表す。
図7に示すように、制御部11は、所定の長さT1の収音期間においてマイクロホン19によって収音を行う「通話制御」を行うと、その後、所定の長さT2の距離特定期間に、マイクロホン19を超音波センサとして用いて距離Lを特定する。その後も、制御部11は、収音期間及び距離特定期間を交互に繰り返し、それぞれの期間に応じた制御を行う。そして、時刻Tにおいて、制御部11が、距離Lが適切であると判断すると、以降において、制御部11は通話状態を継続する限りは収音期間を継続し、マイクロホン19に収音させる通話制御を行う。このように、距離特定期間においては、制御部11はマイクロホン19を超音波センサとして用いているから、通話制御を行っていないことになる。しかしながら、超音波センサを用いた距離の検出期間を考えてみても、距離Lの特定に係る制御に要する距離特定期間は、収音期間に対して極めて短い微小期間で済むので(T2<<T1)、ユーザの通話の妨げになるようなことはない。よって、制御部11は、ユーザの通話を妨げることなく、ユーザによる携帯電話機10の位置や姿勢の調整を助ける制御を行うことができる。
【0032】
以上説明したように、携帯電話機10は、自装置に内蔵されるマイクロホン19を、通話状態のときにはユーザの話声を収音する“マイクロホン”として用い、ユーザによる携帯電話機10の位置や姿勢の調整を助ける動作を行うときには、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離を特定するための“超音波センサ”として用いる。これにより、距離検出センサ等の構成部品を別途設けることなく、携帯電話機10は、ユーザの話声を収音するマイクロホン19を用いてユーザ及びダイアフラム1921間の距離を特定し、ユーザの話声が明瞭に収音されるように、ユーザに対して携帯電話機10の位置や姿勢の修正を促すことができる。また、マイクロホン19は小型且つ、軽量であるから、ユーザは重量感等の違和感をもつこともない。
【0033】
(3)変形例
なお、上記実施形態を次のように変形してもよい。具体的には、例えば以下のような変形が挙げられる。これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
(3−1)変形例1
上述した実施形態では、携帯電話機10は、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lのみに基づいて、両者の距離Lが適切であるか否かを判断していた。しかしながら、距離LがL1≦L≦L2という条件を満たしたとしても、ユーザの顔の他の部位との距離が偶然にこの条件を満たしてしまうことも考えられ、このような場合には、マイクロホン19によりユーザの話声が明瞭に収音されないことがある。そこで、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離を適切にするための精度を高めるために、携帯電話機10の構成を以下のようにしてもよい。
【0034】
例えば、携帯電話機10が収音期間において収音した、ユーザの話声等の音声の振幅が閾値以上の場合にのみ、制御部11は両者の距離Lが適切であると報知するようにしてもよい。上述したように、制御部11が距離Lを特定していたのは、マイクロホン19によって明瞭に音声が収音されるようにすることを目的したものであるから、仮に、収音音声の振幅(音量)が閾値よりも小さいと、ユーザの声がマイクロホン19まで十分に届いておらず、明瞭に音声が収音されているとはいえない。そこで、制御部11は、距離特定期間において特定した距離Lが所定範囲(L1≦L≦L2)に含まれ、且つ、収音期間において収音した音声の振幅が閾値以上である場合にのみ、距離Lが適切であると報知する。このようにすれば、さらに明瞭にマイクロホン19によって音声が収音されやすくすることができる。この構成において、制御部11は、ユーザの話声の音量に基づいた判断を行うから、マイクロホン19によって収音された音声信号の周波数が可聴域に属し、且つ、その音声信号の振幅が閾値以上のときには、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離が適切である旨を報知する。
なお、可聴域とは、ヒトが音として聴取可能な音波の周波数帯域をいい、非可聴域とは、可聴域でない周波数帯域をいう。一般に、可聴域と非可聴域には、個人差があり、一定でない。しかしながら、ここでは通話相手がユーザの話声を明瞭に聞き取ることができるような収音が行われればよいから、振幅を参照する周波数帯域が可聴域のどこかに含まれていればよい。よって、予め決めておいた周波数帯域を可聴域としてROMに記憶しておき、制御部11はこの周波数帯域の振幅に基づいて上記判断を行えばよい。また、制御部11は、複数の異なる周波数帯域の振幅に基づいて、上記判断を行ってもよい。
【0035】
(3−2)変形例2
上述した実施形態では、携帯電話機10の送音領域40の位置に、マイクロホン19を1つだけ内蔵させていたが、これと同じ複数のマイクロホンを携帯電話機10の異なる位置に備るようにしてもよい。この場合、制御部11は、複数のマイクロホンの各々について距離を特定し、特定した各位置の距離が、それらマイクロホン毎に決められた所定範囲内であるか否かに基づいて、距離Lが適切か否かを判断する。図8に、本体の前面の複数の位置にマイクロホン19a〜19fを設けた携帯電話機10aを示す。マイクロホン19a〜19fは、ユーザの頬や顎等の顔の各部位までの距離を特定するために設けられたものである。この場合も、マイクロホン19と同様にして、携帯電話機10aの各位置にマイクロホンを内蔵させればよい。
【0036】
制御部11は、各マイクロホンからユーザの顔の各部位までの距離を特定し、それらの結果を総合的に判断して、ユーザ及びダイアフラム1921間の距離が適切であるか否かを判断する。人間の輪郭には個人差はあるものの、携帯電話機10aの位置や姿勢が適切に調整されていれば、各マイクロホンからユーザの顔の各部位までが個人個人で大きく異なることは少ないと考えられる。このような理由に基づき、制御部11は、複数のマイクロホンのそれぞれによって特定した各位置における距離が、それら各位置毎に決められた範囲内であるか否かを判断する。そして、制御部11は、特定した距離のうち、閾値以上の数の距離が所定範囲内に含まれていると判断した場合に、ユーザとダイアフラム1921(送音領域40)間の距離が適切である旨の報知を行う。この場合において、制御部11が、距離Lが適切である旨を報知するために、必ず範囲内に含まれているべきマイクロホンが決められていてもよく、距離Lが適切であるか否かの判断のための条件は、ここで述べたものに限定されない。これにより、より確実に、マイクロホン19によってユーザの話声を明瞭に収音できるようにすることができる。なお、ここでは、6つのマイクロホン19a〜19fを携帯電話機10aに備える構成について説明したが、それよりも多くてもよいし、少なくてもよいのはもちろんである。
【0037】
(3−3)変形例3
上述した実施形態では、通話状態のときに、制御部11は、ユーザによる携帯電話機10の位置や姿勢の調整を助ける動作を実行していたが、この動作を実行する時期は、その他の時期であってもよい。例えば、制御部11は、所定のボタンが押下されたことを契機に行ってもよい。この場合、ボタンの押下を表す操作信号を取得すると、制御部11は、上述した処理ステップS1〜S8の順に実施形態と同様の制御を行う。ただし、携帯電話機10が通話状態にない場合には、制御部11は通話制御を行わなくてよいので、通話状態となるまでは距離特定期間に応じた制御(つまり、ステップS3〜S8)のみを行う。
【0038】
また、上述した実施形態では、制御部11はユーザ及びダイアフラム1921間の距離Lを特定し、この距離Lが距離L1以上、且つ距離L2以下という範囲内に属するか否かに応じて、適切であるか否かを判断していた。これに対し、制御部11は、距離Lを特定することなく、測定部172によって測定した期間に基づいて判断するようにしてもよい。というのも、超音波の伝搬速度はそれを伝搬する媒質(ここでは空気)によりほぼ決定付けられ、測定した期間が長ければ距離Lは大きいし、期間が短ければ距離Lは小さいからである。この場合、制御部11は、測定した期間の長さが所定の範囲内に含まれていれば、距離Lが適切である旨を報知するし、その長さが所定の範囲内に含まれていなければ、距離Lが適切でない旨を報知する。
【0039】
(3−4)変形例4
上述した実施形態では、通話状態のときに、制御部11は、ユーザによる携帯電話機10の位置や姿勢の調整を助ける動作を実行していたが、この動作を実行する時期は、その他の時期であってもよい。例えば、制御部11は、所定のボタンが押下されたことを契機に行ってもよい。この場合、ボタンの押下を表す操作信号を取得すると、制御部11は、上述した処理ステップS1〜S8の順に実施形態と同様の制御を行う。ただし、携帯電話機10が通話状態にない場合には、制御部11は通話制御を行わなくてよいので、通話状態となるまでは距離特定期間に応じた制御のみを行うとよい。
【0040】
(3−5)変形例5
上述した実施形態では、制御部11は、スピーカ18によってアラーム音を放音することにより距離Lが適切である旨をユーザに報知し、スピーカ18によってアラーム音を放音しないことにより距離Lが適切でない旨をユーザに報知していた。このような判断結果の報知態様は、実施形態で述べた態様に限定されるものではない。
例えば、制御部11は距離Lが適切でないときにアラーム音を継続して放音させ、距離Lが適切になるとアラーム音の放音を停止させてよい。また、制御部11は、それぞれの判断結果に応じたアラーム音を放音させるようにしてもよいし、音の種類はいかなるものでもよい。また、制御部11は、携帯電話機が有するバイブレーション機能を利用したり、LED(Light Emitting Diode)等の発光により判断結果を報知してもよい。
【0041】
また、実施形態では、距離Lが、L1≦L≦L2を満たす場合に、制御部11は距離Lが適切であると判断していたが、例えば、距離Lが閾値以下であれば適切であると判断してもよく、その値は、必要に応じて適宜設定されるとよい。また、実施形態では、制御部11は周波数foの発振を行い、超音波である参照音をマイクロホン19によって放音させていたが、この周波数はいかなるものでもよく、距離Lを特定し得る周波数領域を用いることができる。
【0042】
(3−6)変形例6
上述した実施形態では、携帯電話機に本発明の収音装置を適用した場合について説明したが、家庭用電話機、単体のマイクロホンやヘッドセット、トランシーバ等の収音を行う収受の収音装置に本発明を適用することができる。要するに、マイクロホン19と同等の機能のマイクロホンを有し、そのマイクロホンのダイアフラムが振動して発生する音声を利用して、ユーザ及びダイアフラム間の距離を特定する構成を有する収音装置として機能するものであればよい。
【0043】
また、上述した携帯電話機10の制御部11及び音声処理部17が実現する各機能は、複数のプログラムの組み合わせによって実現され、又は、複数のハードウェア資源の協働によって実現され得る。また、プログラムにより各機能が実行される場合、そのプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスク(CD、DVD)など)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】携帯電話機の外観を示した図である。
【図2】携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図3】マイクロホンの構成を示す分解斜視図である。
【図4】マイクロホンの構成を示す断面図である。
【図5】制御部及び音声処理部の機能を示したブロック図である。
【図6】制御部が実行する動作の手順を示したフローチャートである。
【図7】「収音期間」及び「距離特定期間」の遷移の様子を説明する図である。
【図8】携帯電話機の外観を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
10,10a…携帯電話機、11…制御部、12…記憶部、13…操作部、14…表示部、15…通信部、16…アンテナ、17…音声処理部、171…収音音声取得部、172…測定部、173…判断部、174…報知部、175…発振部、18…スピーカ、19…マイクロホン、191…筐体、192…収音素子、1921…ダイアフラム、1922…バックプレート、1923…支持体、193…信号処理回路、194…上面部材、30…受音領域、40…送音領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムと、前記ダイアフラムと対向するように設けられたバックプレートと、前記ダイアフラムの振動により変化する前記ダイアフラムと前記バックプレートとの間の静電容量に応じた音声信号を生成する生成手段とを有するマイクロホンと、
前記マイクロホンのダイアフラムに音声信号を供給して、所定の参照音を放音させる放音制御手段と、
前記放音制御手段によって供給された音声信号に応じて前記マイクロホンのダイアフラムが振動して前記参照音が放音されてから、その参照音の反射音により当該ダイアフラムが振動して当該反射音が収音されるまでの期間を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された期間又は当該期間によって特定されるユーザ及び前記ダイアフラム間の距離が、決められた範囲内であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果を前記ユーザに報知する報知手段と
を備えることを特徴とする収音装置。
【請求項2】
前記報知手段は、前記測定された期間又は当該期間によって特定されるユーザ及び前記ダイアフラム間の距離が前記範囲内であると前記判断手段によって判断された場合に、前記マイクロホンの生成手段によって生成された音声信号の周波数が可聴域に属し、且つ、当該音声信号の振幅が閾値以上のときには、ユーザ及び前記ダイアフラム間の距離が適切である旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の収音装置。
【請求項3】
複数の前記マイクロホンをそれぞれ異なる位置に備え、
前記測定手段は、複数の前記マイクロホンの各々について前記期間を測定し、
前記判断手段は、前記測定手段により測定された各々の期間、又はそれらの期間によって特定されるユーザ及び各々の前記マイクロホン間の距離が決められた範囲内であるか否かに基づいて前記判断を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の収音装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の収音装置と、
無線による送受信を行う通信手段と、
放音手段と、
前記通信手段により受信した音声データに応じた音を前記放音手段に放音させるとともに、前記マイクロホンにより生成された音声信号を音声データに変換し、当該音声データを、前記通信手段から送信させる制御手段と
を備えることを特徴とする携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−87891(P2010−87891A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255384(P2008−255384)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】