説明

取り外し可能な極低温NMR接続アセンブリシステムおよび方法

【課題】取り外し可能で、コンパクトで、信頼性があり、抵抗が低く、NMRプローブで使用するのに特に適した、強い熱および電気接続を提供するコレットアセンブリを有するNMR機器を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態において、NMR分光計は、コレットアセンブリを介して極低温冷却NMRプローブ支持部材と熱的な接触および電気的な接触しているNMRプローブ回路構成要素(例えば、RFコイルインサート、コンデンサ、インダクタ)を含んでいる。コレットアセンブリは、プローブ支持部材に接続されたコレットアセンブリ本体と、コレットアセンブリ本体に挿入されたコレットと、プローブ回路構成要素に接続されたピンと、コレットの後部にねじ付けられてピンをコレットに固定するナットとを含んでいる。コレットアセンブリ本体はプローブ回路構成要素に接続され、ピンはプローブ支持部材に接続されている。熱交換器が、プローブ支持部材と熱接触していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(NMR)分光学に関し、特に、NMR分光計における取り外し可能な極低温NMR接続を形成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)分光計は通常、静磁場B0を生成するための超伝導磁石と、この磁場B0に垂直で時間的に変動する磁場B1を生成し、かつ印加された磁場に対する試料の反応を検知するための1つ以上の特殊目的の高周波(RF)コイルを含むNMRプローブとを含んでいる。各RFコイルおよびそれに関連する回路は、試料中に存在する、対象となる核のラーモア周波数で共鳴することができる。静磁場B0の方向は、一般にz軸方向または長手方向として示されるが、z軸に垂直な平面は、一般にx-y方向または横方向と呼ばれる。RFコイルは、通常はNMRプローブの一部として提供され、試料管またはフローセル内に置かれた試料の分析のために使用される。
【0003】
NMRプローブの設計は通常、NMRシステムに特有の設計上の制約の影響を受ける。特に、NMRプローブの設計は通常、厳しい空間的制約の影響を受ける。さらに、NMRプローブは、プローブのさまざまな構成要素からの干渉の影響を受ける、高感度のRF回路を含んでいる。
極低温冷却プローブはしばしば、従来の室温プローブよりも、よりよい感度を実現することができる。極低温冷却プローブの感度の向上により、限られた寸法および濃度の試料から、有効なデータを取得することが可能になる。同時に、極低温プローブにより、NMRシステム設計者にとって新たな問題が生じている。例えば、システム設計者は、低温において、さまざまなNMRプローブ構成要素の間で、耐久性があり、伝導性がよく、NMRに適合した、熱および電気接続を実現しなければならない場合がある。
【0004】
一般的な手法では、NMRプローブ構成要素の間のさまざまな熱および/または電気接続を確立するために、はんだ付けが使用される。例えば、コンデンサ、インダクタまたはNMR RFコイルなどのNMRプローブ測定回路構成要素は、1つ以上の極低温冷却NMRプローブ基板(例えばプローブコールドヘッド)にはんだ付けされていてもよい。はんだ付けにより、恒久的な接続が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
はんだ付け処理中に熱にさらされることにより、いくつかのシステム構成要素に悪影響が及ぶ場合がある。同時に、極低温に冷却される構成要素の間で、良好な熱伝導および/または電気伝導特性を有する、耐久性があり、安定していて、NMRに適合した接続を確立することは比較的困難であるため、はんだ付けが一般的な接続方法となってきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一局面によれば、核磁気共鳴(NMR)機器は、NMRプローブ内に配置された極低温冷却NMRプローブ支持部材と、前記NMRプローブのNMRプローブ回路構成要素と、取り外し可能な熱的接続を、前記NMRプローブ回路構成要素と前記NMRプローブ支持部材との間で確立するための取り外し可能な熱接触アセンブリとを備えている。前記熱接触アセンブリは、前記NMRプローブ支持部材に接続された接触アセンブリ本体と、前記接触アセンブリ本体内に配置され、スロット入りの前側カラーおよび後側コレットねじ山面を有するコレットと、前記コレットの前記前側カラーを貫通し、前記NMRプローブ回路構成要素に接続されたピンと、前記コレットを前記接触アセンブリ本体に固定し、それにより、前記ピン、前記コレットおよび前記接触アセンブリ本体を介して、前記NMRプローブ回路構成要素と前記NMRプローブ支持部材との間に前記取り外し可能な熱的接触を確立するために、前記コレットのねじ山面と係合する固定部材ねじ山面を有する、ねじ山が設けられたコレット固定部材とを備えている。いくつかの実施形態において、前記接触アセンブリ本体は前記NMRプローブ回路構成要素に接続され、前記ピンは前記NMRプローブ支持部材に接続されている。
【0007】
別の局面によれば、取り外し可能なNMRプローブ構成要素取り付け方法は、 ピンをコレットに挿入するステップであって、前記ピンは、NMRプローブのNMRプローブ回路構成要素、および前記NMRプローブ内に配置された極低温冷却NMRプローブ支持部材から選択された第1の構造体に接続され、前記コレットはカラーを含んでいるステップと、前記コレットを接触アセンブリ本体に挿入するステップであって、前記接触アセンブリ本体は、前記極低温冷却NMRプローブ支持部材および前記NMRプローブ回路構成要素から選択された第2の構造体に接続されているステップと、前記NMRプローブ回路構成要素を、前記ピン、前記コレットおよび前記接触アセンブリ本体を介して、前記極低温冷却NMRプローブ支持部材に熱的に接続するために、ねじ山が設けられたコレット固定部材を前記コレットの後ねじ山に接続することにより、前記コレットの前記カラーを前記ピンに対して締め付けるステップとを含んでいる。
【0008】
別の局面によれば、NMR機器は、NMRプローブ内に配置された極低温冷却NMRプローブ支持部材と、前記NMRプローブのNMRプローブ回路構成要素と、前記NMRプローブ支持部材を貫通し、前記NMRプローブ回路構成要素を前記NMRプローブ支持部材に機械的かつ熱的に接続する、熱伝導性の取り外し可能な熱接触コレットアセンブリとを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のいくつかの実施形態に係る例示的なNMR分光計の模式図を示す。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に係るNMRプローブの部分側面図を示す。
【図3−A】本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのコンデンサが側面に置かれたインダクタを含むNMRプローブ回路の一部を示す。
【図3−B】本発明のいくつかの実施形態に係る、図3-Aの回路のインダクタを示す。
【図4】本発明のいくつかの実施形態に係る図2のプローブの熱接触アセンブリの等角図を示す。
【図5−A】本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられた状態の図4の接触アセンブリの側面図を示す。
【図5−B】本発明のいくつかの実施形態に係る、図5-Aの接触アセンブリの分解側面図を示す。
【図5−C】本発明のいくつかの実施形態に係る、図5-A、図5-Bの接触アセンブリの断面図を示す。
【図6−A】本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられた状態の図2のプローブの接触アセンブリの側面図を示す。
【図6−B】本発明のいくつかの実施形態に係る、図6-Aの接触アセンブリの分解側面図を示す。
【図6−C】本発明のいくつかの実施形態に係る、図6-A、図6-Bの接触アセンブリの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の上記の局面および利点は、以下の詳細な説明を読み、図面を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
以下の説明において、一式の要素は、1つ以上の要素を含んでいる。複数の要素は、2つ以上の要素を含んでいる。ある要素に言及した場合、1つ以上の要素を包含していると理解されたい。各記載された要素または構造体は、一体構造に形成されていても、もしくは一体構造の一部であってもよく、または複数の別個の構造体から形成されていてもよい。特に言及がない限り、記載された電気的または機械的接続は、直接接続であっても、または中間構造を介した間接作動接続であってもよい。特に説明がない限り、極低温という用語は、液体窒素温度(77K)未満の温度を指す。
【0011】
以下に、本発明の実施形態を例示的に説明するが、これは本発明を限定するものでない。
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る例示的な核磁気共鳴(NMR)分光計12を示す模式図である。分光計12は、磁石16と、磁石16の円筒形の穴に挿入された低温NMRプローブ20と、磁石16およびプローブ20に電気的に接続された制御/取得システム18とを備えている。プローブ20は、1つ以上の高周波(RF)コイル24と、それに関連する電気回路構成要素とを含んでいる。簡略化するために、以下の説明では単一のRFコイル24に重点を置くが、システムが他の類似のコイルを含んでいてもよいことを理解されたい。RFコイル24およびRFコイル24に接続されたさまざまな構成要素は、1つ以上のNMR測定回路を形成する。試料容器22が、試料に対して測定が行われている間、対象となるNMR試料をRFコイル24内に保持するために、プローブ20内に配置される。試料容器22は、試料管またはフローセルであってもよい。
【0012】
測定を行うために、試料が、RFコイル24内に設けられた測定空間に挿入される。磁石16は、試料容器22内に保持された試料に、静磁場B0を印加する。制御/取得システム18は、所望の高周波パルスをプローブ20に印加しプローブ20内の試料の核磁気共鳴特性を示すデータを取得するよう構成された電子的構成要素を備えている。RFコイル24は、試料に高周波磁場B1を印加し、かつ/または、印加された磁場に対する試料の反応を測定するために使用される。RF磁場は静磁場に対して垂直である。同一のコイルが、RF磁場を印加するため、および印加された磁場に対する試料の反応を測定するための両方に使用されてもよい。あるいは、1つのコイルがRF磁場を印加するために使用され、別のコイルが印加された磁場に対する試料の反応を測定するために使用されてもよい。コイルを含むNMR測定回路の共鳴周波数を同調させることにより、単一のコイルを、複数の周波数で測定を行うために使用してもよい。回路に含まれる1つ以上の可変コンデンサの静電容量値を調節することにより、回路共鳴周波数の同調を実現してもよい。また、インピーダンス整合または他の所望の回路特性を実現するために、1つ以上の静電容量値を調節してもよい。
【0013】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に係るNMRプローブ20の頂部の側断面図を示している。プローブ20は、対象となる試料容器を受けるために、長手方向の測定開口部44を有している。以下に説明する多数のNMRプローブ構成要素が、NMRプローブハウジング32内に配置されている。RFコイル24は、電気絶縁性のコイル支持部材(インサート)34と、コイル支持部材34に取り付けられたコイル導体36とを含んでいる。コイル導体36は、所望の形状(例えばサドル形状)の導体パターンを形成するようにパターン化された薄い導体箔を含んでいる。コイル支持部材34は、サファイアなどの、熱伝導性で電気絶縁性のNMR適合材料で形成された円筒部を含んでいる。コイル支持部材34は、以下に説明するように、コイル24を冷却板30aに固定するために、リップ(唇状部)またはフランジ38を含んでいる。いくつかの実施形態において、例えばコイル導体がパターン化された箔ではなくワイヤにより形成されている場合、コイル支持部材用の他の形状または構成が使用されてもよい。
【0014】
複数の熱伝導性の冷却板30a、30bが、プローブ20内に配置されている。冷却板30a、30bは、RFコイル、コンデンサ、インダクタなどのNMRプローブ回路構成要素を支持するよう構成された複数のNMRプローブ支持部材を形成している。最上部の板30aは、RFコイル24に構造上の支持および熱接続性を与えるプローブ20の一部をなすプローブコールドヘッドの一部を形成している。冷却板30a、30bは、冷却板30a、30bを冷却するために、熱交換器50と熱的に接触している。各冷却板30a、30bは、熱交換器50にはんだ付けされていても、ボルト留めされていてもよい。冷却板30a、30bは、導電性の材料で形成されていてもよく、電気的に接地されていてもよい。熱交換器50は、大きな内面領域を有し極低温流体入口52aおよび極低温流体出口52bに接続された、多量の金属発泡体を含んでいてもよい。極低温流体入口52aおよび極低温流体出口52bにより、熱交換器50を通って、ヘリウムまたは液体窒素などの極低温冷却流体を流すことが可能になる。
【0015】
複数のNMR回路構成要素54a、54bが、冷却板30aの下方において、冷却板30bに取り付けられている。回路構成要素54a、54bは、コンデンサ、インダクタ、ならびに/または、RFコイル24および/もしくはプローブ20の他のコイルに電気的に接続された他の回路構成要素を含んでいてもよい。回路構成要素54a、54bは、冷却板30bに電気的に接地されていてもよく、1つ以上のリード58を介して外部電力(例えば電圧/電流)源に接続されていてもよい。リード58は、冷却板30bを貫通するフィードスルー60内を通って延びている。コイル24および回路構成要素54a、54bはそれぞれ、取り外し可能な熱接触アセンブリ40a〜40cを介して、冷却板30a、30bに機械的および熱的に接続されている。また、いくつかの実施形態において、少なくともいくつかの熱接触アセンブリが、導電路を提供していてもよい。
【0016】
図3-Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、インダクタ154cに直列に接続されてインダクタ154c の側面に位置する2つのコンデンサ154a、154bを含むNMRプローブ回路部64を示している。コンデンサ154a、154bは、リード158a、158bを介して、外部に(例えば他の回路構成要素へと)接続されている。また、導電路を介して冷却が実現された場合、リード158a、158bの一方または両方が、回路部64の構成要素を冷却するための熱伝導路を提供してもよい。このような実施形態において、コンデンサ154a、154bは、比較的伝導性のよくない熱導体であってもよい。そして、その結果、インダクタ154cは、コンデンサ154a、154bにより、いかなる外部のヒートシンクからも熱的に絶縁されていてもよい。次いで、インダクタ154cは、以下に説明するように、絶縁インダクタ支持部材を介して冷却されてもよい。
【0017】
図3-Bは、本発明のいくつかの実施形態に係るインダクタ154cを示している。インダクタ154cは、円筒形で、熱伝導性で、電気絶縁性の支持部材164と、支持部材164に取り付けられて熱的に接続された導電性巻き線166とを含んでいる。支持部材164は、サファイアなどの熱伝導性の材料でできた棒または管であってもよい。支持部材164は、取り外し可能な熱接触アセンブリを介して、冷却板などのヒートシンクに接続されている。
【0018】
図4は、本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられていない状態の取り外し可能な熱接触アセンブリ40の分解等角図を示している。熱接触アセンブリ40は、接触アセンブリ本体80と、接触アセンブリ本体80に挿入される寸法のコレット(受け座)82と、コレット82の先端部に挿入される寸法のピン88と、コレット82およびピン88を接触アセンブリ本体80に固定するためにコレット82の後端部に挿入される寸法のねじ90などのコレット固定部材とを含んでいる。コレット82は、円筒部92と、円筒部92に接続され円筒部92に対して横方向に突出した先細りカラー部94とを含んでいる。1対の直線状スロット96a、94bが、カラー94および円筒部92を通って延びている。これは、接触アセンブリ本体80がカラー94の先細り面に押し付けられたときに、カラー94の2つの横方向側が横方向に屈曲して、コレット82内にピン88をしっかりと把持することができるようにするためである。前側中央開口部100は、カラー94および円筒部92を通って形成されており、ピン88を受ける寸法にされている。接触アセンブリ本体80は、コレット82を受ける寸法の中央開口部104を含んでいる。中央開口部104の前側に沿って設けられた先細りのコレット接触面106は、カラー94の寸法および先細り角度に一致している。
【0019】
いくつかの実施形態において、接触アセンブリ本体80は、極低温冷却NMRプローブ支持部材(例えば、冷却板、熱交換器、または、熱交換器もしくは冷却板に取り付けられた他の熱伝導性の構造体)に接続されているが、ピン88はNMRプローブ回路構成要素(例えば、サファイアのRFコイルインサート、コンデンサ、インダクタ)に接続されている。接触アセンブリ本体80は、(例えば、冷却板または熱交換器に加工されていてもよい)プローブ支持部材の少なくとも一部と、一体的に形成されていてもよい。接触アセンブリ本体80はまた、はんだ付けまたは別の熱伝導性の接続によりプローブ支持部材に取り付けられた別個の部分であってもよい。ピン88は、NMRプローブ回路構成要素の少なくとも一部と一体的に形成されていてもよく、または、熱伝導性の接続を介してNMRプローブ回路構成要素に取り付けられた別個の部品であってもよい。いくつかの実施形態において、接触アセンブリ本体80は、極低温冷却NMRプローブ支持部材に接続されたNMRプローブ回路構成要素およびピン88に接続されていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、ピン88とNMRプローブ回路構成要素との間の金属対金属接続またはサファイア対金属接続が、接着剤および/またははんだ付けを使用して確立されていてもよい。接着剤は、Shell EPON(商標)エポキシなどのエポキシを含んでいてもよい。導電性ペースト(例えば、DuPont(商標)7095伝導性ペースト)を使用してサファイア表面をまずメタライズし、そして、導体をメタライズしたサファイアにはんだ付けすることにより、はんだ接続を確立してもよい。サファイア-金属はんだ付け接続はまた、いくつかの実施形態において、直接超音波はんだ付けにより確立されてもよい。
【0021】
図5-Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられた状態の熱接触アセンブリ40の側面図を示している。図5-B、図5-Cは、本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられていない状態の接触アセンブリ40の構成要素の側面図および上面図を示している。図5-Aに示すように、接触アセンブリ本体80は、冷却板30に固定されており、冷却板30を貫通している中央開口部120の上方に中心が位置している。中央開口部120はねじ90を収容している。ねじ90はコレット82の後部内にねじ付けされて、コレット82を接触アセンブリ本体80に固定している。図5-Bに示すように、コレット82は、ねじ90の外側ねじ山110に一致する寸法にされた内側ねじ山108を含んでいる。ピン88は、コレット82の前部に挿入され、NMRプローブ回路構成要素102に接続される。NMRプローブ回路構成要素102と冷却板30との間で、ピン88、コレット82および接触アセンブリ本体80を介し、取り外し可能な熱接続が確立されている。いくつかの実施形態において、NMRプローブ回路構成要素102と冷却板30との間で、ピン88、コレット82および接触アセンブリ本体80を介し、取り外し可能な電気接続が確立されている。
【0022】
ねじ90を締め付けることで、コレット82が接触アセンブリ本体80内へ長手方向に引き込まれる。カラー94の先細り面は、接触アセンブリ本体80の、マッチする先細り面106により押される。カラー94の先細り面にかかる横方向の圧力により、ピン88がコレット82内でしっかりと把持される。NMRプローブ回路構成要素102を冷却板30から取り外すためには、ねじ90を緩めてコレット82から取り除く。コレット82を接触アセンブリ本体80から取り除き、ピン88をコレット82から取り除く。
【0023】
いくつかの実施形態において、接触アセンブリ40の構成要素は、同一の、導電性かつ熱伝導性の材料で形成されている。この材料は、ふさわしい硬度、導電性および熱伝導特性を有するNMR適合材料であってもよい。いくつかの実施形態において、接触アセンブリ40のすべての構成要素は、テルル銅または無酸素高伝導銅(OFHC)などの伝導性銅で形成されている。テルル銅は、その比較的高い硬度ならびに良好な熱伝導特性および導電特性ゆえに使用されてもよい。特にねじ90などのねじを使用する場合、材料の硬度により、対応する固定部材に対するコレット82の取り付けの信頼性および再現性を高めることができる。接触アセンブリ40のすべての構成要素に対して、実質的に同一の熱膨張係数を有する1つ以上の材料を使用することによって、様々な構成要素の熱膨張における温度に依存する相違を最小限にし、それにより、接触アセンブリ40の構成要素間の界面に沿った界面力の信頼できる制御を容易にする。実質的に異なる熱膨張係数を有する材料を、異なる構成要素用に(例えば、ステンレス鋼をいくつかの構成要素用に、銅を他の構成要素用に)使用した場合、ある温度で(例えば室温で)良好な熱接続であっても、異なるアセンブリ構成要素が異なる比率で膨張するため、異なる温度(例えば0 K付近)で熱伝導特性が低下する場合がある。冷却板30a、30bは、NMR適合の、導電性かつ熱伝導性の材料で形成されていてもよい。いくつかの実施形態において、冷却板30a、30bは、無酸素高純度高伝導銅で形成されていてもよい。
【0024】
接触アセンブリ40は組み付け時に、長さ(長手方向の大きさ)が数mm〜数cmのオーダー(例えば約0.5〜5cm)であってもよい。ねじ90は、対応するNMRプローブ固定支持部材(例えば、図5-Aの冷却板30)を貫通しコレット82の内側ねじ山とかみ合うのに十分な長さを有している。いくつかの実施形態において、ねじ90は、数mm〜数cmのオーダーの長さ(例えば約0.3〜3cm)を有している。例えば、ねじ90は、外径が1.5mmの0-80のねじであってもよい。コレットアセンブリ本体80は、数mm〜cmのオーダーの外径(例えば0.5〜2cm)、mmのオーダーの大きさだけこの外径よりも小さい内径(例えば1〜3mm)、およびcmのオーダーの長さ(例えば1〜2cm)を有していてもよい。コレット82は、mmのオーダーの内径(例えば2〜10mm)、およびコレットアセンブリ本体80の長さと実質的に同一の長さを有していてもよい。ピン88は、mmのオーダーの直径(例えば2〜10mm)、およびmm〜cmのオーダーの長さ(例えば2〜15mm)を有していてもよい。カラー94および先細り面106の先細り角度は、15〜600の間の値(例えば約450)であってもよい。
【0025】
図6-Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられた状態の熱接触アセンブリ240の側面図を示している。図6-B、図6-Cは、本発明のいくつかの実施形態に係る、組み立てられていない状態の接触アセンブリ240の構成要素の側面図および上面図を示している。図6-Aに示すように、接触アセンブリ本体80は、冷却板230を貫通する中央開口部220内で、冷却板230に固定されている。中央開口部220の内径は、接触アセンブリ本体80の外径と一致している。コレット282は、接触アセンブリ本体80を貫通する中央開口部104内に取り付けられている。コレット282は、円筒部292と、円筒部292に接続され円筒部292に対して横方向に突出している先細りカラー294とを含んでいる。コレット282が中央開口部220内に取り付けられると、円筒部292は、冷却板230の後面の外部に突出し、外側ねじ山面208を露出させる。ねじ山面208の直径は、円筒部292の直径と実質的に同一であってもよい。例えば、ねじ山面208は寸法が4-40であってもよく、これは直径約3mmに相当する。マッチする内側ねじ山210を有するナット290が、コレット282と係合して、コレットアセンブリ240を冷却板230に固定する。ピン88が、コレット282の前側に挿入されて、NMRプローブ回路構成要素102に接続される。取り外し可能な熱接続が、ピン88、コレット82および接触アセンブリ本体80を介して、NMRプローブ回路構成要素102と冷却板230との間に確立されている。いくつかの実施形態において、取り外し可能な電気接続が、ピン88、コレット82および接触アセンブリ本体80を介して、NMRプローブ回路構成要素102と冷却板230との間に確立されている。
【0026】
ナット290を締め付けることにより、コレット282が、接触アセンブリ本体80に対して長手方向に引き込まれる。カラー294の先細り面は、接触アセンブリ本体80の、マッチする先細り面106により押される。カラー294の先細り面にかかる横方向の圧力により、ピン88がコレット282内でしっかりと把持される。NMRプローブ回路構成要素102を冷却板230から取り外すために、ナット290を緩めてコレット282から取り除く。コレット282を接触アセンブリ本体80から取り除き、ピン88をコレット282から取り除く。
【0027】
冷却板または他のNMRプローブ支持部材と、RFコイルインサート、コンデンサおよび/またはインダクタなどのNMRプローブ回路構成要素との間の接続などの、表面領域が限られており厳しい空間的制約を受けるNMRプローブ接続において、上述した例示的な取り外し可能な接続システムおよび方法により、良好な熱伝導特性を実現することができる。上述した例示的なコレットアセンブリにより、接続の取り外しを可能にしつつ、構成要素間の界面に、比較的高い接触力および良好な熱伝導特性を実現することができる。コレットの後側を包囲するナットなどの外部コレット固定部材によって、コレット内に挿入されるねじなどの内部コレット固定部材よりも、より大きな寸法のねじ山を使用することが可能になる。より大きな寸法のねじ山により、接続アセンブリの空間的大きさへの影響を最小限にしつつ、良好な接続熱伝導特性を維持しながら、接続の耐久性を向上させることが可能になる。OFHCなどの、良好な熱伝導特性を有する多種の金属は、比較的柔らかい場合がある。このような金属で形成したねじ山接続の耐久性は、ねじ山寸法の影響を特に受けやすい場合がある。
【0028】
さまざまな構成要素をはんだ付けするという、一般的な極低温取り付け手法により、通常、良好な熱伝導特性を有するコンパクトで信頼できる接続が可能になるが、取り付けが永久的になり、また、組み立て中に、損傷を受けやすいNMRプローブ構成要素の望ましくない加熱が必要になる場合もある。ボルト留めや三つ爪チャックの使用などの、他の機械的な取り付け手法では、一般的な極低温NMRプローブ用途のために、十分に良好な熱伝導特性を実現することができない場合がある。
【0029】
本発明の範囲を逸脱することなしに、多くのやり方で上記実施形態を変更することができることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、上述した熱接触アセンブリを使用して、例えば、冷却板に取り付けられた熱伝導構造体、熱交換器または他の極低温冷却NMR構造体などの、冷却板または熱交換器以外のヒートシンク/支持部材に、NMRプローブ回路構成要素を取り付けてもよい。コレットカラーは、複数のスロットまたは他の柔軟な開口部を含んでいて、加えられた長手方向の力に応じて横方向に締め付けを行うことができてもよい。ナットまたはねじなどのコレット固定部材が、より大きな構造体の一部を形成していてもよい。ナットおよびねじ以外のコレット固定部材を、いくつかの実施形態において、特に空間的な制約によりそのような固定部材の使用が許容される場合に、使用してもよい。接触アセンブリ本体は、機械加工により冷却板、熱交換器もしくは他のNMRプローブ支持部材とされていてもよく、または、はんだ付けもしくは他の熱伝導性の取り付けによりNMRプローブ支持部材に接続された別体の部品であってもよい。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその法的な均等物により定められるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMRプローブ内に配置された極低温冷却熱伝導性NMRプローブ支持部材と、
前記NMRプローブのNMRプローブ回路構成要素と、
取り外し可能な熱的接続を、前記NMRプローブ回路構成要素と前記NMRプローブ支持部材との間で確立するための取り外し可能な熱接触アセンブリとを備えている、NMR機器であって、
前記熱接触アセンブリが、
前記NMRプローブ支持部材および前記NMRプローブ回路構成要素から選択された第1の構造体に接続された接触アセンブリ本体と、
前記接触アセンブリ本体内に配置され、スロット入りの前側カラーおよび後側コレットねじ山面を有するコレットと、
前記コレットの前記前側カラーを貫通するピンであって、前記NMRプローブ支持部材および前記NMRプローブ回路構成要素から選択された第2の構造体に接続されたピンと、
前記コレットを前記接触アセンブリ本体に固定し、それにより、前記ピン、前記コレットおよび前記接触アセンブリ本体を介して、前記NMRプローブ回路構成要素と前記NMRプローブ支持部材との間に前記取り外し可能な熱的接触を確立するために、前記コレットのねじ山面と係合する固定部材ねじ山面を有する、ねじ山が設けられたコレット固定部材とを備えている、機器。
【請求項2】
前記ねじ山が設けられたコレット固定部材がナットを備え、前記固定部材ねじ山面が内側ねじ山面である、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記NMRプローブ支持部材がNMRプローブコールドヘッドであり、
前記NMRプローブ回路構成要素が高周波コイルであり、
前記高周波コイルが、前記コールドヘッドに取り付けられ電気絶縁性で熱伝導性のコイル支持部材、および、前記コイル支持部材に取り付けられた導体を備えている、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記NMRプローブ回路構成要素がコンデンサを備えている、請求項1に記載の機器。
【請求項5】
前記NMRプローブ回路構成要素が、電気絶縁性で熱伝導性のインダクタ支持部材に取り付けられた伝導部を有するインダクタを備え、前記伝導部は、前記インダクタ支持部材および前記取り外し可能な熱接触アセンブリを介して、前記NMRプローブ支持部材に熱的に接続されている、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記第1の構造体が前記NMRプローブ支持部材であり、前記第2の構造体が前記プローブ回路構成要素である、請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記第1の構造体が前記プローブ回路構成要素であり、前記第2の構造体が前記NMRプローブ支持部材である、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記接触アセンブリ本体が、前記NMRプローブ支持部材の少なくとも一部と一体的に形成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項9】
前記NMRプローブ支持部材が冷却板を備え、当該機器は、前記冷却板と熱的に接触している熱交換器をさらに備えている、請求項1に記載の機器。
【請求項10】
前記NMRプローブ回路構成要素が、前記ピン、前記コレットおよび前記接触アセンブリ本体を介して、前記NMRプローブ支持部材に電気的に接続されている、請求項1に記載の機器。
【請求項11】
取り外し可能なNMRプローブ構成要素取り付け方法であって、
ピンをコレットに挿入するステップであって、前記ピンは、NMRプローブのNMRプローブ回路構成要素および前記NMRプローブ内に配置された極低温冷却NMRプローブ支持部材から選択された第1の構造体に接続され、前記コレットはカラーを含んでいるステップと、
前記コレットを接触アセンブリ本体に挿入するステップであって、前記接触アセンブリ本体は、前記極低温冷却NMRプローブ支持部材および前記NMRプローブ回路構成要素から選択された第2の構造体に接続されているステップと、
前記NMRプローブ回路構成要素を、前記ピン、前記コレットおよび前記接触アセンブリ本体を介して、前記極低温冷却NMRプローブ支持部材に熱的に接続するために、ねじ山が設けられたコレット固定部材を前記コレットの後ねじ山に接続することにより、前記コレットの前記カラーを前記ピンに対して締め付けるステップとを含む、方法。
【請求項12】
前記ねじ山が設けられたコレット固定部材が、前記コレットと係合するための内側ねじ山面を有するナットを備えている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NMRプローブ回路構成要素が高周波コイル支持部材であり、前記NMRプローブの高周波コイルの伝導部は、前記高周波コイル支持部材に取り付けられている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記NMRプローブ回路構成要素がコンデンサを備えている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記NMRプローブ回路構成要素が、電気絶縁性で熱伝導性のインダクタ支持部材に取り付けられた伝導部を有するインダクタを備え、前記伝導部は、前記インダクタ支持部材および前記取り外し可能な熱接触アセンブリを介して、前記NMRプローブ支持部材に熱的に接続されている、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の構造体が前記NMRプローブ支持部材であり、前記第2の構造体が前記プローブ回路構成要素である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の構造体が前記プローブ回路構成要素であり、前記第2の構造体が前記NMRプローブ支持部材である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記NMRプローブ支持部材が冷却板を備え、当該方法は、前記冷却板を冷却するために、熱交換器と前記冷却板との間に熱的接触を確立するステップをさらに含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記ピン、前記コレットおよび前記接触アセンブリ本体を介して、前記NMRプローブ回路構成要素と前記NMRプローブ支持部材との間に、電気的接続を確立するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
NMRプローブ内に配置された極低温冷却NMRプローブ支持部材と、
前記NMRプローブのNMRプローブ回路構成要素と、
前記NMRプローブ支持部材を貫通し、前記NMRプローブ回路構成要素を前記NMRプローブ支持部材に機械的かつ熱的に接続する、熱伝導性の取り外し可能な熱接触コレットアセンブリとを備えている、NMR機器。

【図1】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図4】
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【図5−A】
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【図5−B】
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【図5−C】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図6−C】
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【公開番号】特開2010−85399(P2010−85399A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−211460(P2009−211460)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)