説明

取付精度判定装置

【課題】 軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより適正かつ精度よく行なうと共に取り付け精度を判定する際の操作をより簡易なものにする。
【解決手段】 Vブロック22と位置決め部24とにより支持されたプランジャー10の軸14に対して角度αをもって当接するアーム部32を往復運動させる回転駆動部30と、フランジ部12の回転に伴ってその取付精度(垂直度)を検出する検出部40と、検出後に払い出されるプランジャー10を受け止める受け部50とにより取付精度判定装置20を構成し、アーム部32の一方向への運動により軸14の位置決め部24方向に作用する力を用いてプランジャー10を完全に位置決めして取付精度を判定し、アーム部32の他方向への運動により軸14の受け部50方向に作用する力を用いてプランジャー10を払い出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付精度判定装置に関し、詳しくは、円筒状のフランジ部材の中心にフランジ部材に対して垂直に直線状の軸部材の一端を取り付けてなる軸付フランジ部材の軸部材のフランジ部材への取り付け精度を判定する取付精度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状のフランジ部に垂直に軸を取り付けた軸付フランジ部材、例えばリニアソレノイドのプランジャーなどの部材のフランジ部と軸との取り付け精度を判定する手法としては、軸を保持した状態で回転させ、この回転に伴うフランジ部のブレの程度を検出することにより行なうことが行なわれている。こうした軸付フランジ部材の取り付け精度は、軸付フランジ部材の使用目的によって許容される精度は異なるが、作動頻度が多い上述のリニアソレノイドのプランジャーでは高い精度が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した軸付フランジ部材の取り付け精度を判定する手法では、人手により軸付フランジ部材を検出装置などに取り付けて軸付フランジ部材を回転させて取り付け精度を検出し、検出後に人手により軸付フランジ部材を装置から取り外すことが行なわれるため、人手による作業が多く、軸付フランジ部材の取り付け精度の検出に要する時間が長くなる。また、軸付フランジ部材を検出装置に適正に取り付けることが前提となっているから、少しでも不適正に取り付けると適正な取り付け精度を検出することができない。さらに、高い取り付け精度が要求される軸付フランジ部材の取り付け精度の検出では、軸付フランジ部材の回転の程度によっても精度が異なるため、高い回転精度も必要となる。
【0004】
本発明の取付精度判定装置は、軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより適正に行なうことを目的の一つとする。また、本発明の取付精度判定装置は、軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより高い精度で行なうことを目的の一つとする。さらに、本発明の取付精度判定装置は、軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより迅速に行なうことを目的の一つとする。あるいは、本発明の取付精度判定装置は、軸付フランジ部材の取り付け精度を判定する際の操作をより簡易なものとすることを目的の一つとする。加えて、本発明の取付精度判定装置は、異なる軸の長さの軸付フランジ部材の取り付け精度を判定することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の取付精度判定装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の取付精度判定装置は、
円筒状のフランジ部材の中心に該フランジ部材に対して略垂直に直線状の軸部材の一端を取り付けてなる軸付フランジ部材の前記軸部材の前記フランジ部材への取り付け精度を判定する取付精度判定装置であって、
前記軸付フランジ部材を回転可能に支持する支持手段と、
前記軸付フランジ部材の前記軸部材の他端に該軸部材の回転を可能に当接して該軸部材の軸方向の一方に対する位置決めを行なう位置決め手段と、
前記軸付フランジ部材の前記軸部材と当接し、前記軸部材に対して前記位置決め手段による該軸部材の位置決めを行なわせる方向に作用する第1の力を伴って前記軸付フランジ部材を第1の回転方向に回転させる第1回転駆動と、前記軸部材に対して前記位置決め手段による該軸部材の位置決めを解除させる方向に作用する第2の力を伴って前記軸付フランジ部材を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させる第2回転駆動とが可能な回転手段と、
前記第1回転駆動に伴う前記軸付フランジ部材の前記フランジ部材の回転に伴って該フランジ部材と前記軸部材との取り付け精度を検出する取付精度検出手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の取付精度判定装置では、支持手段に軸付フランジ部材を回転可能に支持させて位置決め手段に軸付フランジ部材を略位置決めさせた状態で回転手段により第1回転駆動を行なわせる。第1回転駆動は、軸部材に対して位置決め手段による軸部材の位置決めを行なわせる方向に作用する第1の力を伴って軸付フランジ部材を第1の回転方向に回転させるから、第1回転駆動を行なわせる際に軸付フランジ部材が位置決め手段に完全に位置決めされていない状態であっても、この第1の力の作用により軸付フランジ部材が位置決め手段による位置決めが行なわれる方向に移動して位置決めが完全に行なわれる。そして、取付精度検出手段では、こうした第1回転駆動に伴う軸付フランジ部材のフランジ部材の回転に伴ってフランジ部材と軸部材との取り付け精度を検出する。このように、機械的な操作によりフランジ部材と軸部材との取り付け精度を検出するから、軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより適正に且つより高い精度で行なうことができると共に軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより迅速に行なうことができる。しかも、軸付フランジ部材を略位置決めさせた状態で回転手段により第1回転駆動を行なわせて、第1の力の作用により軸付フランジ部材を完全に位置決めしてから取り付け精度を検出するから、軸付フランジ部材の取り付け精度を判定する際の操作をより簡易なものとすることができると共に軸付フランジ部材の取り付け精度の判定をより適正に行なうことができる。
【0008】
こうした本発明の取付精度判定装置において、前記支持手段は前記軸付フランジ部材の前記軸部材の一部を下方から支持する手段であり、前記回転手段は、所定の長さを有し前記支持手段の前記軸部材の支持と整合する位置で該軸部材の上方から該軸部材の軸方向に対して直角とは異なる所定角度をもって該軸部材に当接する当接手段と、該当接手段を前記所定角度の方向に往復運動させる往復運動手段と、を備える手段であるものとすることもできる。当接手段を往復運動させると、当接手段が所定角度をもって軸部材に当接した状態で運動するため、運動に伴って角度方向に力が作用し、その方向に軸付フランジ部材を移動させようとする。したがって、軸部材に対して位置決め手段による軸部材の位置決めを行なわせる方向に作用する力が生じる運動方向に当接手段を運動させることにより、第1回転駆動を行なうことができ、当接手段をこの運動方向と逆に運動させることにより、第2回転駆動を行なうことができる。この回転手段が当接手段と往復運動手段を備える態様の本発明の取付精度判定装置において、前記当接手段は、前記所定の長さのアーム部と、ゴム状部材により形成され該アーム部の下部に取り付けられて前記軸部材に当接する当接部とを備えるものとすることもできる。こうすれば、当接手段の往復運動の際にゴム状部材と軸部材との摩擦を大きくすることができ、軸部材の回転と第1の力や第2の力の作用をより確実なものとすることができる。
【0009】
また、本発明の取付精度判定装置において、前記位置決め手段は、前記軸部材の軸方向における位置を変更して該軸部材の軸方向の一方に対する位置決めを行なう手段であるものとすることもできる。こうすれば、軸方向の位置決め位置を変更することができる。この結果、軸の長さの異なる軸付フランジ部材におけるフランジ部材と軸部材との取り付け精度を検出することができる。
【0010】
さらに、本発明の取付精度判定装置において、前記位置決め手段は、前記支持手段と共に前記軸付フランジ部材を支持する手段であり、前記支持手段は、前記位置決め手段による前記軸付フランジ部材の支持が解除されたときには該軸付フランジ部材の支持を解除する手段であるものとすることもできる。こうすれば、軸付フランジ部材を支持手段と位置決め手段とにより支持することができる。この態様の本発明の取付精度判定装置において、前記位置決め手段は、前記軸部材の他端を少なくとも上方から支持する支持部を有する手段であるものとすることもできる。
【0011】
こうした支持手段と位置決め手段とにより軸付フランジ部材を支持する態様の本発明の取付精度判定装置において、前記軸付フランジ部材の前記位置決め手段による支持が解除されると共に前記支持手段による支持が解除されたときに該軸付フランジ部材を受け止めて該軸付フランジ部材を検出位置から払い出す払出手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、取付精度の検出を終了した軸付フランジ部材を自動的に検出位置から払い出すことができる。したがって、軸付フランジ部材の取り付け精度を判定する際には、軸付フランジ部材が支持手段と位置決め手段とにより支持されるよう取り付ける操作だけで軸付フランジ部材を取り外す操作は不要となる。この結果、軸付フランジ部材の取り付け精度を判定する際の操作をより簡易なものとすることができる。
【0012】
また、本発明の取付精度判定装置において、前記取付精度検出手段は、前記第1回転駆動に伴って前記軸付フランジ部材の回転が開始されてから所定の回転が経過した以降に前記フランジ部材と前記軸部材との取り付け精度の検出を開始する手段であるものとすることもできる。こうすれば、軸付フランジ部材が完全に位置決めされてからフランジ部材と軸部材との取り付け精度を検出することができる。この結果、高い精度で取付精度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は本発明の一実施例としての軸付フランジ部材の取付精度判定装置20の上面図であり、図2は図1の取付精度判定装置20をA−A面から見たAA視図であり、図3は図1の取付精度判定装置20をB−B面から見たBB視図であり、図4は図1の取付精度判定装置20をC−C面から見たCC視図である。図1,図2,図4では、見易さを考慮して外観を示している部材(Vブロック22,検出部40)に対してはハッチングを施した。また、図5は、実施例における軸付フランジ部材であるリニアソレノイドのプランジャー10の外観を示す斜視図である。なお、プランジャー10は、図5に示すように、直径R1の円盤状のフランジ部12の中央に直棒状の直径R2の長さL1の軸14が垂直に取り付けられている。
【0015】
実施例の取付精度判定装置20は、プランジャー10のフランジ部12と軸14との取り付け精度、即ち、取り付けにおける垂直度(直角度)の精度を判定する装置として構成されており、図1および図2に示すように、装置中央の下部に配置されプランジャー10を軸14により載置するためのVブロック22と、Vブロック22とによりVブロック22に載置されたプランジャー10を支持すると共にプランジャー10の軸14端部によりプランジャー10の軸方向の位置決めを行なう位置決め部24と、Vブロック22の上に配置されプランジャー10の軸14に当接してプランジャー10を正逆両方向に回転させる回転駆動部30と、装置の両サイドに配置されプランジャー10のフランジ部12の外周部の位置に基づいてフランジ部12と軸14との取付精度を検出する検出部40と、検出部40によりフランジ部12と軸14との取付精度を検出した後に払い出されたプランジャー10を受け止める受け部50と、判定結果を表示するディスプレイ72と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット60とを備える。なお、Vブロック22や位置決め部24,回転駆動部30,検出部40,受け部50等は基盤52に載置されている。
【0016】
Vブロック22は、図2に示すように、基盤52の上部に取り付けられた高さH1の支持台21の上部に設置され、その幅L3がプランジャー10の軸14の長さL1より短く且つ支持台21の幅L2より短くなるよう形成されていると共に支持台21からの高さH2がプランジャー10のフランジ部12の半径(R1/2)と軸14の半径(R2/2)との和より高くなるよう形成されている。したがって、Vブロック22の上部にプランジャー10を配置したときにフランジ部12の側面と支持台21との間には隙間が生じることになる。このVブロック22の上部には、軸14の直径R2より浅い深さD1の溝23がその幅方向にV字状に設けられている。したがって、Vブロック22の溝23にプランジャー10を配置したときには、軸14はVブロック22に完全に収まらずに長さL4だけVブロック22の上部にはみ出ることになる。なお、溝23の形状はV字状に限られず、例えば、凹状などであってもよい。
【0017】
位置決め部24は、図1,図3,図4に示すように、Vブロック22の溝23にプランジャー10を配置したときの軸14の略延長上に設けられた位置決めアーム25と、基盤52の上部に取り付けられた支持台27の上部に設置されて位置決めアーム25を支持するアーム支持部28とから構成されている。位置決めアーム25は、プランジャー10の軸14の直径R2より若干大きい長さL5を一辺とする略正方形で長さL5より若干深い深さD2の開口部29を有し(図4参照)、その開口部29内には長さL5より若干小さい直径R3の球26が嵌挿されている。プランジャー10は、その軸14の端部が開口部29に引っ掛かることにより、Vブロック22と共に位置決め部24により支持され、軸14の端部が球26に当接することにより、位置決めされる。アーム支持部28は、Vブロック22との距離を変更することができるように位置決めアーム25を支持した状態で位置決めアーム25の軸方向にスライドする。したがって、プランジャー10の軸14の長さに応じてプランジャー10の位置決め位置を変更することができる。即ち、軸14が長いときにはアーム支持部28をVブロック22から遠ざける方向にスライドさせることにより、位置決めされたプランジャー10のフランジ部12を検出部40による適正検出範囲に配置させ、軸14が短いときにはアーム支持部28をVブロック22に近づける方向にスライドさせることにより、位置決めされたプランジャー10のフランジ部12を検出部40による適正検出範囲に配置させることができる。
【0018】
回転駆動部30は、図1および図2に示すように、Vブロック22の上方に配置されプランジャー10の軸14の軸方向に対して直角とは異なる角度αの方向に長さL6のアーム部32と、例えばシリコンゴムにより形成されアーム部32の下部に取り付けられたゴム状部34と、基盤52の上部に設置されると共に角度αの方向に連結部35,36を介してアーム部32に連結されアーム部32をプランジャー10の軸14に対して角度αの方向に往復運動させる駆動部38とを備える。アーム部32と連結部35との間にはプランジャー10の軸14の直径R2より大きい幅L7のアーチ39が設けられている。ゴム状部34は、その下端とVブロック22との距離が略L4となるよう形成されおり、アーム部32の往復運動に伴って軸14の上方を通過する際に軸14と当接する。このとき、軸14は、Vブロック22の溝23に保持されているため、溝23から外れることなく回転する。上述したように、アーム部32は軸14に対して角度αの方向に往復運動するから、軸14にはこうした回転力の他に軸方向の力も作用する。いま、アーム部32を図1,図2の状態から駆動部38方向に引き寄せるときを考える。このときの様子を図6に示し、図6の取付精度判定装置20をC−C面から見た様子を図7に示す。図6および図7中、一点鎖線はアーム部32を移動させる前の状態を示し、実線はアーム部32を移動させた後の状態を示す。アーム部32が角度αをもって移動することに基づいてプランジャー10の軸14には回転力の他に位置決め部24の方向の力が作用する。軸14は、前述したように、位置決めアーム25の開口部29に引っ掛かった状態にあるから、若干の軸方向の移動により開口部29に嵌挿された球26に当接し、プランジャー10の完全な位置決めが行なわれる。その後もプランジャー10の軸14には、軸方向の力が作用するが、軸14の端部が球26に支持されることにより、プランジャー10の軸方向への移動は行なわれない。このアーム部32を駆動部38側に引き寄せる際のプランジャー10の回転駆動を実施例では「第1回転駆動」と呼ぶことにする。次に、アーム部32を駆動部38に引き寄せた状態から図1,図2の状態に戻すときを考える。このときの様子を図8に示し、図8の取付精度判定装置20をC−C面から見た様子を図9に示す。図8および図9中、一点鎖線はアーム部32を移動させる前の状態(図6の実線の状態)を示し、実線はアーム部32を移動させた後の状態を示す。プランジャー10の軸14には、アーム部32を駆動部38に引き寄せる第1回転駆動の際の回転方向とは逆の回転方向に回転させる回転力と軸14の端部が球26から離れる方向の力とが作用する。実施例の取付精度判定装置20には、プランジャー10の軸14の端部が球26から離れるのを規制するものは何もないから、プランジャー10はアーム部32の運動に伴って受け部50側に移動する。アーム部32の長さやVブロック22の幅、プランジャー10のバランスにもよるが、アーム部32の運動によりプランジャー10の軸14からゴム状部34が離れると、プランジャー10は、位置決め部24による支持とゴム状部34による支持とを失い、自身の重さによりバランスを失って受け部50側に払い出される(図9参照)。このアーム部32を駆動部38側から引き離す際のプランジャー10の回転駆動を実施例では「第2回転駆動」と呼ぶことにする。このように、回転駆動部30は、アーム部32をプランジャー10の軸14に対して角度αをもって往復運動させることにより、上述した第1回転駆動と第2回転駆動とを行なう。
【0019】
検出部40は、図1および図2に示すように、プランジャー10のフランジ部12に対して見通しが良いように装置の両サイドに取り付けられた発光部42と受光部44とを備え、位置決めアーム25により位置決めされた状態で回転しているプランジャー10のフランジ部12に対して発光部42から光を照射し、この光の照射に伴って受光部44で受光する光に基づいて画像処理を施し、フランジ部12の下端と支持台21との距離Xの回転に伴う変動量ΔXを計算して出力する。後述するが、プランジャー10の取り付け精度の判定は、この変動量ΔXが許容変動量Xref以下に収まっているか否かにより行なわれる。
【0020】
電子制御ユニット60は、図1に示すように、中央処理演算回路としてのCPU62を中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPU62の他に、処理プログラムなどを記憶するROM64や一時的にデータを記憶するRAM66,時間を計時するタイマ68,図示しない入出力ポートを備える。電子制御ユニット60には、プランジャー10の取り付け精度の判定を開始するのを指示するスタートスイッチ70からのスタート信号や受光部44から変動量ΔXなどが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット60には、駆動部38への駆動信号や発光部42への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0021】
次に、こうして構成された取付精度判定装置20の動作について説明する。図10は、プランジャー10がVブロック22と位置決め部24とによって支持された状態で操作者によりスタートスイッチ70がオンされたときに電子制御ユニット60により実行されるプランジャー10の取り付け精度を判定する処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0022】
スタートスイッチ70がオンされて処理ルーチンが開始されると、電子制御ユニット60のCPU62は、まず、駆動部38に駆動信号を出力して駆動部38による第1回転駆動と第2回転駆動とを連続して行なう往復運動を開始し(ステップS100)、駆動部38による第1回転駆動を開始してから所定時間経過するのを待つ処理を実行する(ステップS110)。ここで、所定時間としては、実施例では、プランジャー10の軸14の端部が位置決め部24の開口部29に辛うじて引っ掛かっている状態から、第1回転駆動に伴う軸14の軸方向の移動により軸14の端部が開口部29内の球26に当接して位置決め部24による完全な位置決めが行なわれるのに要する時間以上の時間として設定されており、例えば、0.1秒や0.2秒などを用いることができる。このように第1回転駆動を開始してから所定時間待つ処理は、プランジャー10が位置決め部24によって完全に位置決めがなされるのを待つ処理となる。
【0023】
第1回転駆動を開始してから所定時間経過すると、検出部40の発光部42に駆動信号を出力してプランジャー10の取り付け精度の検出を開始し(ステップS120)、検出部40の受光部44から検出結果としての変動量ΔX(プランジャー10のフランジ部12の支持台21からの距離Xの変動量)を入力する(ステップS130)。プランジャー10の取り付け精度は、実施例では、第1回転駆動が行なわれている最中に行なわれ、変動量ΔXの入力は、第1回転駆動が終了するタイミングかそれより若干遅いタイミングで行なわれる。
【0024】
そして、入力した変動量ΔXを許容変動量Xrefと比較し(ステップS140)、変動量ΔXが許容変動量Xref以下のときにはプランジャー10のフランジ部12への軸14の取り付け精度は良好と判断し、ディスプレイ72に取り付け精度は合格している旨を表示して(ステップS150)、本処理を終了し、変動量ΔXが許容変動量Xrefより大きいときにはプランジャー10の取り付け精度は不良と判断し、ディスプレイ72に取り付け精度は不合格している旨を表示して(ステップS160)、本処理を終了する。
【0025】
ここで、駆動部38は、第1回転駆動の後に連続して第2回転駆動を行なうから、Vブロック22と位置決め部24とにより支持されたプランジャー10は、駆動部38による第2回転駆動によりVブロック22の溝23に沿って受け部50側に移動し、アーム部32のゴム状部34の軸14への当接が解除されたときに、バランスを失ってVブロック22から払い出され、受け部50に受け止められる。したがって、操作者は、ディスプレイ72に表示される合否に基づいて受け部50に払い出されたプランジャー10をより分けることができる。
【0026】
以上説明した実施例の取付精度判定装置20によれば、駆動部38による安定した第1回転駆動に伴ってプランジャー10の取り付け精度を判定するから、プランジャー10の取り付け精度をより適正に判定することができると共にプランジャー10の取り付け精度をより高い精度で判定することができる。しかも、回転駆動部30のアーム部32をプランジャー10の軸14に対して角度αをもって運動させる第1回転駆動を行なうと共にこの第1回転駆動を開始してからプランジャー10が位置決め部24により完全に位置決めがなされた後にプランジャー10の取り付け精度の検出を開始するから、プランジャー10の取り付け精度をより高い精度でより確実に判定することができる。この結果、操作者はプランジャー10の軸14がVブロック22と位置決め部24の開口部29に支持されるようにプランジャー10を取り付けてスタートスイッチ70を押すだけでプランジャー10の取り付け精度を判定することができる。即ち、プランジャー10の取り付け精度を判定する際の操作をより簡易なものとすることができる。
【0027】
また、実施例の取付精度判定装置20によれば、駆動部38による第1回転駆動に伴うプランジャー10の取り付け精度の判定を行なった後に連続して駆動部38による第2回転駆動を行なうことにより、プランジャー10を自動的に受け部50に払い出すことができる。したがって、操作者は、ディスプレイ72に表示される合否に基づいて受け部50に払い出されたプランジャー10をより分ければよいから、プランジャー10の取り付け精度の判定を迅速に行なうことができる。この結果、多数のプランジャー10の取り付け精度の判定をより容易により簡易により迅速に行なうことができる。
【0028】
さらに、実施例の取付精度判定装置20によれば、位置決め部24のアーム支持部28をスライドさせることにより、位置決め部24による位置決め位置を変更することができるから、軸14の長さが異なるプランジャー10でもより適正に取り付け精度を判定することができる。
【0029】
実施例の取付精度判定装置20では、位置決め部24のアーム支持部28をスライドさせることにより位置決め部24による位置決め位置を変更することができるものとしたが、位置決め部24のアーム支持部28をスライドさせないように固定させたものとしても構わない。
【0030】
実施例の取付精度判定装置20では、駆動部38による第2回転駆動を伴ってプランジャー10を受け部50に払い出すようにしたが、受け部50に取り付け精度の合否に基づいてプランジャー10を選別する手段を設け、払い出されたプランジャー10を自動的により分けるものとしてもよい。
【0031】
実施例の取付精度判定装置20では、駆動部38による第1回転駆動に伴ってプランジャー10の取り付け精度を判定した直後に駆動部38による第2回転駆動を伴ってプランジャー10を受け部50に払い出すものとしたが、駆動部38による第2回転駆動によるプランジャー10の払い出しを行なわないものとしても構わない。
【0032】
実施例の取付精度判定装置20では、フランジ部12に軸14が取り付けられたリニアソレノイドのプランジャー10の取り付け精度を判定するものとしたが、円筒状のフランジ部の中央に軸が取り付けられた軸付フランジ部材であれば、リニアソレノイドのプランジャー以外の如何なる部材におけるフランジ部と軸との取り付け精度を判定するものとしてもよい。
【0033】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、取付精度判定装置の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例としての軸付フランジ部材の取付精度判定装置20の上面図である。
【図2】図1の取付精度判定装置20をA−A面から見たAA視図である。
【図3】図1の取付精度判定装置20をB−B面から見たBB視図である。
【図4】図1の取付精度判定装置20をC−C面から見たCC視図である。
【図5】実施例における軸付フランジ部材であるリニアソレノイドのプランジャー10の外観を示す斜視図である。
【図6】アーム部32を駆動部38側に引き寄せる際の取付精度判定装置20の様子を示す説明図である。
【図7】図6の取付精度判定装置20をC−C面から見たCC視図である。
【図8】アーム部32を駆動部38側から引き離す際の取付精度判定装置20の様子を示す説明図である。
【図9】図8の取付精度判定装置20をC−C面から見たCC視図である。
【図10】電子制御ユニット60により実行されるプランジャー10の取り付け精度を判定する処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
10 プランジャー、12 フランジ部、14 軸、20 取付精度判定装置、21 支持台、22 Vブロック、23 溝、24 位置決め部、25 位置決めアーム、26 球、27 支持台、28 アーム支持部、29 開口部、30 回転駆動部、32 アーム部、34 ゴム状部、35,36 連結部、38 駆動部、39 アーチ、40 検出部、42 発光部、44 受光部、50 受け部、52 基盤、60 電子制御ユニット、62 CPU、64 ROM、66 RAM、68 タイマ、70 スタートスイッチ、72 ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のフランジ部材の中心に該フランジ部材に対して略垂直に直線状の軸部材の一端を取り付けてなる軸付フランジ部材の前記軸部材の前記フランジ部材への取り付け精度を判定する取付精度判定装置であって、
前記軸付フランジ部材を回転可能に支持する支持手段と、
前記軸付フランジ部材の前記軸部材の他端に該軸部材の回転を可能に当接して該軸部材の軸方向の一方に対する位置決めを行なう位置決め手段と、
前記軸付フランジ部材の前記軸部材と当接し、前記軸部材に対して前記位置決め手段による該軸部材の位置決めを行なわせる方向に作用する第1の力を伴って前記軸付フランジ部材を第1の回転方向に回転させる第1回転駆動と、前記軸部材に対して前記位置決め手段による該軸部材の位置決めを解除させる方向に作用する第2の力を伴って前記軸付フランジ部材を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させる第2回転駆動とが可能な回転手段と、
前記第1回転駆動に伴う前記軸付フランジ部材の前記フランジ部材の回転に伴って該フランジ部材と前記軸部材との取り付け精度を検出する取付精度検出手段と、
を備える取付精度判定装置。
【請求項2】
請求項1記載の取付精度判定装置であって、
前記支持手段は、前記軸付フランジ部材の前記軸部材の一部を下方から支持する手段であり、
前記回転手段は、所定の長さを有し前記支持手段の前記軸部材の支持と整合する位置で該軸部材の上方から該軸部材の軸方向に対して直角とは異なる所定角度をもって該軸部材に当接する当接手段と、該当接手段を前記所定角度の方向に往復運動させる往復運動手段と、を備える手段である
取付精度判定装置。
【請求項3】
前記当接手段は、前記所定の長さのアーム部と、ゴム状部材により形成され該アーム部の下部に取り付けられて前記軸部材に当接する当接部とを備える請求項2記載の取付精度判定装置。
【請求項4】
前記位置決め手段は、前記軸部材の軸方向における位置を変更して該軸部材の軸方向の一方に対する位置決めを行なう手段である請求項1ないし3いずれか記載の取付精度判定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の取付精度判定装置であって、
前記位置決め手段は、前記支持手段と共に前記軸付フランジ部材を支持する手段であり、
前記支持手段は、前記位置決め手段による前記軸付フランジ部材の支持が解除されたときには該軸付フランジ部材の支持を解除する手段である
取付精度判定装置。
【請求項6】
前記位置決め手段は、前記軸部材の他端を少なくとも上方から支持する支持部を有する手段である請求項5記載の取付精度判定装置。
【請求項7】
前記軸付フランジ部材の前記位置決め手段による支持が解除されると共に前記支持手段による支持が解除されたときに該軸付フランジ部材を受け止めて該軸付フランジ部材を検出位置から払い出す払出手段を備える請求項5または6記載の取付精度判定装置。
【請求項8】
前記取付精度検出手段は、前記第1回転駆動に伴って前記軸付フランジ部材の回転が開始されてから所定の回転が経過した以降に前記フランジ部材と前記軸部材との取り付け精度の検出を開始する手段である請求項1ないし7いずれか記載の取付精度判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate