説明

取付部、バンパーカバーの取付部及びバンパーカバーの組付構造

【課題】バンパーカバーの組付作業性を向上させる。
【解決手段】第一フランジ部120と第二フランジ部130A,130Bとの間に形成される隙間125にアンダーカバー50の先端部52が挟まれて保持された状態で、グロメット80とスクリュー90とによって固定されている。よって、取付強度が確保されると共に、例えばS字クリップのように位置がずれる怖れがないので、S字クリップを用いる構成と比較し、組付作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部、バンパーカバーの取付部及びバンパーカバーの組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、バンパーをボデーに連結する被係合部に、バンパー本体に設けた切欠開口部の上面に掛止する掛止爪と下面に当接させる当接片とが形成されているバンパーカバーの連結構造が開示されている。
【0003】
引用文献2には、バンパーカバーの下端部分に設けたインテグラルヒンジ部を起点にして折り曲げて、スクリューグロメットとスクリューとで締め付けることによってボデーにバンパーカバーを締結するバンパーカバーの締結構造が開示されている。
【0004】
ここで、バンパーカバーとアンダーカバーとを組み付ける場合、バンパーカバーのフランジ部とアンダーカバーとを車両上下方向に重ねて、グロメットとスクリューとで締結する組付構造が考えられる。しかし、アンダーカバーは変形しやく容易に曲がってしまうので、このような組付構造で組み付けることは非常に困難又は実質的には組み付つることはできないとされている。
【0005】
よって、図8(A)及び図9に示すように、バンパーカバー900のフランジ部920に嵌め込んだS字クリップ950にアンダーカバー930を差し込んでアンダーカバー930を保持し、スクリュー960で締結する組付構造を用いることがある。
【0006】
しかし、このようなS字クリップ950を用いた組付構造は、S字クリップ950をフランジ部920に嵌め込んでいるだけなので、S字クリップ950ががたついたり回転する怖れがある。よって、アンダーカバー930をS字クリップ950に差し込む際にS字クリップがずれないように注意する必要がある。また、スクリュー960で締め付ける際に、S字クリップ950がつれ回りして、図8(B)に示すように、アンダーカバー930と干渉する等の建付け不良を発生させないように注意する必要がある。したがって、バンパーカバーの組付作業性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−195176号公報
【特許文献2】特開2009−083757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、組付作業性を向上させることができる取付部、バンパーカバーの取付部、及びバンパーカバーの組付構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、車両のバンパーカバーの下端部に形成され、前記下端部との境界部に形成されたインテグラルヒンジによって回転可能とされ、車両組付状態において、車両上下方向上側に延出した支持部と、車両組付状態の前記支持部の上端部から車両前後方向後側に延出し、車両上下方向に貫通する取付部側貫通孔を有する第一フランジ部と、前記第一フランジ部の車両幅方向の両側からそれぞれ車両前後方向後側に延出し、前記第一フランジ部よりも車両上下方向下側又は上側に配置されることで前記第一フランジ部との間にアンダーカバーが挟まれる隙間が形成される対を成す第二フランジ部と、前記バンパーカバーの下端部における前記インテグラルヒンジよりも車両幅方向の両外側の部位からそれぞれ車両前後方向後側に延出する対を成すリブ部と、対を成す前記第二フランジ部からそれぞれ前記リブ部に向かって斜めに延出し、下端部が前記リブ部の上面に係止される爪部と、前記支持部の根元部分における車両幅方向の両側部からそれぞれ前記リブ部側方向に延出し、前記リブ部の下面に係止する対を成すストッパー部と、を備える。
【0010】
請求項1の発明では、支持部が車両前後方向後側に延出した車両組付け前の状態から車両上下方向上側に回転されることで、爪部がリブ部に当接して弾性変形し爪部の下端部がリブ部の上面に係止すると共にストッパー部がリブ部の下面に係止することで、支持部が車両上下方向上側に延出した車両組付状態に固定される。
【0011】
そして、第一フランジ部と第二フランジ部との間に形成される隙間に、アンダーカバーが挟まれて保持され、第一フランジ部の取付部側貫通孔に取り付けられたグロメットと締結具とによって、バンパーカバーとアンダーカバーとが組み付けられる。
【0012】
このように、第一フランジと第二フランジ部との間に形成される隙間に、アンダーカバーが挟まれて保持された状態で組み付けられるので、例えばS字クリップにアンダーカバーを挟む構成と比較し、組付作業性が向上する
【0013】
請求項2の発明は、前記支持部が車両前後方向後側に延出した車両組付前の状態を車両前後方向に見た場合に、前記第一フランジ部、前記第二フランジ部、前記リブ部、前記爪部、及び前記ストッパー部が重ならないように配置され、アンダーカットを有しない形状とされている。
【0014】
請求項2の発明では、支持部が車両前後方向後側に延出した車両組付け前の状態ではアンダーカットを有しない形状とされている。したがって、成形型で取付部を成形する場合、アンダーカットを成形するための、例えばスライドコア等の特別な成形型を用いることなく容易に成形が可能である。
【0015】
請求項3発明は、前記支持部と前記第一フランジ部との境界部に形成され、車両組付状態において、前記支持部と前記第二フランジ部との境界部よりも車両上下方向下側まで延在するビードを有する。
【0016】
請求項3発明では、ビードによって、支持部と第一フランジ部との剛性が強化されると共に、支持部と第一フランジ部及び第二フランジ部との境界部の剛性が強化される。
【0017】
請求項4発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の取付部が形成されたバンパーカバーと、前記取付部の前記第一フランジ部と前記第二フランジ部との間に形成された隙間に挟まれ、前記第一フランジ部に形成された前記取付部側貫通孔と対応する位置に車両上下方向に貫通するカバー側貫通孔が形成されたアンダーカバーと、前記取付部側貫通孔に取り付けられたグロメットと、前記カバー側貫通孔から挿入し前記グロメットに螺合することで前記アンダーカバーを前記取付部に締結する締結具と、を備える。
【0018】
請求項4の発明では、第一フランジ部の貫通孔にグロメットを取り付けて、第一フランジと第二フランジ部との間に形成される隙間にアンダーカバーを挟み保持する。そして、アンダーカバーのカバー側貫通孔から締結具を挿入してグロメットに螺合させることで、バンパーカバーがアンダーカバーに取り付けられる。
【0019】
このように、第一フランジと第二フランジ部との間に形成される隙間にアンダーカバーが挟まれて保持された状態で、グロメットと締結具とを用いて締結するので、低コストで組付強度が確保されると共に組付作業性が向上する
【0020】
請求項5の発明は、前記グロメットは、前記取付部の前記第一フランジ部の下面又は上面に係止する前記取付部側貫通孔よりも大きい頭部を有し、前記取付部の前記第一フランジ部の下面又は上面には、少なくとも前記頭部を間に挟んで対向する二箇所に凸部が形成されている。
【0021】
請求項5の発明では、取付部の第一フランジ部の下面又は上面に形成された凸部が、隙間に挿入されたアンダーカバーを車両上下方向下側に向かって押さえることで、アンダーカバーのがたつきが抑制される。
【0022】
請求項6の発明は、インテグラルヒンジによって所定方向を回転軸方向として回転可能とされ、前記回転軸方向と交差する方向に突出した支持部と、前記回転軸方向に並んで設けられた複数の係合部と、前記支持部に設けられ、前記支持部を回転されることで前記係合部に係合され、回転方向側への移動及び逆回転方向の移動を規制する被係合部と、前記支持部の突出方向の端部から延出し、取付部側貫通孔を有する第一フランジ部と、前記第一フランジ部の回転軸方向の両側から延出し、前記取付部側貫通孔の中心軸方向に対する位置が前記第一フランジ部と異なるように配置され、前記第一フランジ部との間に隙間が形成される第二フランジ部と、を備えている。
【0023】
請求項6の発明では、支持部が回転されることで、被係合部が係合部に係合され回転方向側への移動及び逆回転方向の移動を規制することで固定される。
【0024】
そして、第一フランジと第二フランジ部との間に形成される隙間に、組み付け相手の部材が挟まれて保持された状態で組み付けられるので、例えばS字クリップに組み付け相手の部材を挟む構成と比較し、組付作業性が向上する
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によれば、バンパーカバーとアンダーカバーとを組み付ける組付作業性を向上させることができる。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、アンダーカットを有する形状と比較し、バンパーカバーを容易に成形することができる。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、ビードが形成されていない構成と比較し、取付部の剛性を強化することができる。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、バンパーカバーとアンダーカバーとの組付強度を確保しつつ、組付作業性を向上させることができる。
【0029】
請求項5に記載の発明によれば、第一フランジ部の下面又は上面に凸部が形成されていない構成と比較し、アンダーカバーのがたつきを抑制することができる。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、本発明を有しない構成と比較し、組付作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】バンパーカバーにアンダーカバーを組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図2】バンパーカバーの取付部を示し、(A)は支持部が車両前方向後側に延出した(爪部やストッパー部がリブ部に係止する前の)状態の斜視図であり、(B)は支持部が車両上下方向上側に延出した(爪部やストッパー部がリブ部に係止した後の)状態の斜視図である。
【図3】バンパーカバーの取付部の支持部が車両上下方向上側に延出した(爪部やストッパー部がリブ部に係止した後の)状態の(A)は車前後方向後側から見た後面図であり、(B)は車両幅方向内側から見た側面図であり、(C)は(B)のC−C線に沿った断面図である。
【図4】バンパーカバーの取付部の支持部が車両前後方向後側に延出した(爪部やストッパー部がリブ部に係止する前の)状態の(A)は車前後方向後側から見た後面図であり、(B)は車両幅方向内側から見た側面図である。
【図5】バンパーカバーの取付部にアンダーカバーが組み付けられた状態を車両幅方向内側から見た側面図である。
【図6】取付部を成形するための二つの金型を示し、(A)は図4(A)の6A−6A線に沿った断面に対応する断面であり、(B)は図4(A)の6B−6Bに沿った断面に対応する断面である。
【図7】バンパーカバーとアンダーカバーとを組み付ける組み付け作業を(A)〜(C)へと順番に示す工程図である。
【図8】S字クリップを用いた参考例としての組付構造を示し、(A)はS字クリップをバンパーのフランジ部に差し込む前の状態を示す斜視図であり、(B)はS字クリップとスクリューとでアンダーカバーを締結する際にS字クリップが回転する様子を説明するための斜視図である。
【図9】(A)はS字クリップを用いた参考例としての組付構造を示す斜視図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜図7を用いて、本発明の実施形態に係るバンパーカバーの取付部について説明する。なお、矢印FRは車両前後方向前側を示し、矢印UPは車両上下方向上側を示し、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
<構成>
まず、発明の実施形態に係るバンパーカバーの取付部の構成について説明する。
【0033】
図1に示すように、バンパーカバー20は車両幅方向を長手方向として配置された長尺状の部材であり、図示しないフロントバンパの前端部の意匠面(外面)を形成するべく配置される樹脂製の部材である。バンパーカバー20における車両幅方向外側部分は、車両前後方向後側に向かって湾曲している。また、車両10の床下にはアンダーカバー50が配置さている。そして、バンパーカバー20の裏面20Uの下端部22に形成された取付部100を介して、バンパーカバー20とアンダーカバー50とが組み付けられている。
【0034】
取付部100はバンパーカバー20の下端部22に車両幅方向に間隔をあけて複数設けられている。図2(B)及び図3に示すように、取付部100は、ブラケット部102とリブ部150A,150Bと有している。
【0035】
ブラケット部102は、支持部110と、第一フランジ部120と、第二フランジ部130A,130Bと、爪部140A、140Bと、ストッパー部160A,160Bと、を含んで構成されている。また、ブラケット部102は、バンパーカバー20の下端部22の後方端部において、後述するインテグラルヒンジ112を介して、バンパーカバー20と一体成形されている。
【0036】
ブラケット部102を構成する支持部110は、バンパーカバー20の下端部22から車両上下方向上側に延出する。また、支持部110(ブラケット部102全体)は、インテグラルヒンジ112によって車両上下方向に回転可能とされている
【0037】
なお、「インテグラルヒンジ」とは、樹脂成形品の一部分を他の部分に直線状に連結する部位のことをいい、この連結部位の厚みが周囲の部分よりも薄いことにより、回転させることができるヒンジとして機能する部位のことをいう。
【0038】
第一フランジ部120は、支持部110の端部の車両幅方向の中央部分から車両前後方向後側に延出する。第一フランジ部120の先端部は、車両前後方向後側斜め上側に傾斜したガイド部124が形成されている。
【0039】
第一フランジ部120の中央部分には、車両上下方向に貫通する略矩形状の取付部側貫通孔122が形成されている。また、第一フランジ部120の上面120Uにおける取付部側貫通孔122の外縁部には、肉厚部123が形成されている。
【0040】
第一フランジ部120の下面120Lにおける取付部側貫通孔122の車両前後方向の前側と後側とには、それぞれ凸部126、128が形成されている。凸部126,128は、車両幅方向に沿って延在している。また、凸部126の車両前後方向の後側面には、ガイド部124から連続する傾斜面127が形成され、凸部128の車両前後方向の後側面には傾斜面129が形成されている(図3(B)を参照)。なお、凸部126、128の高さは、後述するグロメット80の頭部82の厚みと一致又は略一致するように設定されている(図5(B)を参照)。
【0041】
第二フランジ部130A,130Bは、支持部110の端部における第一フランジ部120の車両幅方向の両外側から車両前後方向後側に延出する。第二フランジ部130A,130Bの先端部は、車両前後方向後側斜め下側に傾斜したガイド部134A,134Bが形成されている。また、第二フラン部130A,130Bは第一フランジ部120よりも車両上下方向下側から延出する。よって、第二フランジ部130A,130Bは第一フランジ部120よりも車両上下方向下側に配置され、第一フランジ部120と第二フランジ部130A,130Bとの間に車両上下方向の隙間125が形成される。
【0042】
第一フランジ部120と支持部110との境界部(屈曲部)には、車両前後方向前側が凹んだビード119が形成されている。また、ビード119は、第二フランジ部130A,130Bの根元部分よりも車両上下方向下側まで延在する。
【0043】
リブ部150A,150Bは、下端部22におけるインテグラルヒンジ112よりも車両幅方向両外側の部位から、それぞれ車両前後方向後側に延出する。なお、図3(C)に示すように、リブ部150A,150Bは、後述するように型抜き勾配のため、車両前後方向後側に向かって板厚が薄くなっている。よって、下端部22におけるリブ部150A,150Bとの境界部分は肉厚部Dとなる。なお、本実施形態では、リブ部150A,150Bの車両前後方向の長さL1は、20mm以下に設定されている。
【0044】
図2(B)及び図3に示すように、爪部140A、140Bは、前述した第二フランジ部130A,130Bのそれぞれ車両幅方向の両外側部から延出し、屈曲することで車両上下方向下側、且つリブ部150A,150Bに向かって斜めに延出する。そして、爪部140A,140Bの下端部142A,142Bが、リブ部150A、150Bのそれぞれ上面150AU,150BUに係止する。
【0045】
ストッパー部160A、160Bは、支持部110の根元部分の車両幅方向両側からそれぞれリブ部150A,150Bに向かって延出し、リブ部150A,150Bのそれぞれ下面150AL,150BLに係止する。
【0046】
つまり、爪部140A,140Bの下端部142A,142Bとストッパー部160A,160Bとで、リブ部150A,150Bを挟んでいる。
【0047】
なお、図3(B)に示すように、爪部140A,140Bの下端部142A,142Bは取付部側貫通孔122の中心位置を通る鉛直方向の中心線Gよりも車両前後方向前側に位置し、ストッパー部160A,160Bは爪部140A,140Bの下端部142A,142Bよりも更に車両前後方向前側に位置している。また、取付部100は、車両前後方向に見て中心線Gに対して線対称となっている。
【0048】
図5に示すように、前述した取付部100の第一フランジ部120の取付部側貫通孔122には、筒状のグロメット80が挿入され取り付けられている。グロメット80は、軸方向に貫通するねじ孔86が形成されている(図7(A)も参照)。また、軸方向の一方の端部には略矩形板状の頭部82が形成されている。なお、頭部82の外径は、取付部側貫通孔122よりも大きく、且つ凸部126,128間よりも小さい。また、この頭部82の厚みは、前述したように第一フランジ部120の下面120Lに形成された凸部126、128の高さと一致又は略一致する。つまり、頭部82と凸部126、128とが面一又は略面一となる。
【0049】
頭部82から軸方向に脚部84が突出し、脚部84の先端には、略三角形状の掛止部83が形成されている。そして、頭部82と掛止部83とで第一フランジ部120を挟持することで、第一フランジ部120の取付部側貫通孔122にグロメット80が固定される。
【0050】
そして、取付部側貫通孔122にグロメット80が固定された状態で、第一フランジ部120と第二フランジ部130A,130Bとの間の隙間125にアンダーカバー50の先端部52が挟まれている。アンダーカバー50の先端部52には、取付部側貫通孔122に対応する位置に車両上下方向に貫通するカバー側貫通孔54が形成されている(図7(A)も参照)。そして、カバー側貫通孔54から挿入されたスクリュー90がグロメット80のねじ孔86に螺合することで、バンパーカバー20の取付部100にアンダーカバー50が固定されている。
【0051】
なお、後述するように、成型時においては、ブラケット部102は、図2(A)及び図4に示す支持部110が車両前後方向後側に延出した状態であるが、その状態からインテグラルヒンジ112を回転中心としてブラケット部102を回転させて、図2(B)及び図3に示す支持部110が車両上下方向上側に延出した状態として、アンダーカバー50が組み付けられている。
【0052】
また、図4に示すように、ブラケット部102は、支持部110が車両前後方向後側に延出する状態では、車両前後方向に見ると、第一フランジ部120、第二フランジ部130A,130B、リブ部150A,150B、爪部140A,140B、及びストッパー部160A,160Bが、重ならないように形成されている。また、取付部側貫通孔122の貫通方向は車両前後方向となる。そして、取付部100は、支持部110が車両前後方向後側に延出した状態では、アンダーカットを有しない形状になっている。
【0053】
<成型方法>
つぎに、バンパーカバー20の型成型について説明する。なお、各方向は、バンパーカバー20が車両10に組み付けられた車両組付状態、すなわち車両基準で説明する。
【0054】
図2(A)及び図4に示すように、型成型時におけるブラケット部102は、支持部110が車両前後方向後側に延出した状態である。図6には、取付部100を成形するための二つの第一金型510及び第二金型520が示されている。第一金型510は車両基準で車両前後方向前側(図6の矢印F1方向)が抜き方向とされており、第二金型520は車両前後方向後側方(図6の矢印F2方向)が抜き方向とされている。
【0055】
そして、上述したように、取付部100は、ブラケット部102の支持部110が車両前後方向後側に延出した状態では、アンダーカットを有しない形状であるので、二つの第一金型510及び第二金型520を車両前後方向に引き抜くだけで取付部100を有するバンパーカバー20が成型される。なお、図6(B)に示すように、本実施形態では第一金型510と第二金型520との合わせ角度(抜き勾配)αは、5°以上に設定されている。
【0056】
<組付方法>
つぎに、バンパーカバー20とアンダーカバー50とを組み付ける組付方法について、図2、図5、図7を用いて説明する。なお、各方向は、バンパーカバー20が車両10に組み付けられた車両組付け状態、すなわち車両基準で説明する。
【0057】
図2(A)に示すように、バンパーカバー20の下端部22に一体成型されている取付部100は、車両前後方向後側に延出した状態で型成型される。そして、図2(B)に示すように、支持部110の根元のインテグラルヒンジ112を回転中心として、ブラケット部102全体を回転させる。
【0058】
これにより、爪部140A,140Bがリブ部150A,150Bに当接して弾性変形し、リブ部150A,150Bを乗り越え、爪部140A,140Bの下端部142A,142Bがリブ部150A,150Bの上面150AU,150BUに係止する。また、ストッパー部160A,160Bがリブ部150A,150Bの下面150AL,150BLに係止する。つまり、爪部140A,140Bの下端部142A,142Bとストッパー部160A,160Bとで、リブ部150A,150Bを挟むことで、ブラケット部102は、支持部110が車両上下方向上側に延出した状態に固定される。
【0059】
図7(A)に示すように、車両上下方向下側からグロメット80を、取付部100の第一フランジ部120の取付部側貫通孔122に挿入する。取付部側貫通孔122にグロメット80の脚部84を挿入すると、掛止部83の傾斜面が取付部側貫通孔122に当接して脚部84が弾性変形して取付部側貫通孔122を通過したのち、掛止部83(脚部84)が拡幅する。そして、頭部82と掛止部83とで第一フランジ部120を挟持することで、第一フランジ部120の取付部側貫通孔122に、グロメット80が固定される(図5も参照)。
【0060】
図7(A)及び図7(B)に示すように、バンパーカバー20の取付部100における第一フランジ部120と第二フランジ部130A,130Bとの隙間125に、車両前後方向後側から前側に向かってアンダーカバー50の先端部52を差し込む。このとき、アンダーカバー50の先端部52の車両上下方向の位置が多少ずれても、第一フランジ部120のガイド部124及び第二フランジ部130A,130Bのガイド部134A,134Bによって、ガイドされ、隙間125にスムーズに差し込まれる(図5も参照)。
【0061】
更に、アンダーカバー50の先端部52が第一フランジ部120の凸部126の傾斜面127(図5(B)を参照)でガイドされることで、グロメット80の頭部82に引っかかることなく、差し込まれる。また、凸部128の傾斜面129(図5を参照)にガイドされることで、奥までスムーズに差し込まれる。
【0062】
そして、図7(C)及び図5に示すように、車両上下方向下側から上側に向かって、スクリュー90をカバー側貫通孔54から挿入し、スクリュー90をグロメット80のねじ孔86に螺合させることで、バンパーカバー20の取付部100にアンダーカバー50が固定される。
【0063】
なお、上記説明では、バンパーカバー20の取付部100の隙間125にアンダーカバー50の先端部52を差し込んだが、これに限定されない。バンパーカバー20をアンダーカバー50側に移動させて、取付部100の隙間125にアンダーカバー50の先端部52が差し込まれてもよい。
【0064】
<本実施形態の作用・効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0065】
図5に示すように、第一フランジ部120と第二フランジ部130A,130Bとの間に形成される隙間125にアンダーカバー50の先端部52が挟まれて保持された状態で、グロメット80とスクリューと90とによって、アンダーカバー50が取付部100(ブラケット部102)に固定される。このようにグロメット80とスクリュー90とで締結することで組付強度が確保されると共に、例えばS字クリップ(図8参照)のように位置がずれる怖れがないので、S字クリップを用いる構成と比較し、組付作業性が向上する。
【0066】
また、S字クリップの部品単価よりもグロメット80の部品単価の方が安い。よって、本実施形態の方がS字クリップを用いる場合よりも、低コストで組付強度を確保することができる。
【0067】
また、アンダーカバー50の先端部52が第一フランジ部120の凸部126、128の傾斜面127,129によって、ガイドされることで、グロメット80の頭部82に引っかかることなく、スムーズに奥まで差し込むことができる。また、これら凸部126,128によって、アンダーカバー50の先端部52のガタツキが防止される。よって、組付強度が更に向上すると共に組付作業性が更に向上する。
【0068】
また、図2等に示されているように、第一フランジ部120と支持部110の境界部(屈曲部)とにビード119が形成されていると共に、ビード119が第二フラン部130A,130Bの根元部分(屈曲部)よりも車両上下方向下側に延在している。
【0069】
そして、このビード119によって、第一フランジ部120及び支持部110の剛性が強化されると共に、支持部110における第一フランジ部120及び第二フランジ部130A,130Bとの境界部(屈曲部)の剛性が強化される。また、このように剛性が強化されることで、スクリュー90をグロメット80に螺合させる際に加わる力によって生じる第一フランジ部120及び支持部110の撓みが抑制される。したがって、スクリュー90の締結強度が確保されると共に組付作業性が更に向上する。
【0070】
また、図5等に示されているように、第一フランジ部120の上面120Uにおける取付部側貫通孔122の外縁部に形成された肉厚部121によって、取付部側貫通孔122の強度が向上し、大きな力や衝撃が加わることによる取付部側貫通孔122の破損が防止される。
【0071】
また、図2(B)や図3(A)に示されているように、爪部140A,140B、ストッパー部160A,160B、及びリブ部150A,150Bは、車両幅方向に一対且つ対称に設けられている。よって、これらが対称でない構成やいずれか一方のみを有する構成と比較し、支持部110が車両上下方向上側に延出する状態に、取付部100(ブラケット部102)がより強固に保持される。
【0072】
なお、図3(A)に示すように、スクリュー90をグロメット80に螺合させる際の作業性を向上させるために、第二フランジ部130A,130Bと取付部側貫通孔122の中心位置を通る中心線Gとの距離L2は、工具類を挿入して作業する際に問題が生じないように、十分大きく確保されている。本実施形態では、この距離L2は23mm以上確保されている。
【0073】
また、図6に示すように、取付部100は、ブラケット部102の支持部110が車両前後方向後側に延出した状態では、アンダーカットを有しない形状であるので、二つの第一金型510及び第二金型520を車両前後方向に引き抜くだけで取付部100が成型される。よって、取付部100は、アンダーカットを成形するためのスライドコア等の特別な成形型を用いることなく、容易に成形することができる。
【0074】
また、図6(B)に示すように、第一金型510と第二金型520との合わせ角度(抜き勾配)αは、5°以上に設定されている。よって、角度(抜き勾配)αは、5°よりも小さい場合と比較し、型合わせ部位にできるバリの発生を抑制又は防止することができる。
【0075】
ここで、図3(C)に示すように、リブ部150A,150Bは抜き勾配のため、車両後方後側に向かって板厚が薄くなっており、リブ部150A,150Bと下端部22との境界部分は肉厚部Dとなる。このような肉厚部Dは成型時にヒケが発生しやすい。そして、下端部22はバンパーカバー20の意匠面を構成するので、ヒケの発生をできだけ抑えたい。
【0076】
よって、本実施形態では、図3(B)に示すように、爪部140A,140Bの下端部142A,142B及びストッパー部160A,160Bを、取付部側貫通孔122の中心位置を通る中心線Gよりも車両前後方向前側に位置させることで、リブ部150A,150Bを短くし、ヒケの発生を抑制又は防止している。
【0077】
そして、本実施形態では、リブ部150A,150Bの車両前後方向の長さL1を20mm以下とすることで、ヒケの発生が意匠面を構成することに対して問題がないレベルに抑えられている。なお、本実施形態では、ヒケの発生が問題ないリブ部150A,150Bの長さL1は20mm以下であるが、バンパーカバーの板厚や全体形状によって、このL1の数値は変わる。よって、バンパーカバーの板厚や全体形状によって適宜L1を設定すればよい。
【0078】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0079】
例えば、凸部126,128は、第一フランジ部120の下面120Lにおける取付部側貫通孔122の車両前後方向の前側と後側とに、それぞれ車両幅方向に沿って延在するように形成されていたが、これに限定されない。
【0080】
例えば、第一フランジ部120の下面120Lにおける取付部側貫通孔122の車両幅方向の両外側にそれぞれ車両前後方向に沿って延在するように形成されていてもよい。或いは、取付部側貫通孔122の周囲に環状に形成されていてもよい。
【0081】
なお、アンダーカバー50のがたつきを効果的に抑制するためには、アンダーカバー50の先端部52の車両前後方向の前側と後側とを押さえることが効果的である。よって、凸部126,128は、少なくとも取付部側貫通孔122の車両前後方向の前側と後側とに設けられていることが望ましい。
【0082】
また、上記実施形態では、取付部100の第一フランジ部120の下面120Lにグロメット80の頭部82が係止する構成であったが、これに限定されない。取付部100の第一フランジ部120の上面120Uにグロメット80の頭部82が係止する構成であっってもよい。また、第一フランジ部120の上面120Uにグロメット80の頭部82が係止する構成の場合は、第一フランジ部120の上面120Uに(下面120Lに形成した凸部と同様の構成の)凸部を形成する。
【0083】
また、上記実施形態では、取付部100は、支持部110が車両前後方向後側に延出した状態では、アンダーカットを有しない形状であったが、これに限定されない。アンダーカットを有する形状であってもよい。
【0084】
例えば、上記実施形態では、第一フランジ部120は第二フランジ部130A,130Bよりも車両上下方向上側に配置されていたが、これに限定されない。第一フランジ部120が第二フランジ部130A,130Bよりも車両上下方向下側に配置されていてもよい。なお、爪部140A,140Bにアンダーカバー50が干渉する場合は、干渉しないようにアンダーカバー50の先端部を凹状に凹ます等の対応を適宜行えばよい。
【0085】
また、上記実施形態では、バンパーカバーとアンダーカバーとを組み付ける構造に本発明を適用したが、これに限定されない。車両を構成する二つの部材(部品)の組付構造全般に本発明を適用することができる。
【0086】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
10 車両
20 バンパーカバー
22 下端部
50 アンダーカバー
54 カバー側貫通孔
80 グロメット
90 スクリュー(締結具)
100 取付部
110 支持部
112 インテグラルヒンジ
120 第一フランジ部
122 取付部側貫通孔
125 隙間
126 凸部
128 凸部
130A 第二フランジ部
130B 第二フランジ部
140A 爪部(被係合部)
140B 爪部(被係合部)
142A 下端部
142B 下端部
150A リブ部(係合部)
150B リブ部(係合部)
160A ストッパー部(被係合部)
160B ストッパー部(被係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバンパーカバーの下端部に形成され、前記下端部との境界部に形成されたインテグラルヒンジによって回転可能とされ、車両組付状態において、車両上下方向上側に延出した支持部と、
車両組付状態の前記支持部の上端部から車両前後方向後側に延出し、車両上下方向に貫通する取付部側貫通孔を有する第一フランジ部と、
前記第一フランジ部の車両幅方向の両側からそれぞれ車両前後方向後側に延出し、前記第一フランジ部よりも車両上下方向下側又は上側に配置されることで前記第一フランジ部との間にアンダーカバーが挟まれる隙間が形成される対を成す第二フランジ部と、
前記バンパーカバーの下端部における前記インテグラルヒンジよりも車両幅方向の両外側の部位からそれぞれ車両前後方向後側に延出する対を成すリブ部と、
対を成す前記第二フランジ部からそれぞれ前記リブ部に向かって斜めに延出し、下端部が前記リブ部の上面に係止される爪部と、
前記支持部の根元部分における車両幅方向の両側部からそれぞれ前記リブ部側方向に延出し、前記リブ部の下面に係止する対を成すストッパー部と、
を備えるバンパーカバーの取付部。
【請求項2】
前記支持部が車両前後方向後側に延出した車両組付前の状態を車両前後方向に見た場合に、前記第一フランジ部、前記第二フランジ部、前記リブ部、前記爪部、及び前記ストッパー部が重ならないように配置され、アンダーカットを有しない形状とされている、
請求項1に記載のバンパーカバーの取付部。
【請求項3】
前記支持部と前記第一フランジ部との境界部に形成され、車両組付状態において、前記支持部と前記第二フランジ部との境界部よりも車両上下方向下側まで延在するビードを有する請求項1又は請求項2に記載のバンパーカバーの取付部。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の取付部が形成されたバンパーカバーと、
前記取付部の前記第一フランジ部と前記第二フランジ部との間に形成された隙間に挟まれ、前記第一フランジ部に形成された前記取付部側貫通孔と対応する位置に車両上下方向に貫通するカバー側貫通孔が形成されたアンダーカバーと、
前記取付部側貫通孔に取り付けられたグロメットと、
前記カバー側貫通孔から挿入し前記グロメットに螺合することで前記アンダーカバーを前記取付部に締結する締結具と、
を備えるバンパーカバーの組付構造。
【請求項5】
前記グロメットは、前記取付部の前記第一フランジ部の下面又は上面に係止する前記取付部側貫通孔よりも大きい頭部を有し、
前記取付部の前記第一フランジ部の下面又は上面には、少なくとも前記頭部を間に挟んで対向する二箇所に凸部が形成されている、
請求項4に記載のバンパーカバーの組付構造。
【請求項6】
インテグラルヒンジによって所定方向を回転軸方向として回転可能とされ、前記回転軸方向と交差する方向に突出した支持部と、
前記回転軸方向に並んで設けられた複数の係合部と、
前記支持部に設けられ、前記支持部を回転されることで前記係合部に係合され、回転方向側への移動及び逆回転方向の移動を規制する被係合部と、
前記支持部の突出方向の端部から延出し、取付部側貫通孔を有する第一フランジ部と、
前記第一フランジ部の回転軸方向の両側から延出し、前記取付部側貫通孔の中心軸方向に対する位置が前記第一フランジ部と異なるように配置され、前記第一フランジ部との間に隙間が形成される第二フランジ部と、
を備えた取付部。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−112224(P2013−112224A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260997(P2011−260997)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)