説明

取付部の被取付部への取付構造

【課題】取付部の被取付部への取付作業が容易であると共に取り付けた取付部が被取付部から不用意に外れることがなく、更に取付部の被取付部からの取外し作業が容易である取付部の被取付部への取付構造を得る。
【解決手段】フォグランプカバー50の取付時には、係合部100を被係合孔200へ挿入して、爪部120のスロープ124Kを幅広孔210の辺部212に当接させて挿入すれば自動的に係合部が撓む。係合部100のくびれ部110まで挿入されると、弾性復元力によって爪部120は弾性変形方向と反対方向へ変位し、自動的に係合部100のくびれ部110が幅狭孔220に係合する。したがって、フォグランプカバー50をフロントバンパカバー10に容易に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部の被取付部への取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バンパに撓み変形可能な係合爪を設けると共に、バンパに取付けられるグリルに矢印形状の係合突起を設け、グリルの係合突起をバンパの係合爪に係合することによりグリルをバンパに取付けるグリル取付構造が開示されている。
【0003】
特許文献2には、フォグランプフィニッシャ本体とリング部材とを爪嵌合により結合させるようにしたフォグランプフィニッシャ構造が開示されている。
【0004】
特許文献3には、矢印状に突出する固定手段とこれを受け入れる開口部を成す係止部材の取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−180400号公報
【特許文献2】特開2006−193008号公報
【特許文献3】特開2000−197235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固定手段を係止部から取り外す場合、当該固定手段の先端部に形成された一対の係合爪を二本の指で摘んで互いに接近する方向へ荷重を加える必要がある。よって、取り外しの作業性の向上について改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、取付部の被取付部への取付作業が容易であると共に取り付けた取付部が被取付部から不用意に外れることがなく、更に取付部の被取付部からの取外し作業が容易である取付部の被取付部への取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、第一の孔と前記第一孔よりも小さい第二の孔とが略凸字形状に連結された被係合孔を備える被取付部と、前記被取付部の前記被係合孔に挿入されることで取付可能とされ、前記第一の孔と前記第二の孔との連結方向と当該挿入方向とに直交する幅方向の幅が前記第二の孔よりも小さいくびれ部と、前記くびれ部よりも挿入方向側に設けられ前記幅方向の幅が第一の孔よりも大きい根元部と、前記根元部よりも前記挿入方向側に設けられ前記連結方向において前記第一の孔の方向に傾斜した傾斜面又は前記第一の孔の方向に湾曲した湾曲面と、を有し、前記連結方向に弾性変形可能とされた係合部を備えた取付部と、を有する。
【0009】
請求項2の発明は、前記係合部の前記挿入方向側の先端部は前記根元部よりも前記幅方向の幅が狭く、且つ、前記根元部に向かって徐々に前記幅方向の幅が広くなるように構成されている。
【0010】
請求項3の発明は、前記被係合孔の前記挿入方向側と反対側の縁部には、R面取り又はC面取りされた面取部が形成されている。
【0011】
請求4発明は、前記係合部における前記くびれ部に対応する前記第二の孔と反対側の板面には、挿入方向に沿ってリブが形成されている。
【0012】
請求項5の発明は、前記被取付部は、樹脂製のバンパーカバーであり、前記取付部は、樹脂製のフォグランプカバーである。
【0013】
請求項6の発明は、前記被取付部は、樹脂製のバンパーカバーを構成するアッパーカバーであり、前記取付部は、樹脂製のバンパーカバーを構成するロアカバーである。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、取付部を被取付部に取付ける際には、当該取付部の係合部を当該被取付部に形成された被係合孔に係合させればよい。
【0015】
具体的には、係合部を被係合孔に挿入する。このとき、被係合孔の第一の孔における第二の孔側の辺部に係合部の傾斜面又は湾曲面が当たり、係合部が第一の孔の側に弾性変形する。そして、くびれ部まで挿入されると、弾性復元力によってくびれ部が被係合孔の第二の孔に嵌り係合する。
【0016】
このように取付部の取付時には、係合部を被係合孔に挿入すると第一の孔における第二の孔側の辺部に係合部の傾斜面が当たり、自動的に弾性変形して撓み、くびれ部まで挿入されると弾性復元力によって撓みが戻り、自動的に係合部のくびれ部が被係合孔の第二の孔に係合する。したがって、取付部を被取付部に容易に取り付けることができる。また、くびれ部が第二の孔に係合しているので、取付部に挿入方向と反対方向(即ち、取付部の外れ方向)への外力が作用しても、係合部が被係合部から外れることはない
【0017】
一方、取付部の取外し時には、係合部を第一の孔の側に弾性変形させることで、係合部のくびれ部が被係合孔の第二の孔から外れ係合が解除される。つまり、係合部に解除操作力を一方向から加えるだけで、係合部と被係合孔との係合状態が解除される。したがって、取付部を被取付部から容易に取り外すことができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、係合部の挿入方向側の先端部は根元部よりも幅方向の幅が狭く、且つ根元部に向かって徐々に幅方向の幅が広くなるように構成されているので、係合部が被係合孔にスムーズに挿入され、その結果、取付作業性が向上する。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、被係合孔の前記挿入方向側と反対側の縁部のR面取り又はC面取りされた面取部に係合部が当たって挿入されることで摺動抵抗が低減される。よって、係合部が被係合孔にスムーズに挿入されるので、取付部を被取付部により容易に取り付けることができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、係合部におけるくびれ部に対応する第二の孔と反対側の板面に挿入方向に沿って形成されたリブによって、くびれ部の剛性が向上する。よって、係合部のくびれ部の弾性復元力が大きくなるので、くびれ部が被係合孔の第二の孔に、より確実に係合すると共に、第二の孔からくびれ部が外れるような撓みが抑制される
【0021】
請求項5記載の本発明によれば、樹脂製のバンパーカバーに被係合孔が形成されており、かかる被係合孔に樹脂製のフォグランプカバーの係合部が挿入されて、係合部のくびれ部が被係合孔の第二の孔に係合されることで、バンパーカバーにフォグランプカバーが取り付けられる。また、係合部に解除操作力を一方向から加えるだけで、フォグランプカバーがバンパーカバーから容易に取り外される。
【0022】
請求項6記載の本発明によれば、樹脂製のアッパーカバーに被係合孔が形成されており、かかる被係合孔に樹脂製のロアカバーの係合部が挿入されて、係合部のくびれ部が被係合孔の第二の孔に係合されることで、アッパーカバーにロアカバーが取り付けられる。また、係合部に解除操作力を一方向から加えるだけで、ロアカバーがアッパーカバーから容易に取り外される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る取付部の被取付部への取付構造は、取付部の被取付部への取付作業が容易であると共に取り付けた取付部が被取付部から不用意に外れることがなく、更に取付部の被取付部からの取外し作業が容易であるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項2に記載の発明に係る取付部の被取付部への取付構造は、係合部の挿入方向側の先端部は根元部よりも幅方向の幅が狭くなっていない構成と比較し、取付作業性が向上するという優れた効果を有する。
【0025】
請求項3記載の本発明に係る取付部の被取付部への取付構造は、被係合孔の前記挿入方向側と反対側の縁部に面取部が形成されていない構成と比較し、係合部が被係合孔にスムーズに挿入することができるという優れた効果を有する。
【0026】
請求項4記載の本発明に係る取付部の被取付部への取付構造は、リブが形成されていない構成と比較し、くびれ部を被係合孔の第二の孔に、より確実に係合させることができると共に、第二の孔からくびれ部が外れるような係合部の撓みを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項5記載の本発明に係る取付部の被取付部への取付構造は、フォグランプカバーのバンパーカバーへの取付作業が容易であると共に、取り付けたフォグランプカバーが不用意にバンパーカバーの被係合孔から外れることがなく、更にフォグランプカバーのバンパーカバーからの取外し作業が容易であるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項6記載の本発明に係る取付部の被取付部への取付構造は、ロアカバーとアンダーカバーとの取付作業が容易であると共に、ロアカバーがアンダーカバーから不用意にバンパーカバーの被係合孔から外れることがなく、更にロアカバーとアッパーカバーとの分解作業が容易であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】フロントバンパカバーにフォグランプカバーを組付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図2】フォグランプカバーに設けられた係合部を示す車両上下方向上側から見た斜視図である。
【図3】フォグランプカバーに設けられた係合部を示す車両上下方向下側から見た斜視図である。
【図4】フォグランプカバーに設けられた係合部を示す車両幅方向から見た側面図である。
【図5】フロントバンパカバーに設けられた被係合孔を示し、(A)は車両前後方向後側から見た後面図であり、(B)は車両前後方向前側から見た正面図である。
【図6】フロントバンパカバーに設けられた被係合孔にフォグランプカバーに設けられた係合部が係合した状態を示す斜視図である。
【図7】(A)はフォグランプカバーの係合部を成形する第一金型、第二金型、及び第三金型の配置を示す縦断面図であり、(B)はフロントバンパカバーの取付部の被係合孔を成型する第四金型及び第五金型の配置を示すと共に、切削カッターによる加工を説明するための図5の7B−7B線断面図である。
【図8】係合部が被係合孔に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部の係合前の状態を示す斜視図であり、(B)は(A)のB―B線断面図である。
【図9】係合部が被係合部に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部の爪部の傾斜面が被係合孔の幅広孔の辺部に当接して撓んだ状態を示す斜視図であり、(B)は(A)のB―B線断面図である。
【図10】係合部が被係合部に係合されるまでの様子を連続図で示したものであり、(A)は係合部のくびれ部が被係合孔の幅狭孔に係合した状態を示す斜視図であり、(B)は(A)のB―B線断面図である。
【図11】(A)は比較例の取付構造の係合部とフォグランプ用取付部とを示す斜視図であり、(B)はフォグランプ用取付部を車両前後方向前側から見た斜視図であり、(C)はフォグランプ用取付部を成型する第四金型及び第五金型を示す(B)のC−C線断面図である。
【図12】フロントバンパカバーを構成するアッパーカバーにロアカバーを組付けた状態を示す斜視図である。
【図13】アッパーカバーの被係合孔にロアカバーの係合部が係合した状態を示す斜視図である。
【図14】カンヌキクリップを用いてアッパーカバーにロアカバーを組付けた比較例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第一実施形態>
図1〜図10を用いて、本発明に係る取付部の被取付部への取付構造の第一実施形態について説明する。なお、矢印FRは車両前後方向前側を示し、矢印UPは車両上下方向上側を示し、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0031】
[全体構成]
図1には、被取付部の一例としての樹脂製のフロントバンパカバー10に取付部の一例としての樹脂製のフォグランプカバー50を取り付ける前の状態の分解斜視図が示されている。この図に示されるように、フロントバンパカバー10は車両幅方向を長手方向として形成された長尺状の板材であり、図示しないフロントバンパの前端部に意匠面を形成するべく配置される樹脂製の部材である。
【0032】
フロントバンパカバー10の長手方向の両端部近傍には車両前後方向後側へ向けて略直方体形状に凹むフォグランプ用取付部20が一体に形成されており、このフォグランプ用取付部20にフォグランプカバー50が取り付けられている。
【0033】
フォグランプ用取付部20の底部には比較的大きな略矩形状のフォグランプ用開口部22が形成されている。そして、このフォグランプ用開口部22に全体の形状が略半球体状に形成されたフォグランプ(図示略)がフロントバンパカバー10の裏面側から取り付けられる。
【0034】
フォグランプカバー50は、フォグランプ用取付部20の前面側に取り付けられ、前述したフォグランプ(図示略)の前面を覆うように構成されている。フォグランプカバー50は、正面視において略菱形平板状に形成された基部52と、この基部52の車両幅方向中央部分に設けられ且つ車両前後方向後側へ向けて円筒状に立設された円筒部54と、を含んで構成されている。なお、この円筒部54から、フォグランプ(図示略)から照射された光が投光される。
【0035】
フォグランプカバー50の基部52には、車両前後方向後側へ突出する複数の取付突起60と板状の係合部100とがそれぞれ一体に形成されている。なお、本実施形態においては、係合部100は、円筒部54の下側に近接する位置の一箇所のみに設けられている。
【0036】
フォグランプ用取付部20におけるフォグランプ用開口部22の下側の壁面部24には、被係合孔200が形成されている。この壁面部24は、車両前後方向を面外方向として形成されている。
【0037】
そして、フロントバンパカバー10のフォグランプ用取付部20の前面側に設けられた突起用取付穴(図示略)にフォグランプカバー50の取付突起60が挿入されると共に、図6に示すように被係合孔200に係合部100が挿入され係合することで、フォグランプカバー50がフロントバンパカバー10に取り付けられている。
【0038】
[取付構造]
つぎに、フォグランプカバー50のフロントバンパカバー10への取付構成について詳細に説明する。なお、各方向は、フォグランプカバー50がフロントバンパカバー10に取り付けられた状態、つまり、車両基準で説明する。
【0039】
図2〜図4に示すように、係合部100は、台部102と、くびれ部110と、爪部120と、を含んで構成されている。
【0040】
台部102はフォグランプカバー50の基部52(図1を参照)に一体に形成されている。くびれ部110はこの台部102から突出し板厚方向と直交する幅方向Wにくびれた(凹んだ)幅狭の部位とされ、爪部120はくびれ部から突出されたくびれ部110よりも幅広に部位とされている。
【0041】
言い換えると、係合部100は、幅広の台部102と幅広の爪部120との間に幅狭のくびれ部110が設けられた構成である。
【0042】
なお、本実施形態においては、係合部100の幅方向Wは車両幅方向と略一致し、係合部100の台部102及び爪部120の板厚方向は車両上下方向と略一致し、突出方向は車両前後方向後方側と略一致する。
【0043】
図3及び図4に示すように、くびれ部110と爪部120とは同じ板厚とされている。また、図2及び図4に示すように、台部102の車両上下方向上側の板面とくびれ部110の車両上下方向上側の板面とは面一となっているが、台部102の車両上下方向下側の板面とくびれ部110の車両上下方向下の板面とは段差が形成されている。
【0044】
図2〜図4に示すように、くびれ部110から突出する爪部120は、根元部122と傾斜部124と先端部126とを含んで構成されている。根元部122はくびれ部110から突出し、根元部122から板厚方向に対して車両上下方向下側に傾斜して突出することで傾斜部124が形成されている。そして、傾斜部124から根元部122と略平行に突出することで先端部126が形成されている。
【0045】
別の観点から説明すると、爪部120は、突出方向に間隔をあけて平行に配置された根元部122と先端部126との間を、傾斜部124が繋いだ構成である。また、傾斜部124の車両上下方向上側の板面が、後述する被係合孔200の幅広孔210の辺部212に当接するスロープ(傾斜面)124Kとなる(図12等を参照)。
【0046】
また、先端部126は突出方向に向かって先細形状とされ、根元部122に向かって徐々に幅方向の幅が広くなるように構成されている。また、先端部分には平面視略矩形状の押部127が形成されている。なお、押部127の車両上下方向上側の板面は、後述する係合部100のくびれ部110と被係合孔200の幅狭孔220との係合状態を解除する際の解除操作力を車両上下方向上側から受ける受圧面127Kとなる。
【0047】
図3及び図4に示すように、くびれ部110の車両上下方向下側の板面には突出方向に沿って二つのリブ114が形成されている。リブ114の根元部分は、台部102の端部104に繋がり、リブ114の先端部分は爪部120の根元部122まで延出している。
【0048】
図1に示す係合部100が挿入され係合する被係合孔200は、フォグランプ用取付部20の壁面部24に車両前後方向に貫通し、図5、図6、及び図8(A)に示すように、幅広孔210と幅狭孔220とで構成されている。幅狭孔220は、幅広孔210の幅方向Wの略中央部が車両上下方向上側に凹むことで形成されている。言い換えると、被係合孔200は、幅広孔210と幅狭孔220とが車両上下方向に連結した(繋がった)凸字形状とされている。なお、被係合孔200の幅広孔210の上辺部分における幅狭孔220の幅方向両側が、上述した係合部100のスロープ124Kが当接する辺部212である。
【0049】
幅広孔210の幅は、係合部100の爪部120の根元部122よりも幅広とされている。また、幅狭孔220の幅は、係合部100の爪部120の根元部122よりも幅狭で且つくびれ部110よりも幅広とされている。なお、本実施形態では、幅狭孔220の幅はくびれ部110よりも若干だけ幅広に設定されている(図6参照)。
【0050】
幅狭孔220の板厚方向の大きさは、係合部100のくびれ部110の板厚よりも若干大きい。また、幅広孔210の板厚方向の大きさは、係合部100の爪部120の板厚よりも大きい。なお、本実施形態においては、図8(B)に示すように、被係合孔200の板厚方向の高さHは、係合部100の爪部120の幅方向に見た板厚方向の高さhよりも大きくなるように設定されている。また、スロープ124Kは、幅広孔210と幅狭孔220とを跨ぐ位置とされている。
【0051】
図5(B)に示すように、被係合孔200の挿入方向側と反対側の縁部(係合部100が挿入すする側)には、R面取りされた、面取部200Rが形成されている。そして、図6に示すように被係合孔200に係合部100が挿入され、被係合孔200の幅狭孔220に係合部100のくびれ部110が係合する。
【0052】
なお、被係合孔200の幅広孔210と幅狭孔220との連結方向が「板厚方向」であり、連結方向と挿入方向とに直交する方向が「幅方向」である。また、被係合孔に挿入する挿入方向が「突出方向」である。
【0053】
[型成型]
つぎに、フォグランプカバー50及びフロントバンパカバー10の型成型について説明する。
【0054】
図7(A)に示されるように、フォグランプカバー50は、三種類の第一金型82、第二金型84及び第三金型86によって成形されている。なお、第一金型82は車両基準で車両前後方向前(図7(A)の矢印F1方向)が抜き方向とされており、第二金型84は車両基準で車両前後方向後側(図7(A)の矢印F2方向)が抜き方向とされており、第三金型86は車両基準で車前後方向後斜め下側(図7(A)の矢印F3方向)が抜き方向とされている。
【0055】
図7(B)に示すように、フロントバンパカバー10は、第四金型92と第五金型94とによって成型されている。第四金型92は車両基準で車両前後方向前側(図7(B)の矢印F4方向)が抜き方向とされており、第五金型94は車両基準で車両前後方向後側(図7(B)の矢印F5方向)が抜き方向とされている。
【0056】
なお、二つの第四金型92及び第五金型94を車両前後方向に引き抜くだけで、フォグランプ用取付部20を有するフロントバンパカバー10が成型される。また、壁面部24に形成されている被係合孔200は、幅の異なる幅広孔210と幅狭孔220とで構成された単純構造である(凸字形状)。よって、壁面部24における被係合孔200の上辺部25部分に対応する凹部920は、切削カッター900によって形成することができる。
【0057】
[取付けと取外し方法]
つぎに、フロントバンパカバー10へのフォグランプカバー50の取付けと取外しについて説明する。まず取付けについて説明する。
【0058】
図1に示されるように、まずフォグランプカバー50をフロントバンパカバー10のフォグランプ用取付部20の前方に配置する。
【0059】
次いで、図8及び図9に示すように、フォグランプカバー50から突出した係合部100を被係合孔200の幅広孔210に挿入させる。つまり、車両基準で車両前後方向後側である矢印P1方向を取付方向(挿入方向)として係合部100を被係合孔200の幅広孔210に挿入する。
【0060】
幅広孔210の上辺部分おける幅狭孔220の幅方向両側の辺部212(図5も参照)に、係合部100の爪部120の傾斜部124のスロープ124Kが当接しガイドされることで、係合部100はくびれ部110の根元部分を起点に車両上下方向下側に撓む(板厚方向(矢印Q2方向)へ弾性変形する)。
【0061】
そして、図9及び図10に示されるように、係合部100のくびれ部110まで挿入されると、弾性復元力によって爪部120の撓みが戻る(弾性変形方向と反対方向(矢印Q1方向)へ変位する)。これにより、くびれ部110が被係合孔200の幅狭孔220に係合する。
【0062】
なお、係合部100の台部102の端部104が幅狭孔220の周囲の壁面部24に当接するので、係合部100はこれ以上挿入されることがない。また、この状態では、爪部120の根元側端部128が幅狭孔220の周囲の壁面部24に当接し、係合部100の外れ方向(矢印P2方向)への移動が規制(阻止)される。
【0063】
取外しは、係合部100の爪部120の先端の押部127の受圧面127Kを車両上下方向下側(矢印Q2方向)へ押圧することで、係合部100のくびれ部110が被係合孔200の幅狭孔220から外れる(係合が解除される)。そして、フォグランプカバー50を取付方向と反対側(矢印P2方向)に移動させることで、爪部120が被係合孔200から引き抜かれ、フォグランプカバー50がフロントバンパカバー10から取り外される。
【0064】
<本実施形態の作用・効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0065】
上述したように、本実施形態によれば、フォグランプカバー50の取付時には、係合部100を被係合孔200へ挿入して、爪部120のスロープ124Kを幅広孔210の辺部212に当接させて挿入すれば自動的に係合部が撓む。そして、係合部100のくびれ部110まで挿入されると、弾性復元力によって爪部120は弾性変形方向と反対方向(矢印Q1方向)へ変位し、自動的に係合部100のくびれ部110が幅狭孔220に係合する。したがって、フォグランプカバー50をフロントバンパカバー10に容易に取り付けることができる。
【0066】
また、フォグランプカバー50の取付後は、爪部120の根元側端部128が被係合孔200の幅狭孔220の周囲の壁面部24に当接し、係合部100の挿入方向と反対方向への移動が規制される。したがって、フォグランプカバー50に挿入方向と反対方向(即ち、フォグランプカバー50の外れ方向)への外力が作用しても、係合部100が被係合孔200から不用意に外れることはない。
【0067】
なお、本実施形態では、幅狭孔220の幅はくびれ部110よりも若干だけ幅広に設定されているので、幅方向のがたつきが抑制されている(図6参照)。
【0068】
また、フォグランプカバー50の取外し時には、係合部100の爪部120の押部127の受圧面127Kを片手で解除操作力を一方向から加えるだけで、係合部100のくびれ部110と被係合孔200の幅狭孔220との係合状態が解除される。したがって、フォグランプカバー50をフロントバンパカバー10から容易に取り外すことができる。
【0069】
このように、フォグランプカバー50のフロントバンパカバー10への取付作業が容易であると共にフロントバンパカバー10に取り付けたフォグランプカバー50が不用意に外れることがなく、更にフォグランプカバー50のフロントバンパカバー10からの取外し作業が容易である。
【0070】
なお、被係合孔200の幅広孔210の辺部212はR面取りされている。そして、R面取りされた辺部212に爪部120が当たって挿入されることで摺動抵抗が低減される。よって、係合部100の爪部120が被係合孔200にスムーズに挿入されるので、フォグランプカバー50を更に容易にフロントバンパカバー10に取り付けることができる。
【0071】
係合部100の先端部126は突出方向に向かって先細形状とされているので、被係合孔200にスムーズに挿入され、組付作業性が向上する。
【0072】
また、係合部100におけるくびれ部110に対応する板面にはリブ114が形成されているので、くびれ部110の剛性が向上する。よって、係合部100の弾性復元力が大きくなるので、くびれ部110が被係合孔200の幅狭孔220に、より確実に係合すると共に、幅狭孔220からくびれ部110が外れるような撓みが抑制される。
【0073】
また、図7(A)に示すように、係合部100は単純が構造であるので、フォグランプカバー50は、従来通り、三種類の第一金型82、第二金型84及び第三金型86によって成形することができる。
【0074】
また、図7(B)に示すように、係合部100が係合する被係合孔200は、フォグランプ用取付部20の壁面部24に形成された幅の異なる幅広孔210と幅狭孔220とで構成された単純構造である。よって、二つの第四金型92及び第五金型94を車両前後方向に引き抜くだけでフォグランプ用取付部20を有するフロントバンパカバー10を成型することができる。また、切削カッター900によって第四金型92を形成することができるので、低コストで金型を製作することができる。
【0075】
ここで、図11に示す比較例の取付構造と本実施形態の取付構造とを比較して説明する。
【0076】
図11(A)に示すように比較例の取付構造は、フォグランプカバー側には弾性変形する支持部536及びその先端部から張り出された爪部538を含む樹脂製の係合部528が一体形成されている。そして、取り付けの際には、フロントバンパカバー側のフォグランプ用取付部512のスロープ514A、514Bに、爪部538のスロープ540を干渉させて挿入することで、支持部536が弾性変形して撓みむと共に弾性復元力で係合部528が係合する構成である。
【0077】
このように比較例の取付構造は、バンパーカバー側にスロープ514A,514Bが設けられているので、図11(A)〜(C)に示すように、この部位の形状が複雑になる。よって、この部位を成型する金型550は切削カッター900(図7(B))によって加工することは困難であり、放電加工によって加工する必要が生じる。そして、放電加工は切削カッター900(図7(B)参照)による加工よりもコスト高であり、金型製作費が高くなる。
【0078】
これに対して、本実施形態の取付構造は、図7(B)に示すように、切削カッター900で加工することができるので、比較例の取付構造よりも金型製作費を安くすることができる。
【0079】
<第二実施形態>
図12〜図14を用いて、本発明に係る取付部の被取付部への取付構造の第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と同一部の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0080】
[構成]
図12に示すように、フロントバンパカバー30は、車両上下方向上側を構成する被取付部の一例としての樹脂製のアッパーカバー32と、車両上下方向下側を構成する取付部の一例としての樹脂製のロアカバー34と、を含んで構成されている。そして、アッパーカバー32の下端におけるフランジ部36にロアカバー34が取り付けられている。
【0081】
図13に示すように、アッパーカバー32の下端部に形成されたフランジ部36には、車両上下方向に貫通する被係合孔200が車両幅方向に沿って複数形成されている。これらの被係合孔200は、第一実施形態と同様の形状とされ、幅広孔210と幅狭孔220とで構成されている。
【0082】
また、ロアカバー34の上端部には、第一実施形態と同様の形状の係合部100が複数形成されている。なお、本実施形態の係合部100は、車両上下方向上側に突出している。
【0083】
そして、被係合孔200に係合部100が挿入され、くびれ部110が幅狭孔220に係合することで、ロアカバー34がアッパーカバー32に取り付けられている。
【0084】
なお、取付け方法及び取り外し方法は、第一実施形態と挿入方向が異なる以外は同様であるので、説明を省略する。
【0085】
<本実施形態の作用・効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0086】
本実施形態も第一実施形態と同様に、係合部100を被係合孔200へ挿入して、爪部120のスロープ124Kを幅広孔210の辺部212に当接させて挿入すれば自動的に係合部100が撓み、係合部100のくびれ部110まで挿入されると、弾性復元力によって爪部120は弾性変形方向と反対方向へ変位し、自動的に係合部100のくびれ部110が幅狭孔220に係合する。また、係合部100の爪部120の押部127の受圧面127Kを片手で解除操作力を一方向から加えるだけで、係合部100のくびれ部110と被係合孔200の幅狭孔220との係合状態が解除される。
【0087】
このように、ロアカバー34のアッパーカバー32への取付作業が容易であると共にロアカバー34が不用意に外れることがなく、更にロアカバー34のアッパーカバー32からの取外し作業が容易である。
【0088】
ここで、カンヌキクリップを用いた比較例の取付構造について説明する。
【0089】
図14に示すように、比較例の取付構造は、アッパーカバー32のフランジ部36の貫通孔250に、ロアカバー34に形成された係合部260を挿入し、係合部260に形成された係合孔262にカンヌキクリップ280を挿入して固定する構成である。
【0090】
このように比較例の取付構造では、ロアカバー34の係合部260をアッパーカバー32のフランジ部36の貫通孔250に挿入したのち、係合部260が貫通孔250から抜けないように保持して(支えて)、カンヌキクリップ280を係合孔262に挿入して固定する必要がある。
【0091】
これに対して、本実施形態では、係合部100を被係合孔200に挿入するだけで自動的に係合するので、比較例と比べ取付作業が容易である。
【0092】
また、比較例の場合はカンヌキクリップ280が必要であるので、本実施形態よりも部品点数が増え、その分コスト高である。つまり、本実施形態の取付構造の方が比較例の取付構造よりも低コストである。
【0093】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0094】
例えば、上記実施形態では、被係合孔200の挿入方向側と反対側の縁部には、R面取りされた面取部200Rが形成されていたが、これに限定されない。C面取りされた面取部であってもよい。
【0095】
また、例えば、上記実施形態では、幅広孔220側に向かって傾斜した平面状のスロープ(傾斜面)124Kであったが、これに限定されない。幅広孔220側に向かって湾曲した湾曲面(R面)であってもよい。言い換えると、突出方向に間隔をあけて平行に配置された根元部122と先端部126との間を湾曲部が繋いだ構成であってもよい。
【0096】
また、例えば、上記実施形態では、スロープ(傾斜面)124Kを有する傾斜部124の先端側には先端部126が形成されていたが、これに限定されない。係合部(爪部)の先端部分に傾斜面又は湾曲面が形成されていてもよい。
【0097】
また、上記本実施形態では、フォグランプカバー50のフロントバンパカバー10への取付構造、又はフロントバンパカバー30を構成するアッパーカバー32へのロアカバー34の取付構造に対して本発明を適用したが、これに限らず、他の樹脂部品の樹脂部材への取付構造に本発明を適用してもよい。
【0098】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0099】
10 フロントバンパカバー(被取付部)
32 アッパーカバー(被取付部)
34 ロアカバー(取付部)
50 フォグランプカバー(取付部)
100 係合部
110 くびれ部
114 リブ
122 根元部
124K スロープ(傾斜面)
128 根元側端部
200 被係合孔
200R 面取部
210 幅広孔(第一の孔)
220 幅狭孔(第二の孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の孔と前記第一の孔よりも小さい第二の孔とが略凸字形状に連結された被係合孔を備える被取付部と、
前記被取付部の前記被係合孔に挿入されることで取付可能とされ、前記第一の孔と前記第二の孔との連結方向と当該挿入方向とに直交する幅方向の幅が前記第二の孔よりも小さいくびれ部と、前記くびれ部よりも挿入方向側に設けられ前記幅方向の幅が第一の孔よりも大きい根元部と、前記根元部よりも前記挿入方向側に設けられ前記連結方向において前記第一の孔の方向に傾斜した傾斜面又は前記第一の孔の方向に湾曲した湾曲面と、を有し、前記連結方向に弾性変形可能とされた係合部を備えた取付部と、
を有する取付部の被取付部への取付構造。
【請求項2】
前記係合部の前記挿入方向側の先端部は前記根元部よりも前記幅方向の幅が狭く、且つ、前記根元部に向かって徐々に前記幅方向の幅が広くなるように構成されている、
請求項1に記載の取付部の被取付部への取付構造。
【請求項3】
前記被係合孔の前記挿入方向側と反対側の縁部には、R面取り又はC面取りされた面取部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の取付部の被取付部への取付構造。
【請求項4】
前記係合部における前記くびれ部に対応する前記第二の孔と反対側の板面には、挿入方向に沿ってリブが形成されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の取付部の被取付部への取付構造。
の取付構造。
【請求項5】
前記被取付部は、樹脂製のバンパーカバーであり、
前記取付部は、樹脂製のフォグランプカバーである、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の取付部の被取付部への取付構造。
【請求項6】
前記被取付部は、樹脂製のバンパーカバーを構成するアッパーカバーであり、
前記取付部は、樹脂製のバンパーカバーを構成するロアカバーである、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の取付部の被取付部への取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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