説明

取付部支持クランプ

【解決手段】一方の挟持レバー2の長孔5に挿入された他方の挟持レバー3の回動中心軸部10をその長孔5に沿って移動可能とした可動支点部1においては、回動操作軸15を長孔5に挿入して回動操作軸15の雄ねじ部16を回動中心軸部10の雌ねじ孔13に螺合し、回動操作軸15の回動に伴い雄ねじ部16及び雌ねじ孔13を介して回動中心軸部10を長孔5で回動操作軸15に沿って移動させることができる。従って、その回動中心軸部10の回動中心10aの位置を変更することができる。
【効果】閉状態で両挟持レバー2,3間に挟持される支持バーのサイズに合わせて、両挟持レバー2,3の間隔Wを容易に変更し得る。その際、閉状態における両挟持レバー2,3の間隔Wを無段階的に変更して、支持バーに対する両挟持レバー2,3の締め付けを確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自転車部品などの各種物品が取り付けられる取付部を支持バーに支持するための取付部支持クランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに回動可能に支持した一対の挟持レバー間に設けた係脱部で両挟持レバーを互いに開閉し得るクランプの一例としては、例えば下記特許文献1に開示されている。一般にこの種のクランプにおいては、一対の挟持レバー間に支持バーを挿入して両挟持レバーを係脱部により支持バーに締め付けるようになっている。例えば、この係脱部においては、一方の挟持レバーに引掛凹部を設け、他方の挟持レバーに締付レバーを回動可能に支持するとともに、その締付レバーの回動中心から離間した位置で引掛レバーを締付レバーに対し回動可能に支持している。この締付レバーを回動させると、この引掛レバーを引掛凹部に係脱し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−116781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のクランプにおいて、締付レバーを回動させて引掛レバーを引掛凹部に係止させた状態で両挟持レバーが取り得る間隔の範囲については、引掛レバーを係止し得る引掛凹部の深さを大きくしたとしても、制限があるため、両挟持レバー間で挟持し得る支持バーのサイズにも制限がある。従って、様々なサイズの支持バーに合わせて両挟持レバーの間隔を変更する必要がある。一般にクランプの係脱部の構造については種々のものが開示されているが、例示した上記係脱部と同様な問題がある。
【0005】
この発明は、支持バーのサイズに合わせて、閉状態における両挟持レバーの間隔を容易に変更し得る取付部支持クランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜3)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる取付部支持クランプは、取付部6を有し、互いに回動可能に支持した一対の挟持レバー2,3間に設けた係脱部18で両挟持レバー2,3を互いに開閉し得る。一方の挟持レバー2に対する他方の挟持レバー3の回動中心10aの位置を変更し得る可動支点部1を設けている。
【0007】
請求項1の発明では、可動支点部1で一方の挟持レバー2に対する他方の挟持レバー3の回動中心10aの位置を変更すると、閉状態における両挟持レバー2,3の間隔Wを変更することができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明にかかる可動支点部1においては、一方の挟持レバー2に案内部5を設けるとともに、他方の挟持レバー3に回動中心軸部10を設け、その案内部5に対し回動中心軸部10を移動可能に支持して一方の挟持レバー2に対する他方の挟持レバー3の回動中心10aの位置を変更し得る。請求項2の発明では、可動支点部1を簡単な構造にすることができる。
【0009】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる可動支点部1において、案内部は回動中心軸部10が挿入された長孔5であり、回動中心軸部10はその長孔5に沿って移動し得る。請求項3の発明では、可動支点部1を簡単な構造にすることができる。
【0010】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明にかかる可動支点部1においては、回動中心軸部10に雌ねじ孔13を設け、雄ねじ部16を有する回動操作軸15を長孔5に挿入してその雄ねじ部16をこの回動中心軸部10の雌ねじ孔13に螺合し、この回動操作軸15の回動に伴い雄ねじ部16及び雌ねじ孔13を介して回動中心軸部10を長孔5で回動操作軸15に沿って移動させる。請求項3の発明では、雄ねじ部16と雌ねじ孔13とからなる雌雄ねじ機構の採用により、支持バーの様々なサイズに合わせて回動中心10aの位置を変更することができ、閉状態における両挟持レバー2,3の間隔Wを無段階的に変更して、支持バーに対する両挟持レバー2,3の締め付けを確実に行うことができる。
【0011】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明にかかる可動支点部1において、回動操作軸15は、長孔5の長手方向に沿って移動可能に支持され、両挟持レバー2,3が係脱部18で互いに係止される際に長孔5の長手方向に沿う移動を規制するストッパ17を有している。請求項5の発明では、回動操作軸15により回動中心軸部10の位置を回動調節しながらストッパ17と回動中心軸部10の回動中心10aとの間の距離Lを調節することができるので、両挟持レバー2,3間の係脱部18において支持バーに対する両挟持レバー2,3の締め付け具合を適切な状態に設定することができる。
【0012】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明において、前記係脱部18は、一方の挟持レバー2に設けた引掛凹部23と、他方の挟持レバー3側で回動可能に支持した引掛レバー20とを有し、この引掛レバー20はその回動に伴い引掛凹部23に対し係脱される。例えば、この引掛レバー20は、他方の挟持レバー3に対し回動可能に支持した締付レバー19に対し、その締付レバー19の回動中心21aから離間した位置で回動可能に支持されている。請求項6の発明では、このような構造の係脱部18において、請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明の効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、閉状態で両挟持レバー2,3間に挟持される支持バーのサイズに合わせて、両挟持レバー2,3の間隔Wを容易に変更し得る取付部支持クランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)(b)は本実施形態にかかるクランプを示す斜視図である。
【図2】(a)は可動支点部の回動中心を所定位置に変更したクランプにおいて閉状態を示す側面図であり、(b)は同じく開閉途中状態を示す側面図であり、(c)は同じく開状態を示す側面図である。
【図3】(a)は可動支点部の回動中心を所定位置に変更したクランプにおいて閉状態を示す側面図であり、(b)は同じく開閉途中状態を示す側面図であり、(c)は同じく開状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかる取付部支持クランプについて図1〜3を参照して説明する。
可動支点部1で互いに回動可能に支持された一対の挟持レバー2,3のうち、一方である第一の挟持レバー2の基端部と連続する第一の支持部4には案内部としての長孔5が形成されている。この支持部4と連続する取付部6には例えば自転車部品などの各種物品を取り付ける際に利用される雌ねじ孔6a等が形成されている。
【0016】
一対の挟持レバー2,3のうち他方である第二の挟持レバー3は、二股状をなし、先端部に形成された連結部7から延びる両腕8を有している。この両腕8の基端部と連続する第二の支持部9にはそれぞれ支持孔11が形成され、前記長孔5に挿入された支軸12の両端部に対しこれらの支持孔11が回動可能に挿嵌されて回動中心軸部10が構成されている。この回動中心軸部10は第二の挟持レバー3及び第二の支持部9とともにこの長孔5に沿って移動し得る。この回動中心軸部10の支軸12には長孔5内で雌ねじ孔13が形成されている。
【0017】
前記可動支点部1の第一の支持部4には長孔5の一端部側と連通する案内孔14が形成されている。この第一の支持部4の外側から回動操作軸15がこの案内孔14に対し回動可能に挿通されて長孔5に挿入されている。この回動操作軸15には長孔5内で雄ねじ部16が形成され、その雄ねじ部16が前記支軸12の雌ねじ孔13に螺合されている。この回動操作軸15は前記回動中心軸部10の支軸12とともにこの長孔5及び案内孔14に沿って移動し得る。この回動操作軸15にはこの第一の支持部4の外側でストッパ頭部17が形成され、そのストッパ頭部17がこの第一の支持部4の外側で案内孔14の外周部に当接して回動操作軸15の移動を阻止することができる。この回動操作軸15を回動させると、雌雄ねじ機構としての雄ねじ部16及び雌ねじ孔13を介して回動中心軸部10を長孔5で回動操作軸15の軸線に沿って移動させ、第一の挟持レバー2に対する第二の挟持レバー3の回動中心10aの位置を変更することができる。
【0018】
前記第一の挟持レバー2と第二の挟持レバー3とを互いに係脱する係脱部18は、両側板部19aを有する二股状の締付レバー19と、引掛部20aを有するコ字形状の引掛レバー20とを備えている。第二の挟持レバー3の連結部7には支軸21が挿着され、この締付レバー19の両側板部19aがこの支軸21の両端部に対しその連結部7の外側で回動可能に支持されて締付レバー19が支軸21を中心に回動可能に支持されている。その支軸21の回動中心21aから離間した位置でこの締付レバー19の両側板部19aに支持孔22が形成され、前記引掛レバー20の両端部がこの支持孔22に対し回動可能に支持されて引掛レバー20が支持孔22を中心に回動可能に支持されている。前記第一の挟持レバー2の先端部には引掛フック部23(引掛凹部)が形成されている。
【0019】
図2(a)に示すように図示しない支持バーが両挟持レバー2,3間に挟持された閉状態では、前記係脱部18において締付レバー19が第二の挟持レバー3に接近した締付位置にあって引掛レバー20の引掛部20aが第一の挟持レバー2の引掛フック部23に係止されている。その係止の際、前記可動支点部1において、回動中心軸部10には長孔5の長手方向に沿うA向きの移動付与力が働いて回動操作軸15が回動操作軸15とともに長孔5の長手方向に沿ってA向きへ移動し、回動操作軸15のストッパ頭部17が案内孔14の外周部に位置決め手段として当接して回動操作軸15の移動を阻止する。従って、案内孔14の外周部に当接したストッパ頭部17により回動中心軸部10が位置決めされてそのストッパ頭部17と回動中心軸部10の回動中心10aとの間の距離がLに設定されるとともに、両挟持レバー2,3の間隔がWに設定される。
【0020】
図2(a)に示す閉状態で締付レバー19を図2(b)に示すように第二の挟持レバー3から離間する向きに支軸21の回動中心21aを中心に回動させると、引掛レバー20もその回動中心21aを中心に回動するため、引掛レバー20の引掛部20aが引掛フック部23から離脱する。さらに、図2(c)に示すように第二の挟持レバー3を回動中心軸部10の回動中心10aを中心に回動させると、両挟持レバー2,3を互いに開くことができる。この開状態で図示しない支持バーに対し取付部支持クランプを取り外すことができる。また、図2(c)に示す開状態から図2(b)に示す途中状態を経て図2(a)に示す閉状態に戻すことができる。
【0021】
一方、図2(c)に示す開状態で回動操作軸15を回動させると、前述したように、回動中心軸部10を長孔5で回動操作軸15の軸線に沿って移動させ、図3(c)の開状態で示すように第一の挟持レバー2に対する第二の挟持レバー3の回動中心10aの位置を変更することができる。
【0022】
その回動中心10aの変更後に、図3(b)に示す途中状態で締付レバー19を第二の挟持レバー3に接近させる向きに支軸21の回動中心21aを中心に回動させると、引掛レバー20もその回動中心21aを中心に回動するため、図3(a)に示すように引掛レバー20の引掛部20aが引掛フック部23に係止される。その係止の際も、前記可動支点部1において、回動中心軸部10には長孔5の長手方向に沿うA向きの移動付与力が働いて回動操作軸15が回動操作軸15とともに長孔5の長手方向に沿ってA向きへ移動し、回動操作軸15のストッパ頭部17が案内孔14の外周部に位置決め手段として当接して回動操作軸15の移動を阻止する。従って、案内孔14の外周部に当接したストッパ頭部17により回動中心軸部10が位置決めされてそのストッパ頭部17と回動中心軸部10の回動中心10aとの間の距離Lが変更されるとともに、両挟持レバー2,3の間隔Wが変更される。また、図3(a)に示す閉状態から図3(b)に示す途中状態を経て図3(c)に示す開状態にすることができる。
【0023】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 第一の挟持レバー2の長孔5に挿入された第二の挟持レバー3の回動中心軸部10をその長孔5に沿って移動可能とした可動支点部1においては、その回動中心軸部10の回動中心10aの位置を雌雄ねじ機構(雄ねじ部16及び雌ねじ孔13)により変更すると、両挟持レバー2,3間に挟持される支持バーのサイズに合わせて、閉状態における両挟持レバー2,3の間隔Wを変更することができる。
【0024】
* 上記の可動支点部1においては、回動操作軸15を長孔5に挿入して回動操作軸15の雄ねじ部16を回動中心軸部10の雌ねじ孔13に螺合し、回動操作軸15の回動に伴い雄ねじ部16及び雌ねじ孔13を介して回動中心軸部10を長孔5で回動操作軸15に沿って移動させるので、支持バーの様々なサイズに合わせて回動中心10aの位置を変更する際、閉状態における両挟持レバー2,3の間隔Wを無段階的に変更して、支持バーに対する両挟持レバー2,3の締め付けを確実に行うことができる。
【0025】
* 上記の可動支点部1においては、回動操作軸15が長孔5の長手方向に沿って移動可能に支持され、両挟持レバー2,3が係脱部18で互いに係止される際に長孔5の長手方向に沿う回動操作軸15の移動がストッパ頭部17により規制されるので、回動操作軸15により回動中心軸部10の位置を回動調節しながらストッパ頭部17と回動中心軸部10の回動中心10aとの間の距離Lを調節して、両挟持レバー2,3間の係脱部18で支持バーに対する両挟持レバー2,3の締め付け具合を適切な状態に設定することができる。
【0026】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 前記実施形態では、第一の挟持レバー2に対する第二の挟持レバー3の回動中心10aの位置を変更し得る可動支点部1において、長孔5に挿入された回動操作軸15が回動可能に且つ長孔5の長手方向へ移動可能になっているが、その回動操作軸を回動可能に且つ長孔の長手方向へ移動不能にしてもよい。その場合には、回動操作軸のストッパ頭部は不要であり、回動中心軸部に対する位置決め手段として例えば止めねじ等を採用する。
【0027】
・ 前記実施形態では、第一の挟持レバー2と第二の挟持レバー3との相対的回動中心として単一の回動中心10aを採用しているが、第一の挟持レバーの相対的回動中心と第二の挟持レバーの相対的回動中心とを互いに離間して別々に設けてもよい。その場合には、それらの相対的回動中心間の距離を変更する。また、それらの回動中心軸部に対する位置決め手段として例えば止めねじ等を採用する。
【0028】
・ 前記実施形態では回動中心軸部10に対する案内部として長孔5を採用しているが、回動中心軸部がスライドし得る各種断面形状のレールを採用してもよい。
・ 前記実施形態では、雌雄ねじ機構として、一方の挟持レバー2に支持した回動操作軸15の雄ねじ部16を回動中心軸部10の雌ねじ孔13に螺合したが、逆に、回動中心軸部に対し回動可能に支持した回動操作軸の雄ねじ部を一方の挟持レバーの雌ねじ孔に螺合してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…可動支点部、2…第一の挟持レバー(一方の挟持レバー)、3…第二の挟持レバー(他方の挟持レバー)、5…長孔(案内部)、6…取付部、10…回動中心軸部、10a…回動中心、13…雌ねじ孔、15…回動操作軸、16…雄ねじ部、18…係脱部、19…締付レバー、20…引掛レバー、23…引掛フック部(引掛凹部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部を有し、互いに回動可能に支持した一対の挟持レバー間に設けた係脱部で両挟持レバーを互いに開閉し得る取付部支持クランプにおいて、一方の挟持レバーに対する他方の挟持レバーの回動中心の位置を変更し得る可動支点部を設けたことを特徴とする取付部支持クランプ。
【請求項2】
前記可動支点部においては、一方の挟持レバーに案内部を設けるとともに、他方の挟持レバーに回動中心軸部を設け、その案内部に対し回動中心軸部を移動可能に支持して一方の挟持レバーに対する他方の挟持レバーの回動中心の位置を変更し得ることを特徴とする請求項1に記載の取付部支持クランプ。
【請求項3】
前記可動支点部において、案内部は回動中心軸部が挿入された長孔であり、回動中心軸部はその長孔に沿って移動し得ることを特徴とする請求項2に記載の取付部支持クランプ。
【請求項4】
前記可動支点部においては、回動中心軸部に雌ねじ孔を設け、雄ねじ部を有する回動操作軸を長孔に挿入してその雄ねじ部をこの回動中心軸部の雌ねじ孔に螺合し、この回動操作軸の回動に伴い雄ねじ部及び雌ねじ孔を介して回動中心軸部を長孔で回動操作軸に沿って移動させることを特徴とする請求項3に記載の取付部支持クランプ。
【請求項5】
前記可動支点部において、回動操作軸は、長孔の長手方向に沿って移動可能に支持され、両挟持レバーが係脱部で互いに係止される際に長孔の長手方向に沿う移動を規制するストッパを有していることを特徴とする請求項4に記載の取付部支持クランプ。
【請求項6】
前記係脱部は、一方の挟持レバーに設けた引掛凹部と、他方の挟持レバー側で回動可能に支持した引掛レバーとを有し、この引掛レバーはその回動に伴い引掛凹部に対し係脱されることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載の取付部支持クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−80572(P2011−80572A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235235(P2009−235235)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(591186866)株式会社箕浦 (8)
【Fターム(参考)】