説明

取引処理装置、自動改札装置

【課題】個々の利用者の実態に応じて残額の表示・非表示を切り換えることが可能な取引処理装置を提供する。
【解決手段】ICカードの残額を更新した後、更新後の残額と、過去の最大差引額とを比較し、残額が最大差引額より小さいか否かを判定する。残額が最大差引額より小さい場合は、残額表示可と判断し、残額を表示器に表示する。残額が最大差引額以上の場合は、残額表示不可と判断し、表示器に残額を表示しない。最大差引額の替わりに、平均差引額や今回差引額を用いて判定してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引媒体を受け付けて所定の取引を行う取引処理装置に関し、特に、取引媒体の残額を表示する機能を備えた取引処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取引処理装置には種々のものがあるが、ここでは鉄道の駅などに設置される自動改札装置を例に挙げる。自動改札装置には、切符や定期券を読み取って通行の許可/禁止を制御する機能だけでなく、プリペイドカードや料金をチャージした定期券などを受け付けて料金精算を行う取引処理装置としての機能が備わっている。また、自動改札装置には、乗車媒体の精算後の残額を表示器に表示する機能も備わっている。
【0003】
ところで、乗車媒体の残額表示は、利用者にとって便利なものであるが、一方では、残額が第三者に知られるという問題がある。特に、残額が高額である場合は、これが第三者に知られると、利用者が乗車媒体の盗難に遭遇する可能性がある。乗車媒体への金額チャージに対しては限度額が設けられているが(現状では2万円が上限)、今後この限度額が引き上げられると、上述した盗難への対策が重要となる。
【0004】
一方、下記の特許文献1には、残額と警告発生残額とを比較して、残額が警告発生残額を上回る場合は、残額を画面表示する処理のみを行い、残額が警告発生残額以下の場合は、残額を画面表示する処理に加えて、残額を音声によって案内する処理を行う自動改札装置が記載されている。しかしながら、この自動改札装置では、残額が警告発生残額を上回る場合も、そうでない場合も、残額は常に表示されるから、前述の盗難対策としては有効でない。
【0005】
ただ、特許文献1では、残額と警告発生残額との比較結果に応じて、残額の音声案内のする・しないを決定しており、この考え方を表示に適用して、残額が警告発生残額を上回る場合は残額を表示せず、残額が警告発生残額以下になった場合に残額を表示することも考えられる。しかしながら、この警告発生残額はあらかじめ定められた固定値であるので、残額表示の有無は、警告発生残額を基準として、利用者に関係なく一律に決定される。このため、個々の利用者の乗車実態に応じて、残額がいくらになった時点で残額表示を行うかが考慮されず、利用者にとって必ずしも満足できる方法ではない。例えば、警告発生残額を高く設定すると、近距離区間を多く乗車する利用者については、残額がかなり残っているのに残額表示がされ、防犯上好ましくない。逆に、警告発生残額を低く設定すると、遠距離区間を多く乗車する利用者については、残額が十分でないのに残額表示がされず、改札出場時に料金不足となる場合がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−346198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、基準額を設定して残額の表示・非表示を切り換えることは防犯上好ましいが、基準額が固定値であると、個々の利用者の実態に応じて残額の表示・非表示を切り換えることができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、個々の利用者の実態に応じて残額の表示・非表示を切り換えることが可能な取引処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る取引処理装置は、取引媒体を受け付けて所定の取引を行い、取引媒体の取引後の残額を表示する取引処理装置であって、取引媒体の取引履歴に基づいて残額を表示するか否かを判定し、当該判定結果に従って残額の表示・非表示を制御する制御手段を備える。
【0010】
このように、取引履歴に基づいて残額を表示するか否かを判定することで、固定額を基準として残額を表示する場合に比べて、個々の利用者の取引実態に応じた残額表示が可能となり、利用者にとって利便性が向上する。
【0011】
本発明における制御手段としては、取引媒体の取引履歴から最大差引額を抽出し、当該取引媒体の現在の残額が最大差引額より小さいか否かを判定し、残額が最大差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が最大差引額以上の場合は残額を表示しないように制御するものが考えられる。
【0012】
これによると、最大差引額の取引が再度行われる可能性を考慮して、残額が最大差引額を下回った場合に残額が表示されるので、これが警告となって、利用者に金額チャージを促すことができる。その結果、最大差引額の取引が再度行われた場合に、料金不足が発生するのを回避することができる。一方、残額が最大差引額以上の場合は、残額が表示されないので、他人に残額を知られることがなく、取引媒体の盗難を防止することができる。
【0013】
また、本発明における他の制御手段としては、取引媒体の取引履歴から平均差引額を抽出し、当該取引媒体の現在の残額が平均差引額より小さいか否かを判定し、残額が平均差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が平均差引額以上の場合は残額を表示しないように制御するものが考えられる。
【0014】
これによると、残額が平均差引額を下回った場合に残額表示がされ、これが警告となって利用者に金額チャージを促すことができるので、料金不足が発生するのを回避することができる。一方、残額が平均差引額以上の場合は、残額が表示されないので、他人に残額を知られることがなく、取引媒体の盗難を防止することができる。また、差引額の平均値を基準として残額表示の有無が判定されるので、差引額に変動があっても、比較的安定した残額表示を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明における更に他の制御手段としては、取引媒体の取引履歴から今回差引額を抽出し、当該取引媒体の現在の残額が今回差引額より小さいか否かを判定し、残額が今回差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が今回差引額以上の場合は残額を表示しないように制御するものが考えられる。
【0016】
これによると、例えば、今回の差引額が往路の乗車運賃であると仮定した場合、次の差引額は復路の乗車運賃であることが予想されることから、残額が今回差引額より小さい場合に残額を表示することで、利用者に金額チャージを促すことができる。その結果、今回の差引額と同額の取引(上の例では復路の乗車)が行われた場合に、料金不足が発生するのを回避することができる。一方、残額が今回差引額以上の場合は、残額が表示されないので、他人に残額を知られることがなく、取引媒体の盗難を防止することができる。
【0017】
本発明に係る自動改札装置は、乗車媒体を受け付けて料金精算を行い、乗車媒体の精算後の残額を表示する自動改札装置であって、乗車媒体の精算履歴から、最大差引額、平均差引額、今回差引額のいずれかを基準額として抽出し、当該乗車媒体の現在の残額が基準額より小さいか否かを判定し、残額が基準額より小さい場合は残額を表示し、残額が基準額以上の場合は残額を表示しないように制御する制御手段を備える。
【0018】
このように、精算履歴から基準額を抽出し、残額が基準額より小さいか否かの判定結果に基づいて残額の表示・非表示を制御することで、個々の利用者の乗車実態に応じた残額表示が可能となり、利用者にとって利便性が向上する。
【0019】
上記自動改札装置において、制御手段は、物品またはサービスの購入に係る差引額が精算履歴に含まれている場合は、当該差引額を基準額の対象から除外して基準額を抽出するようにしてもよい。
【0020】
これによると、金券としての乗車媒体を用いて、乗車以外に物品やサービスの購入があった場合でも、当該購入による差引額は基準額の対象から除外され、乗車による差引額のみに基づいて基準額が抽出される。このため、利用者の乗車実態を正確に反映した残額表示が可能となり、利用者にとって利便性が更に向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、取引履歴に基づいて残額を表示するか否かを判定することにより、個々の利用者の実態に応じて残額の表示・非表示を切り換えることが可能な取引処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る自動改札装置100の概略構成を示した上面図である。11は通路10を挟んで設置された自動改札装置の本体、12は一方の本体11の入口側に設けられたアンテナ部、13は一方の本体11の出口側に設けられた表示器、14は通路10を通行する利用者が表示器13の手前に達したことを検知する人間検知用センサ、15は本体11の出口側に設けられたゲート扉、16は通路10へ進入する利用者である。
【0023】
図2は、自動改札装置100の電気的構成を示したブロック図である。制御部1はCPUからなり、自動改札装置100の動作を制御する。記憶部2は、RAMやROM等のメモリから構成され、ICカード50から読み取った情報や、制御部1の動作プログラム、各種の制御パラメータなどを記憶する。ICカード読取/書込部3は、図1のアンテナ部12と信号処理回路等からなり、非接触式のICカード50との間で無線通信を行い、カードのICに記録された情報を読み取り、また、ICに情報を記録する。人間検知部4は、図1の人間検知用センサ14と信号処理回路等からなる。表示部5は、図1の表示器13とその駆動回路等からなる。扉駆動部6は、図1のゲート扉15を開閉するモータや、モータの駆動回路等から構成される。ホスト通信部7は、上位装置であるホスト装置(図示省略)との間で通信を行う。電源部8は、自動改札装置100の各部に電源を供給する。以上の構成において、制御部1は、本発明における制御手段の一実施形態であり、ICカード50は、本発明における乗車媒体、取引媒体の一実施形態である。
【0024】
図3は、ICカード50に内蔵されたICの記録情報を示した図である。図3(a)は、ICカード50が金額チャージの可能な定期券の場合であり、IC内のメモリには、定期券情報51と精算履歴情報52とが記録されている。図3(b)は、ICカード50が金額チャージの可能なプリペイドカードの場合であり、IC内のメモリには、精算履歴情報52のみが記録されている。いずれの場合も、精算履歴情報52は、残額53と差引額54とを含んでいる。この精算履歴情報52は、本発明における取引履歴の一実施形態である。
【0025】
図4は、精算履歴情報52の一例を示した図である。この例では、ICカード50に、当初2万円のチャージがあり、1回目の乗車料金精算により950円が差し引かれて残額が19050円となり、2回目の乗車料金精算により750円が差し引かれて残額が18300円となり、以下同様に残額から差引額が差し引かれて、合計22回の乗車料金精算により現在の残額が200円となっている。図中のA,B,Cは、残額表示を行う時点を3つの場合に分けて表したものであるが、これについては後で詳細に説明する。
【0026】
図5は、本発明の第1実施形態による残額表示手順を表したフローチャートである。このフローチャートは、自動改札装置100の制御部1(CPU)により実行される。以下、図5を参照して、第1実施形態による残額表示手順を説明する。
【0027】
ステップS1では、利用者16(図1)がアンテナ部12にかざしたICカード50(図2)を、ICカード読取/書込部3が読み取る。ステップS2では、ステップS1で読み取ったICカード50の記録情報に基づいて、利用者16の通過の可否を判定する。判定の結果、残額不足等の理由により通過を禁止する場合(ステップS3:NO)は、ステップS10へ移行して、扉駆動部6によりゲート扉15を閉じる。一方、ステップS2での判定の結果、通過を許可する場合(ステップS3:YES)は、ステップS4へ移行する。
【0028】
ステップS4では、乗車区間や乗り越し区間に応じた精算処理を行い、ICカード50の現在の残額から乗車料金(差引額)を差し引いて残額を更新する。次に、ステップS5aにおいて、更新後の残額と、過去の最大差引額とを比較し、残額が最大差引額より小さいか否かを判定する。例えば、図4の例では、18回目の精算時における過去の最大差引額は、10回目の差引額の3150円である。そして、この18回目の精算処理、すなわちAの時点で、更新後の残額(3000円)は、最大差引額(3150円)より小さくなる。
【0029】
残額が最大差引額より小さい場合(ステップS5a:YES)は、ステップS6で残額表示可と判断し、ステップS8へ進む。ステップS8では、人間検知用センサ14が利用者16を検知したか否かを判定する。センサ14が利用者16を検知してなければ(ステップS8:NO)、利用者16がセンサ位置へ到達するのを待ち、センサ14が利用者16を検知すると(ステップS8:YES)、ステップS9へ進む。ステップS9では、ステップS4で算出した残額を表示器13に表示して、処理を終了する。
【0030】
一方、残額が最大差引額以上の場合(ステップS5a:NO)は、ステップS7で残額表示不可と判断し、上述したステップS8、S9を実行することなく、処理を終了する。したがって、表示器13に残額は表示されない。
【0031】
結局、図4の例で言えば、1回目から17回目までの精算においては、残額が最大差引額以上であるため、残額は表示されず、18回目の精算において残額が最大差引額より小さくなるため、この時点ではじめて残額が表示され、以降も毎回残額が表示されることになる。
【0032】
以上のように、第1実施形態においては、ICカード50の精算履歴から最大差引額を抽出し、ICカード50の現在の残額が最大差引額より小さいか否かを判定し、残額が最大差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が最大差引額以上の場合は残額を表示しないようにしている。
【0033】
このため、最大差引額が再度差し引かれる可能性、すなわち利用者が最大乗車区間を再度乗車する可能性があることを想定して、残額が最大差引額を下回った場合(図4のAの時点)に残額が表示されるので、これが警告となって、利用者に金額チャージを促すことができる。その結果、最大乗車区間の乗車が再度行われた場合に、料金不足が発生するのを回避することができる。一方、残額が最大差引額以上の場合は、残額が表示されないので、他人に残額を知られることがなく、カードの盗難を防止することができる。
【0034】
図6は、本発明の第2実施形態による残額表示手順を表したフローチャートである。このフローチャートは、自動改札装置100の制御部1(CPU)により実行される。以下、図6を参照して、第2実施形態による残額表示手順を説明する。
【0035】
図6のフローチャートでは、図5のステップS5aがステップS5bに置き換わっている。それ以外のステップは図5と同一であるので、同一ステップについては、簡潔に説明するにとどめる。
【0036】
ステップS1で、ICカード読取/書込部3がICカード50を読み取ると、ステップS2で、利用者16の通過の可否を判定し、通過を禁止する場合(ステップS13:NO)は、ステップS10でゲート扉15を閉じる。通過を許可する場合(ステップS3:YES)は、ステップS4で精算処理を行い、現在の残額から乗車料金(差引額)を差し引いて残額を更新する。
【0037】
次に、ステップS5bにおいて、更新後の残額と、過去の平均差引額とを比較し、残額が平均差引額より小さいか否かを判定する。例えば、図4の例では、20回目の精算時におけるそれまでの平均差引額は、1〜20回の差引額合計÷20=957円である。そして、この20回目の精算処理、すなわちBの時点で、更新後の残額(850円)は、平均差引額(957円)より小さくなる。
【0038】
残額が平均差引額より小さい場合(ステップS5b:YES)は、ステップS6で残額表示可と判断し、ステップS8で人間検知用センサ14が利用者16を検知したか否かを判定する。そして、センサ14が利用者16を検知すると(ステップS8:YES)、ステップS9へ進み、ステップS4で算出した残額を表示器13に表示して、処理を終了する。
【0039】
一方、残額が平均差引額以上の場合(ステップS5b:NO)は、ステップS7で残額表示不可と判断し、ステップS8、S9を実行することなく、処理を終了する。したがって、表示器13に残額は表示されない。
【0040】
結局、図4の例で言えば、1回目から19回目までの精算においては、残額が平均差引額以上であるため、残額は表示されず、20回目の精算において残額が平均差引額より小さくなるため、この時点ではじめて残額が表示され、以降も毎回残額が表示されることになる。
【0041】
以上のように、第2実施形態においては、ICカード50の精算履歴から平均差引額を抽出し、ICカード50の現在の残額が平均差引額より小さいか否かを判定し、残額が平均差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が平均差引額以上の場合は残額を表示しないようにしている。
【0042】
このため、残額が平均差引額を下回った場合(図4のBの時点)に残額表示がされ、これが警告となって利用者に金額チャージを促すことができるので、料金不足が発生するのを回避することができる。一方、残額が平均差引額以上の場合は、残額が表示されないので、他人に残額を知られることがなく、カードの盗難を防止することができる。また、過去の差引額の平均値を基準として残額表示の有無が判定されるので、差引額に変動があっても、比較的安定した残額表示を行うことが可能となる。
【0043】
図7は、本発明の第3実施形態による残額表示手順を表したフローチャートである。このフローチャートは、自動改札装置100の制御部1(CPU)により実行される。以下、図7を参照して、第3実施形態による残額表示手順を説明する。
【0044】
図7のフローチャートでは、図5のステップS5aがステップS5cに置き換わっている。それ以外のステップは図5と同一であるので、同一ステップについては、簡潔に説明するにとどめる。
【0045】
ステップS1で、ICカード読取/書込部3がICカード50を読み取ると、ステップS2で、利用者16の通過の可否を判定し、通過を禁止する場合(ステップS13:NO)は、ステップS10でゲート扉15を閉じる。通過を許可する場合(ステップS3:YES)は、ステップS4で精算処理を行い、現在の残額から乗車料金(差引額)を差し引いて残額を更新する。
【0046】
次に、ステップS5cにおいて、更新後の残額と、今回差引額(今回の精算において差し引かれた金額)とを比較し、残額が今回差引額より小さいか否かを判定する。例えば、図4の例では、22回目の精算時における今回差引額は、250円である。そして、この22回目の精算処理、すなわちCの時点で、更新後の残額(200円)は、今回差引額(250円)より小さくなる。
【0047】
残額が今回差引額より小さい場合(ステップS5c:YES)は、ステップS6で残額表示可と判断し、ステップS8で人間検知用センサ14が利用者16を検知したか否かを判定する。そして、センサ14が利用者16を検知すると(ステップS8:YES)、ステップS9へ進み、ステップS4で算出した残額を表示器13に表示して、処理を終了する。
【0048】
一方、残額が今回差引額以上の場合(ステップS5c:NO)は、ステップS7で残額表示不可と判断し、ステップS8、S9を実行することなく、処理を終了する。したがって、表示器13に残額は表示されない。
【0049】
結局、図4の例で言えば、1回目から21回目までの精算においては、残額が今回差引額以上であるため、残額は表示されず、22回目の精算において残額が今回差引額より小さくなるため、この時点ではじめて残額が表示されることになる。
【0050】
以上のように、第3実施形態においては、ICカード50の精算履歴から今回差引額を抽出し、ICカード50の現在の残額が今回差引額より小さいか否かを判定し、残額が今回差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が今回差引額以上の場合は残額を表示しないようにしている。
【0051】
このため、例えば、今回差引額が往路の乗車運賃(250円)であると仮定した場合、次の差引額は復路の乗車運賃(250円)であることが予想されることから、残額が今回差引額を下回った場合(図4のCの時点)に残額を表示することで、利用者に金額チャージを促すことができる。その結果、復路の乗車が行われた場合に、料金不足が発生するのを回避することができる。一方、残額が今回差引額以上の場合は、残額が表示されないので、他人に残額を知られることがなく、カードの盗難を防止することができる。
【0052】
以上のように、上述した各実施形態においては、精算履歴に基づいて残額を表示するか否かを判定し、当該判定結果に従って残額の表示・非表示を制御するようにしているので、固定額を基準として残額を表示する場合に比べて、個々の利用者の乗車実態に応じた残額表示が可能となり、利用者にとって利便性が向上する。
【0053】
以上の説明では、ICカード50の残額から差し引かれるのは乗車による差引額のみであったが、ICカード50を利用して物品やサービスの購入をした場合は、精算履歴情報52の差引額54に、当該購入による差引額が含まれる。したがって、このような乗車以外による差引額も含めて前述の最大差引額や平均差引額等を抽出したのでは、残額表示に正確な乗車実態が反映されないことになる。
【0054】
そこで、本発明の他の実施形態では、図8のように、差引額54のそれぞれに対して用途55を記録し、用途が乗車以外の場合は、その差引額を最大差引額や平均差引額等の対象から除外する。用途55の欄に「鉄道」とあるのは乗車を意味し、「物販」とあるのは物品やサービスの購入を意味している。図8の例では、6回目が物販による精算であり、このときの差引額の6000円は、最大差引額や平均差引額等を抽出するにあたって、除外される。
【0055】
なお、図8におけるA,B,Cは、図4と同様、残額表示を行う時点を表している。基準額として最大差引額を用いる場合は、14回目の精算において、更新後の残額(2600円)が、物販による6000円を除いた最大差引額(2950円)より小さくなるので、この14回目の精算において残額が表示される(Aの場合)。基準額として平均差引額を用いる場合は、16回目の精算において、更新後の残額(800円)が、それまでの平均差引額(1〜16回の物販を除く差引額合計÷15=880円)より小さくなるので、この時点で残額が表示される(Bの場合)。基準額として今回差引額を用いる場合は、18回目の精算において、更新後の残額(150円)が今回差引額(250円)より小さくなるため、この時点で残額が表示される(Cの場合)。
【0056】
このように、物品またはサービスの購入に係る差引額が精算履歴に含まれている場合は、当該差引額を基準額の対象から除外することにより、乗車による差引額のみに基づいて残額表示の基準額が抽出される。このため、利用者の乗車実態を正確に反映した残額表示が可能となり、利用者にとって利便性が更に向上する。
【0057】
以上述べた実施形態においては、精算履歴情報52をICカード50に記録した例を挙げたが、精算履歴情報52を自動改札装置100と回線で接続されたサーバ(図示省略)に記録し、当該サーバから取得するようにしてもよい。この場合は、サーバにおいてICカード50の識別番号と対応付けて精算履歴情報を記録しておき、自動改札装置100でICカード50の識別番号を読み取って、当該識別番号に対応する精算履歴情報をサーバから取得すればよい。
【0058】
また、以上の実施形態では、取引媒体としてICカードを例に挙げたが、本発明は、取引媒体として磁気カードを用いる場合にも適用することができ、また、磁気カードとICカードの両機能を備えた複合型のカードを用いる場合にも適用することができる。
【0059】
さらに、以上の実施形態では、取引処理装置として自動改札装置を例に挙げたが、本発明は、残額表示機能を有する取引処理装置全般に適用することができ、例えば、自動券売機や、物品・サービスの自動販売機などにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る自動改札装置の概略構成を示した上面図である。
【図2】自動改札装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】ICカードに内蔵されたICの記録情報を示した図である。
【図4】精算履歴情報の一例を示した図である。
【図5】本発明の第1実施形態による残額表示手順を表したフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態による残額表示手順を表したフローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態による残額表示手順を表したフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態における精算履歴情報を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1 制御部
3 ICカード読取/書込部
5 表示部
12 アンテナ部
13 表示器
50 ICカード
52 精算履歴情報
53 残額
54 差引額
100 自動改札装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引媒体を受け付けて所定の取引を行い、前記取引媒体の取引後の残額を表示する取引処理装置において、
前記取引媒体の取引履歴に基づいて残額を表示するか否かを判定し、当該判定結果に従って残額の表示・非表示を制御する制御手段を備えたことを特徴とする取引処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の取引処理装置において、
前記制御手段は、
前記取引媒体の取引履歴から最大差引額を抽出し、当該取引媒体の現在の残額が前記最大差引額より小さいか否かを判定し、残額が最大差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が最大差引額以上の場合は残額を表示しないように制御することを特徴とする取引処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の取引処理装置において、
前記制御手段は、
前記取引媒体の取引履歴から平均差引額を抽出し、当該取引媒体の現在の残額が前記平均差引額より小さいか否かを判定し、残額が平均差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が平均差引額以上の場合は残額を表示しないように制御することを特徴とする取引処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の取引処理装置において、
前記制御手段は、
前記取引媒体の取引履歴から今回差引額を抽出し、当該取引媒体の現在の残額が前記今回差引額より小さいか否かを判定し、残額が今回差引額より小さい場合は残額を表示し、残額が今回差引額以上の場合は残額を表示しないように制御することを特徴とする取引処理装置。
【請求項5】
乗車媒体を受け付けて料金精算を行い、前記乗車媒体の精算後の残額を表示する自動改札装置において、
前記乗車媒体の精算履歴から、最大差引額、平均差引額、今回差引額のいずれかを基準額として抽出し、当該乗車媒体の現在の残額が前記基準額より小さいか否かを判定し、残額が基準額より小さい場合は残額を表示し、残額が基準額以上の場合は残額を表示しないように制御する制御手段を備えたことを特徴とする自動改札装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動改札装置において、
前記制御手段は、物品またはサービスの購入に係る差引額が精算履歴に含まれている場合は、当該差引額を前記基準額の対象から除外して基準額を抽出することを特徴とする自動改札装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−140229(P2010−140229A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315474(P2008−315474)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】