取引処理装置および自動預金支払機

【課題】この発明は、主取引内容以外にその他のサービス情報を供給許容して、様々なサービス提供を顧客が受けられるようにした取引処理装置および自動預金支払機の提供を目的とする。
【解決手段】この発明は、顧客が取引利用する特定の取引項目を指定入力させて取引する取引処理装置であって、上記指定入力された取引項目の取引時に、別の項目に切換える切換え手段を備えたことを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば金融機関に設置される自動預金支払機（ＡＴＭ）のような取引処理装置に関し、さらに詳しくは取引利用時に指定取引以外のサービス情報を案内出力する取引処理装置および自動預金支払機に関する。
【０００２】
【従来の技術】一般に、ＡＴＭ等の取引処理装置は、顧客を特定する暗証番号や取引利用金額等の顧客が入力操作した取引データを顧客毎に取扱って運用管理する金融機関の特定のホストコンピュータと通信して照合し、照合確認すると取引許容して顧客が要請する取引を実行していた。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】このような取引処理装置は専属のホストコンピュータで管理されているため、金融機関に携わる金融用途に限定され、その他の情報提供や取引サービスは行われず、日常頻繁に利用されている取引処理装置の用途の拡大が望まれていた。
【０００４】そこでこの発明は、主取引内容以外にその他のサービス情報を供給許容して、様々なサービス提供を顧客が受けられるようにした取引処理装置および自動預金支払機の提供を目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は、顧客が取引利用する特定の取引項目を指定入力させて取引する取引処理装置であって、上記指定入力された取引項目の取引時に、別の項目に切換える切換え手段を備えたことを特徴する。
【０００６】請求項２記載の発明は、切換え手段によって取引項目から広告情報に切換えることを特徴する。
【０００７】請求項３記載の発明は、切換え手段によって取引項目から商品の購入情報に切換えることを特徴する。
【０００８】請求項４記載の発明は、切換え手段によって取引項目から特定口座の取引サービス情報に切換えることを特徴する。
【０００９】請求項５記載の発明は、切換え手段が取引利用する顧客の属性情報に基づいて切換え許容することを特徴する。
【００１０】請求項６記載の発明は、切換え手段が取引時刻に基づいて切換え許容することを特徴する。
【００１１】請求項７記載の発明は、切換え手段が顧客の口座残高に基づいて切換え許容することを特徴する。
【００１２】請求項８記載の発明は、請求項１、２、３、４、５、６または７記載の取引処理装置で構成した自動預金支払機であることを特徴する。
【００１３】
【作用】この発明によれば、顧客が特定の取引項目を指定入力した取引時に、切換え手段が現取引項目から別の項目に切換えて案内出力する。例えば、広告情報、商品の購入情報、特定口座の取引サービス情報に切換えたり、顧客の属性情報、取引時刻、顧客の口座残高に基づいて切換える。このような取引処理装置を金融機関等に設置される自動預金支払機で構成して入出金取引利用する。
【００１４】
【発明の効果】この結果、主取引項目から他項目に切換え許容する切換え手段を備えているため、顧客は主取引以外に他の取引や情報提供および取引サービスが得られ、この用途の拡大に伴って顧客は様々なサービスを受けることができ、多機能を有する取引内容の豊富な取引処理装置として広く利用することができる。
【００１５】例えば、入出金取引等の主取引項目から広告情報や商品の購入情報等に切換えることができ、またこの場合、広告情報に切換えることで顧客の特定口座の手数料を肩代わりするようなサービス提供を施すように設定することもできる。また、顧客の年齢別、男女別等の属性情報に応じた顧客にふさわしいサービス情報を選択して提供することができる他、取引時刻に応じて各種の取引項目を切換えるように構成すれば、取引利用に適した時間管理が図れ、また顧客の口座残高で取引可能な商品情報等をサービス提供することができる。
【００１６】このような取引処理装置を金融機関等に設置される自動預金支払機で構成すれば、入出金取引以外に広く他用途の取引利用が図れる。
【００１７】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図１は金融機関で使用されるＡＴＭのシステム構成図を示し、このシステム構成図は、顧客１１が取引利用するＡＴＭ１２と、このＡＴＭ１２の入出金取引時の入出金データを制御管理する金融機関ホストコンピュータ１３と、ＡＴＭ１２と通信許容して顧客の会員情報１４を管理する商店ホストコンピュータ１５とから構成される。
【００１８】図２はＡＴＭ１２の外観図を示し、このＡＴＭ１２は装置本体の上部前面に、顧客に取引操作を表示案内するタッチパネル兼用のＣＲＴ２１と、通帳挿入口２２と、カード挿入口２３と、硬貨投入口２４と、紙幣投入口２５とを備えて、入金、出金、振込み、通帳記入、残高照会等の取引を許容している。
【００１９】図３はＡＴＭ１２の制御回路ブロック図を示し、ＣＰＵ３１はＲＯＭ３２に格納されたプログラムに沿って各回路装置を制御し、その制御データをＲＡＭ３３で読出し可能に記憶する。
【００２０】上述のＣＰＵ３１は、インタフェースを介してＣＲＴ２１、カード処理部３４、紙幣処理部３５、硬貨処理部３６、センタ通信処理部３７、係員パネル処理部３８、通帳処理部３９、遠隔監視装置（ＣＲＭＣ）通信処理部４０、ジャーナル処理部４１、明細票処理部４２、取引切換え制御部４３を接続している。
【００２１】このうち、ＣＲＴ２１は各種の取引表示案内と、その操作手順を表示し、また画面上に表示した表示部分と対応してタッチ入力許容するタッチ入力機能を有している。
【００２２】カード処理部３４は、カード挿入口２３に挿入された各種カードの取引データを読取り、また更新データを書込み処理し、取引終了および取消し時にカードをカード挿入口２３に放出する。
【００２３】これらＣＲＴ２１とカード処理部３４で受付けたときに金融機関との取引か、商店との取引か等を選択する取引選択部４４を構成している。
【００２４】紙幣処理部３５は、紙幣投入口２５に投入された紙幣を内部に取込んで受付け処理し、出金時および入金取消し時に紙幣を紙幣投入口２５より放出する。硬貨処理部３６は、硬貨投入口２４に投入された硬貨を内部に取込んで受付け処理し、出金時および入金取消し時に硬貨を硬貨投入口２４より放出する。
【００２５】センタ通信処理部３７は、編集した入出金要求電文、記帳要求電文等を金融機関ホストコンピュータ１３に送信して取引内容を取引管理テーブル１３ａで照合確認した後、この金融機関ホストコンピュータ１３から送られてきた入出金回答、記帳データ等の自動取引データを受信処理する。
【００２６】これら紙幣処理部３５と、硬貨処理部３６と、センタ通信処理部３７とで顧客を特定する特定口座の現金管理部４５を構成している。係員パネル処理部３８は、ＡＴＭ内部に備えられる係員パネルを取扱って障害復旧操作や保守点検等の係員操作を実行させる。
【００２７】通帳処理部３９は、通帳挿入口２２に挿入された通帳の取引データを読取り、また更新データを書込み処理し、通帳の印字欄には取引データや未記帳データの記帳処理を行ない。さらに、取引終了および取消し時に通帳を通帳挿入口２２に返却する。
【００２８】ＣＲＭＣ（遠隔監視装置）通信処理部４０は、ＡＴＭ１２の検出データをＣＲＭＣに送信し、ＣＲＭＣから返信されてきた障害復旧データ等の応答データを受信処理する。
【００２９】ジャーナル処理部４１は、明細票を発行する毎に同記録内容のジャーナル（控え伝票）を装置内部に保存し、またこのジャーナルには障害が発生した時の異常コードを合わせて記録する。明細票処理部４２は、入出金取引や残高照会等の各種の取引内容の取引データを記載した明細票を取引毎に発行する。
【００３０】取引切換え制御部４３は、取引口座を一時的に切換え制御するものであって、入出金取引等の主取引項目以外に、広告情報や商品の購入情報等に切換え許容し、例えば商品の購入情報の場合であれば、各商店のホストコンピュータと接続した第１商店取引手順４３ａ、第２商店取引手順４３ｂ、第１商事取引手順４３ｃ…のように取引利用先の店舗毎の取引データに切換え許容する。
【００３１】図４はＡＴＭ１２と商店ホストコンピュータ１５との処理構成図を示し、ＡＴＭ１２に備えられた取引切換え制御部４３は各回路装置２１，３４，４２，４５…と接続し、さらにこのＡＴＭ１２を外部から通信利用する契約商店先の各商店契約テーブル４６を有しており、この商店契約テーブル４６には各商店ホストコンピュータ１５との通信対応用に接続先の商店番号および商店口座番号を記憶管理している。
【００３２】このＡＴＭ１２と各商店ホストコンピュータ１５…とは、相互の通信部４７，４８を介して通信接続し、商店ホストコンピュータ１５側はサービスプログラム４９に沿って予め記憶管理している顧客の会員番号毎のボーナスデータ５０やアンケートデータ５１等の管理データを更新許容して制御管理している。
【００３３】図５はＡＴＭ１２と商店ホストコンピュータ１５との制御手順を表すフローチャートを示し、ＡＴＭ１２側にあっては顧客の入力待ちで待機しており、顧客が取引カードを挿入して取引開始したとき、同カードが金融機関専用の取引カードか商店専用の取引カードかを判定し（ステップｎ1 ）、金融機関専用の取引カードが利用された場合は、指定先の金融機関との入出金取引を行う（ステップｎ2 ）。
【００３４】これに対し、商店専用の取引カードが利用された場合は、そのデータを読取って利用先の商店と接続し（ステップｎ3 〜ｎ4 ）、接続した商店ホストコンピュータの運用に基づいて顧客が要請する商品取引を行う（ステップｎ5 〜ｎ7 ）。
【００３５】これに対し、商店ホストコンピュータ１５側にあっては、先ず、ＡＴＭを利用した取引カードの会員番号を読取指示し（ステップｎ8 〜ｎ9 ）、続いて、会員番号に対応する暗証番号を入力指示し（ステップｎ10〜ｎ11）、照合確認すると、その会員のボーナスデータやアンケートデータ等を参照して顧客にふさわしい商店リストを表示するよう指示し（ステップｎ12〜ｎ15）、商品リストの中から商品が指定されて取引成立すると、その購入金額を支払い指示した後、取引利用したデータを更新する（ステップｎ16〜ｎ18）。
【００３６】このように構成されたＡＴＭの取引処理動作を図６のフローチャートを参照して説明する。今、顧客が取引カードをＡＴＭに挿入して出金取引を開始したとき、ＣＰＵ３１はそのカードデータを読取ると同時に、カード利用客の暗証番号を入力するよう案内出力し（ステップｎ21〜ｎ22）、暗証番号から取引本人を照合確認すると、続いて出金取引金額の入力操作を案内する（ステップｎ23）。
【００３７】このようにして顧客の入力操作が完了してＡＴＭが取引金額を処理する間、ＣＰＵ３１は顧客が広告案内を見るか、見ないかを選択案内し（ステップｎ24）、顧客が「広告案内を見ない」ことを選択すれば、金融機関ホストコンピュータ１３に登録されている顧客の固有データを新残高に更新し、更新後はその取引承認データをＡＴＭ１２に返答し、その間「しばらくお待ち下さい」を表示案内する（ステップｎ25〜ｎ26）。
【００３８】このデータ更新後に、ＣＰＵ３１は更新済の取引カードを返却し、また明細票をプリントアウトして顧客にレシートを発行すると共に、指定された取引金額を放出して一出金取引が終了する（ステップｎ27〜ｎ29）。
【００３９】これに対し、顧客が「広告案内を見る」を選択した場合は、図７に示すように、ＣＲＴ２１に「お待ち戴く間、広告を御覧になれば、取引手数料が無料になります。該当する広告項目を選択して下さい。」と広告切換え情報７１を表示案内し、顧客が興味のある特定の広告項目を選択して入力指定すると、その入力された広告項目を提供している商店のホストコンピュータと接続して該当する広告情報を案内出力する（ステップｎ30）。
【００４０】このように、ＡＴＭ１２の取引利用時に、顧客が商店の広告情報を見るように選択した場合は、その顧客の取引手数料を肩代わりするようなサービス提供を受けることができる。
【００４１】次に、多くの金融店舗に設置されて広く利用されるＡＴＭ１２の広告処理動作を図８のフローチャートを参照して説明する。ＣＰＵ３１は広告項目が入力されると、金融機関ホストコンピュータ１３から顧客の取引項目、口座残高、取引手数料、取引エリア等の特定データを読出し（ステップｎ31〜ｎ32）、取引成立後に、顧客が取引利用した取引手数料と、商店がＡＴＭを広告利用した広告代金との金額データを読出し（ステップｎ33〜ｎ34）、このＡＴＭ１２のＣＲＴ２１には指定された広告項目の広告情報を表示案内して顧客に商品案内や購入情報を知らせる（ステップｎ35）。
【００４２】この結果、ＡＴＭの利用エリアから、その地域に適切な広告を出力案内して知らせることができ（ステップｎ36）、また、顧客の口座残高に応じて同客にふさわしい広告商品を選択して表示案内することもできる（ステップｎ37）。
【００４３】図９は商店ホストコンピュータ１５の広告管理データを示し、正規の取引時間内で同金融機関の口座に対する支払い処理を行った場合、取引手数料は無料となる。このような場合は、金融機関が顧客の取引手数料を肩代わりする必要がないため、図９中の広告選択管理データ９１にも示すように、取引手数料の有無によって広告選択の出力を切換え可能にデータ管理する。
【００４４】また、顧客属性情報管理データ９２に示すように、カードに登録された「顧客属性情報」により広告の選択肢を切換えることができる。例えば、カードに１バイトで性別、年代別のように顧客の属性を定義する。
【００４５】（１）０００００００１：１０歳未満の男（２）００００００１０：１０代の男（３）００００００１１：２０代の男（４）０００００１００：３０代の男（５）０００００１０１：４０代の男このように、性別と年代別により関連しそうな顧客にふさわしい広告を推論して選択リストを作成する。
【００４６】図１０はチケットの購入案内画面を示し、ＣＲＴ２１の取引選択画面には預金、支払い、振込み、残高照会等の金融機関の入出金取引項目１０１と、チケットピア、ＡＢＣチケットセンタ等の購入可能なチケット取引項目１０２を一覧表示する。
【００４７】この場合、顧客がいずれかのチケット取引項目１０２を選択すると、選択されたチケットを取扱う店舗のホストコンピュータと交信してチケットの購入処理を行う。また、チケットサービス会社が発行したカードを用いれば、ＡＴＭの利用時点で直ちに自動的に購入対応するチケットのホストコンピュータを選択することができる。
【００４８】上述のように、ＡＴＭの取引利用時に金融機関の取引項目から他の項目に切換え許容する切換え機能を備えているため、顧客は金融機関の取引内容以外に広告を表示案内したり、商品やチケットの購入案内等の情報提供および取引利用ができ、このＡＴＭの用途の拡大に伴って顧客は様々なサービスを受けることができ、多機能を有する取引内容の豊富なＡＴＭとして広く利用することができる。
【００４９】また、ＡＴＭの取引情報から一時的に広告情報に切換えることで顧客の特定口座の手数料を肩代わりするようなサービス提供を得ることもでき、また顧客の年齢別、男女別等の属性情報に応じた顧客にふさわしいサービス情報を選択して提供することができる他、取引時刻に応じて各種の取引項目を切換えるように構成して取引利用に適した時間管理が図れ、また顧客の口座残高で取引可能な商品情報等をサービス提供することもできる。
【００５０】この発明と、上述の一実施例の構成との対応において、この発明の取引処理装置は、実施例のＡＴＭ１２に対応し、以下同様に、切換え手段は、取引切換え制御部４３に対応するも、この発明は上述の一実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明のＡＴＭのシステム構成図。
【図２】この発明のＡＴＭの外観斜視図。
【図３】この発明のＡＴＭの制御回路ブロック図。
【図４】この発明のＡＴＭと商店ホストコンピュータとの処理構成図。
【図５】この発明のＡＴＭと商店ホストコンピュータとの制御手順を示すフローチャート。
【図６】この発明のＡＴＭの取引処理動作を示すフローチャート。
【図７】この発明のＣＲＴの広告案内表示例を示す表示図。
【図８】この発明のＡＴＭの広告処理動作を示すフローチャート。
【図９】この発明の商店ホストコンピュータの広告管理データを示す説明図。
【図１０】この発明のＣＲＴのチケットの購入案内画面を示す表示図。
【符号の説明】
１１…顧客
１２…ＡＴＭ
１３…金融機関ホストコンピュータ
１４…顧客の会員情報
１５…商店ホストコンピュータ
３１…ＣＰＵ
４３…取引切換え制御部
４６…商店契約テーブル
７１…広告切換え情報
９１…広告選択管理データ
９２…顧客属性情報管理データ
１０１…金融機関の入出金取引項目
１０２…チケット取引項目

【特許請求の範囲】
【請求項１】顧客が取引利用する特定の取引項目を指定入力させて取引する取引処理装置であって、上記指定入力された取引項目の取引時に、別の項目に切換える切換え手段を備えた取引処理装置。
【請求項２】切換え手段は、取引項目から広告情報に切換える請求項１記載の取引処理装置。
【請求項３】切換え手段は、取引項目から商品の購入情報に切換える請求項１記載の取引処理装置。
【請求項４】切換え手段は、取引項目から特定口座の取引サービス情報に切換える請求項１記載の取引処理装置。
【請求項５】切換え手段は、取引利用する顧客の属性情報に基づいて切換え許容する請求項１記載の取引処理装置。
【請求項６】切換え手段は、取引時刻に基づいて切換え許容する請求項１記載の取引処理装置。
【請求項７】切換え手段は、顧客の口座残高に基づいて切換え許容する請求項１記載の取引処理装置。
【請求項８】請求項１、２、３、４、５、６または７記載の取引処理装置で構成した自動預金支払機。

【図１】