説明

取引処理装置システム

【課題】
省電力運転を行っている複数のATMが設置されている金融機関のATMコーナー等において、利用者の希望する取引が、すぐに取引開始できるアイドルモードのATMでは媒体不足により実施できず、取引開始までは時間のかかる省電力モードのATMだけで実施可能という状況を防ぐ事により、利用者の利便性の低下を防ぐ。
【解決手段】
媒体の残量を考慮した動作モードの切替を行ない、取引制限のされていない取引処理装置を優先的にアイドルモードに移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、環境問題への取り組みが従来以上に求められており、その具体的な取り組みのひとつに待機電力、不要電力を削減することによる省電力化が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
金融機関に設置される取引処理装置(以下、ATM:Automated Teller Machineとも称する )は、客待ちのため実際に利用されていない時間が長くなることも多く、顧客の存在を検知するセンサが一定時間不在を示した場合には、取引処理装置の一部の電源を落とす省電力モードに移行する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、複数台取引処理装置を設置している店舗においては、閑散期においてその傾向はより顕著なものとなる。そのため、スケジューラを利用したり、取引と取引との間隔時間にて混雑状況を把握し制御装置から指示を出すことで、店舗内の稼働台数を制御する技術も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、「現金や明細票切れによる使用不能の状態を回避するため、均等にATMを利用させ利便性を高める」制御する技術も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−259729号公報
【特許文献2】特開2006−92449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、稼動状況のみをもとに、取引処理装置の稼働台数を制御した場合(特許文献2参照)、媒体の残量不足により取引機能の一部が制限されている取引処理装置がアイドルモード(顧客による取引の待ち状態)となり、取引制限されていない取引処理装置が省電力モード(低消費電力化のため、主電源はオン状態にあるがすぐには取引できない状態)に遷移する可能性があり、利用者にとっては、一部の取引処理が不能となっているATMを使用することとなって不便となる問題が存在する。
【0007】
また、現金や明細票切れによる使用不能の状態を回避するため、均等にATMを利用させ利便性を高めようとした場合も、均等にATMを利用させたとしても、媒体の残量が均等になるとは限らず使用不能状態となる可能性があり、加えて、取引処理装置は使用不能状態とならなくても、取引制限で取引処理装置を稼動させてしまった場合同様に、利用者の不便となる問題が発生する。
【0008】
本発明の目的は、媒体の残量を考慮した動作モードの切替を行ない、取引制限のされていない取引処理装置を優先的にアイドルモードに移行させることで、利用者の満足度低下防止をしたうえで、省電力運転を可能とする制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の少なくとも一つを解決するため、本願発明の取引処理システムは、
異なる複数の動作モードにて動作可能な複数の取引処理装置と、前記複数の取引処理装置と通信回線で接続され、前記複数の取引処理装置の動作モードを設定する動作モード制御装置と、からなる取引処理装置システムであって、
前記取引処理装置は、該取引処理装置に関する稼動情報を、前記通信回線を介して前記動作モード制御装置に通知する通信手段を有し、前記動作モード制御装置は、複数の取引処理装置からの前記稼動情報を基に、前記複数の取引処理装置の動作モードを変更する動作モード変更手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記動作モード制御装置は、前記通信手段で通知された前記複数の取引処理装置の各々の稼動情報をもとに、前記取引処理装置の各々の動作モードの移行有無を判定する判定手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、前記動作モードは、少なくともアイドルモードと、省電力モードと、を含み、前記稼動情報は、少なくとも前記取引処理装置の各々の動作モードを示す動作モード情報と、前記取引処理装置の各々が保有する媒体の残量に関する媒体残量情報と、前記取引処理装置の各々の混雑状況示す混雑情報と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、前記動作モード制御装置は、前記通信手段で通知された前記稼動情報を基に混雑度が少なくかつ媒体残量が低い前記取引処理装置から優先して省エネモードへの移行を設定し、混雑度が高くかつ媒体残量が多い前記取引処理装置を優先してアイドルモードへの移行を設定する制御を行なうことを特徴とする。
【0013】
また、前記動作モードは、少なくとも電源オフモードと制限取引モードのいずれかを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金融機関の営業店舗等において、ATMを省電力モードからアイドルモードへ移行させる場合に、取引制限のされていないATMを優先的にアイドルモードに移行させることで、利用者の利便性を損なうことなく省電力運転を可能とする取引処理装置の制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ATMの外観図である。
【図2】ATMの制御ブロック図である。
【図3】金融機関等の店舗でのATM稼動例を示す図である。
【図4】稼動情報テーブルの例を示す図である。
【図5】動作モード制御装置の動作フローチャートである。
【図6】稼動情報の通知データのフォーマット例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、銀行などの金融機関に設置される、本発明の一実施例である前記取引処理装置に相当するATMの外観図である。
【0018】
ATM100は、該ATMを利用する顧客の接近を検知する顧客センサ101と、取引に必要な情報を表示し及び顧客の操作を入力する顧客操作部102と、顧客のカードや取引明細票を処理するカード・明細票処理装置103と、通帳を処理する通帳処理装置104と、紙幣を処理する紙幣処理装置105と、硬貨を処理する硬貨処理装置106とを備えている。
【0019】
図2は、ATM100の制御ブロック図である。
【0020】
ATM100内には、顧客センサ101、顧客操作部102、カード・明細票処理装置103、通帳処理装置104、紙幣処理装置105、硬貨処理装置106、係員操作部107、及びこれら各部を制御する本体制御部110が実装される。各部101〜107は本体制御部110の制御の下に必要な処理動作を行なう。
【0021】
本体制御部110は、顧客センサ101を監視し、顧客センサ101にて顧客を検知すると顧客操作部102に取引に必要な情報を表示し、顧客の入力操作を受付ける。例えば、支払、預入などの取引の選択画面を表示して顧客の取引選択を受付けたり、暗証番号入力や支払金額の入力を受付ける。また、カード・明細票処理装置103に対して顧客のカードの受入れ、読取り、返却、取引明細票の発行などの指示を行ない、通帳処理装置104に対して顧客の通帳の受入れ、読取り、印字、返却などの指示を行なう。また、紙幣処理装置105に対して顧客への紙幣の支払いや預入紙幣の受入れを指示し、硬貨処理装置106に対して顧客への硬貨の支払いや預入硬貨の受入れを指示する。
【0022】
また、係員操作部107は銀行の係員等の作業者がATMを運用、保守を行なうための操作部であり、本体制御部110は係員操作部107に対して、係員へATMの状態、即ち、正常に稼動中か障害発生しているか、現金や明細票用紙などの残量などを案内し、また、現金補充などの操作の受付けや、障害発生時は障害の内容や障害箇所、復旧操作手順を表示し、障害復旧操作を受付ける。
【0023】
また、本体制御部110はホストコンピュータ200と通信を行ない、取引に必要な処理、例えば、顧客が入力した暗証番号の正誤照会、顧客の口座残高や支払い可否の照会などを行なう。また、本体制御部110は動作モード制御装置300と通信を行ない、現金や明細票用紙などの媒体の残量、混雑情報、動作モードといった稼動情報の通知を行なう。また、本体制御部110は動作モード制御装置300と通信を行ない、指令される動作モードに移行するため、各部101〜107の制御を行なう。
【0024】
次に、図3を用いて実際の店舗での動作を説明する。図3は、金融機関等の店舗におけるATMの稼動例である。通常、金融機関の店舗は、店舗窓口、待合所、ATMコーナー、出入口などで構成されているが、立地条件などから様々な店舗構成となっている。図3において、本願発明の取引処理装置システムは5台のATM(ATM1(301)〜ATM5(305)と、動作モード制御装置300とから構成されている。なお、動作モード制御装置300は、図示しない稼動情報テーブル(後述)と、各ATM等と所定の情報を送受信する通信部と、各ATMの動作モードの決定等を行う処理部等とから構成される。
【0025】
また、ATM1(301)とATM2(302)は省電力モードで動いており、そのままの状態では顧客による取引は不可能であるため、顧客は並んでいない。また、ATM3(303)は利用者はいるが、順番待ちの列はできておらず、店舗窓口側310からの顧客が新たに並ぼうとしている。
【0026】
ATM4(304)は待ち時間の長い列ができており混雑している状態である。また、ATM5(305)は待ち時間の短い列ができている状態であるが、ATMコーナーの出入口から出入する顧客(311)がさらに並ぼうとしている。
【0027】
次に図4〜図6を用いて、混雑状態のATMが存在した場合に、動作モード制御装置300から、各ATM1(301)〜ATM5(305)に指令される動作モードの設定方法を説明する。
【0028】
図4は稼動情報テーブルであり、動作モード制御装置300にて、各ATM1(301)〜ATM5(305)から通知される動作モード、混雑情報、媒体の残量といった稼動情報をもとに作成される。図4(a)は、図3に示す金融機関店舗における各ATMや混雑状況等を表した稼動情報テーブルの内容を示している。なお、混雑情報は各ATMにおいて顧客センサ101による顧客検知情報等を用いて算出することができる。
【0029】
図5は、動作モード制御装置が指令する動作モードを決定するときのフロー図の例である。
【0030】
図6は、各ATM1(301)〜ATM5(305)が動作モード制御装置300に対して通知する稼動情報のデータフォーマットの例である。
【0031】
各ATMの動作モード設定は、動作モード制御装置300より、各ATM1(301)〜ATM5(305)に対して指令することことで設定できる。また、各ATMから、稼動情報に変化があったときに、動作モード制御装置300に対して通知させることもできる。
【0032】
以下、図5のフローに従って処理手順を説明する。まず、動作モード制御装置300は各ATMから稼動情報の通知を受信する(s1001)。次に受信した通知をもとに稼動情報テーブルを更新する(s1002)。
【0033】
本実施例では、ATM4(304)アイドルモード且つ混雑情報が混雑となっており、ATM1、ATM2が省電力モードであるが、ATM1よりATM2の媒体の残量が多いため、アイドルモードへの移行指令はATM2に対して行なわれる(s1003、s1004、s1005)。
【0034】
この結果、稼動情報テーブルは図4(b)の状態となる。ATM2(302)が省電力モードからアイドルモードへ移行し、ATM4(304)に並んでいた順番待ちの顧客の一部がATM2(302)へ流れることにより、ATM4の混雑が解消されることが期待できる。また、媒体の残量を判断基準としたため、媒体切れとなり取引制限される可能性のあるATM1(301)は省電力モードのままとし、取引制限される可能性の低いATM2(302)をアイドルモードへ移行させることによって、混雑しているATMから他のATMへ並び直したものの、自分の取引の順番になったときに媒体切れ等によって想定していた取引ができないといった不具合を少なくすることができる。
【0035】
次に図5と図4(c)に示す稼動情報テーブルを用いて、閑散状態のATMが存在した場合に、動作モード制御装置300から、各ATM1〜5に指令される動作モードの設定を説明する。
【0036】
先の例と同じく、まず、動作モード制御装置300は各ATMから稼動情報の通知を受信する(s1001)。次に受信した通知をもとに稼動情報テーブルを更新する(s1002)。混雑状態となっているATMは存在しておらず、ATM3(303)、ATM4(304)がアイドルモード且つ混雑情報が閑散状態となっているが、このとき、ATM4(304)よりATM3(303)の方が媒体の残量が少ないため、ATM3(303)に対して省電力モードへの移行が指令される(s1003、s1006、s1007)。
【0037】
この結果、稼動情報テーブルは図4(d)の状態となる。省電力モードへ1台遷移したことにより省電力化が期待されるとともに、媒体切れとなる可能性の低いATM4(304)をアイドルモードのままとし、媒体制限となり取引制限される可能性のあるATM3(303)を省電力モードへ移行することができた。
【0038】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、混雑情報は、個々のATMにおいて取引と取引との時間間隔の長さにより判定しても良い。取引と取引の時間間隔が短い状態が連続する場合は、長い列が出来ているとし、混雑情報を混雑状態とすることができる。取引と取引の時間間隔が短い状態が連続しない場合は、混雑状態を通常状態とする。逆に、取引と取引の時間間隔が長いATMの混雑情報は閑散状態とする。
また、店舗内に別途センサを設置し、ATMの顧客センサと連携して判定しても良い。これらセンサ情報を元にして、列の有無を判定し、列が長いATMは混雑状態、列がないATMは通常状態、列がない状態が一定時間以上続いた場合を閑散状態と判断することもできる。
【0039】
また、省電力モードからアイドルモードへ切替を行うべきATMの選定基準とした媒体の残量は、残量の多い場合としても良い。媒体を収納する場合など取引処理装置内の媒体の残量が増加する場合に有益である。
【0040】
また、動作モード制御装置の機能を、複数台あるATM取引処理装置の内の1台に含める構成としても良い。ATM以外に個別の動作モード制御装置を必要としないため、低コストでシステムを構築できる。
【0041】
また、動作モードとして、電源OFFモードを含めることも可能である。動作モード制御装置より、媒体の残量が切れとなったATMに電源OFFするより指令することで、さらなる省電力運転が可能となる。
【0042】
また、動作モードとして、制限取引モードを含めることも可能である。動作モード制御装置より、媒体の残量が切れとなったATMに、制限取引モードで動作を指令することで、紙幣などの媒体を必要としないカード振り込みや通帳記入取引のみ可能な状態で動作させることが可能となる。取引可能な取引処理装置がすべて混雑しているような状況においては、媒体が十分ある取引処理装置では、カード振り込みや通帳記入取引以外の取引のみ可能な制限取引モードで動作させることにより、複数の取引処理装置に利用者を適切に分散させることが可能となり、利用者の待ち時間を低減させることができる。
【符号の説明】
【0043】
100:ATM(現金自動取引装置)
101:顧客センサ
102:顧客操作部
103:カード・明細票処理装置
104:通帳処理装置
105:紙幣処理装置
106:硬貨処理装置
107:係員操作部
110:本体制御部
200:ホストコンピュータ
300:動作モード制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の動作モードにて動作可能な複数の取引処理装置と、
前記複数の取引処理装置と通信回線で接続され、前記複数の取引処理装置の動作モードを設定する動作モード制御装置と、
からなる取引処理装置システムであって、
前記取引処理装置は、該取引処理装置に関する稼動情報を、前記通信回線を介して前記動作モード制御装置に通知する通信手段を有し、
前記動作モード制御装置は、複数の取引処理装置からの前記稼動情報を基に、前記複数の取引処理装置の動作モードを変更する動作モード変更手段を有することを特徴とする取引処理装置システム。
【請求項2】
請求項1に記載の取引処理装置システムであって、
前記動作モード制御装置は、
前記通信手段で通知された前記複数の取引処理装置の各々の稼動情報をもとに、前記取引処理装置の各々の動作モードの移行有無を判定する判定手段を設けたことを特徴とする取引処理装置システム。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の取引処理装置システムであって、
前記動作モードは、少なくともアイドルモードと、省電力モードと、を含み、
前記稼動情報は、少なくとも前記取引処理装置の各々の動作モードを示す動作モード情報と、前記取引処理装置の各々が保有する媒体の残量に関する媒体残量情報と、前記取引処理装置の各々の混雑状況示す混雑情報と、を含むことを特徴とする取引処理装置システム。
【請求項4】
請求項3に記載の取引処理装置システムであって、
前記動作モード制御装置は、
前記通信手段で通知された前記稼動情報を基に混雑度が少なくかつ媒体残量が低い前記取引処理装置から優先して省エネモードへの移行を設定し、混雑度が高くかつ媒体残量が多い前記取引処理装置を優先してアイドルモードへの移行を設定する制御を行なうことを特徴とする取引処理装置システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の取引処理装置システムであって、
前記動作モードは、少なくとも電源オフモードと制限取引モードのいずれかを含むことを特徴とする取引処理装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123583(P2012−123583A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273108(P2010−273108)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】