説明

取引処理装置

【目的】この発明は、障害が発生しても装置をダウンせず、そのまま運用維持して取引利用することができ、しかも一台の装置でありながら異種類の取引媒体の取引を可能にした取引処理装置の提供を目的とする。
【構成】この発明は、媒体を受入/放出して取引利用する取引端末機に外部より接続して媒体を補充/回収する媒体運用ロボットを備えた取引処理装置であって、上記取引端末機の取引処理時に受入/放出される媒体の取引処理を上記媒体運用ロボット側で行う代替手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば現金自動預金支払機(ATM)のような取引処理装置に関し、さらに詳しくは紙幣、硬貨、札束、小切手、他国紙幣等の異種媒体を取引することができる取引処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ATM等の取引端末機に現金を自動的に補充して、この取引端末機の運用維持と係員操作の軽減とを図った現金補充システムが知られている。この種の現金補充システムは、取引毎に変動する取引端末機の運用残金が基準額以下になると、一定金額を自動的に補充して取引端末機を運用継続するように設定している(例えば特開昭60ー11988号、特願平5ー85239号参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、取引端末機に障害が発生した場合は、取引機能が停止して取引端末機がダウンしてしまい、この取引端末機の稼動率が低下し、また顧客の取引途中で取引端末機に障害が発生した場合は、顧客は復旧するまで長時間待たされる不適な問題を有していた。さらに、一台の取引端末機が取扱う取引種類も紙幣や硬貨のように取引種類が1〜2種類に限定されていた。
【0004】そこでこの発明は、障害が発生しても装置をダウンせず、そのまま運用維持して取引利用することができ、しかも一台の装置でありながら異種類の取引媒体の取引を可能にした取引処理装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、媒体を受入/放出して取引利用する取引端末機に外部より接続して媒体を補充/回収する媒体運用ロボットを備えた取引処理装置であって、上記取引端末機の取引処理時に受入/放出される媒体の取引処理を上記媒体運用ロボット側で行う代替手段を備えたことを特徴とする。
【0006】請求項2記載の発明の代替手段は、特定媒体の取引が指定されたとき、特定媒体を取扱う媒体運用ロボット側で特定媒体の取引を行うことを特徴とする。
【0007】請求項3記載の発明の代替手段は、取引端末機の媒体処理部に異常が発生したとき、媒体運用ロボットの媒体処理部で取引処理することを特徴とする。
【0008】請求項4記載の発明の取引端末機は、媒体運用ロボット側での取引処理時に搬送利用する代替手段専用の媒体搬送路を備えたことを特徴とする。
【0009】
【作用】この発明によれば、媒体を受入/放出して取引利用する取引端末機の取引処理時に、代替手段が取引端末機に受入/放出される媒体の取引処理を、この取引端末機の外部に接続された媒体運用ロボット側で行う。
【0010】また、取引端末機の取引処理時に、特定媒体の取引が指定されると、代替手段が特定媒体を取扱う媒体運用ロボット側で特定媒体の取引を行う。
【0011】さらに、取引端末機の取引処理時に、この取引端末機の媒体処理部に異常が発生すると、代替手段が媒体運用ロボットの媒体処理部で取引処理する。
【0012】また、取引端末機に、媒体運用ロボット側の取引処理時に搬送利用する代替手段専用の媒体搬送路を備えて媒体を搬送処理する。
【0013】
【発明の効果】この結果、取引端末機に障害が発生しても、この取引端末機は媒体運用ロボット側で代替して取引継続するため、取引停止せず、安定した運用維持が図れ、また取引途中で障害が発生しても取引を中断せずに対処できるため、顧客を長時間待たせなくなり、顧客に対する取引サービス性が向上する。
【0014】また、媒体運用ロボット側で特殊媒体が取扱えるため、この取引端末機を介して様々な異種媒体を取引利用することができる。例えば、取引端末機にATMを用いた場合は、このATMが取扱う紙幣、硬貨以外に、記念硬貨、筒状硬貨、札束、小切手、金券、他国紙幣、有価カード等の特定媒体を取扱い、この特定媒体は取引端末機に設けた専用通路を利用することで容易に取引利用でき、この一台の取引端末機で多種類の取引媒体を取引利用することができる。
【0015】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図1は現金自動預金支払機(ATM)11と運用ロボット12との内部構成図を示し、ATM11は入金、出金、振込み、残高照会、記帳等の各種取引を許容して金融店舗で取引利用される自動化コーナ等に設置され、この設置されたATM11の後方に紙幣A…を補充/回収動作する自走式の運用ロボット12を接続許容して構成している。
【0016】ATM11は入出金口13と連通する内方上部に、入金搬送ラインL1 と、出金搬送ラインL2 と、後方搬送ラインL3 との3搬送ラインL1 〜L3 の一端をそれぞれ接続しており、このうち入金搬送ラインL1 は搬送ラインの途中に紙幣鑑別部14と一時保留部15を有して、内方下部の金種別の各スタッカ16,17と、回収箱18および運用カートリッジ19のそれぞれに接続している。そして、入金取引時には、入出金口13に投入された紙幣A…を入金搬送ラインL1を介して紙幣鑑別部14に導き、ここで真偽および金種等のデータを鑑別した後、一時保留部15で一時保留し、入金確定後に金種対応するスタッカ16,17に収納している。
【0017】また、出金搬送ラインL2 は搬送ラインの途中に、既述した紙幣鑑別部14と一時保留部15の他に返却部20を備えて、内部の各スタッカ16,17から外部の入出金口13までを接続している。そして、出金取引時には、スタッカ16,17から繰出した紙幣A…を出金搬送ラインL2 を介して紙幣鑑別部14に導き、ここで2枚出し等の異常発生の有無を検知確認した後、一時保留部15で一時保留し、出金確定後に入出金口13に放出している。
【0018】この場合、取引途中で入金取消しされると、一時保留部15で保留した入金紙幣を返却搬送ライン兼用の出金搬送ラインL2 を介して入出金口13へと放出し、また鑑別不良紙幣を検知した場合は、この入金鑑別不良紙幣を返却部20に返却しておいてから入出金口13へと返却する。一方、出金取消しされた場合も同様に、一時保留部15で保留した出金紙幣を入金搬送ラインL1 を介して回収箱18に回収し、同じく鑑別不良紙幣も回収箱18に回収処理する。
【0019】さらに、後方搬送ラインL3 は、ATM11の代替搬送ラインとして設けられ、ATM前面の入出金口13とATM後面の後面接続部21との間を略直線状に接続し、この直線状ラインの中間部に後方紙幣鑑別部22を配設して、ATMの前面側と後面側とを直接接続している。そして、ATM11の後方に接続される運用ロボット12から紙幣が補充されたとき、また後方の運用ロボット12に紙幣を回収する時に、この後方搬送ラインL3 を利用して直接搬送処理し、このときに搬送された紙幣の有効性を後方紙幣鑑別部22で鑑別している。
【0020】上述の運用ロボット12は、ATM後面の後面接続部21と同高さ位置に対応して接続する前面接続部23を、この運用ロボット12の上部前面に有し、この前面接続部23と連通する内方に入出金搬送ラインL4 を接続している。この入出金搬送ラインL4 は、搬送ラインの途中に入出金鑑別部24を有して、内部の鑑別不良回収箱25と、損券回収箱26と、運用スタッカ27とのそれぞれに接続している。
【0021】そして、この運用ロボット12側での代替して紙幣を受入れる入金取引時/回収処理時には、ATM11側の入出金口13に投入された紙幣A…を後方搬送ラインL3 および入出金搬送ラインL4 を介して入出金鑑別部24に導き、ここで真偽および金種等の紙幣データを鑑別した後、運用ロボット12内の運用スタッカ27に代替して入金処理/回収処理する。このとき、鑑別不良紙幣は鑑別不良回収箱25に導き、傷みの激しい損傷紙幣は損券回収箱26に回収処理する。また、図中想像線で示すように、入出金搬送ラインL4 の入口部分に、入出金紙幣を一時保留する一時保留部28あるいは入金紙幣を鑑別不良回収箱25や損券回収箱26の前段で鑑別する鑑別部29を設けて代替処理性能を高めることもできる。
【0022】また、この運用ロボット12側から代替して紙幣を放出する出金取引時/補充処理時には、運用ロボット12内の運用スタッカ27から繰出した紙幣A…を入出金搬送ラインL4 を介して入出金鑑別部24に導き、ここで2枚出し等の異常発生の有無を検知確認した後、ATM内の後方搬送ラインL3 を介して入出金口13へと放出する。さらに、補充処理の場合は、入出金口13に放出された紙幣を、これより入金搬送ラインL1 を介して、補充先のスタッカ16,17や運用カートリッジ19に補充処理する。
【0023】図2はATM11と運用ロボット12の各制御回路ブロック図を示し、入出金取引時に顧客が取引要請データをATMに入力操作すると、その取引要請データは内部通信インタフェース31を介してCPU32に入力され、この取引要請データに基づいてCPU32は入出金処理部33を駆動制御し、またスタッカ16,17や運用カートリッジ19内の紙幣収納待機量に応じて補充処理部34および回収処理部35を駆動制御し、そのときの入金/出金/補充/回収データを記憶部36で記憶管理する。
【0024】また、ATM11に運用ロボット12を接続した際は、ATM11のロボット対応用インタフェース37に、運用ロボット12のATM対応用インタフェース38が接続対応して通信接続され、この運用ロボット12のCPU39が出金/補充処理部40および入金/回収処理部41を駆動制御して出金/補充動作あるいは入金/回収動作し、そのときの運用データを記憶部42で記憶管理する。
【0025】また、ATM11と運用ロボット12には、障害発生の有無を検知する障害発生検知センサS1 ,S2 を備えており、内部での紙幣処理状態の適否を監視している。この場合、ATM11側で障害が発生してATMの入出金取引機能が停止した時は、ATM11をダウンせず、運用ロボット12側で代替して取引許容する代替取引機能を有している。したがって、ATM11に障害が発生しても、運用ロボット12が代替して取引継続するため、入出金取引時での中断を回避して安定した運用維持が図れる。
【0026】また、ATM11の前後方向に横貫状態に設けられる後方搬送ラインL3 は、運用ロボット専用の搬送ラインとして搬送利用されるため、この運用ロボット12が取扱う紙幣以外の特定媒体に応じた搬送ラインに設定すれば、様々な特殊媒体を取引利用することができる。例えば、新札、記念硬貨、筒状硬貨、札束、小切手、金券、他国紙幣、有価カード等を取扱って取引利用できる。また、このような特殊媒体を備えた運用ロボットを使い分けて選択すれば、一台のATMで多種類の取引媒体を取引利用することができる。
【0027】一方、運用ロボット12側に障害が発生した場合は、ATM11より離脱して直ちに別の運用ロボットを接続し、常にATM11に対するバックアップ機能を持たせた状態で運用する。
【0028】このように構成されたATM11の運用処理動作を図3のフローチャートを参照して説明する。今、顧客がATM11を利用して入金/出金取引している取引途中で、このATMに紙幣詰り等の障害が発生した場合、これに連動してCPU32は自動リセット出力し(ステップn1 〜n3 )、この自動リセット出力を施しても障害が復旧しなければ、運用ロボット12と通信して運用ロボット12からの取引適否を確認し(ステップn4 〜n6 )、運用ロボット12側で代替取引可能であれば、運用ロボット12を接続して、この運用ロボット12からの入金/出金の取引を継続して顧客の取引要請に応じた入出金取引を実行する(ステップn7 〜n8 )。
【0029】また、自動リセットしたときに、障害が復旧すれば、再度ATM11からの取引を繰返し実行する(ステップn9 )。
【0030】さらに、ATMの障害発生時に運用ロボット12側で入出金取引準備ができていない場合は、係員による復旧作業がなされ、ATM11の障害が復旧すれば、CPU32は同ATM11の運用規制を解除して取引運用を再開する(ステップn10)。
【0031】次に、特殊媒体を取引許容したATMの運用処理動作を図4のフローチャートを参照して説明する。今、顧客がATM11を利用して取引するとき、顧客が新札、記念硬貨、筒状硬貨、札束、小切手、金券、他国紙幣、有価カード等の特殊媒体の一つを選択した場合(ステップn11〜n12)、その選択指定された特殊媒体を内蔵する運用ロボット12をATM11の後方に接続し、この接続された運用ロボット12がATM11の後方搬送ラインL3を介して選択指定された特殊媒体を取引処理する(ステップn13〜n14)。
【0032】また、顧客が特殊媒体を指定せず、ATM11が取引許容する紙幣を指定した場合は、このATM11から取引指定された金種とその取引枚数の紙幣を放出する(ステップn15)。
【0033】上述のように、仮にATMに障害が発生しても、ATMの取引機能を運用ロボット側で代替して取引継続するため、ATMは取引停止せず、安定した運用維持が図れる。また、自動取引途中で障害が発生しても、その取引を中断せずに対処できるため、顧客を長時間待たせなくなり、顧客に対する取引サービス性が向上する。
【0034】また、運用ロボット側で特殊媒体が取扱えるため、様々な異種媒体を取引利用することができる。また、取引媒体別に内蔵した複数の運用ロボットを使い分ければ、この一台のATMで多種類の取引媒体を取引することができる。
【0035】この発明と、上述の一実施例の構成との対応において、この発明の取引端末機は、実施例のATM11に対応し、以下同様に、媒体運用ロボットは、運用ロボット12に対応し、代替手段は、運用ロボット12のCPU39に対応し、媒体は、紙幣A…に対応し、特定媒体は、新札、記念硬貨、筒状硬貨、札束、小切手、金券、他国紙幣、有価カード等に対応し、代替手段専用の媒体搬送路は、後方搬送ラインL3 に対応するも、この発明は上述の一実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のATMと運用ロボットとの接続状態を示す内部構成図。
【図2】この発明のATMと運用ロボットとを接続した時の制御回路ブロック図。
【図3】この発明のATM障害発生時の代替取引処理動作を示すフローチャート。
【図4】この発明のATMを用いた特殊媒体の取引処理動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
11…ATM
12…運用ロボット
13…入出金口
14…紙幣鑑別部
39…運用ロボットのCPU
L1 …入金搬送ライン
L2 …出金搬送ライン
L3 …後方搬送ライン
L4 …入出金搬送ライン
A…紙 幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】媒体を受入/放出して取引利用する取引端末機に外部より接続して媒体を補充/回収する媒体運用ロボットを備えた取引処理装置であって、上記取引端末機の取引処理時に受入/放出される媒体の取引処理を上記媒体運用ロボット側で行う代替手段を備えた取引処理装置。
【請求項2】代替手段は、特定媒体の取引が指定されたとき、特定媒体を取扱う媒体運用ロボット側で特定媒体の取引を行うことを特徴とする請求項1記載の取引処理装置。
【請求項3】代替手段は、取引端末機の媒体処理部に異常が発生したとき、媒体運用ロボットの媒体処理部で取引処理することを特徴とする請求項1記載の取引処理装置。
【請求項4】取引端末機は、媒体運用ロボット側での取引処理時に搬送利用する代替手段専用の媒体搬送路を備えたことを特徴とする請求項1、2または3記載の取引処理装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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