説明

取引装置又は運用性能判定システム

【課題】
本発明は、障害による動作停止として表面化するまで認識できなかった運用性能状況を把握し、係員等に対して通知することで、障害の未然防止と迅速対応を実現することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る取引装置又は運用性能判定システムは、顧客による操作に基づいて、取引を実行する取引装置であって、取引に関連する入力操作を受け付けるとともに、取引に関連する情報を表示する第1の表示手段と、取引処理を実行中に、前記取引装置が有する所定機能の状態を判定する機能状態判定手段と、機能状態判定手段による判定結果を表示する第2の表示手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関やコンビニエンスストア等に設置される自動取引装置(ATM)や両替機などのような、利用者の操作を受付けて利用者が希望する取引を実行する取引装置、又は、利用者が取引を行う自動取引装置とは別に出力手段を設けた運用性能判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速な情報化社会の進展に伴い、金融機関と顧客との間で行われる金融取引に関して、窓口での取引に比べATMでの取引が増加しており、大半の取引がATMで行なわれ、ATMを利用した金融システムの障害による金融取引の停止が、社会に益々大きな影響を与える状況となり、いかにATMの障害を発生させずに稼働率を高めていくかが、大きな課題となっている。その中で、金融システムを構成するホストコンピュータ、通信回線、通信回線の中継機器などを冗長化することにより信頼性を高める他、ATMを一旦取扱中止状態にし、保守員による定期的な点検を実施することで、ATMの運用性能状況を確認する対策が実施されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、取引処理装置と保守情報を提供する装置で構成され、取引処理装置内で稼働中の運用状況情報を収集し、障害が発生した場合に、稼働中に収集した運用状況情報を入出力手段を介して保守情報を提供する装置へ入力し、運用状況情報が入力された装置はその運用状況情報を分析することにより、最適な保守情報を取引処理装置に対して提供し、提供された保守情報を取引処理装置の表示部にて操作者が閲覧できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−275713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ATMを取引中止状態にして保守員による定期的な点検を実施し、障害による動作停止につながるような事象を調査する方法では、そのような事象を発見できるのは、定期的な点検を実施するタイミングのみとなり、ATMにおける運用性能の低下や障害を未然に防ぐことは困難である。また、定期的に点検をする場合は、例えば、利用者の数が増加し、それに応じて取引処理装置が使用される回数が増加することにより、各機能の劣化が短期間で生じた場合に対応することができない。そして、結果的に、ATMの障害を未然に防ぐことは難しくなる。
【0006】
また、前述の特許文献1によれば、保守情報を提供する装置に対して、取引処理装置から稼動中の運用性能状況情報を入力するのは取引処理装置が障害となった場合のみであり、障害とならない状態では、収集していている運用性能状況情報が有益に使用されていない。また、提供された保守情報は取引処理装置に設けられている表示部にて閲覧可能となっているが、閲覧対象者が操作者に限定されているため、取引処理装置の障害に対して、操作者以外の者は対応できない状況が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる取引装置は、顧客による操作に基づいて、取引を実行する取引装置であって、取引に関連する入力操作を受け付けるとともに、取引に関連する情報を表示する第1の表示手段と、取引処理を実行中に、取引装置が有する所定機能の状態を判定する機能状態判定手段と、機能状態判定手段による判定結果を表示する第2の表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る運用性能判定システムは、取引に関連する入力操作を受け付けるとともに取引に関連する情報を表示する表示手段、取引処理を実行中に所定機能の状態を判定する機能状態判定手段を有する取引装置と、機能状態判定手段による判定結果を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、障害による動作停止として表面化するまで認識できなかった運用性能状況を把握し、係員等に対して通知することで、障害の未然防止と迅速対応を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に関わるシステム構成の外観図
【図2】本実施形態に関わるシステム構成の機能ブロック図
【図3】媒体返却率に基づく判定処理フロー図
【図4】明細票、通帳の印字濃度低下判定を含んだ取引処理フロー図
【図5】明細票、通帳の印字濃度に基づく判定処理フロー図
【図6】タッチパネルの感度に基づく判定処理フロー図
【図7】処理時間に基づく判定処理フロー図
【図8】媒体返却率に関する判定基準テーブル例
【図9】タッチパネルの感度に関する判定基準テーブル例
【図10】処理時間に関する判定基準テーブル例
【図11】検知結果情報に基づく分類処理フロー図
【図12】運用性能状況の出力例
【図13】運用性能低下原因に基づく検知事象分類テーブル例
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態にかかる取引装置は、顧客による操作に基づいて、取引を実行する取引装置であって、取引に関連する入力操作を受け付けるとともに、取引に関連する情報を表示する第1の表示手段と、取引処理を実行中に、取引装置が有する所定機能の状態を判定する機能状態判定手段と、機能状態判定手段による判定結果を表示する第2の表示手段と、を備えることを特徴とする。また、取引装置は、所定機能に関する情報を取得する情報検知手段を有し、機能状態判定手段は、所定の閾値と情報検知手段により取得した情報とから、所定機能の機能低下を判定することを特徴とする。さらに、取引装置は、情報検知手段で取得した情報に基づいて機能低下の原因箇所を特定し、判定結果と併せて、第2の表示手段に表示することを特徴とする。また、所定機能は、顧客への媒体の返却率、媒体への印字濃度、第1の表示手段の感度又は取引処理時間に基づいて、判定されることを特徴とする。
【0012】
次に、本実施形態にかかる運用性能判定システムは、取引に関連する入力操作を受け付けるとともに取引に関連する情報を表示する表示手段、取引処理を実行中に所定機能の状態を判定する機能状態判定手段を有する取引装置と、機能状態判定手段による判定結果を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。また、取引装置は、所定機能に関する情報を取得する情報検知手段を有し、機能状態判定手段は、所定の閾値と情報検知手段により取得した情報とから、所定機能の機能低下を判定することを特徴とする。さらに、取引装置は、情報検知手段で取得した情報に基づいて機能低下の原因箇所を特定し、判定結果と併せて、出力手段から出力することを特徴とする。また、取引装置は、情報検知手段により取得した情報に基づいて、原因が特定できる事象、原因が推定できる事象、原因のが推定又は特定できない事象、に分類する分類手段を有することを特徴とする。
【0013】
以下、図1〜13に基づいて、本発明に係る一実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、銀行システムなどの金融機関システムに採用されるATM(Automated Tellers Machine)を用いる。図1では本実施形態に関わるシステム構成の外観図、図2は機能ブロック図を示しており、取引処理装置1(以下、「ATM1」と称す)が、データ入出力制御部13、14を介して接続された表示部7と接続されており、また通信網を介してホストコンピュータ8(以下、「ホスト8」と称す)と接続されている。具体的には、ATM1は、金融機関またはコンビニエンスストア等に設置され、利用者の操作によって現金の入金や出金等の金融取引を行う処理装置であり、データ入出力制御部13を介して表示部7のデータ入出力制御部14に接続されている。また回線接続部12を介してホスト8の回線接続部16に接続されている。さらに、ATM1は、利用者の要求する種々の金融取引を自動的に実行する処理装置であるため、取引操作部2、カード機構部・明細票機構部6、通帳機構部4、紙幣入出金機構部3、硬貨入出金機構部5、そして、これら各部を制御する制御部11で構成されている。制御部11は、CPU、メモリ等のハード構成と、プログラム、データ等のソフト構成とから成り、各種処理や取引を制御する。
【0014】
次に、各部について説明する。取引操作部2は、主にATM1の利用者が取引を行う際、取引操作の誘導画面を表示したり、利用者の操作によるキー入力を受付ける部分であり、タッチパネル等により構成された入力兼表示部(入力表示部ともいう)である。カード機構部・明細票機構部6は、利用者のカードの挿入又は排出機能、カードの磁気ストライプ又はICチップへのリード又はライト機能、カードエンボス部分のイメージの読取り機能などを有する。また、取引した内容を印字部により明細票に印字し、装置内から排出する機能を有する。通帳機構部4は、利用者の通帳の挿入/排出機能、磁気ストライプのリード/ライト機能、通帳への印字部による印字機能などを有する。また、紙幣入出金機構部3と硬貨入出金機構部5は、現金の入金や出金機能、現金の鑑別や搬送、収納機能を有する。そして、これらの各部は制御部11によってその処理が制御される構成である。
【0015】
1.媒体返却率に基づく判定処理
まず、ATM1の運用性能の低下に繋がる事象の一つについて、図3、図8、図12、図13を用いて説明する。一例として、カードや通帳といった取引媒体の返却率や、紙幣や硬貨といった貨幣の返却率に関する情報を検知した場合の判定処理に関す処理フローを図3に示す。
【0016】
図3において、利用者が取引操作部2より入金取引を選択すると、入金取引処理が開始される(S301)。ATM1は、カード機構部・明細票機構部6でカードを受け付けるか(S302)、あるいは通帳機構部4によって通帳を受け付け(S302)、カード又は通帳を受け付けた回数をカウントする(S303)。カード又は通帳において、返却が発生した場合は(S304)返却率上昇事象判定処理を実施する(S305)。ここで、返却率上昇事象判定処理は、判定処理基準について記載した図8に示すように、カード又は通帳を対象とし、累積返却回数のカウントを行い、返却が連続で発生しているか否か、挿入された回数の累積回数に対する返却率が閾値を超えているか否か、の判定を実施する。判定の結果、判定条件を満たした場合、運用性能低下に繋がる事象を検知したとして、検知した事象、判定条件を満たした判定の判定番号を検知結果情報として記録する。この処理フローは、カードまたは通帳が正常に受け付けられるまで実施する。
【0017】
次に、紙幣入出金機構部3及び硬貨入出金機構部5の入出口シャッタを開け、利用者によって入金紙幣または硬貨が挿入されることを待つ(S306)。入金紙幣または硬貨が挿入されると、入出口シャッタを閉め、入金紙幣または硬貨の鑑別、計数を行い(S307)、受け付けた紙幣または硬貨の枚数をカウントする(S308)。その際、入金紙幣または硬貨の返却が発生した場合は(S309)は、再び返却率上昇事象判定処理を実施する(S310)。ここでの返却率上昇事象判定処理は、図8に示すように紙幣又は硬貨を対象する。当該取引における返却枚数のカウント、累積返却枚数のカウントを行い、当該取引において、挿入された枚数に対する返却率が閾値を超えているか否か、累積返却枚数が初期設定された枚数を超えているか否か、の判定を実施する。判定の結果、判定条件を満たした場合、運用性能の低下に繋がる事象を検知したとして、検知した事象と、判定条件を満たした判定の判定番号とを検知結果情報としてATM1の記憶部に記録する。この処理フローは、紙幣または硬貨が正常に受け付けられるまで実施する。
【0018】
続いて、ATM1は、ホスト8と入金電文送受信、即ち、ホスト8へ入金取引の可否を照会する(S311)。ホスト8より、入金取引成立が通知された場合は、入金紙幣または硬貨の収納処理を実行し(S312)、通帳機構部4で通帳に印字し、カード機構部・明細票機構部5で明細票を印刷し(S313)、カード、通帳、明細票を利用者に放出する(S314)。その後、検知結果情報が記録されているか判定し(S315)、検知結果情報がある場合は、検知結果情報に基づいて分類処理を実施する(S316)。図11は、分類処理の詳細フローを示す。まず、分類処理が開始されると(S1101)、記録された検知事象が検知事象分類テーブルに登録されているか検索する(S1102)。検知事象分類テーブルに検知事象が登録されている場合(S1103)、当該検知事象のレコードから、記録された判定番号を検索する(S1104)。判定番号が登録されている場合(S1105)、それらに対応する原因箇所に関する情報を取得し(S1106)、また重要度に関する情報を取得し(S1107)、さらに分類カテゴリに関する情報を取得する(S1108)。そして、これらの取得した情報を基に、分類結果情報を作成し(S1109)処理を終了する(S1110)。そして、図3に示すように、分類した分類結果情報を表示部7に入力し(S317)表示させて、一連の処理を終了する(S318)。また、ATM1より入力された分類結果情報は、図12のように表示される。本実施例では、返却率が想定値よりも高くなっている傾向をリアルタイムに表示部7に表示することにより、係員等に、カードや通帳の搬送路、MS情報読取部または貨幣の搬送ベルトの運用性能状況を知らせることができるため、性能劣化を把握できるだけでなく、障害を未然に防止することが可能となる。図13には、検知結果情報を分類する際に使用する検知事象分類テーブルの詳細を示す。
【0019】
2.印字濃度に基づく判定処理
次に、ATM1の運用性能の低下に繋がる2つ目の事象について、図4、図5、図12、図13を用いて説明する。一例として、通帳または明細票の印字濃度の低下に関する情報を検知した場合の判定処理フローを図4に示す。
【0020】
まず、利用者が取引操作部2より入金取引を選択すると、入金取引処理が開始される(S401)。ATM1は、カード機構部・明細票機構部6にてカードを受け付ける、あるいは、通帳機構部4によって通帳を受け付ける(S402)。次に、紙幣入出金機構部3および硬貨入出金機構部5の入出口シャッタを開け、利用者によって入金紙幣または硬貨が挿入されることを待つ(S403)。入金紙幣または硬貨が挿入されると、入出口シャッタを閉め入金紙幣または硬貨の鑑別、計数を行う(S404)。次にATM1は、ホスト8と入金電文送受信、即ち、ホスト8へ入金取引の可否を照会する(S405)。ホスト8より、入金取引成立が通知された場合は、入金紙幣または硬貨の収納処理を実行し(S406)、通帳機構部4で通帳に印字し、カード機構部・明細票機構部5にて明細票を印刷した後(S407)、印字濃度低下事象判定処理を実施する(S408)。
【0021】
図5は、印刷した情報の印字濃度低下事象を判定する処理フローを示す。本処理は、対象を通帳または明細票とする。まず、判定処理が開始されると(S501)、読込み感度を弱に設定した上で、通帳または明細票を読込む。読込みが正常となった場合は(S503)、印字濃度は正常と判定し処理を終了する(S508)。読込みが異常となった場合は(S503)、印字濃度低下注意を表す判定番号を検知結果情報として記録し(S504)、読込み感度を強に設定し、再度通帳または明細票を読込む(S505)。読込みが正常となった場合は(S506)処理を終了する(S508)。読込みが異常となった場合は(S506)、印字濃度低下警告を表す判定番号を検知結果情報としてATM1の記憶部に記録し(S507)、判定処理を終了する(S508)。濃度低下事象判定処理の後、カード、通帳、明細票を利用者に放出する(S409)。その後、検知結果情報が記録されているかどうか判定し(S410)、検知結果情報が記録されている場合は、検知結果情報に基づいて分類処理を実施する(S411)。ここで、図13は分類処理の詳細フローを示す。まず、分類処理が開始されると(S111)、検知結果情報として記録された検知事象が検知事象分類テーブルに登録されているかを検索する(S112)。検知事象分類テーブルに検知事象が登録されている場合(S113)、当該検知事象のレコードから検知結果情報として記録された判定番号を検索する(S114)。判定番号が登録されている場合(S115)、原因箇所に関する情報(S116)、重要度に関する情報(S117)、分類カテゴリに関する情報を取得する(S118)。取得した情報を基に分類結果情報を作成し(S119)処理を終了する(S120)。次に、分類した分類結果情報を表示部7に入力し(S412)、表示した後、処理を終了する(S413)。ATM1より入力された分類結果情報は、図12のように表示される。本実施例では、通帳または明細票に印字した文字の濃度が低下している傾向をリアルタイムに表示部7に表示し、係員等に報知することにより、インクが無くなり利用者から問い合わせが来る前にインクリボンの交換作業を実施又はその準備をすることができ、障害を未然に防止する事が可能となる。なお、図13は、検知結果情報を分類する際に使用する検知事象分類テーブルの詳細を示す。
【0022】
3.表示部感度に基づく判定処理
次に、ATM1の運用性能の低下に繋がる3つ目の事象について、図6、図9、図12、図13を用いて説明する。一例として、タッチパネル感度低下に関する情報を検知した場合の判定処理フローを図6に示す。まず、利用者が取引操作部2より取引を選択すると選択した取引処理が開始される(S601)。取引処理が開始されると、それと並行して、タッチパネル感度低下事象判定処理が開始される(S601)。タッチパネル感度低下事象判定処理は、各種取引処理が行われている間に(S603)、常に事象を監視し各種取引終了処理が実施された後(S604)、タッチパネル感度低下事象判定処理も終了する(S605)。
【0023】
図9は、各種取引処理と並行して実行されるタッチパネル感度低下事象判定処理の詳細を示す。処理は、各種取引処理中に、取消ボタンが押下された回数のカウント、ボタン画像が配置されているエリア以外のエリアにて入力を検知した回数のカウント、各種取引処理フロー中のボタン押下とボタン押下の間隔時間の計測を検知対象情報として収集し、タッチパネル感度低下事象判定処理の終了時に、取消ボタンの押下回数が初期設定された回数を超えているか否か、ボタン画像が配置されているエリア以外のエリアにて入力を検知した回数が、初期設定された回数を超えているか否か、各種取引処理フロー中のボタン押下とボタン押下の間隔時間が初期設定された時間を超えている回数が初期設定された回数を超えているか否かの判定処理を実施する。判定処理の結果、判定条件を満たした場合、運用性能の低下に繋がる事象を検知したとして、検知した事象と、判定条件を満たした判定の判定番号とを検知結果情報としてATM1の記憶部に記録する。その後、検知結果情報が記録されているかどうか判定し(S606)、検知結果情報が記録されている場合は、検知結果情報に基づいて分類処理を実施する(S607)。図13は、分類処理の詳細フローを示す。まず、分類処理が開始されると(S111)、検知結果情報として記録された検知事象が検知事象分類テーブルに登録されているかを検索する(S112)。検知事象分類テーブルに検知事象が登録されている場合(S113)、当該検知事象のレコードから、検知結果情報として記録された判定番号を検索する(S114)。判定番号が登録されている場合(S115)、原因箇所に関する情報(S116)、重要度に関する情報(S117)、分類カテゴリに関する情報を取得する(S118)。取得した情報を基に、分類結果情報を作成し(S119)処理を終了する(S120)。次に、分類した分類結果情報を表示部7に入力し(S608)表示した後、取引を終了する(S609)。ATM1より入力された分類結果情報は、図12に示すように表示される。本実施例では、タッチパネルへの入力状況をあらかじめ定めた条件で監視し、タッチパネルの感度低下傾向をリアルタイムに表示部7に表示し、係員等に報知することにより、取引操作部2の汚れや、異物によるタッチパネルの感度低下状況を知らせることができ、利用者からの苦情や障害を未然に防止することが可能となる。
【0024】
4.処理時間に基づく判定処理
次に、ATM1の運用性能の低下に繋がる4つ目の事象について、図7、図10、図12、図13を用いて説明する。一例として、処理時間の遅延に関する情報を検知した場合の判定処理フローを図7に示す。
【0025】
まず、利用者が取引操作部2より取引を選択すると、選択した取引処理が開始される(S701)。取引処理が開始されると、それと並行して処理時間遅延事象判定処理も開始される(S702)。処理時間遅延事象判定処理は、各種取引処理が行われている間(S703)、処理時間を監視し、各種取引終了処理が実施された後(S704)、処理時間遅延事象判定処理を終了する(S705)。図10は、各種取引処理と並行して実行される処理時間遅延事象判定処理の詳細を示す。各種取引処理中に、カードまたは通帳挿入から、取引操作部2に表示される画面の遷移が発生するまでの時間計測、紙幣入出金機構部3に対して、紙幣の繰り出し指示を行ってから、紙幣入出金機構部3の入出口シャッタが開となるまでの時間計測、ATM1からの取引要求電文送信から、ホスト8からの取引応答電文を受信するまでの時間計測を検知対象情報として収集し、処理時間遅延事象判定処理の終了時に、計測した時間が初期設定された回数を越えている回数が初期設定された回数以上発生しているか否かの判定を実施する。判定の結果、判定条件を満たした場合、処理時間遅延事象を検知したとして、検知した事象と、判定条件を満たした判定の判定番号とを検知結果情報としてATM1の記憶部に記録する。その後、検知結果情報が記録されているかどうか判定し(S706)、検知結果情報が記録されている場合は、検知結果情報に基づいて分類処理を実施する(S707)。図13には、分類処理の詳細フローを示す。まず、分類処理が開始されると(S111)、検知結果情報として記録された検知事象が検知事象分類テーブルに登録されているかを検索する(S112)。検知事象分類テーブルに検知事象が登録されている場合(S113)、当該検知事象のレコードから、検知結果情報として記録された判定番号を検索する(S114)。判定番号が登録されている場合(S115)、原因箇所に関する情報(S116)、重要度に関する情報(S117)、分類カテゴリに関する情報を取得する(S118)。取得した情報を基に、分類結果情報を作成し(S119)、処理を終了する(S120)。次に、分類した分類結果情報を表示部7に入力し(S708)、表示した後、取引を終了する(S709)。ATM1より入力された分類結果情報は、図12のように表示される。本実施例では、処理時間の妥当性をあらかじめ定めた条件で監視し、処理時間が遅延している傾向をリアルタイムに表示部7に表示し、係員等に報知することにより、利用者からの苦情を未然に防止する事が可能となる。
【0026】
上述した構成により、従来では、顧客、保守員等から指摘されなければ判らない各機能低下にかかわる事象を障害が生じる前に把握することができ、障害を未然に防ぐことが可能となる。また、リアルタイムで運用性能状態を表示する構成を採用することにより、上記事象が発生するタイミング、回数なども含めて知ることが可能となり、対応側においても、総合的にこれらの事象、そして、それらの対応策を検討することが可能となる。さらに、表示部への表示内容を、取引装置の利用者、待機者、誘導員、銀行員、さらには保守員といった様々な立場の人が認識できることから、より敏速に上記不具合を認識し対応することが可能となる。
【0027】
本実施例では、表示内容として、各検知結果情報を基に基づいて、事象内容の原因を特定可能な場合、推定可能な場合、推定不可な場合の3種類に分類したが、これに限定されるものではなく、その他の内容で分類することも可能である。さらに、本実施例で示した事象例以外においても適用でき、同事象例においても本実施例で説明した同一の処理フローに限定されるものでもない。
【符号の説明】
【0028】
1…取引処理装置
2…取引操作部
3…紙幣入出金機構部
4…通帳機構部
5…硬貨入出金機構部
6…カード機構部・明細票機構部
7…表示部
8…ホストコンピュータ
11…制御部(取引処理装置側)
12…回線接続部(取引処理装置側)
13…データ入出力制御部(取引処理装置側)
14…データ入出力制御部(表示部側)
15…制御部(ホストコンピュータ側)
16…回線接続部(ホストコンピュータ側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客による操作に基づいて、取引を実行する取引装置であって、
取引に関連する入力操作を受け付けるとともに、取引に関連する情報を表示する第1の表示手段と、
前記取引処理を実行中に、前記取引装置が有する所定機能の状態を判定する機能状態判定手段と、
前記機能状態判定手段による判定結果を表示する第2の表示手段と、を備えることを特徴とする取引装置。
【請求項2】
前記取引装置は、
前記所定機能に関する情報を取得する情報検知手段を有し、
前記機能状態判定手段は、所定の閾値と前記情報検知手段により取得した情報とから、前記所定機能の機能低下を判定することを特徴とする請求項1に記載の取引装置。
【請求項3】
前記取引装置は、
前記情報検知手段で取得した情報に基づいて機能低下の原因箇所を特定し、前記判定結果と併せて、前記第2の表示手段に表示することを特徴とする請求項2に記載の取引装置。
【請求項4】
前記所定機能は、
顧客への媒体の返却率、媒体への印字濃度、第1の表示手段の感度又は取引処理時間に基づいて、判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の取引装置。
【請求項5】
取引に関連する入力操作を受け付けるとともに、取引に関連する情報を表示する表示手段と、前記取引処理を実行中に、所定機能の状態を判定する機能状態判定手段と、を有する取引装置と、
前記機能状態判定手段による判定結果を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする運用性能判定システム。
【請求項6】
前記取引装置は、
前記所定機能に関する情報を取得する情報検知手段を有し、
前記機能状態判定手段は、所定の閾値と前記情報検知手段により取得した情報とから、前記所定機能の機能低下を判定することを特徴とする請求項5に記載の運用性能判定システム。
【請求項7】
前記取引装置は、
前記情報検知手段で取得した情報に基づいて機能低下の原因箇所を特定し、前記判定結果と併せて、前記出力手段から出力することを特徴とする請求項5に記載の運用性能判定システム。
【請求項8】
前記取引装置は、
前記情報検知手段により取得した情報に基づいて、原因が特定できる事象と、原因が推定できる事象と、原因が推定又は特定できない事象と、に分類する分類手段を有することを特徴とする請求項5に記載の運用性能判定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−25598(P2013−25598A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160433(P2011−160433)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】