説明

取水ゲート制御システムおよび取水量制御ユニット

【課題】水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システムをシンプルな構成で廉価に提供する。
【解決手段】水力発電所の取水路2に設けられる取水ゲート4を制御する取水ゲート制御システムであって、駆動信号に基づいて取水ゲート4を開閉動作させる駆動機構3と、取水ゲート4の下流側に設けられ取水ゲート全閉水位Aを検出する危険水位検出手段5と、取水ゲート開動水位C及び取水ゲート閉動水位Bを検出する制御水位検出手段6と、制御水位検出手段6及び危険水位検出手段5から発信される検出信号に基づいて駆動機構3を作動させる駆動信号を発信する制御部7とを有し、全閉水位Aが検出された場合は取水ゲート4を全閉させ、取水ゲート開動水位C又は取水ゲート閉動水位Bが検出された場合は取水ゲート4を所望量だけ開動作又は閉動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システム、および、水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートによる取水量を自動で制御するための取水量制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水力発電所において発電に用いられた水を再度取水路に取り込む等して、小規模の水力発電を行う場合があった。
このような小規模水力発電用の取水路は、その水位が危険水位に達した場合に取水ゲートを自動で閉じるための制御機構を備える一方で、取水量が少ないため制御が基本的に困難であったり、費用対効果の点から取水量を自動制御する機構を備えない場合があった。
従って、小規模の水力発電所では、許可水量を超過して危険水位に達しないように取水ゲートの開度を低く固定しており、リアルタイムできめ細かな制御を行うことが難しく、利用を許可された水量を余すところなく利用することが難しいという課題があった。この結果、小規模な水力発電を行う際の発電効率を向上させることが難しいという課題があった。
このため、簡単な構成で取水路からの取水量を効率的に自動制御することができ、かつ、施工費が廉価な取水ゲート制御システムの開発が望まれていた。
本願発明と同一の技術内容を有する先行技術文献は現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先行技術としては以下に示すようなものが知られている。
【0003】
特許文献1には「取水口ゲートの開閉制御装置及び取水口ゲートの開閉制御方法」という名称で、水流から取り入れられた水が流れる導水路に設置された取水口ゲートの開閉を制御する装置及びその制御方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に係る出願は、本願と同一の出願人によるものであり、その発明である取水口ゲートの開閉制御装置は、水流から取り入れられた水が流れる導水路に設置された取水口ゲートの開閉を制御する取水口ゲートの開閉制御装置であって、水流から前記導水路への入り口には、該水流中に浮遊している浮遊物の該導水路内への侵入を防止する侵入防止部材が取り付けられており、水流の水位と前記侵入防止部材よりも前記導水路の下流側の水位との水位差の発生の有無をモニターするモニター手段と、モニター手段での水位差の発生があるとのモニターにより、取水口ゲートを閉鎖する閉門手段と、閉門手段による取水口ゲートの閉鎖後一定時間の経過により、取水口ゲートを開放する開門手段とを備えていることを特徴とするものである。
上述のような特許文献1に開示される発明によれば、取水量の低下や侵入防止部材の破断が招来されることなく、一定量の取水を行うことができる。
【0004】
特許文献2には「取水制御装置」という名称で、水力発電所等の取水設備における取水ゲートの制御装置に関する考案が開示されている。
特許文献2に開示される考案である取水制御装置は、文献中に使用される符号をそのまま用いて説明すると、貯水池の取水口付近に水位計14、質量計15、濁度計16等の水質センサを設け、マイクロコンピュータを用いた制御部11の取水停止,再開判部12において、水位計及び水質センサ15,16からの情報に基づいて取水停止,取水再開の判断をして取水ゲート3の開閉装置4を作動させることを特徴とするものである。
上述のような特許文献2に開示される考案によれば、人手に頼っていた取水停止、再開を自動化することができ、省力化が可能となる。取水に関する定量的なデータを元に取水停止、再開の判断ができるため、従来の取水停止過早或は取水再開遅れをなくし、取水時間を長くすることができるので、溢水を低減し、例えば水力発電所では発電時間が延長でき発生電力量を増加させることができる。
【0005】
特許文献3には「水門の自動制御システム」という名称で、大河川に流入する中小河川の合流点の水路に設けられる水門(樋門を含む)の自動制御システムに関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される水門の自動制御システムは、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、水路に設置される水門の扉体1の下流側の外水側bの所定の閉操作上限水位、閉操作水位及び開操作水位を検出する閉操作上限外水位センサー4、閉操作外水位センサー5及び開操作外水位センサー6を各々設け、扉体1の全開、全閉及び微小開度を検出する扉体開度センサー7を設け、内外水位差を検出するセンサー23を備えた内外水位差検出装置2を扉体1に設け、内外水位差検出装置2及び各センサーからの情報に基づいて扉体1の自動開閉を制御する制御装置8を設けたことを特徴とするものである。
内外水位差を検出する検出装置を扉体に装着して内外水位差の情報を簡易な構造でしかも低コストで得ることができ、水門の自動制御を低コストで実現することができると共に、洪水位の状況、水路の外的要因による阻害状況に対応することもできる。
【0006】
特許文献4には「河口堰の水位制御方式」という名称で、河口堰のゲート自動制御装置における堰上流側の水位制御方式に関する発明が開示されている。
特許文献4に開示される発明は、堰内水位と堰外水位を計測し、その差が所定の値を越えたときにゲートを開く河口堰ゲート自動制御装置であり、堰外水位が堰内水位の基準水位以下のときは、堰内水位が所定水位になるようにゲートの開閉制御を行い、堰外水位が基準水位よりも高く,かつ,堰外水位に設定水位を加算した値が,堰内水位よりも小さい場合は,堰内水位が,堰外水位に設定水位を加算した値になるようにゲートの開閉制御を行い、堰外水位に設定水位を加算した値が,堰内水位を超える場合は,ゲートを全閉にすることを特徴とするものである。
上記構成の発明によれば、堰外水位に対し正しく堰内水位を追従させることができる。この結果、堰内水位の放流動作を効率良く行うことができ、かつ、塩水の遡上を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−77624号公報
【特許文献2】実開平6−67534号公報
【特許文献3】特開2000−226842号公報
【特許文献4】特開昭52−121932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1,2に開示される発明において制御されるのはあくまでも取水ゲートの開閉であり、水力発電時の取水量を適切にするために取水ゲートの開度を調整するための技術ではない。
従って、特許文献1,2に開示される発明では、水力発電のために許可された取水量を効率よく取得し続けるよう取水ゲートを制御することはできなかった。
【0009】
特許文献3に開示される発明は、そもそも所望の水量を得るために取水ゲート(扉体1)の開度を適宜調整するための技術ではない。このため、洪水位の状況や、水路の外的要因による阻害状況に好適に対応することはできても、目的とする水量が得られるように取水ゲート(扉体1)の開度を自動で制御することは出来なかった。
また、特許文献3に開示される発明では、水位センサーにおいて特定の水位が検出された場合、取水ゲート(扉体1)の開閉動作に直ちに反映されるため、水位の変化が例えば、突発的な波による場合等のように一時的な(瞬間的な)ものである場合にも、取水ゲート(扉体1)の開閉動作が行われると予想される。
したがって、取水ゲート(扉体1)において、実際には不必要な開閉動作が行われる可能性があり、水力発電における取水路に特許文献3に開示される発明を設けた場合には、水位の上下動(ハンチング)が起こる原因となり好ましくなかった。
【0010】
特許文献4に開示される発明によれば、各制水ゲートを水位偏差によりステップ状に開閉することができるものの、その際には、堰内水位及び堰外水位の計測値に基づいてその都度演算処理を行ってゲートの開度を算出する必要があった。このため、制御機構自体が複雑となり、設備の導入やメンテナンスにコストがかかるため、小規模の水力発電用の取水路の取水ゲートに導入することは難しかった。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、水力発電所の取水路において、取り込まれる水量を所望の量にするための取水ゲートの調整を効率的に自動で行うことができ、その際に、取水ゲートの開度を制御するために複雑な演算処理を行う必要がなく、構成がシンプルで、しかも、コストパフォーマンスの高い取水ゲート制御システムおよび取水量制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である取水ゲート制御システムは、水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システムであって、駆動信号に基づいて取水ゲートを開閉動作させる駆動機構と、取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート全閉水位を検出する危険水位検出手段と、取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート開動水位,及び,取水ゲート閉動水位を検出する制御水位検出手段と、制御水位検出手段及び危険水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,駆動機構を作動させる駆動信号を発信する制御部とを有し、この制御部は、危険水位検出手段において取水ゲート全閉水位が検出された場合に,取水ゲートを全閉させる第1の駆動信号を発信するとともに、制御水位検出手段において,取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合に,取水ゲートを所望量だけ開動作又は閉動作させる第2の駆動信号を発信し、第1の駆動信号は、第2の駆動信号よりも優先されることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、駆動機構は制御部から発信される駆動信号である,第1の駆動信号及び第2の駆動信号に基づいて、取水ゲートを開閉動作するという作用を有する。
また、危険水位検出手段は、取水ゲートの下流側に設けられ,水力発電所に損傷を与える恐れのある高い水位である取水ゲート全閉水位を検出して、その検出信号を制御部に対して発信するという作用を有する。
さらに、制御水位検出手段は、取水ゲートの下流側に設けられ,そこにおける水位が目的とする水量を得るために必要な水位(取水ゲート開動水位)を下回っている場合、又は、取水ゲートの下流側の水位が目的とする水量を得るために必要な水位(取水ゲート閉動水位))を上回っている場合に、その状態を検出して制御部に対して検出信号を発信するという作用を有する。
そして、制御部は、危険水位検出手段からの検出信号を受けて駆動機構に対して,取水ゲートを全閉させる第1の駆動信号を発信するとともに、制御水位検出手段からの検出信号を受けて駆動機構に対して,取水ゲートを所望量だけ開動作又は閉動作させる第2の駆動信号を発信するという作用を有する。
さらに、第2の駆動信号よりも第1の駆動信号を優先する構成とすることで、取水ゲートの下流側の水位が危険水位に達した場合は、第2の駆動信号の発信により取水ゲートを徐々に閉動作させるのではなく、第1の駆動信号により速やかに取水ゲートを全閉するという作用を有する。
【0013】
請求項2記載の発明である取水ゲート制御システムは、請求項1記載の取水ゲート制御システムにおいて、危険水位検出手段によって検出される取水ゲート全閉水位は、第1の取水ゲート全閉水位と,この第1の取水ゲート全閉水位よりも低い第2の取水ゲート全閉水位であって、制御部は、第1の取水全閉水位を検出した際にはタイマーを設定することなく第1の駆動信号を即時発信する一方、第2の取水ゲート全閉水位を検出した際にはタイマーを設定して所望時間継続して第2の取水ゲート全閉水位が検出された場合にのみ第1の駆動信号を発信することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ構成に加え、危険水位検出手段において危険水位を二段階(第1の取水ゲート全閉水位、及び、第2の取水ゲート全閉水位)分けて監視するよう構成されるものである。
このような請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、制御部は、危険水位検出手段からの第1の取水ゲート全閉水位の検出信号を受けた場合は、制御部においてタイマーを設定することなく駆動機構に対して第1の駆動信号を即時発信する一方で、危険水位検出手段からの第2の取水ゲート全閉水位の検出信号を受けた場合は、制御部においてタイマーを設定して,所望時間第2の取水ゲート全閉水位が継続した場合にのみ第1の駆動信号を発信するという作用を有する。
これにより、請求項2記載の発明では、第1の取水ゲート全閉水位が検出された場合には速やかに取水ゲートの全閉操作を行う一方、第2の取水ゲート全閉水位が検出された場合にはその水位が持続的なものである場合にのみ取水ゲートの全閉操作を行うという作用を有する。
【0014】
請求項3記載の発明である取水ゲート制御システムは、請求項1又は請求項2に記載の取水ゲート制御システムにおいて、制御部は、タイマーを設定して,制御水位検出手段によって取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位を検出した際には,所望時間継続して取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合にのみ第2の駆動信号を発信することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ作用に加えて、制御部ではタイマーが設定され、制御水位検出手段において取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が所望時間継続して検出された場合にのみ、制御部から第2の駆動信号を発信するという作用を有する。
請求項3記載の発明では、取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された際に、直ちに取水ゲートの開動作又は閉動作を実行するのではなく、その水位又は取水ゲート閉動水位が持続的なものである場合にのみ、取水ゲートの開動作又は閉動作を実行するという作用を有する。
【0015】
請求項4記載の発明である取水量制御ユニットは、水力発電所の取水路に設けられ,駆動機構により開閉動作がなされる取水ゲートと、駆動信号に基づいて取水ゲートを開閉動作させる駆動機構と、取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート全閉水位を検出する危険水位検出手段と、この危険水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,取水ゲートを全閉させる第1の駆動信号を発信する第1の制御部とを備えた取水ゲート制御システムに設けられて,取水路からの取水量を自動制御するための取水量制御ユニットであって、この取水量制御ユニットは、取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート開動水位及び取水ゲート閉動水位を検出する制御水位検出手段と、第1の制御部に接続され,制御水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,駆動機構を作動させる第2の駆動信号を発信する第2の制御部とを有し、第2の駆動信号は、制御水位検出手段において,取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合に発信されて,取水ゲートを所望量だけ開動作又は閉動作させるものであり、第1の駆動信号は、第2の駆動信号よりも優先されることを特徴とするものである。
前述の請求項1記載の取水ゲート制御システムにおける制御水位検出手段と、それに関する制御部の機能を抜き出して取水量制御ユニットとしたものが請求項4記載の発明である。よって、請求項4記載の発明における制御水位検出手段は、請求項1記載の発明における制御水位検出手段と同じ作用を有する。
また、請求項4記載の発明における第2の制御部は、第1の制御部に接続され、制御水位検出手段からの取水ゲート開動水位の検出信号受けて,駆動機構に対して取水ゲートを所望量だけ開動作又は閉動作させる第2の駆動信号を発信するという作用を有する。つまり、請求項4記載の発明における第2の制御部は、請求項1記載の発明における制御部において、制御水位検出手段からの検出信号を受けた際の作用と同じである。
【0016】
請求項5記載の発明である取水量制御ユニットは、請求項4記載の取水量制御ユニットであって、第2の制御部は、タイマーを設定して,制御水位検出手段によって取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位を検出した際には,所望時間継続して取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合にのみ第2の駆動信号を発信することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明と同じ作用に加えて、第2の制御部ではタイマーが設定され、制御水位検出手段において取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が所望時間継続して検出された場合にのみ、制御部から第2の駆動信号を発信するという作用を有する。
請求項5記載の発明では、取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された際に、直ちに取水ゲートの開動作又は閉動作を実行するのではなく、検知された取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が持続的なものである場合にのみ,取水ゲートの開動作又は閉動作を行うという作用を有する。
【0017】
請求項6記載の発明である取水量制御ユニットは、請求項4又は請求項5記載の取水量制御ユニットであって、第2の制御部は、前記第2の駆動信号の発信時間データを複数種類格納する記憶部を,一体に又は別体に備えることを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明と同じ作用に加えて、記憶部は、第2の制御部に一体に又は別体に設けられて、第2の駆動信号の発信時間データを複数種類格納するという作用を有する。
取水ゲートの開動量又は閉動量を所望量だけとする制御方法として、第2の駆動信号が発信された際の駆動機構の駆動時間を所望時間とする制御方法を採用した場合、請求項6記載の取水量制御ユニットを設置しようとする取設対象毎に,第2の駆動信号が発信された際の,取水ゲートの開動量又は閉動量を最適にするための駆動機構の駆動時間は異なると考えられる。
この場合、請求項6記載の取水量制御ユニットを設置しようとする取設対象毎に最適な駆動機構の駆動時間を第2の制御部に設定するのは煩雑である。
そこで、請求項6記載の発明では、第2の制御部に一体又は別体に記憶部を設けておき、この記憶部に複数種類の第2の駆動信号の発信時間データを予め格納しておくことで、駆動機構の最適な駆動時間を設定する際に、第2の制御部からの第2の駆動信号の発信時間に関する設定作業を容易にしている。
【0018】
請求項7記載の発明である取水ゲート制御システムは、水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システムであって、水力発電所の取水路に設けられ,駆動機構により開閉動作がなされる取水ゲートと、駆動信号に基づいて取水ゲートを開閉動作させる駆動機構と、取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート全閉水位を検出する危険水位検出手段と、この危険水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,取水ゲートを全閉させる第1の駆動信号を発信する第1の制御部と、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の取水量制御ユニットとを有することを特徴とするものである。
請求項7記載の発明は、取水ゲート、駆動機構、危険水位検出手段、及び、第1の制御部を備えることで、取水ゲートの下流において危険水位が検出された場合に、自動で取水ゲートを全閉するという作用を有する。つまり、取水ゲート、駆動機構、危険水位検出手段、及び、第1の制御部の組み合わせは、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムに相当する。
また、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の取水量制御ユニットの作用は上述の通りである。
従って、請求項7記載の発明は、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムに、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の取水量制御ユニットが付加されたものであり、取水ゲートの下流側の水位が危険水位に達した場合には速やかに取水ゲートを全閉するとともに、取水ゲートの下流側の水位が所望範囲内となるよう取水ゲートの開度を自動制御するという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1記載の発明によれば、取水路において取水ゲートから取り込まれた水の水位が,水力発電所に損傷を与える恐れがあるような危険水位か否かの監視を危険水位検出手段により行いつつ、取水ゲートの下流側の水位が適切であるか否かの監視を制御水位検出手段により行うことができる。すなわち、危険水位の監視と、適性水位の監視を同時平行して行うことができる。さらに、請求項1記載の発明では、危険水位に関する監視結果が、適性水位に関する監視結果に優先されるよう構成されているので、取水ゲートの下流側において急激に水位が上昇した際の安全性も確保することができる。
そして、請求項1記載の発明においては、取水ゲートの下流側における水位が危険水位以下であり,かつ,取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位である場合に、取水ゲートの下流側における水位の変化量に関わりなく、所望量(少量)だけ取水ゲートを開動作又は閉動作するよう構成されているので、1度の動作で取水ゲートの開度を最適な状態にすることはできない可能性があるものの、取水ゲートの下流側の水位の検出と、その都度必要に応じて所望量だけ取水ゲートの開動作又は閉動作することを機械的に繰り返すだけで、複雑な演算処理等を一切行うことなく、取水ゲートの下流側における水位を所望の範囲内に維持することができる。
これにより、取水ゲートから水力発電のために許可された取水量を余すことなく効率よく取得することができ、この結果、水力発電所の発電効率を高めることができる。
また、請求項1記載の発明においては、取水ゲートの下流側における水位を所望範囲に維持するための取水ゲートの動作は、所望量の開動作又は閉動作の繰り返しのみであるため、取水ゲートの制御のために複雑な演算処理を行ったり、大掛かりな設備の設置を一切必要としない。このため、請求項1記載の発明の構成を極めてシンプルにできるので、コストパフォーマンスの高い取水ゲート制御システムを提供することができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、取水ゲートの下流側において,危険性の低い一時的な水の上昇が起こった場合に、不必要に取水ゲートが全閉操作されるのを防止することができる。
つまり、請求項2記載の発明では、取水ゲートを全閉すべき水位であるか否かをより慎重に判断することができる。
この結果、水力発電所の取水路において、不必要に取水ゲートが全閉される頻度を減らすことができるので、水力発電を行う際の発電効率が低下するのを抑制することができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、制御部において第2の駆動信号を発信する際の判断をより慎重に行うことができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ効果に加えて、制御水位検出手段において検出された水位が、持続的なものである場合にのみ、取水ゲートの開動作又は閉動作を実行することができる。
これにより、取水ゲートの下流における水位の上昇又は下降が短時間の一過性のものである場合に、不必要に取水ゲートの開動作又は閉動作を行うのを防止することができる。この結果、取水ゲートの下流側において水位が不必要に上下動(ハンチング)するのを防止できるので、水力発電所に供給される水量の増減を小さくして発電効率を高めることができる。
【0022】
請求項4記載の発明である取水量制御ユニットは、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムに付加されることで、その取水ゲート制御システムを,取水量の自動制御ができる取水ゲート制御システムに変えることができる。
この場合、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムをそのまま利用しつつ、大掛かりな工事を行うこと無しに、取水量の自動制御が可能な取水ゲート制御システムとして利用できるようにすることができる。
これにより、水量の少ない水路に多大な設備投資をすることなく,取水量の自動制御が可能な取水ゲート制御システムを設置することができる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と同じ効果に加えて、制御水位検出手段において検出された水位が、一過性のものでなく持続的なものである場合にのみ、取水ゲートの開動作又は閉動作を実行することができる。
つまり、請求項5に記載の発明によれば、第2の駆動信号を発信する際の判断をより慎重に行うことができる。
この結果、取水ゲートの下流における水位の上昇又は下降が一過性のものである場合に、不必要に取水ゲートの開動作又は閉動作が行われる頻度を低くすることができる。これにより、取水ゲートの下流側において水位が不必要にハンチングするのを防止できる。従って、取水ゲートの下流側に水力発電設備が設けられる場合は、そこに供給される水量の増減が小さくなるので発電効率を高めることができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムに請求項6記載の取水量制御ユニットを取り付ける際の設定作業の負荷を軽減するとともに、請求項6記載の発明の汎用性を高めることができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムをそのまま利用して、取水量の自動制御が可能な取水ゲート制御システムとして提供することができる。
これにより、水量の少ない取水路においても、多大な設備投資を行うことなく所望量の水を自動制御により効率よく取得できるようにすることができるので、その水を利用して効率よく水力発電を行うことができる。
よって、請求項7記載の発明によれば、流量の少ない取水路の水を効率良く水力発電に利用することが可能になるので、水力発電所の立地を一層容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1に係る取水ゲート制御システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る取水ゲート制御システムの作動手順を示すシーケンス図である。
【図3】実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システムのシステム構成図である。
【図4】実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システムの作動手順を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の実施例2に係る取水量制御ユニットを備えた取水ゲート制御システムのシステム構成図である。
【図6】本発明の実施例2に係る取水量制御ユニットを備えた取水ゲート制御システムの作動の流れを示すシーケンス図である。
【図7】従来例に係る取水ゲート制御システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態に係る取水ゲート制御システム及び取水量制御ユニットについて実施例1及び実施例2を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
はじめに、従来例に係る取水ゲート制御システムについて図7を参照しながら説明する。図7は従来例に係る取水ゲート制御システムのシステム構成図である。
従来例に係る取水ゲート制御システム14は、水力発電所の取水路2に設けられる取水ゲート4を開閉して、水力発電に用いる水を取得するとともに、取水路2の下流側(図7の紙面左側)の水位が、危険水位に達した場合には、危険水位検出手段5によりその水位を検出して自動で取水ゲート4を全閉するよう構成されるものである。
このような従来例に係る取水ゲート制御システム14では、危険水位検出手段5において危険水位Aが検出されると,第1の制御部15に対して検出信号が発信され、この検出信号を受けて制御部15は、駆動機構3に対して取水ゲート4を閉動作させる駆動信号を発信して、取水ゲート4を全閉する。また、図7に示す取水ゲート制御システム14では、リミットスイッチ10を備えて、取水ゲート4が全閉された時点で、駆動機構3の作動が停止するよう構成されている。
また、このような従来例に係る取水ゲート制御システム14には、駆動機構3に操作部9が設けられているため、手動操作により取水ゲート4を開閉することができる。
【0029】
図7に示すような従来例に係る取水ゲート制御システム14により水力発電に用いる水を取水する場合、作業員が操作部9を利用して手動で取水ゲート4の開度を調整していた。
この場合、従来例に係る取水ゲート制御システム14からの取水量を適切に維持する,すなわち,取水ゲート4の下流側における水位を適切に維持するためには、操作部9の近辺に常時人員を配置してリアルタイムで取水ゲート4の開度を調整することが望ましいのであるが、常時人員を配置することは難しいため、取水ゲート4の開度を小さく保って,万一取水ゲート4に流入する水の量が増えた場合でも、水力発電のために利用が許可された水量を上回ることが無いよう配慮していた。
この場合、水力発電のために利用が許可された取水量を余すことなく取水することができないので、取水ゲート4の下流側に水力発電設備を設けた際に、その発電効率を向上し難かった。
また、小規模の水力発電設備用の取水路2は、特に狭くて取水ゲート4を自動制御するための大掛かりな設備を設置するスペースを確保することが難しい上、費用対効果の観点からも、小規模の水力発電用の取水路2に取水量を自動制御可能な取水ゲート制御システムを設けることは困難であった。
このため、大掛かりな設備を要することなく、廉価に設置できて、取水量を所望量に調整するために取水ゲートを自動で制御できるコストパフォーマンスの高い取水ゲート制御システムの開発が望まれていた。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1に係る取水ゲート制御システムについて図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例1に係る取水ゲート制御システムのシステム構成図であり、図2は本発明の実施例1に係る取水ゲート制御システムの作動手順を示すシーケンス図である。なお、図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図1に示すように、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aは、水力発電所の取水路2に設けられ,その開度を調整することで取水量を変更可能な取水ゲート4と、取水ゲート4の下流側に設けられ,危険水位A(取水ゲート全閉水位)に達した場合に制御部7に対してその検出信号を発信する危険水位検出手段5と、取水ゲート4の下流側に設けられ,取水ゲート閉動水位B又は取水ゲート開動水位Cを検出した場合に制御部7に対してその検出信号を発信する制御水位検出手段6と、危険水位検出手段5からの検出信号を受けて駆動機構3に対して取水ゲート4を全閉させる第1の駆動信号を発信するとともに,制御水位検出手段6からの検出信号を受けて駆動機構3に対して取水ゲート4を所望量だけ開動作又は閉動作させる第2の駆動信号を発信する制御部7と、制御部7から発信される第1,第2の駆動信号を受けて取水ゲート4を実際に開動作又は閉動作させる駆動機構3とにより構成されている。
なお、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aでは、制御部7から第2の制御信号が発信された場合の取水ゲート4の開動量又は閉動量を所望量としているが、その量は、例えば、鉛直方向に0.5cmや1cmのようにごく少量である。
【0031】
次に、図1に示すような取水ゲート制御システム1Aにより、取水ゲート4からの取水量が制御される手順について図2を参照しながら説明する。
なお、図1に示すような取水ゲート制御システム1Aにより取水量の自動制御を行う場合は、スタート時点の取水ゲート4の下流側の水位を、例えば、操作部9により駆動機構3を手動操作するなどして所望範囲内、すなわち、取水ゲート開動水位Cよりも高く,取水ゲート閉動水位Bよりも低い水位、に調整しておくとよい。
図2に示すように、取水ゲート4の下流側の水位が所望範囲内に調整されて、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aにおいて自動制御が選択されると、危険水位検出手段5による危険水位Aの監視と、制御水位検出手段6による適性水位の監視が同時に行われる。
具体的には、危険水位検出手段5では、取水ゲート4の下流側の水位が危険水位A(取水ゲート全閉水位)に達しているか否かの監視が行われ(ステップS01)、このステップS01において、取水ゲート4の下流側の水位が危険水位A(取水ゲート全閉水位)に達した状態が検出されると、制御部7に対してその検出信号が発信される(ステップS02)。他方、先のステップS01において危険水位A(取水ゲート全閉水位)に達した状態が検出されなければ、スタートに戻って取水ゲート4の自動制御を継続する。
【0032】
また、制御水位検出手段6では、取水ゲート4の下流側の水位が制御水位に達しているか否かの監視が行われる。
具体的には、制御水位検出手段6において取水ゲート4の下流側の水位が取水ゲート閉動水位(制御水位)に達した又は超えた状態が検出された場合、すなわち、取水ゲート4の下流側の水位が所望範囲の上限値Bに達した又は超えた状態が検出されると(ステップS03)、制御部7に対してその検出信号が発信される(ステップS04)。
また、制御水位検出手段6において取水ゲート4の下流側の水位が取水ゲート開動水位(制御水位)に達した又は下回った状態が検出された場合、すなわち、取水ゲート4の下流側の水位が所望範囲の下限値Cに達した又は下回った状態が検出されると(ステップS05)、制御部7に対してその検出信号が発信される(ステップS06)。
なお、先のステップS03,ステップS05において取水ゲート4の下流側の水位が制御水位に達した状態が検出されない場合は、スタートに戻って取水ゲート4の自動制御を継続する。
【0033】
次に、制御部7において、危険水位検出手段5,制御水位検出手段6からの検出信号が受信されると、まず、その検出信号が危険水位を検出したものであるか,制御水位を検出したものであるかが判定され(ステップS07)、その検出信号が危険水位の検出に基づくものである場合は、取水ゲート4を全閉するための第1の駆動信号が駆動機構3に対して発信される(ステップS08)。
また、先のステップS07においてその検出信号が制御水位の検出に基づくものである場合には、取水ゲート4を所望量だけ閉動作又は開動作させる第2の駆動信号が駆動機構3に対して発信される。この点についてより詳細に説明すると、例えば、ステップS07においてその検出信号が制御水位の検出に基づくものであると判定された場合は、続いて、その検出信号が取水ゲート閉動水位の検出信号であるか否かが判定されて(ステップS09)、その検出信号が取水ゲート閉動水位の検出に基づくと判定された場合は,取水ゲート4を所望量だけ閉動作させる第2の駆動信号が駆動機構3に対して発信され(ステップS10)、そうでない場合、すなわち、ステップS09においてその検出信号が取水ゲート開動水位の検出に基づくと判定された場合は,取水ゲート4を所望量だけ開動作させる第2の駆動信号が駆動機構3に対して発信される(ステップS11)。
【0034】
そして、駆動機構3において第1の駆動信号が受信されると、取水ゲート4が連続して閉動作されて、取水ゲート4が全閉された時点で、取水ゲート4の自動制御は終了する。この点をより詳細に説明すると、例えば、駆動機構3において第1の駆動信号が受信されると、取水ゲート4の閉動作が開始され(ステップS12)、取水ゲート4が全閉状態になるとリミットスイッチ10により駆動機構3の閉動作が停止されて(ステップS13)、取水ゲート4の自動制御が終了する。
他方、駆動機構3において取水ゲート4を所望量だけ閉動作又は開動作する第2の駆動信号が受信されると、駆動機構3により取水ゲート4が所望量だけ閉動作又は開動作された後(ステップS14又はステップS15)、スタートに戻って取水ゲート4の自動制御が継続される。
【0035】
ここで、ステップS14,ステップS15において、取水ゲート4を所望量だけ閉動作又は開動作させる方法について説明する。
本実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aにおいては、第2の駆動信号が発信される際に1秒間という時間に定めて発信している。この場合の取水ゲート4の開動量又は閉動量は0.5cmという一定値(略一定の概念を含む)に対応する。もちろん、この第2の駆動信号の発信時間を2秒間に設定して、取水ゲート4の開動量又は閉動量を1.0cmにしてもよい。
このように取水ゲートを所望量だけ閉動作又は開動作させる方法として、第2の駆動信号の発信時間を定めておき、その第2の駆動信号を受信している時間中、駆動機構3を作動させ、その発信時間が終了、すなわちタイムアップとなった際にゲート閉動作や開動作が停止する方法をとることによって、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの制御機構をシンプルにできるというメリットがある。
この他にも、第2の駆動信号に駆動機構3を所望時間だけ閉動作又は開動作させる情報を含めて、駆動機構3が受信することでその所望時間作動させて、取水ゲート4の閉動量又は開動量を所望量とすることも考えられる。
【0036】
このような、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aによれば、取水ゲート4の下流側の水位が所望範囲内で推移する間は、取水ゲート4の開度がそのまま維持される一方で、取水ゲート4の下流側の水位が所望範囲を超えた場合、すなわち、取水ゲート4の下流側において取水ゲート閉動水位B又は取水ゲート開動水位Cが検出された際には、機械的に取水ゲートが所望量だけ閉動作(ステップS14)又は開動作(ステップS15)される。そして、取水ゲート4の下流側の水位が所望範囲内になるまで、取水ゲート4の閉動作(ステップS14)又は開動作(ステップS15)が繰り返されることで、最終的に取水ゲート4の下流側の水位を所望範囲内に維持することができる。
また、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aは、危険水位検出手段5を備えることで、第2の駆動信号に基づく取水ゲート4の開度の調整が行われている最中であっても、取水ゲート4の下流側において危険水位Aが検出されると、第2の駆動信号に基づく取水ゲート4の開度の調整を待つことなく、第1の駆動信号が発信されて優先的に取水ゲート4を速やかに全閉することができる。
よって、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aによれば、取水ゲート4からの取水量を適切な範囲内に維持しながら、取水ゲート4の下流側の水位が危険水位に達した際には速やかに取水ゲート4を全閉できるので、取水ゲート4の下流側に設置される水力発電設備の安全性も確実に確保することができる。
【0037】
上述のような実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの場合、取水ゲート4から取り込まれる水の水位を所望範囲内に保つために、複雑な演算処理を行う必要が一切ないので、そのための回路や、取水ゲート4の開度を正確に調整するための大掛かりな設備等を備える必要が全くない。
このことを別の言葉で言い換えると、図7に示すような従来例に係る取水ゲート制御システム14に、制御水位検出手段6と、制御部15の機能の一部を追加するだけで、取水ゲート4からの取水量を自動制御できる取水ゲート制御システム1Aを提供することができるのである。
つまり、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aは、取水ゲート4からの取水量を自動制御する機構が極めてシンプルであるため、設置のためのコストも極めて廉価である。よって、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aによれば、コストパフォーマンスの高い取水ゲート制御システムを提供することができる。
なお、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aでは、上述のステップS14,ステップS14において、一定時間だけ駆動機構3を作動させて、取水ゲート4を一定の所望量だけ閉動作又は開動作できるよう構成されているが、取水ゲート4を所望量だけ閉動作又は開動作させる手段は、必ずしも上述のような手段に限定される必要はない。例えば、取水ゲート4の閉動量又は開動量を検知するセンサーを設けるなどして、取水ゲート4が所望量だけ閉動作又は開動作した際に、自動でその動作を停止させる構成を備えることで、取水ゲート4を所望量だけ閉動作又は開動作させてもよい。
【0038】
先の図2に示すような手順に従って取水ゲート4を制御すると、危険水位検出手段5において危険水位A(取水ゲート全閉水位)が検出された際に直ちに取水ゲート4が全閉されてしまう。
しかしながら、ごく短時間の取水ゲート4の下流側における水位が危険水位Aになったからといって、直ちにそのさらに下流側にある水力発電設備に不具合が生じるようなことはなく、危険水位Aの状態が継続すると、水力発電設備に不具合が生じる危険性が高まるというのが実状である。
従って、実際には、危険水位検出手段5において危険水位Aが検出された際に、直ちに取水ゲート4を全閉する必要性は低いものの、危険水位Aが継続する場合にはやはり取水ゲート4を全閉する必要があるといえる。
【0039】
ここで、図3,4を参照しながら、実施例1に係る取水ゲート制御システムの変形例について説明する。
図3は実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システムのシステム構成図であり、図4はその作動手順を示すシーケンス図である。なお、図1,2,7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
上述のような事情に鑑み、実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1Bでは、図3に示すように、実施例1に係る取水ゲート制御システムにおける危険水位Aを、取水ゲート即全閉水位Aと、取水ゲート全閉水位Aの2段階に分けて設定し、制御水位の監視に加えて、危険水位である取水ゲート即全閉水位Aと取水ゲート全閉水位Aの監視を同時並行で行うよう構成したものである。
より具体的には、実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1Bでは、危険水位検出手段5において取水ゲート即全閉水位Aが検出された際には、制御部7から駆動機構3に対して第1の駆動信号が即時発信される一方で、危険水位検出手段5において取水ゲート全閉水位Aが検出された際には、制御部7においてタイマーを設定して、所望時間継続して取水ゲート全閉水位Aが検出された場合にのみ制御部7から駆動機構3に対して第1の駆動信号を発信して取水ゲート4を全閉するよう構成している。
【0040】
上記変更点について図4を参照しながら詳細に説明する。なお、ここでは先の図2に示す実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aのシーケンス図に対する変更点についてのみ説明する。
図4に示すように、実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1Bでは、取水ゲート4の自動制御が選択された場合に、危険水位検出手段5において取水ゲート即全閉水位Aが検出されると(ステップS20)、その検出信号が制御部7に発信される(ステップS02)。
また、危険水位検出手段5において取水ゲート全閉水位Aが検出されると(ステップS01)、制御部7においてタイマーが設定され、取水ゲート全閉水位Aに達した状態又は超えた状態が所望時間(例えば、1分間や3分間など)継続した場合にのみ、制御部7に対してその検出信号が発信される(ステップS02)。
なお、先のステップS20,ステップS01において、取水ゲート即全閉水位A,取水ゲート全閉水位Aが検出されない場合は、スタートに戻って取水ゲート4の自動制御が継続される。
【0041】
上述のような実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1Bによれば、実施例1の取水ゲート制御システム1Aにおける危険水位Aを、取水ゲート即全閉水位Aと、取水ゲート全閉水位Aの2段階に分けて設定することで、取水ゲート4を全閉すべきか否かをより慎重に判断することができる。
この場合、取水ゲート4の下流側における水位が,危険水位に達してはいるものの,その持続性はなく危険度が低い場合に、不必要に取水ゲート4が全閉される頻度を少なくできる。この結果、水力発電設備への水の供給が停止する頻度も少なくなるので、水力発電設備における発電効率を向上することができる。
【0042】
また、図2に示すような実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aでは、取水ゲート4の下流側の水位が,制御水位(取水ゲート閉動水位又は取水ゲート開動水位)に達してはいるものの,その持続性はなく直ちに取水ゲート4を制御する必要がない場合でも、取水ゲート4の閉動作又は開動作が実行されてしまう。
この場合、取水ゲート4の下流側の水位が不必要に上下動するハンチングが起こり、水力発電時の発電効率が低下して好ましくない。このような事情に鑑み、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aに以下に示すような改良を加えても良い。
すなわち、図4に示すように、ステップS03,ステップS05において取水ゲート閉動水位B(所望範囲水位の上限値)又は取水ゲート開動水位C(所望範囲水位の下限値)に達した状態が検出された際に、制御部7においタイマーを設定し、その状態が所望時間(例えば、1分間や3分間など)継続した場合にのみ(ステップS031,ステップS051)、制御部7に対して検出信号を発信する(ステップS04,ステップS06)よう構成してもよい。
この場合、取水ゲート4の下流側の水位が、ごく短時間の間取水ゲート4を制御する必要のない上昇又は下降を生じた際に、不必要に取水ゲート4が閉動又は開動される頻度を少なくすることができる。この場合、取水路2から取り込まれる水の水位がハンチングするのを抑制することができる。よって、水力発電設備における発電効率を向上することができる。
【0043】
なお、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aや,実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1Bにおいては、危険水位検出手段5や制御水位検出手段6として、フロートスイッチを用いてもよい。
この場合、図1,3に示すように、防波管8内に危険水位検出手段5や制御水位検出手段6であるフロートスイッチを収容することで、取水路2内に生じる波等の影響を軽減しながら取水ゲート4の下流側の水位を監視することができる。
また、フロートスイッチは小型でコンパクトであるため、取水路2内における危険水位検出手段5や制御水位検出手段6を設置するために要するスペースを小さくできる。
この結果、特に小規模水力発電用の狭い取水路2への実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aや、実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1Bの設置を容易にすることができる。
この場合、小規模水力発電用の狭い取水路2からも、使用が許可された水量を余すことなく取得できるので、発電設備による発電効率を向上できる。
なお、図1,3では、危険水位検出手段5と制御水位検出手段6を別々に設ける場合を例に挙げて説明しているが、危険水位検出手段5と制御水位検出手段6を兼ねて1つの水位検出手段としてもよい。
特に、危険水位検出手段5や制御水位検出手段6としてフロートスイッチを用いる場合は、危険水位検出手段5と制御水位検出手段6を直列に配設して用いても良い。この場合、危険水位検出手段5と制御水位検出手段6の設置のために必要なスペースを一層小さくすることができる。
【実施例2】
【0044】
本発明の実施例2に係る取水量制御ユニットについて図5,6を参照しながら説明する。図5は本発明の実施例2に係る取水量制御ユニットを備えた取水ゲート制御システムのシステム構成図である。なお、図1乃至4,7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
先にも述べたが、図7に示すような従来例に係る取水ゲート制御システム14と、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aとの相違点は、制御水位検出手段6と、この制御水位検出手段6からの検出信号に基づいて駆動機構3に対して発信される第2の駆動信号の発信に関する制御部7の制御機能の一部のみである。
このことは、図7に示すような従来例に係る取水ゲート制御システム14に、制御水位検出手段6と,制御部7の機能の一部を追加するだけで、取水ゲート4からの取水量を自動制御できない取水ゲート制御システム14を、取水量を自動制御できる取水ゲート制御システム1Aに容易に変えることができることを意味している。
そして、従来例に係る取水量を自動制御できない取水ゲート制御システムを、その設置後に、その設備をそのまま用いながら軽微な工事のみで、取水量を自動制御できる取水ゲート制御システムに変えるために必要な構成要素を抽出して,独立した発明として捉えたものが実施例2に係る取水量制御ユニット100である。
【0045】
このような実施例2に係る取水量制御ユニット100は、図5に示すように、取水ゲート4を自動制御できない既存の取水ゲート制御システム14に付加されて、取水ゲート制御システム14を取水路からの取水量を自動制御できるようにするための後付ユニットであって、その構成は大まかに、取水ゲート4の下流側に設置され,取水ゲート閉動水位B及び取水ゲート開動水位Cを検出する制御水位検出手段6と、既存の取水ゲート制御システム14の制御部15(第1の制御部)に接続されて,制御水位検出手段6からの検出信号を受けて第2の駆動信号を発する第2の制御部12と、により構成されるものである。
なお、取水ゲート4を自動制御できない取水ゲート制御システム14とは、例えば、水力発電所の取水路2に設けられ駆動機構3により開閉動作がなされる取水ゲート4と,駆動信号に基づいて取水ゲート4を開閉動作させる駆動機構3と,水ゲート4の下流側に設けられ取水ゲート全閉水位(危険水位A)を検出する危険水位検出手段5と、この危険水位検出手段5から発信される検出信号に基づいて取水ゲート4を全閉させる第1の駆動信号を発信する制御部15(第1の制御部)からなるものである。もちろん、取水ゲート制御システム14における危険水位検出手段5は、先の図3に示されるような、危険水位が、取水ゲート即全閉水位Aと、取水ゲート全閉水位Aの2段階に分けられて設定されるものでもよい。
また、取水ゲート4を自動制御できない既存の取水ゲート制御システム14に、実施例2に係る取水量制御ユニット100を付加してなるものが、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cである。
【0046】
上述のような実施例2に係る取水量制御ユニット100,取水ゲート制御システム1Cにおける制御水位検出手段6は、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aにおける制御水位検出手段6と同じであるため、その作用,効果も同じである。
また、実施例2に係る取水量制御ユニット100,取水ゲート制御システム1Cの第2の制御部12は、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの制御部7における,制御水位検出手段6からの検出信号を受けて第2の駆動信号を発信する機能に相当する機能を有するものである。つまり、実施例2に係る取水量制御ユニット100の第2の制御部12と,既存の取水ゲート制御システム14の制御部15(第1の制御部)とを組み合わせると、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの制御部7になる。
【0047】
ここで、図6を参照しながら、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cにより取水ゲート4からの取水量を自動制御する手順について説明する。図6は本発明の実施例2に係る取水量制御ユニットを備えた取水ゲート制御システムの作動の流れを示すシーケンス図である。なお、図1乃至5,7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
また、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cの機能は、実質的に実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aと同じであるため、ここでは、図1に示されるシーケンス図と相違する点についてのみ説明する。
図6に示すように、ステップS02において危険水位検出手段5から発信された検出信号は、制御部15で受信され、第2の制御部12に伝送される(ステップS30)。また、制御水位検出手段6から発信された検出信号は第2の制御部12に直接送信される。
これは、既存の取水ゲート制御システム14が、制御水位検出手段6から送信される検出信号の受信設備をそもそも備えておらず、当然に、危険水位検出手段5からの検出信号と,制御水位検出手段6からの検出信号を判定する手段も備えていないためである。
このため、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cでは、第1の駆動信号,第2の駆動信号の発信に関わる判定と第2の駆動信号の発信を,後付けされる第2の制御部12により担う一方、既存の制御部15を有効に活用するという観点から、第1の駆動信号の直接的な発信は既存の取水ゲート制御システム14の制御部15により行うよう構成している。
【0048】
再び図6の説明に戻って、第2の制御部12において、制御部15から伝送された検出信号,制御水位検出手段6からの検出信号が受信されると、まず、その検出信号が危険水位を検出したものであるか,制動水位を検出したものであるかが判定され(ステップS07)、その検出信号が危険水位の検出に基づくものである場合、制御部15から駆動機構3に対して取水ゲート4を全閉するための第1の駆動信号が発信される(ステップS08)。
また、先のステップS07において、その検出信号が制御水位の検出に基づくものであると判定された場合は、続いて、その検出信号が取水ゲート閉動水位の検出信号であるか否かが判定されて(ステップS09)、その検出信号が取水ゲート閉動水位の検出に基づくと判定された場合は、第2の制御部12から駆動機構3に対して取水ゲート4を所望量だけ閉動作させる第2の駆動信号が発信される(ステップS10)。
また、ステップS09において、その検出信号が取水ゲート開動水位の検出に基づくと判定された場合も、第2の制御部12からから駆動機構3に対して取水ゲート4を所望量だけ開動作させる第2の駆動信号が発信される(ステップS11)。
上述のように、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Cでは、危険水位検出手段5,制御水位検出手段6からの検出信号の判定と第2の駆動信号の発信は第2の制御部12において行われる一方で、第1の駆動信号の発信は既存の制御部15により行われる。
なお、取水ゲート4を所望量だけ閉動作又は開動作させる方法については実施例1と同様の方法を採用することが可能である。
【0049】
よって、実施例2に係る取水量制御ユニット100を、取水ゲート4から取り込まれる取水量を自動制御できない既存の取水ゲート制御システム14に取り付けるだけで、先の実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aと同等の機能を有する取水ゲート制御システムを提供することができる。
この場合、既存の取水ゲート制御システム14への実施例2に係る取水量制御ユニット100の取付けは極めて容易であるため、既存の取水ゲート制御システム14をそのまま利用しながら、先の実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aと同等の機能を有する取水ゲート制御システムに変える際にかかる費用を極めて安価にすることができる。
つまり、実施例2に係る取水量制御ユニット100によれば、取水ゲート4の下流側の水位が危険水位A(取水ゲート全閉水位)に達した場合に、取水ゲート4を自動で全閉できる既存の取水ゲート制御システム14に、取水ゲート4の下流側の水位を所望範囲内に維持する機能を後から追加することができる。
【0050】
また、既存の取水ゲート制御システム14と,実施例2にかかる取水量制御ユニット100からなる、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cは、危険水位検出手段5からの検出信号が第2の制御部12に伝送される点が、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aと異なっているものの、先にも述べたように、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cの制御部15(第1の制御部)と第2の制御部12を併せたものは、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの制御部7と同等の機能を有することから、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cによる作用,効果は、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aによる作用,効果と実質的に同じである。
加えて、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cによれば、既存の取水ゲート制御システム14をそのまま活用して僅かな設備投資のみで、取水ゲート4の取水量を自動制御可能な取水ゲート制御システムを提供できるというメリットを有する。
また、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cによれば、既存の取水量を自動制御できない取水ゲート制御システム14が、取水量の自動制御が可能な取水ゲート制御システムとして転用できるので、小規模の取水路を僅かな設備投資で水力発電に利用可能にするとともに、その際の発電効率も高くすることができる。この結果、水力発電を一層普及させることができる。
【0051】
なお、実施例2に係る取水量制御ユニット100,取水ゲート制御システム1Cにおける制御水位検出手段6としてフロートスイッチを用いてもよい。この場合、制御水位検出手段6の設置に必要なスペースを大幅に小さくできるので、実施例2に係る取水量制御ユニット100,取水ゲート制御システム1Cを一層コンパクトにすることができる。
また、特に図示しないが、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cの変形例として、既存の取水ゲート制御システム14に係る制御部15を完全に取り去って、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの制御部7を取付けるとともに、危険水位検出手段5,制御水位検出手段6からの検出信号がこの制御部7に送信されるよう構成してもよい。
この場合、実施例1に係る取水ゲート制御システム1Aの作用,効果と、実施例2に係る取水ゲート制御システム1Cの作用,効果を組み合せた作用,効果が発揮される。
【0052】
なお、実施例2に係る取水量制御ユニット100,取水ゲート制御システム1Cにおける制御水位検出手段6において,取水ゲート閉動水位B又は取水ゲート開動水位Cが検出された場合の、第2の制御部12から第2の駆動信号を発信する際の手順を、先の実施例1の変形例に係る取水ゲート制御システム1B(先の図4を参照)の場合と同様に構成してもよい。より具体的には、制御水位検出手段6において取水ゲート閉動水位B又は取水ゲート開動水位Cが検出された際に,第2の制御部12においてタイマーを設定し、取水ゲート閉動水位B又は取水ゲート開動水位Cが所望時間継続した場合にのみ制御部15から駆動機構3に対して第2の駆動信号が発信されるよう構成してもよい。
この場合、第2の駆動信号を発信する際の判断をより慎重に行うことができるので、不必要に取水ゲート4が開動作又は閉動作される頻度を少なくすることができる。この結果、取水ゲート4の下流において水位のハンチングが起こるのを抑制でき、水力発電所の発電効率を向上できる。
【0053】
また、実施例2に係る取水量制御ユニット100を既存の取水ゲート制御システム14に取り付ける際の独自の課題として、設置対象である取水ゲート制御システム14の取水ゲート4の規模に応じて、第2の駆動信号が発信された際の,取水ゲート4の開動量又は閉動量である所望量が異なるという点がある。
この場合、設置対象である取水ゲート制御システム14毎に制御部15から発信される第2の駆動信号の発信時間を変えて,取水ゲート4の開動量又は閉動量が適切になるよう設定してやる必要があるものの、この作業は煩雑な上、取水量制御ユニット100をその都度オーダーメイドすることになり、取水量制御ユニット100の生産効率を向上し難い。
【0054】
このような事情に鑑み、実施例2に係る取水量制御ユニット100の第2の制御部12に予め、前記第2の駆動信号の発信時間データを複数種類格納する記憶部13を,一体に又は別体に備えておき、設置対象である取水ゲート制御システム14の規模に応じて自由に第2の駆動信号の発信時間を変更できるよう構成し、もって、取水ゲート4の開動量又は閉動量を自在に調整可能としてもよい。
上述のような記憶部13を備えることで、実施例2に係る取水量制御ユニット100は、第2の駆動信号が発信された際の取水ゲート4の開動量又は閉動量の変更が容易なる。この結果、実施例2に係る取水量制御ユニット100の汎用性を高めることができる。
つまり、取付対象である取水ゲート制御システム14の規模が異なる場合でも、1種類の実施例2に係る取水量制御ユニット100のみで対応することができる。
なお、記憶部13に代えて設定部を設けてもよい。この設定部は、第2の駆動信号の発信時間を所望に設定可能なものである。予め記憶することなく取水ゲート制御システム14の規模に応じて設定するとよい。これによって、記憶部13と同様の作用と効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように本発明は、水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システム、および、水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートにおける取水量を自動で制御するための取水量制御ユニットに関するものであり、水力発電に関する分野のみならず、農業、土木に関する分野においても利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1A〜1C…取水ゲート制御システム 2…取水路 3…駆動機構 4…取水ゲート 5…危険水位検出手段(フロートスイッチ) 6…制御水位検出手段(フロートスイッチ) 7…制御部 8…防波管 9…操作部 10…リミットスイッチ 11…第1の制御部 12…第2の制御部 13…記憶部 14…取水ゲート制御システム 15…制御部 100…取水量制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システムであって、
駆動信号に基づいて前記取水ゲートを開閉動作させる前記駆動機構と、
前記取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート全閉水位を検出する危険水位検出手段と、
前記取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート開動水位,及び,取水ゲート閉動水位を検出する制御水位検出手段と、
前記制御水位検出手段及び前記危険水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,前記駆動機構を作動させる駆動信号を発信する制御部とを有し、
この制御部は、前記危険水位検出手段において前記取水ゲート全閉水位が検出された場合に,前記取水ゲートを全閉させる第1の駆動信号を発信するとともに、前記制御水位検出手段において,取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合に,前記取水ゲートを所望量だけ開動作又は閉動作させる第2の駆動信号を発信し、
前記第1の駆動信号は、前記第2の駆動信号よりも優先されることを特徴とする取水ゲート制御システム。
【請求項2】
前記危険水位検出手段によって検出される取水ゲート全閉水位は、第1の取水ゲート全閉水位と,この第1の取水ゲート全閉水位よりも低い第2の取水ゲート全閉水位であって、
前記制御部は、前記第1の取水全閉水位を検出した際にはタイマーを設定することなく前記第1の駆動信号を即時発信する一方、前記第2の取水ゲート全閉水位を検出した際にはタイマーを設定して,所望時間継続して前記第2の取水ゲート全閉水位が検出された場合にのみ前記第1の駆動信号を発信することを特徴とする請求項1記載の取水ゲート制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、タイマーを設定して,前記制御水位検出手段によって前記取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位を検出した際には,所望時間継続して前記取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合にのみ前記第2の駆動信号を発信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取水ゲート制御システム。
【請求項4】
水力発電所の取水路に設けられ,駆動機構により開閉動作がなされる取水ゲートと、駆動信号に基づいて前記取水ゲートを開閉動作させる前記駆動機構と、前記取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート全閉水位を検出する危険水位検出手段と、この危険水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,前記取水ゲートを全閉させる前記第1の駆動信号を発信する第1の制御部とを備えた取水ゲート制御システムに設けられて,前記取水路からの取水量を自動制御するための取水量制御ユニットであって、
この取水量制御ユニットは、前記取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート開動水位及び取水ゲート閉動水位を検出する制御水位検出手段と、
前記第1の制御部に接続され,前記制御水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,前記駆動機構を作動させる第2の駆動信号を発信する第2の制御部とを有し、
前記第2の駆動信号は、前記制御水位検出手段において,取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合に発信されて,前記取水ゲートを所望量だけ開動作又は閉動作させるものであり、
前記第1の駆動信号は、前記第2の駆動信号よりも優先されることを特徴とする取水量制御ユニット。
【請求項5】
前記第2の制御部は、タイマーを設定して,前記制御水位検出手段によって前記取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位を検出した際には,所望時間継続して前記取水ゲート開動水位又は取水ゲート閉動水位が検出された場合にのみ前記第2の駆動信号を発信することを特徴とする請求項4記載の取水量制御ユニット。
【請求項6】
前記第2の制御部は、前記第2の駆動信号の発信時間データを複数種類格納する記憶部を,一体に又は別体に備えることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の取水量制御ユニット。
【請求項7】
水力発電所の取水路に設けられる取水ゲートを制御する取水ゲート制御システムであって、
水力発電所の取水路に設けられ,駆動機構により開閉動作がなされる取水ゲートと、
駆動信号に基づいて前記取水ゲートを開閉動作させる前記駆動機構と、
前記取水ゲートの下流側に設けられ,取水ゲート全閉水位を検出する危険水位検出手段と、
この危険水位検出手段から発信される検出信号に基づいて,前記取水ゲートを全閉させる前記第1の駆動信号を発信する第1の制御部と、
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の取水量制御ユニットとを有することを特徴とする取水ゲート制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96190(P2013−96190A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242431(P2011−242431)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】