説明

取着体の取付部構造、取着体、及び取着体の取着装置

【課題】
ビスを強制螺入することで取着体を取付可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対してビスを用いることなく当該取着体を取付可能にする。
【解決手段】
ビスを強制螺入可能な細幅状の貫通溝5を備えた支持具Sの取着板部(被取着体)2の表面側から当該貫通溝5に挿入することで取付可能な取付部を備えた管保持具(取着体)Hの取付部構造であって、前記取付部は、前記取着板部2の貫通溝5の周縁の表面に当接する第1当接面17と、当該第1当接面17から突出して、前記貫通溝5の幅W0 よりも小さな肉厚Tを有する係止爪(係止部)18とから成り、前記係止爪18は、前記貫通溝5内に入り込む長さを有して突出する突出部21と、当該突出部21から前記第1当接面17から離れる方向に傾斜して形成され、前記第1当接面17に対して更に離れる方向に弾性変形可能な傾斜部22とから成り、前記係止爪18の少なくとも突出部21の貫通溝5の長さ方向に沿った長さである幅Wは、当該貫通溝5の幅W0 よりも広く形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスを強制螺入することで取着体を取付可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対してビスを用いることなく当該取着体を取付可能な取付部構造、取着体、及び取着体の取着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビスを強制螺入させる細幅状の貫通溝を備え、底板部を貫通したビスを当該貫通溝に螺入させることで、壁内において配線ボックスを支持する支持具がある(特許文献1)。しかし、当該支持具を用いて配管材を支持しようとすると、当該配管材を公知のサドルに支持して、前記支持具の貫通溝に螺入されるビスにより前記サドルを前記支持具に固定する必要があって、ビスなしでは前記支持具に配管材を固定できなかった。
【0003】
一方、特許文献2には、特許文献1に開示の支持具の細幅状の貫通溝に対して広幅の溝を備えた支持具が開示されている。特許文献2に開示の支持具によれば、溝が広幅であるので、配管材を支持するサドルを固定するために、当該サドルに広幅の溝に対応する回転軸部を一体に形成して、当該回転軸部を広幅の溝に挿入した状態でサドルを回転させることにより、回転方向の適正位置において広幅の当該溝に対して前記回転軸部を係止させることで、広幅の当該溝にビスを使用することなくサドルを固定可能にしている。しかし、特許文献2の支持具に配線ボックスを固定するには、支持具の背面側に配置される別体の取付具を必要とするために、配線ボックスの取付けが面倒であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−219887号公報
【特許文献2】特開2007−239325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビスを強制螺入することで取着体を取付可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対してビスを用いることなく当該取着体を取付可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、ビスを強制螺入可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体の表面側から当該貫通溝に挿入することで取付可能な取付部を備えた取着体の取付部構造であって、前記取付部は、前記被取着体の貫通溝周縁の表面に当接する当接面と、当該当接面から突出して、前記貫通溝の幅よりも小さな肉厚を有する係止部とから成り、前記係止部は、前記貫通溝内に入り込む長さを有して突出する突出部と、当該突出部から前記当接面から離れる方向に傾斜して形成され、前記当接面に対して更に離れる方向に弾性変形可能な傾斜部とから成り、前記係止部の少なくとも突出部の貫通溝の長さ方向に沿った長さである幅は、当該貫通溝の幅よりも広く形成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、被取着体の表側において、前記取着体の傾斜部及び突出部を被取着体の細幅状の貫通溝に挿入して、前記突出部を被取着体の貫通溝内に入り込ませると共に、前記貫通溝の裏面側の縁部に前記傾斜部を係止させると、当該傾斜部が前記当接面に対して更に離れる方向に弾性変形され、当該弾性変形により発生する弾性復元力により、前記取着体は被取着体の表面側に引き寄せられて、前記取付部の当接面は被取着体の表面に密着させられて、被取着体に対して取着体が取付けられる。このように、取着体の取付部の構造の改良のみによって、ビスを強制螺入することで取着体を取付可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対して、ビスを用いることなく当該取着体を取付けることが可能となるので、細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対して取着体をワンタッチで取付けられて、作業能率が高まる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構造の取付部を備えた取着体であり、請求項1の発明を「取着体」の観点から把握したものであって、請求項1の発明の作用効果と実質的に同一である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、配線・配管材を保持可能な保持部を備えていることを特徴としているので、細幅状の貫通溝を備えた被取着体に取付けられる取着体を介して前記被取着体に配管材を保持できる。
【0010】
請求項4の発明は、柱に固定される固定部と、当該固定部から延設されて、取着体の係止部が係止されたり、或いは取付体のビス固定孔に挿通されたビスが強制螺入される細幅状の貫通溝を備えた取着部とから成る支持具と;請求項2に記載の取着体とから成ることを特徴とする取着体の取着装置である。
【0011】
請求項4の発明によれば、柱に固定される支持具の取着部に形成された細幅状の貫通溝に係止部を係止させることにより、前記支持具に取着体をワンタッチで取付けることができると共に、取付体のビス固定孔に挿通されたビスを細幅状の貫通溝に強制螺入させることにより、前記支持具に当該取付体を取付けることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被取着体の表側において、前記取着体の傾斜部及び突出部を被取着体の細幅状の貫通溝に挿入して、前記突出部を被取着体の貫通溝に貫通させると共に、前記貫通溝の裏面側の縁部に前記傾斜部を係止させると、当該傾斜部が前記当接面に対して更に離れる方向に弾性変形され、当該弾性変形により発生する弾性復元力により、前記取着体は被取着体の表面側に引き寄せられて、前記取付部の当接面は被取着体の表面に密着させられて、被取着体に対して取着体が取付けられる。このように、取着体の取付部の構造の改良のみによって、ビスを強制螺入することで取着体を取付可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対して、ビスを用いることなく当該取着体を取付けることが可能となるので、細幅状の貫通溝を備えた被取着体に対して取着体をワンタッチで取付けられて、作業能率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】間柱51に固定された支持具Sと、当該支持具Sに取付けられる管保持具Hとを背面側から見た斜視図である。
【図2】支持具Sに取付けられた管保持具Hにより管Pが上下方向に保持された状態の斜視図である。
【図3】同様の状態の一部を破断した平面図である。
【図4】(a),(b)は、管保持具Hを異なる方向から見た斜視図である。
【図5】(a),(b)は、外径の異なる2種類の管P1 ,P2 を保持する状態を示す管保持具Hの平面図である。
【図6】(a),(b)は、支持具Sの表面側から、管保持具Hの係止爪18を支持具Sの細幅状の貫通溝5に挿入する途中の状態、及び前記係止爪18が貫通溝5に係止された状態の横断面図である。
【図7】(a),(b)は、貫通溝5が形成された平板状の被取着体31に対する管保持具Hの取付途中、及び取付後の横断面図である。
【図8】吊ボルト52に取付けられた管保持具Hにより管P1 を水平に保持している状態の斜視図である。
【図9】壁面53に取付けられた管保持具Hにより管P1 を垂直に保持している状態の斜視図である。
【図10】本発明を実施した配線ボックスBと、当該配線ボックスBが取付けられる支持具Sとの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図6を参照して、配線ボックスBを取付ける支持具Sが被取着体であって、管Pを保持する管保持具Hが前記支持具Sに取付けられる取着体である実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、間柱51に固定された支持具Sと、当該支持具Sに取付けられる管保持具Hとを背面側から見た斜視図であり、図2は、支持具Sに取付けられた管保持具Hにより管Pが上下方向に保持された状態の斜視図であり、図3は、同様の状態の一部を破断した平面図であり、図4(a),(b)は、管保持具Hを異なる方向から見た斜視図であり、図5(a),(b)は、外径の異なる2種類の管P1 ,P2 を保持する状態を示す管保持具Hの平面図であり、図6(a),(b)は、支持具Sの表面側から、管保持具Hの係止爪18を支持具Sの細幅状の貫通溝5に挿入する途中の状態、及び前記係止爪18が貫通溝5に係止された状態の横断面図である。
【0015】
支持具Sは、図1及び図2に示されるように、鋼鈑をプレスの打抜きと折曲げとにより成形されたものであって、型鋼から成る間柱51の背面板部51aに固定される方形状の固定板部1と、当該固定板部1に対して直角に折り曲げられて、配線ボックスB(図10参照)が取付けられる細長い板状をした取着板部2とから成る。固定板部1における取着板部2の幅方向に沿った長さは、当該取着板部2の幅寸法よりも大きくなっていて、当該固定板部1には、ビス61を挿通させるための複数本の貫通長溝3と、複数本の貫通孔4とが明けられており、貫通長溝3又は貫通孔4のいずれかに挿通された複数本のビス61を間柱51に螺入することにより、当該間柱51に固定板部1が固定されて、当該間柱51に取着板部2が水平で、かつ片持状となった状態で支持具Sが取付けられる。取着板部2には、幅方向の中央部にビス61の強制螺入を可能とすべく、当該ビス61の外径よりも僅かに狭い幅を有する細幅状の複数の貫通溝5が一列状となって形成され、隣接する貫通溝5の間には、一列状となった複数の貫通溝5により幅方向に沿って2分された各部分を連結するように連結部6(図3参照)が残存して設けられている。図1、図2及び図6に示されるように、取着板部2における貫通溝5の周縁部は、当該貫通溝5に対するビス61の螺入を容易にするために背面側に僅かに突出して表面側は凹状に形成されていると共に、取着板部2の幅方向の両端部は、補強と、取扱い時に人の手等が接触した場合の損傷を少なくすることを目的として、背面側に僅かに折り曲げられている。なお、取着板部2には、一列状に配置された複数の貫通溝5と直交する方向(取着板部2の幅方向)に沿って別の一対の貫通溝7が前記貫通溝5を挟んで形成されている。
【0016】
「背景技術」の項目で述べたように、例えば壁内に配設された配線ボックスBの底板部41(図10参照)に形成されたビス固定孔(図示せず)に挿通されたビスを、前記支持具Sの取着板部2に形成された細幅状の貫通溝5に強制螺入することにより、当該取着板部2に取付体としての配線ボックスBを取付けることができる。支持具Sの取着板部2には、配線ボックスBに限られず、管材の途中を部分支持する取付体としてのサドル等もビスの強制螺入により取付けることができる。
【0017】
次に、図3〜図6、特に図4及び図5を主体にして、前記支持具Sにビスを使用しないで取付けられる管保持具Hについて説明する。管保持具Hは、前記支持具Sの取着板部2、吊ボルト52(図8参照)、或いは壁面53(図9参照)、間柱51等に直接に取付けられて、中心角が180°を超えるように周方向の一部が欠落された一部欠落リング状をした本体部11と、当該本体部11の周方向の一端部に一体に連結されていて、前記本体部11の周方向の欠落部を覆って完成リング状とするバンド部12とから成る。バンド部12は、管保持具Hの半径方向に沿った変形を容易するために周方向に沿って凹凸状に形成され、当該バンド部12の先端部の内外には、それぞれ周方向に沿って段差状となって第1及び第2の各係止爪13,14が配管方向に形成されている。本体部11におけるバンド部12が形成されていない側の周方向の端部の外周面には、バンド部12の内側の第1係止爪13と係止可能な第1係止溝15が周方向に沿って段差状となって配管方向に形成されていると共に、本体部11におけるバンド部12が形成されていない側の周方向の端部から周方向に所定長だけ入り込んだ部分の内周面には、バンド部12の外側の第2係止爪14と係止可能な第2係止溝16が周方向に沿って段差状となって配管方向に形成されている。図5(a)に示されるように、バンド部12の内側の第1係止爪13と本体部11の外側の第1係止溝15とを係止させてリング状にすると、大径の管P1 が保持可能となると共に、同図(b)に示されるように、バンド部12の外側の第2係止爪14と本体部11の内側の第2係止溝16とを係止させてリング状にすると、小径の管P2 が保持可能となる。
【0018】
また、図4及び図6に示されるように、本体部11におけるバンド部12と対向する部分の外側面(外周面)は、広い平面状に形成されて、前記支持具Sの取着板部2の表面における貫通溝5の周縁部に当接する第1当接面17となっている。本体部11の内周面は、管Pを保持可能なように円弧面状に形成され、前記バンド部12の先端部を本体部11に対して係止させて、全体をリング状にすることにより、管Pを保持可能となる。従って、本体部11とバンド部12とで、管Pを保持可能な管保持部を構成している。なお、本実施例の管保持具Hは、管Pの径方向の移動を許容する構成であるが、管Pの外周面に係止して前記移動を阻止する係止部を内周面に形成することも可能である。
【0019】
管保持具Hの本体部11の第1当接面17には、前記支持具Sの貫通溝5に挿入・係止される係止爪18が突出して形成されている。即ち、係止爪18は、支持具Sの貫通溝5の幅W0 よりも小さな肉厚Tで形成されて、前記第1当接面17に対してほぼ垂直に形成されて、当該貫通溝5に挿入される長さを有する突出部21と、前記第1当接面17から離れる方向に向けて傾斜した状態で、前記突出部21に対して延設された傾斜部22とから成る。ここで、傾斜部22は、前記第1当接面17から離れる方向に沿って弾性変形可能である。係止爪18は、全体が同一幅Wとなっていて、当該幅Wは、支持具Sの貫通溝5の幅W0 よりも広くなっているので、管保持具Hの本体部11に形成された係止爪18を、支持具Sの貫通溝5に挿入させて、当該係止爪18の傾斜部22が、支持具Sの貫通溝5の背面側の縁部に係止された状態において、支持具Sに対して管保持具Hが廻らなくなる(支持具Sに対する管保持具Hの姿勢が定められる)。
【0020】
また、図3及び図4に示されるように、管保持具Hの本体部11には、吊ボルト52に対して嵌着されて当該吊ボルト52に管保持具Hを取付けるための吊ボルト用嵌着部23が、第1当接面17に対して鈍角をなす方向に設けられ、断面円弧状をした当該吊ボルト用嵌着部23の一端面は、前記第1当接面17を構成していて、支持具Sに管保持具Hを取付ける際に、当該支持具Sの取着板部2の表面2aにおける貫通溝5の周縁に当接する構成となっている。本体部11の外側面(外周面)における前記第1当接面17及び後述の第2当接面25とで挟まれる部分には、吊ボルト52を当接させる平面状の吊ボルト当接面24が形成され、当該吊ボルト当接面24には、吊ボルト52の一部を挿入するための断面円弧状をした浅い凹部が前記吊ボルト当接面24と本体部11の端面との交線に対して平行に形成されている。また、管保持具Hの本体部11の外側面(外周面)におけるバンド部12の基端部が一体に設けられている部分には、平面視において前記第1当接面17に対して鋭角をなす平面状の第2当接面25が形成されている。本体部11の吊ボルト用嵌着部23が設けられている側の端面には、管保持具Hをビス又は釘により壁面53に固定する際に、当該ビス又は釘を挿通可能な挿通孔26aを備えたブラケット26が前記第2当接面25に沿って起立して形成されており、前記吊ボルト用嵌着部23の他方の端面、及び前記ブラケット26の外側面は、第2当接面25と同一平面上に配置されて、当該第2当接面25そのものを構成している。
【0021】
そして、図6に示されるように、支持具Sの取着板部2の表面2aの側において、管保持具Hの係止爪18を構成する傾斜部22及び突出部21を、支持具Sの取着板部2に形成された貫通溝5内に挿入配置させ、前記傾斜部22の基端部を前記貫通溝5内に挿入配置させると共に、当該傾斜部22の先端部を取着板部2の背面側に突出させる。これにより、図6(b)で2点鎖線で示されるように、前記傾斜部22が貫通溝5の裏面側の縁部に、当該傾斜部22が自身の第1当接面17に対して更に離れる方向に弾性変形され、当該弾性変形により発生する弾性復元力により、前記管保持具Hは支持具Sの取着板部2の側に引き寄せられて、前記第1当接面17は支持具Sの取着板部2の表面2aに密着させられて、当該取着板部2に対して管保持具Hが取付けられる。ここで、管保持具Hの係止爪18の幅Wが、支持具Sの取着板部2に形成された貫通溝5の幅W0 よりも大きいので、支持具Sの取着板部2に管保持具Hが取付けられた状態では、当該支持具Sに対する管保持具Hの取付姿勢が一義的に定まることは、上記した通りである。
【0022】
このように、管保持具Hの本体部11の外側面(外周面)に形成された第1当接面17と、当該第1当接面17に対して垂直に形成された係止爪18との協働により、ビスを強制螺入することで配線ボックスBを取付可能な細幅状の貫通溝5を備えた支持具Sの取着板部2に対して、ビスを用いることなく管保持具Hを取付けることが可能となる。このため、本発明では、第1当接面17と係止爪18とが、管保持具Hの取付部27を構成している。
【0023】
上記実施例では、支持具Sの取着板部2の貫通溝5の部分は、貫通溝5を含めて、その周縁部が背面側に僅かに突出されて、表面側において凹部28が形成されている。このため、管保持具Hに形成された第1当接面17と係止爪18との協働により、当該管保持具Hを支持具Sの取着板部2の表面に取付ける場合において、前記凹部28は、支持具Sの取着板部2の板厚を実質的に厚くするように作用し、この結果、支持具Sに管保持具Hを取付けた状態において、係止爪18を構成する傾斜部22の第1当接面17から更に離れる方向に向けた弾性変形量を確保できて、支持具Sの取着板部2の肉厚が、係止に際して本来必要な肉厚よりも小さくても、支持具Sに対する管保持具Hを確実に取付けられる利点がある。なお、前記支持具Sに関して、当該支持具Sを柱に固定するビス61と、取着板部2の貫通溝5に強制螺入されるビスは共通でもよく、異なる外径のビスを用いてもよい。
【0024】
また、図7(a),(b)は、貫通溝5が形成された平板状の被取着体31に対する管保持具Hの取付途中、及び取付後の横断面図であり、上記実施例と同一部分には、同一符号を付してある。このように、全体が平板状の被取着体31に貫通溝5が形成されている場合には、貫通溝5の前側に凹部28を有する場合に比較して、係止爪18の構造が同一の場合には、被取着体31の肉厚を、前記支持具Sの取着板部2の肉厚よりも厚くする必要があり、被取着体31の肉厚が前記支持具Sの取着板部2の肉厚と同一の場合には、係止爪18の傾斜部22の弾性変形量を確保するために、当該傾斜部22の傾斜を大きくするとか、突出部21の突出長を短くする等して、係止爪18の形状自体を多少変化させる必要がある。なお、図7において31aは、被取着体31の表面を示す。
【0025】
次に、管保持具Hの本体部11に形成された吊ボルト用嵌着部23及びビス又は釘を挿通する挿通孔26aを備えたブラケット26を使用して、当該管保持具Hを吊ボルト52又は壁面53に取付ける場合について、参考的に説明する。図8に示されるように、吊ボルト52の外側に吊ボルト用嵌着部23を嵌着することにより、当該吊ボルト52に取付けられた管保持具Hによって、管P1 の水平部分を保持する。また、図9に示されるように、壁面53に第2当接面25を密着させ、ブラケット26の挿通孔26aに挿通されたビス61を壁面53に螺入させて、当該壁面53に管保持具Hを取付けることにより、任意の方向に配管された管P1 を保持可能となる。
【0026】
また、上記実施例は、管Pを部分的に保持する管保持具Hに対して本発明を実施した例であるが、本発明は、被取着体に対して取着される取着体であれば、いかなる取着体に対しても実施可能である。例えば、図10は、壁裏に設置される配線ボックスBに対して本発明を実施した例であって、底板部41の裏面側に、支持具Sの取着板部2の幅よりも僅かに広い幅を有する溝部42が両端に開口して形成されており、当該溝部42の底面(底板部41の裏面)42aは、支持具Sの取着板部2の表面2aに当接する当接面となっており、当該当接面42aに、所定間隔をおいて一対の係止爪18が形成されている。このため、配線ボックスBの底板部41の裏面に形成された溝部42に支持具Sの取着板部2を嵌め込むことにより、当該溝部42の底面である当接面42aに形成された一対の係止爪18を支持具Sの取着板部2の各貫通長溝3に挿入係止させることにより、当該溝部42の底面である当接面42aを前記支持具Sの取着板部2の表面2aに当接させると、ビスを用いることなく、支持具Sの取着板部2に配線ボックスBが取付けられる。
【0027】
また、請求項4の発明に関連する取着装置として、以下で特定されるような取着装置がある。
「柱に固定される固定部と、当該固定部から延設されて、ビスを強制螺入可能な細幅状の貫通溝を備えた取着部と、からなる支持具と;前記貫通溝に強制螺入するビスにより取着部に固定可能な前記ビスが挿通されるビス固定孔を備えた配線ボックスと;請求項2に記載の取着体と;から成ることを特徴とする取着体の取着装置。」
【0028】
段落「0027」で特定される取着体の取着装置によれば、支持具の取着部に請求項2で特定される取着体と、当該取着体の係止部に対応する部分を備えていない配線ボックスとの双方を取着できる。この場合において、配線ボックスが壁内に配置される場合には、細幅状の貫通溝を備えた支持具は、壁内の間柱等に固定される。
【0029】
更に、請求項4の発明に関連する別の取着装置として、以下で特定されるような取着装置がある。
「柱に固定される固定部と、当該固定部から延設されて、ビスを強制螺入可能な細幅状の貫通溝を備えた取着部と、からなる支持具と;前記ビスが挿通されるビス固定孔を備えた請求項2に記載の取着体と;から成ることを特徴とする取着体の取着装置。」
【0030】
段落「0029」で特定される取着体の取着装置によれば、当該取着体は、前記支持具の貫通溝に係止される係止部と、当該支持具の貫通溝に強制螺入されるビスが挿通可能なビス固定孔とを備えているので、前記係止部を用いれば、ビスを使用することなく、固定具に取着体を取着できると共に、ビスを用いても固定具に取着体を取着できて、取着方法を選択できる利点がある。
【符号の説明】
【0031】
B:配線ボックス(取着体)
H:管保持具(取着体)
P:管(配線・配管材)
S:支持具(被取着体)
T:係止爪の肉厚
W:係止爪の幅
0 :貫通溝の幅
1:固定板部(固定部)
2:取着板部(取着部)
2a:取着板部の表面
5:貫通溝
11:管保持具の本体部(保持部)
12:管保持具のバンド部(保持部)
17:第1当接面(当接面)
18:係止爪(係止部)
21:突出部
22:傾斜部
31:板状の被取着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスを強制螺入可能な細幅状の貫通溝を備えた被取着体の表面側から当該貫通溝に挿入することで取付可能な取付部を備えた取着体の取付部構造であって、
前記取付部は、前記被取着体の貫通溝周縁の表面に当接する当接面と、当該当接面から突出して、前記貫通溝の幅よりも小さな肉厚を有する係止部と、から成り、
前記係止部は、前記貫通溝内に入り込む長さを有して突出する突出部と、当該突出部から前記当接面から離れる方向に傾斜して形成され、前記当接面に対して更に離れる方向に弾性変形可能な傾斜部と、から成り、
前記係止部の少なくとも突出部の貫通溝の長さ方向に沿った長さである幅は、当該貫通溝の幅よりも広く形成され、
前記取着体の突出部を被取着体の貫通溝に挿入して、前記貫通溝の裏面側の縁部に前記傾斜部が係止されて発生する弾性復元力により、前記取着体を被取着体の表面側に引き寄せて、前記取付部の当接面を被取着体の表面に密着させることにより、被取着体に対して取着体が取付けられることを特徴とする取着体の取付部構造。
【請求項2】
請求項1の構造の取付部を備えた取着体。
【請求項3】
配線・配管材を保持可能な保持部を備えた請求項2に記載の取着体。
【請求項4】
柱に固定される固定部と、当該固定部から延設されて、取着体の係止部が係止されたり、或いは取付体のビス固定孔に挿通されたビスが強制螺入される細幅状の貫通溝を備えた取着部とから成る支持具と、
請求項2に記載の取着体とから成ることを特徴とする取着体の取着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−164165(P2010−164165A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8338(P2009−8338)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】