説明

受信専用フェーズドアレイレーダアンテナの較正方法

【課題】受信専用フェーズドアレイアンテナをその動作環境で較正する方法を提供する。
【解決手段】 受信専用フェーズドアレイアンテナをその動作環境において較正する方法。異なっているが未知の偏波の二つの送信信号を、受信専用アンテナアレイを較正するために使用し、受信エレメント位置と偏波を正確に知る。この方法は、マルチパス信号と標準ノイズの存在下でアンテナエレメントの複合重みと較正信号の垂直方向成分と水平方向成分の大きさを決定する。較正するための二つの異なる方法が提供される。第1の方法は、三つのエレメントの組み合わせを使用し、小さな行列を使用し、次にエレメント毎に全ての可能な結果を平均して較正定数を決定する。第2の方法は、単独値分解を使用して一度に全てのエレメントの較正定数を求めるが、大きな疎行列の操作を必要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、フェーズドアレイアンテナの較正に関し、具体的には、受信専用フェーズドアレイアンテナを較正するための較正定数を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイレーダは、複数目標トラッキングと傍受ガイダンスのために高精度を達成できる高品質アンテナアレイの較正を必要とする。較正は、典型的には近視野範囲(NFR)で実行され、外部RFソースで定期的に検証される。しかしながら、NFR較正は、アンテナアレイが近視野範囲内に配置できるように物理的に十分に小さい場合は良好に行われる。アンテナアレイが大き過ぎると、NFRの使用は不可能である。また、外部ソースを使用することは、レーダが配置される場所により、常に実用的であるわけではない。
【0003】
従来の較正方法は、既知の位置と方位を有するランダム数のエレメントを含み、較正信号の偏波は知られており、又は推定できる。また、ノイズおよびマルチパスは、どちらかが相関する場合較正バイアスへ通じるゼロに正規化すると推定されていた。
大きなアレイは、しばしばノイズとマルチパスの両方を有する環境に配置される。受信アレイ偏波から独立し、機能していない受信エレメントの存在を許容できる較正を実行することが望ましい。
【0004】
従来のフェーズドアレイアンテナの較正方法は、以下の特許に記述されている。
Ronald E.Sorace氏に対して付与され、カリフォルニア州El SegundoのHughes Electronics社に譲渡された1999年1月19日に発行された米国特許第5,861,843号は、フェーズドアレイアンテナを較正する直交位相シーケンス方法を開示しており、各エレメント信号の位相が4つの直交位相状態を介して逐次一旦切り替えられる。各直交位相状態で、アレイアンテナ信号の電力を測定する。エレメント信号それぞれに対する位相と振幅エラーを、4つのそれぞれの直交位相状態におけるアレイアンテナ信号の電力に基づいて決定する。次に、エレメント信号それぞれの位相と振幅を、対応する位相と振幅エラーによって調節する。しかしながら、較正測定はこれら4つの直交角度で正確に行われなければならず、複数の送信信号を各エレメントに対して送ることにより、逐次較正を得るものである。
【0005】
Jeffrey H.Sinsky氏らに付与され、Lucent Technologies社に譲渡された2004年4月13日に発行された米国特許第6,720,910号は、任意に僅かに離間された回転電気ベクトルとスケール測定システムを使用するフェーズドアレイ較正を開示している。データポイントは、各アンテナエレメントが一連の位相角度を介して回転されると共に送信/受信信号の電力を測定することによって生成される。その後、データポイントの対毎の比較を、アンテナエレメント毎に必要とされる位相と振幅の補正を決定するために実行する。この対毎の分析は、任意に僅かに離間された位相角度でなされる、アンテナエレメント毎に僅か三つの信号測定を使用する。更に、この方法は、異常やノイズバーストからの誤ったデータポイントを無視するためにスマートデータ選択を含む。しかしながら、この較正方法は送信アレイ用であり、既知で正確な4つの直交較正電界を必要とする。対毎の分析は、エレメント毎に少なくとも3つの較正信号を使用する。
【0006】
Gerard Caille氏らに付与され、フランス国CourbevoieのAlcatel Espace社に譲渡された1995年12月19日に発行された米国特許第5,477,229号は、受信又は送信できるアクティブアンテナを較正する方法を開示している。受信アンテナの場合、各放射ソース上の信号は、可変位相シフトを適用する可変利得アクティブモジュールにおいて増幅され、位相シフトされる。次に、N個のチャネル上のN個の増幅された信号が電力結合器によって結合され、単一チャネル上を集中受信機へ転送される。しかしながら、この較正方法は、近視野探査を用いて近視野範囲で実行される。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,861,843号明細書
【特許文献2】米国特許第6,720,910号明細書
【特許文献3】米国特許第5,477,229号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、受信専用フェーズドアレイアンテナをその動作環境で較正する方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、各アンテナエレメントの重みとマルチパス信号と標準ノイズの存在下で決定される較正信号の垂直方向および水平方向成分の大きさが確定されていない受信専用フェーズドアレイアンテナのための較正方法を提供することである。
【0010】
本発明の更に他の目的は、同じ位置からの,又は、異なる位置からの異なる未知の偏波の二つの送信較正信号を使用するフェーズドアレイアンテナの較正方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、三つのアンテナエレメントの組み合わせを使用して、小さな行列を使用する較正定数を決定し、次に、エレメント毎の可能な結果の全てを平均化する、受信専用フェーズドアレイアンテナの較正方法を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、大きな疎行列を操作する単独分解を使用して一度に全てのアンテナエレメントの較正定数の値を求める受信専用フェーズドアレイアンテナの較正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、受信専用フェーズドアレイアンテナの較正方法であって、次のステップから成る方法により達成される。即ち、未知の偏波を有する一対の送信信号を提供するス

ント(n)の重み(w)と送信信号それぞれの垂直方向の大きさ(E)と水平方向の大きさ(E)を含む未知のパラメータを識別するステップと、送信信号に基づいてアンテナエレメントそれぞれでの受信信号を決定するステップと、基準(p)としての一つのアンテナエレメントと第2のアンテナエレメント(m、ここでm≠p)と第3のアンテナエレメント(n、ここでn≠pおよびn≠m)を使用して7つの未知数を有する6つの連立方程式を定義するステップと、三つのアンテナエレメントの全ての可能なセット毎の重みに対する6つの連立方程式を解いて各アンテナエレメントに対する較正重み(w)のベクトルを検出するステップと、各アンテナエレメントに対する較正重み(w)を平均するステップと、を備える較正定数の決定方法である。この方法は、各アンテナエレメントに対する較正重み(w)に関する標準偏差を決定するステップと、異常値重みを除去するステップと、各アンテナエレメントに対する較正重み(w)を再平均するステップと、を備える。本方法は、アンテナエレメントの元のセットを未解決エレメントのセットに減少するステップと、この方法を繰り返すステップと、を備える。
【0014】
上記目的は、更に、受信専用フェーズドアレイアンテナを較正するための較正定数を決定するための較正方法であって、次のステップから成る方法により達成される。即ち、未知の偏波を有する一対の送信信号を提供するステップと、アンテナエレメント“p”を選択し、重みw=1を設定するステップと、全てのアンテナエレメントと未知の偏波を有する前記一対の送信信号を使用してサイズNPx2P+Nのフル行列方程式(A)を決定するステップと、A=U*S*Vである前記行列方程式(A)に関して単独値分解を実行するステップと、行列方程式(A)にU−1を掛け、U−1USVw=U−1BまたはSVw=0の関係に従ってB=0に対して結果として得られる式を解くステップと、行列Sを(2P+Nx2P+N)の正方行列に切り捨てるステップと、SとVを掛けて正方行列ΨとΨ=0を得るステップと、最後の未知数W(2P+N)=1を設定することによって正方行列Ψの型を1だけ減少するステップであって、ここで式は、Ξw=Cであるステップと、行列反転を実行して換算行列と前記セットの未知の複合重みとステアリングベクトルを解くステップであって、そこでw=Ξ−1Cとw=(w、w、…w2P+N−1,1)であるステップと、全てのアンテナエレメントの較正定数が解かれるまで上記ステップを繰り返すステップと、を備える方法である。
【0015】
上記の目的は、又、それぞれが異なる偏波の信号を送信する第1送信機と第2送信機と、前記第1送信機と第2送信機から送信される異なる偏波の信号を受信するための直線偏波アンテナエレメントを有するフェーズドアレイアンテナを有する受信専用フェーズドアレイアンテナシステムと、フェーズドアレイアンテナを較正するために、フェーズドアレイアンテナのそれぞれのアンテナエレメントに対して較正定数を決定するアンテナエレメントの出力に連結したプロセッサと、を備える装置によって達成される。
【0016】
本発明の更なる目的、特徴および利点は、現在認識されている発明実施の最良の形態を例示する好適な実施形態についての以下の詳細な記述により当業者にとっては明確となる。
【発明の効果】
【0017】
異なる偏波及び異なる可能性がある較正ソース位置は、ノイズとマルチパスを分離するのを助ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、受信専用のフェーズドアレイアンテナシステム10の較正方法のブロック図を示す。前記システムは、エレメントのアレイに配置された複数のアンテナエレメント18〜18を有するフェーズドアレイアンテナ12から成り、アンテナエレメントは規則的な格子である必要はなく、平行に並べられる必要はなく、平面である必要はない。アンテナエレメント18〜18は、エレメントの物理的方向に関連して既知の偏波を有する直線偏波のみを受け入れる。図1は、較正の配置を示す。二つの送信機14と16は、異なる偏波の二つの送信信号15、17を発生する。送信機14、16は、一つまたは異なる既知の物理的位置に配置される。前記受信用アレイアンテナ12は、空間(3次元)内に任意に配置される直線偏波エレメントを備え、エレメント位置と方位は、比較的よく知られている。各エレメント18〜18は、それ自体の受信機を有する。その結果は、空気中の光の速度、エレメントの位置と方位、および送信機の位置のような既知のデータを備える、コンピュータやプロセッサ20に送られる。複合重みは、既知の方向から入ってくる信号に対して全てのエレメントからコヒーレント加算を行うように各受信機の出力WからWに適用される。これらは、ステアリングベクトルが加算された較正定数である。ステアリングベクトルは既知であるので、重みが解かれる時に、較正定数が決定できる。
【0019】
二つの較正信号15、17は、既知の位置(GPSの精度に対して)にある送信機A14、送信機B16から送信される。これら二つの較正信号15、17は、フェーズドアレイアンテナ12を較正するために異なっているが未知の偏波を有する。二つの較正信号15、17は、同じ位置からのものでもよいし、異なる位置からのものでもよい。
この較正方法は、異なる未知の偏波の二つの送信較正信号15、17を使用してアンテナが使用される位置で動作中の受信アンテナ12を較正し、従って、この較正方法が非常に長い範囲のレーダにとって非常に有用である。ノイズは未知であり、個々のアンテナエレメントは、最初にランダムな重みでセットされる。較正方法を実行するソフトウエアは、較正プロセッサ20で動作する。この較正方法によれば、異なる偏波較正信号がノイズとマルチパス信号を分離することが可能であり、異なるソース位置が更にノイズとマルチパス信号を分離することを可能とする。
【0020】
図2において、フローチャートは、複数のエレメント18〜18を有する受信専用のフェーズドアレイアンテナ12を較正するためにデータを如何に取得しモデル化するかを示している。アンテナエレメント18〜18は、送信機14、16から信号を受信する。各アンテナエレメント18〜18は、位相と振幅を有する信号WからWを生成する。較正定数は、既知の方向から受信されたエネルギーをコヒーレントに加算することを必要とする。較正定数が既知であるならば、追加のステアリング項が加算されてビームを操作し、対象となる方向においてコヒーレントなままである。
【0021】
フェーズドアレイレーダアンテナ12に対する較正の問題は、アンテナエレメントの複合重みと較正信号の垂直方向と水平方向の成分の大きさが未知数であるということである。このことにより、Nがエレメントの数で、Pが較正信号の数であるN+2Pが未知であるということになる。多くの較正スキームと同様に、非相関ノイズ信号が平均してゼロになることが前提である。この較正方法の要件は、較正がフィールドで行われるようにマルチパスを分離するために異なる偏波を有する二つ以上の送信信号を有することである。従って、ステップ50では、未知の偏波を有する二つの送信信号15、17を提供する。異なる偏波を有する二つの送信信号15、17および三つの個々のエレメントが使用される場合、較正は、単一のエレメントに対して行われ、それは、必要な事項の全てである。
【0022】
以下の既知数がステップ52で識別される。

以下の未知数は、ステップ54で識別される。
{w}は、アンテナエレメントの重みであり、EとEは、較正信号の垂直方向および水平方向の大きさである。
【0023】
次に、この表記法を使用して、ステップ56で示されるように、単一アンテナエレメントによって受信されるエネルギーは、

ノイズである。送信信号に対する平面波伝播ベクトルを使用して、受信されたエネルギーは、

ξが、信号プラスノイズである、エレメントnで受信されるエネルギーである場合、エレメントに対す最適重みは、

であり、

信された垂直方向へ偏波された電界の大きさであり、Eh,iは、送信された水平方向へ偏波された電界の大きさである。
【0024】
送信信号の偏波が既知である場合、単一のソース位置からの多くの較正信号を使用して、重みに対する最小二乗平均(LMS)解法は、

注:複数のソース位置に対して、伝搬成分は、次の段落のように、行列エレメントに含まれなければならない。
各較正信号の送信信号偏波が未知数であり、異なる較正信号の位置が変化可能である場合、以下の定義を行うことは有用である。

【0025】
次に、ノイズとマルチパスがない場合、ステップ58に示されるように、エレメントでの受信信号が、
i,n=(Ai,nv,i+Bi,nh,i)となる。
第1の反復に対して、利用可能な明瞭な信号が無いので、受信信号は、理想的な信号に近似する。
図3には、較正定数の非自明な解法を決定するための第1の方法が示され、この方法により非自明な解法を達成するために使用する較正パルスの数とエレメントの数を決定する。この方法が一度行われると、それが再び行われる必要はない。その結果のみ、即ち、3個のエレメントと二つの送信信号が使用される。これは、以下の式を使用して決定され、繰り返されない。以下の整数定義が適用される。
P=較正信号の数
N=エレメントの数
U=未知数の数=2P+N.(2の係数は、偏波分解からのものである)
E=方程式の数=PN
非自明な解法に対して、U−E=1である。これは、それぞれの未知数が単一の未知数に対して以下のように解かれることを意味する。
P=1+1/(N−2)
Pが整数である唯一の解法は、N=3でP=2の時である。従って、三つのエレメントは、二つの異なる較正信号を使用して一度に較正されなければならない。
【0026】
ステップ60とステップ61で、二つの較正パルス、PULSE1(パルス1)とPULSE2(パルス2)、が提供される。上記の式は、ステップ62で示されるように、二つの較正信号それぞれに対する垂直方向と水平方向の放射エネルギー(4つの未知数)と三つのエレメントの較正重み(三つの未知数)よりなる7つの未知数を有する6つの連立方程式のセットをもたらす。これらの方程式に対して、受信信号は、理想的な較正信号を近似するために使用される。次に、較正中のランダムなノイズを除去するために、三つのエレメントの全ての可能なセットが、ステップ64で示されるように、各エレメントに対する較正重みのベクトルを発見するために使用される。このベクトルの平均値はステップ66で得られ、較正重みとして使用される。重みの“良”の尺度は、ステップ68に示されるように、そのエレメントに対するベクトルの標準偏差に見つけられる。異常値は、“機能不全”エレメントを除去するために除去でき、重みベクトルは、ステップ70で”機能不全“エレメントなしで再平均化される。
【0027】
先に述べたように、この較正方法の要件は、これらの二つの信号が異なる偏波を有することである。異なる偏波及び異なる可能性がある較正ソース位置は、ノイズとマルチパスを分離するのを助ける。
三つのエレメントと二つの較正信号を使用して解かれるべき式は以下の通りであり、

マイナス符号が受信フィールドに組み込まれる。(i,j)は、特定の較正のために使用される送信較正信号を指し、(n,m,p)は、この時に較正中の三つのエレメントである。
【0028】
特殊のケースがない場合(例えば、一つのエレメントが水平または垂直のユニットベクトルのいずれかと完全に合う)、第三に関連する重みの内の二つは、上記の行列式の解から見つけられる。これは、重み較正ベクトルにおける以下の項をもたらす。


エレメントnとmに対して、ここで

全てのエレメントの順列が使用された後、単一エレメントに対する最後の重みが、そのエレメントに対する重みベクトルの平均値として決定される。この重みの有効性の尺度が、重みベクトルの標準偏差によって決定できる。
【0029】
図4を参照して、詳細なフローチャートが、全てのアンテナエレメントn毎の全ての可能な組み合わせに対する重みを決定するためのループ演算を示す較正定数を決定するための図3に示される第1の方法のステップ80から100に示される。図4は、wを得るためにステップ84、86、88における三つのアンテナエレメントp、n、mが計算毎におよび異なるエレメントに亘る全てのループに対して選択されることを示す。
【0030】
ステップ89では、7つの未知数を有する6つの連立方程式が、標準p、第2のエレメント(m、m≠p)および第3のエレメント(n,n≠p,n≠m)を使用して求められる。上記方程式は、(wrt)wに対してwとwに対するステップ90で解かれる。ステップ92では、nとpに対する全てのmの組み合わせが確認され、全ての組み合わせの処理が完了していない場合、ステップ88へ戻る。ステップ94ではpに対するnの組み合わせが確認され、全ての組み合わせの処理が完了していない場合、ステップ86へ戻る。ステップ96で各エレメントに対する全ての較正重みwの平均が決定される。ステップ98で、全てのエレメントの解が得られていない場合、プログラムがステップ84に戻り、全てのエレメント重みが決定されるまで続き、そしてステップ100へ進む。
第1の指定された“p番目”のエレメントを使用して決定できなかったエレメントがある場合記憶される。次に、第2のパスが、未較正セットのエレメントから新たな“p番目”のエレメントを使用して実行できる。次に、関連する受信信号を使用して行われる第1の“p番目”のエレメントに対する第2の“p番目”のエレメントの重みを設定することが必要であるに過ぎない。
【0031】
図5aと図5bを共に参照して、受信専用フェーズドアレイアンテナの全てのアンテナエレメントに対する較正定数を決定するための第2の方法が示され、そこでは、全ての重み付け受信信号の合計引く理論的コヒーレント受信エネルギーに対して最小となる。ステップ110において、受信エネルギーPULSE1(パルス1)、PULSE2(パルス2)が前記アンテナ12によって受信され、ステップ114でアンテナエレメントpが選択されw=1が設定される。次に、フル行列方程式が全てのエレメントおよび二つの異なる偏波送信信号に対してステップ116で示されるように決定される。これによって、サイズ(NPx2P+N)の行列が得られる。(3つのエレメントと2つの較正パルスに対する行列が第1の方法において上記に示される、図3)。
【0032】
ステップ118において、行列が“A”と名づけられると、単一値分解が行われる。
A=U*S*V
この問題は、ステップ120では以下のように書かれる。
Aw=B
式中、
Bは、長さの零ベクトル(NP)である。
wは、長さの未知数ベクトル(2P+N)である。
Tは、行列転置を表す。
UとVは、単一行列であり、Uのサイズは、(NPxNP)であり、Vのサイズは、(2P+Nx2P+N)であり、Sは、台形対角行列である。
Sは、(2P+N)個の“対角”エレメントを有し、行数が2P+Nよりも大きな全ての行は、ゼロである(ステップ122)
−1USVw=U−1
または
SVw=0
ステップ124で、Sは、情報の損失が無いように切り捨てられて(2P+Nx2P+N)の大きさにされる。
この点から、SとVは、ステップ126で掛け算されて正方行列Ψを生じる。従って、
Ψw=0
一つの重みが、普遍性を損失することなく任意に設定され得る。最後の未知数W(2P+N)=1を設定する(ステップ128)と、一つだけ行列オーダーを減少することが可能となり、式は、(ステップ130)で
Ξw=C
となり、式中、

標準行列反転技術は、残りの未知数を解くために使用されることができる(ステップ132)。
w=Ξ−1
および
w=(w1′,w2′・・・w2P+N−1′1)
この点で、全てのエレメントが求められてはいない場合、ステップ114へ戻り、そうでない場合、較正定数が決定され、その方法が完了する。
【0033】
本発明は、幾つかの実施の形態に関して開示された。多くの変更が、開示された方法に対して本発明から離れることなく行われることは明白である。従って、添付の請求項の意図は、本発明の真の精神と範囲内に入るような変化と変更の全てを対象とすることである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における、アンテナの較正を実行するための較正プロセッサを有する受信専用アレイアンテナシステムの較正を示すブロック図である。
【図2】本発明における、受信専用フェーズドアレイアンテナのための較正方法のためにデータが如何に取得されモデル化されるかを概説するフローチャートである。
【図3】本発明における、受信専用フェーズドアレイアンテナの三つのエレメントの組み合わせを使用して較正定数を決定するための第1の方法のフローチャートである。
【図4】全てのアンテナエレメント毎の全ての可能な組み合わせに対して重みを決定するためにループ演算を示す較正定数を決定するための第1の方法の詳細なフローチャートである。
【図5a】本発明に従う、受信専用フェーズドアレイアンテナに対する単独値分解を使用して一度に全てのアンテナエレメントに対する較正定数を決定するための第2の方法のフローチャートである。
【図5b】本発明に従う、受信専用フェーズドアレイアンテナに対する単独値分解を使用して一度に全てのアンテナエレメントに対する較正定数を決定するための第2の方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10・・受信専用のフェーズドアレイアンテナシステム、12・・フェーズドアレイアンテナ、14・・送信機、15・・送信信号、16・・送信機、17・・送信信号、18・・アンテナエレメント、20・・較正プロセッサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信専用フェーズドアレイアンテナを較正用の較正定数を決定する方法であって、
未知の偏波を有する一対の送信信号を提供するステップと、

エレメント(n)の重み(w)と前記送信信号それぞれの垂直方向の大きさ(E)と水平方向の大きさ(E)を含む未知のパラメータを識別するステップと、
前記送信信号に基づいて前記アンテナエレメントそれぞれでの受信信号を決定するステップと、
基準(p)としての一つのアンテナエレメントと第2のアンテナエレメント(m:m≠p)と第3のアンテナエレメント(n:n≠pおよびn≠m)を使用して7つの未知数を有する前記6つの連立方程式を定義するステップと、
全ての可能なセットの三つのアンテナエレメントの重みに対する6つの連立方程式を解いて各アンテナエレメントに対する較正重み(w)のベクトルを検出するステップと、
各アンテナエレメントに対する前記較正重み(w)を平均するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記方法が、
アンテナエレメント毎に前記較正重み(w)の標準偏差を決定するステップと;、
異常値の重みを除去するステップと;
アンテナエレメント毎に前記較正重み(w)を再平均するステップと、を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、元のセットのアンテナエレメントを減少されたセットの未解決エレメントに減少し、前記方法を繰り返すステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
既知のパラメータを識別する前記ステップは、前記アンテナエレメント(n)の前記方位Δ

ント(n)の偏波を決定するステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
受信専用フェーズドアレイアンテナを較正するために較正定数を決定する方法であって、
未知の偏波を有する一対の送信信号を提供するステップと、
アンテナエレメント“p”を選択し、重みw=1を設定するステップと、
全てのアンテナエレメントと未知の偏波を有する前記対の送信信号を使用してサイズNPx2P+Nのフル行列方程式(A)を決定するステップと、
A=U*S*Vである前記行列方程式(A)に関して単独値分解を実行するステップと、
行列方程式(A)にU−1を掛け、U−1USVw=U−1BまたはSVw=0の関係に従ってB=0に対して結果として得られる式を解くステップと、
行列Sを(2P+Nx2P+N)の正方行列に切り捨てるステップと、
SとVを乗算して正方行列Ψ、Ψ=0を得るステップと、
最後の未知数W(2P+N)=1を設定することによって前記正方行列Ψの型を1だけ減少するステップであって、ここで前記式は、Ξw=Cになるステップと、
行列反転を実行して換算行列と前記セットの未知の複合重みとステアリングベクトルを解くステップであって、そこでw=Ξ−1Cおよびw=(w、w、…w2P+N−1,1)であるステップと、
全てのアンテナエレメントpの前記較正定数が決定されるまで上記ステップを繰り返すステップと、を備える方法。
【請求項6】
それぞれが異なる偏波の信号を送信する第1の送信機と第2の送信機と、
前記第1の送信機と前記第2の送信機からの異なる偏波の前記送信信号を受信するための直線偏波アンテナエレメントを有するフェーズドアレイアンテナを備える受信専用フェーズドアレイアンテナシステムと、
前記フェーズドアレイアンテナを較正するために、前記フェーズドアレイアンテナの前記アンテナエレメントそれぞれに対して較正定数を決定するために前記アンテナエレメントの出力に連結されるプロセッサと、を備える装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記アンテナエレメントの組み合わせを使用して前記較正定数を決定し、アンテナエレメント毎に結果を平均する手段を備える請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、大きな疎行列の操作をする単独分解を使用し、一度に前記アンテナエレメントそれぞれの前記較正定数を決定するための手段を備える請求項6に記載の装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2012−233916(P2012−233916A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164146(P2012−164146)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2008−525994(P2008−525994)の分割
【原出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】